説明

記録装置

【課題】 印刷動作の前に自動で実施されるべき各種準備工程を印刷開始後に行うことによって生じる待ち時間を短縮し、操作性や操作感を損なうことなく生産性を向上させるとともに、各種準備工程を確実に実施することで印刷不良や故障を防ぐことのできる、ウォームアップ機能を提供する。
【解決手段】 あらかじめユーザーが入力した、印刷動作の前に自動で実施されるべきウォームアップ動作を構成する各種準備工程の組み合わせと順序、ウォームアップ動作が完了すべき日にち、曜日、および時刻をプリンタが記憶しており、ウォームアップ動作が完了すべき日にち、曜日、および時刻からこれらのウォームアップ動作を完了させるために要する時間を減じた時刻に、自動でウォームアップ動作を開始する。これによって、印刷動作の前に行うべきウォームアップ動作を、ユーザーが定めた時間までに自動で完了させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字ヘッドの動作を制御して印字する記録装置のウォームアップに関する。特にインクジェット方式の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに代表される記録装置においては、その性能を十分に活かすためには日々のメンテナンスや手入れが必要である。特に溶剤インクを使用したワイドフォーマットなどと呼ばれる大判のインクジェットプリンタにおいては、ヘッドのノズル詰まりなどを防止するため、頻繁に、時としては毎日のメンテナンスを要することがある。また、最適な出力画質を得るためには、各種の温度調整機構、具体的にはヒーターやファンなどを用いてインクや部品を適当な温度に保つことが必要となる。ある箇所では暖め、ある箇所では冷やし、最適な印刷条件を整えてやらなければ最適な出力画質は得られない。特に、しばらく放置した後の再印刷においては確実にこの条件を整える必要があり、往々にして夜間放置後の朝一番での印刷の前にはその準備として多くの工程が必要となる。昨今のプリンタは、これらの準備工程を自動で行うことが一般的である。
【0003】
準備工程は具体的には、次のようなものが挙げられる。
<キャップクリーニング>
ヘッドのノズル部を封止し、ノズルの乾燥を防ぐキャップ部は、インクが固着することでそのシール性が低下し、結果的にノズル面の乾燥をもたらす。この部分の清掃を手動、または自動で行う。
【0004】
<ヘッドクリーニング>
ヘッドノズル面からの吸引動作、ワイプ動作、などを組み合わせ、ヘッド内外に存在する異物などを取り除き、ノズルのメニスカス面を再生する工程。複雑かつ微妙なタイミングで各種動作を組み合わせており、長時間を要する工程である。
【0005】
<ヘッドウォームアップ>
ヘッドからのインク吐出に際して適当なインク粘度を確保するため、ヘッド内部のヒーターを用いて暖めたり、チックリングと呼ばれる非吐出動作でヘッドのアクチュエータを駆動して暖めたりする工程。低温環境下から行う場合には長時間を要することがある。
【0006】
<ペーパガイドヒータ、プラテンヒーターの昇温>
プラテンと呼ばれる印字面や給排紙部のペーパガイドのヒーターを暖め、メディアのシワ防止や吐出されたインクの乾燥性の向上を狙うもの。これも、低温環境下から行う場合には長時間を要することがある。
【0007】
<用紙のシワ取り動作>
朝一番においては、前夜からプリンタにセットしたままの用紙が少なからず吸湿していることがあり、印刷部でシワが発生していることがある。用紙のフィード、バックフィードを繰り返し行うことでこのシワをなくすことができる。
【0008】
<ノズル状態の確認>
ヘッドの各ノズルの状態を視認させる確認パターンがある。これを印字することで、ユーザーはノズル詰まりや偏向を把握でき、その後、ヘッドクリーニングを繰り返すかを判断できる。
【0009】
<印字調整>
印字画質を最高な状態に保つためには、各種補正パラメータ、すなわち用紙送り量やキャリッジ往復動作の際の往復着弾位置補正値、各ヘッド間の物理的な位置補正値などが適切に把握されている必要がある。これらは個別の確認パターンを印字することで確認できる。
【0010】
また、プリンタによってはカメラやセンサを用いて確認パターンをセンシングし、これらの補正値を自動で適切に保つものがある。ただし、自動補正動作には多くの時間を必要とする。
【0011】
記録装置は、長時間印字を続けていると、ヘッドのノズル近傍の汚れ、乾燥や気泡の混入など、諸々の影響によって吐出状態が不安定になってくる。従来、これらの原因による印字不良を防ぐため、ある周期で自動的にヘッドクリーニング動作を行うことが多かった。クリーニング動作を行うタイミングとしては、ある印刷量を経る都度行うものや、印刷終了後からの放置時間に応じたもの、などが考えられる。
【0012】
例えば特開2007−237564号公報には、周期的にクリーニング動作を行う場合に、前回実施したクリーニング動作からの時間を累計し、一定値以下であった場合には、印刷前のクリーニング動作を行わず、印刷開始時の待ち時間を短縮させる技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−237564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしこの従来技術では、前回のクリーニング動作からの経過時間が長ければ、印刷前にクリーニング動作による待ち時間が発生してしまい、たとえば前週の金曜日に印刷を終了した後、翌月曜日の朝一番にユーザーが印刷を開始したとしても、必ずクリーニング動作が入ってしまう。
【0015】
また、各種ヒーターの昇温などその他にも実施しなければならない準備工程が多々あり、これらの準備工程が自動で行われるとしても、結局その間の待ち時間は発生してしまう。これらは、生産性の低下とともに、ユーザーの操作性、操作感の悪化をもたらす。
【0016】
また、待ち時間を短縮するために、用紙のシワ取り動作を怠ったまま印字を開始してしまうことでジャムの発生をまねいてしまい、少なからずそれまでの印刷結果が無駄になるほか、ヘッドのノズル面を用紙と擦ることによってヘッドの故障を招くことがある。
【0017】
同様に、待ち時間を短縮するために、準備工程そのものを省いて印刷を開始してしまうことがある。この場合には、ノズルの吐出不良などの印字不良を招くことがあり、やはりそれまでの印刷結果が無駄になるほか、やり直しをすることで、結果的に生産性の低下につながってしまう。
【0018】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、記録装置において印刷動作の前に自動で実施されるべき各種準備工程を印刷開始後に行うことによって生じる待ち時間を短縮し、操作性や操作感を損なうことなく生産性を向上させるとともに、各種準備工程を確実に実施することで印刷不良や故障を防ぐことのできる、ウォームアップ機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の記録装置は、印字ヘッドを走査させながら記録媒体にインクを吐出し、前記記録媒体に画像を形成する記録装置において、あらかじめユーザーが入力した、印刷動作の前に自動で実施されるべきウォームアップ動作を構成する各種準備工程の組み合わせと順序、前記ウォームアップ動作が完了すべき日にち、曜日、および時刻を記憶する記憶手段と、時刻をカウントする時計手段とを有し、前記各種準備工程は前記ウォームアップ動作を構成する前記各種準備工程の組み合わせと順序に応じて前記動作時間が異なり、予め前記記憶手段に前記ウォームアップ動作の組み合わせと順序に応じた動作時間が記憶されており、前記ウォームアップ動作を完了させるために要する時間として前記入力された前記各種準備工程の組み合わせと順序に対応する前記動作時間を前記記憶手段から取得し、前記入力された前記ウォームアップ動作が完了すべき日にち、曜日、および時刻から、前記取得された前記動作時間を減じて求めた結果の開始時刻に、自動で前記入力されたウォームアップ動作を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、印刷動作の前に自動で実施されるべきウォームアップ動作、すなわち各種準備工程を印刷開始後に行うことによって生じる待ち時間を短縮し、操作性や操作感を損なうことなく生産性を向上させるとともに、ウォームアップ動作を確実に実施することで印刷不良や故障を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、ヘッドクリーニング機構を構成する一例の概略図である。
【図3】図3は、用紙搬送機構と各種ヒーターを構成する一例の概略図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態を適用したウォームアップ動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態による記録装置及び記録方法について、図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、記録装置1はインクジェット方式のプリンタである。記録装置1は、装置全体の動作を制御する制御部20を有する。制御部20は、制御部20内の処理動作を統括して制御する制御手段のCPU21、印字動作を行うプログラム等が予め記憶された記憶手段のROM22、印字動作の実行中に各制御部が作業記憶領域として用いる記憶手段のRAM23、電源切断直前の設定値やデータを保存しておく不揮発性メモリで構成する記憶手段のEEPROM24、操作パネル44において操作された状態を読み取るとともに、操作パネル44が備える表示部に情報表示を行う操作パネル制御部25、記録媒体に対して、印字ヘッド41によって印字動作を制御する制御手段である印字制御部26、キャリッジ機構42の動作を制御する制御手段であるキャリッジ制御部27、用紙を搬送するために、グリッドローラ等から構成する用紙搬送機構43の動作を制御する制御手段である用紙搬送制御部28、印字する画像を記憶する画像メモリ30、画像メモリ30に対して書き込み/読み出し制御をする画像メモリ書き込み/読み出し制御部31、ホストコンピュータと画像データや制御コマンドの入出力をするインターフェースであるホストI/F部29、を有する。
【0023】
印字制御部26とキャリッジ制御部27は、リニアエンコーダ45により読み取ったキャリッジの位置に基づいて、印字位置の連携を取りながら印字動作を制御する。
【0024】
図2は、ヘッドクリーニング機構を構成する一例の概略図である。キャリッジ機構42には4色分の印字ヘッド41が取り付けられている。キャリッジ機構42のホームポジションにおいては、キャップ機構201が各ヘッドの下部に位置しており、これを上方向に移動させることで、印字ヘッド41をキャップ、すなわち封止できる。この状態でキャップ機構201に内蔵されている図示しない吸引ポンプや大気開放弁を組み合わせて動作させることで負圧を発生し、印字ヘッド41内のインクを吸引できるのである。これによって、印字ヘッド41内の微量のゴミや気泡をインクとともに排出することが出来る。吸引したインクは廃液ボトル202に溜まる。プラテン203を挟んでキャリッジの可動領域の反対側にはワイプ機構204を備えている。これは、キャリッジ機構42をこの位置まで移動させたときに、モータ206などの回転動作を用い、ワイパブレードを印字ヘッド41のノズル面上で擦って、余計なインク滴や付着した汚れなどを取り除くものである。ワイパブレードは、やはり回転運動によって、その下部に設置されたパン205内の洗浄液によって清掃される。実際のヘッドクリーニング動作は、吸引に要する時間や発生する負圧、ワイプ時の速度や回数などを最適なものにした組み合わせ動作となっている。これによって、適切なヘッド回復を行っている。
【0025】
図3は、用紙搬送機構と各種ヒーターを構成する一例の概略図である。これは、プリンタの側面から見た図である。用紙ロール308からプリンタに給紙され、グリッドローラ軸305に取り付けられたグリッドローラ306とピンチローラ307に挟まれている。グリッドローラ軸の回転運動によって用紙301は搬送され、排紙方向へと送られる。この間、リアペーパーガイド304、プラテン303、フロントペーパーガイド302に支持される。リアペーパーガイド304内にはリアヒーター、プラテン303内にはプラテンヒーター、フロントペーパーガイド302内にはフロントヒーターが内蔵されており、これらを昇温し適当な温度に保つことで、用紙301上にてインク着弾後の乾燥性を向上させたり、用紙301にシワが入ることを防止したりしている。また、印字ヘッド41内には図示しないヒーターが内蔵されており、吐出する前のインクを温め、粘度を低下させることで、安定的な吐出状態を維持する。印字ヘッド41に至るまでのインク流路においてもヒーターによる温度コントロールをする場合がある。図示しないが、供給チューブやサブタンク、インクタンク、それぞれの部位において温度コントロールを行うことで、システム全体の安定性を図る場合がある。このほか、グリッドローラ軸305の回転方向を正逆頻繁に切り替えることによって、用紙301の搬送方向を給紙、排紙と交互に切り替えることで、用紙301のシワ取り動作を行う。
【0026】
本発明の一実施形態を適用したウォームアップ動作の一例を説明する。まず、ユーザーは毎週月曜日から金曜日までの、午前9時から午後6時まで印刷を行うものと仮定する。すなわち、土曜日と日曜日は印刷を行わない。また、印刷前に実施すべきウォームアップ動作を構成する準備工程は、「1.ペーパガイドヒータ、プラテンヒーターの昇温」「2.用紙のシワ取り動作」「3.ヘッドウォームアップ」「4.ヘッドクリーニング」「5.ノズル状態の確認」の5種類とする。これらに要する時間は、その時点での周囲環境温度によっても変化する可能性がある。たとえば各種ヒーターの昇温については昇温開始時の温度が低ければ、目標温度に到達するまでの時間は長い。このため、考えられ得る最大の所要時間があらかじめ定義されている。ここでは上記1〜5のウォームアップ動作を構成する準備工程の所要時間はそれぞれ、5分間、1分間、5分間、10分間、1分間、とする。これらの所要時間はあらかじめプリンタのROM22もしくはEEPROM24内に記憶されている。ユーザーは、あらかじめ、上記1〜5までの準備工程をその順序で実施することを操作パネル44で入力してある。また、ユーザーは毎週月曜日から金曜日までの午前9時までに、これらの準備工程を完了させる旨も入力してある。
【0027】
この後は、具体的なウォームアップ動作の手順を図4のフローチャートを用いて説明する。ステップ1にて、ウォームアップ動作を構成する全準備工程の所要時間を計算する。この場合では、1〜5の各準備工程の所要時間の総和であり、22分間となる。ステップ2で、ウォームアップ動作を完了すべき時刻からこのウォームアップ時間の所要時間を減ずる。ここでは、午前8時38分となる。ステップ3では現在の時刻、日にちを監視する。これは、プリンタの電源がオンである限り、一定周期でCPU21が監視するものである。すなわちプリンタに内蔵の時計を監視するものである。ステップ4でウォームアップ動作実施対象の日にちかどうか、具体的には毎週月曜日から金曜日までの間であるかどうか、ステップ5で開始時刻であるかどうか、具体的には午前8時38分であるかどうかを判定する。これらの両者が合致しなければ、ステップ3へ戻る。ウォームアップ動作の開始日であり、開始時刻と判定された場合、ステップ6でまず、印字中か、もしくはメンテナンス中かどうかを判定する。ユーザーが印字やマニュアル作業によるメンテナンスを行っている場合に自動でウォームアップ動作を実施することは好ましくないため、仮にこの条件に合致した場合にはウォームアップ動作を実施せずに終了する。ステップ7では、実施するウォームアップ動作を構成する各準備工程の番号を格納する変数nを1に初期化する。ステップ8にて、変数nにて示される番号で登録されている準備工程を実施する。この場合は「ペーパガイドヒータ、プラテンヒーターの昇温」がこれに相当する。これが完了するとステップ9にて変数nをインクリメントしn=2となる。ステップ10にて、変数nが登録した準備工程の総数を超えていないかどうかを判定する。ここでは1〜5の準備工程を登録してあるため、まだnはその総数をこえていない。ここでステップ8に戻り、n番目、すなわち2番目の「用紙のシワ取り動作」を実施する。この要領で、変数nの値をひとつずつインクリメントしながら、3〜5番目の準備工程も実施していく。n=6のときにはステップ10では登録した準備工程の総数を変数nがこえているから、ステップ11、すなわち印字スタンバイ状態へと移行する。以上によって、ユーザーがウォームアップ動作を完了させるべきとして登録した午前9時に、登録したすべての準備工程を完了させることができ、ウォームアップ動作は完了した。
【0028】
ウォームアップ動作を構成する各準備工程の中には、並行して動作可能であるものがある。たとえば、上記の例においては「ペーパガイドヒータ、プラテンヒーターの昇温」と「ヘッドウォームアップ」は単にヒーターを昇温し、目標温度に到達するまで待つものであるから、逐次的に処理する必要はない。ユーザーがこれら特定の準備工程を連続して位置する順序で登録した場合には、プリンタは自動的にこれらの処理を並行して行い、所要時間の短縮を図ってもよい。また、各準備工程に要する時間をプリンタが自動で計算し、ウォームアップ動作開始時刻を調整し、所要時間の短縮を図ってもよい。この場合には、各準備工程の最大所要時間の和を、ウォームアップ動作の所要時間として仮決定しておき、それに基づき計算されたウォームアップ動作開始時刻において、プリンタの周囲環境温度を測定し、改めてウォームアップ動作の所要時間を再計算することが考えられる。これによって、必要最低限の時間でウォームアップ動作を完了させることができ、各種ヒーターの駆動などに要する電力を無駄に消費しなくて済む。
【0029】
ウォームアップ動作を構成する準備工程、ウォームアップ動作を完了させるべき日にち、曜日、および時刻等は、操作パネル上から登録することができるほか、修正や削除、準備工程の並び替えや挿入が容易に実施できることが好ましい。また、自動でウォームアップ動作を実施させるか否かも、あらかじめユーザーが操作パネル上で設定できるようにしておいても良い。さらに、登録できるウォームアップ動作とその実施日時を複数個設定できるようにしても良い。これは、たとえば毎週火曜日から金曜日はウォームアップ動作1と呼ぶ通常のウォームアップ動作を行うのに対し、毎週月曜日にはウォームアップ動作2と呼ぶ週末の土曜日、日曜日にプリンタを動作させなかった分より強力なヘッドクリーニング動作を含んだウォームアップ動作を実施させたいときなどに有効である。上記では曜日によるウォームアップ動作実施日時の設定例を挙げたが、もちろんこれは某月某日というような日付を直接設定する方法でも良い。いずれにせよ、プリンタ内部には実際のカレンダーを記憶しており、曜日やうるう年の管理が可能であることが前提となる。すなわち、単に曜日による判定だけでなく、祝日や祭日を含めた判定を行うことが好ましい。すなわち予め休みの日を設定し、例えばその日にはウォームアップ動作を実施しないなど、ウォームアップ動作の準備工程を選択的に実施する設定が可能である。
【0030】
また、それまでのプリンタの稼動状況によって、ウォームアップの準備工程を変えても良い。直前まで印刷動作を行っていた場合に、決められた時刻になったからと言って、完全なウォームアップ動作を行うのは冗長である。この場合は、準備工程から「ヘッドクリーニング」を削除しても良い。また、一定日数以上プリンタが稼動していない場合には、プリンタの使用頻度が低いため、毎日決められた時刻にウォームアップ動作を行う意味はない。この場合は自動的に、周期的なヘッドメンテナンス以外の準備工程をウォームアップ動作から省くか、ウォームアップ動作そのものをOFFとしても良い。また、キャップの清掃を含むユーザーによるメンテナンス作業が長期間行われていないは、印刷中にノズル抜けなどの吐出不良が起こる可能性が高い。その場合は、ウォームアップ動作中に通常よりも強力なヘッドクリーニング動作を行うことが考えられる。また、プリンタの設置後、すでに長期間が経過しており、日常的に頻繁にユーザーによるヘッドクリーニング動作が行われている場合は、経時的な劣化や磨耗によってプリントヘッドが吐出不良を起こしやすい状態にあると言える。この場合も、ウォームアップ動作中に通常よりも強力なヘッドクリーニング動作を行うことが考えられる。さらに、朝一でユーザーがロールメディアの交換を行う頻度が高い場合には、準備工程の中にシワ取り動作を含ませる必要がない。よって、準備工程から「用紙のシワ取り動作」を削除することが考えられる。
【0031】
プリンタの動作開始時刻、停止時刻、動作内容をRAM23等のメモリに記憶しておく。そして、前回の稼動状況と、停止からの経過時間と、省略または追加するなどの変更する準備工程およびその動作時間とを関連付けて予めEEPROM24に記憶する。制御部20は、前回の停止からの経過時間から、EEPROM24から変更する準備工程とその動作時間を取得する。制御部20は、入力されている各種準備工程の組み合わせと順序からそれらの対応する動作時間をEEPROM24から取得する。そして稼動ウォームアップ動作が完了すべき日時から入力されている各種準備工程の組み合わせと順序に応じた動作時間を減算して開始時刻を求め、さらに、変更する準備工程の時間を加算または減算などの演算をして修正された変更後の開始時刻を取得する。また、入力されている各種準備工程の組み合わせと順序から、変更する準備工程を削除または追加する。制御手段は、修正された開始時刻に修正されたウォームアップ動作を開始する制御を行う。
【0032】
以上で示したウォームアップ動作を構成する準備工程、ウォームアップ動作を完了させるべき日にち、曜日、および時刻等の登録、修正、削除は、ホストコンピュータから行えるようにしても良い。また、複数のウォームアップ動作のパラメータをホストコンピュータ上に保存できるようにしても良い。
【0033】
また別の態様として、ROM22に環境温度毎の、例えば1℃毎の、各準備工程の完了するまでに要する最大時間を記憶したテーブルを予め記憶する。予め実験によりこの時間を取得し、予め記憶しておく。制御部20に温度センサが接続され、記録装置1の置かれている環境の温度を計測する。この計測結果の温度に基づき、ROM22から一番近い環境温度における各準備工程の完了するまでに要する最大時間を取得する。このようにすることで、環境温度に基づいて最適な時間を取得することができるので、環境温度が変化しても確実に、所望の時刻に完了するようにウォームアップ動作を実施することができる。
【0034】
以上説明したように、印刷動作の前に行うべきウォームアップ動作を、ユーザーが定めた時間までに自動で完了させることが可能となり、これまで印刷開始前に発生していた長い待ち時間をなくすことができる。これによって、ユーザーの操作性や操作感を損なうことなく生産性を向上させるとともに、ウォームアップ動作を確実に実施することで印刷不良や故障を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、インクジェット式プリンタなどの記録装置に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・記録装置、20・・・制御部、21・・・CPU、22・・・ROM、23・・・RAM、24・・・EEPROM、25・・・操作パネル制御部、26・・・印字制御部、27・・・キャリッジ制御部、28・・・用紙搬送制御部、29・・・ホストI/F部、30・・・画像メモリ、31・・・画像メモリ書き込み/読み出し制御部、41・・・印字ヘッド、42・・・キャリッジ機構、43・・・用紙搬送機構、44・・・操作パネル、45・・・リニアエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドを走査させながら記録媒体にインクを吐出し、前記記録媒体に画像を形成する記録装置において、
あらかじめユーザーが入力した、印刷動作の前に自動で実施されるべきウォームアップ動作を構成する各種準備工程の組み合わせと順序、前記ウォームアップ動作が完了すべき日にち、曜日、および時刻を記憶する記憶手段と、現在時刻をカウントする時計手段とを有し、前記各種準備工程は前記ウォームアップ動作を構成する前記各種準備工程の組み合わせと順序に応じて前記動作時間が異なり、予め前記記憶手段に前記ウォームアップ動作の組み合わせと順序に応じた動作時間が記憶されており、
前記ウォームアップ動作を完了させるために要する時間として前記入力された前記各種準備工程の組み合わせと順序に対応する前記動作時間を前記記憶手段から取得し、前記入力された前記ウォームアップ動作が完了すべき日にち、曜日、および時刻から、前記取得された前記動作時間を減じて求めた結果の開始時刻に、自動で前記入力された前記ウォームアップ動作を開始することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ウォームアップ動作を完了させるために要する時間は、前記ウォームアップ動作を構成する前記各種準備工程をそれぞれ完了させるために要する最大時間の総和であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
周囲環境温度を計測する温度センサをさらに有し、
前記各種準備工程は前記周囲環境温度によって前記動作時間が異なり、前記記憶手段は前記環境温度毎の前記各種準備工程の前記動作時間を予め記憶し、
前記温度センサによって計測された温度における前記ウォームアップ動作を完了させるために要する時間とし前記入力された前記各種準備工程の組み合わせと順序に対応する前記動作時間を前記記憶手段から取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記入力された前記ウォームアップ動作を構成する前記各種準備工程の組み合わせと順序の内の複数の前記各種準備工程が並行して実施可能であるときは、複数の前記各種準備工程を並行に実施することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前回の印刷動作の停止時刻を前記記憶手段に記憶し、
前記記憶手段は印刷動作の停止時間と該停止時間に応じて変更する前記各種準備工程とその動作時間を関連付けて予め記憶しており、
前記停止時刻からの経過時間を演算し、該演算結果の前記経過時間を前記停止時間としてその時間に基づいて前記記憶手段から変更する前記各種準備工程と前記動作時間を取得し、該取得した前記変更する前記各種準備工程に基づいて前記入力された前記ウォームアップ動作を構成する前記各種準備工程の組み合わせと順序を変更し、前記開始時刻と前記取得した前記動作時間とから前記開始時刻を変更する演算をし、該変更後の前記開始時刻に、変更後の前記入力された前記ウォームアップ動作を開始することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記ウォームアップ動作が完了すべき日にち、曜日、における前記ウォームアップ動作は予め前記記憶手段に記憶されたカレンダーと該カレンダーに関連付けて記憶された動作条件に基づき、前記ウォームアップ動作の実施可否を制御することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記ユーザーが入力する操作パネルを更に有し、前記印刷動作の前に自動で実施されるべき前記ウォームアップ動作のパラメータは前記操作パネルから登録、修正、削除の入力を行うことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
ホストコンピュータと通信をするインターフェースを更に有し、前記印刷動作の前に自動で実施されるべき前記ウォームアップ動作のパラメータは前記ホストコンピュータから登録、修正、削除の入力を行うことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−61847(P2012−61847A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159992(P2011−159992)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】