記録装置
【課題】被記録媒体の搬送系に異常が生じた場合における記録処理部への干渉を生じにくくすることができる記録装置を提供する。
【解決手段】本発明の記録装置は、長尺の被記録媒体を支持する媒体支持部と、媒体支持部に支持された被記録媒体に対して記録処理を施す記録処理部と、記録処理部を移動させる記録処理部搬送系と、第1駆動ローラー及び第1駆動モーター、並びに第2駆動ローラー及び第2駆動モーターを含む媒体搬送系と、当該記録装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、記録処理部搬送系により記録処理部を被記録媒体上で走査しながら被記録媒体への記録処理を実行する期間に、媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、記録処理部を異常発生時点での移動方向を維持しつつ媒体支持部の外側の領域まで退避させることを特徴とする。
【解決手段】本発明の記録装置は、長尺の被記録媒体を支持する媒体支持部と、媒体支持部に支持された被記録媒体に対して記録処理を施す記録処理部と、記録処理部を移動させる記録処理部搬送系と、第1駆動ローラー及び第1駆動モーター、並びに第2駆動ローラー及び第2駆動モーターを含む媒体搬送系と、当該記録装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、記録処理部搬送系により記録処理部を被記録媒体上で走査しながら被記録媒体への記録処理を実行する期間に、媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、記録処理部を異常発生時点での移動方向を維持しつつ媒体支持部の外側の領域まで退避させることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置として、インクジェット方式のプリンターが広く知られており、例えば特許文献1には、長尺の連続紙を用いた記録が可能なプリンターが記載されている。同文献記載のプリンターでは、連続紙をプラテン上に送出する搬送ローラーユニットと、プラテンから連続紙を搬出する搬送ローラーユニットに回転速度差を設けることにより、プラテン上の連続紙に張力を付与する構成を備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、連続紙のような長尺の被記録媒体を用いる場合に、搬送系に異常が発生すると、被記録媒体に過大な負荷がかかったり、被記録媒体が撓んで装置と干渉したりする。特にプラテン上で被記録媒体が撓むと、被記録媒体とインクジェットヘッドが接触し、インクジェットヘッドやヘッド搬送系に不具合を生じるおそれがある。
なお、搬送系の異常に対する対処方法としては、異常を検出した時点で速やかに装置の動作を停止させるのが一般的であるが、この対象方法では、仕掛かり中の製品が無駄になってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、被記録媒体の搬送系に異常が生じた場合における記録処理部への干渉を生じにくくすることができる記録装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、長尺の被記録媒体を支持する媒体支持部と、前記媒体支持部に支持された前記被記録媒体に対して記録処理を施す記録処理部と、前記記録処理部を前記媒体支持部の支持面と平行に移動させる記録処理部搬送系と、前記媒体支持部に対して前記被記録媒体を送出する第1駆動ローラー及び前記第1駆動ローラーに連結された第1駆動モーター、並びに前記媒体支持部から前記被記録媒体を搬出させる第2駆動ローラー及び前記第2駆動ローラーに連結された第2駆動モーターを含む媒体搬送系と、当該記録装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記記録処理部搬送系により前記記録処理部を前記被記録媒体上で走査しながら前記被記録媒体への記録処理を実行する期間に、前記媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、前記記録処理部を前記異常が発生した時点での移動方向を維持しつつ前記媒体支持部の外側の領域まで退避させることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、記録処理部を媒体支持部の外側の領域に退避させるので、上記異常に起因して被記録媒体の撓みが発生したとしても、記録処理部と被記録媒体との接触を生じにくくすることができる。これにより、媒体搬送系の異常に起因して記録処理部にまで不具合が発生するのを防止することができる。また、記録処理部を退避させる際に、記録処理における移動方向の前方にそのまま記録処理部を移動させることで退避動作を実行するので、記録処理部を迅速に退避させることができるとともに、記録処理部の急な方向転換により記録処理部搬送系に負荷が掛かるのを防止することができる。
【0008】
前記制御部は、前記媒体搬送系で生じた異常が第1の種類である場合に前記記録処理部の退避動作を実行し、前記異常が前記第1の種類と異なる第2の種類である場合には前記記録処理を継続する構成としてもよい。
この構成によれば、媒体搬送系で生じた異常の種類に応じて記録処理部の退避動作と記録処理の継続のいずれかを選択するので、発生した異常が軽微なものである場合には仕掛かり中の記録処理を完了させることができる。これにより、異常発生時の製品の無駄を削減することができる。
【0009】
前記媒体搬送系に、前記第1駆動モーター及び前記第2駆動モーターを駆動制御するモーター制御部が設けられており、前記モーター制御部は、制御対象の駆動モーターを回転させる制御信号を出力した時点から所定時間の経過後の前記駆動モーターの電流値と、予め設定された基準電流値との比較に基づいて前記第1の種類の異常を検出する一方、制御対象の駆動モーターの電流値に基づいて前記駆動モーターの負荷情報を算出するとともに積算し、得られた積算値と基準積算値との比較に基づいて前記第2の種類の異常を検出する構成としてもよい。
第1の種類の異常は、駆動モーターの電流値の異常として検出される電源系又は駆動系の異常であり、被記録媒体の撓みなどを引き起こす可能性が高いものである。一方、第2の種類の異常は、駆動モーターに過度の負荷が掛かっている場合に検出される異常であり、検出されたとしても即座に駆動モーターの動作に不具合が生じることはない。上記構成によれば、第1の種類の異常が検出された場合には記録処理部の退避動作を実行し、第2の種類の異常が検出された場合には記録処理を継続するので、記録処理部の破損などを引き起こしにくくすることができるとともに、製品の無駄も削減することができる記録装置となる。
【0010】
前記モーター制御部は、前記基準電流値として、前記所定時間の経過後の前記駆動モーターの目標電流値と、前記駆動モーターの回転数に応じて定められる最大電流値のいずれか低い方を用いる構成としてもよい。
これにより、モーターの回転数が高いときに最大電流値が低くなる現象に起因するエラーの誤検出を防止することができる。
【0011】
前記モーター制御部は、制御対象の駆動モーターの電流値iと、電流熱量係数αと、放熱量定数βにより表される負荷情報a=i2α−βを算出するとともに負荷情報aの積算値Aを算出し、負荷情報aの積算値Aが、予め定められた基準積算値AEよりも大きいときに前記駆動モーターの過負荷を検出する構成としてもよい。
これにより、簡単な演算処理により比較的高精度に駆動モーターの過負荷を検出することができる。上記の電流熱量係数αと、放熱量定数βは実験に基づいて容易に設定することができるため、簡便に初期設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態のプリンターを示す図。
【図2】プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域の平面図。
【図3】プラテンの側断面図。
【図4】プリンターの機能ブロック図。
【図5】搬送及び印刷処理に関する処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】エラー監視ルーチンを示す図。
【図7】モーター電流値を取得するステップの説明図。
【図8】モーターの電源異常を判定するステップの説明図。
【図9】エンコーダチェックルーチンの詳細を示すフローチャート。
【図10】搬送開始時におけるエンコーダ出力の変化を示す説明図。
【図11】プリンターによる印刷動作の説明図。
【図12】エラー処理ルーチンのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて記録装置の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0014】
図1は、本実施形態のプリンターを示す図である。図2は、プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域の平面図である。図3はプラテンの側断面図である。
【0015】
プリンター11(記録装置)は、印刷方式として、複数の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)から連続紙12上に液体を噴射するインクジェット方式を採用したものであり、ロール状に巻回された長尺状の連続紙(被記録媒体)12を順次繰り出しつつ印刷処理を行い、印刷後の連続紙12を再びロール状に巻回する。
なお、本実施形態では、水平面内における連続紙12の幅方向をX方向、X方向と直交する連続紙12の搬送方向をY方向、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定している。
【0016】
プリンター11は、印刷処理を実行する本体部14と、本体部14に対して連続紙12を供給する繰り出し部13と、本体部14から排出される連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。
【0017】
本体部14は本体ケース16を備えており、繰り出し部13は本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)に設置され、巻き取り部15は本体ケース16の搬送方向下流側(+Y側)に設置されている。本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)の側壁16Aに設けられた媒体供給部16aに繰り出し部13が接続される一方、搬送方向下流側(+Y側)の側壁16Bに設けられた媒体排出部16bに巻き取り部15が接続されている。
【0018】
繰り出し部13は、本体ケース16の側壁16Aの下部に取り付けられた支持板17と、支持板17に設けられた巻き軸18と、本体ケース16の媒体供給部16aに接続された繰り出し台19と、繰り出し台19の先端に設けられた中継ローラー20とを備えている。巻き軸18にロール状に巻回された連続紙12が回転可能に支持されている。ロールから繰り出された連続紙12は中継ローラー20に巻き掛けられて繰り出し台19の上面に転換され、繰り出し台19の上面に沿って媒体供給部16aへ搬送される。
【0019】
巻き取り部15は、巻き取りフレーム41と、巻き取りフレーム41に設けられた中継ローラー42及び巻き取り駆動軸43とを備えている。媒体排出部16bから排出される連続紙12は中継ローラー42に巻き掛けられて巻き取り駆動軸43に案内され、巻き取り駆動軸43の回転駆動によりロール状に巻き取られる。
【0020】
本体部14の本体ケース16内には、板状の基台21が水平に設置され、基台21により本体ケース内が2つの空間に区画されている。基台21より上側の空間が連続紙12に印刷処理を施す印刷室22である。印刷室22には、基台21上に固定されたプラテン(媒体支持部)28と、プラテン28の上方に設けられた記録ヘッド(記録処理部)36と、記録ヘッド36を支持するキャリッジ35aと、キャリッジ35aを支持する2本のガイド軸35(図2参照)と、バルブユニット37とが設けられている。2本のガイド軸35は搬送方向(Y方向)に沿って互いに平行に配置され、キャリッジ35aが搬送方向に往復移動可能に構成されている。本実施形態の場合、キャリッジ35aと2本のガイド軸35とが、記録ヘッド36を搬送する記録処理部搬送系に属する。
【0021】
プラテン28は、図1から図3に示すように、上面が開口した箱状の支持台28aと、支持台28aの開口に取り付けられた載置板28bと、を有する。支持台28aは基台21上に固定されており、支持台28aと載置板28bとにより囲まれた内部が負圧室31とされている。載置板28bの支持面PL(図示上面)に連続紙12が載置される。
【0022】
載置板28bには、載置板28bを厚さ方向に貫通する多数の貫通孔28Aが形成されており、支持台28aの一側壁(本実施形態では−Y側の側壁)に、当該側壁を貫通する排気口28Bが形成されている。排気口28Bには吸引ファン29が接続されている。吸引ファン29により負圧室31内を吸引することで、多数の貫通孔28Aを介して連続紙12に吸引力を作用させ、連続紙12を載置板28bの支持面PLに吸着させて平坦化することができる。
【0023】
プラテン28の搬送方向上流側(−Y側)には、複数の搬送ローラーを含む供給搬送系が設けられている。供給搬送系は、プラテン28近傍の印刷室22内に設けられた第1搬送ローラー対25と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた中継ローラー24と、媒体供給部16a近傍に設けられた中継ローラー23とを含む。
第1搬送ローラー対25は、第1駆動ローラー25aと、第1従動ローラー25bとからなる。第1駆動ローラー25aには、図2に示すように、第1搬送モーター(第1駆動モーター)26と、第1エンコーダ26Eとが連結されている。
【0024】
供給搬送系において、繰り出し部13から媒体供給部16aを介して本体ケース16内に搬入された連続紙12は、中継ローラー23、24を経由して第1駆動ローラー25aに下方から巻き掛けられ、第1搬送ローラー対25にニップされる。そして、第1搬送モーター26により駆動される第1駆動ローラー25aの回転に伴って、第1搬送ローラー対25からプラテン28の支持面PL上に水平に繰り出される。
【0025】
一方、プラテン28の搬送方向下流側(+Y側)には、複数の搬送ローラーを含む排出搬送系が設けられている。排出搬送系は、プラテン28に対して第1搬送ローラー対25と反対側に設けられた第2搬送ローラー対33と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた反転ローラー38及び中継ローラー39と、媒体排出部16b近傍に設けられた送り出しローラー40とを含む。
第2搬送ローラー対33は、第2駆動ローラー33aと、第2従動ローラー33bとからなる。第2駆動ローラー33aには、図2に示すように、第2搬送モーター(第2駆動モーター)34と、第2エンコーダ34Eとが連結されている。なお、第2従動ローラー33bは、連続紙12の印刷面側(上面側)に配置されるため、印刷された画像の損傷を回避するために、連続紙12の幅方向(X方向)の端縁部にのみ当接する構成としてもよい。
【0026】
排出搬送系において、連続紙12をニップした第2搬送ローラー対33は、第2搬送モーター34により駆動される第2駆動ローラー33aの回転に伴ってプラテン28上から連続紙12を搬出する。第2搬送ローラー対33から繰り出された連続紙12は、反転ローラー38及び中継ローラー39を経由して送り出しローラー40へ搬送され、送り出しローラー40により媒体排出部16bを介して巻き取り部15へ繰り出される。
【0027】
本実施形態において、第1搬送ローラー対25を含む供給搬送系と、第2搬送ローラー対33を含む排出搬送系とが、被記録媒体である連続紙12を本体部14内で搬送する媒体搬送系に属する。
【0028】
次に、本実施形態の場合、複数の記録ヘッド36は、ヘッド取付板36aを介してキャリッジ35aに取り付けられている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35a上で媒体幅方向(X方向)に移動可能に構成されている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35aに接続されたヘッド位置制御部35bにより位置制御可能であり、ヘッド取付板36aを媒体幅方向(X方向)に移動させることで、複数の記録ヘッド36を一体的に改行動作させることができる。記録ヘッド36は、ヘッド取付板36a上において、隣り合う記録ヘッド36が媒体搬送方向(Y方向)で互い違いに2段になるように、媒体幅方向に一定間隔に並べて配置されている。
なお、ヘッド位置制御部35bは、記録ヘッド36の媒体幅方向(X方向)の位置制御とともに、キャリッジ35aの媒体搬送方向(Y方向;ヘッド走査方向)の位置制御を行い、連続紙12上の所望の位置に記録ヘッド36を配置することができる。
【0029】
複数の記録ヘッド36は、それぞれ図示しないインク供給チューブを介してバルブユニット37と接続されている。バルブユニット37は印刷室22内における本体ケース16の内壁に設けられており、図示しないインクタンク(インク貯留部)と接続されている。バルブユニット37は、インクタンクから供給されるインクを一時貯留しつつ記録ヘッド36に供給する。
【0030】
記録ヘッド36の下面(ノズル形成面)には、多数のインク吐出ノズルが媒体幅方向(X方向)に列設されている。記録ヘッド36はバルブユニット37から供給されるインクをインク吐出ノズルからプラテン28上の連続紙12に向けて噴射し、印刷を行う。
なお、記録ヘッド36は、複数のインク吐出ノズル列を有していてもよい。この場合には、4色や6色のカラー印刷を行う際に、それぞれのインク吐出ノズル列に色種毎にインクを割り当てれば、1つの記録ヘッド36で複数色のインクの噴射が可能となる。
【0031】
印刷室22において、プラテン28上の領域が、インク吐出ノズルからのインク噴射により連続紙12に対して印刷が行われる印刷領域Rである。連続紙12は、上述した供給搬送系及び排出搬送系により間欠的に搬送される。具体的には、印刷領域Rに相当する長さの連続紙12が印刷を行う毎にプラテン28上にロードされ、印刷処理後に排出搬送系へ送出される。
【0032】
印刷室22内に延在するガイド軸35は、図1及び図2に示すように、印刷領域Rよりも媒体搬送方向の外側にまで延びている。これにより、キャリッジ35aは印刷領域Rの外側の領域まで移動可能とされている。印刷領域Rの媒体搬送方向上流側(−Y側)に第1メンテナンス領域R1が設けられ、媒体搬送方向下流側(+Y側)に第2メンテナンス領域R2が設けられている。
【0033】
第1メンテナンス領域R1には、メンテナンスユニット60が設けられている。メンテナンスユニット60は、例えば、個々の記録ヘッド36に対応して設けられたキャップ部材及びワイピング部材と、キャップ部材に接続されキャップ部材内部を吸引する吸引装置とを備えた構成である。
第2メンテナンス領域R2には、メンテナンスユニットなどは設けられておらず、作業者の手や腕を挿入可能な作業空間とされている。第2メンテナンス領域R2にキャリッジ35aを配置することで上記作業空間内に記録ヘッド36のノズル形成面を露出させることができ、作業者によるノズル形成面の清拭や記録ヘッド36の交換作業などが可能となる。
【0034】
なお、印刷処理後の連続紙12は、排出搬送系内を搬送される間に自然乾燥されるが、インクを強制的に乾燥させ連続紙12に固着させるための加熱装置を備えた構成としてもよい。例えば、プラテン28に載置板28bを加熱するプラテンヒーターを備えた構成としてもよく、排出搬送系内に加熱装置内を設けた構成としてもよい。
【0035】
次に、図4はプリンター11の機能ブロック図である。
図4に示すように、プリンター11は、装置全体の駆動状態を制御するコントローラー44を備えている。コントローラー44は、中央処理装置となるCPU45、ROM46、及びRAM47を備えている。ROM46には、図5にフローチャートで示される印刷処理及び搬送処理に関する処理ルーチンのプログラム等が記憶されている。また、RAM47は、CPU45における演算結果の一時記憶領域や、外部入力装置48から入力される印刷データ等の一時記憶領域として使用される。
【0036】
コントローラー44には、ヘッドドライバー49、第1搬送モータードライバー(第1モーター制御部)50、第2搬送モータードライバー(第2モーター制御部)52、及び吸引ファンモータードライバー54、トルク検出センサー53、圧力検出センサー32、及び外部入力装置48が接続されている。
【0037】
ヘッドドライバー49には、複数の記録ヘッド36、及びヘッド位置制御部35bが接続されている。コントローラー44は、印刷処理において、外部入力装置48から入力された印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。ヘッドドライバー49は、コントローラー44から受信した印刷データに基づいて記録ヘッド36及びヘッド位置制御部35bを駆動し、記録ヘッド36の連続紙12上の位置を制御しつつ記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインク滴を噴射させ、連続紙12上に画像を形成する。
【0038】
第1搬送モータードライバー50は、第1搬送モーター26に連結された第1エンコーダ26Eから出力されるカウント信号に基づいて第1搬送モーター26の回転量を検出し、第1搬送モーター26の回転量をフィードバック制御する。すなわち、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44から入力された所定の搬送長さに達するまで、第1搬送モーター26により第1駆動ローラー25aを回転駆動し、第1搬送ローラー対25から連続紙12をプラテン28上に繰り出す。
【0039】
一方、第2搬送モータードライバー52は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動する。本実施形態では、コントローラー44に第2搬送モーター34のトルクを検出するトルク検出センサー53が接続されており、コントローラー44は、トルク検出センサー53から出力される第2搬送モーター34のトルクの検出結果に基づいて、第2搬送モータードライバー52を介して第2搬送モーター34のトルクをフィードバック制御する。これにより、第2搬送モーター34のトルクに基づいた所定の張力が、第2駆動ローラー33aを介して連続紙12に付与される。
【0040】
なお、一般に、モーターは、トルクと電流とがほぼ比例関係を持つため、モーターの回転速度が一定であれば、モーターの負荷に応じて電流の大きさが決定する。すなわち、ローラーにかかる負荷に応じて、モーターの駆動に必要な電流の大きさが決定される。したがって、モーターを流れる電流の大きさを検出することにより、モーターに荷重される負荷の大きさを検出することができる。そこで本実施形態では、トルク検出センサー53として、第2搬送モーター34に流れる電流の大きさを検出する第2搬送モータードライバー52の電流センサーを用いることとしている。これにより、コントローラー44は、第2搬送モータードライバー52に対して、トルク設定値として第2搬送モーター34の電流値を設定し、第2搬送モータードライバー52は、入力された電流値に基づいて第2搬送モーター34を電流フィードバック制御する。
【0041】
また本実施形態では、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動するため、第2搬送モーター34に連結された第2エンコーダ34Eは、連続紙12を搬送する際の送り長さの検出には用いられないが、装置起動時の第2搬送モーター34の初期化動作や、第2駆動ローラー33aの停止制御に使用される。
【0042】
吸引ファンモータードライバー54は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、吸引ファン29の回転軸に連結された吸引ファンモーター30を駆動制御する。吸引ファンモーター30の駆動力により吸引ファン29を所定の速度で回転させることで、回転速度に基づいた所定の吸引力で負圧室31内を減圧することができる。その結果、連続紙12に対して、負圧室31内の負圧が載置板28bの貫通孔28Aを介してプラテン28の支持面PLに対する吸着力として作用する。
【0043】
次に、図5を参照して本実施形態のプリンター11における搬送制御及び印刷制御について説明する。図5は、搬送及び印刷処理に関する処理ルーチンを示すフローチャートである。
コントローラー44は、搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムをROM46から読み出して実行することにより、プリンター11における搬送制御及び印刷制御を行う。
なお、図示は省略したが、コントローラー44が搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムを実行する際には、連続紙12への印刷に用いられる印刷データが外部入力装置48からRAM47に対して入力され、かかる印刷データがヘッドドライバー49を介して記録ヘッド36に供給される。
【0044】
図5に示すように、まず、ステップS10において、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52に対して、エラー監視ルーチンを開始させる制御信号を出力する。制御信号を受信した第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、それらに接続された第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34におけるエラーを監視するエラー監視ルーチンを開始する。
【0045】
エラー監視ルーチンにおいて、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、所定時間毎(例えば50μs毎)に、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に流れる電流を測定し、取得した電流値を用いて演算処理を実行する。そして、演算結果を予め設定された基準値と比較することでエラーを判定し、エラーの発生が検出された場合には、コントローラー44に対して発生したエラーを報知する。
【0046】
上記のエラー監視ルーチンは、一旦実行が開始されると、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52のそれぞれにおいて、他の処理ルーチンとは独立に所定時間毎に実行される。第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、エラー監視ルーチンにおいてエラーが検出されると、発生したエラーをコントローラー44に報知する。コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50又は第2搬送モータードライバー52からエラー報知を受信すると、エラー処理ルーチン(図12参照)を開始する。エラー処理ルーチンには受信したエラーの種類に応じた動作が規定されている。
【0047】
ここで、上記のエラー監視ルーチンについて、図6から図9を参照しつつ説明する。
図6は、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において実行されるエラー監視ルーチンを示す図である。図7は、モーター電流値を取得するステップの説明図である。
以下では、第1搬送モータードライバー50及び第1搬送モーター26におけるエラー監視ルーチンについて詳細に説明するが、特に断りのない限り、第2搬送モータードライバー52及び第2搬送モーター34についても同様である。
【0048】
本実施形態に係るエラー監視ルーチンは、ステップS20〜S25を含む。
まず、ステップS20では、エラー監視ルーチンの終了を指令する制御信号が入力されているか否かが判定される。コントローラー44から第1搬送モータードライバー50に処理終了を指令する制御信号が入力されている場合には、エラー監視ルーチンを終了する。それ以外の場合にはステップS21へ移行する。
【0049】
次に、ステップS21では、第1搬送モータードライバー50は、図7に示すように、駆動対象である第1搬送モーター26の電流値iを取得する。本実施形態の場合、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34はいずれもDCモーターであり、取得される電流値iは直流電流値である。
【0050】
次に、ステップS22において、ステップS21で取得した電流値iと、基準電流値とを比較し、モーターの電源異常の有無を判定する。ここで図8は、モーターの電源異常を判定するステップの説明図であり、図8(a)は基準電流値として用いられる目標電流値の説明図、図8(b)は基準電流値として用いられる最大電流値の説明図である。
【0051】
ステップS22に係る基準電流値としては、原則として、図8(a)に示す目標電流値が用いられる。目標電流値は、コントローラー44から第1搬送モータードライバー50に対して入力される電流制御の指令値、あるいはかかる指令値に所定の係数を乗じた値である。
【0052】
図8(a)に示す例では、時刻t1において、コントローラー44から第1搬送モータードライバー50に指令値(目標電流値)i2が入力される。そうすると、第1搬送モータードライバー50により第1搬送モーター26の駆動が開始され、第1搬送モーター26に流れる電流値iが徐々に上昇する。そして、時刻t4において電流値iが目標電流値i2に達する。
【0053】
ステップS22では、このような電流の上昇曲線に鑑みて、目標電流値を入力した時点(時刻t1)から所定の時間が経過した後の時刻(時刻t4又はそれ以降の時刻)に、電流値iと目標電流値i2とを比較し、電流値iが目標電流値i2未満であるか否かについて判定する。
電流値iが目標電流値i2に達していない場合には、例えば第1搬送モーター26の電源ラインが切断されていたり、第1搬送モーター26のブラシが摩耗している等の異常が発生していると判断し、ステップS23、S24を省略してステップS25に移行する。一方、電流値iが目標電流値i2に達している場合には、第1搬送モーター26の電源系は正常であると判断して、ステップS23に移行する。
【0054】
上記では目標電流値として指令値i2を用いているが、指令値そのものではなく、指令値に所定の係数を乗じた値を目標電流値として用いることもできる。具体的には、0.8×i2(0.8倍)や、0.9×i2(0.9倍)なる値を目標電流値として用いてもよい。目標電流値をこれらの値とすると、図8(a)に示すように、電流値iが目標電流値に到達する時刻は、0.8×i2の場合に時刻t2、0.9×i2の場合に時刻t3となり、時刻t4よりも早い時刻となる。したがって、これらのように目標電流値を指令値よりも小さい値に設定することで、第1搬送モーター26の駆動を開始してから電流値iの状態を判定するまでの時間を短縮することができる。
【0055】
ところで、DCモーターでは、その回転数に依存して流れる電流値が変化する。具体的には、図8(b)に示すように、回転数Nが大きくなるほど最大電流値Iが低下し、電流が流れにくくなる。そのため、例えば図8(a)に示す指令値i2が、図8(b)に示す最大電流値I1、I2の中間の値である場合、上記のステップS21、S22を実行する際に第1搬送モーター26の回転数がN2であると、電流値iは最大電流値I2までしか上昇せず、目標電流値である指令値i2には到達しない。このときに単に電流値iと目標電流値i2とを比較すると、エラー(モーターの電源異常)を誤検出してしまう。
【0056】
そこで、上記のような現象が想定される場合には、ステップS22に係る基準電流値を、コントローラー44から入力される指令値に基づく目標電流値と、モーターの回転数に応じて定まる最大電流値のいずれか低い方に設定する。すなわち、ステップS21を実行する際に、ステップS21の時点でのモーターの回転数と図8(b)に示す関係とから最大電流値Iを取得し、最大電流値Iが目標電流値よりも低い場合には、ステップS22に係る基準電流値として最大電流値Iを設定する。これにより、ステップS22におけるエラーの誤検出を防止することができる。
【0057】
次に、ステップS23では、第1搬送モーター26における温度負荷の状態を見積もる負荷積算値演算が実行される。
ステップS23の負荷積算値演算において、第1搬送モータードライバー50は、ステップS21で取得した電流値iと、予め設定された電流熱量係数αと、放熱量定数βとを用いて、負荷情報a=i2α−βを算出する。そして、算出した負荷情報aをステップ実行ごとに積算することで積算値Aを算出する。
【0058】
負荷情報aの式における電流熱量係数αは、流れる電流量と発熱量とを関係づける係数である。電流熱量係数αは、第1搬送モーター26の巻き線抵抗値に基づいて算出することができるが、電流値iを変化させたときの発熱量の実測値に基づいて補正することで、より現実的な負荷情報aの算出が可能となる。一方、放熱量定数βは第1搬送モーター26の単位時間当たりの放熱量であり、第1搬送モーター26の種類や冷却系の構成に応じて異なるが、プリンター11の構成に応じて実験的に求めることができる。
【0059】
すなわち、負荷情報aは、単位時間当たりの第1搬送モーター26の発熱量(i2α)から単位時間当たりの放熱量(β)を差し引いたものであり、第1搬送モーター26の単位時間当たりの蓄熱量に相当する。そして、積算値Aは、稼働により第1搬送モーター26に蓄積された熱量に相当し、発熱による第1搬送モーター26への負荷を見積もるためのパラメータとして利用することができる。
【0060】
なお、第1搬送モータードライバー50において、負荷情報aは、発熱量に相当するi2αが放熱量に相当する放熱量定数βよりも小さい場合には負の値となるが、負荷情報aを積算した積算値Aは、ゼロ未満とならないように演算処理される。第1搬送モーター26の温度は環境温度未満には下がらないため、積算値Aが負の値になるとモーターに蓄積された熱量を正確に反映できなくなるからである。そこで、積算値Aに対して負荷情報aを加算した値が負となる場合には、積算値Aとして0(ゼロ)を設定する。
【0061】
次に、ステップS24では、第1搬送モータードライバー50は、ステップS23で算出した積算値Aと、予め設定されている基準積算値AEとを比較する。基準積算値AEは、発熱によりモーターが過負荷状態にあると判定される積算値であり、第1搬送モーター26の耐熱性等に応じて実験的に求めることができる。
積算値Aが基準積算値AEを超えている場合にはステップS25に移行する。一方、積算値Aが基準積算値AE以下である場合には、第1搬送モーター26は正常に稼働していると判断され、ステップS20に戻る。
【0062】
次に、ステップS25ではエラー報知動作が実行される。すなわち、ステップS22において第1搬送モーター26の電流値iが基準電流値に達しない場合(S22−YES)、又はステップS24において積算値Aが基準積算値AEを超えている場合(S24−YES)に、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44に対して発生したエラーを報知する。
【0063】
ステップS22においてエラー判定された場合には、第1搬送モータードライバー50はコントローラー44に対して第1搬送モーター26の電源に異常があることを示すエラー情報を報知し、ステップS24においてエラー判定された場合には、第1搬送モーター26が過負荷状態にあることを示すエラー情報を報知する。
【0064】
図5に戻り、ステップS11において、コントローラー44は、吸引ファンモータードライバー54に対して制御信号を送信する。すると、吸引ファンモーター30の回転駆動に伴って吸引ファン29が回転駆動を開始することにより、負圧室31内に負圧が生成される。その結果、プラテン28の支持面PL上の連続紙12に、負圧室31内から載置板28bの貫通孔28Aを介して吸着力が作用する。なお、この場合、連続紙12は、吸引ファン29の吸引力F1とほぼ等しい第2の吸着力でプラテン28の支持面PL上に吸着される。
【0065】
続いて、ステップS12において、コントローラー44は、負圧室31内に設けられた圧力検出センサー32からの検出信号に基づいて、負圧室31内の圧力を確認する。コントローラー44は、負圧室31内の圧力が吸引ファン29の吸引力F1とほぼ等しい圧力値となるまで負圧室31の圧力確認を繰り返し実行する。そして、負圧室31が吸引力F1と等しい圧力であることが確認されると、吸引ファン29による減圧が完了したと判断し、本処理をステップS13に移行する。
【0066】
次に、ステップS13に移行すると、コントローラー44は、第1搬送モーター26の回転量をCに設定することにより、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量(送り長さ)を設定する。
第1搬送モーター26の回転量Cは、第1搬送モーター26の回転駆動に伴って第1駆動ローラー25aが回転駆動された場合に、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量がプラテン28の図1左端(搬送方向下流側端部)から右端(搬送方向上流側端部)までの印刷領域Rに対応する長さとなるように設定される。本実施形態の場合、回転量Cは、第1エンコーダ26Eのカウント数として第1搬送モータードライバー50に入力される。
【0067】
また、コントローラー44は、ステップS13において、第2搬送モーター34の管理トルク値をT1に設定することにより、第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用させる張力の大きさを設定する。
第2搬送モーター34の管理トルク値T1は、第2搬送モーター34のトルクに基づいて第2駆動ローラー33aからプラテン28上の連続紙12に作用する張力の大きさが、搬送時における連続紙12のばたつきを十分に抑制することができる程度の大きさとなるように設定される。本実施形態の場合、管理トルク値T1は、第2搬送モーター34の目標電流値として第2搬送モータードライバー52に入力される。
【0068】
次に、図9は、ステップS14の詳細を示すフローチャートである。ステップS14では、図9に示すステップS30〜S34からなる処理ルーチンにより、連続紙12の搬送開始動作と、エンコーダのチェック動作とが実行される。
【0069】
まず、図9に示すステップS30において、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52に対して搬送を開始するための制御信号を送信する。すると、第1搬送モーター26の回転駆動に伴って第1駆動ローラー25aが回転駆動を開始することにより、連続紙12のプラテン28上への搬送が開始される。また、第2搬送モーター34の回転駆動に伴って第2駆動ローラー33aが回転駆動を開始することにより、第2駆動ローラー33aが連続紙12に対して張力を作用させるようになる。
【0070】
次に、ステップS31において、コントローラー44は、実行中の動作が初回の搬送動作であるか、又は連続印刷が行われる場合の2回目以降の搬送動作であるかを判定する。初回の搬送動作である場合にはステップS32に移行し、エンコーダのチェック動作が実行される。一方、2回目以降の搬送動作である場合には、ステップS32以降の動作をスキップして図5に示す処理ルーチンのステップS15に移行する。
すなわち、連続紙12の搬送と印刷を繰り返し実行する場合には、エンコーダのチェック動作は初回の搬送動作の際にのみ実行され、2回目以降の搬送動作では実行されない。
【0071】
次に、ステップS32に移行すると、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52に対して、エンコーダをチェックする制御信号を送信する。制御信号を受信した第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、それらに接続された第1エンコーダ26E、第2エンコーダ34Eのカウント信号を確認する。
【0072】
具体的に、例えば第1搬送モータードライバー50は、第1エンコーダ26Eの複数のカウント信号(A相、B相等)について、周期的なパルスが送出されているかどうかを確認する。ここで、図10は、搬送開始時におけるエンコーダ出力の変化を示す説明図である。図10に示すように、第1搬送モーター26を停止状態から回転させる場合、第1搬送モーター26に駆動電圧V1を入力しても、電圧入力の時点(時刻t1)からすぐには第1エンコーダ26Eからカウント信号は出力されず、所定時間(不感時間)が経過した時刻t2からパルスが立ち上がり、その後の時刻t3でHレベルとなる。これは、第1搬送モーター26の駆動軸にギア又はローラーや第1エンコーダ26Eが連結されているためである。第2搬送モータードライバー52及び第2搬送モーター34の動作も上記と同様である。
【0073】
そこで、第1搬送モータードライバー50(第2搬送モータードライバー52)は、搬送開始の制御信号に基づく第1搬送モーター26(第2搬送モーター34)の回転駆動を開始した後、上記の不感時間よりも長い時間が経過した後に、第1エンコーダ26E(第2エンコーダ34E)のカウント信号を確認する。
【0074】
次に、ステップS33において、第1搬送モータードライバー50(第2搬送モータードライバー52)は、第1エンコーダ26E(第2エンコーダ34E)の複数のカウント信号が正常に出力されているかについて判定を行う。カウント信号のパルスが正常に出力されていると判定された場合には、図5に示したステップS15へ移行する。一方、少なくとも一部のカウント信号においてパルスが検出されなかった場合には、第1エンコーダ26E又は第2エンコーダ34Eに異常があると判定され、ステップS34に移行する。
【0075】
エンコーダの出力バルスに異常が検出される場合の例としては、第1エンコーダ26E又は第2エンコーダ34Eにおいて、(e1)エンコーダ自体の電源が遮断されている場合や、(e2)紙詰まりなどにより連続紙12が送られず、第1搬送モーター26又は第2搬送モーター34がロックしている場合、あるいは、(e3)A相及びB相のいずれかのパルス出力部の電源が遮断されている場合などが挙げられる。
【0076】
上記(e1)(e2)の場合には、対象のエンコーダにおいてカウント信号のパルスが全く検出されない。また、(e3)の場合には、電源が遮断されているパルス出力部から出力されるべきパルスが検出されない。したがって、搬送開始から所定時間経過後のカウント信号のパルスを確認することで、(e1)〜(e3)の不具合を検出することができる。
【0077】
次に、ステップS34において、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、発生しているエラー情報をコントローラー44に対して送信する。エラー情報を受信したコントローラー44は、エラーの発生をユーザーに対して報知するとともに、図5に示す処理ルーチンを中止する。エンコーダのチェック動作において検出される上記(e1)〜(e3)のエラーはいずれも搬送動作の継続が不可能なエラーだからである。
【0078】
例えば、上記(e1)や(e3)のエラーの場合には、エンコーダに不具合がありながら第1駆動ローラー25aや第2駆動ローラー33aが回転駆動され、連続紙12が制御されない状態で搬送され続けることがある。そうすると、プラテン28上で連続紙12が撓み、記録ヘッド36と接触する可能性がある。また(e2)のエラーの場合にも、連続紙12に過大な負荷が掛かるおそれがある。したがって、いずれのエラーが生じた場合であっても速やかに搬送を停止する必要がある。
【0079】
再び図5に戻り、続くステップS15では、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50から送信される第1搬送モーター26の回転量情報により、第1搬送モーター26の回転量がステップS13において設定した回転量Cに到達したか否かを判定する。
コントローラー44は、ステップS15での判定結果が否定判定(第1搬送モーター26の回転量≠C)である場合には、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送が完了していないと判断し、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量が所望の搬送量となるまで、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送を継続する。
【0080】
一方、ステップS15での判定結果が肯定判定(第1搬送モーター26の回転量=C)である場合、コントローラー44は、連続紙12の搬送が完了したと判断し、本処理をステップS17に移行する。このとき、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44から入力された指令値に基づく第1搬送モーター26の回転駆動を完了していると判断し、第1搬送モーター26を停止させる。これにより、連続紙12の搬送も停止される。
【0081】
上記の連続紙12の搬送動作において、コントローラー44は、第1駆動ローラー25aの回転量を随時監視するのに加えて、トルク検出センサー53からの検出信号に基づいて第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用している張力の大きさを随時監視し、更には、圧力検出センサー32からの検出信号に基づいて吸引ファン29の回転駆動に伴う負圧室31内の圧力変化を随時監視している。そして、コントローラー44は、第1駆動ローラー25a、第2駆動ローラー33a、及び吸引ファン29の駆動状態(回転量、張力、吸引力)が、それらを駆動する第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52、及び吸引ファンモータードライバー54から送信される制御信号に基づいて規定される駆動条件に対してずれを生じた場合には、エラー報知を行う。すなわち、コントローラー44は、第1駆動ローラー25a、第2駆動ローラー33a、及び吸引ファン29が、第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52、及び吸引ファンモータードライバー54から送信される制御信号に基づいて正常に稼動しているか否かを随時監視している。これにより、上記搬送動作において高い動作信頼性を得ることができる。
【0082】
また、連続紙12の搬送時に、第2駆動ローラー33aの回転速度は、第1駆動ローラー25aの回転速度よりも速くなるように設定される。これにより、第2駆動ローラー33aから搬送途中の連続紙12に対して張力を作用させ、プラテン28上における連続紙12の平面性を向上させることができる。第2駆動ローラー33aよりも搬送方向の下流側において、第2駆動ローラー33aによりプラテン28から搬送方向下流側に引っ張られた連続紙12は巻き取り駆動軸43によって順次巻き取られる。そのため、第2駆動ローラー33aよりも搬送方向下流側で連続紙12が撓むことはほとんどなく、第1駆動ローラー25aから繰り出される速度で安定的に搬送される。
【0083】
また搬送時において、吸引ファン29の吸引力は、連続紙12をプラテン28の支持面PLに強固に吸着させない程度の大きさとされる。これにより、プラテン28の吸引力によって連続紙12の搬送が阻害されるのを防止でき、搬送時における第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の駆動負荷が過大となるのを回避できる。また、プラテン28の吸引力に阻害されることなく第2駆動ローラー33aの張力を連続紙12に対して確実に作用させることができることから、張力の大きさを高精度に調整することができる。
【0084】
なお、本実施形態のプリンター11では、吸引ファン29の吸引力F1、及び、第2搬送モーター34の管理トルク値T1を、外部入力装置48からコントローラー44に入力されるデータに基づいて任意に変更することができる。これを用いて、搬送時における連続紙12のばたつきを抑制可能な範囲内で第2搬送モーター34の管理トルク値T1をより小さく設定すれば、第2搬送モーター34の駆動負荷を低減し、第2搬送モーター34を過熱状態となることを防止できるとともに、装置全体の省エネルギー化を図ることができる。
【0085】
次に、ステップS16において、コントローラー44は、吸引ファンモーター30の回転速度を設定することにより、吸引ファン29の吸引力をF2に変更する。吸引力F2は、ステップS13で設定された吸引ファン29の吸引力F1よりも大きな値である。このとき連続紙12の搬送は停止しており、連続紙12のプラテン28上に配置された部分が、吸引力F2とほぼ等しい第1の吸着力でプラテン28の支持面PLに吸着される。
すなわち本実施形態のプリンター11は、印刷処理の実行時に相対的に大きい第1の吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに吸着させる一方、搬送処理の実行時には第1の吸着よりも小さい第2の吸着力(吸引力F1)で連続紙12をプラテン28の支持面PLに吸着させる。
【0086】
次に、ステップS17において、コントローラー44は、第2搬送モーター34の管理トルク値をT2に設定することにより、第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用させる張力の大きさを変更する。管理トルク値T2は、ステップS13で設定された第2搬送モーター34の管理トルク値T1よりも小さな値である。したがって、第2駆動ローラー33aを回転駆動する第2搬送モーター34の駆動負荷が低減され、これにより装置全体の省エネルギー化が図られる。
【0087】
上記のように、コントローラー44は、ステップS16において吸引ファン29の吸引力の大きく(吸引力F2)して連続紙12をプラテン28に吸着させた後、ステップS17において第2搬送モーター34の管理トルク値をT2に減少させる。これにより、比較的大きな張力を付与した状態で連続紙12をプラテン28に吸着させるので、高い平面性を維持しつつ連続紙12を吸着させることができる。また、連続紙12をプラテン28に強固に吸着させた状態で張力を小さくするので、連続紙12に位置ずれを生じさせることもない。
【0088】
次に、ステップS18において、コントローラー44は、連続紙12に対する印刷処理を実行する。具体的に、コントローラー44は、連続紙12に対する印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。ヘッドドライバー49は、プラテン28の支持面PL上に支持された連続紙12に対して記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインクを噴射させることにより連続紙12に対する印刷動作を開始する。
【0089】
ここで図11は、プリンター11による印刷動作の説明図である。図11には、印刷領域Rに配置された連続紙12の一部分と、キャリッジ35a、2本のガイド軸35、及び第1メンテナンス領域R1、第2メンテナンス領域R2の平面図が示されている。
本実施形態のプリンター11では、図11に示すように、媒体搬送方向(Y方向;ガイド軸延在方向)にキャリッジ35aを走査しながら、記録ヘッド36からインクを噴射し、連続紙12上に画像を形成する動作を、記録ヘッド36を改行しながら4回繰り返すことで、印刷領域Rの連続紙12の全面に対する印刷が行われる。
【0090】
より詳しくは、図11の走査(1)、走査(3)では、媒体搬送方向上流側(−Y側)の端部からキャリッジ35aを下流側(+Y方向)に向かって走査しつつ記録ヘッド36からインクを噴射し、走査(2)、走査(4)では、キャリッジ35aを媒体搬送方向下流側から上流側へ向かって図示−Y方向に走査しながらインクを噴射する。走査(1)〜走査(4)のそれぞれの間では、記録ヘッド36の改行動作が行われる。複数の記録ヘッド36はヘッド取付板36aを介してキャリッジ35aに取り付けられており、ヘッド取付板36aを媒体幅方向(X方向)に移動させることで、連続紙12上における記録ヘッド36の走査領域を変更する。
【0091】
なお、印刷動作時には、第2駆動ローラー33aが管理トルク値T2でトルク制御され、第2駆動ローラー33aから連続紙12に対して継続的に張力が作用する。また、第1駆動ローラー25aは、第2駆動ローラー33aにより媒体搬送方向下流側(+Y方向)に引っ張られる連続紙12を停止させた状態で支持している。そのため、連続紙12は、第1駆動ローラー25aと第2駆動ローラー33aの両方から張力を付与されて平坦に保持される。これにより、平面性が維持された状態の連続紙12に対して印刷処理を施すことができ、高品質の印刷が可能となる。
【0092】
ステップS18の印刷動作が完了したならば、次に、ステップS19において、コントローラー44は、連続紙12に対する印刷処理を継続するか否かを判断する。連続紙12に対する印刷処理を継続する場合には、本処理をステップS11に移行して、ステップS11からステップS18までの処理を再帰的に実行する。一方、連続紙12に対する印刷処理を終了する場合には、連続紙12に対する搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムを終了する。
【0093】
次に、プリンター11において搬送系にエラーが発生した場合の処理について説明する。
図12は、エラー処理ルーチンのフローチャートである。先に記載のように、本実施形態のプリンター11では、上記のステップS11〜S19が実行される間、ステップS10において開始されたエラー監視ルーチンにより、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34におけるエラーを随時監視している。
【0094】
図12に示すエラー処理ルーチンは、図6に示したエラー監視ルーチンのステップS25において、第1搬送モータードライバー50又は第2搬送モータードライバー52からコントローラー44に対して発生したエラーが報知された場合に実行される。
【0095】
エラー処理ルーチンが実行されると、まず、ステップS40において、コントローラー44は第1搬送モータードライバー50又は第2搬送モータードライバー52から報知されたエラー情報を解析する。具体的には、エラーが発生した箇所(第1搬送モーター26、第2搬送モーター34)、及び発生したエラーの種類(モーター電源異常、モーター過負荷)を特定する。
【0096】
次に、ステップS41において、コントローラー44は、プリンター11の作動状態を取得し、装置が印刷動作中であるか否かを判定する。印刷動作中である場合には、ステップS43に移行する。一方、印刷動作が行われておらず、連続紙12の搬送動作中であったり、待機状態である場合には、エラー処理ルーチンを終了するとともに、実行中の搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンも終了する。したがって、連続紙12が搬送中であったとしても、搬送動作は停止される。
【0097】
次に、ステップS42において、コントローラー44は、発生したエラーが重大なエラーであるか否かを判定する。発生したエラーが重大なエラーである場合(第1の種類の異常である場合)にはステップS43に移行し、印刷を安全に中止する動作が開始される。一方、重大なエラーではない場合(第2の種類の異常である場合)には、ステップS46に移行し、印刷動作が継続される。
【0098】
本実施形態の場合、上記の重大なエラーとしては、モーターの電源異常に係るエラーであり、それ以外のエラーとしてはモーターの過負荷に係るエラーである。すなわち、図6に示したエラー監視ルーチンにおいて、ステップS22でエラー判定された場合に報知されるエラーが上記の重大なエラーであり、ステップS24でエラー判定された場合に報知されるエラーがそれ以外のエラーである。
【0099】
発生したエラーがモーターの電源異常に係るエラーである場合には、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34は動作不能であるか、正常に動作しない状態である。この状態では、連続紙12に適切な張力を付与したり、連続紙12をプラテン28上の所定位置に保持することについて、正常な動作は保証されないため、印刷動作中であっても速やかに動作が中止される。
【0100】
一方、発生したエラーがモーターの過負荷に係るものである場合、エラー判定に用いる基準積算値AEは、正常動作する範囲でエラー報知できるようにマージンを持って設定されるのが通常であるため、エラー判定された時点ですぐに動作異常が引き起こされることはない。また、印刷動作に要する時間は数秒から数十秒程度である。これらから、本実施形態では、発生したエラーがモーターの過負荷に係るエラーである場合には、仕掛かり中の印刷までは完了させることとしている。
【0101】
まず、ステップS42において、発生したエラーが重大なエラーであると判定された場合(S42−YES)についてより詳細に説明する。
この場合、ステップS43において、コントローラー44は、印刷動作中のキャリッジ35aの進行方向を判定する。キャリッジ35aが媒体搬送方向上流側(−Y方向)に移動中である場合にはステップS44に移行し、キャリッジ35aが搬送方向下流側(+Y方向)に移動中である場合にはステップS45に移行する。
【0102】
ステップS44に移行した場合には、キャリッジ35aは図2に示した第1メンテナンス領域R1に退避される。一方、ステップS45に移行した場合には、キャリッジ35aは図2に示した第2メンテナンス領域R2に退避される。以下、かかる動作について図11を参照してさらに詳細に説明する。
【0103】
図11に示す走査(2)の第1位置Er1にキャリッジ35aが位置しているときに重大なエラーが発生した場合、キャリッジ35aは媒体搬送方向上流側(−Y方向)へ移動中であるため、上記のステップS44が選択され、キャリッジ35aを第1メンテナンス領域R1に退避させる動作が開始される。このとき、第1メンテナンス領域R1は、キャリッジ35aの移動方向の延長上に位置しているため、キャリッジ35aを方向転換させることなく印刷領域Rの外側に移動させるのみで、キャリッジ35aを第1メンテナンス領域R1に退避させることができる。
【0104】
また、キャリッジ35aが走査(3)の第2位置Er2に位置しているときに重大なエラーが発生した場合には、キャリッジ35aの移動方向は媒体搬送方向下流側(+Y方向)であるため、ステップS45が選択され、キャリッジ35aを第2メンテナンス領域R2に退避させる動作が開始される。この場合にも、キャリッジ35aを方向転換させる必要はなく、そのまま印刷領域Rの外側へ移動させるのみで第2メンテナンス領域R2に退避させることができる。
【0105】
一方、ステップS42において、発生したエラーが重大なものでないと判定された場合(S42−NO)には、ステップS46において印刷動作の終了を判定しつつ、完了まで印刷動作を継続する。そして、印刷動作が完了した後、エラー処理ルーチンを終了するとともに、実行中の搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンも終了する。したがって、連続紙12の搬送と印刷を繰り返し実行する連続印刷中であっても、エラー発生時に仕掛かり中であった印刷動作のみを実行し、その後の連続紙12の搬送動作や印刷動作は中止される。
【0106】
以上、詳細に説明したように、本実施形態のプリンターによれば、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に流れる電流値を確認することにより、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の電源異常を検出し、コントローラー44に報知することができる。これにより、搬送系の異常を迅速に検出することができる。したがって、搬送系の異常に対して迅速に対処することが可能となるので、連続紙12の撓みなどを防止でき、装置の安定稼働に大いに寄与する。
【0107】
また、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に流れる電流値に基づく演算処理により、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の発熱による過負荷を検出し、コントローラー44に報知することができる。これにより、搬送系の異常を迅速に検出することができる。したがって、搬送系の異常に対して迅速に対処することが可能となるので、連続紙12の撓みなどを防止でき、装置の安定稼働に大いに寄与する。
【0108】
上記の過負荷に係るエラーを検出する構成は、制御対象の駆動モーターの電流値iと、電流熱量係数αと、放熱量定数βにより表される負荷情報a=i2α−βを算出するとともに負荷情報aの積算値Aを算出し、負荷情報aの積算値Aが、予め定められた基準積算値AEよりも大きいときに第1搬送モーター26又は第2搬送モーター34の過負荷を検出する構成としてもよい。これにより、簡単な演算処理により比較的高精度に搬送モーターの過負荷を検出することができる。また、上記の電流熱量係数αと、放熱量定数βは実験に基づいて容易に設定することができるため、簡便に初期設定を行うことができる。
【0109】
また、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に連結された第1エンコーダ26E及び第2エンコーダ34Eのカウント信号を確認するにより、第1エンコーダ26E及び第2エンコーダ34Eの異常を検出し、コントローラー44に報知することができる。これにより、搬送系の異常を迅速に検出することができる。したがって、搬送系の異常に対して迅速に対処することが可能となるので、連続紙12の撓みなどを防止でき、装置の安定稼働に大いに寄与する。
【0110】
また、搬送系に発生したエラーが重大なものである場合には、プリンター11が印刷動作中であっても、印刷動作を速やかに停止させ、キャリッジ35aを印刷領域Rの外側に退避させるので、第1搬送モーター26又は第2搬送モーター34の異常動作によって連続紙12が撓んだ場合に記録ヘッド36と連続紙12が接触してしまうのを回避しやすくなる。
【0111】
また、上記のように印刷を中断してキャリッジ35aを退避させる場合に、エラー発生時のキャリッジ35aの移動方向の延長上に位置するメンテナンス領域にキャリッジ35aを退避させるので、キャリッジ35aを印刷領域Rから迅速に退避させることができる。また、キャリッジ35aを急に方向転換させるとキャリッジ35aの搬送系を損傷するおそれがあるが、上記実施形態ではこのような不具合の発生を回避することができる。
【0112】
また、搬送系に発生したエラーが重大なものでない場合には、プリンター11が印刷動作中であれば、その仕掛かり中の印刷動作までは完了させる。これにより、軽微なエラーによって仕掛かり中の製品が無駄になるのを防ぐことができる。
【0113】
また、上記実施形態では、第2搬送モーター34が第2駆動ローラー33aをトルク制御によって駆動することにより、第2駆動ローラー33aから連続紙12に付与される張力の大きさが調整される。そのため、プラテン28に支持されつつ搬送される連続紙12を確実に搬送経路に沿って張られた状態にすることができる。
【0114】
また、第2駆動ローラー33aが、プラテン28に支持された連続紙12を搬送方向下流側に向けて引っ張るように張力を付与する一方で、第1駆動ローラー25aは連続紙12を引っ張ることはないため、連続紙12が搬送方向の下流側から上流側に向けて逆搬送されることがない。これにより、上記の逆搬送に起因する連続紙12の位置誤差が生じないため、連続紙12を高精度に搬送することができる。
【0115】
また、連続紙12の搬送時及び搬送停止時の双方において、第2駆動ローラー33aから連続紙12に対して張力が付与される。これにより、連続紙12の搬送時には、連続紙12のばたつきが抑制されるため、連続紙12を安定した状態で搬送することができる。また、連続紙12の搬送停止時には、プラテン28に支持されつつ搬送される連続紙12を確実に搬送経路に沿って張られた状態とすることができる。
【0116】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
プラテン28の支持面PLに対して連続紙12を吸着させる吸着手段として、プラテン28の支持面PLに対して連続紙12を静電吸着させる静電吸着装置を採用してもよい。この場合に、静電吸着装置は、連続紙12の印刷処理時には、第1の静電吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに静電吸着させ、連続紙12の搬送処理時には、第1の静電吸着力よりも小さい第2の静電吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに静電吸着させる構成とすることが望ましい。
【0117】
連続紙12の材質毎に個別に対応する第2搬送モーター34の管理トルク値T1、T2の一覧データをROM46に予め記憶させる構成としてもよい。この場合、コントローラー44は、連続紙12の搬送処理時及び印刷処理時には、各処理が行われる連続紙12の材質に応じて第2搬送モーター34の管理トルク値T1、T2をROM46から読み出し、読み出した第2搬送モーター34の管理トルク値T1、T2にて第2駆動ローラー33aをトルク制御することとなる。
【0118】
管理トルク値T1、T2の大小関係は上記実施形態に限定されない。例えば、連続紙12としてインクを吸収する際の膨潤比率が極めて大きいものを用いる場合には、搬送処理時における第2搬送モーター34の管理トルク値T1よりも、印刷処理時における第2搬送モーター34の管理トルク値T2の方が大きくなるように設定してもよい。
【0119】
プラテン28に、負圧室31内を大気開放する大気開放弁を設けてもよい。吸引ファン29による吸引力調整と大気開放弁を併用することにより負圧室31内の減圧度を速やかに低下させることができ、より早いタイミングで連続紙12の搬送を開始することができる。
【0120】
上記実施形態に係る圧力検出センサー32に代えて、吸引ファン29を介して排気される空気の流量を検出する流量検出センサーを設けてもよい。吸引ファン29により負圧室31内を廃棄すると、圧力の低下に伴って排気流量が低下するため、流量検出センサーにより検出される排気流量に基づいて負圧室31内の圧力を推定することができる。
【0121】
また、被記録媒体として、長尺状のプラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0122】
上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。
例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体(液状体)を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの液体(流状体)を噴射する液体噴射装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
11…プリンター(記録装置)、12…連続紙(被記録媒体)、25a…第1駆動ローラー、26…第1搬送モーター(第1駆動モーター)、26E…第1エンコーダ、28…プラテン(媒体支持部)、33a…第2駆動ローラー、34…第2搬送モーター(第2駆動モーター)、34E…第2エンコーダ、36…記録ヘッド(記録処理部)、50…第1搬送モータードライバー(第1モーター制御部)、52…第2搬送モータードライバー(第2モーター制御部)、A…積算値、AE…基準積算値、a…負荷情報、I,I1,I2…最大電流値、i…電流値、i2…指令値(目標電流値)、i2…目標電流値
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置として、インクジェット方式のプリンターが広く知られており、例えば特許文献1には、長尺の連続紙を用いた記録が可能なプリンターが記載されている。同文献記載のプリンターでは、連続紙をプラテン上に送出する搬送ローラーユニットと、プラテンから連続紙を搬出する搬送ローラーユニットに回転速度差を設けることにより、プラテン上の連続紙に張力を付与する構成を備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、連続紙のような長尺の被記録媒体を用いる場合に、搬送系に異常が発生すると、被記録媒体に過大な負荷がかかったり、被記録媒体が撓んで装置と干渉したりする。特にプラテン上で被記録媒体が撓むと、被記録媒体とインクジェットヘッドが接触し、インクジェットヘッドやヘッド搬送系に不具合を生じるおそれがある。
なお、搬送系の異常に対する対処方法としては、異常を検出した時点で速やかに装置の動作を停止させるのが一般的であるが、この対象方法では、仕掛かり中の製品が無駄になってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、被記録媒体の搬送系に異常が生じた場合における記録処理部への干渉を生じにくくすることができる記録装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、長尺の被記録媒体を支持する媒体支持部と、前記媒体支持部に支持された前記被記録媒体に対して記録処理を施す記録処理部と、前記記録処理部を前記媒体支持部の支持面と平行に移動させる記録処理部搬送系と、前記媒体支持部に対して前記被記録媒体を送出する第1駆動ローラー及び前記第1駆動ローラーに連結された第1駆動モーター、並びに前記媒体支持部から前記被記録媒体を搬出させる第2駆動ローラー及び前記第2駆動ローラーに連結された第2駆動モーターを含む媒体搬送系と、当該記録装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記記録処理部搬送系により前記記録処理部を前記被記録媒体上で走査しながら前記被記録媒体への記録処理を実行する期間に、前記媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、前記記録処理部を前記異常が発生した時点での移動方向を維持しつつ前記媒体支持部の外側の領域まで退避させることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、記録処理部を媒体支持部の外側の領域に退避させるので、上記異常に起因して被記録媒体の撓みが発生したとしても、記録処理部と被記録媒体との接触を生じにくくすることができる。これにより、媒体搬送系の異常に起因して記録処理部にまで不具合が発生するのを防止することができる。また、記録処理部を退避させる際に、記録処理における移動方向の前方にそのまま記録処理部を移動させることで退避動作を実行するので、記録処理部を迅速に退避させることができるとともに、記録処理部の急な方向転換により記録処理部搬送系に負荷が掛かるのを防止することができる。
【0008】
前記制御部は、前記媒体搬送系で生じた異常が第1の種類である場合に前記記録処理部の退避動作を実行し、前記異常が前記第1の種類と異なる第2の種類である場合には前記記録処理を継続する構成としてもよい。
この構成によれば、媒体搬送系で生じた異常の種類に応じて記録処理部の退避動作と記録処理の継続のいずれかを選択するので、発生した異常が軽微なものである場合には仕掛かり中の記録処理を完了させることができる。これにより、異常発生時の製品の無駄を削減することができる。
【0009】
前記媒体搬送系に、前記第1駆動モーター及び前記第2駆動モーターを駆動制御するモーター制御部が設けられており、前記モーター制御部は、制御対象の駆動モーターを回転させる制御信号を出力した時点から所定時間の経過後の前記駆動モーターの電流値と、予め設定された基準電流値との比較に基づいて前記第1の種類の異常を検出する一方、制御対象の駆動モーターの電流値に基づいて前記駆動モーターの負荷情報を算出するとともに積算し、得られた積算値と基準積算値との比較に基づいて前記第2の種類の異常を検出する構成としてもよい。
第1の種類の異常は、駆動モーターの電流値の異常として検出される電源系又は駆動系の異常であり、被記録媒体の撓みなどを引き起こす可能性が高いものである。一方、第2の種類の異常は、駆動モーターに過度の負荷が掛かっている場合に検出される異常であり、検出されたとしても即座に駆動モーターの動作に不具合が生じることはない。上記構成によれば、第1の種類の異常が検出された場合には記録処理部の退避動作を実行し、第2の種類の異常が検出された場合には記録処理を継続するので、記録処理部の破損などを引き起こしにくくすることができるとともに、製品の無駄も削減することができる記録装置となる。
【0010】
前記モーター制御部は、前記基準電流値として、前記所定時間の経過後の前記駆動モーターの目標電流値と、前記駆動モーターの回転数に応じて定められる最大電流値のいずれか低い方を用いる構成としてもよい。
これにより、モーターの回転数が高いときに最大電流値が低くなる現象に起因するエラーの誤検出を防止することができる。
【0011】
前記モーター制御部は、制御対象の駆動モーターの電流値iと、電流熱量係数αと、放熱量定数βにより表される負荷情報a=i2α−βを算出するとともに負荷情報aの積算値Aを算出し、負荷情報aの積算値Aが、予め定められた基準積算値AEよりも大きいときに前記駆動モーターの過負荷を検出する構成としてもよい。
これにより、簡単な演算処理により比較的高精度に駆動モーターの過負荷を検出することができる。上記の電流熱量係数αと、放熱量定数βは実験に基づいて容易に設定することができるため、簡便に初期設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態のプリンターを示す図。
【図2】プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域の平面図。
【図3】プラテンの側断面図。
【図4】プリンターの機能ブロック図。
【図5】搬送及び印刷処理に関する処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】エラー監視ルーチンを示す図。
【図7】モーター電流値を取得するステップの説明図。
【図8】モーターの電源異常を判定するステップの説明図。
【図9】エンコーダチェックルーチンの詳細を示すフローチャート。
【図10】搬送開始時におけるエンコーダ出力の変化を示す説明図。
【図11】プリンターによる印刷動作の説明図。
【図12】エラー処理ルーチンのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて記録装置の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0014】
図1は、本実施形態のプリンターを示す図である。図2は、プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域の平面図である。図3はプラテンの側断面図である。
【0015】
プリンター11(記録装置)は、印刷方式として、複数の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)から連続紙12上に液体を噴射するインクジェット方式を採用したものであり、ロール状に巻回された長尺状の連続紙(被記録媒体)12を順次繰り出しつつ印刷処理を行い、印刷後の連続紙12を再びロール状に巻回する。
なお、本実施形態では、水平面内における連続紙12の幅方向をX方向、X方向と直交する連続紙12の搬送方向をY方向、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定している。
【0016】
プリンター11は、印刷処理を実行する本体部14と、本体部14に対して連続紙12を供給する繰り出し部13と、本体部14から排出される連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。
【0017】
本体部14は本体ケース16を備えており、繰り出し部13は本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)に設置され、巻き取り部15は本体ケース16の搬送方向下流側(+Y側)に設置されている。本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)の側壁16Aに設けられた媒体供給部16aに繰り出し部13が接続される一方、搬送方向下流側(+Y側)の側壁16Bに設けられた媒体排出部16bに巻き取り部15が接続されている。
【0018】
繰り出し部13は、本体ケース16の側壁16Aの下部に取り付けられた支持板17と、支持板17に設けられた巻き軸18と、本体ケース16の媒体供給部16aに接続された繰り出し台19と、繰り出し台19の先端に設けられた中継ローラー20とを備えている。巻き軸18にロール状に巻回された連続紙12が回転可能に支持されている。ロールから繰り出された連続紙12は中継ローラー20に巻き掛けられて繰り出し台19の上面に転換され、繰り出し台19の上面に沿って媒体供給部16aへ搬送される。
【0019】
巻き取り部15は、巻き取りフレーム41と、巻き取りフレーム41に設けられた中継ローラー42及び巻き取り駆動軸43とを備えている。媒体排出部16bから排出される連続紙12は中継ローラー42に巻き掛けられて巻き取り駆動軸43に案内され、巻き取り駆動軸43の回転駆動によりロール状に巻き取られる。
【0020】
本体部14の本体ケース16内には、板状の基台21が水平に設置され、基台21により本体ケース内が2つの空間に区画されている。基台21より上側の空間が連続紙12に印刷処理を施す印刷室22である。印刷室22には、基台21上に固定されたプラテン(媒体支持部)28と、プラテン28の上方に設けられた記録ヘッド(記録処理部)36と、記録ヘッド36を支持するキャリッジ35aと、キャリッジ35aを支持する2本のガイド軸35(図2参照)と、バルブユニット37とが設けられている。2本のガイド軸35は搬送方向(Y方向)に沿って互いに平行に配置され、キャリッジ35aが搬送方向に往復移動可能に構成されている。本実施形態の場合、キャリッジ35aと2本のガイド軸35とが、記録ヘッド36を搬送する記録処理部搬送系に属する。
【0021】
プラテン28は、図1から図3に示すように、上面が開口した箱状の支持台28aと、支持台28aの開口に取り付けられた載置板28bと、を有する。支持台28aは基台21上に固定されており、支持台28aと載置板28bとにより囲まれた内部が負圧室31とされている。載置板28bの支持面PL(図示上面)に連続紙12が載置される。
【0022】
載置板28bには、載置板28bを厚さ方向に貫通する多数の貫通孔28Aが形成されており、支持台28aの一側壁(本実施形態では−Y側の側壁)に、当該側壁を貫通する排気口28Bが形成されている。排気口28Bには吸引ファン29が接続されている。吸引ファン29により負圧室31内を吸引することで、多数の貫通孔28Aを介して連続紙12に吸引力を作用させ、連続紙12を載置板28bの支持面PLに吸着させて平坦化することができる。
【0023】
プラテン28の搬送方向上流側(−Y側)には、複数の搬送ローラーを含む供給搬送系が設けられている。供給搬送系は、プラテン28近傍の印刷室22内に設けられた第1搬送ローラー対25と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた中継ローラー24と、媒体供給部16a近傍に設けられた中継ローラー23とを含む。
第1搬送ローラー対25は、第1駆動ローラー25aと、第1従動ローラー25bとからなる。第1駆動ローラー25aには、図2に示すように、第1搬送モーター(第1駆動モーター)26と、第1エンコーダ26Eとが連結されている。
【0024】
供給搬送系において、繰り出し部13から媒体供給部16aを介して本体ケース16内に搬入された連続紙12は、中継ローラー23、24を経由して第1駆動ローラー25aに下方から巻き掛けられ、第1搬送ローラー対25にニップされる。そして、第1搬送モーター26により駆動される第1駆動ローラー25aの回転に伴って、第1搬送ローラー対25からプラテン28の支持面PL上に水平に繰り出される。
【0025】
一方、プラテン28の搬送方向下流側(+Y側)には、複数の搬送ローラーを含む排出搬送系が設けられている。排出搬送系は、プラテン28に対して第1搬送ローラー対25と反対側に設けられた第2搬送ローラー対33と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた反転ローラー38及び中継ローラー39と、媒体排出部16b近傍に設けられた送り出しローラー40とを含む。
第2搬送ローラー対33は、第2駆動ローラー33aと、第2従動ローラー33bとからなる。第2駆動ローラー33aには、図2に示すように、第2搬送モーター(第2駆動モーター)34と、第2エンコーダ34Eとが連結されている。なお、第2従動ローラー33bは、連続紙12の印刷面側(上面側)に配置されるため、印刷された画像の損傷を回避するために、連続紙12の幅方向(X方向)の端縁部にのみ当接する構成としてもよい。
【0026】
排出搬送系において、連続紙12をニップした第2搬送ローラー対33は、第2搬送モーター34により駆動される第2駆動ローラー33aの回転に伴ってプラテン28上から連続紙12を搬出する。第2搬送ローラー対33から繰り出された連続紙12は、反転ローラー38及び中継ローラー39を経由して送り出しローラー40へ搬送され、送り出しローラー40により媒体排出部16bを介して巻き取り部15へ繰り出される。
【0027】
本実施形態において、第1搬送ローラー対25を含む供給搬送系と、第2搬送ローラー対33を含む排出搬送系とが、被記録媒体である連続紙12を本体部14内で搬送する媒体搬送系に属する。
【0028】
次に、本実施形態の場合、複数の記録ヘッド36は、ヘッド取付板36aを介してキャリッジ35aに取り付けられている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35a上で媒体幅方向(X方向)に移動可能に構成されている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35aに接続されたヘッド位置制御部35bにより位置制御可能であり、ヘッド取付板36aを媒体幅方向(X方向)に移動させることで、複数の記録ヘッド36を一体的に改行動作させることができる。記録ヘッド36は、ヘッド取付板36a上において、隣り合う記録ヘッド36が媒体搬送方向(Y方向)で互い違いに2段になるように、媒体幅方向に一定間隔に並べて配置されている。
なお、ヘッド位置制御部35bは、記録ヘッド36の媒体幅方向(X方向)の位置制御とともに、キャリッジ35aの媒体搬送方向(Y方向;ヘッド走査方向)の位置制御を行い、連続紙12上の所望の位置に記録ヘッド36を配置することができる。
【0029】
複数の記録ヘッド36は、それぞれ図示しないインク供給チューブを介してバルブユニット37と接続されている。バルブユニット37は印刷室22内における本体ケース16の内壁に設けられており、図示しないインクタンク(インク貯留部)と接続されている。バルブユニット37は、インクタンクから供給されるインクを一時貯留しつつ記録ヘッド36に供給する。
【0030】
記録ヘッド36の下面(ノズル形成面)には、多数のインク吐出ノズルが媒体幅方向(X方向)に列設されている。記録ヘッド36はバルブユニット37から供給されるインクをインク吐出ノズルからプラテン28上の連続紙12に向けて噴射し、印刷を行う。
なお、記録ヘッド36は、複数のインク吐出ノズル列を有していてもよい。この場合には、4色や6色のカラー印刷を行う際に、それぞれのインク吐出ノズル列に色種毎にインクを割り当てれば、1つの記録ヘッド36で複数色のインクの噴射が可能となる。
【0031】
印刷室22において、プラテン28上の領域が、インク吐出ノズルからのインク噴射により連続紙12に対して印刷が行われる印刷領域Rである。連続紙12は、上述した供給搬送系及び排出搬送系により間欠的に搬送される。具体的には、印刷領域Rに相当する長さの連続紙12が印刷を行う毎にプラテン28上にロードされ、印刷処理後に排出搬送系へ送出される。
【0032】
印刷室22内に延在するガイド軸35は、図1及び図2に示すように、印刷領域Rよりも媒体搬送方向の外側にまで延びている。これにより、キャリッジ35aは印刷領域Rの外側の領域まで移動可能とされている。印刷領域Rの媒体搬送方向上流側(−Y側)に第1メンテナンス領域R1が設けられ、媒体搬送方向下流側(+Y側)に第2メンテナンス領域R2が設けられている。
【0033】
第1メンテナンス領域R1には、メンテナンスユニット60が設けられている。メンテナンスユニット60は、例えば、個々の記録ヘッド36に対応して設けられたキャップ部材及びワイピング部材と、キャップ部材に接続されキャップ部材内部を吸引する吸引装置とを備えた構成である。
第2メンテナンス領域R2には、メンテナンスユニットなどは設けられておらず、作業者の手や腕を挿入可能な作業空間とされている。第2メンテナンス領域R2にキャリッジ35aを配置することで上記作業空間内に記録ヘッド36のノズル形成面を露出させることができ、作業者によるノズル形成面の清拭や記録ヘッド36の交換作業などが可能となる。
【0034】
なお、印刷処理後の連続紙12は、排出搬送系内を搬送される間に自然乾燥されるが、インクを強制的に乾燥させ連続紙12に固着させるための加熱装置を備えた構成としてもよい。例えば、プラテン28に載置板28bを加熱するプラテンヒーターを備えた構成としてもよく、排出搬送系内に加熱装置内を設けた構成としてもよい。
【0035】
次に、図4はプリンター11の機能ブロック図である。
図4に示すように、プリンター11は、装置全体の駆動状態を制御するコントローラー44を備えている。コントローラー44は、中央処理装置となるCPU45、ROM46、及びRAM47を備えている。ROM46には、図5にフローチャートで示される印刷処理及び搬送処理に関する処理ルーチンのプログラム等が記憶されている。また、RAM47は、CPU45における演算結果の一時記憶領域や、外部入力装置48から入力される印刷データ等の一時記憶領域として使用される。
【0036】
コントローラー44には、ヘッドドライバー49、第1搬送モータードライバー(第1モーター制御部)50、第2搬送モータードライバー(第2モーター制御部)52、及び吸引ファンモータードライバー54、トルク検出センサー53、圧力検出センサー32、及び外部入力装置48が接続されている。
【0037】
ヘッドドライバー49には、複数の記録ヘッド36、及びヘッド位置制御部35bが接続されている。コントローラー44は、印刷処理において、外部入力装置48から入力された印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。ヘッドドライバー49は、コントローラー44から受信した印刷データに基づいて記録ヘッド36及びヘッド位置制御部35bを駆動し、記録ヘッド36の連続紙12上の位置を制御しつつ記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインク滴を噴射させ、連続紙12上に画像を形成する。
【0038】
第1搬送モータードライバー50は、第1搬送モーター26に連結された第1エンコーダ26Eから出力されるカウント信号に基づいて第1搬送モーター26の回転量を検出し、第1搬送モーター26の回転量をフィードバック制御する。すなわち、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44から入力された所定の搬送長さに達するまで、第1搬送モーター26により第1駆動ローラー25aを回転駆動し、第1搬送ローラー対25から連続紙12をプラテン28上に繰り出す。
【0039】
一方、第2搬送モータードライバー52は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動する。本実施形態では、コントローラー44に第2搬送モーター34のトルクを検出するトルク検出センサー53が接続されており、コントローラー44は、トルク検出センサー53から出力される第2搬送モーター34のトルクの検出結果に基づいて、第2搬送モータードライバー52を介して第2搬送モーター34のトルクをフィードバック制御する。これにより、第2搬送モーター34のトルクに基づいた所定の張力が、第2駆動ローラー33aを介して連続紙12に付与される。
【0040】
なお、一般に、モーターは、トルクと電流とがほぼ比例関係を持つため、モーターの回転速度が一定であれば、モーターの負荷に応じて電流の大きさが決定する。すなわち、ローラーにかかる負荷に応じて、モーターの駆動に必要な電流の大きさが決定される。したがって、モーターを流れる電流の大きさを検出することにより、モーターに荷重される負荷の大きさを検出することができる。そこで本実施形態では、トルク検出センサー53として、第2搬送モーター34に流れる電流の大きさを検出する第2搬送モータードライバー52の電流センサーを用いることとしている。これにより、コントローラー44は、第2搬送モータードライバー52に対して、トルク設定値として第2搬送モーター34の電流値を設定し、第2搬送モータードライバー52は、入力された電流値に基づいて第2搬送モーター34を電流フィードバック制御する。
【0041】
また本実施形態では、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動するため、第2搬送モーター34に連結された第2エンコーダ34Eは、連続紙12を搬送する際の送り長さの検出には用いられないが、装置起動時の第2搬送モーター34の初期化動作や、第2駆動ローラー33aの停止制御に使用される。
【0042】
吸引ファンモータードライバー54は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、吸引ファン29の回転軸に連結された吸引ファンモーター30を駆動制御する。吸引ファンモーター30の駆動力により吸引ファン29を所定の速度で回転させることで、回転速度に基づいた所定の吸引力で負圧室31内を減圧することができる。その結果、連続紙12に対して、負圧室31内の負圧が載置板28bの貫通孔28Aを介してプラテン28の支持面PLに対する吸着力として作用する。
【0043】
次に、図5を参照して本実施形態のプリンター11における搬送制御及び印刷制御について説明する。図5は、搬送及び印刷処理に関する処理ルーチンを示すフローチャートである。
コントローラー44は、搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムをROM46から読み出して実行することにより、プリンター11における搬送制御及び印刷制御を行う。
なお、図示は省略したが、コントローラー44が搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムを実行する際には、連続紙12への印刷に用いられる印刷データが外部入力装置48からRAM47に対して入力され、かかる印刷データがヘッドドライバー49を介して記録ヘッド36に供給される。
【0044】
図5に示すように、まず、ステップS10において、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52に対して、エラー監視ルーチンを開始させる制御信号を出力する。制御信号を受信した第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、それらに接続された第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34におけるエラーを監視するエラー監視ルーチンを開始する。
【0045】
エラー監視ルーチンにおいて、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、所定時間毎(例えば50μs毎)に、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に流れる電流を測定し、取得した電流値を用いて演算処理を実行する。そして、演算結果を予め設定された基準値と比較することでエラーを判定し、エラーの発生が検出された場合には、コントローラー44に対して発生したエラーを報知する。
【0046】
上記のエラー監視ルーチンは、一旦実行が開始されると、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52のそれぞれにおいて、他の処理ルーチンとは独立に所定時間毎に実行される。第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、エラー監視ルーチンにおいてエラーが検出されると、発生したエラーをコントローラー44に報知する。コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50又は第2搬送モータードライバー52からエラー報知を受信すると、エラー処理ルーチン(図12参照)を開始する。エラー処理ルーチンには受信したエラーの種類に応じた動作が規定されている。
【0047】
ここで、上記のエラー監視ルーチンについて、図6から図9を参照しつつ説明する。
図6は、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において実行されるエラー監視ルーチンを示す図である。図7は、モーター電流値を取得するステップの説明図である。
以下では、第1搬送モータードライバー50及び第1搬送モーター26におけるエラー監視ルーチンについて詳細に説明するが、特に断りのない限り、第2搬送モータードライバー52及び第2搬送モーター34についても同様である。
【0048】
本実施形態に係るエラー監視ルーチンは、ステップS20〜S25を含む。
まず、ステップS20では、エラー監視ルーチンの終了を指令する制御信号が入力されているか否かが判定される。コントローラー44から第1搬送モータードライバー50に処理終了を指令する制御信号が入力されている場合には、エラー監視ルーチンを終了する。それ以外の場合にはステップS21へ移行する。
【0049】
次に、ステップS21では、第1搬送モータードライバー50は、図7に示すように、駆動対象である第1搬送モーター26の電流値iを取得する。本実施形態の場合、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34はいずれもDCモーターであり、取得される電流値iは直流電流値である。
【0050】
次に、ステップS22において、ステップS21で取得した電流値iと、基準電流値とを比較し、モーターの電源異常の有無を判定する。ここで図8は、モーターの電源異常を判定するステップの説明図であり、図8(a)は基準電流値として用いられる目標電流値の説明図、図8(b)は基準電流値として用いられる最大電流値の説明図である。
【0051】
ステップS22に係る基準電流値としては、原則として、図8(a)に示す目標電流値が用いられる。目標電流値は、コントローラー44から第1搬送モータードライバー50に対して入力される電流制御の指令値、あるいはかかる指令値に所定の係数を乗じた値である。
【0052】
図8(a)に示す例では、時刻t1において、コントローラー44から第1搬送モータードライバー50に指令値(目標電流値)i2が入力される。そうすると、第1搬送モータードライバー50により第1搬送モーター26の駆動が開始され、第1搬送モーター26に流れる電流値iが徐々に上昇する。そして、時刻t4において電流値iが目標電流値i2に達する。
【0053】
ステップS22では、このような電流の上昇曲線に鑑みて、目標電流値を入力した時点(時刻t1)から所定の時間が経過した後の時刻(時刻t4又はそれ以降の時刻)に、電流値iと目標電流値i2とを比較し、電流値iが目標電流値i2未満であるか否かについて判定する。
電流値iが目標電流値i2に達していない場合には、例えば第1搬送モーター26の電源ラインが切断されていたり、第1搬送モーター26のブラシが摩耗している等の異常が発生していると判断し、ステップS23、S24を省略してステップS25に移行する。一方、電流値iが目標電流値i2に達している場合には、第1搬送モーター26の電源系は正常であると判断して、ステップS23に移行する。
【0054】
上記では目標電流値として指令値i2を用いているが、指令値そのものではなく、指令値に所定の係数を乗じた値を目標電流値として用いることもできる。具体的には、0.8×i2(0.8倍)や、0.9×i2(0.9倍)なる値を目標電流値として用いてもよい。目標電流値をこれらの値とすると、図8(a)に示すように、電流値iが目標電流値に到達する時刻は、0.8×i2の場合に時刻t2、0.9×i2の場合に時刻t3となり、時刻t4よりも早い時刻となる。したがって、これらのように目標電流値を指令値よりも小さい値に設定することで、第1搬送モーター26の駆動を開始してから電流値iの状態を判定するまでの時間を短縮することができる。
【0055】
ところで、DCモーターでは、その回転数に依存して流れる電流値が変化する。具体的には、図8(b)に示すように、回転数Nが大きくなるほど最大電流値Iが低下し、電流が流れにくくなる。そのため、例えば図8(a)に示す指令値i2が、図8(b)に示す最大電流値I1、I2の中間の値である場合、上記のステップS21、S22を実行する際に第1搬送モーター26の回転数がN2であると、電流値iは最大電流値I2までしか上昇せず、目標電流値である指令値i2には到達しない。このときに単に電流値iと目標電流値i2とを比較すると、エラー(モーターの電源異常)を誤検出してしまう。
【0056】
そこで、上記のような現象が想定される場合には、ステップS22に係る基準電流値を、コントローラー44から入力される指令値に基づく目標電流値と、モーターの回転数に応じて定まる最大電流値のいずれか低い方に設定する。すなわち、ステップS21を実行する際に、ステップS21の時点でのモーターの回転数と図8(b)に示す関係とから最大電流値Iを取得し、最大電流値Iが目標電流値よりも低い場合には、ステップS22に係る基準電流値として最大電流値Iを設定する。これにより、ステップS22におけるエラーの誤検出を防止することができる。
【0057】
次に、ステップS23では、第1搬送モーター26における温度負荷の状態を見積もる負荷積算値演算が実行される。
ステップS23の負荷積算値演算において、第1搬送モータードライバー50は、ステップS21で取得した電流値iと、予め設定された電流熱量係数αと、放熱量定数βとを用いて、負荷情報a=i2α−βを算出する。そして、算出した負荷情報aをステップ実行ごとに積算することで積算値Aを算出する。
【0058】
負荷情報aの式における電流熱量係数αは、流れる電流量と発熱量とを関係づける係数である。電流熱量係数αは、第1搬送モーター26の巻き線抵抗値に基づいて算出することができるが、電流値iを変化させたときの発熱量の実測値に基づいて補正することで、より現実的な負荷情報aの算出が可能となる。一方、放熱量定数βは第1搬送モーター26の単位時間当たりの放熱量であり、第1搬送モーター26の種類や冷却系の構成に応じて異なるが、プリンター11の構成に応じて実験的に求めることができる。
【0059】
すなわち、負荷情報aは、単位時間当たりの第1搬送モーター26の発熱量(i2α)から単位時間当たりの放熱量(β)を差し引いたものであり、第1搬送モーター26の単位時間当たりの蓄熱量に相当する。そして、積算値Aは、稼働により第1搬送モーター26に蓄積された熱量に相当し、発熱による第1搬送モーター26への負荷を見積もるためのパラメータとして利用することができる。
【0060】
なお、第1搬送モータードライバー50において、負荷情報aは、発熱量に相当するi2αが放熱量に相当する放熱量定数βよりも小さい場合には負の値となるが、負荷情報aを積算した積算値Aは、ゼロ未満とならないように演算処理される。第1搬送モーター26の温度は環境温度未満には下がらないため、積算値Aが負の値になるとモーターに蓄積された熱量を正確に反映できなくなるからである。そこで、積算値Aに対して負荷情報aを加算した値が負となる場合には、積算値Aとして0(ゼロ)を設定する。
【0061】
次に、ステップS24では、第1搬送モータードライバー50は、ステップS23で算出した積算値Aと、予め設定されている基準積算値AEとを比較する。基準積算値AEは、発熱によりモーターが過負荷状態にあると判定される積算値であり、第1搬送モーター26の耐熱性等に応じて実験的に求めることができる。
積算値Aが基準積算値AEを超えている場合にはステップS25に移行する。一方、積算値Aが基準積算値AE以下である場合には、第1搬送モーター26は正常に稼働していると判断され、ステップS20に戻る。
【0062】
次に、ステップS25ではエラー報知動作が実行される。すなわち、ステップS22において第1搬送モーター26の電流値iが基準電流値に達しない場合(S22−YES)、又はステップS24において積算値Aが基準積算値AEを超えている場合(S24−YES)に、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44に対して発生したエラーを報知する。
【0063】
ステップS22においてエラー判定された場合には、第1搬送モータードライバー50はコントローラー44に対して第1搬送モーター26の電源に異常があることを示すエラー情報を報知し、ステップS24においてエラー判定された場合には、第1搬送モーター26が過負荷状態にあることを示すエラー情報を報知する。
【0064】
図5に戻り、ステップS11において、コントローラー44は、吸引ファンモータードライバー54に対して制御信号を送信する。すると、吸引ファンモーター30の回転駆動に伴って吸引ファン29が回転駆動を開始することにより、負圧室31内に負圧が生成される。その結果、プラテン28の支持面PL上の連続紙12に、負圧室31内から載置板28bの貫通孔28Aを介して吸着力が作用する。なお、この場合、連続紙12は、吸引ファン29の吸引力F1とほぼ等しい第2の吸着力でプラテン28の支持面PL上に吸着される。
【0065】
続いて、ステップS12において、コントローラー44は、負圧室31内に設けられた圧力検出センサー32からの検出信号に基づいて、負圧室31内の圧力を確認する。コントローラー44は、負圧室31内の圧力が吸引ファン29の吸引力F1とほぼ等しい圧力値となるまで負圧室31の圧力確認を繰り返し実行する。そして、負圧室31が吸引力F1と等しい圧力であることが確認されると、吸引ファン29による減圧が完了したと判断し、本処理をステップS13に移行する。
【0066】
次に、ステップS13に移行すると、コントローラー44は、第1搬送モーター26の回転量をCに設定することにより、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量(送り長さ)を設定する。
第1搬送モーター26の回転量Cは、第1搬送モーター26の回転駆動に伴って第1駆動ローラー25aが回転駆動された場合に、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量がプラテン28の図1左端(搬送方向下流側端部)から右端(搬送方向上流側端部)までの印刷領域Rに対応する長さとなるように設定される。本実施形態の場合、回転量Cは、第1エンコーダ26Eのカウント数として第1搬送モータードライバー50に入力される。
【0067】
また、コントローラー44は、ステップS13において、第2搬送モーター34の管理トルク値をT1に設定することにより、第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用させる張力の大きさを設定する。
第2搬送モーター34の管理トルク値T1は、第2搬送モーター34のトルクに基づいて第2駆動ローラー33aからプラテン28上の連続紙12に作用する張力の大きさが、搬送時における連続紙12のばたつきを十分に抑制することができる程度の大きさとなるように設定される。本実施形態の場合、管理トルク値T1は、第2搬送モーター34の目標電流値として第2搬送モータードライバー52に入力される。
【0068】
次に、図9は、ステップS14の詳細を示すフローチャートである。ステップS14では、図9に示すステップS30〜S34からなる処理ルーチンにより、連続紙12の搬送開始動作と、エンコーダのチェック動作とが実行される。
【0069】
まず、図9に示すステップS30において、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52に対して搬送を開始するための制御信号を送信する。すると、第1搬送モーター26の回転駆動に伴って第1駆動ローラー25aが回転駆動を開始することにより、連続紙12のプラテン28上への搬送が開始される。また、第2搬送モーター34の回転駆動に伴って第2駆動ローラー33aが回転駆動を開始することにより、第2駆動ローラー33aが連続紙12に対して張力を作用させるようになる。
【0070】
次に、ステップS31において、コントローラー44は、実行中の動作が初回の搬送動作であるか、又は連続印刷が行われる場合の2回目以降の搬送動作であるかを判定する。初回の搬送動作である場合にはステップS32に移行し、エンコーダのチェック動作が実行される。一方、2回目以降の搬送動作である場合には、ステップS32以降の動作をスキップして図5に示す処理ルーチンのステップS15に移行する。
すなわち、連続紙12の搬送と印刷を繰り返し実行する場合には、エンコーダのチェック動作は初回の搬送動作の際にのみ実行され、2回目以降の搬送動作では実行されない。
【0071】
次に、ステップS32に移行すると、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52に対して、エンコーダをチェックする制御信号を送信する。制御信号を受信した第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、それらに接続された第1エンコーダ26E、第2エンコーダ34Eのカウント信号を確認する。
【0072】
具体的に、例えば第1搬送モータードライバー50は、第1エンコーダ26Eの複数のカウント信号(A相、B相等)について、周期的なパルスが送出されているかどうかを確認する。ここで、図10は、搬送開始時におけるエンコーダ出力の変化を示す説明図である。図10に示すように、第1搬送モーター26を停止状態から回転させる場合、第1搬送モーター26に駆動電圧V1を入力しても、電圧入力の時点(時刻t1)からすぐには第1エンコーダ26Eからカウント信号は出力されず、所定時間(不感時間)が経過した時刻t2からパルスが立ち上がり、その後の時刻t3でHレベルとなる。これは、第1搬送モーター26の駆動軸にギア又はローラーや第1エンコーダ26Eが連結されているためである。第2搬送モータードライバー52及び第2搬送モーター34の動作も上記と同様である。
【0073】
そこで、第1搬送モータードライバー50(第2搬送モータードライバー52)は、搬送開始の制御信号に基づく第1搬送モーター26(第2搬送モーター34)の回転駆動を開始した後、上記の不感時間よりも長い時間が経過した後に、第1エンコーダ26E(第2エンコーダ34E)のカウント信号を確認する。
【0074】
次に、ステップS33において、第1搬送モータードライバー50(第2搬送モータードライバー52)は、第1エンコーダ26E(第2エンコーダ34E)の複数のカウント信号が正常に出力されているかについて判定を行う。カウント信号のパルスが正常に出力されていると判定された場合には、図5に示したステップS15へ移行する。一方、少なくとも一部のカウント信号においてパルスが検出されなかった場合には、第1エンコーダ26E又は第2エンコーダ34Eに異常があると判定され、ステップS34に移行する。
【0075】
エンコーダの出力バルスに異常が検出される場合の例としては、第1エンコーダ26E又は第2エンコーダ34Eにおいて、(e1)エンコーダ自体の電源が遮断されている場合や、(e2)紙詰まりなどにより連続紙12が送られず、第1搬送モーター26又は第2搬送モーター34がロックしている場合、あるいは、(e3)A相及びB相のいずれかのパルス出力部の電源が遮断されている場合などが挙げられる。
【0076】
上記(e1)(e2)の場合には、対象のエンコーダにおいてカウント信号のパルスが全く検出されない。また、(e3)の場合には、電源が遮断されているパルス出力部から出力されるべきパルスが検出されない。したがって、搬送開始から所定時間経過後のカウント信号のパルスを確認することで、(e1)〜(e3)の不具合を検出することができる。
【0077】
次に、ステップS34において、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52は、発生しているエラー情報をコントローラー44に対して送信する。エラー情報を受信したコントローラー44は、エラーの発生をユーザーに対して報知するとともに、図5に示す処理ルーチンを中止する。エンコーダのチェック動作において検出される上記(e1)〜(e3)のエラーはいずれも搬送動作の継続が不可能なエラーだからである。
【0078】
例えば、上記(e1)や(e3)のエラーの場合には、エンコーダに不具合がありながら第1駆動ローラー25aや第2駆動ローラー33aが回転駆動され、連続紙12が制御されない状態で搬送され続けることがある。そうすると、プラテン28上で連続紙12が撓み、記録ヘッド36と接触する可能性がある。また(e2)のエラーの場合にも、連続紙12に過大な負荷が掛かるおそれがある。したがって、いずれのエラーが生じた場合であっても速やかに搬送を停止する必要がある。
【0079】
再び図5に戻り、続くステップS15では、コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50から送信される第1搬送モーター26の回転量情報により、第1搬送モーター26の回転量がステップS13において設定した回転量Cに到達したか否かを判定する。
コントローラー44は、ステップS15での判定結果が否定判定(第1搬送モーター26の回転量≠C)である場合には、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送が完了していないと判断し、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量が所望の搬送量となるまで、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送を継続する。
【0080】
一方、ステップS15での判定結果が肯定判定(第1搬送モーター26の回転量=C)である場合、コントローラー44は、連続紙12の搬送が完了したと判断し、本処理をステップS17に移行する。このとき、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44から入力された指令値に基づく第1搬送モーター26の回転駆動を完了していると判断し、第1搬送モーター26を停止させる。これにより、連続紙12の搬送も停止される。
【0081】
上記の連続紙12の搬送動作において、コントローラー44は、第1駆動ローラー25aの回転量を随時監視するのに加えて、トルク検出センサー53からの検出信号に基づいて第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用している張力の大きさを随時監視し、更には、圧力検出センサー32からの検出信号に基づいて吸引ファン29の回転駆動に伴う負圧室31内の圧力変化を随時監視している。そして、コントローラー44は、第1駆動ローラー25a、第2駆動ローラー33a、及び吸引ファン29の駆動状態(回転量、張力、吸引力)が、それらを駆動する第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52、及び吸引ファンモータードライバー54から送信される制御信号に基づいて規定される駆動条件に対してずれを生じた場合には、エラー報知を行う。すなわち、コントローラー44は、第1駆動ローラー25a、第2駆動ローラー33a、及び吸引ファン29が、第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52、及び吸引ファンモータードライバー54から送信される制御信号に基づいて正常に稼動しているか否かを随時監視している。これにより、上記搬送動作において高い動作信頼性を得ることができる。
【0082】
また、連続紙12の搬送時に、第2駆動ローラー33aの回転速度は、第1駆動ローラー25aの回転速度よりも速くなるように設定される。これにより、第2駆動ローラー33aから搬送途中の連続紙12に対して張力を作用させ、プラテン28上における連続紙12の平面性を向上させることができる。第2駆動ローラー33aよりも搬送方向の下流側において、第2駆動ローラー33aによりプラテン28から搬送方向下流側に引っ張られた連続紙12は巻き取り駆動軸43によって順次巻き取られる。そのため、第2駆動ローラー33aよりも搬送方向下流側で連続紙12が撓むことはほとんどなく、第1駆動ローラー25aから繰り出される速度で安定的に搬送される。
【0083】
また搬送時において、吸引ファン29の吸引力は、連続紙12をプラテン28の支持面PLに強固に吸着させない程度の大きさとされる。これにより、プラテン28の吸引力によって連続紙12の搬送が阻害されるのを防止でき、搬送時における第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の駆動負荷が過大となるのを回避できる。また、プラテン28の吸引力に阻害されることなく第2駆動ローラー33aの張力を連続紙12に対して確実に作用させることができることから、張力の大きさを高精度に調整することができる。
【0084】
なお、本実施形態のプリンター11では、吸引ファン29の吸引力F1、及び、第2搬送モーター34の管理トルク値T1を、外部入力装置48からコントローラー44に入力されるデータに基づいて任意に変更することができる。これを用いて、搬送時における連続紙12のばたつきを抑制可能な範囲内で第2搬送モーター34の管理トルク値T1をより小さく設定すれば、第2搬送モーター34の駆動負荷を低減し、第2搬送モーター34を過熱状態となることを防止できるとともに、装置全体の省エネルギー化を図ることができる。
【0085】
次に、ステップS16において、コントローラー44は、吸引ファンモーター30の回転速度を設定することにより、吸引ファン29の吸引力をF2に変更する。吸引力F2は、ステップS13で設定された吸引ファン29の吸引力F1よりも大きな値である。このとき連続紙12の搬送は停止しており、連続紙12のプラテン28上に配置された部分が、吸引力F2とほぼ等しい第1の吸着力でプラテン28の支持面PLに吸着される。
すなわち本実施形態のプリンター11は、印刷処理の実行時に相対的に大きい第1の吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに吸着させる一方、搬送処理の実行時には第1の吸着よりも小さい第2の吸着力(吸引力F1)で連続紙12をプラテン28の支持面PLに吸着させる。
【0086】
次に、ステップS17において、コントローラー44は、第2搬送モーター34の管理トルク値をT2に設定することにより、第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用させる張力の大きさを変更する。管理トルク値T2は、ステップS13で設定された第2搬送モーター34の管理トルク値T1よりも小さな値である。したがって、第2駆動ローラー33aを回転駆動する第2搬送モーター34の駆動負荷が低減され、これにより装置全体の省エネルギー化が図られる。
【0087】
上記のように、コントローラー44は、ステップS16において吸引ファン29の吸引力の大きく(吸引力F2)して連続紙12をプラテン28に吸着させた後、ステップS17において第2搬送モーター34の管理トルク値をT2に減少させる。これにより、比較的大きな張力を付与した状態で連続紙12をプラテン28に吸着させるので、高い平面性を維持しつつ連続紙12を吸着させることができる。また、連続紙12をプラテン28に強固に吸着させた状態で張力を小さくするので、連続紙12に位置ずれを生じさせることもない。
【0088】
次に、ステップS18において、コントローラー44は、連続紙12に対する印刷処理を実行する。具体的に、コントローラー44は、連続紙12に対する印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。ヘッドドライバー49は、プラテン28の支持面PL上に支持された連続紙12に対して記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインクを噴射させることにより連続紙12に対する印刷動作を開始する。
【0089】
ここで図11は、プリンター11による印刷動作の説明図である。図11には、印刷領域Rに配置された連続紙12の一部分と、キャリッジ35a、2本のガイド軸35、及び第1メンテナンス領域R1、第2メンテナンス領域R2の平面図が示されている。
本実施形態のプリンター11では、図11に示すように、媒体搬送方向(Y方向;ガイド軸延在方向)にキャリッジ35aを走査しながら、記録ヘッド36からインクを噴射し、連続紙12上に画像を形成する動作を、記録ヘッド36を改行しながら4回繰り返すことで、印刷領域Rの連続紙12の全面に対する印刷が行われる。
【0090】
より詳しくは、図11の走査(1)、走査(3)では、媒体搬送方向上流側(−Y側)の端部からキャリッジ35aを下流側(+Y方向)に向かって走査しつつ記録ヘッド36からインクを噴射し、走査(2)、走査(4)では、キャリッジ35aを媒体搬送方向下流側から上流側へ向かって図示−Y方向に走査しながらインクを噴射する。走査(1)〜走査(4)のそれぞれの間では、記録ヘッド36の改行動作が行われる。複数の記録ヘッド36はヘッド取付板36aを介してキャリッジ35aに取り付けられており、ヘッド取付板36aを媒体幅方向(X方向)に移動させることで、連続紙12上における記録ヘッド36の走査領域を変更する。
【0091】
なお、印刷動作時には、第2駆動ローラー33aが管理トルク値T2でトルク制御され、第2駆動ローラー33aから連続紙12に対して継続的に張力が作用する。また、第1駆動ローラー25aは、第2駆動ローラー33aにより媒体搬送方向下流側(+Y方向)に引っ張られる連続紙12を停止させた状態で支持している。そのため、連続紙12は、第1駆動ローラー25aと第2駆動ローラー33aの両方から張力を付与されて平坦に保持される。これにより、平面性が維持された状態の連続紙12に対して印刷処理を施すことができ、高品質の印刷が可能となる。
【0092】
ステップS18の印刷動作が完了したならば、次に、ステップS19において、コントローラー44は、連続紙12に対する印刷処理を継続するか否かを判断する。連続紙12に対する印刷処理を継続する場合には、本処理をステップS11に移行して、ステップS11からステップS18までの処理を再帰的に実行する。一方、連続紙12に対する印刷処理を終了する場合には、連続紙12に対する搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムを終了する。
【0093】
次に、プリンター11において搬送系にエラーが発生した場合の処理について説明する。
図12は、エラー処理ルーチンのフローチャートである。先に記載のように、本実施形態のプリンター11では、上記のステップS11〜S19が実行される間、ステップS10において開始されたエラー監視ルーチンにより、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34におけるエラーを随時監視している。
【0094】
図12に示すエラー処理ルーチンは、図6に示したエラー監視ルーチンのステップS25において、第1搬送モータードライバー50又は第2搬送モータードライバー52からコントローラー44に対して発生したエラーが報知された場合に実行される。
【0095】
エラー処理ルーチンが実行されると、まず、ステップS40において、コントローラー44は第1搬送モータードライバー50又は第2搬送モータードライバー52から報知されたエラー情報を解析する。具体的には、エラーが発生した箇所(第1搬送モーター26、第2搬送モーター34)、及び発生したエラーの種類(モーター電源異常、モーター過負荷)を特定する。
【0096】
次に、ステップS41において、コントローラー44は、プリンター11の作動状態を取得し、装置が印刷動作中であるか否かを判定する。印刷動作中である場合には、ステップS43に移行する。一方、印刷動作が行われておらず、連続紙12の搬送動作中であったり、待機状態である場合には、エラー処理ルーチンを終了するとともに、実行中の搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンも終了する。したがって、連続紙12が搬送中であったとしても、搬送動作は停止される。
【0097】
次に、ステップS42において、コントローラー44は、発生したエラーが重大なエラーであるか否かを判定する。発生したエラーが重大なエラーである場合(第1の種類の異常である場合)にはステップS43に移行し、印刷を安全に中止する動作が開始される。一方、重大なエラーではない場合(第2の種類の異常である場合)には、ステップS46に移行し、印刷動作が継続される。
【0098】
本実施形態の場合、上記の重大なエラーとしては、モーターの電源異常に係るエラーであり、それ以外のエラーとしてはモーターの過負荷に係るエラーである。すなわち、図6に示したエラー監視ルーチンにおいて、ステップS22でエラー判定された場合に報知されるエラーが上記の重大なエラーであり、ステップS24でエラー判定された場合に報知されるエラーがそれ以外のエラーである。
【0099】
発生したエラーがモーターの電源異常に係るエラーである場合には、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34は動作不能であるか、正常に動作しない状態である。この状態では、連続紙12に適切な張力を付与したり、連続紙12をプラテン28上の所定位置に保持することについて、正常な動作は保証されないため、印刷動作中であっても速やかに動作が中止される。
【0100】
一方、発生したエラーがモーターの過負荷に係るものである場合、エラー判定に用いる基準積算値AEは、正常動作する範囲でエラー報知できるようにマージンを持って設定されるのが通常であるため、エラー判定された時点ですぐに動作異常が引き起こされることはない。また、印刷動作に要する時間は数秒から数十秒程度である。これらから、本実施形態では、発生したエラーがモーターの過負荷に係るエラーである場合には、仕掛かり中の印刷までは完了させることとしている。
【0101】
まず、ステップS42において、発生したエラーが重大なエラーであると判定された場合(S42−YES)についてより詳細に説明する。
この場合、ステップS43において、コントローラー44は、印刷動作中のキャリッジ35aの進行方向を判定する。キャリッジ35aが媒体搬送方向上流側(−Y方向)に移動中である場合にはステップS44に移行し、キャリッジ35aが搬送方向下流側(+Y方向)に移動中である場合にはステップS45に移行する。
【0102】
ステップS44に移行した場合には、キャリッジ35aは図2に示した第1メンテナンス領域R1に退避される。一方、ステップS45に移行した場合には、キャリッジ35aは図2に示した第2メンテナンス領域R2に退避される。以下、かかる動作について図11を参照してさらに詳細に説明する。
【0103】
図11に示す走査(2)の第1位置Er1にキャリッジ35aが位置しているときに重大なエラーが発生した場合、キャリッジ35aは媒体搬送方向上流側(−Y方向)へ移動中であるため、上記のステップS44が選択され、キャリッジ35aを第1メンテナンス領域R1に退避させる動作が開始される。このとき、第1メンテナンス領域R1は、キャリッジ35aの移動方向の延長上に位置しているため、キャリッジ35aを方向転換させることなく印刷領域Rの外側に移動させるのみで、キャリッジ35aを第1メンテナンス領域R1に退避させることができる。
【0104】
また、キャリッジ35aが走査(3)の第2位置Er2に位置しているときに重大なエラーが発生した場合には、キャリッジ35aの移動方向は媒体搬送方向下流側(+Y方向)であるため、ステップS45が選択され、キャリッジ35aを第2メンテナンス領域R2に退避させる動作が開始される。この場合にも、キャリッジ35aを方向転換させる必要はなく、そのまま印刷領域Rの外側へ移動させるのみで第2メンテナンス領域R2に退避させることができる。
【0105】
一方、ステップS42において、発生したエラーが重大なものでないと判定された場合(S42−NO)には、ステップS46において印刷動作の終了を判定しつつ、完了まで印刷動作を継続する。そして、印刷動作が完了した後、エラー処理ルーチンを終了するとともに、実行中の搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンも終了する。したがって、連続紙12の搬送と印刷を繰り返し実行する連続印刷中であっても、エラー発生時に仕掛かり中であった印刷動作のみを実行し、その後の連続紙12の搬送動作や印刷動作は中止される。
【0106】
以上、詳細に説明したように、本実施形態のプリンターによれば、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に流れる電流値を確認することにより、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の電源異常を検出し、コントローラー44に報知することができる。これにより、搬送系の異常を迅速に検出することができる。したがって、搬送系の異常に対して迅速に対処することが可能となるので、連続紙12の撓みなどを防止でき、装置の安定稼働に大いに寄与する。
【0107】
また、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に流れる電流値に基づく演算処理により、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の発熱による過負荷を検出し、コントローラー44に報知することができる。これにより、搬送系の異常を迅速に検出することができる。したがって、搬送系の異常に対して迅速に対処することが可能となるので、連続紙12の撓みなどを防止でき、装置の安定稼働に大いに寄与する。
【0108】
上記の過負荷に係るエラーを検出する構成は、制御対象の駆動モーターの電流値iと、電流熱量係数αと、放熱量定数βにより表される負荷情報a=i2α−βを算出するとともに負荷情報aの積算値Aを算出し、負荷情報aの積算値Aが、予め定められた基準積算値AEよりも大きいときに第1搬送モーター26又は第2搬送モーター34の過負荷を検出する構成としてもよい。これにより、簡単な演算処理により比較的高精度に搬送モーターの過負荷を検出することができる。また、上記の電流熱量係数αと、放熱量定数βは実験に基づいて容易に設定することができるため、簡便に初期設定を行うことができる。
【0109】
また、第1搬送モータードライバー50及び第2搬送モータードライバー52において、第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34に連結された第1エンコーダ26E及び第2エンコーダ34Eのカウント信号を確認するにより、第1エンコーダ26E及び第2エンコーダ34Eの異常を検出し、コントローラー44に報知することができる。これにより、搬送系の異常を迅速に検出することができる。したがって、搬送系の異常に対して迅速に対処することが可能となるので、連続紙12の撓みなどを防止でき、装置の安定稼働に大いに寄与する。
【0110】
また、搬送系に発生したエラーが重大なものである場合には、プリンター11が印刷動作中であっても、印刷動作を速やかに停止させ、キャリッジ35aを印刷領域Rの外側に退避させるので、第1搬送モーター26又は第2搬送モーター34の異常動作によって連続紙12が撓んだ場合に記録ヘッド36と連続紙12が接触してしまうのを回避しやすくなる。
【0111】
また、上記のように印刷を中断してキャリッジ35aを退避させる場合に、エラー発生時のキャリッジ35aの移動方向の延長上に位置するメンテナンス領域にキャリッジ35aを退避させるので、キャリッジ35aを印刷領域Rから迅速に退避させることができる。また、キャリッジ35aを急に方向転換させるとキャリッジ35aの搬送系を損傷するおそれがあるが、上記実施形態ではこのような不具合の発生を回避することができる。
【0112】
また、搬送系に発生したエラーが重大なものでない場合には、プリンター11が印刷動作中であれば、その仕掛かり中の印刷動作までは完了させる。これにより、軽微なエラーによって仕掛かり中の製品が無駄になるのを防ぐことができる。
【0113】
また、上記実施形態では、第2搬送モーター34が第2駆動ローラー33aをトルク制御によって駆動することにより、第2駆動ローラー33aから連続紙12に付与される張力の大きさが調整される。そのため、プラテン28に支持されつつ搬送される連続紙12を確実に搬送経路に沿って張られた状態にすることができる。
【0114】
また、第2駆動ローラー33aが、プラテン28に支持された連続紙12を搬送方向下流側に向けて引っ張るように張力を付与する一方で、第1駆動ローラー25aは連続紙12を引っ張ることはないため、連続紙12が搬送方向の下流側から上流側に向けて逆搬送されることがない。これにより、上記の逆搬送に起因する連続紙12の位置誤差が生じないため、連続紙12を高精度に搬送することができる。
【0115】
また、連続紙12の搬送時及び搬送停止時の双方において、第2駆動ローラー33aから連続紙12に対して張力が付与される。これにより、連続紙12の搬送時には、連続紙12のばたつきが抑制されるため、連続紙12を安定した状態で搬送することができる。また、連続紙12の搬送停止時には、プラテン28に支持されつつ搬送される連続紙12を確実に搬送経路に沿って張られた状態とすることができる。
【0116】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
プラテン28の支持面PLに対して連続紙12を吸着させる吸着手段として、プラテン28の支持面PLに対して連続紙12を静電吸着させる静電吸着装置を採用してもよい。この場合に、静電吸着装置は、連続紙12の印刷処理時には、第1の静電吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに静電吸着させ、連続紙12の搬送処理時には、第1の静電吸着力よりも小さい第2の静電吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに静電吸着させる構成とすることが望ましい。
【0117】
連続紙12の材質毎に個別に対応する第2搬送モーター34の管理トルク値T1、T2の一覧データをROM46に予め記憶させる構成としてもよい。この場合、コントローラー44は、連続紙12の搬送処理時及び印刷処理時には、各処理が行われる連続紙12の材質に応じて第2搬送モーター34の管理トルク値T1、T2をROM46から読み出し、読み出した第2搬送モーター34の管理トルク値T1、T2にて第2駆動ローラー33aをトルク制御することとなる。
【0118】
管理トルク値T1、T2の大小関係は上記実施形態に限定されない。例えば、連続紙12としてインクを吸収する際の膨潤比率が極めて大きいものを用いる場合には、搬送処理時における第2搬送モーター34の管理トルク値T1よりも、印刷処理時における第2搬送モーター34の管理トルク値T2の方が大きくなるように設定してもよい。
【0119】
プラテン28に、負圧室31内を大気開放する大気開放弁を設けてもよい。吸引ファン29による吸引力調整と大気開放弁を併用することにより負圧室31内の減圧度を速やかに低下させることができ、より早いタイミングで連続紙12の搬送を開始することができる。
【0120】
上記実施形態に係る圧力検出センサー32に代えて、吸引ファン29を介して排気される空気の流量を検出する流量検出センサーを設けてもよい。吸引ファン29により負圧室31内を廃棄すると、圧力の低下に伴って排気流量が低下するため、流量検出センサーにより検出される排気流量に基づいて負圧室31内の圧力を推定することができる。
【0121】
また、被記録媒体として、長尺状のプラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0122】
上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。
例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体(液状体)を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの液体(流状体)を噴射する液体噴射装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
11…プリンター(記録装置)、12…連続紙(被記録媒体)、25a…第1駆動ローラー、26…第1搬送モーター(第1駆動モーター)、26E…第1エンコーダ、28…プラテン(媒体支持部)、33a…第2駆動ローラー、34…第2搬送モーター(第2駆動モーター)、34E…第2エンコーダ、36…記録ヘッド(記録処理部)、50…第1搬送モータードライバー(第1モーター制御部)、52…第2搬送モータードライバー(第2モーター制御部)、A…積算値、AE…基準積算値、a…負荷情報、I,I1,I2…最大電流値、i…電流値、i2…指令値(目標電流値)、i2…目標電流値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の被記録媒体を支持する媒体支持部と、
前記媒体支持部に支持された前記被記録媒体に対して記録処理を施す記録処理部と、
前記記録処理部を前記媒体支持部の支持面と平行に移動させる記録処理部搬送系と、
前記媒体支持部に対して前記被記録媒体を送出する第1駆動ローラー及び前記第1駆動ローラーに連結された第1駆動モーター、並びに前記媒体支持部から前記被記録媒体を搬出させる第2駆動ローラー及び前記第2駆動ローラーに連結された第2駆動モーターを含む媒体搬送系と、
当該記録装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記記録処理部搬送系により前記記録処理部を前記被記録媒体上で走査しながら前記被記録媒体への記録処理を実行する期間に、前記媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、前記記録処理部を前記異常が発生した時点での移動方向を維持しつつ前記媒体支持部の外側の領域まで退避させることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記媒体搬送系で生じた異常が第1の種類である場合に前記記録処理部の退避動作を実行し、前記異常が前記第1の種類と異なる第2の種類である場合には前記記録処理を継続することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記媒体搬送系に、前記第1駆動モーター及び前記第2駆動モーターの少なくとも一方を駆動制御するモーター制御部が設けられており、
前記モーター制御部は、
制御対象の駆動モーターを回転させる制御信号を出力した時点から所定時間の経過後の前記駆動モーターの電流値と、予め設定された基準電流値との比較に基づいて前記第1の種類の異常を検出する一方、
制御対象の駆動モーターの電流値に基づいて前記駆動モーターの負荷情報を算出するとともに積算し、得られた積算値と基準積算値との比較に基づいて前記第2の種類の異常を検出することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記モーター制御部は、前記基準電流値として、前記所定時間の経過後の前記駆動モーターの目標電流値と、前記駆動モーターの回転数に応じて定められる最大電流値のいずれか低い方を用いることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記モーター制御部は、制御対象の駆動モーターの電流値iと、電流熱量係数αと、放熱量定数βにより表される負荷情報a=i2α−βを算出するとともに負荷情報aの積算値Aを算出し、負荷情報aの積算値Aが、予め定められた基準積算値AEよりも大きいときに前記駆動モーターの過負荷を検出することを特徴とする請求項3又は4に記載の記録装置。
【請求項1】
長尺の被記録媒体を支持する媒体支持部と、
前記媒体支持部に支持された前記被記録媒体に対して記録処理を施す記録処理部と、
前記記録処理部を前記媒体支持部の支持面と平行に移動させる記録処理部搬送系と、
前記媒体支持部に対して前記被記録媒体を送出する第1駆動ローラー及び前記第1駆動ローラーに連結された第1駆動モーター、並びに前記媒体支持部から前記被記録媒体を搬出させる第2駆動ローラー及び前記第2駆動ローラーに連結された第2駆動モーターを含む媒体搬送系と、
当該記録装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記記録処理部搬送系により前記記録処理部を前記被記録媒体上で走査しながら前記被記録媒体への記録処理を実行する期間に、前記媒体搬送系において所定の異常が発生した場合に、前記記録処理部を前記異常が発生した時点での移動方向を維持しつつ前記媒体支持部の外側の領域まで退避させることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記媒体搬送系で生じた異常が第1の種類である場合に前記記録処理部の退避動作を実行し、前記異常が前記第1の種類と異なる第2の種類である場合には前記記録処理を継続することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記媒体搬送系に、前記第1駆動モーター及び前記第2駆動モーターの少なくとも一方を駆動制御するモーター制御部が設けられており、
前記モーター制御部は、
制御対象の駆動モーターを回転させる制御信号を出力した時点から所定時間の経過後の前記駆動モーターの電流値と、予め設定された基準電流値との比較に基づいて前記第1の種類の異常を検出する一方、
制御対象の駆動モーターの電流値に基づいて前記駆動モーターの負荷情報を算出するとともに積算し、得られた積算値と基準積算値との比較に基づいて前記第2の種類の異常を検出することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記モーター制御部は、前記基準電流値として、前記所定時間の経過後の前記駆動モーターの目標電流値と、前記駆動モーターの回転数に応じて定められる最大電流値のいずれか低い方を用いることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記モーター制御部は、制御対象の駆動モーターの電流値iと、電流熱量係数αと、放熱量定数βにより表される負荷情報a=i2α−βを算出するとともに負荷情報aの積算値Aを算出し、負荷情報aの積算値Aが、予め定められた基準積算値AEよりも大きいときに前記駆動モーターの過負荷を検出することを特徴とする請求項3又は4に記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−24968(P2012−24968A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163802(P2010−163802)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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