説明

試料作製方法

【課題】
試料基板内の所望観察領域を試料基板を細かく分離せずに正確に位置出しして試料基板表面から任意の深さの領域についての平面試料を容易に作製することのできる薄片状試料の作製方法及び装置を提供すること。
【解決手段】
集束イオンビーム4の照射によって試料基板1に、該基板表面に対し垂直な溝6と傾斜した溝8とを交差させて形成しクサビ状の試料片9を切り出す試料片摘出工程と、切り出した試料片9を試料ホルダ12上に固定する工程と、所望の観察領域を含んで試料基板1の表面15に略平行な薄壁部18を集束イオンビーム4の照射により形成する工程とにより、薄片状の観察部を有する試料を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと略記する)や走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略記する)により観察するための平面状試料の作製方法および装置に関わり、特にエネルギービームを用いて試料基板から観察所望領域を含む微小試料片を分離摘出し、該微小試料片の上記観察所望領域を平面状に加工する方法およびそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TEMによる観察,分析や計測(以下、これらを代表して観察と略記する)のニーズは、試料基板(例えば半導体ウェハやチップ等)の表面に対し垂直方向の観察面を有する試料(以下、断面試料と略記する)についてだけではなく、試料基板の表面に対し平行方向の観察面を有する試料(以下、平面試料と略記する)についても多い。
【0003】
先ず、従来の平面試料の典型的な作製方法について説明する。観察対象とする試料の例を次のとおりとする。試料基板は、半導体ウェハ(例えば、厚さ500μm,直径300mm)であり、観察を所望とする領域は、上記ウェハ表面上のある特定領域で、かつウェハ表面から約3μmの深さに位置する0.5μm平方の領域とする。先ず、ダイヤモンドカッタやダイシングソー等を利用して、上記ウェハから観察所望領域を含んだ1mm平方程度の大きさの試料片を切り出す。切り出した試料片がこの程度の大きさであれば、TEM試料を保持するメッシュ上に容易に載せられ、取り扱い易い。次いで、研磨用治具の表面に、切り出した試料片の表面(元のウェハ面)が上記研磨用治具の表面に面するようにして接着固定する。
【0004】
研磨用治具には種々の形態のものがあるが、基本的にはマイクロメータヘッド等のミクロンオーダの寸法を計ることのできる機器が設置されている研磨治具を用いて、試料の平面性を調節しながら研磨する。試料片を固定した研磨用治具を研磨材が塗布されて回転する研磨盤上に押し当てて試料片を裏面から研磨する。研磨材や研磨盤の回転速度等を調整しながら、試料片の裏面から約490μmを研磨する。この作業によって厚さ約10μmの研磨試料が得られる。
【0005】
この研磨試料をさらに薄くするために、研磨試料の表面および裏面から低加速電圧のアルゴンイオンを斜め方向から照射する(この操作を、イオンシニングと云う)。この時、所望の観察領域を露出させるためには、イオン照射停止のタイミングが大きく影響するので、イオン照射とイオン照射部の光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡,透過型電子顕微鏡等による観察とを繰り返し、研磨試料の中央部に穴が開く頃合いを見計らってイオン照射を停止し、この穴の周辺の100nm程度以下に薄くなった薄膜部をもってTEM観察すべき平面試料とする。この薄片状の試料をメッシュ上に移し替え、このメッシュをTEMステージ上に装着してTEM観察を実行する。このような方法では、試料片の切り出しからTEM観察開始までには、早くても1日、慎重に作業を進めると数日を要することも少なくない。
【0006】
このような平面試料の作製方法については、例えば、論文集:「ウルトラマイクロスコピー」,第52巻,(1993年) 第127頁〜第140頁(Ultra-microscopy, 52,(1993) pp.127〜140)に、H.Cervaらが"Specific prepa-ration procedures for failure analysis of (sub) micron areas in silicon devices"と題して記載している。
【0007】
【特許文献1】論文集:「ウルトラマイクロスコピー」,第52巻,(1993年) 第127頁〜第140頁(Ultra-microscopy, 52,(1993) pp.127〜140)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したような従来の平面試料の作製方法には、以下のような問題があった。
1)目標位置の位置出しの問題
上記した従来の平面試料作製方法では、ウェハ面内での位置特定、特に、ミクロンレベルでの位置出しを要する平面試料の作製は非常に難しく、また深さ方向の位置合わせも非常に難しい。例えば、半導体装置製造工程において、ある特定箇所のコンタクトホール底面部の50nm厚の層の構造を明らかにしたいというニーズに対しては、上記した従来の加工方法では、水平面内の位置出しが困難なことと、深さ方向の位置制御が極めて困難なこととのため、満足できる観察結果は殆ど得られない。このように、従来の加工方法では、観察すべき箇所が例えば1個しか無いような貴重な試料について、的確な観察結果をもたらし得る確率は非常に小さく殆どゼロに近かった。
2)ウェハ破損の問題
ウェハ検査によって得られた不良領域について平面TEM観察の必要が生じた場合、上記したようにウェハを劈開や、ダイヤモンドカッタやダイシングソーによって分断して、目的とする不良領域を含んだペレットに加工し、このペレットを上記の方法によって平面試料に仕上げる。つまり、従来の加工方法では、平面試料をウェハから作製するためには、観察箇所がウェハ内のたった1点であっても、必ずウェハを分断しなければならない。分断によって隣接する正常なチップまで分断されてしまう。最近では、ウェハ径は200mmであり、さらに300mmまたはそれ以上に大口径化する傾向にあるため、付加価値が高いデバイスが数多く搭載されたウェハをたった数箇所の検査のために切断や劈開で分断して、隣接する正常なチップまでも廃棄処分としてしまうことは非常に不経済となってきている。従って、ウェハを切断することなく観察所要領域のみを摘出し、特定領域の平面試料を作製できる加工方法が望まれている。
3)近接した深さの異なる部分についての平面試料作製の問題
隣接する複数の観察所望領域が、例えば、面内方向で10μm程度しか離れておらず、しかもウェハ表面からの深さが互いに異なるような観察ニーズも多い。このようなニーズに対しては、従来の加工方法では全く対応できなかった。すなわち、上記した従来方法では、複数の観察所望領域のうち1領域(ある特定深さの観察部)についてのみの平面試料を作製/観察できるが、他の観察所望領域については試料作製/観察を断念せざるを得なかった。つまり、互いに面内方向で近接しておりしかも深さの異なる複数領域についての平面試料を作製することができなかった。
4)加工時間の問題
従来の方法では、機械的研磨に要する時間が長く、特に、研磨材の調整や研磨盤の回転調整等の多くのパラメータに気を配りつつの手作業に長時間を要した。また、イオンシング作業も、低加速でイオン照射するため試料表面が削れる速度が非常に遅いため、所望の観察領域を露出させるためには非常に長時間を要する上、最終段階ではイオン照射とイオン照射部の観察を繰り返して仕上げなければならず、これも時間の要する作業である。加工時間は上述のように1日から数日を要する。従って、不良部検出から観察結果の同定までの時間を短縮するためには、試料作製時間の短縮が望まれていた。
【0009】
特に、研磨作業は、研磨物が貴重な観察用試料であるため、作業者は熟達した技能で終始手作業で慎重に行なうか、たとえ一部に機械研磨の適用が可能である場合でも、研磨途中には常に研磨状況を把握せねばならないため、精神的緊張を長時間強いられるという問題も抱えていた。
【0010】
本発明は上述した1)〜4)の諸問題に鑑みてなされたもので、本発明の第1の目的は、ウェハ検査により検出された異物や欠陥等が存在する特定の観察所望箇所を、ウェハを切断分離せずに正確に位置出ししてウェハ表面に平行な観察面を有する平面試料を作製するための試料作製方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、上記した本発明の試料作製方法を実施するのに使用して好適な試料作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した本発明の第1の目的は、
(01)試料ステージ上に載置した試料基板の一部を上記試料基板表面に対し略平行な観察面を有する平面試料に加工するための平面試料の作製方法であって、上記試料基板にエネルギービームを照射することによって上記平面試料に加工すべき領域を含む微小試料片を上記試料基板から分離摘出しこの分離摘出した上記微小試料片を試料ホルダ上に固定する工程と、この試料ホルダ上に固定した上記微小試料片の少なくとも一部をエネルギービームの照射によって上記試料基板の表面に対し略平行な観察面を有する平面試料に加工する工程とを含んでなる平面試料の作製方法により達成される。このように、試料基板から分離摘出した微小試料片をエネルギービームを用いて平面状に加工することにより、試料基板の表面に平行な観察面を有する微小な平面試料を容易かつ高い加工精度で作製することができる。
(02)上記(01)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料基板から上記微小試料片を分離摘出して上記試料ホルダ上に固定する工程は、上記試料基板の上記平面試料に加工すべき領域の近傍への上記エネルギービームの照射により上記試料基板内に垂直溝と斜め溝とを上記試料基板内で交叉させて形成することによって上記試料基板の一部からなる支持部によって片持ち支持された上記微小試料片を形成する工程と、この片持ち支持された上記微小試料片の一部に移送手段の一部を固着させる工程と、上記支持部を上記エネルギービームの照射により切断して上記微小試料片を上記試料基板から分離摘出する工程と、上記の移送手段を駆動して上記の分離摘出した微小試料片を上記試料ホルダまで移送して該微小試料片を上記試料ホルダ上に固定する工程と、上記の試料ホルダ上に固定した上記微小試料片から上記移送手段を分離する工程と、を含んでなるものとすることができる。かかる方法を採ることにより、人手を介することなくして、容易に試料基板から微小試料片を分離摘出して試料ホルダ上に固定することができる。
【0012】
上記した本発明の第1の目的は、また、
(03)試料ステージ上に載置した試料基板の一部から上記試料基板の表面に対し略平行な観察面を有する平面試料を作製するための平面試料の作製方法であって、上記試料基板にエネルギービームを照射することによって所望の観察領域を含む微小試料片を上記試料基板から分離摘出してこの分離摘出した上記微小試料片を上記観察に用いる観察装置に適合する試料ホルダ上に固定する工程と、上記試料ホルダ上に固定した上記微小試料片の少なくとも一部をエネルギービームの照射により上記試料基板の表面に対して略平行な観察面を有する平面試料に加工する工程とを含んでなる平面試料の作製方法により達成される。このように、試料基板から分離摘出した微小試料片を観察装置用の試料ホルダとして使用できる試料ホルダ上に固定することにより、平面加工終了後は、上記試料ホルダをそのまま上記観察装置内に組み込んで、直ちに観察を開始することができる。
(04)上記(03)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料基板から上記微小試料片を分離摘出して上記試料ホルダ上に固定する工程は、上記試料基板の上記所望の観察領域の近傍へのエネルギービームの照射によって上記試料基板内に垂直溝と斜め溝とを上記試料基板内で交叉させて形成することにより上記試料基板の一部からなる支持部により片持ち支持された上記微小試料片を形成する工程と、この片持ち支持された上記微小試料片の一部に移送手段の一部を固着させる工程と、上記支持部を上記エネルギービームの照射により切断して上記微小試料片を上記試料基板から分離摘出する工程と、上記の移送手段を駆動してこの分離摘出した微小試料片を上記試料ホルダまで移送して上記微小試料片を上記試料ホルダ上に固定する工程と、上記試料ホルダ上に固定した上記微小試料片から上記移送手段を分離する工程とを含んでなることができる。かかる方法を採ることにより、全く人手を介することなしで、容易かつ正確に試料基板上の所望部分から微小試料片を分離摘出して、試料ホルダ上に固定することができる。
(05)上記(02)項または(04)項に記載の平面試料の作製方法において、上記の片持ち支持された微小試料片の一部に上記移送手段の一部を固着させる工程における上記微小試料片の一部への上記移送手段の一部の固着は、上記片持ち支持された微小試料片の一部に上記移送手段の一部を接触させてこの接触部にイオンビームアシストデポジション膜を形成することによりこのイオンビームアシストデポジション膜を介して上記微小試料片の一部に上記移送手段の一部を固着させる手法を用いて行われることことができる。このように微小試料片と移送手段との固着にイオンビームアシストデポジション膜を用いることによって、両者間の確実な接続を実現できる。
(06)また、上記(02)項,(04)項及び(05)項のいずれかに記載の平面試料の作製方法において、上記の分離摘出した微小試料片を上記試料ホルダ上に固定する工程における上記微小試料片の上記試料ホルダ上への固定は、上記の分離摘出した微小試料片を上記試料ホルダに接触させてこの接触部にイオンビームアシストデポジション膜を形成することによりこのイオンビームアシストデポジション膜を介して上記分離摘出した微小試料片を上記試料ホルダ上に固定させる手法を用いて行われることができる。このように分離摘出した微小試料片の試料ホルダ上への固定にイオンビームアシストデポジション膜を用いることにより、両者間の確実な接続を実現できる。
(07)さらに、上記(05)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料ホルダ上に固定した上記微小試料片から上記移送手段を分離する工程における上記微小試料片からの上記移送手段の分離は、上記微小試料片に上記移送手段を固着している上記イオンビームアシストデポジション膜にエネルギービームを照射して該イオンビームアシストデポジション膜を切除することにより上記微小試料片から上記移送手段を分離する手法を用いて行われることができる。このように、エネルギービーム照射によって微小試料片と移送手段とを固着しているデポジション膜を切除することにより、微小試料片を損傷させることなく、容易に試料ホルダ上に固定された微小試料片からの上記移送手段の切り離しができる。
(08)また、上記(01)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料基板から上記微小試料片を分離摘出して上記試料ホルダ上に固定する工程は、上記試料基板の上記平面試料に加工すべき領域の近傍へのエネルギービームの照射により上記試料基板内に垂直溝と斜め溝とを上記試料基板内で交叉させて形成することによって上記試料基板の一部からなる支持部によって片持ち支持された上記微小試料片を形成する工程と、上記の片持ち支持された微小試料片の一部に移送手段の一部を接触させこの接触部にイオンビームアシストデポジション膜を形成することによって上記イオンビームアシストデポジション膜を介して上記微小試料片の一部に上記移送手段の一部を固着させる工程と、上記支持部を上記エネルギービームの照射によって切断して上記微小試料片を上記試料基板から分離摘出する工
程と、上記の移送手段を駆動して上記試料基板から分離摘出した上記微小試料片を上記試料ホルダまで移送して上記微小試料片を上記試料ホルダ上に接触させてこの接触部にイオンビームアシストデポジション膜を形成することによってこのイオンビームアシストデポジション膜を介して上記微小試料片を上記試料ホルダ上に固定させる工程と、上記微小試料片の一部に上記移送手段の一部を固着させている上記イオンビームアシストデポジション膜にエネルギービームを照射して上記イオンビームアシストデポジション膜を切除することにより上記微小試料片から上記移送手段を分離する工程とを含んでなることができる。このような方法を採ることにより、人手を介することなくして、容易に試料基板から微小試料片を分離摘出して試料ホルダ上に固定することができる。
(09)また、上記(03)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料基板から上記微小試料片を分離摘出して上記試料ホルダ上に固定する工程は、上記試料基板の上記所望の観察領域の近傍へのエネルギービームの照射によって上記試料基板内に垂直溝と斜め溝とを上記試料基板内で交叉させて形成することによって上記試料基板の一部からなる支持部によって片持ち支持された上記微小試料片を形成する工程と、上記の片持ち支持された微小試料片の一部に移送手段の一部を接触させこの接触部にイオンビームアシストデポジション膜を形成することにより上記イオンビームアシストデポジション膜を介して上記微小試料片の一部に上記移送手段の一部を固着させる工程と、上記の支持部を上記エネルギービームの照射によって切断して上記微小試料片を上記試料基板から分離摘出する工程と、上記移送手段を駆動して上記試料基板から分離摘出した上記微小試料片を上記試料ホルダまで移送し上記微小試料片を上記試料ホルダ上に接触させこの接触部にイオンビームアシストデポジション膜を形成することによりこのイオンビームアシストデポジション膜を介して上記微小試料片を上記試料ホルダ上に固定させる工程と、上記微小試料片の一部に上記移送手段の一部を固着させている上記イオンビームアシストデポジション膜にエネルギービームを照射して上記イオンビームアシストデポジション膜を切除することにより上記微小試料片から上記移送手段を分離する工程とを含んでなることができる。かかる方法を採ることによって、人手を介することなくして、容易に試料基板から微小試料片を分離摘出して試料ホルダ上に固定することができる。
(10)また、上記(01)項又は(02)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料ホルダは、上記試料基板から分離摘出した上記微小試料片を固定するための薄板部を含んで構成され、上記試料基板から分離摘出された微小試料片は上記薄板部の上面(厚さ方向に平行な面)上に固定されることができる。これによって、後の所要観察面の平面化加工時及び観察装置による観察面の観察時における微小試料片の適正な姿勢を確保することができる。
(11)また、上記(10)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料ホルダは少なくとも上記試料基板からの上記微小試料片の分離摘出時には、上記試料ステージ上に上記薄板部の側面(厚さ方向に垂直な面)を上記試料ステージの上面に平行に対面させて載置されることができる。これにより、微小試料片の分離摘出時における試料ホルダを、分離摘出した微小試料片を該試料ホルダ上に固定するのに適した姿勢に保持することができる。
(12)また、上記(03)項又は(04)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料ホルダは、上記観察に用いる観察装置に適合する試料ホルダ上に搭載可能な薄板部を含んで構成され、上記試料基板から分離摘出された上記微小試料片は上記薄板部の上面(厚さ方向に平行な面)上に固定されることができる。かかる方法により、後の所要観察面の平面化加工時および観察装置による観察面の観察時における微小試料片の適正な姿勢を確保することができる。
(13)また、上記(12)項に記載の平面試料の作製方法において、上記試料ホルダは少なくとも上記試料基板からの上記微小試料片の分離摘出時には、上記試料ステージ上に上記薄板部の側面(厚さ方向に垂直な面)を上記試料ステージの上面に平行に対面させて載置されることができる。これにより、微小試料片の分離摘出時における試料ホルダを、分離摘出した微小試料片を該試料ホルダ上に固定するのに適した姿勢に保持することができる。
(14)また、上記(01)項から(04)項までのいずれかに記載の平面試料の作製方法において、上記試料基板から分離摘出された上記微小試料片が、上記試料基板の表面と、上記試料基板の表面に対して略垂直な面とを少なくとも有する形状をしていることできる。このように、分離摘した微小試料片に元の試料基板表面に対し略垂直な面を持たせておくことによって、平面化加工後に得られる観察面を試料基板表面に対して略平行な面とすることが容易となる。
(15)また、上記(01)項から(04)項までのいずれかに記載の平面試料の作製方法において、上記試料基板から分離摘出された上記微小試料片が、上記試料基板の表面と、上記試料基板の表面に対して略垂直な面と、上記試料基板の表面に対して傾斜した面とを少なくとも有するクサビ形状をしていることができる。このように、試料基板から分離摘した微小試料片に元の試料基板表面に対し略垂直な面を持たせておくことによって、平面化加工後に得られる観察面を試料基板表面に対して略平行な面とすることが容易となる。なお、試料基板表面に対して傾斜した面を設けることは、エネルギービームの照射による試料基板からの微小試料片の分離摘出を容易にしている。
(16)また、上記(01)項から(04)項までのいずれかに記載の平面試料の作製方法において、上記試料ホルダ上に固定した上記微小試料片の少なくとも一部を上記エネルギービームの照射により上記試料基板の表面に対し略平行な観察面を有する平面試料に加工する工程は、上記微小試料片が有する上記試料基板の表面に対し略平行な方向から上記エネルギービームを照射することにより行われることができる。このように、元の試料基板表面に対し略平行な方向からエネルギービームを照射することにより、元の試料基板表面に対し略平行な観察面を形成することができる。
(17)また、上記(01)項から(04)項までのいずれかに記載の平面試料の作製方法において、上記エネルギービームが、集束イオンビーム,投射イオンビームまたはレーザービームであることができる。平面化加工用のエネルギービームにイオンビームを用いることによって、加工精度の高い平面化加工を実現できる。また、レーザービームを用いた場合には、やや加工精度は劣るが高い加工速度での加工を実現できる。
(18)また、上記(01)項から(13)項までのいずれかに記載の平面試料の作製方法において、上記平面試料は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡による観察、あるいはエネルギ分散形X線分析装置による元素分析を行うための試料として用いられるものであることができる。先にも触れたように、本願発明においては、「観察」なる用語は、観察,分析及び計測を含む意味において用いられている。従って、本発明により作製された試料は、これらの観察,分析及び計測用の試料として用いられることができる。
(19)また、上記(01)項から(04)項までのいずれかに記載の平面試料の作製方法において、上記試料基板から分離摘出した微小試料片の上記試料ホルダ上への固定は、上記試料ホルダを透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡の試料ステージ上に搭載した時に上記微小試料片が有する上記試料基板の表面が上記透過型電子顕微鏡または上記走査型電子顕微鏡の光学軸とほぼ垂直となるような配置関係において行なわれることできる。すなわち、微小試料片が有する元の試料基板表面が観察用装置の光学軸とほぼ垂直になるように配置することによって、微小試料片の平面加工された観察面(元の試料基板表面と略平行な面)を、それと垂直な方向から観察することができる。
(20)なお、本発明によれば、また、試料基板の所望の観察領域を観察するために上記試料基板から分離摘出された微小試料片であって、少なくとも上記微小試料片の一部に上記試料基板の表面に略平行な観察面を有する薄片状部分が形成されてなることを特徴とする微小試料片が提供される。このように観察面を含む領域を薄片状に形成することによって、特にTEM観察に適した薄片状の平面試料が得られる。
(21)また、上記(20)項に記載の微小試料片において、上記の薄片状部分は、上記試料基板の表面からの深さが異なった複数部位にそれぞれ形成されてなることができる。このように、元の試料基板表面からの深さがそれぞれ異なる複数部位に観察平面を形成しておくことによって、これら複数部位についての観察を一度に済ませることができる。
(22)また、上記(21)項に記載の微小試料片において、上記試料基板の表面からの深さが異なった複数部位にそれぞれ形成された上記複数の薄片状部分の厚さが互いにほぼ同じであることができる。このように複数の薄片状部分の厚さを揃えることにより、TEM観察に際しての観察条件を揃えることができる。
(23)また、上記(20)項に記載の微小試料片において、上記の薄片状部分は、上記試料基板の表面からの深さが互いにほぼ同じ複数部位にそれぞれ形成されてなることができる。これによって、元の試料基板表面からほぼ均一な深さ領域にある複数部位についての観察を一度に実行することができる。
(24)さらにまた、本発明によれば、観察用装置の試料ステージに搭載可能な試料ホルダに固定した試料基板の一部から分離摘出した微小試料片の少なくとも一部に上記試料基板の表面に略平行な観察面を有する薄片状部分を設け、上記観察用装置により上記薄片状部分の観察を行なうことを特徴とする試料観察方法が提供される。このように、所望の観察面を含む部分を薄片状に形成して、この薄片状部分を観察することによって、深さ方向分解能の高い観察結果が得られる。
(25)さらにまた、本発明によれば、分析用装置の試料ステージに搭載可能な試料ホルダに固定した試料基板の一部から分離摘出した微小試料片の少なくとも一部に上記試料基板の表面に略平行な分析面を有する薄片状部分を設け、上記分析用装置により上記薄片状部分の分析を行なうことを特徴とする試料分析方法が提供される。このように、所望の分析面を含む部分を薄片状に形成して、この薄片状部分の分析を行なうことによって、深さ方向分解能の高い分析結果が得られる。
【0013】
上記した本発明の第2の目的は、
(26)イオンビームを試料に照射するイオンビーム照射光学系と、上記イオンビームの照射によって試料から発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、上記試料を載置する試料ステ−ジと、上記イオンビームの照射によって上記試料の一部を分離摘出して得られた微小試料片を固定するための試料ホルダの保持手段と、上記微小試料片を上記試料ホルダ上に移し替えるための試料片移送手段と、上記イオンビームの照射領域にアシストデポジション膜を形成するための原料ガスを供給するためのガス供給源とを少なくとも具備してなり、上記試料ホルダの保持手段は、上記イオンビーム照射光学系の光学軸に対し垂直な軸を中心として上記試料ホルダの上記微小試料片を固定する面を上記光学軸に対して少なくとも平行と垂直との2位置に設定できる機能を有してなることを特徴とする平面試料の作製装置によって達成される。かかる装置構成とすることによって、試料から分離摘出した微小試料片の元の試料表面に相当する面をイオンビーム照射光学系の光学軸に対して垂直に保持した状態で該試料ホルダ上への微小試料片の固定を行ない、かつ、上記微小試料片の元の試料表面に相当する面をイオンビーム照射光学系の光学軸に対し平行に保持した状態で上記イオンビーム照射光学系からのイオンビーム照射によって上記微小試料片の平面化加工を行なうことができる。
(27)なお、上記(26)項に記載の平面試料の作製装置において、上記イオンビーム照射光学系は、集束イオンビーム照射光学系または投射イオンビーム照射光学系であることができる。すなわち、本発明において平面試料作製に使用するイオンビーム照射光学系としては、集束イオンビーム照射光学系であってもよく、投射イオンビーム照射光学系であってもよい。いずれを用いても良好な平面加工試料を得ることができる。
(28)また、上記(26)項に記載の平面試料の作製装置において、上記の試料片移送手段は、上記イオンビーム照射光学系の光学軸に対して平行な方向と垂直な方向との2軸方向に上記試料片を移送させる機能を備えたものとすることができる。このように、試料片移送手段を2軸方向移送が可能な構成とすることによって、分離摘出した微小試料片を容易かつ正確に試料ホルダ上に移し替えてやることができる。
(29)また、上記(26)項に記載の平面試料の作製装置において、上記試料ステージ上に上記イオンビーム照射光学系の光学軸に垂直な回転軸を中心にして上記試料ホルダを回転させるための試料ホルダ回転手段をさらに付設することができる。これにより、試料から分離摘出した微小試料片を試料ホルダ上に固定する際及び試料ホルダ上に固定された微小試料片をイオンビーム照射により平面化加工する際の試料ホルダの姿勢を適正に設定してやることができる。
(30)また、上記(26)項に記載の平面試料の作製装置において、上記試料ステージ上に上記イオンビーム照射光学系の光学軸に垂直な上記試料ステージの傾斜軸に対して平行な回転軸を中心にして上記試料ホルダを回転させるための試料ホルダ回転手段をさらに付設することができる。これによって、試料から分離摘出した微小試料片を試料ホルダ上に固定する際及び試料ホルダ上に固定された微小試料片をイオンビーム照射により平面化加工する際の試料ホルダの姿勢を適正に設定してやることができる。
(31)また、上記(26)項に記載の平面試料の作製装置において、上記試料ステージは、上記試料基板を載置するための試料基板載置部と上記イオンビーム照射光学系の光学軸に対して垂直な回転軸を中心にして上記試料ホルダを回転させるための試料ホルダ回転手段とを具備しており、上記試料ホルダ回転手段は上記試料基板載置部から独立して上記試料ステージ上に着脱できるよう構成されてなるものとすることができる。このように、試料ホルダ回転手段を、上記試料基板載置部から独立して上記試料ステージ上に着脱できる構成とすることにより、この試料ホルダ回転手段を試料ステージから取り外してそのままTEM等の観察用装置内に組み込んで使用することができる。
(32)また、上記(29)項から(31)項までのいずれかに記載の平面試料の作製装置において、上記試料ホルダ回転手段は、上記回転軸を頂辺として互いに直交する2面を有する上記試料ホルダの保持手段を固定するための保持手段固定部を備えたものとすることができる。かかる構成を採ることにより、イオンビーム照射光学系の光学軸に対する上記試料ホルダの姿勢を適正に設定してやることができる。
(33)また、上記(26)項から(32)項までのいずれかに記載の平面試料の作製装置において、上記試料ホルダ回転手段は、受光部と、上記試料ホルダ回転手段を駆動させるための電源と、上記試料ステージを収容する試料室の内部もしくは透光性ガラス壁を介して上記試料室の外部に設置された発光部とを具備してなり、上記発光部からの発光信号を上記受光部において受信し、この受信信号によって上記試料ホルダ回転手段を駆動制御するように構成されたものとすることができる。かかる構成を採ることにより、上記発光部からの発光信号の発信を制御することにより、容易かつ正確に試料ホルダの姿勢を制御できる。
(34)また、上記(33)項に記載の平面試料の作製装置において、上記の試料ホルダ回転手段は、上記発光部からの発光信号の発信を制御するための発光制御手段をさらに具備してなるものとすることができる。このような発光制御手段を介することにより、試料室外から、容易かつ正確に試料ホルダの姿勢を制御できる。
(35)また、上記(32)項に記載の平面試料の作製装置において、上記2面のうちの1面は、上記イオンビーム照射光学系の光学軸にほぼ垂直な位置関係に設定され得るように構成されてなるものとすることができる。これにより、イオンビーム照射光学系の光学軸に対する上記試料ホルダの姿勢を適正に設定してやることができる。
(36)また、上記(31)項に記載の平面試料の作製装置において、上記試料基板載置部は、半導体ウェハを保持するためのウェハカセットであることができる。このように、試料ステージ上に試料基板を載置するための試料基板載置部を、半導体装置製造過程で用いられるウェハカセットで構成することができる。
【0014】
上記した本発明の第2の目的は、また、
(37)エネルギービームを試料に照射するためのエネルギービーム照射光学系と、上記エネルギービームの照射によって試料から発生する二次情報を検出する二次情報検出手段と、上記試料を載置する試料ステ−ジと、上記エネルギービームの照射により上記試料の一部を分離摘出して得られた微小試料片を固定するための試料ホルダの保持手段と、上記微小試料片を上記試料ホルダ上に移し替えるための試料片移送手段とを少なくとも具備してなり、上記試料ホルダの保持手段は、上記エネルギービーム照射光学系の光学軸に対して垂直な軸を中心として上記試料ホルダの上記微小試料片を固定する面を上記光学軸に対して少なくとも平行と垂直との2位置に設定できる機能を有してなることを特徴とする平面試料の作製装置によって達成される。このように、本発明において微小試料片の分離摘出等の試料加工に使用する加工用ビームとしては、上述したイオンビームのみに限定されるものではなく、広く一般にエネルギービームと総称されるところの加工用ビームを用いることができる。
(38)また、上記(37)項に記載の平面試料の作製装置において、上記のエネルギービーム照射光学系は、集束イオンビーム照射光学系,投射イオンビーム照射光学系またはレーザービーム照射光学系であることができる。試料加工用エネルギービームとしてイオンビームを用いることにより、高い加工精度での平面化加工を実現できる。また、レーザービームを用いた場合は、やや加工精度は劣るが高い加工速度での加工が実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による薄片状試料の作製方法および作製装置を用いることで、ウェハ等の試料基板を細分化することなくして、試料基板内の所望の観察領域を含む平面試料(薄片状試料)を作製することができ、特に、試料基板内の互いに近接した複数の領域から、試料基板表面からの深さがそれぞれ異なる部位についての複数の平面試料部を有する試料をも容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき、実施例を上げ、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明による薄片状試料の作製方法は、試料ステージ上に載置した試料基板の一部を上記試料基板表面に対して略平行な薄壁面を有する薄片状試料に加工するための試料作製方法であって、上記試料基板にイオンビームを照射することによって上記薄片状試料に加工すべき領域を含む微小試料片を上記試料基板から分離摘出しこの分離摘出した上記微小試料片を試料ホルダ上に固定する工程と、この試料ホルダ上に固定した上記微小試料片の少なくとも一部を上記イオンビームの照射により上記試料基板の表面に対して略平行な薄壁面を有する薄片状試料に加工する工程とを含んでなることを特徴としている。
【0018】
また、本発明による薄片状試料の作製装置は、イオンビームを試料に照射するイオンビーム照射光学系と、上記イオンビームの照射によって試料から発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、上記試料を載置する試料ステージと、上記イオンビームの照射によって上記試料の一部を摘出して得られた微小試料片を固定する試料ホルダの保持手段と、上記微小試料片を上記試料ホルダ上に移送するための移送手段と、上記イオンビームの照射領域にアシストデポジション膜を形成するためのガス供給源とを少なくとも具備し、特に、上記保持手段は上記イオンビームの光学軸に対して垂直な軸を中心として上記試料ホルダを姿勢変更でき該試料ホルダに固定された上記微小試料片を上記光学軸に対して少なくとも垂直と平行との2位置において保持できるよう構成されてなることを特徴としている。
【0019】
以下に、本発明の具体的実施例を挙げて詳説する。
【0020】
<実施例1>
本発明による薄片状試料作製方法の一実施例として、半導体ウェハの特定領域についての平面試料を作製する方法につき、図1,図2及び図3を参照して説明する。なお、試料作製のための加工手順をより明確にするためにいくつかの工程に分けて説明する。
【0021】
ここでは、本発明による試料作製方法の具体的な一実施例として、半導体装置製造の一工程であるプラグ工程を完了した試料基板(ウェハ)について、ある特定箇所のプラグと基板との界面を評価する場面を例にとって説明する。プラグ工程は、上層導電層と下層導電層間を垂直に結ぶ導電プラグを形成する工程であり、絶縁層に形成したサブμm径のホール内に多結晶シリコン等の導電性材料を埋め込んでプラグを形成する。この埋め込み形成したプラグが下層の導電層とうまく接触していなければ不良となる。
【0022】
先ず、検査すべきウェハの全面もしくはその一部に対し光や電子ビームを照射して不良検査をする所謂ウェハ外観検査によって、ウェハ上の形状異常、異物や欠陥等が存在する不良箇所の位置検出を行なう。例えば、電子ビームによる外観検査では、下層導電層とプラグとの電気的接触状態が計測でき、電子ビーム照射による二次電子の放出状況によって不良部が検出できる。つまり、アース電位にある下層導電層との導通が良好な場合には、そのプラグはアース電位にあるために二次電子が多く放出されて二次電子像上で白点状に観察されるが、導通不良の場合には、そのプラグからの二次電子放出が無いか、少なくなるため白点状には観察されない。そこで、この導通不良箇所の座標情報を記憶する。この座標情報の記憶の仕方には種々の方法があるが、ここでは、ウェハ上に予め設けたウェハマークを基準にして上記不良箇所の該当チップ座標と、その該当チップ上に予め設けたチップマークを基準にして観察目的箇所の座標情報を求め、計算処理装置内に記憶させた。この座標情報を基準にして、以下の加工を行なう。
【0023】
(ア)微小試料片作製工程
この工程は、不良箇所を含む数μm角レベルの微小試料片をウェハを分断することなく作製する工程である。
【0024】
先ず、上記ウェハを試料作製装置内に導入して、上記の座標情報を基に所望の不良部分を探し出す。次いで、上記不良部分が識別できるように、レーザビームや集束イオンビーム(FIB)によってマークをつける。この時、所望の観察領域を破壊しないように、予測される不良部分の深さよりも深いマーク(凹部)を形成しておく。本例では、プラグと基板との界面が不良であると予想しているため、図1(a)のように、試料基板1に設計仕様から判る界面深さよりも深い、深さ約1μm、長さ約2μmのI型の凹状マーク2,2’を互いに直交するように設置した。この時、上記マークのうち対面する2個のマーク2間を結ぶ直線3が試料ステージの傾斜軸と平行になるよう、事前に試料ステージを回転調整しておく。
【0025】
次に、図1(b)のように、直線3の延長上で2個のマーク2のそれぞれ外側にFIB4で矩形穴5,5’を設けた。矩形穴5,5’の開口寸法は3×10μm程度、深さは15μm程度である。次いで、直線3から約2μmを隔てて直線3と平行に直線状の垂直溝6を形成した。この時、垂直溝6は一方の矩形穴5’とは接続されるが、他方の矩形穴5とは接続されないようにする。この垂直溝6と矩形穴5との間に残された微小間隙部7は後に微小試料9を支えるための支持部となる。いずれも短時間で加工を完了させるために、ビーム径が0.1μm程度でビーム電流が約10nAの大電流FIBにより高速加工した。ここまでの加工所要時間は約5〜7分間であった。
【0026】
その後、試料基板1を傾斜(本実施例では15°傾斜)させ、図1(c)のように直線3から約2μmを隔てて、矩形穴5,5’間を結ぶようにして幅約2μm、長さ約32μm、深さ約15μmの溝8を形成する。試料基板1の表面に対して斜めから入射したFIB4により傾斜溝8が形成され、先に形成した垂直溝6と深部において交わる。本工程によって、所望の観察領域を含んだ頂角が約15°の直角三角形断面のクサビ型微小試料片9が支持部7によって片持ち支持された状態で形成される。
【0027】
次に、図1(d)のように、試料ステージを水平に戻して、試料片9の支持部7とは反対側の端部にプローブ10を接触させる。この接触は、試料基板1とプローブ10間の導電状態や電気容量の変化等により感知することができる。また、プローブ10の過剰な押し付けによって試料片9やプローブ10が破損するのを避けるために、に接触した時点で、プローブ10の−Z方向(試料基板に近づく方向)の駆動を停止させる機能を設けられている。次に、摘出すべき試料片9にプローブ10を固定接続するために、プローブ10と試料片9との接触部にデポジション用のガスを供給しつつ、プローブ10の先端を含む約2μm平方の領域にFIB4を走査しながら照射して、該FIB照射領域にデポジション膜11を形成し、このデポジション膜11を介してプローブ10と微小試料片9とを固定接続した。(図1(e)参照)
(イ)微小試料片摘出工程
この工程は、微小試料片9を試料基板1から分離摘出する工程である。具体的には、図1(e)のように、支持部7にFIB4を照射してスパッタ除去する。支持部7は試料基板面上で2μm平方、深さが約10μmであるため、2〜3分間のFIB走査で除去できる。この操作によって、微小試料片9は試料基板1上への支持状態から開放され、図1(f)のように、プローブ10を+Z方向(試料基板から離れる方向)に駆動させることにより、微小試料片9を試料基板1から分離摘出できる。
【0028】
次いで、プローブ10先端部に固定保持された微小試料片9を試料ホルダ上に移動させる。ただし、実際にはプローブ10を大きく移動させることなく、微小試料片9を試料基板1表面から離間させた状態で一旦プローブ10の移動を停止させ、次に、試料ステージを移動させてプローブ10の直下に試料ホルダが来るように試料ホルダ側を移動させる。本方法によれば、プローブ10を大きく移動させる必要がないため、プローブ11を大きなストロークで微動移動させるための複雑な機構を用意する必要がない。
【0029】
図1(g)のように、試料ホルダ12がプローブ10のほぼ直下に来た時に試料ステージの移動を停止させ、プローブ10をXY方向に微動調整しつつ−Z方向に移動させて試料ホルダ12に接近させる。摘出した微小試料片9が試料ホルダ12に接触したことは、プローブ10の電位変化や二次電子強度の変化をモニタすることにより確認できる。ここで、微小試料片9の垂直側面13が試料ホルダ12の上面(試料ステージ上面に対して垂直な面)14に、かつ、微小試料片9の上面(元の試料基板の表面)15が試料ホルダ12の側面16(試料ステージ上面に平行な面)にそれぞれ平行になるようにして接触させる。図2(h)は両者が接触した状態を示している。
【0030】
次に、図2(i)のように、微小試料片9が試料ホルダ12上面に接触した状態で、デポジション用のガスを導入しつつ微小試料片9と試料ホルダ12との接触部にFIB4を照射して、デポジション膜17,17’を形成する。この操作によって、微小試料片9はデポジション膜17,17’を介して試料ホルダ12に固定できる。この時のFIB4の照射領域は2×3μm程度で、デポジション膜17,17’は、微小試料片の上面15と試料ホルダの側面16との間に跨って付着し、これにより両者間が接続される。この場合、特に、微小試料片9の表面(元の試料基板1表面)15と試料ホルダの側面16とを同一面上に置くことによって、微小試料片9のデポジション膜17,17’を介しての試料ホルダ12への固定をし易くできる。この操作の後、デポジション用ガスの導入を停止し、プローブ10と微小試料片9とを接続しているデポジション膜11をFIB照射によりスパッタ除去してプローブ10を微小試料片9から分離する。以上の操作により、微小試料片9が、プローブ10から切り離された状態で試料ホルダ上面14上に固定された状態が得られる。(図2(j)参照)
なお、図2(j)では、摘出した微小試料片9の上面(元の試料基板の表面)が試料ホルダ12の側面16と同一面となるようにした場合について図示したが、微小試料片9の固定位置はこれには限定されない。別の方法として、形成される平面薄壁部18が試料ホルダ上面14のほぼ中央に位置するようにして固定する方法を用いてもよい。この別方法につき、図14を用いて説明する。図14は、微小試料片9を試料ホルダ12上に固定する時の両者の位置関係を説明するための図である。微小試料片9は、試料ホルダの上面14のほぼ中央部に固定する。ここで、試料ホルダ12の厚さをW、微小試料片9の高さ(元の試料基板上での深さ)をHとする。Wは試料ホルダ12の作製時に計測して明らかであり、Hについては、同一条件で作製した別の試料での事前の計測により判る。
【0031】
以下、図4における固定手順について説明する。まず、摘出した微小試料片9を移送手段のプローブに付着させた状態でZ軸方向駆動で徐々に降下(紙面下方へ移動)させて、試料ホルダ12の試料固定面14の近傍に接触させる(図14(a)参照)。接触の確認は、画像から判断する方法や、プローブと試料ホルダとの導通を検知する方法等を用いて行ない、接触確認と同時に、プローブの降下を停止する指令をプローブ駆動機構に与えて、プローブ降下を停止させる。次に、微小試料片9を僅かに上昇させて、ホルダ上面14と微小試料片9の垂直面との間隔を数μm程度に保持してから、再び微小試料片9を降下させる。この降下量を上記のW,Hを用いて(H+(W/2))で示される量とすることにより、平面薄壁部18を形成すべき部位を試料ホルダ上面14の厚み方向のほぼ中央に位置させることができる。ただし、上記寸法W,Hは、W>2Hなる関係を満たしており、平面薄壁部18の元の試料表面からの距離は、寸法Hに比べ十分に小さいものとする。
【0032】
上記の関係式に従って微小試料片9の降下を停止させ、そこで試料ホルダ上面14に接近させ、微小試料片9の垂直面が試料ホルダ上面14に接触した時点で接近を停止させる。この状態で、試料ホルダ上面14と微小試料片9の両方に架かるようにデポジション膜を形成させて、微小試料片9を試料ホルダ上面14に固定する。
【0033】
上記した微小試料片9の固定方法により、所望の平面試料部を試料ホルダ上面14の厚み方向のほぼ中央部に位置させることができる。このように観察面位置を試料ホルダ上面14のほぼ中央部に設定することで、観察すべき薄壁面と試料ホルダ側面との平行性が多少悪くても、TEM観察時にTEM試料ステージの僅かな傾斜角調整をすることで、観察面に電子線が垂直入射するよう補正できる。
【0034】
(ウ)平面試料作製工程
次に、図2(k)のように、試料ホルダ12を90°回転させて試料ホルダ上面14が試料ステージ面と平行になるように姿勢設定する(図2(k)参照)。試料ホルダ12を90°回転させるのには種々の方法があるが、要は、薄板状の試料ホルダの側面16が試料ステージ上面に平行に設置された状態から、垂直に設置された状態に変更できる機構であればよい。具体的な機構については後の実施例4において説明する。また、このような別設の回転機構を用いることなく、試料ホルダ12を搭載した試料ステージを一旦大気中に出して、試料ホルダ上面14が試料ステージ上面に対して平行になるように姿勢設定し直す方法によることもできる。
【0035】
最後に、微小試料片9のTEM観察領域を薄壁化加工する(図2(l))。微小試料片9に対して、FIB照射によるスパッタエッチング加工を施して、所望の観察領域を含み、微小試料片9の表面(元の試料基板表面)15に平行で厚さが100nm程度もしくはそれ以下の薄壁部18を形成する。ここで、微小試料片9の端面(上面)15が元の試料基板の表面であるため、この端面15を基準にしてFIB加工することで、元の試料基板表面にほぼ平行な薄壁面を有する薄壁部(つまり、平面試料)18を形成することができる。
【0036】
FIB照射による試料の薄壁化加工法自体は既に知られており、本発明の加工方法もそれと同じであるが、本発明では、薄壁面が試料基板表面に対して平行である点で従来の方法とは全く異なっており、さらには、薄壁化加工すべき試料が試料基板から摘出した微小試料片である点でも従来方法とは全く異なっている。また、試料基板表面に平行な薄片試料(平面試料)の作製方法そのものについては従来も知られていたが、観察に必要な部分のみを薄片化加工する本発明による加工方法とは全く異なる。
【0037】
最後に、上記の手順で薄壁化加工した試料を保持した試料ホルダ12をTEMステージ上に搭載する。このTEMステージ上への搭載方法を図3で説明する。図3の(a)に示すように、試料ホルダ12の側面16が水平となるようにTEMステージ上に試料ホルダ12を搭載すれば、TEMでの観察用電子線21は薄壁部(観察部)18をその薄壁面に対しほぼ垂直に透過し、透過した電子線21’がTEM像を形成する。このTEM像により、薄壁部(観察部)18の内部構造を知ることができる。なお、図3(a)においては、TEM観察時の電子線の入射方向を紙面の上から下に向かう方向としたが、観察方向はこれに限られることはなく、紙面の下から上に向かう方向であってもよい。
【0038】
ここでは、注目する観察対象として、コンタクトホール底面に見られる異物等による異常箇所を挙げることができる。その場合には、図3の(a)における薄壁部18には、正常なコンタクトホール断面19と、異常なコンタクトホール断面20とを含ませておくことにより、これらの正常断面19および異常断面20の存在をTEMによって観察することができる。
【0039】
TEMステージ31は、図3(b)のように支柱32,握り部33,先端保持部37などから構成され、試料ホルダ12は、支柱32先端の開口部34内に設置し、固定具35,36,35’,36’により保持できる。TEM観察時には、電子線21は図3(b)において紙面に対し垂直方向から試料に入射する。なお、試料ホルダ12の固定手段については、上記方法に限定されるものでないことは云うまでもない。
【0040】
ここで、マーキングに関する別の方法について説明する。一般に、FIB照射によって試料表面に形成したマークは、表面から観た時に目標位置が的確に判別でき、従来の断面TEM試料作製の際には不可欠なものである。しかし、マークが表面上に付着させたものか又は非常に浅い凹部マークであると、表面観察等に際してのFIB走査のみでもマークが消えてしまうことがある。表面上のマークが消えてしまうと目標位置(試料面内でのXY座標位置)を見失うことになる。また、上記のマークでは、試料の表面もしくは極表面にあるため、表面下の平面試料を形成する場合、深さ方向の情報(Z座標)が得られず、Z座標位置の決定が困難となる。つまり、局所的な平面試料を作製するためには、従来型のマーク異なったマークの形成が必要となる。
【0041】
そこで、本発明による平面試料の作製方法では、以下のような改良マーキング方法を採用した。図15を用いてこの新たなマーキング方法について説明する。図15(a)は目標位置120を含む試料121の表面を示している。先ず、目標位置120のXY座標を事前の検査装置からの座標を利用する等して決定する。次に、目標位置120を指示するように、目標位置120の周囲3箇所にマーク122A,122B,122CをFIB照射で形成する。
【0042】
上記した平面試料のためのマーク122A,122B,122Cは以下の手順で作製する。FIBをある適当な領域に走査照射すると凹部が形成され、FIB走査時もしくは停止時に、この凹部の底面の様子を二次電子像から観察できる。つまり、形成された凹部の底面から深さ方向の情報が得られる。FIBによって凹部を形成し、凹部の底面が目標位置と同一平面に達した時、FIB走査を停止する。次に、FIBアシストデポジションにより、上記凹部内をデポジション膜で埋める。同様の操作を残り2箇所のマークについても行う。この操作により、目標位置のXY座標とZ座標を示すマーク122A,122B,123Cを形成できる。図15(a)では、マーク122A,122B,122Cは、一部に突起部123A,123B,123Cを有する矩形形状としているが、これらの突起部123A,123B,123Cにより目標位置のXY座標をさらに正確に示すことができる。マークの大きさの一例として、矩型部は0.5μm平方,突起部は0.1×0.2μmとした。
【0043】
図15(b)は、マーク形成後、目的とする微小試料片9を摘出し、試料ホルダ上面14に固定した状態を示しており、目的とする観察面と同一深さの面124を破線で示している。マーク122A,122B,122Cの底面は、この平面124と同一平面上にある。次に、図15(c)に示すように、試料ホルダ12を90°回転させてから、微小試料片9の側面上に、平面124を保護するためのデポジション膜を形成しておく。次いで、試料表面126に平行にFIBを照射して、微小試料片9の裏面から薄片化加工を行なう。符号125は、微小試料片9にFIB照射による薄片化加工を施す際の、FIBの入射方向を示している。このFIB照射による試料片裏側からの薄片形成作業を加工断面を注意深く観察しつつ継続する。先に設けたマーク122A,122B,122Cが加工断面上に露出した時に、丁度加工断面が目的とする平面(観察面)124に達したことになる。つまり、目的とする平面(観察面)124の片側の面127が露出したことになる。最後に、微小試料片9の表面126側からFIBによる薄壁化加工を施し、図15(d)のように、薄壁部18の厚さが0.2から0.05μm程度になった時に加工を終了する。なお、図15(d)では加工工程を判り易くするために、図15(c)における微小試料片9の表面126側が見えるように見る向きを変えて示している。このようにして完成した薄壁部18には観察目的位置120を示すマーク122A,122B,122Cが含まれているため、TEM観察に際しては、これらのマーク122A,122B,122Cやそれぞれのマークに設けられた突起部123A,123B,123Cの位置を基準にして、観察目的位置120を容易に探し当てることができる。なお、TEM観察時おける電子線入射方向を、符号129の矢印で示してある。
【0044】
上記実施例ではマークを3箇所に設けた場合について示したが、観察目的位置120を囲む4方向に設置してもよいし、直交する方向に2個形成してもよい。本方法の特徴は、観察目的とする平面部と同一深さを有する凹部を設け、さらにこの凹部をデポジション膜で埋めたものをマークとして用いることにある。
【0045】
本発明による平面試料の作製方法において、所望の深さの平面を形成することがキーポントであるので、上記マーキング方法を具体例を示して更に詳しく説明する。図16は、試料ホルダ上に固定した微小試料片9の一部をその内部構造が判り易いようにして示した斜視図である。試料の例として、シリコン半導体デバイス内の非晶質絶縁物130中に導電性プラグ131を並べて設けた構造部分において、導電性プラグ131が直径の異なる3段のプラグ131A,131B,131Cを直列に接続されて構成されており、各々のプラグが化学蒸着法により形成されているものについて示してある。このような構造の場合、時として直列に繋がったプラグが高抵抗であったり、接触不良を起してプラグとしての役割を果たさない場合がある。接触不良の原因は、上段のプラグ孔のエッチング不良による上側のプラグの未到達による非接触、形状不良による接触断面積の縮減、各プラグ間の酸化膜などの絶縁層形成、絶縁性異物の混入など種々推測されるが、実際にプラグ間の界面を観察することが問題解決の糸口となる。このような例の場合には、プラグ界面を含む平面試料を作製してTEM観察することでプラグの連結部をプラグ軸方向から高倍率で観察できるため非常に便利である。例えば、事前にある種の検査手段を用いて、プラグ131Aと131Bの間が異常と判定され、その界面を観察すべくマーク122Dを施したとする。マーク122Dは試料表面132に垂直方向からFIB133を照射し、矩型凹部を形成した後、デポジション膜を埋め込んで形成した。マーク122Dの底面はプラグ131Bの底面と同一面となるように形成した。
【0046】
次に、図15(c)と同様に、試料表面132をFIB光学軸に平行に設置した状態で、FIB133’を試料表面132に平行に照射して試料をその裏面から切除する。この時、FIB入射面には保護膜が必要であるが、ここではその図示を省略した。符号134はFIB133’による裏面切除の方向を示している。切除しながら切除面を観察すると、切除面上にはプラグ131A,131’A,131”Aの断面が観察され、さらに切除を進行させることにより切除面上にはマーク122Dの底面が観察される。ここで、符号134方向の裏面切除を停止する。次に、試料表面132側から符号135の方向に切除を行ない、残される薄壁部18の厚さ136が100nm前後になった時点で切除加工を終了する。このようにして作製された薄壁部18を符号137または137’で示す矢印の方向から観察用電子線を照射してTEM観察することにより、図16(b)に示すようにプラグ131A,131B,131”A,131”B,マーク122D’の列が観察でき、注目するプラグ131A,131Bの界面を場所を間違うことなく観察することができる。ここで、マークの凹部に埋め込むデポジション膜の材質がタングステンやプラチナ等の重金属であれば、TEM像上ではそれが黒く観察できるため、マークとして明確に判別できるため便利である。このように、上述したマーク構造およびマーキング方法によって、試料表面下にある観察目的位置を含む平面(薄壁部)を正確に作製することが可能になる。
【0047】
また、TEMステージ31が上述した試料作製装置の内部に挿入できる構造であれば、試料基板1から摘出した微小試料片9を、TEMステージ31上に保持した試料ホルダ12上に直接固定できるため、上記のように微小試料片9を固定した試料ホルダ12を改めてTEMステージ31に装着するという手作業が無くなるので便利である。この方法については、後の実施例7において詳述する。
【0048】
上記実施例では、平面試料の作製方法について重点的に説明したが、試料基板1表面に対して任意の斜面での薄膜化試料をも、上記と同様の操作によって作製することができる。
【0049】
<実施例2>
本実施例では、摘出した微小試料片9に対して、試料基板表面から所要観察面の深さ位置を正確に見出して、その面での平面試料を作製するための加工方法について説明する。
【0050】
図4に、本実施例による試料作製方法の加工工程を示す。図4の(a)は、摘出した微小試料片9を試料ホルダ12の上面14上にデポジション膜17,17’によって固定した状態を示しており、参照符号の22は試料基板内に形成されたコンタクトホールを、23は試料基板表面とFIB照射により形成した斜面とによって形成された頂辺を示している。
【0051】
この工程の目的は、微小試料片9上の3列のコンタクトホール22の列のうち中央の列について、ホール底に存在する異物や欠陥等をTEM観察するために、コンタクトホールの底面を含む薄壁部(平面試料)を作製することにある。
【0052】
図4(b)では、先ず、平面試料を作製し易くするために、微小試料片9の頂辺23をFIB照射により切り落とし、試料ホルダ上面14に平行な面24を形成する。次に、作製すべき平面試料の位置(つまり、コンタクトホール22の底面25の位置)を把握するために、最端部のコンタクトホール22’の中央部断面26を形成する。
【0053】
次に、図4(c)では、試料ホルダ12の設置方向を90°変えて、試料ホルダ上面14をFIBの光軸27に垂直な関係とする。この状態で先に形成したコンタクトホールの中央部断面26を観察すると、コンタクトホール底面25を真横から明瞭に観察でき、試料表面15からコンタクトホール底面25までの距離を正確に把握することができる。
【0054】
さらに、図4(d)では、先に断面形成したコンタクトホール底面25を基準にして、該底面25を挟むようにして、2個の矩形形状部分28,28’をFIB走査することで、コンタクトホール底面25を含む厚さ0.1μm程度の平面部(薄壁部)18を形成する。この薄壁部18が、試料基板表面15に平行でコンタクトホール底面25を含んだ平面試料となる。
【0055】
このような手順により平面試料を作成し、この平面試料を保持した試料ホルダをTEMステージ上に装着することで、コンタクトホール底面25のTEM観察ができる。上記の説明からも十分理解できように、本発明による試料作製方法によれば、試料基板の所望の深さ位置についての平面試料を二次電子像を見ながら容易に作製することができ、従来の熟練と勘と時間とを頼りに行なっていた研磨作業による平面試料作製方法に比べ、正確かつ短時間で必要部分のみの試料作製を行なうことができる。
【0056】
<実施例3>
先の実施例1に示した試料作製方法を実現するために使用するのに適した試料作製装置の一構成例につき図5を用いて説明する。
【0057】
本実施例による試料作製装置40は、半導体ウェハなどの試料基板41や摘出試料の加工や観察をするために用いるFIB照射光学系42,FIB43の照射によって発生する二次電子や二次イオンを検出するための二次粒子検出器44,FIBの照射領域にデポジション膜を形成するための原料ガスを供給するためのデポジションガス供給源45,試料基板41を載置する試料ステージ46,試料基板41から摘出したμmレベルの大きさの微小試料片を試料ホルダ12上に移し変えるための試料移送機構47を少なくとも備えて構成される。これらの構成部分は真空排気される試料室49内に収納されている。
【0058】
試料室49内には、さらに、試料基板41から分離摘出した微小試料片を固定保持するための試料ホルダ12,さらに試料ホルダ12を保持するためのホルダカセット58等も具備されている。また、試料室49外には二次粒子検出器44からの検出信号による二次粒子像や計算処理結果などを表示するための表示装置48をも備えている。その他に、試料ステージ46を制御する試料ステージ制御装置52,FIB照射光学系42を制御するFIB制御装置53,デポジションガス供給源45の制御装置54,二次粒子検出器の制御装置55,試料移送機構の制御装置56なども備えられ、これらは計算処理装置57により制御される。
【0059】
FIB照射光学系42は、液体金属イオン源から放出したイオンをビーム制限アパーチャ,集束レンズ,対物レンズ等を通すことによってビーム径10nm〜100nm程度のFIB43を形成できるものである。このFIBを偏向器を用いて試料基板上1で走査することで、試料基板1にサブμmから10μmレベルの大きさの走査形状に対応した形状の加工を施すことができる。
【0060】
なお、ここでは、FIB照射光学系42の詳細構成については、特に本発明に大きく関与しないので説明を省略する。また、ここでの「加工」とは、スパッタリングによる凹部形成加工や、FIBアシストデポジションによる凸部(膜)形成加工、または、これらを組み合わせての試料基板や摘出試料片の形状変更操作を指す。FIB照射により形成されるデポジション膜は試料移送手段47の先端部に取り付けられたプローブ10を試料基板41表面に固定接続したり、試料基板41から分離摘出した微小試料片を試料ホルダ12上に固定載置するために使用されたり、さらには、凹部を埋めための充填材や試料表面の保護膜としても用いられる。
【0061】
試料ステージ46は真空排気される試料室49内に設置され、FIB照射光学系42の各部品なども真空中に保持されている。試料ステージ46は、試料ホルダ12を搭載したホルダカセット58を着脱可能に載置でき、試料ステージ制御装置52によってXYZ3軸方向の移動、および傾斜,回転を制御される。
【0062】
試料移送機構47は、試料基板41が大口径のウェハであっても、試料基板上の任意の箇所からの微小試料片の素早い摘出を実現できるようにするために移動速度が早くストロークの大きな粗動部60とストロークはやや狭いが高い移動分解能を有する微動部61とで構成されている。また、試料移送機構47は、その全体を試料ステージ46から独立して設置され、試料片摘出位置(サンプリング位置)の大きな移動は試料ステージ46の移動に分担させた。粗動部60のXYZ方向の駆動系はモータやギヤ,圧電素子などで構成され、数mm程度のストロークで数μmの移動分解能を有している。微動部61は、試料室49内の他の部品との機械的干渉が生じないようにするためにできるだけコンパクトで、かつ、精密移動できるものであることが要求されるため、バイモルフ圧電素子を用いてサブμmの移動分解能を実現している。バイモルフ圧電素子の先端部(移動端)には直径50μm程度の細く尖鋭化したモリブデン製のプローブ10を連結し、バイモルフ圧電素子の基端部と粗動部60の移動端部との間は、連結棒62を介して連結した。バイモルフ圧電素子に動作電圧を与えることで、プローブ10に先端部はほぼZ方向(上下方向)に微動する。また、試料移送機構47は、試料ステージ46を傾斜させた時、傾斜軸46’に対して試料基板41表面が下がる側に設置し、それと同じ側に試料ホルダ50を搭載したホルダカセット58の載置場所を設定した。かかる配置構成によって、試料ステージ46の傾斜に際して試料移送機構47と試料基板1表面とが衝突等の機械的干渉を起こすことを回避できる。
【0063】
上記した試料移送機構47の構成と類似した移送機構に関する従来技術として特開平05−052721号公報『試料の分離方法及びこの分離方法で得た分離試料の分析方法』(従来例2)がある。この従来例2によれば、分離試料を搬送する搬送機構は、バイモルフ圧電素子3個をXYZ軸に対応させて構成しているが、その搬送機構の設置位置は不明であり、唯一上記公報の図3からはステージ上に搬送機構が設置されているものと読み取れる。このように、搬送手段が試料ステージ上に設置されていると、観察対象部が例えば直径300mmのウェハの中心部である場合には、搬送機構先端部の移動ストロークが、搬送機構設置位置から試料中心部までの距離に比べて遥かに小さいため、その移動端が試料中心部(観察対象部/試料片摘出部)まで届かないという致命的問題点を有することになる。さらに、バイモルフ圧電素子は、一端(基端)を支点にして他端(移動端)が撓んで微動移動すると云う動作をするため、動作電圧印加に従って上記他端部は円弧を描くため、XY平面(水平面)内の移動では、1個のバイモルフ圧電素子の動作のみでは、搬送機構先端部(プローブ先端部)が一方向に直線的には移動しない。従って、3軸方向共にバイモルフ圧電素子で構成してプローブ先端部を所望位置に移動させるためには、3個のバイモルフ圧電素子が互いに動きを補正し合うように非常に複雑な制御をしなければならないという難点を有している。本発明による移送機構47の構成によれば、このような難点を解決し得る。
【0064】
本実施例で用いた試料ホルダ12は、図6(a)に示すような、半円形状の金属薄板12aで、モリブデン製の直径2.9mm,厚さ40μmの半円板である。この半円板の直径方向の上面14に摘出した微小試料片9を搭載する。図6(a)では3個の微小試料片9を搭載した場合を示している。このように複数の試料片9を搭載した試料ホルダ12をTEM試料室内の試料ステージ上に設置し、試料室内を一度真空引きするだけで、複数個の試料を次々にTEM観察できるようにしている。また、試料ホルダ12は上記形状に限られるものではなく、図6(b)に示すような短冊状の薄板12bでもよい。要は、微小試料片9を搭載できて、FIB加工とTEM観察やSEM観察に際してのビーム照射を妨げず、加工装置40の試料ステージ46やTEMステージ,SEMステージに搭載できる形状であればよい。
【0065】
ホルダカセット58は、試料ホルダ12を保持するための治具であり、例えば図7(a)のようにして試料ステージ46上に搭載される。試料ステージ46は、大径のウェハをも載置できる汎用の大型ステージや数mm角のデバイスチップが搭載できる程度の小型ステージを指している。1個のホルダカセット58に搭載する試料ホルダ12の数は1個でも複数個でもよく、試料ステージ46上に設置できるホルダカセット58の数も1個でも複数個でもよい。図7(a)の例では、1個のホルダカセットに2個の試料ホルダ12が搭載され、各試料ホルダ12にはそれぞれ3個,2個の微小試料片9が固定された例で、ホルダカセット58の1度の交換により5個の観察試料を得ることができる。また、ここでは短冊状の試料ホルダの例を示したが、試料ホルダの形状は特に短冊状に限ることはない。さらに、このホルダカセット58は、図5のサブチャンバ59aと操作棒59bを利用した交換機構59により、試料室49内の真空を維持しつつ交換できる。
【0066】
試料室49の外に出したホルダカセット58は、微小試料片9の向きを変えるために、試料ホルダ12の付け替えを行う。図7(b)の左図は試料ホルダ12の付け替え前の試料ホルダ12とホルダカセット58の配置関係を示す図で、右図は薄壁部の形成のために左図の試料ホルダ12を90°回転させて固定した状態を示す図である。試料ホルダの付け替え後、ホルダカセット58を再度試料ステージ46上に設置して、薄壁部形成のためのFIB加工を行なうことができる。このような試料ホルダ12の向きの変更は、操作棒を用いて試料室内で行なってもよい。また、本実施例では、微小試料を分離摘出する際に、プローブとデポジション膜を利用した固着方法を採った場合について説明したが、微小試料の摘出方法は上記方法に限定されることはなく、例えばピンセットのように挟んで摘出する機構を用いて行なってもよい。
【0067】
<実施例4>
上述したように、摘出試料片9の試料ホルダ12への固定時と薄壁加工時とでは試料ホルダの向きが90°異なる。摘出試料片9を試料ホルダ12へ固定する時には試料ホルダ12の上面(試料片取付け面)がFIB照射光学系の光学軸と平行関係に置かれ、薄壁加工時には垂直関係に置かれる。先述の実施例3では、試料ホルダ12の90°姿勢変更を、摘出試料片9の試料ホルダ12への固定後にホルダカセット58を一旦大気中に出して試料ホルダ12を90°回転させて固定してから再度試料室49内に入れると云う最も簡単な方法と装置構成で実現している。ただし、この方法は、試料ホルダ12の取り扱い時に不意の事故発生により、貴重な摘出試料片9を破損させてしまうと云う問題を伴う場合もある。
【0068】
そこで、本実施例4では、試料ステージの一部に試料ステージの傾斜軸に平行な軸を中心にして回転する試料ホルダ回転具70を具備させている。その構成例につき、図8から図10を用いて説明する。
【0069】
試料ホルダ回転具70は、円柱状部材71の一部に、この円柱状部材の中心軸72を頂辺として直交する2面73a,73bを有する4分割円柱部75を設けて構成し、上記2面のうちの1面(ここでは73a)を試料ホルダ12の設置面としている。
【0070】
試料基板から摘出した試料片9を試料ホルダ12へ固定するに際しては、摘出試料片9の表面(元の試料基板の表面)が試料ホルダ12の上面(試料片取付け面)と垂直となるよう設定されているため、試料ホルダ設置面73aは試料ステージ面と平行になるよう静止させておき、摘出試料片9を試料ホルダ12の上面に固定する。この時、試料ホルダ設置面73aはFIB光学軸73と垂直な位置関係にある。
【0071】
この時の試料ホルダ12の向きや、FIB光学軸との位置関係をさらに明確に示すために、図8(b)に、試料ホルダ12を通り試料ホルダ回転具70の中心軸垂直な断面74を矢印Aの方向から見た断面図を示す。試料ホルダ12は、その側面16が4分割円柱部75の試料ホルダ設置面73aと同一平面上になるように、かつ、試料片9がFIB光学軸73の近傍に位置するように配置設定する。
【0072】
次に、摘出試料片9の試料ホルダ12上面への固定後、試料ホルダ回転具70を適当な回転手段(図示省略)により90°回転させて、図9(a)のように試料ホルダ12の側面がFIB光学軸73とほぼ平行となるように姿勢変更する。図9(b)は、試料ホルダ12を通る断面74’を矢印Bの方向から見た図である。試料ホルダ設置面73aの90°回転によって、試料ホルダ12の上面(試料片取付け面)がFIB光学軸73と垂直な位置関係となり、試料片9の表面(元の試料基板の表面)がFIB光学軸73と平行な位置関係となる。この状態で試料片9に対し薄壁部形成のためのFIB加工を施す。なお、図9では、試料ホルダ回転具70に取り付けた試料ホルダ12が1個の場合を図示しているが、1個に限ることはない。
【0073】
次に、試料ホルダ回転具70の回転手段について、図10を用いて説明する。円柱状部材71は、モータ等の回転駆動手段80,電源81,受光器82などと連結されており、真空室49の外にある発光器84からの光信号85を真空隔壁ガラス86を通して(または、真空室49内に設置された発光器からの光信号を直接に)受光器82で受け、この受光器からの出力信号を受けて電源81がオンとなって回転駆動手段80を動作させて、試料ホルダ設置面73aを90°回転させる。この光信号85を用いる方式によって、回転,傾斜,平面移動する試料ステージ46上に設置された試料ホルダ回転具70への煩わしい配線をすることなくして真空室49の外から容易に試料ホルダ設置面73aを回転させることができる。従って、試料ステージ46の電位が例えば接地電位でない場合でも試料ホルダの姿勢変更(90°回転)が可能である。また、煩わしい配線部が不要なため、試料ホルダ回転具70の試料ステージ46への着脱も容易であり、ホルダ回転具70全体を一体にしたまま、これを真空容器49の外部に取り出すことができる。なお、円柱状部材71の余分な回転を防止するために、試料ホルダ設置面73a及びそれと直交する面73bがそれぞれの回転位置で試料ステージ面と平行になった状態で回転停止させるために、ストッパ87が設けられている。
【0074】
摘出試料片を固定した試料ホルダを搭載した試料ホルダ回転具70は、SEMステージ上に移し替えることができ、SEM試料室中でも光信号により回転動作させることができるため摘出試料片の視点を変えての観察ができる。また、試料ホルダを円柱状部材71から切り離して、TEMステージの先端部分に搭載することができるので、摘出試料片の平面加工(薄壁部形成)を終えた後に、小さな試料ホルダをTEMステージに移し変えると云う細かな作業が不要であり、平面試料を容易にTEMステージ上に移し替えて観察することができる。
【0075】
<実施例5>
本実施例は、薄片状試料の作製方法に関するもので、実施例2で示したように観察すべき平面領域が1平面だけではない場合における加工方法の一例である。本発明による加工方法の特徴の一つは、μmレベルで近接した複数の平面試料部を形成できることで、しかも、それぞれ試料基板表面からの深さが異なる複数の平面試料部を作製できることである。図11の(a)は試料ホルダ上に固定した深さ位置の異なる複数の平面試料部を有する試料につき説明するための斜視図であり、TEM観察時の電子線の通過方向は紙面に平行な上下方向である。一方、図11の(b)は加工した平面試料を試料基板表面15に対し垂直な方向から見た図であり、加工手順を示している。また、図11の(c)は加工後の特に平面試料部の位置を明確に示すための図である。
【0076】
図11の(a)において、試料ホルダ12の上面14に固定された微小試料片9は、試料基板表面15に平行で深さ(試料基板表面から平面試料部までの距離)がそれぞれ異なる複数の平面試料部101a,101b,101cが形成されている。
【0077】
加工方法を以下に示す。試料ホルダ上面14に固定したクサビ形状の微小試料片9の頂辺をFIB走査によって削除した試料(図4の(b)に対応)について、図11の(b)のように、所望観察領域が薄壁部(平面部)101a,101b,101cとして残留するようにFIB走査により矩形凹部102a,102b,102c,102d,102e,102fを形成する。図11の(c)は形成した3箇所の平面部101a,101b,101cを有する平面試料で、TEM観察時には電子線103を上記3箇所の平面部にそれぞれほぼ垂直に照射して観察することができる。ここで、平面部101a,101b,101cの厚さは、TEM観察時に同程度の像コントラストが得られるようにほぼ同じ約100nmとし、それぞれの間の間隔は約2μm、基板表面15からの深さ位置はそれぞれ1.0μm,0.2μm,0.4μm、開口幅はそれぞれ5μm,5μm,12μmとした。(図では、縦横の寸法比は誇張して書いてある。)もちろん、平面試料の作製については、これらの数値例や寸法例に限る必要はない。
【0078】
このような複数の平面部を形成した試料をTEMで観察した場合、1個の微小試料片でありながら、互いにμmオーダで接近した複数の領域についてそれぞれ深さ位置の異なる部位の観察をすることができ、本例ではコンタクトホール底面の極上層面や比較的深層面での構造観察を合わせて行なうことができる。従来の平面状TEM試料の作製方法では、1個の試料から同一深さ位置での平面試料部しか作成できなかったため、注目する観察領域の真近で異なる深さ位置についての構造観察を合わせて行なうことは不可能であったが、本発明による加工方法によってそれらを実現することができた。
【0079】
<実施例6>
本発明による試料作製方法の更に他の特徴は、試料基板上でμmレベルに接近した複数の平面部を形成でき、しかも、それら複数の平面部が試料基板表面に対しそれぞれ異なる傾斜角度を有している試料をも作製できることである。図12の(a)は、試料ホルダ12の上面14上に、試料基板表面15に対してそれぞれ傾斜角度が異なる複数の平面部110a,110b,110cを有する試料片9を固定した状態を示す斜視図で、図11の(b)は、試料基板表面15に対し垂直な方向から見た加工領域を示す図であり、図11の(c)は、形成された傾斜方向の異なる複数の平面部110a,110b,110cを有する試料片9を示している。
【0080】
加工手順は、クサビ型の微小試料片9を試料基板から摘出して試料ホルダ12に固定するまでは、図1の(a)から図2の(j)までの工程と同じであり、その後で、試料ホルダ12の上面14がFIB光学軸に垂直になるように姿勢変更し、図12の(b)のように、領域111a,111b,111cについてほぼ垂直に3角形状,台形状,3角形状の凹部をそれぞれ形成して、図12の(b)のように試料基板表面15に対してそれぞれ異なった傾斜角度を有する平面部110a,110b,110cを形成する。
【0081】
図13は、TEM観察に際しての説明図であり、特に、図13の(a)はTEMステージへの試料ホルダの設置方法を、図13の(b),(c)はTEM観察方法を説明するための図である。図13の(a)において、平面化加工を施した微小試料片を固定保持した試料ホルダ12をTEMステージ31上の所定位置に押さえ具35’,ネジ36’等を利用して固定設置する。ここで、試料ホルダ12の向きは、試料ホルダ12の上面14がTEMステージ31の回転軸38と垂直になるように配置設定する。
【0082】
本実施例における平面化試料の平面部110a,110cは、試料基板表面に対し傾斜角を有しているため、試料基板表面に垂直に入射する電子線ではTEM観察ができない。そこで、TEMステージ31の回転軸38まわりの回転を利用して、平面部110aや110cに電子線が垂直入射するようにTEMステージ31を回転調整する。例えば、平面部110aを観察する場合には、図13(b)のようにTEMステージ31を回転調整して試料ホルダ12を傾斜させ、電子線103が平面部110aに垂直に入射するように(実際にはTEM像を見ながらコントラストが良好になるように)調整する。また、平面部110cを観察する場合にも、図13の(c)のようにTEMステージ31を回転調整して試料ホルダ12を傾斜させ、平面部110cのTEM像が明瞭になるように調整する。
【0083】
上記実施例では、試料から摘出する微小試料片はクサビ形状であるとして説明したが、摘出する微細試料片はクサビ形状に限られることはなく、図15に示すような台形状であってもよい。この台形状試料片の場合、元の試料基板表面から深い位置についての平面試料を作製するのにより適している。
【0084】
上述のような操作により、試料基板表面15に対して傾斜角度の異なる平面部110a,110cおよび試料基板表面15に平行な平面部110bをもTEM観察することができる。このような平面化試料は、従来の研磨等の方法では全く作製することができなかったが、本発明による加工方法によってそれが実現し、TEM観察評価が可能となった。
【0085】
<実施例7>
本実施例は、平面試料作製装置の別の構成例であり、以下図17から図20を用いて説明する。本実施例による試料作製装置は、試料ステージがサイドエントリ式の例である。観察対象とする試料が半導体チップ等の数mm角以下の小型のもので、試料搭載用ステージ(ここでは第1試料ステージと呼ぶ)に搭載して、この試料から目的とする部分を含む微小試料片を摘出し、TEMまたはSEMと兼用のステージ(ここでは第2試料ステージと呼ぶ)上の試料ホルダに固定してTEM用の平面薄片試料またはSEM用の平面試料に仕上げる一連の加工作業を第1と第2試料ステージの抜き差しで実行でき、本試料作製装置で作製した平面TEM試料や底面SEM試料は試料ステージに搭載したままでTEM又はSEMに挿入することで即座に観察できることが大きな特徴である。
【0086】
図17において、試料作製装置40aの構成は、FIB照射光学系42,二次粒子検出器44,デポジションガス供給源45,FIB制御装置53,デポジションガス供給源の制御装置54,二次粒子検出器の制御装置55の部分については実施例3(図5)で示したものと同じである。試料ステージ142,144はサイドエントリ式であり、試料室49内の真空を開放することなく試料41’,微小試料片9を出し入れすることができる。微小試料片を分離摘出する元の試料41’を搭載する第1試料ステージ142と摘出した微小試料片を固定し各観察装置用に仕上げ加工を行なう第2ステージ144を別にしたことが大きな特徴である。試料ステージ142,144は、試料ステージ駆動部143に設けられたY,Z方向の微動機構143Y,143Zおよび軸回転機構143Rにより駆動でき、試料ステージ制御装置52’により駆動制御できる。試料ステージ駆動部143に設けられたバルブを介して、試料室49内の真空を開放すること無く、試料ステージ142,144を挿入することができる。なお、このサイドエントリ式の真空保持機構は周知技術である。第2試料ステージは、TEM又はSEM用の試料ステージと兼用であり、この平面試料の作製装置で作製した平面TEM試料または平面SEM試料を試料ステージから取り外すことなく、試料ステージをそのままTEMまたはSEM内に挿入して、試料を観察することができる。
【0087】
元の試料41’から微小試料片9を移送する試料移送機構47は、先端にプローブ10を有するサイドエントリ式のプローブステージ140及びその駆動機構141とから構成され、プローブ10が破損等によって交換しなければならない時には、試料ステージと同様、ステージ部分を抜き差しすることで、試料室内の真空を開放することなく出し入れでき、プローブを短時間で容易に交換することができる。駆動機構141には、それぞれX,Y,Z方向の駆動手段141X,141Y,141Zが備えられており、微小試料片9をプローブ10と接続したり試料ホルダ12に移送する時に、高精度で移動でき、これは試料搬送機構制御装置56’で制御される。
【0088】
図17の例では、試料ステージ142,144の待機箇所145が設けられており、いずれかの試料ステージが試料室49内に有る時に、別の試料ステージを待機させておくことができ、その先端部分は真空状態にも大気圧状態でも可能であり、要は塵埃等が付着しない構造であることと、異物等との不意の接触による試料の破損を防ぐ構造であることが特徴である。
【0089】
さらに、本試料作製装置40aにおいて、試料ステージ制御装置52,FIB制御装置53,デポジションガス供給源の制御装置54,二次粒子検出器の制御装置55,試料搬送機構制御装置56は、計算処理装置57によって制御され、微小試料片やプローブ10等は、二次電子や二次イオン等の二次粒子画像としてディスプレイ48上に表示でき、試料作製の進捗状況を拡大して監視できる機器を有している。
【0090】
図18は、第1試料ステージ142,第2ステージ144の詳細構造である。図18(a)において、第1試料ステージ142は、元の試料基板を載置する試料台150と、試料台150をステージ軸に垂直に回転補正させるための回転調整機構と、軸方向の調整を行なうための軸方向位置調整機構とを備えている。符号151は回転調整を行なうための回転調整ツマミ、符号152は軸方向位置調整を行なうための軸方向位置調整ツマミである。回転調整ツマミ151及び軸方向位置調整ツマミ152を含んだ握り部153を手で掴んで試料ステージの搬送ができる。さらに試料台150と握り部153とは棒状の連結部154により連結されており、その先端には試料ステージ142の振動や振れを吸収し、軸回転を容易にするための支持部155を有している。また、図17(b)の第2試料ステージ144はTEMまたはSEMとの兼用のステージで、握り部153’,棒状部154’,支持部155’を有し、その先端には微小試料片9を固定する試料ホルダ12を保持できる。図18(c)は第2試料ステージ144の先端部の詳細で、特に試料ホルダ12の固定手段を示した図であり、試料ホルダ12はネジ等を利用した固定治具156,156’によって保持される。この時、試料ホルダ12の上面が試料ステージの軸と同一面であると、試料ステージ144をTEMに導入した時に、微小試料片9の観察所望領域がTEMの視野から大きく外れることがなく、容易に見つけられる。さらに、第2試料ステージ144に搭載する試料ホルダ12は、図6に示した形状以外にも、図18(d)のような一部に平坦部157を有する半円形状でもよい。この形状の利点は、平坦部157と面接触する部位を試料ステージ側に設けておくことによって、試料ホルダ12の上面を試料ステージの回転軸と平行に設置し易くできると共に、従来のTEMステージ(例えば図3(b))上にも設置でき、握り部から試料部までの長さの異なる別のTEMでも観察可能である。
【0091】
図19は第2試料ステージの使用方法を説明する図である。第2試料ステージ144は、摘出した微小試料片9を試料ホルダ12上に固定する時と、TEMやSEM対応の仕上げ加工をする時で、FIBの入射方向を変える必要があるため試料ステージ全体を軸回転補正しなければならない。図19(a)は摘出した微小試料片9の試料ホルダ12への固定時の向きである。FIB4の入射方向は紙面の上下方向である。図19(b)は、試料ホルダ12部分を拡大して、エネルギービーム4’と試料ホルダ12,微小試料片9の方向関係を明確にした図である。微小試料片9における元の試料の表面はエネルギービーム軸に垂直である。微小試料片9の固定後に、試料ステージ144を引き抜くことなく、その場で90°試料ステージの握り部153’を回転させることで試料片9における元の試料の表面をFIB4に対して平行に設定できる。図19(c)は、90°回転後の試料ステージ144の状態を示す。図19(d)は、試料ホルダ12の拡大図で、試料ホルダ12は微小試料片の固定時に比べ90°回転している。第2試料ステージ144の90°回転に際しては握り部153’の一部に試料ホルダ144の向きを示す目印158を記しておくことで、薄壁部がどの方向を向いているかを試料作製装置の外から一目で確認でき、微小試料片9に無用のFIBを照射して損傷を与えずに済む。また、この目印157は、第2試料ステージ144をTEMやSEM内に導入した時にも観察試料面がどちらを向いているかも示しているのでTEMやSEM内に間違った方向で入れることはない。
【0092】
さらに、先の図1及び図2の手順に従って作製された局所領域の平面試料は、図20のように、第2試料ステージ144を試料作製装置40から引き抜いて、TEM160またはSEM161内に挿入することで、小さな試料ホルダ12の付け替えや、微小試料片9そのものに触れることなくして平面TEM観察や平面SEM観察に移行できるため、オペレータに対して過度の精神的緊張を与えずに済むことが大きな利点である。
【0093】
なお、上記した実施例においては、加工するビームとして集束イオンビームを取り上げて説明してきたが、これは集束イオンビームに限ることは無く、ステンシルマスクに設けた開口パターンの縮小形状の加工を一括して行うことのできる投射イオンビームであっても良いし、加工精度は集束イオンビームや投射イオンビームほど良くはないが加工速度が早いレーザービーム等のエネルギービームに依ってもよい。これらの場合、基本的にエネルギービームの光軸に対して垂直面の試料台上に載置した試料において、試料台に平行な面を有する試料を平面試料と云う。また、装置構成は投射イオンビーム利用のものでもレーザービーム利用のものであっても図5と同様であり、基本的には、光学系を置き換えて、レーザビームの場合は、検出部はは反射光の受光器を設けておけばよい。
【0094】
また、上記実施例においては、平面TEM試料について重点的に説明してきたが、SEM観察のための平面試料についても殆ど同様だが、SEM観察の場合は薄壁状に加工する必要はなく、片面の露出のみでよい。本方法によって、SEM観察のための、ある特定の平面座標でしかも特定深さの平面を有する観察試料が形成できる。さらに、このようにして形成した平面試料はいわゆる観察ばかりではなく、観察平面内のエネルギー分散型X線分光法(EDX),オージェ電子分光法(AES),二次イオン質量分析法(SIMS)等による元素分析にも適用できるものであることは云うまでもない。
【0095】
また、本願明細書中においては、透過型電子顕微鏡による観察例として、いわゆる透過電子顕微鏡(TEM)による観察例を挙げて説明してきたが、走査型の透過電子顕微鏡(STEM)による観察にも適用できるものであること云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施例になる薄片状試料の作製方法における加工工程の前半部分を説明するための図。
【図2】本発明の一実施例になる薄片状試料の作製方法における加工工程の後半部分を説明するための図。
【図3】図1及び図2に示した加工工程を経て作製された薄片状試料のTEM観察時の状態を説明するための図。
【図4】本発明の他の一実施例になる薄片状試料の作製方法における加工手順を説明するための図。
【図5】本発明の一実施例になる薄片状試料の作製装置の一構成例を示す図。
【図6】図5に示した薄片状試料の作製装置における試料ホルダ12の具体的構成例を示す図。
【図7】図5に示した薄片状試料の作製装置における試料ホルダ12とホルダカセット58との配置関係を説明するための図。
【図8】本発明の別の一実施例になる薄片状試料の作製装置における試料ホルダ12の回転機構の具体的構成例を示す図。
【図9】図8に示した試料ホルダ回転機構70の動作を説明するための図。
【図10】図8に示した試料ホルダ回転機構70を回転駆動させる手段の具体的構成例を示す図。
【図11】本発明のさらに他の一実施例になる薄片状試料の作製方法における加工手順を説明するための図。
【図12】本発明のさらに他の一実施例になる薄片状試料の作製方法における加工手順を説明するための図。
【図13】図12に示した加工工程を経て作製された薄片状試料のTEM観察時の状態を説明するための図。
【図14】本発明による平面試料の作製方法において、特に、摘出した微小試料片を試料ホルダに固定する方法を説明するための図。
【図15】本発明の一実施例になる平面試料の作製方法の一実施例を示す図であり、特にマーキングの説明をするための図。
【図16】本発明の一実施例になる平面試料の作製方法のうち、特にマーキングをさらに具体的に説明するための図。
【図17】本発明の一実施例になる試料作製装置の一構成例を示す図。
【図18】図17に示した試料作製装置における試料ステージの具体的構成例を示す図。
【図19】図17に示した試料作製装置を用いて平面試料を作製する場合の試料ステージの設置関係を説明するための図。
【図20】図17に示した試料作製装置とTEMまたはSEMとの間の連携を説明するための図。
【符号の説明】
【0097】
1…試料基板、4…FIB(集束イオンビーム)、5,5’…矩形穴、6…垂直溝、8…傾斜溝、9…微小試料片、10…プローブ、11…デポジション膜、12…試料ホルダ、14…試料ホルダ上面、15…試料基板表面、16…試料ホルダ側面、17,17’…デポジション膜、18…薄壁部、21…入射電子線、21’…透過電子線、19…正常断面、20…異常断面、31…TEMステージ、46…試料ステージ、101a,101b,101c…平面試料部、110a,110b,110c…平面試料部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ステージ上に載置した試料基板の一部を上記試料基板表面に対して略平行な観察面を有する平面試料に加工するための平面試料の作製方法であって、上記試料基板にエネルギービームを照射することによって上記平面試料に加工すべき領域を含む微小試料片を上記試料基板から分離摘出しこの分離摘出した上記微小試料片を試料ホルダ上に固定する工程と、この試料ホルダ上に固定した上記微小試料片の少なくとも一部をエネルギービームの照射によって上記試料基板の表面に対して略平行な観察面を有する平面試料に加工する工程とを含むことを特徴とする平面試料の作製方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料室内に設置された試料ステージに試料を載置し、
前記試料にイオンビームを照射し、
前記イオンビームの照射により試料から試料片を分離、摘出し、
当該摘出された試料片を前記試料室内に設置されたホルダへ移載し、
前記試料片の所望とする加工位置に前記イオンビームが照射されるように前記ホルダを回転させることを特徴とする試料作製方法。
【請求項2】
試料室内の傾斜可能な試料ステージに試料を載置する工程と、
前記試料にイオンビームを照射する工程と、
前記イオンビームの照射により前記試料より分離した試料片を摘出する工程と、
前記試料室内において前記試料片をホルダへ移送する工程と,
前記試料ステージの傾斜軸に対する前記ホルダの回転角度を変更する工程と、
前記ホルダに保持された前記試料片にイオンビームを照射する工程とを備えることを特徴とする試料作製方法。
【請求項3】
試料室内の試料ステージ上の試料にイオンビームを照射して試料片を作製する工程と、
前記試料から前記試料片を摘出し、当該試料片を前記イオンビームの入射方向に対して回転可能なホルダに保持する工程と、当該ホルダに保持された前記試料片に前記イオンビームを照射する工程とを有することを特徴とする試料作製方法。
【請求項4】
第一ステージ上の試料にイオンビームを照射して試料片に加工し、
前記試料から前記試料片を摘出して第二ステージに載せ、
前記イオンビームに対し、前記試料片を載せた前記第二ステージの傾斜角度を変更することを特徴とする試料作製方法。
【請求項5】
第一ステージに載置された試料にイオンビームを照射して試料片に加工し、
前記試料から前記試料片を摘出して第二ステージに載せ、
前記試料片の所望とする加工位置に前記イオンビームが照射されるように第二ステージを回転させることを特徴とする試料作製方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記ホルダには前記試料片を複数個搭載可能であることを特徴とする試料作製方法。
【請求項7】
請求項4または5に記載の試料作製方法において、
前記第二ステージには前記試料片を複数個搭載可能であることを特徴とする試料作製方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記ホルダが検査装置と兼用の試料ステージであることを特徴とする試料作製方法。
【請求項9】
請求項4または5に記載の試料作製方法において、
前記第二ステージが検査装置と兼用の試料ステージであることを特徴とする試料作製方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の試料作製方法において、
前記検査装置は走査電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡を含むことを特徴とする試料作製方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記試料片はプローブによって前記試料より摘出されることを特徴とする試料作製方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記試料が半導体ウエハである試料作製方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記試料が半導体チップである試料作製方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記試料がデバイスチップである試料作製方法。
【請求項15】
請求項1から5のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記イオンビームは集束イオンビームであることを特徴とする試料作製方法。
【請求項16】
請求項1から3のいずれかに記載の試料作製方法において、
前記試料室は真空排気可能な真空試料室であることを特徴とする試料作製方法。
【請求項17】
試料室内に設置された試料ステージに試料を載置し、
前記試料にイオンビームを照射し、
前記イオンビームの照射により試料から分離した試料片をプローブにより摘出し、
当該摘出された試料片を前記試料室内に設置されたホルダに固着し、
前記試料片の所望とする加工位置に前記イオンビームが照射されるように前記ホルダを回転させて当該加工位置に前記イオンビームを照射して透過型電子顕微鏡用の試料を作製できることを特徴とする試料作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−84484(P2006−84484A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363394(P2005−363394)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【分割の表示】特願平11−13130の分割
【原出願日】平成11年1月21日(1999.1.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】