説明

試料を少なくとも2つの成分に分離する遠心分離機

本発明は、遠心分離される試料を受容するチャンバを備える、試料を少なくとも2つの成分に分離するための遠心分離機に関する。本発明によれば、遠心分離機はさらに、チャンバに位置する試料分離の進展を制御する手段を備える。本発明の好ましい実施形態では、試料分離の進展を制御する手段は、光源からの光を、試料の少なくとも一部に透過させることができるように位置する、窓、鏡、またはプリズムであり、プリズムから出る光は、光検出器によって検出可能である。さらに、試料分離の進展を制御する手段は、2つのプリズムセクションが鏡像対称様式で整列している、二重プリズムとなり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、試料を少なくとも2つの成分に分離するための遠心分離機と、この遠心分離機が使用される、試料を少なくとも2つの成分に分離するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離は、試料をその成分のうちの少なくとも2つに分離する物理的方法において使用することができる。具体的には、遠心分離は、生体起源の試料を2つ以上の成分に分離する技術において使用される。次いで、これらの成分は、別々にさらに処理することができる。
【0003】
遠心分離を行う時には、試料が構成する成分の分離の進展を監視できることが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の基礎にある課題は、分離過程の進展の監視を可能にした遠心分離を行う手段を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基礎にある課題は、いずれも本明細書で説明されるような、遠心分離機およびこの遠心分離機を使用する方法の両方によって解決される。
【0006】
本発明の一側面では、試料を少なくとも2つの成分に分離するための遠心分離機が提供される。そのような遠心分離機は、遠心分離される試料を受容するためのチャンバ(または処理チャンバあるいは回転容器)と、チャンバに位置する試料分離の進展を制御するための手段とを備える。試料の分離は、相互から分離される、少なくとも第1の成分および第2の成分をもたらす。したがって、成分は、検出することができる、遠心分離機チャンバの中の層を形成する。
【0007】
本発明の好ましい実施形態では、試料分離の進展を制御するための手段は、光源からの光を、試料の少なくとも一部に透過させることができるように位置する、窓、鏡、またはプリズムであり、プリズムから出る光は、光検出器によって検出可能である。さらに、試料分離の進展を制御するための手段は、2つのプリズムセクションが鏡像対称様式で整列している、二重プリズムとなり得る。
【0008】
遠心分離機のチャンバは、円形ベースプレートであって、その中心が回転軸に対して実質的に垂直に配向される、円形ベースプレートと、外装材または壁であって、ベースプレートおよび外装材がともにポット状構造(チャンバの下方部分)を形成するように、ベースプレートに対して実質的に垂直に配向される、外装材または壁と、円形カバープレート(蓋;チャンバの上方部分)であって、ベースプレートから離れているか、またはベースプレートの反対側にあるか、外装材の縁の上に配置可能であり、その中心が回転軸に対して実質的に垂直に配向される、円形カバープレート(蓋;チャンバの上方部分)とを備える。それにより、ポット状底部および蓋形状の上部から成る、閉鎖遠心分離チャンバが形成される。
【0009】
一実施形態では、試料分離の進展を制御する手段は、チャンバのベースプレートまたはカバープレートに配置される。試料分離の進展を制御する手段(例えば、プリズムまたは二重プリズム)は、チャンバのカバープレートに配置されることが好ましい。
【0010】
試料分離の進展を制御する手段は、好ましくは、遠心分離中に、試料がチャネルまたは間隙に進入することができるように、ベースプレートまたはカバープレートの中に位置するチャネルまたは間隙に配置されることにより、試料は検出可能となる。言い換えれば、チャネルまたは間隙は、遠心分離に試料の少なくとも一部がそれに流入することができるように構成される。具体的には、光は試料の異なる成分を少なくとも部分的に透過することができるので、試料の分離が検出可能となる。それにより、試料分離が完了した時の判定を可能にする、信号が生成される。加えて、チャンバは、遠心分離中に試料の成分がチャンバから排出されることを可能にする、出口開口部を備えることができる。
【0011】
層の形成の他に、pH値および/または温度を使用して、試料の分離を検出することもできる。これは、図を参照してより詳細に説明される。
【0012】
好ましくは、チャネルは、検出手段が位置する場所に応じて、回転軸に位置する領域からベースプレートまたはカバープレートの周囲に位置する領域まで、直線的に放射状に伸展するように配向される。チャネルは、両側の光が、プリズムまたは二重プリズムから、遠心分離中に試料を担持するチャネルの中へ通ることができるように配置される。試料を通過する光の検出は、試料の分離がどこまで進行したかを判定することと、また、試料の異なる成分間の境界の位置を判定することも可能にする。異なる成分間の境界の位置の知見に基づいて、チャンバに位置する少なくとも1つの出口ポートを通して、チャンバからある成分を排出することが可能になる。
【0013】
好ましい実施形態では、チャンバは、細胞の培養のための容器としての機能を果たすか、または容器を収容することができるように構成される。それにより、遠心分離チャンバは、細胞培養目的、およびその中で増殖した細胞の処理のための両方で使用することができる。チャンバは、細胞の増殖、分離、洗浄、細胞または異なる種類の細胞の濃縮、またはその他等の、広い範囲の細胞培養方法が行われることを可能にする。この目的で、チャンバはさらに、例えば、ガス、細胞培養培地、または類似物のための、入口/出口開口部を備えてもよい。細胞培養条件は、当技術分野で公知である。
【0014】
本発明の別の側面では、試料を少なくとも2つの成分に分離するための方法が提供される。そのような方法は、資料を提供するステップと、上記および本明細書で説明されるような遠心分離機の中で試料を遠心分離するステップとを含む。
【0015】
上記および本明細書で説明されるように、試料は、好ましくは、血液、骨髄、細胞、細胞または細胞成分を備える組成物、または類似物等の、生体試料である。
【0016】
遠心分離機は、試料処理ユニットの一部となり得る。この試料処理ユニットは、少なくとも1つの試料チャンバを有する、本明細書で説明されるような遠心分離機チャンバに連結される、入力ポートおよび出力ポートを備えてもよく、試料処理ユニットは、試料に第1の処理ステップを提供するように、または、チャンバの中で堆積された試料に遠心力を作用させ、堆積試料の少なくとも第1の成分および第2の成分を分離するよう、容器を回転させるように構成される。試料処理ユニットは、システムを形成するように試料分離ユニットに連結することができる。試料分離ユニットは、試料処理ユニットの出力ポートに連結することができ、試料分離ユニットは、分離カラムホルダと、ポンプと、流体回路およびホルダの中に配置された分離カラムを通る流量を少なくとも部分的に制御するように構成される、複数の弁とを備え、分離カラムは、カラムを通して流された試料の標識成分および非標識成分を分離するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態による、遠心分離機のチャンバを図示する。
【図1A】図1Aは、光源と、チャンバの中の試料分離の進展を検出するための検出器とを伴う、本発明の実施形態による、遠心分離機のチャンバを図示する。
【図2】図2は、本発明の実施形態による、遠心分離機の処理チャンバの断面図を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の実施形態による、処理チャンバの平面図を図示する。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態による、処理チャンバの断面図を図示する。
【図3A】図3Aは、図3に示されるような処理チャンバの一部分の集中図を図示する。
【図4】図4は、本発明のさらに別の実施形態による、処理チャンバの断面図を図示する。
【図4A】図4Aは、ガス送達用の開口部と、結合疎水性膜とを伴う、処理チャンバの底部の図を示す。
【図4B】図4Bは、チャンバの底部に結合された膜を通した通気用のらせん状チャネルを伴う、処理チャンバの底部の実施形態を示す。
【図5】図5は、プリズムの形である、試料の分離の進展を検出するための手段を伴う、遠心分離中に試料が流れるチャネルまたは間隙を伴う回転チャンバ用の蓋の内側の図を示す。
【図6】図6は、プリズムによる試料を通る光の経路を示す。プリズム(二重プリズム)は、光源からの光が、遠心分離を通して分離されている試料の少なくとも一部を、少なくとも部分的に貫通することができ、試料の少なくとも一部を通過する光を、光検出器によって検出することができるように、構成される。
【図7】図7は、回転チャンバの蓋に位置するリブの一部である、二重プリズムを示す。
【図8】図8は、本発明の実施形態による、遠心分離機を伴うシステムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、試料を少なくとも2つの成分に分離する遠心分離機を提供する。そのような遠心分離機は、遠心分離される試料を受容するチャンバまたは処理チャンバと、チャンバに位置する試料分離の進展を制御する手段とを備える。
【0019】
ここで図1〜4を参照して、処理ユニット(以下を参照)の一部であってもよい、試料チャンバまたはチャンバをさらに説明する。
【0020】
図1を参照して、本発明の実施形態による遠心分離機の処理チャンバを説明する。チャンバ170は、上方部分172と、下方部分174と含み、回転軸176と、チャンバ170の1つ以上の内部区画に流体接続される流体ポートまたはライン接続176、178を伴う。上方部分172は、回転軸176に位置する領域から上方部分172の周囲に位置する領域まで広がり、実質的に放射状に延在するように配向される支持構造182、ならびに、窓またはプリズム188を通して可視的な少なくとも一部分を含むことができるチャネル186を含む、構造184を含む。チャネル186は、チャンバ170の中の試料格納区画に流体連結し、試料処理の外部監視または検出のために構成することができる。例えば、チャネル186の中の流体中の成分(例えば、細胞)は、処理ステップ中に可視的に分離されてもよく、それにより、チャンバの1つ以上の内部区画の中の細胞または試料成分の分離を表示する。回転手段または軸受180は、軸176の周りでのチャンバ170の回転運動を提供する。
【0021】
チャンバ170はさらに、優先的に滅菌疎水性膜またはタンポンを備える、少なくとも1つの通気口を備えてもよい。好ましくは、これらの膜またはタンポンは、チャンバの最上部または底部に位置してもよい。チャンバの少なくとも1つの通気口には、チャンバ内の圧力を変更することなく、または空気あるいはガスの交換用のさらなる入口および/または出口ポートを提供することなく、チャンバ内の体積を変更することができるという特有の利点がある。
【0022】
当該技術分野で公知の遠心分離機は、バッチ式遠心分離を可能にし、すなわち、低減または濃縮される試料の体積がチャンバよりも大きければ、濃縮生成物を受容するために、いくつかの遠心分離ステップが必要である。本発明の一実施形態では、システムは、連続遠心分離を可能にする。試料、媒体、ガス、および他の材料は、遠心分離過程を止めて、遠心分離機を補充する(バッチ式遠心分離)ことなく、例えば、入口および出口ポート(例えば、図1:入口ポート178および出口ポート180)を通して、システムに進入および退出することができる。これは、試料の連続濃縮を可能にし、生成物は、遠心分離の終わりに一度だけ除去されてもよく、したがって、付加的な取り扱いによる潜在的な汚染を回避する。
【0023】
図1aでは、回転容器または遠心分離チャンバ500が示されている。回転チャンバ500の底部では、少なくとも1つのセンサパッド504を備える、顕微鏡焦点領域505が配置される。回転チャンバ500より下では、顕微鏡光学部501と、光学部の焦点を合わせるための顕微鏡駆動モータ502とを備える、顕微鏡カメラモジュール503が位置する。顕微鏡光学部501は、自動的に焦点を合わせ、遠心分離中に少なくとも2つの成分に分離されている試料を検出することができるように構成される。それにより、遠心力によってチャンバ500内の分離された試料によって形成される、異なる層を検出するために、顕微鏡カメラモジュール503を使用することができる。加えて、試料成分のpH値を測定することができる。この目的で、存在するpH値に応じて色を変化させるインジケータが、チャンバ500内で使用される。さらに、外側から顕微鏡カメラモジュール503によって位置を検出することができるように、チャンバ内に配置される液晶を使用して、チャンバの中の試料の温度が測定されることが可能である。それにより、チャンバ500内の温度を測定することができる。
【0024】
顕微鏡カメラモジュール503が可動式に載置されることができるので、異なるセンサパッド504における顕微鏡光学部501が、チャンバ500の壁の中に位置した状態で、モジュール503を方向付けることができる。これは、チャンバ500の中で形成された種々の層の検出、またはチャンバ500内の異なる位置でのpHまたは温度の検出を容易にする。
【0025】
図2は、本発明の実施形態による、試料処理チャンバの断面図を示す。チャンバ190は、上方部分192および基礎部分194と、1つ以上の内部区画とを含む。チャンバ190は、チャンバ内の1つ以上の区画の中に配置された試料に遠心力を作用させるために、軸の周りを回転するように構成され、それにより、試料の少なくとも2つの成分を分離する。チャンバは、チャンバの少なくとも1つの区画に流体接続される中央ライン196を含む。チャンバ190の構成要素はさらに、外側ライン198と、回転軸受200と、回転シール202、204、206と、チャンバへの外側入力ライン205と、下部放射状チャネル208と、チャンバ区画への内側ライン入口210と、斜面212と、偏向器214とを含む。チャンバ保持器216が含まれ、本発明のシステムの他の構成要素とのチャンバ190の確実な配置/連結のために構成される。
【0026】
遠心分離チャンバ190は、好ましくは、選択的に2つの流体ラインを有するか、好ましくは2つの流体ラインを有する、回転シールを備える。流体ラインは、異なる位置でチャンバ190に進入することができる。例えば、上方部分192(蓋)の外周に第1の流体ラインを配置することが可能である。第2の流体ラインが、さらに内側、例えば、チャンバ190の中心にさらに向かって2mmから20mmまでの範囲で配置されることができる。選択的に、通気口が、例えば、膜の形で、上方部分192に位置することができる。
【0027】
概して、遠心分離チャンバの穴またはライン入口等の開口部の位置は、特定の試料の遠心分離に最適であるように構成することができる。特定の試料の成分および試料中の各成分の相対体積に応じて、特定の成分の除去および/または検出を達成することができるように、開口部を配置することができる。
【0028】
図2Aは、チャンバ201の平面図を図示する。チャンバ201は、内側ライン203と、下部放射状チャネル205と、チャンバへの内側ライン入口207と、選択的に、偏向器209と、斜面211と、光経路とを含む。
【0029】
図3は、本発明の別の実施形態による、チャンバの断面図を図示する。チャンバ220は、その周りをチャンバが回転する軸と、中央ライン接続222および外側ライン接続224と、1つ以上の内部区画とを含む。さらに、回転軸受226、ならびに回転シール228、230、232、内側チャネル234、光学検出チャネル236(上記と同様)、チャンバへの内側ライン入口238、内側ライン240、下部放射状チャネル242が図示されている。チャンバはさらに、内側補強246と、チャンバ保持器248とを含む。図3Aは、上記で説明されるようなチャンバ220の一部分に焦点を合わせた図を図示する。光学検出チャネル236、プリズム237、および光経路239(矢印によってさらに示される)が示されている。光源(図示せず)からの光が、遠心分離中に試料で充填されるチャネル234を通過するように、プリズム237によって方向付けられることが分かる。チャネル234から退出する光は、プリズム237によって再方向付けされ、検出器(図示せず)によって検出されることができる。
【0030】
図4Aに示される本発明の別の実施形態では、遠心分離機のチャンバの底部は、疎水性膜292で覆われてもよい、1つ以上の開口部291を保有することができる。これらの開口部291は、例えば、細胞培養過程のために、チャンバの中へガス(CO、N、O等)を送達するために使用される。膜は、チャンバとの滅菌接続を確保する態様で、チャンバの底部に接着されるか、または、熱的に、あるいは超音波で結合されるか、または他の手段で結合されることができる。
【0031】
本発明の別の実施形態(図4B)では、チャンバの底部は、ガス流のためのチャネル、例えば、らせん状システム293として組み立てられるチャネルのシステムを有することができ、このシステムは、ガスとチャネル(図示せず)を覆って結合される膜との間に広い接触面積を確保する。チャネルシステムは、少なくとも1つの入力(開口部)294と、オプションのガス用の出力(開口部)295とを保有する。
【0032】
図1−4Aのチャネルの入口またはポートは、数およびチャネル内の場所が異なってもよい。
【0033】
図4は、本発明の別の実施形態による、チャンバの断面図を図示する。チャンバ250の構造は、上記で説明されたようなチャンバと多くの点で同様であるが、複数の層状構造252をさらに含む。層状構造252は、細胞培養の構造または層を提供するように構成されることができる。使用中、細胞を含む試料をチャンバに導入され、層252を越えて流されることができる。分離処理は、層に付着する細胞が、層に対する親和性が少ない細胞から分離されるように、チャンバの回転を含むことができる。断続的な回転および/または回転中の中断は、分離処理のために、層状構造252の表面から培養細胞をさらに分離することができる。チャンバはさらに、図示された中央ライン251と、外側ライン253と、軸受255と、回転シール257と、チャンバへの外側ライン入口259と、上方部分261と、内側チャネル263と、基礎部分265と、保持器267と、下部放射状チャネル269と、チャンバへの内側ライン入口271とを含む。
【0034】
本明細書で説明されるようなチャンバは、種々の材料を備えてもよく、または種々の材料で作られてもよい。好ましい実施形態では、プラスチック、ポリスチロール(PS)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ガラス、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリルレート(PMMA)、および/またはポリエチレンテレフタレート(PET)のような、透明材料が使用される。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および/または熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコーン、または上記の材料のうちの1つ以上を備える組成物。チャンバはまた、ポリエチレン(PE)で作ることもできる。好ましい実施形態では、チャンバの中の層は、コラーゲン、キチン、アルギン酸塩、および/またはヒアルロン酸誘導体を備えるか、またはそれで作られる。生分解性である、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、およびそれらの共重合体も可能である。代替として、ポリスチロール(PS)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリルレート(PMMA)、および/またはポリエチレンテレフタレート(PET)等の、非生分解性材料を使用することができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および/または熱可塑性ポリウレタン(TPU)も使用することができる。他の代替案は、セラミックと、ハイドロキシアパタイト(HA)またはリン酸カルシウムのようなガラス材料とを含む。チャンバの中の層は、固体材料または有孔性となり得る。
【0035】
好ましい実施形態では、チャンバは、直径が2cmから50cmまで、高さが5mmから50cmまでの寸法を有する。遠心分離は、最大1000xgにおいて優先して実行される。層の数および層の間の距離は、可変である。好ましい実施形態では、チャンバは、試料が遠心分離されるための適切な温度を提供するように、加熱および冷却することができる。この目的で、加熱および/冷却手段は、チャンバに、またはチャンバの周辺に位置することができる。
【0036】
遠心チャンバの中の光学層の検出を、図5−7において詳細に示す。
【0037】
図5に示される円筒形状の遠心分離機チャンバは、平坦な頂面上に1つ以上のいくつかの安定化リブ805を携持し得る蓋800によって、その上側の限界とされる。これらの放射状リブ805のうちの少なくとも1つは、蓋800が遠心分離機チャンバに取り付けられると、遠心分離機の内部体積に開口する狭い間隙またはチャネル801を覆う。間隙801は、蓋内面から、蓋800を数ミリメートル通ってリブ805の中へ、軸方向に延在する。したがって、それは、透明材料が使用されると、リブ805内の外側から可視的であってもよい。放射方向に拡張して、間隙801は、中心付近から、円筒形状の遠心分離機壁(図5)まで到達する。
【0038】
遠心分離中に、遠心分離機チャンバ全体におけるのと同じ力が、間隙801内に作用する。リング形状の隣接する懸濁層が、間隙801の中へと並列に伸張し、外部光学センサによって十分に検出可能である、クロスカットされた薄い層のような、軸方向に起立した隣接する薄い領域として表示されている。
【0039】
間隙801の幅は、自由に決定されることができるが、間隙の中の全ての層関連領域の透過光分析にとって十分に小さい必要がある。それにより、光透過測定を介して外側から「非接触」方式で、遠心分離機チャンバの中の全ての懸濁層の光学密度および色を定量化することが可能である。
【0040】
垂直の照明およびセンサの位置が、間隙の中の層の運動を観察できるようにするために、リブに、例えば、リブの両側に、プリズムを追加することができ、それは、透明な筐体材料自体によって行われてもよい。
【0041】
プリズム810は、間隙(水平)を通る垂直の生成された照明光線を屈折させて、最上部まで戻し、再び垂直させる(図6)。遠心分離中に、同期の位置の誘起された電子閃光が、プリズム810の片側、例えば、左プリズムの中へ光を透過させ、屈折によって間隙を照射することができる。透過結果は、プリズム810の反対側、例えば、右プリズムによって屈折させられて、おそらくは最上部の上部閃光源に隣接している、垂直に載置されたカメラに戻される。結果として生じる光学センサユニットは、反射センサのように扱いやすいが、同時に、完全透過測定を可能にする。
【0042】
プリズムの角度の配設は、照明閃光ビームに対するプリズム内面上での「全反射」を確保し、光源とカメラとの間で外面上での直接反射を回避する。したがって、鏡面被覆の必要性がなく、設備の手直しが必要とされることなく、射出成形技術を使用することができる(図7)。
【0043】
一実施形態では、本発明の遠心分離機は、参照することにより本明細書に組み込まれる、EP0869838B1から知られるような、試料処理システムの一部となり得る。
【0044】
そのような試料処理システムは、試料分離システムおよび試料処理技法の両方を統合する。システムは、磁気に基づいた分離等の分離方法の前に、ある処理ステップを行うように構成される試料処理ユニットを含むことができる。そのようなものとして、本発明は、複合の試料処理システムと試料分離システムとを含むことができる。試料処理システムまたはユニットは、細胞の培養、洗浄、調製、インキュベーション、標識化、および同等物等の、試料処理を提供することができる。加えて、試料処理システム/ユニットは、遠心分離に基づいた分離技法を含むことができ、その場合、試料から少なくとも第1の成分および第2の成分を分離するよう、遠心力が試料に作用させられる。
【0045】
このようにして、本発明のシステムは、典型的には、試料処理ユニットおよび試料分離ユニットの両方を含む。本発明の複合処理/分離システムは、密度に基づいた分離、免疫親和性分離、免疫磁気を含む磁気分離、細胞培養/刺激/活性化、洗浄、または最終処方ステップを含む、種々の複合した細胞処理ステップを自動的に行うようにプログラムすることができる、閉システムを含むことができる。本発明は、ユーザのエラーを最小化し、無菌状態を維持し、手動の相互作用をほとんど、または全く用いずに複合した細胞処理ステップを行い、感染性物質を処理する時に操作者の暴露を最小化する、システムを提供する。臨床での、または手術室の中での処理が可能である。デバイスは、患者に接続された状態で操作することができ、例えば、患者から得られた骨髄は、管類セットの投入バッグの中へ直接、処理されてもよい。そこから、例えば、骨髄を処理する、すなわち、少なくとも2つの成分に分離することができる。
【0046】
したがって、図8を参照して、そのような試料処理システムの実施形態を説明する。図示されるように、処理システムは、種々の連結された構成要素、流量チャネル、緩衝剤、試薬等を含む。多数の構成が利用可能であり、現在の構成は、例示目的で提供されていることが理解されるであろう。図8を参照すると、構成要素は、システム緩衝剤300と、スパイクポート301と、滅菌フィルタ302と、プラズマ/処理中バッグ303と、磁気標識試薬容器304と、スパイクポート305と、磁気試薬滅菌フィルタ306と、滅菌フィルタ307と、緩衝剤/媒体バッグ308と、細胞培養培地ポートと、補助ポート309と、下向きの単一方向弁310と、上向きの単一方向弁311と、試料バッグ312と、試料バッグコネクタ313と、試料フィルタ314と、試料ポート315と、フィルタ316と、分離前フィルタ320と、処理中貯蔵バッグ321と、磁気分離カラム322と、廃棄物バッグ323と、体積縮小ユニット324と、陽性留分バッグ325と、陰性留分バッグ326と、滅菌空気フィルタ327と、ポンプ328と、圧力センサ1への空気フィルタ329と、圧力センサ2への空気フィルタ330と、試料/細胞処理ユニット332とを含む。
【0047】
(実施例:細胞培養)
本発明の遠心分離チャンバは、細胞培養フラスコまたはバッグと同様に、細胞の培養に使用することができる。
【0048】
3.2E5/mlのヒト細胞株K562を、10%ウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640細胞培養培地の30mlの体積中で、遠心分離チャンバに塗布した。チャンバは、5%COのCOインキュベータの中に入れた。24、48、および70時間後に、細胞計数および細胞生存のために内容物のアリコートをチャンバから除去した。播種した細胞は、80%、95%、および95%生存率で、4.1E5/ml、6.4E5/ml、および9.2E5/mlの生存細胞に拡大した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を少なくとも2つの成分に分離する遠心分離機であって、
遠心分離される試料を受容するチャンバを備えており、
該試料の分離の進展を制御する手段が、該チャンバに位置することを特徴とする、遠心分離機。
【請求項2】
前記チャンバは、
円形のベースプレートであって、該ベースプレートの中心が回転軸に対して実質的に垂直に配向される、ベースプレートと、
該ベースプレートに対して実質的に垂直に配向される、外装材と、
円形のカバープレートであって、該ベースプレートから遠く離れている該外装材の縁の上に配置可能である、カバープレートと
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記試料の前記分離の進展を制御する前記手段は、前記ベースプレートまたは前記カバープレートに配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記試料の前記分離の進展を検出する前記手段は、
光源からの光が、分離されつつある該試料の少なくとも一部を、少なくとも部分的に透過することと、
該試料の少なくとも一部を通過する光を、光検出器によって検出することと
が可能であるように配置されることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記試料の前記分離の進展を制御する前記手段は、該試料が検出可能となるように遠心分離中に進入することができる、前記ベースプレートまたは前記カバープレート内に位置するチャネルまたは間隙に配置されることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記分離の進展を検出する前記手段は、回転容器の回転軸に対して本質的に垂直に、該回転容器に位置することを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記チャネルまたは間隙は、前記ベースプレートまたは前記カバープレートの前記回転軸に位置する領域から該ベースプレートまたは該カバープレートの周囲に位置する領域まで、放射状に延在するように配向されることを特徴とする、請求項4に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記試料の前記分離の進展を制御する前記手段は、光源からの光が、該試料の少なくとも一部を透過させられることができるように位置する、窓、鏡、またはプリズムであり、該窓、鏡、またはプリズムから出る該光は、各々、光検出器によって検出可能であることを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項7】
前記窓、プリズム、または鏡は、前記チャネルまたは間隙を覆うように配置されることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記チャンバは、細胞の培養のための容器としての機能を果たすことができるように構成されることを特徴とする、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項9】
前記チャンバは、その上で細胞を増殖させるための少なくとも1つの層を備えることを特徴とする、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記チャンバは、使い捨てであるか、および/または、滅菌することができることを特徴とする、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記チャンバは、プラスチック、ポリスチロール(PS)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ガラス、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリルレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコーンから成る群より選択される、材料を備えるか、または材料で作ることができ、該チャンバはまた、ポリエチレン(PE)、コラーゲン、キチン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸誘導体、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、およびそれらの共重合体、ポリスチロール(PS)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、セラミック、ハイドロキシアパタイト(HA)およびリン酸カルシウムのようなガラス材料、および上記の材料のうちの1つ以上を備える組成物で作ることもできることを特徴とする、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも2つの成分に分離されることができる試料を提供することと、
請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の遠心分離機の中で該試料を遠心分離することと
を含む、試料を少なくとも2つの成分に分離するための方法。
【請求項13】
特に、前記試料の層の形成、pH値の変化、および/または温度の変化を検出することによって、前記分離の進展を検出することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試料は、血液、骨髄、細胞、細胞および/または細胞成分を含む組成物、または類似物等の生体試料である、請求項12または13に記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−506057(P2011−506057A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536549(P2010−536549)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003845
【国際公開番号】WO2009/072006
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510155357)ミルテンイ バイオテック ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】