評価発振器により擬似位相コヒーレントに励起可能な送信発振器を備えるレーダー
レーダーが信号の送信する送信手段と、送信された信号の反射を受信する受信手段とを有する装置であって、送信手段は送信発振器を有する。ここで受信手段は評価発振器を有し、送信発振器は評価発振器により、および/または評価発振器は送信発振器により擬似位相コヒーレントに励振可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
工業および交通で使用するためのレーダーセンサは多種多様の形態で公知である。パルスレーダーとしてのレーダーセンサは、US3117317,US4132991,およびUS4521778に記載されており、いわゆる連続波レーダーまたはCWレーダー(CW=連続波)として構成されている。パルスレーダーは対象物とレーダーとの間の距離を、短いパルスのレーダーから対象物までの往復の伝搬時間を測定することによって検出する。CWレーダーはこれに対して、送信された信号と、反射され受信された信号との間の位相差を評価する。信頼性のある測定値を比較的に大きな測定領域で検出するために、CWレーダーは通例、できるだけ大きな周波数領域にわたって周波数可変である。最もよく知られ最も広く普及しているこの形式のレーダーは、FMCWレーダー(FMCW=周波数変調連続波)である。
【0002】
とりわけ自由空間適用では、レーダーセンサの送信出力を所期のように低下できることが所望される。なぜなら無線許可規則が、放射される送信出力、およびとりわけ送信過程と結びついたノイズ放射が所定のレベル以下に留まることをしばしば要求するからである。
【0003】
EP1051639B1には、パルス制御されるFMCWレーダーが紹介されている。このFMCWレーダーは、送信信号をクロッキングするパルスシーケンスを選択することによって、その高周波出力電力を調整することができる。
【0004】
EP1051639B1に開示されたレーダーの、従来技術による改善回路形態が図1に示されている。ここに示されたレーダーは、通常のFMCWレーダーと同じように、電圧制御される発振器VCO、方向性結合器RK、アンテナANT、およびミクサMIX1を有する。同様に、EP1051639B1に示されるように、このレーダーはさらにクロック論理回路CLKを有し、このクロック論理回路により送信信号がスイッチSWTXを介して周期的にオン・オフされる。例えばスイッチを1MHzの反復周波数によりそれぞれ1nsの間、閉鎖すると、平均送信出力は連続動作の場合に対して60dBだけ低下する。デューティ比を変化することによって、広い範囲で任意の別の値を調整することができる。
【0005】
さらにこの改善回路形態は第2のミクサMIX2を有する。アンテナANTを介して受信された信号は、送信経路に存在するクロック論理回路CLKによりクロッキングないしは振幅変調され、図6(左)に示したスペクトルを有する。受信信号とMIX2のsCLK(t)との混合により、この変調が取り除かれ、測定信号s1(t)はベースバンド、すなわち周波数0を中心にする周波数領域の信号s2(t)に変換される。
【0006】
従って比較的に高い混合積を抑圧するローパスフィルタTPNFによるフィルタリングの後に、通常のようにクロッキング駆動されないFMCWレーダーが得られる。
【0007】
有利には図1のコンセプトでは、クロック論理回路CLKのクロックレートが広い領域で変化することができる。変化領域の幅は、BPZFとBPCのバンド幅だけによって制限される。従って平均送信出力のレベルも広い領域で調整することができ、そのときに測定信号の形状ないしその位相が変化することもない。単に測定信号のSN比だけが変化する。
【0008】
図1の実施例の欠点は、ここではスイッチSWTXが高周波スイッチでなければならないことである。
【0009】
高周波スイッチは一方では非常に面倒であり、他方では高いスイッチコントラストを実現するのが非常に困難である。その結果、図1の回路による電力減少は実際にはしばしば制限された範囲内だけとなる。
【0010】
この問題を解決し、回路コストの点で格段に簡素化された従来技術による変形実施例が図2に示されている。この変形実施例では、スイッチSWTXによって発振器自体がスイッチオン・オフする。このことは例えば、供給電圧のオン・オフによって行うことができる。発振器が発振しなければ、発振器は信号出力を形成せず、スイッチコントラストは最大である。さらに回路を簡単にするために、方向性結合器の代わりにいわゆるトランスミッションミクサTRMIXを使用する。
【0011】
しかし図2の回路の欠点は、最大測定領域、または最小平均送出電力、またはレーダーの最小測定速度がこの形式の切り替えにより制限されることである。すなわち一方でスイッチSWTXはどのような場合でも、予期される最大距離ないしは最大設定距離からのすべての信号成分が再び受信されるまでは閉じたままでなければならない。従って、パルス持続時間、すなわちスイッチが閉じている時間、ないしは発振器がスイッチオンされている時間は、最大信号伝搬時間よりも格段に大きくなければならない。測定領域が例えば15mの場合、最大信号伝搬時間は70nsとなり、従ってここでは100nsを越えるパルス持続時間から初めて意味のある測定値を期待できる。他方で平均出力をディーティ比により所望のように低減することは、スイッチオン時点間の休止を相応に長くすることによって保証される。しかしこのことは場合により、サンプリング定理に矛盾する。すなわち、レーダーの各スイッチオン期間はサンプリング値の形成に相応し、このサンプリング値は連続的に駆動されるFMCWレーダーの測定信号のサンプリングに相応する。従って休止期間が過度に大きい場合、高い周波数を評価することができない。そのため、測定信号周波数が比例する対象物の距離は、周波数ランプの変化速度が設定されている場合、所定の間隔を上回ることができない。それでもなお、測定領域をこの範囲を超えて拡大すべき場合には、変化速度を低減し、これにより測定の測定持続時間を拡大しなければならない。
【0012】
本発明の課題は、前記装置を改善し、その放射特性と動作特性をとりわけ有利に制御することができるシステムを提供することである。
【0013】
この課題は、独立請求項に記載された本発明により解決される。有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0014】
相応にして、装置は電磁信号を形成および送信するための送信手段と、送信された電磁信号の反射を受信するための受信手段とを有する。ここで送信手段は、電磁信号を形成するための送信発振器を有し、受信手段は電磁評価信号を形成するための評価発振器を有する。この電磁評価信号は、送信された電磁信号の受信された反射と比較され、とりわけ混合される。ここで送信発振器と評価発振器は次のように接続および/または配置されている。すなわち、送信発振器が、発振する評価発振器との電磁的交互作用によって、擬似位相コヒーレントに励振されるか、ないしは擬似位相コヒーレントに関連付けられるように接続および/または配置されている。
【0015】
このことにより送信発振器は、必要な場合だけスイッチオンすれば良く、これによりエネルギー消費および平均送信出力が所望のように低減される。また、擬似位相コヒーレントな励振ないし関連付けによって、常に十分な位相コヒーレントが送信発振器と評価発振器との間で保証され、さらに送信発振器により発生された電磁信号並びにその反射と、評価発振器により発生された評価信号との間でも保証される。
【0016】
択一的にまたは補充的に、別の目的のためにも、評価発振器を送信発振器により擬似位相コヒーレントに励振することができる。
【0017】
ここで擬似位相コヒーレントとは、本発明の構成により、送信発振器と評価発振器との間の位相差が小さくなるが、しかし真のコヒーレントの場合のように必ずしも位相差が消失するものではないことを意味する。ここで位相差が小さいという概念は、意図する通信タスクないし測定タスクを基準にすべきである。小さな位相差に対する限界として、例えばしばしば値π/10、すなわち約20゜が使用される。このように非常に小さな位相差しか備えていない信号を、以下、擬似位相コヒーレントと称し、このコヒーレントが発生する時間間隔をコヒーレント時間長と称する。
【0018】
擬似位相コヒーレントを実現するための基本思想がDE10032822A1に記載されており、発振器がスイッチオン後にまず不安定な平衡状態となり、外部エネルギー供給によって初めて振動励振されることにある。この初期のきっかけのあとに初めて、フィードバックを介して振動が復活する。通常は例えば熱的ノイズがこの最初のきっかけを送出する。すなわち、発振器はランダムなフェーズと振幅により振動し、その共振回路により設定された周波数で発振する。しかし発振器に、スイッチオンの時に外部励起信号が注入されると、発振器はランダムに振動せず、注入された信号の位相に対して規定的に振動する。注入された信号と発振器信号との間の位相差が約20°より小さい限り、2つの信号は擬似位相コヒーレントである。
【0019】
発振器が、スイッチオンフェーズで、刺激信号の位相経過に追従しようとする特性は、あらゆる発振器の基本的物理特性である。しかしこの特性が本発明では2つの発振器を擬似コヒーレントに相互に関連付けるために、ないしは送信発振器を評価発振器に対して擬似コヒーレントに駆動するために、または択一的に評価発振器を送信発振器に対して擬似コヒーレントに駆動するために使用される。
【0020】
擬似位相コヒーレントな励振特性のために、発振器は次のように電磁的に相互に結合される。すなわち、送信発振器が評価発振器によって、および/または評価発振器が送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能であるように相互に結合される。このことは、発振器を線路手段により相互に接続することにより行われる。また発振器が相互に近接して配置されており、とりわけ相互にシールドされていなければ、通常、一方の発振器から他方の発振器へのクロストークが発生する。
【0021】
有利には擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器は常に擬似位相コヒーレントに励振可能な状態におかれる。このことは、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器を周期的にスイッチングするための手段によりクロックレートで発振器をオン・オフすることにより行われる。一般的にクロックシーケンスは、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器のスイッチオン持続時間が、擬似位相コヒーレントに励振可能な2つの発振器間で発生する擬似位相コヒーレントの持続時間よりも短く、またはこれに等しくなるように選択すべきである。擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器がスイッチングされるクロックの反復周波数はとりわけ、測定信号の最大で予期される周波数よりも格段に大きく、とりわけ5倍以上の大きさである。
【0022】
ここで擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器のスイッチオン持続時間は、擬似位相コヒーレントに関連付けられた2つの発振器が定常発振状態にあるときの、それらの最大予想周波数差の逆数のオーダーにあるか、またはその逆数よりも小さい。
【0023】
送信発振器および/または評価発振器は周波数が可変である。従ってこの構成体を周波数変調されるパルスレーダーとして、ないしはクロッキングされるFMCWレーダーとして駆動することができる。
【0024】
とりわけ近距離に適する変形実施例では、一方の発振器の周波数が可変であり、それぞれ他方の発振器は固定周波数発振器である。
【0025】
この装置はとりわけ、距離測定のための装置および/またはレーダー、とりわけ周波数領域が可変であるレーダー、および/または近距離レーダーと遠距離レーダーの2つの回路状態を切り替えることのできるレーダーである。
【0026】
とりわけ距離測定のための測定方法では、
・送信発振器が評価発振器により、および/または評価発振器が送信発振器により擬似位相コヒーレントに励振され、
・送信発振器により送信すべき信号を形成し、
・この信号を送信し、
・送信された信号の反射を受信し、
・評価発振器により評価信号を形成する。
【0027】
送信された信号の反射は、とりわけ評価信号を考慮して測定で評価される。ここで評価信号は有利には送信された信号の反射と混合される。
【0028】
さらに有利には、送信発振器は評価発振器により、および/または評価発振器は送信発振器により周期的に常に擬似位相コヒーレントに励振される。このために擬似位相コヒーレントに励振された発振器はクロックにより切り替えられ、例えばスイッチオフにより一度遮断され、スイッチオンにより再び励振可能とされる。
【0029】
本発明の方法の別の有利な構成は、装置の有利な構成と同様である。
【0030】
本発明のさらなる利点および特徴は、実施例の説明から明らかとなる。
図1は、従来技術のレーダーを示す図である。
図2は、従来技術による第2のレーダーを示す図である。
図3は、送信手段と受信手段を備える装置を示す図である。
図4は、送信手段と受信手段を備える択一的装置を示す図である。
図5は、送信手段と受信手段を備える別の装置を示す図である。
図6は、測定信号経路の種々の段における測定信号のスペクトルを示す図である。
図7は、送信手段と受信手段を備えるさらに別の装置を示す図である。
図8は、復調器を示す図である。
図9は、択一的復調器を示す図である。
図10は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定スペクトルを比較して示す図である。
図11は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定結果を比較して示す図である。
図12は、変換器の実施例を示す図である。
図13は、関連付けられた信号源の変形を示す図である。
【0031】
図2に対して示された問題は、図3の回路により解決される。この回路は、評価発振器として用いられる発振器VCOの他に別の発振器、すなわち送信信号の形成に用いられる送信発振器LOを含んでいる。重要なことは、評価発振器とVCOと送信発振器LOが結合部QPKを介して擬似的に位相固定して、または擬似位相コヒーレントに相互に接続されていることである。送信発振器LOを周期的にスイッチオンし、その間、VCOからの信号がこれにクロストークすれば、送信発振器LOは常に、評価発振器VCOにより設定された位相で発振する。
【0032】
この結合QPKを保証するために、2つの発振器にルーズに結合された接続線路が設けられている。しかし通常、発振器出力の放射は常に存在しているので、特別の回路技術的装置を設けて、発振器を相互に結合する必要はなく、発振器を相互にシールドしなければ良い。すなわち電気的に閉じた固有の金属カバーを設ける必要はない。評価発振器VCOの送信発振器LOへのクロストークは、もちろんアース線路または給電線路を介しても行われる。発振器の選択の際にも、特別の要求に注意する必要はない。通常の高周波発振器を使用することができるが、2つの発振器のうちの一方を本発明では適切なクロックシーケンスで周期的にスイッチオン/オフしなければならない。これは前期のように2つの発振器の擬似位相コヒーレントな結合を保証するためである。このために有利には、外部からではなく格段に強力な第3の信号を接続された送信発振器LOに作用させ、この送信発振器が評価発振器VCOの信号に対してではなく、この第3の信号に対してコヒーレントに発振するようにする。
【0033】
発振器LOとVCOの周波数が同じであれば、2つの擬似コヒーレントな出力信号間の僅かな差を定義的に表す直流電圧に対してs(t)が得られる。送信発振器LOを、それぞれ非常に短い時間の間、周期的にスイッチオンすれば、2つの発振器間の擬似位相コヒーレンスはスイッチオン期間全体にわたり存在する。すなわちミクサMIX2の信号s3(t)は、発振器の信号をスイッチにより同じクロックでオン・オフした場合に生ずることとなる信号とほぼ同じである。
【0034】
送信発振器LOの他に、図13に示すように、付加的に評価発振器VCOをオン・オフすることができる。ここでこの評価発振器の立ち上がりは、送信発振器LOがスイッチオンされる瞬時にはほぼ終了していなければならず、検出すべき最大距離領域からの反射がセンサに到着したときに初めて評価発振器を再びスイッチオフすることができる。評価発振器VCOのオン・オフにより、送信信号と受信信号との間の位相条件は、評価発振器VCOを持続的にスイッチオンした場合の測定に対して変化しない。しかしエネルギー消費の理由からこの動作形式は有利である。
【0035】
図3の構成では、送信アンテナANTTXPと受信アンテナANTRXが別個に構成されていることは重要ではない。同様に個々の受信アンテナには方向性結合器またはサーキュレータを介して給電することができる。PLLシンセサイザないしはPLLをVCOの制御に使用することも重要ではない(PLL=位相制御ループ)。ここで単にセンサをマイクロプロセッサMPにより完全に制御できればよい。
【0036】
発振器LOが固定周波数発振器であり、かつVCOが固定周波数発振器であれば、一定の周波数ずれと、測定信号s3(t)の振幅重み付けsin(x)/xが生じる。しかし両者の作用は計算的に簡単に測定信号評価で考慮することができる。
【0037】
図1の回路と同様に図4の回路は同じ測定信号を送出する。ここで周波数可変送信発振器VCO2は、周波数可変評価発振器VCO1と同じ構成とすることができ、発振器の2つの制御入力端は相互に接続される。同様に図3のように、送信発振器VCO1と評価発振器VCO2は、擬似的に位相固定した、ないしは擬似位相コヒーレントな結合部QPKを介して相互に結合される。
【0038】
送信発振器VCO1と評価発振器VCO2とが同じ構造であれば、2つの発振器VCO2とVCO1の周波数は可変領域全体にわたって、すなわちいずれのスイッチオン時点でも実質的に正確に一致する。2つの発振器は調整領域全体にわたって擬似コヒーレントに同じ周波数で発振するから、信号s4(t)が、FMCWレーダーが連続駆動される場合と同じように得られる。ここでは単にS/N比が減少するだけである。
【0039】
ここでも図13に従い評価発振器を同様に切り替え可能に構成することができ、これによりセンサの低エネルギー消費が達成される。
【0040】
適切なパラメータは、発振器の中心周波数が例えば6GHzまたは26GHzの近傍となるように選択される。発振器VCO1は例えば1〜10ms内で約1GHz(またはそれ以上)のバンド幅にわたって離調する。CLKのクロックレートは有利には1〜10MHzの領域にすることができる。パルス持続時間は有利には100psから10nsの領域にある。
【0041】
さらに図3と図4のセンサの本発明の機能は、破線で示したように、図12の実施形態を備える周波数変換器UMSETがセンサに追加されても維持される。変換器は、図12の左に示すように、1つの固定周波数発振器HFOと、送信経路および受信経路にそれぞれ1つのミクサと、場合により1つのバンドパスフィルタを有する。バンドパスフィルタは場合により認可技術的理由から、不所望の混合積を抑圧するために必要である。固定周波数発振器HFOもまた、エネルギーの理由から切り替え可能に構成することができるが、ここでは発振器LOないしVCO1がスイッチオンされるときに十分に定常状態でなければならず、また最大検出距離領域からの反射がセンサに到達するときに初めてスイッチオフすることができる。択一的に変換を、図12の右に示すように、2つの別個の発振器HF01およびHF02により行うことができる。この2つの発振器は相互に擬似コヒーレントに結合されている。ここでもスイッチオフ時間を、コヒーレンスとエネルギー消費の点で最適化することができる。
【0042】
多機能レーダーとしての回路のさらなる構成が図5に示されている。例えばマイクロプロセッサMPからの切替信号SW-P/CWを介して、レーダーを2つの動作状態におくことができる。回路状態1でレーダーは、通常のFMCWレーダーとして全送信出力と相応に大きな到達距離と大きな感度により動作する。この動作形式ではマイクロプロセッサ制御を介して次のことが行われる:
a)スイッチSWTXが開放する。すなわち発振器VCO2は信号を形成しない。
b)発振器VCO1は周波数領域において、許容規則に合致する信号だけを形成する。すなわちFCC15によれば、24GHzから24.5GHzのISMバンドで放射される電界強度は250mV/mより小さい。
【0043】
回路状態2でセンサは、拡張許容規則FCCパート15の「ウルトラバンド伝送システム」によるウルトラバンドパルスFMレーダーとして動作する。有利には種々の動作形式に対して異なるアンテナが使用される。実施例では、アンテナANTTXPがアンテナANTTXFMより格段に大きな開口角を有する。このことは、動作状態2でシステムは有利には近距離レーダーとして適し、回路状態1では比較的に大きな距離をカバーするのに適するので有利である。アンテナANTRXは、この2つの指向特性間を切り替えることができるように構成することができる。または簡単にするため、比較的大きな開口角を備えるアンテナ(ANTTXPのように)として構成することができる。アンテナは別個に、共通に、ないしは切り替え可能に構成することができ、グループアンテナのうちの部分アンテナを接続または遮断することができる。この種のアンテナ解決手段とスイッチを実現することは、当業者には公知であり、従って実施の対象ではない。
【0044】
図5のレーダーは自動車レーダーとして特に適する。動作状態2では近距離領域がカバーされ、例えば駐車支援となる。動作状態1でレーダーセンサは、解像度は低下するが、典型的には100mまでを測定することができ、従って速度制御および衝突回避に(例えばいわゆるストップ&ゴー・レーダーとして)使用される。動作状態の切り替えは例えばシフトレバーに結合することができる。後進ギヤおよび1速ギヤでは動作状態2であり、他のすべてのギヤでは動作状態1である。同様に走行速度または常時変化する動作に結合することも考えられる。
【0045】
図示のすべてのレーダーはもちろん所定の適用に制限されるものではなく、通常のパルスレーダーまたはCWレーダーが使用されるすべての領域に使用することができる。
【0046】
以下に、図3のセンサの駆動方法およびセンサの測定信号の評価方法を示す。その他の装置の信号も前に説明したように、ないしは通常のレーダーセンサの場合と同じように評価することができる。しかし図3のレーダーセンサでは、いくつかの特殊性から特に有利な手段が得られる。
【0047】
センサの基本的構造および信号が再度、図7に示されている。
【0048】
距離測定のための有利な方法の機能は次のとおりである:
発振器VCOsvco(t)の信号としてまず次式の単周波数信号が前提とされる。
svco(t)=sin((ωc+ωsw)t+φ0)
ここで、ωcは中心周波数、ωswは固定変調周波数、tは時間、そしてφ0は任意の位相オフセットである。上に示したように、センサ発振器LOは周期的にスイッチオン・オフされる。発振器LOをスイッチオン・オフする周波数を以下、fmkとし、発振器をそれぞれスイッチオンする時間をTsとする。
【0049】
各スイッチオン過程の際に発振器LOは、有利な装置において正確にsvco(t)の瞬時位相により、その固有振動周波数ωLOで発振する。発振器が例えば時点t=-τでスイッチオンされると、発振器は位相
φi=arg{sVCO(-τ)}=(ωc+ωsw)・(−τ)+φ0
で発振し、発振器信号sLO(t)は次式に相応する:
sLO(t)=sin(ωLO・t−(ωc+ωsw)τ+φ0)。
【0050】
この信号はレーダー装置からそれぞれ反射器に送信され、反射器で反射され、伝搬時間τだけ遅延され、レーダー装置に受信信号srx(t)=SLO(t-τ)として到達する。ここでτはτ=2*dist/cであり、distはレーダーと反射器との間の距離、cは光速度である。
【0051】
srx(t)=sLO(t-τ)=sin(ωLO(t-τ)-(ωc+ωsw)τ+φ0)
この受信信号srx(t)はミクサで瞬時のVCO信号sVCO(t)と混合される。高周波混合積を無視して、簡単にするためωLO=ωcであると仮定すれば(このことはωswを適切に選択すれば一般性の制限なしに可能である)、混合信号smix(t)に対して次式が得られる。
【0052】
smix(t)=cos(t*ωsw+τ(ωc+ωsw))
以下では、受信ミクサMIX1に電子的要素/手段DEMODが後置されていることを前提にする。この電子的要素/手段により、スイッチオンとスイッチオフの間、すなわち0とTsの間の時間インターバルにおける電圧の時間的変化が平均により除去される。従来技術による簡単なエンベロープ変調器では、信号が整流され、引き続きローパスフィルタリングされる。このエンベロープ変調器がこのために使用される。
【0053】
整流器GRとローパスフィルタTPを備えるこのような簡単な復調器DEMOの構成が図8に示されている。
【0054】
図9に示された変調器DEMOの有利な変形実施例では、混合信号が有利には図1に示したクロック制御部CLK/Swの周期的周波数fmkの近傍または同じ周波数によって比較的低い周波数に逓降混合され、引き続き少なくともローパス特性を有するフィルタTPによりフィルタリングされる。この変形実施例は、局所発振器LOZF、ミクサZFMIXおよびローパスフィルタTPを有する。基本的にシステム全体は図3の回路に相当する。局所発振器LOZFの周波数が、負の混合周波数が発生するように設定されれば、ミクサZFMIXは複素ミクサとして、すなわち従来技術によるIQミクサ(IQ:In-Phase und Quadratur-Phase,すんわち90゜移相)として構成すべきである。ローパスフィルタTPの代わりに、例えばバンドパスフィルタを使用することもできる。
【0055】
時間インターバル0からTSで考察すると、図示の手段は、電圧の効率値が擬似的にミクサ信号smix(t)により決定されるように作用する。この効率値は続いて本来の測定信号smess(t)を形成する。一定の振幅係数は以下の説明では無視される。時間インターバル0からTSでのsmix(t)の効率値、すなわちsmess(t)は次のように計算される。
【0056】
【数1】
【0057】
測定システムは有利には周波数変調で駆動されるので、変調周波数ωswが時間に依存して変調される場合を以下、考察する。ωswがTの持続時間の間、線形に-B/2から+B/2へバンド幅Bにわたって離調するならば、すなわち
ωsw=(2・π・B・t)/T
が当てはまれば、smess(t)から生じるFMCW測定信号smessfmcw(t)に対して次式が得られる。
【0058】
【数2】
【0059】
前に示したように、信号smessfmcv(t)による導出ではスイッチオン期間の間の信号だけが正確に再現される。この信号をまずトランスポンダで周期的変調により変調することによって、smessfmcv(t)はfmkだけ、ないしは付加的に、すでに図6に示したような高次のスペクトル成分だけ周波数シフトされる。振幅変調のこの作用は一般的に公知であるから、以下では個々のスペクトル成分だけを例として考察する。ないしは信号smessfmcw(t)が周期的に変調されてないとする。
【0060】
この測定信号smessfmcw(t)は、標準的FMCWレーダーの信号に対して重要で非常に有利な2つの相違を有する。
【0061】
一方で測定信号smessfmcw(t)は、cos独立変数の位相の導関数、すなわち
【0062】
【数3】
に相応し、周波数成分Δb=B・Ts/(2T)だけずれている。周波数fbeatは通常のFMCWレーダーの測定信号に相当し、本来の測定情報、すなわちτ=2dist/cによるレーダーと反射器との間の距離を含んでいる。他方で信号smessfmcw(t)は三角関数により、とりわけSi関数(Si=sin(x)/x)により振幅重み付けされる。フーリエ変換により、すなわち振幅重み付けされた信号のスペクトルにより矩形関数が得られる。ここで矩形の幅ΔPは
ΔP=B・Ts/T
である。矩形の中心周波数fmessは上記の周波数シフトによりfbeat+Δb=fbeat+0.5*Δpとなるから、正および負の周波数領域にあるcos関数のスペクトル成分が、距離がなくなった際にも重ならないという有利な特性が得られる。すなわち、本発明のレーダーシステムでは基本的にバンド幅に依存せずに、0までの距離を測定することができる。従ってこのシステムには、実際の値を評価する公知のレーダーと比較して近距離問題がない。評価の基本的スペクトルは図10に示されている。
【0063】
この有利な特性は、図10の上に示したスペクトルエンベロープとして矩形関数が生じることにより支援される。従って、ビート周波数fbeatと距離を、左と右の側波帯の外側エッジ間の間隔に基づいて検出することができる。
【0064】
図10は一般的理解に用いるものであり、レーダーにより測定信号(エコー信号)として受信されたエコー信号の周波数スペクトルが示されている。エコー信号のすべての振幅aのエンベロープ曲線が全周波数領域にわたって、またはその一部だけにわたってエコープロフィールとして示されている。エコー信号の振幅a、位相φ、および周波数fが測定され、計算ユニットで処理される。
【0065】
システムは有利には次のようにパラメータ化される:スイッチオン時間Tsは有利には、変調バンド幅Bの逆数の2倍、すなわちTs=2/Bに選択される。変調周波数fmkの選択は、送信出力の所望の作用に基づいて行われる。適切で実際的なパラメータ化は次のとおりである。
【0066】
B=1GHz,Ts=2nsそしてfmk=2MHz
特に有利には本発明のシステムは近距離レーダーとして使用される。近距離レーダーの場合、矩形関数の外側エッジをビート周波数ないしは距離の検出に使用することは特に有利である。その理由は、センサが衝突回避の目的で使用される場合、このようなセンサでは、最短距離ないしは最も近い対象物が興味の対象となるからである。従来技術のシステムではエコー信号の重畳により発生する測定精度の問題があったが、この問題は前に提案したように矩形関数の内側エッジを評価に使用すれば、本発明のシステムでは理想的な場合には発生しない。通常のシステムにおけるスペクトル成分の重畳による問題と、本発明のシステムの利点が図11に示されている。図示の例では6つの信号成分(1,2,....6)が重畳されており、通常の場合(図11の上)は検出された測定値、すなわちスペクトルの最大値が距離に比例する実際の周波数(ここでは100)に相応しない。
【0067】
これに対して本発明のシステム(図11の下)では、左のエッジが、信号成分が重畳された場合でも、正しい位置にある。すなわち正しい距離値が検出される。
【0068】
エッジ、とりわけ最初の最も内側にあるエッジを正確に検出するために、有利には量スペクトルを微分する。なぜならこれにより矩形の急峻な傾斜が顕著なピークとなるからである。ピーク最大値の位置は、エッジの位置ないしはエッジ関数の反転点に相応する。この形式の評価により簡単な手段で、簡単な閾値評価を行う場合のように、信号振幅が検出される位置に影響を及ぼすことが回避される。測定信号とスペクトルは少なくとも時間離散的な形態でだけ存在するから、微分したスペクトルの最大値の位置検出を、補間計算によってさらに改善すると有利である。有利な補間は例えば通常の項適合によって行うことができる。このために有利には、最大値の直接的周囲にある複数の離散的スペクトル点(例えば3つの点、すなわち最大値とその右および左の隣接値)と、偶数次数の多項式(2次多項式、すなわち放物線)を使用する。スプライン法、または予想される曲線形状を測定された曲線に最小二乗法によって適合する方法などの他の補間ももちろん使用することができる。
【0069】
前記の方法はもちろん個別に適用することも、FMCWレーダーで公知の他の方法と組み合わせて使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、従来技術のレーダーを示す図である。
【図2】図2は、従来技術による第2のレーダーを示す図である。
【図3】図3は、送信手段と受信手段を備える装置を示す図である。
【図4】図4は、送信手段と受信手段を備える択一的装置を示す図である。
【図5】図5は、送信手段と受信手段を備える別の装置を示す図である。
【図6】図6は、測定信号経路の種々の段における測定信号のスペクトルを示す図である。
【図7】図7は、送信手段と受信手段を備えるさらに別の装置を示す図である。
【図8】図8は、復調器を示す図である。
【図9】図9は、択一的復調器を示す図である。
【図10】図10は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定スペクトルを比較して示す図である。
【図11】図11は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定結果を比較して示す図である。
【図12】図12は、変換器の実施例を示す図である。
【図13】図13は、関連付けられた信号源の変形を示す図である。
【技術分野】
【0001】
工業および交通で使用するためのレーダーセンサは多種多様の形態で公知である。パルスレーダーとしてのレーダーセンサは、US3117317,US4132991,およびUS4521778に記載されており、いわゆる連続波レーダーまたはCWレーダー(CW=連続波)として構成されている。パルスレーダーは対象物とレーダーとの間の距離を、短いパルスのレーダーから対象物までの往復の伝搬時間を測定することによって検出する。CWレーダーはこれに対して、送信された信号と、反射され受信された信号との間の位相差を評価する。信頼性のある測定値を比較的に大きな測定領域で検出するために、CWレーダーは通例、できるだけ大きな周波数領域にわたって周波数可変である。最もよく知られ最も広く普及しているこの形式のレーダーは、FMCWレーダー(FMCW=周波数変調連続波)である。
【0002】
とりわけ自由空間適用では、レーダーセンサの送信出力を所期のように低下できることが所望される。なぜなら無線許可規則が、放射される送信出力、およびとりわけ送信過程と結びついたノイズ放射が所定のレベル以下に留まることをしばしば要求するからである。
【0003】
EP1051639B1には、パルス制御されるFMCWレーダーが紹介されている。このFMCWレーダーは、送信信号をクロッキングするパルスシーケンスを選択することによって、その高周波出力電力を調整することができる。
【0004】
EP1051639B1に開示されたレーダーの、従来技術による改善回路形態が図1に示されている。ここに示されたレーダーは、通常のFMCWレーダーと同じように、電圧制御される発振器VCO、方向性結合器RK、アンテナANT、およびミクサMIX1を有する。同様に、EP1051639B1に示されるように、このレーダーはさらにクロック論理回路CLKを有し、このクロック論理回路により送信信号がスイッチSWTXを介して周期的にオン・オフされる。例えばスイッチを1MHzの反復周波数によりそれぞれ1nsの間、閉鎖すると、平均送信出力は連続動作の場合に対して60dBだけ低下する。デューティ比を変化することによって、広い範囲で任意の別の値を調整することができる。
【0005】
さらにこの改善回路形態は第2のミクサMIX2を有する。アンテナANTを介して受信された信号は、送信経路に存在するクロック論理回路CLKによりクロッキングないしは振幅変調され、図6(左)に示したスペクトルを有する。受信信号とMIX2のsCLK(t)との混合により、この変調が取り除かれ、測定信号s1(t)はベースバンド、すなわち周波数0を中心にする周波数領域の信号s2(t)に変換される。
【0006】
従って比較的に高い混合積を抑圧するローパスフィルタTPNFによるフィルタリングの後に、通常のようにクロッキング駆動されないFMCWレーダーが得られる。
【0007】
有利には図1のコンセプトでは、クロック論理回路CLKのクロックレートが広い領域で変化することができる。変化領域の幅は、BPZFとBPCのバンド幅だけによって制限される。従って平均送信出力のレベルも広い領域で調整することができ、そのときに測定信号の形状ないしその位相が変化することもない。単に測定信号のSN比だけが変化する。
【0008】
図1の実施例の欠点は、ここではスイッチSWTXが高周波スイッチでなければならないことである。
【0009】
高周波スイッチは一方では非常に面倒であり、他方では高いスイッチコントラストを実現するのが非常に困難である。その結果、図1の回路による電力減少は実際にはしばしば制限された範囲内だけとなる。
【0010】
この問題を解決し、回路コストの点で格段に簡素化された従来技術による変形実施例が図2に示されている。この変形実施例では、スイッチSWTXによって発振器自体がスイッチオン・オフする。このことは例えば、供給電圧のオン・オフによって行うことができる。発振器が発振しなければ、発振器は信号出力を形成せず、スイッチコントラストは最大である。さらに回路を簡単にするために、方向性結合器の代わりにいわゆるトランスミッションミクサTRMIXを使用する。
【0011】
しかし図2の回路の欠点は、最大測定領域、または最小平均送出電力、またはレーダーの最小測定速度がこの形式の切り替えにより制限されることである。すなわち一方でスイッチSWTXはどのような場合でも、予期される最大距離ないしは最大設定距離からのすべての信号成分が再び受信されるまでは閉じたままでなければならない。従って、パルス持続時間、すなわちスイッチが閉じている時間、ないしは発振器がスイッチオンされている時間は、最大信号伝搬時間よりも格段に大きくなければならない。測定領域が例えば15mの場合、最大信号伝搬時間は70nsとなり、従ってここでは100nsを越えるパルス持続時間から初めて意味のある測定値を期待できる。他方で平均出力をディーティ比により所望のように低減することは、スイッチオン時点間の休止を相応に長くすることによって保証される。しかしこのことは場合により、サンプリング定理に矛盾する。すなわち、レーダーの各スイッチオン期間はサンプリング値の形成に相応し、このサンプリング値は連続的に駆動されるFMCWレーダーの測定信号のサンプリングに相応する。従って休止期間が過度に大きい場合、高い周波数を評価することができない。そのため、測定信号周波数が比例する対象物の距離は、周波数ランプの変化速度が設定されている場合、所定の間隔を上回ることができない。それでもなお、測定領域をこの範囲を超えて拡大すべき場合には、変化速度を低減し、これにより測定の測定持続時間を拡大しなければならない。
【0012】
本発明の課題は、前記装置を改善し、その放射特性と動作特性をとりわけ有利に制御することができるシステムを提供することである。
【0013】
この課題は、独立請求項に記載された本発明により解決される。有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0014】
相応にして、装置は電磁信号を形成および送信するための送信手段と、送信された電磁信号の反射を受信するための受信手段とを有する。ここで送信手段は、電磁信号を形成するための送信発振器を有し、受信手段は電磁評価信号を形成するための評価発振器を有する。この電磁評価信号は、送信された電磁信号の受信された反射と比較され、とりわけ混合される。ここで送信発振器と評価発振器は次のように接続および/または配置されている。すなわち、送信発振器が、発振する評価発振器との電磁的交互作用によって、擬似位相コヒーレントに励振されるか、ないしは擬似位相コヒーレントに関連付けられるように接続および/または配置されている。
【0015】
このことにより送信発振器は、必要な場合だけスイッチオンすれば良く、これによりエネルギー消費および平均送信出力が所望のように低減される。また、擬似位相コヒーレントな励振ないし関連付けによって、常に十分な位相コヒーレントが送信発振器と評価発振器との間で保証され、さらに送信発振器により発生された電磁信号並びにその反射と、評価発振器により発生された評価信号との間でも保証される。
【0016】
択一的にまたは補充的に、別の目的のためにも、評価発振器を送信発振器により擬似位相コヒーレントに励振することができる。
【0017】
ここで擬似位相コヒーレントとは、本発明の構成により、送信発振器と評価発振器との間の位相差が小さくなるが、しかし真のコヒーレントの場合のように必ずしも位相差が消失するものではないことを意味する。ここで位相差が小さいという概念は、意図する通信タスクないし測定タスクを基準にすべきである。小さな位相差に対する限界として、例えばしばしば値π/10、すなわち約20゜が使用される。このように非常に小さな位相差しか備えていない信号を、以下、擬似位相コヒーレントと称し、このコヒーレントが発生する時間間隔をコヒーレント時間長と称する。
【0018】
擬似位相コヒーレントを実現するための基本思想がDE10032822A1に記載されており、発振器がスイッチオン後にまず不安定な平衡状態となり、外部エネルギー供給によって初めて振動励振されることにある。この初期のきっかけのあとに初めて、フィードバックを介して振動が復活する。通常は例えば熱的ノイズがこの最初のきっかけを送出する。すなわち、発振器はランダムなフェーズと振幅により振動し、その共振回路により設定された周波数で発振する。しかし発振器に、スイッチオンの時に外部励起信号が注入されると、発振器はランダムに振動せず、注入された信号の位相に対して規定的に振動する。注入された信号と発振器信号との間の位相差が約20°より小さい限り、2つの信号は擬似位相コヒーレントである。
【0019】
発振器が、スイッチオンフェーズで、刺激信号の位相経過に追従しようとする特性は、あらゆる発振器の基本的物理特性である。しかしこの特性が本発明では2つの発振器を擬似コヒーレントに相互に関連付けるために、ないしは送信発振器を評価発振器に対して擬似コヒーレントに駆動するために、または択一的に評価発振器を送信発振器に対して擬似コヒーレントに駆動するために使用される。
【0020】
擬似位相コヒーレントな励振特性のために、発振器は次のように電磁的に相互に結合される。すなわち、送信発振器が評価発振器によって、および/または評価発振器が送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能であるように相互に結合される。このことは、発振器を線路手段により相互に接続することにより行われる。また発振器が相互に近接して配置されており、とりわけ相互にシールドされていなければ、通常、一方の発振器から他方の発振器へのクロストークが発生する。
【0021】
有利には擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器は常に擬似位相コヒーレントに励振可能な状態におかれる。このことは、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器を周期的にスイッチングするための手段によりクロックレートで発振器をオン・オフすることにより行われる。一般的にクロックシーケンスは、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器のスイッチオン持続時間が、擬似位相コヒーレントに励振可能な2つの発振器間で発生する擬似位相コヒーレントの持続時間よりも短く、またはこれに等しくなるように選択すべきである。擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器がスイッチングされるクロックの反復周波数はとりわけ、測定信号の最大で予期される周波数よりも格段に大きく、とりわけ5倍以上の大きさである。
【0022】
ここで擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器のスイッチオン持続時間は、擬似位相コヒーレントに関連付けられた2つの発振器が定常発振状態にあるときの、それらの最大予想周波数差の逆数のオーダーにあるか、またはその逆数よりも小さい。
【0023】
送信発振器および/または評価発振器は周波数が可変である。従ってこの構成体を周波数変調されるパルスレーダーとして、ないしはクロッキングされるFMCWレーダーとして駆動することができる。
【0024】
とりわけ近距離に適する変形実施例では、一方の発振器の周波数が可変であり、それぞれ他方の発振器は固定周波数発振器である。
【0025】
この装置はとりわけ、距離測定のための装置および/またはレーダー、とりわけ周波数領域が可変であるレーダー、および/または近距離レーダーと遠距離レーダーの2つの回路状態を切り替えることのできるレーダーである。
【0026】
とりわけ距離測定のための測定方法では、
・送信発振器が評価発振器により、および/または評価発振器が送信発振器により擬似位相コヒーレントに励振され、
・送信発振器により送信すべき信号を形成し、
・この信号を送信し、
・送信された信号の反射を受信し、
・評価発振器により評価信号を形成する。
【0027】
送信された信号の反射は、とりわけ評価信号を考慮して測定で評価される。ここで評価信号は有利には送信された信号の反射と混合される。
【0028】
さらに有利には、送信発振器は評価発振器により、および/または評価発振器は送信発振器により周期的に常に擬似位相コヒーレントに励振される。このために擬似位相コヒーレントに励振された発振器はクロックにより切り替えられ、例えばスイッチオフにより一度遮断され、スイッチオンにより再び励振可能とされる。
【0029】
本発明の方法の別の有利な構成は、装置の有利な構成と同様である。
【0030】
本発明のさらなる利点および特徴は、実施例の説明から明らかとなる。
図1は、従来技術のレーダーを示す図である。
図2は、従来技術による第2のレーダーを示す図である。
図3は、送信手段と受信手段を備える装置を示す図である。
図4は、送信手段と受信手段を備える択一的装置を示す図である。
図5は、送信手段と受信手段を備える別の装置を示す図である。
図6は、測定信号経路の種々の段における測定信号のスペクトルを示す図である。
図7は、送信手段と受信手段を備えるさらに別の装置を示す図である。
図8は、復調器を示す図である。
図9は、択一的復調器を示す図である。
図10は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定スペクトルを比較して示す図である。
図11は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定結果を比較して示す図である。
図12は、変換器の実施例を示す図である。
図13は、関連付けられた信号源の変形を示す図である。
【0031】
図2に対して示された問題は、図3の回路により解決される。この回路は、評価発振器として用いられる発振器VCOの他に別の発振器、すなわち送信信号の形成に用いられる送信発振器LOを含んでいる。重要なことは、評価発振器とVCOと送信発振器LOが結合部QPKを介して擬似的に位相固定して、または擬似位相コヒーレントに相互に接続されていることである。送信発振器LOを周期的にスイッチオンし、その間、VCOからの信号がこれにクロストークすれば、送信発振器LOは常に、評価発振器VCOにより設定された位相で発振する。
【0032】
この結合QPKを保証するために、2つの発振器にルーズに結合された接続線路が設けられている。しかし通常、発振器出力の放射は常に存在しているので、特別の回路技術的装置を設けて、発振器を相互に結合する必要はなく、発振器を相互にシールドしなければ良い。すなわち電気的に閉じた固有の金属カバーを設ける必要はない。評価発振器VCOの送信発振器LOへのクロストークは、もちろんアース線路または給電線路を介しても行われる。発振器の選択の際にも、特別の要求に注意する必要はない。通常の高周波発振器を使用することができるが、2つの発振器のうちの一方を本発明では適切なクロックシーケンスで周期的にスイッチオン/オフしなければならない。これは前期のように2つの発振器の擬似位相コヒーレントな結合を保証するためである。このために有利には、外部からではなく格段に強力な第3の信号を接続された送信発振器LOに作用させ、この送信発振器が評価発振器VCOの信号に対してではなく、この第3の信号に対してコヒーレントに発振するようにする。
【0033】
発振器LOとVCOの周波数が同じであれば、2つの擬似コヒーレントな出力信号間の僅かな差を定義的に表す直流電圧に対してs(t)が得られる。送信発振器LOを、それぞれ非常に短い時間の間、周期的にスイッチオンすれば、2つの発振器間の擬似位相コヒーレンスはスイッチオン期間全体にわたり存在する。すなわちミクサMIX2の信号s3(t)は、発振器の信号をスイッチにより同じクロックでオン・オフした場合に生ずることとなる信号とほぼ同じである。
【0034】
送信発振器LOの他に、図13に示すように、付加的に評価発振器VCOをオン・オフすることができる。ここでこの評価発振器の立ち上がりは、送信発振器LOがスイッチオンされる瞬時にはほぼ終了していなければならず、検出すべき最大距離領域からの反射がセンサに到着したときに初めて評価発振器を再びスイッチオフすることができる。評価発振器VCOのオン・オフにより、送信信号と受信信号との間の位相条件は、評価発振器VCOを持続的にスイッチオンした場合の測定に対して変化しない。しかしエネルギー消費の理由からこの動作形式は有利である。
【0035】
図3の構成では、送信アンテナANTTXPと受信アンテナANTRXが別個に構成されていることは重要ではない。同様に個々の受信アンテナには方向性結合器またはサーキュレータを介して給電することができる。PLLシンセサイザないしはPLLをVCOの制御に使用することも重要ではない(PLL=位相制御ループ)。ここで単にセンサをマイクロプロセッサMPにより完全に制御できればよい。
【0036】
発振器LOが固定周波数発振器であり、かつVCOが固定周波数発振器であれば、一定の周波数ずれと、測定信号s3(t)の振幅重み付けsin(x)/xが生じる。しかし両者の作用は計算的に簡単に測定信号評価で考慮することができる。
【0037】
図1の回路と同様に図4の回路は同じ測定信号を送出する。ここで周波数可変送信発振器VCO2は、周波数可変評価発振器VCO1と同じ構成とすることができ、発振器の2つの制御入力端は相互に接続される。同様に図3のように、送信発振器VCO1と評価発振器VCO2は、擬似的に位相固定した、ないしは擬似位相コヒーレントな結合部QPKを介して相互に結合される。
【0038】
送信発振器VCO1と評価発振器VCO2とが同じ構造であれば、2つの発振器VCO2とVCO1の周波数は可変領域全体にわたって、すなわちいずれのスイッチオン時点でも実質的に正確に一致する。2つの発振器は調整領域全体にわたって擬似コヒーレントに同じ周波数で発振するから、信号s4(t)が、FMCWレーダーが連続駆動される場合と同じように得られる。ここでは単にS/N比が減少するだけである。
【0039】
ここでも図13に従い評価発振器を同様に切り替え可能に構成することができ、これによりセンサの低エネルギー消費が達成される。
【0040】
適切なパラメータは、発振器の中心周波数が例えば6GHzまたは26GHzの近傍となるように選択される。発振器VCO1は例えば1〜10ms内で約1GHz(またはそれ以上)のバンド幅にわたって離調する。CLKのクロックレートは有利には1〜10MHzの領域にすることができる。パルス持続時間は有利には100psから10nsの領域にある。
【0041】
さらに図3と図4のセンサの本発明の機能は、破線で示したように、図12の実施形態を備える周波数変換器UMSETがセンサに追加されても維持される。変換器は、図12の左に示すように、1つの固定周波数発振器HFOと、送信経路および受信経路にそれぞれ1つのミクサと、場合により1つのバンドパスフィルタを有する。バンドパスフィルタは場合により認可技術的理由から、不所望の混合積を抑圧するために必要である。固定周波数発振器HFOもまた、エネルギーの理由から切り替え可能に構成することができるが、ここでは発振器LOないしVCO1がスイッチオンされるときに十分に定常状態でなければならず、また最大検出距離領域からの反射がセンサに到達するときに初めてスイッチオフすることができる。択一的に変換を、図12の右に示すように、2つの別個の発振器HF01およびHF02により行うことができる。この2つの発振器は相互に擬似コヒーレントに結合されている。ここでもスイッチオフ時間を、コヒーレンスとエネルギー消費の点で最適化することができる。
【0042】
多機能レーダーとしての回路のさらなる構成が図5に示されている。例えばマイクロプロセッサMPからの切替信号SW-P/CWを介して、レーダーを2つの動作状態におくことができる。回路状態1でレーダーは、通常のFMCWレーダーとして全送信出力と相応に大きな到達距離と大きな感度により動作する。この動作形式ではマイクロプロセッサ制御を介して次のことが行われる:
a)スイッチSWTXが開放する。すなわち発振器VCO2は信号を形成しない。
b)発振器VCO1は周波数領域において、許容規則に合致する信号だけを形成する。すなわちFCC15によれば、24GHzから24.5GHzのISMバンドで放射される電界強度は250mV/mより小さい。
【0043】
回路状態2でセンサは、拡張許容規則FCCパート15の「ウルトラバンド伝送システム」によるウルトラバンドパルスFMレーダーとして動作する。有利には種々の動作形式に対して異なるアンテナが使用される。実施例では、アンテナANTTXPがアンテナANTTXFMより格段に大きな開口角を有する。このことは、動作状態2でシステムは有利には近距離レーダーとして適し、回路状態1では比較的に大きな距離をカバーするのに適するので有利である。アンテナANTRXは、この2つの指向特性間を切り替えることができるように構成することができる。または簡単にするため、比較的大きな開口角を備えるアンテナ(ANTTXPのように)として構成することができる。アンテナは別個に、共通に、ないしは切り替え可能に構成することができ、グループアンテナのうちの部分アンテナを接続または遮断することができる。この種のアンテナ解決手段とスイッチを実現することは、当業者には公知であり、従って実施の対象ではない。
【0044】
図5のレーダーは自動車レーダーとして特に適する。動作状態2では近距離領域がカバーされ、例えば駐車支援となる。動作状態1でレーダーセンサは、解像度は低下するが、典型的には100mまでを測定することができ、従って速度制御および衝突回避に(例えばいわゆるストップ&ゴー・レーダーとして)使用される。動作状態の切り替えは例えばシフトレバーに結合することができる。後進ギヤおよび1速ギヤでは動作状態2であり、他のすべてのギヤでは動作状態1である。同様に走行速度または常時変化する動作に結合することも考えられる。
【0045】
図示のすべてのレーダーはもちろん所定の適用に制限されるものではなく、通常のパルスレーダーまたはCWレーダーが使用されるすべての領域に使用することができる。
【0046】
以下に、図3のセンサの駆動方法およびセンサの測定信号の評価方法を示す。その他の装置の信号も前に説明したように、ないしは通常のレーダーセンサの場合と同じように評価することができる。しかし図3のレーダーセンサでは、いくつかの特殊性から特に有利な手段が得られる。
【0047】
センサの基本的構造および信号が再度、図7に示されている。
【0048】
距離測定のための有利な方法の機能は次のとおりである:
発振器VCOsvco(t)の信号としてまず次式の単周波数信号が前提とされる。
svco(t)=sin((ωc+ωsw)t+φ0)
ここで、ωcは中心周波数、ωswは固定変調周波数、tは時間、そしてφ0は任意の位相オフセットである。上に示したように、センサ発振器LOは周期的にスイッチオン・オフされる。発振器LOをスイッチオン・オフする周波数を以下、fmkとし、発振器をそれぞれスイッチオンする時間をTsとする。
【0049】
各スイッチオン過程の際に発振器LOは、有利な装置において正確にsvco(t)の瞬時位相により、その固有振動周波数ωLOで発振する。発振器が例えば時点t=-τでスイッチオンされると、発振器は位相
φi=arg{sVCO(-τ)}=(ωc+ωsw)・(−τ)+φ0
で発振し、発振器信号sLO(t)は次式に相応する:
sLO(t)=sin(ωLO・t−(ωc+ωsw)τ+φ0)。
【0050】
この信号はレーダー装置からそれぞれ反射器に送信され、反射器で反射され、伝搬時間τだけ遅延され、レーダー装置に受信信号srx(t)=SLO(t-τ)として到達する。ここでτはτ=2*dist/cであり、distはレーダーと反射器との間の距離、cは光速度である。
【0051】
srx(t)=sLO(t-τ)=sin(ωLO(t-τ)-(ωc+ωsw)τ+φ0)
この受信信号srx(t)はミクサで瞬時のVCO信号sVCO(t)と混合される。高周波混合積を無視して、簡単にするためωLO=ωcであると仮定すれば(このことはωswを適切に選択すれば一般性の制限なしに可能である)、混合信号smix(t)に対して次式が得られる。
【0052】
smix(t)=cos(t*ωsw+τ(ωc+ωsw))
以下では、受信ミクサMIX1に電子的要素/手段DEMODが後置されていることを前提にする。この電子的要素/手段により、スイッチオンとスイッチオフの間、すなわち0とTsの間の時間インターバルにおける電圧の時間的変化が平均により除去される。従来技術による簡単なエンベロープ変調器では、信号が整流され、引き続きローパスフィルタリングされる。このエンベロープ変調器がこのために使用される。
【0053】
整流器GRとローパスフィルタTPを備えるこのような簡単な復調器DEMOの構成が図8に示されている。
【0054】
図9に示された変調器DEMOの有利な変形実施例では、混合信号が有利には図1に示したクロック制御部CLK/Swの周期的周波数fmkの近傍または同じ周波数によって比較的低い周波数に逓降混合され、引き続き少なくともローパス特性を有するフィルタTPによりフィルタリングされる。この変形実施例は、局所発振器LOZF、ミクサZFMIXおよびローパスフィルタTPを有する。基本的にシステム全体は図3の回路に相当する。局所発振器LOZFの周波数が、負の混合周波数が発生するように設定されれば、ミクサZFMIXは複素ミクサとして、すなわち従来技術によるIQミクサ(IQ:In-Phase und Quadratur-Phase,すんわち90゜移相)として構成すべきである。ローパスフィルタTPの代わりに、例えばバンドパスフィルタを使用することもできる。
【0055】
時間インターバル0からTSで考察すると、図示の手段は、電圧の効率値が擬似的にミクサ信号smix(t)により決定されるように作用する。この効率値は続いて本来の測定信号smess(t)を形成する。一定の振幅係数は以下の説明では無視される。時間インターバル0からTSでのsmix(t)の効率値、すなわちsmess(t)は次のように計算される。
【0056】
【数1】
【0057】
測定システムは有利には周波数変調で駆動されるので、変調周波数ωswが時間に依存して変調される場合を以下、考察する。ωswがTの持続時間の間、線形に-B/2から+B/2へバンド幅Bにわたって離調するならば、すなわち
ωsw=(2・π・B・t)/T
が当てはまれば、smess(t)から生じるFMCW測定信号smessfmcw(t)に対して次式が得られる。
【0058】
【数2】
【0059】
前に示したように、信号smessfmcv(t)による導出ではスイッチオン期間の間の信号だけが正確に再現される。この信号をまずトランスポンダで周期的変調により変調することによって、smessfmcv(t)はfmkだけ、ないしは付加的に、すでに図6に示したような高次のスペクトル成分だけ周波数シフトされる。振幅変調のこの作用は一般的に公知であるから、以下では個々のスペクトル成分だけを例として考察する。ないしは信号smessfmcw(t)が周期的に変調されてないとする。
【0060】
この測定信号smessfmcw(t)は、標準的FMCWレーダーの信号に対して重要で非常に有利な2つの相違を有する。
【0061】
一方で測定信号smessfmcw(t)は、cos独立変数の位相の導関数、すなわち
【0062】
【数3】
に相応し、周波数成分Δb=B・Ts/(2T)だけずれている。周波数fbeatは通常のFMCWレーダーの測定信号に相当し、本来の測定情報、すなわちτ=2dist/cによるレーダーと反射器との間の距離を含んでいる。他方で信号smessfmcw(t)は三角関数により、とりわけSi関数(Si=sin(x)/x)により振幅重み付けされる。フーリエ変換により、すなわち振幅重み付けされた信号のスペクトルにより矩形関数が得られる。ここで矩形の幅ΔPは
ΔP=B・Ts/T
である。矩形の中心周波数fmessは上記の周波数シフトによりfbeat+Δb=fbeat+0.5*Δpとなるから、正および負の周波数領域にあるcos関数のスペクトル成分が、距離がなくなった際にも重ならないという有利な特性が得られる。すなわち、本発明のレーダーシステムでは基本的にバンド幅に依存せずに、0までの距離を測定することができる。従ってこのシステムには、実際の値を評価する公知のレーダーと比較して近距離問題がない。評価の基本的スペクトルは図10に示されている。
【0063】
この有利な特性は、図10の上に示したスペクトルエンベロープとして矩形関数が生じることにより支援される。従って、ビート周波数fbeatと距離を、左と右の側波帯の外側エッジ間の間隔に基づいて検出することができる。
【0064】
図10は一般的理解に用いるものであり、レーダーにより測定信号(エコー信号)として受信されたエコー信号の周波数スペクトルが示されている。エコー信号のすべての振幅aのエンベロープ曲線が全周波数領域にわたって、またはその一部だけにわたってエコープロフィールとして示されている。エコー信号の振幅a、位相φ、および周波数fが測定され、計算ユニットで処理される。
【0065】
システムは有利には次のようにパラメータ化される:スイッチオン時間Tsは有利には、変調バンド幅Bの逆数の2倍、すなわちTs=2/Bに選択される。変調周波数fmkの選択は、送信出力の所望の作用に基づいて行われる。適切で実際的なパラメータ化は次のとおりである。
【0066】
B=1GHz,Ts=2nsそしてfmk=2MHz
特に有利には本発明のシステムは近距離レーダーとして使用される。近距離レーダーの場合、矩形関数の外側エッジをビート周波数ないしは距離の検出に使用することは特に有利である。その理由は、センサが衝突回避の目的で使用される場合、このようなセンサでは、最短距離ないしは最も近い対象物が興味の対象となるからである。従来技術のシステムではエコー信号の重畳により発生する測定精度の問題があったが、この問題は前に提案したように矩形関数の内側エッジを評価に使用すれば、本発明のシステムでは理想的な場合には発生しない。通常のシステムにおけるスペクトル成分の重畳による問題と、本発明のシステムの利点が図11に示されている。図示の例では6つの信号成分(1,2,....6)が重畳されており、通常の場合(図11の上)は検出された測定値、すなわちスペクトルの最大値が距離に比例する実際の周波数(ここでは100)に相応しない。
【0067】
これに対して本発明のシステム(図11の下)では、左のエッジが、信号成分が重畳された場合でも、正しい位置にある。すなわち正しい距離値が検出される。
【0068】
エッジ、とりわけ最初の最も内側にあるエッジを正確に検出するために、有利には量スペクトルを微分する。なぜならこれにより矩形の急峻な傾斜が顕著なピークとなるからである。ピーク最大値の位置は、エッジの位置ないしはエッジ関数の反転点に相応する。この形式の評価により簡単な手段で、簡単な閾値評価を行う場合のように、信号振幅が検出される位置に影響を及ぼすことが回避される。測定信号とスペクトルは少なくとも時間離散的な形態でだけ存在するから、微分したスペクトルの最大値の位置検出を、補間計算によってさらに改善すると有利である。有利な補間は例えば通常の項適合によって行うことができる。このために有利には、最大値の直接的周囲にある複数の離散的スペクトル点(例えば3つの点、すなわち最大値とその右および左の隣接値)と、偶数次数の多項式(2次多項式、すなわち放物線)を使用する。スプライン法、または予想される曲線形状を測定された曲線に最小二乗法によって適合する方法などの他の補間ももちろん使用することができる。
【0069】
前記の方法はもちろん個別に適用することも、FMCWレーダーで公知の他の方法と組み合わせて使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、従来技術のレーダーを示す図である。
【図2】図2は、従来技術による第2のレーダーを示す図である。
【図3】図3は、送信手段と受信手段を備える装置を示す図である。
【図4】図4は、送信手段と受信手段を備える択一的装置を示す図である。
【図5】図5は、送信手段と受信手段を備える別の装置を示す図である。
【図6】図6は、測定信号経路の種々の段における測定信号のスペクトルを示す図である。
【図7】図7は、送信手段と受信手段を備えるさらに別の装置を示す図である。
【図8】図8は、復調器を示す図である。
【図9】図9は、択一的復調器を示す図である。
【図10】図10は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定スペクトルを比較して示す図である。
【図11】図11は、図7の装置と従来技術による間隔レーダーの測定結果を比較して示す図である。
【図12】図12は、変換器の実施例を示す図である。
【図13】図13は、関連付けられた信号源の変形を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号の送信する送信手段と、送信された信号の反射を受信する受信手段とを有する装置であって、送信手段は送信発振器を有する形式の装置において、
受信手段は評価発振器を有し、
送信発振器は評価発振器により、および/または評価発振器は送信発振器により擬似位相コヒーレントに励振可能である、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、発振器は線路手段によって相互に接続されており、
送信発振器は評価発振器によって、および/または評価発振器は送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能である装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、発振器は並んで配置されており、
送信発振器は評価発振器によって、および/または評価発振器は送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能である装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項記載の装置において、発振器は並んで配置され、シールドされておらず、
送信発振器は評価発振器によって、および/または評価発振器は送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能である装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項記載の装置において、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器をクロックレートにより周期的にスイッチオン・オフする手段を有する装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器のスイッチオン持続時間は、2つの発振器が定常発振状態にあるときの、それらの周波数差の逆数のオーダーにあるか、またはその逆数よりも小さい装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の装置において、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器がスイッチングされるクロックの反復周波数は、測定信号の周波数よりも格段に大きく、とりわけ5倍以上の大きさである装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項記載の装置において、送信発振器および/または評価発振器の周波数は可変である装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項記載の装置において、送信発振器または評価発振器の周波数は可変であり、一方、評価発振器または送信発振器は固定周波数発振器である装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項記載の装置において、該装置は距離測定装置である。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項記載の装置において、該装置はレーダーであり、とりわけ周波数領域が可変であるレーダーおよび/または近距離レーダーと遠距離レーダーの2つの回路状態間で切り替え可能なレーダーである装置。
【請求項12】
車両、建物、または工場施設を有する、請求項1から11までのいずれか一項記載の装置。
【請求項13】
とりわけ距離測定のための方法であって、
送信発振器を評価発振器によって、および/または評価発振器を送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振し、
送信発振器によって送信すべき信号を形成し、
信号を送信し、
送信された信号の反射を受信し、
評価発振器により評価信号を形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、評価信号は送信された信号の反射と混合される方法。
【請求項15】
請求項13または14記載の方法であって、送信発振器を評価発振器によって、および/または評価発振器を送信発振器によって周期的に常に擬似位相コヒーレントに励振する方法。
【請求項1】
信号の送信する送信手段と、送信された信号の反射を受信する受信手段とを有する装置であって、送信手段は送信発振器を有する形式の装置において、
受信手段は評価発振器を有し、
送信発振器は評価発振器により、および/または評価発振器は送信発振器により擬似位相コヒーレントに励振可能である、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、発振器は線路手段によって相互に接続されており、
送信発振器は評価発振器によって、および/または評価発振器は送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能である装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、発振器は並んで配置されており、
送信発振器は評価発振器によって、および/または評価発振器は送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能である装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項記載の装置において、発振器は並んで配置され、シールドされておらず、
送信発振器は評価発振器によって、および/または評価発振器は送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振可能である装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項記載の装置において、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器をクロックレートにより周期的にスイッチオン・オフする手段を有する装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器のスイッチオン持続時間は、2つの発振器が定常発振状態にあるときの、それらの周波数差の逆数のオーダーにあるか、またはその逆数よりも小さい装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の装置において、擬似位相コヒーレントに励振可能な発振器がスイッチングされるクロックの反復周波数は、測定信号の周波数よりも格段に大きく、とりわけ5倍以上の大きさである装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項記載の装置において、送信発振器および/または評価発振器の周波数は可変である装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項記載の装置において、送信発振器または評価発振器の周波数は可変であり、一方、評価発振器または送信発振器は固定周波数発振器である装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項記載の装置において、該装置は距離測定装置である。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項記載の装置において、該装置はレーダーであり、とりわけ周波数領域が可変であるレーダーおよび/または近距離レーダーと遠距離レーダーの2つの回路状態間で切り替え可能なレーダーである装置。
【請求項12】
車両、建物、または工場施設を有する、請求項1から11までのいずれか一項記載の装置。
【請求項13】
とりわけ距離測定のための方法であって、
送信発振器を評価発振器によって、および/または評価発振器を送信発振器によって擬似位相コヒーレントに励振し、
送信発振器によって送信すべき信号を形成し、
信号を送信し、
送信された信号の反射を受信し、
評価発振器により評価信号を形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、評価信号は送信された信号の反射と混合される方法。
【請求項15】
請求項13または14記載の方法であって、送信発振器を評価発振器によって、および/または評価発振器を送信発振器によって周期的に常に擬似位相コヒーレントに励振する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−522313(P2006−522313A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500031(P2006−500031)
【出願日】平成16年2月16日(2004.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001440
【国際公開番号】WO2004/088353
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月16日(2004.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001440
【国際公開番号】WO2004/088353
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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