試料採取車両
【課題】汚染物質を含む試料を安全、確実に採取して運搬することのできる試料採取車両を提供する。
【解決手段】作業者が搭乗する作業者室2と、車外の汚染空気を吸引・ろ過し、ろ過後の清浄空気を作業者室2内へ送気してその作業者室2内を与圧する空気浄化装置17と、作業者室2に隣接配置され、採取された試料を保管する保管室3と、保管室3に隣接配置され、採取された試料を保管前に前処理する前処理室4とを備え、作業者室2と保管室3とを第1連通孔を介して連通するとともに、この第1連通孔に、作業者室2側から保管室3側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁13を設け、かつ保管室3と車外とを第2連通孔を介して連通するとともに、この第2連通孔に、保管室3側から車外への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁15を設ける。
【解決手段】作業者が搭乗する作業者室2と、車外の汚染空気を吸引・ろ過し、ろ過後の清浄空気を作業者室2内へ送気してその作業者室2内を与圧する空気浄化装置17と、作業者室2に隣接配置され、採取された試料を保管する保管室3と、保管室3に隣接配置され、採取された試料を保管前に前処理する前処理室4とを備え、作業者室2と保管室3とを第1連通孔を介して連通するとともに、この第1連通孔に、作業者室2側から保管室3側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁13を設け、かつ保管室3と車外とを第2連通孔を介して連通するとともに、この第2連通孔に、保管室3側から車外への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁15を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を含む試料を採取する試料採取車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地面を汚染している有害物質の探知に関しては、例えば特許文献1に開示されているように、車両に搭載して汚染の有無およびその位置を探知するようにした汚染探知装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−65910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近、汚染物質が空気中に散乱する現場において、汚染物質を含む試料を分析するために、その試料を車両等の移動体上から採取して車両内に取り込むシステムについてのニーズがある。これに対して、上記従来の汚染探知装置では、このようなニーズに十分に応えることができず、その試料採取システムの開発が待ち望まれているところである。
【0005】
このシステムに用いられる試料採取車両の満たすべき要件としては、(1)車両内の作業者の安全を確保できる構造であること、(2)試料を安全に車両内に取り込める構造であること、(3)車両内に取り込んだ試料を安全に保管できる構造であること、等が挙げられる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、汚染物質を含む試料を安全、確実に採取して運搬することのできる試料採取車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明による試料採取車両は、
汚染物質を含む試料を採取する車両であって、
作業者が搭乗する作業者室と、車外の汚染空気を吸引・ろ過し、ろ過後の清浄空気を前記作業者室内へ送気してその作業者室内を与圧する空気浄化装置と、前記作業者室に隣接配置され、採取された試料を保管する保管室と、前記保管室に隣接配置され、採取された試料を保管前に前処理する前処理室とを備え、
前記作業者室と前記保管室とを第1連通孔を介して連通するとともに、この第1連通孔に、前記作業者室側から前記保管室側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁を設け、かつ前記保管室と車外とを第2連通孔を介して連通するとともに、この第2連通孔に、前記保管室側から前記車外への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁を設ける
ことを特徴とするものである(第1発明)。
【0008】
本発明において、前記空気浄化装置は、汚染空気を導入する外気吸入口と、この外気吸入口を介して車外の汚染空気を吸引するブロワと、このブロワと前記外気吸入口との間の空気流通路内に配されるパーティクルフィルタおよびガスフィルタと、前記パーティクルフィルタの上流側に配される遠心分離式の集塵ダクトとを備えて構成されるのが好ましい(第2発明)。
【0009】
また、前記保管室内には、採取された試料を冷蔵保管する冷蔵保管庫が設けられるのが好ましい(第3発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の試料採取車両において、車外にある汚染物質を含む試料は、車両内から適宜手段により採取されて前処理室内に取り込まれ、この前処理室において所要の前処理が施された後、保管室内に取り込まれて保管される。この保管室は作業者室と隔離されており、また作業者室内にはブロワによって車外から取り入れられた空気が空気浄化装置にて清浄化された後に送気され、かつその送気によって作業者室が与圧されるので、作業者室内の清浄空気は、作業者室から第1連通孔を介して保管室側へ向かい、さらに保管室から第2連通孔を介して車外へ向かう流れとなる。このため、車外から保管室への汚染空気の侵入および保管室から作業者室への汚染空気の侵入を確実に防ぐことができ、作業者室内にいる作業者の安全確保を図ることができる。こうして、汚染物質を含む試料を安全、確実に採取して運搬することが可能となる。
【0011】
前記第2発明によれば、車外から取り入れられた汚染空気中の塵埃は、パーティクルフィルタによりろ過される前に、遠心分離式の集塵ダクトにより粗塵埃が集塵されるのでパーティクルフィルタの長寿命化を図ることができる。
【0012】
また、前記第3発明によれば、保管室内に取り込まれた汚染物質を含む試料を冷蔵保管によってより確実に隔離保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明による試料採取車両の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係る試料採取車両の概略斜視図が示されている。また、図2には、本実施形態の試料採取車両を側面方向から見た部分概略断面図が、図3には、同試料採取車両を上面方向から見た部分概略断面図がそれぞれ示されている。さらに、図4には、本実施形態における空気浄化装置の構成図が示されている。
【0015】
本実施形態の試料採取車両1は、車内空間が、作業者の搭乗する作業者室2と、この作業者室2に隣接配置される保管室3と、この保管室3に隣接配置される前処理室4とに区画形成され、前処理室4の下方に除染(消毒)区画5が設けられて構成されている。ここで、前処理室4と除染区画5とにより前処理装置6が形成されている。また、保管室3と前処理装置6とが安全キャビネットを構成する。
【0016】
前記前処理装置6は車両の後端部に配置され、除染区画5の車外に面する側に取り入れハッチ7が設けられて、この取り入れハッチ7を開けて車外にある試料を取り入れるようにされている。なお、除染区画5への試料の取り入れは、車体の後端部に別途設けられる図示されないマジックハンド等を用いて行われ、またその試料は車外で容器内に収容・密閉された後、車内に取り込まれる。
【0017】
こうして除染区画5に取り入れられた試料収容容器は、取り入れハッチ7を閉鎖した後、その容器外周に除染剤(消毒剤)を散布することによって除染され、この除染後に前処理室4と除染区画5との間に設けられる移送ハッチ8を開けて、適宜の移送手段によって前処理室4内に取り込まれる。この前処理室4では、保管室3での試料の検知・識別等の作業の準備作業が前処理器材等を用いて行われる。
【0018】
前処理室4とそれに隣接する保管室3との間には移送ハッチ9が設けられ、この移送ハッチ9を通して試料が保管室3内に取り込まれるように構成されている。
【0019】
図3に示されるように、前記保管室3は隔壁10により車外空間から隔離されるとともに、作業者室2に対しても隔壁11により隔離されている。そして、作業者室2と保管室3とは第1連通孔12を介して連通するとともに、この第1連通孔12に、作業者室2側から保管室3側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁(第1リリーフ弁)13が介挿されている。また、保管室3と車外空間とは第2連通孔14を介して連通するとともに、この第2連通孔14に、保管室3側から車外空間側への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁(第2リリーフ弁)15が介挿されている。なお、前記保管室3内には、この保管室3内に取り込まれた試料を冷蔵保管するための冷蔵保管庫16が配されている。
【0020】
一方、作業者室2内には空気浄化装置17が配されている。この空気浄化装置17は、図4に示されているように、作業者室2の天井壁18を貫通するように配される集塵ダクト19と、この集塵ダクト19の上端部に設けられる外気吸入口20と、室内側端部に設けられるブロワ21と、集塵ダクト19からブロワ21に至る空気流通路の途中に配されるパーティクルフィルタ22、ガスフィルタ23とを備え、ブロワ21によって室外の汚染空気を集塵吸着して外気吸入口20から室内側に取り入れるように構成されている。
【0021】
前記集塵ダクト19は遠心分離式(サイクロン式)の集塵ダクトであって、汚染空気をパーティクルフィルタ22に導入する前に事前に粗塵埃を集塵してパーティクルフィルタ22の長寿命化を図るために設けられており、集塵後のダストは付設のダスト排出管24により回収され、この回収ダストは必要に応じて車外へ排出される。また、前記ガスフィルタ23は、活性炭等によって汚染成分を物理的に吸着して汚染空気をろ過する機能を有するものである。
【0022】
こうして、室外の汚染空気はブロワ21により外気吸入口20から取り入れられ、粗塵埃が集塵ダクト19により集塵され、その後フィルタ22,23を通過することによってろ過され、浄化後の清浄空気がブロワ21出口から作業者室2内に送風される。なお、車外から作業者室2内に至る空気の流れは図4において実線の矢印にて示されている。
【0023】
前記空気浄化装置17は、作業者室2内に与圧(大気圧に対して例えば5mmAq以上)をかける与圧装置の役目もしている。そして、この作業者室2内の与圧を維持するために、作業者室2と保管室3との隔壁11に設けられる第1差圧調整弁13のリリーフ圧が設定されている。また、保管室3は、密閉状態では作業者室2よりもやや低めで、かつ大気圧よりもやや高めの与圧に維持されており、この与圧を維持するために、保管室3と車外空間との間に設けられる第2差圧調整弁15のリリーフ圧が設定されている。
【0024】
このようにすることで、作業者室2→保管室3→車外空間への空気の流れを形成することができ、外気および保管室3内の汚染空気が作業者室2内へ侵入するのを防止することができ、作業者室2内で作業する作業者の安全を確保することができる。
【0025】
本実施形態の試料採取車両1は以上のように構成されており、車外にある汚染物質を含む試料は、まず取り入れハッチ7から前処理装置6の除染区画5に取り入れられ、この除染区画5において除染された後、移送ハッチ8から前処理室4に持ち込まれて所要の前処理が施される。次いで、前処理の終了した試料は、移送ハッチ9から保管室3内に持ち込まれ、この保管室3内で、必要に応じて検知・識別作業が行われた後、その保管室3内の冷蔵保管庫16内で冷蔵保管される。
【0026】
前記保管室3は作業者室2と隔離されており、また作業者室2内では、ブロワ21によって車外から外気吸入口20を介して取り入れられた汚染空気が空気浄化装置17にて清浄化された後に送気され、かつその送気によって作業者室2が与圧されるので、清浄空気が、作業者室2から第1連通孔12・第1差圧調整弁13を介して保管室3側へ向かい、さらに保管室3から第2連通孔14・第2差圧調整弁15を介して車外空間へ向かう流れになり、車外空間から保管室3への汚染空気の侵入および保管室3から作業者室2への汚染空気の侵入を防ぐことができ、作業者の安全確保を図ることができる。こうして、汚染物質を含む試料を安全、確実に採取して運搬する機能を備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る試料採取車両の概略斜視図
【図2】本実施形態の試料採取車両を側面方向から見た部分概略断面図
【図3】本実施形態の試料採取車両を上面方向から見た部分概略断面図
【図4】本実施形態における空気浄化装置の構成図
【符号の説明】
【0028】
1 試料採取車両
2 作業者室
3 保管室
4 前処理室
5 除染区画
10,11 隔壁
12 第1連通孔
13 第1差圧調整弁
14 第2連通孔
15 第2差圧調整弁
16 冷蔵保管庫
17 空気浄化装置
19 集塵ダクト
20 外気吸入口
21 ブロワ
22 パーティクルフィルタ
23 ガスフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を含む試料を採取する試料採取車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地面を汚染している有害物質の探知に関しては、例えば特許文献1に開示されているように、車両に搭載して汚染の有無およびその位置を探知するようにした汚染探知装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−65910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近、汚染物質が空気中に散乱する現場において、汚染物質を含む試料を分析するために、その試料を車両等の移動体上から採取して車両内に取り込むシステムについてのニーズがある。これに対して、上記従来の汚染探知装置では、このようなニーズに十分に応えることができず、その試料採取システムの開発が待ち望まれているところである。
【0005】
このシステムに用いられる試料採取車両の満たすべき要件としては、(1)車両内の作業者の安全を確保できる構造であること、(2)試料を安全に車両内に取り込める構造であること、(3)車両内に取り込んだ試料を安全に保管できる構造であること、等が挙げられる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、汚染物質を含む試料を安全、確実に採取して運搬することのできる試料採取車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明による試料採取車両は、
汚染物質を含む試料を採取する車両であって、
作業者が搭乗する作業者室と、車外の汚染空気を吸引・ろ過し、ろ過後の清浄空気を前記作業者室内へ送気してその作業者室内を与圧する空気浄化装置と、前記作業者室に隣接配置され、採取された試料を保管する保管室と、前記保管室に隣接配置され、採取された試料を保管前に前処理する前処理室とを備え、
前記作業者室と前記保管室とを第1連通孔を介して連通するとともに、この第1連通孔に、前記作業者室側から前記保管室側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁を設け、かつ前記保管室と車外とを第2連通孔を介して連通するとともに、この第2連通孔に、前記保管室側から前記車外への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁を設ける
ことを特徴とするものである(第1発明)。
【0008】
本発明において、前記空気浄化装置は、汚染空気を導入する外気吸入口と、この外気吸入口を介して車外の汚染空気を吸引するブロワと、このブロワと前記外気吸入口との間の空気流通路内に配されるパーティクルフィルタおよびガスフィルタと、前記パーティクルフィルタの上流側に配される遠心分離式の集塵ダクトとを備えて構成されるのが好ましい(第2発明)。
【0009】
また、前記保管室内には、採取された試料を冷蔵保管する冷蔵保管庫が設けられるのが好ましい(第3発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の試料採取車両において、車外にある汚染物質を含む試料は、車両内から適宜手段により採取されて前処理室内に取り込まれ、この前処理室において所要の前処理が施された後、保管室内に取り込まれて保管される。この保管室は作業者室と隔離されており、また作業者室内にはブロワによって車外から取り入れられた空気が空気浄化装置にて清浄化された後に送気され、かつその送気によって作業者室が与圧されるので、作業者室内の清浄空気は、作業者室から第1連通孔を介して保管室側へ向かい、さらに保管室から第2連通孔を介して車外へ向かう流れとなる。このため、車外から保管室への汚染空気の侵入および保管室から作業者室への汚染空気の侵入を確実に防ぐことができ、作業者室内にいる作業者の安全確保を図ることができる。こうして、汚染物質を含む試料を安全、確実に採取して運搬することが可能となる。
【0011】
前記第2発明によれば、車外から取り入れられた汚染空気中の塵埃は、パーティクルフィルタによりろ過される前に、遠心分離式の集塵ダクトにより粗塵埃が集塵されるのでパーティクルフィルタの長寿命化を図ることができる。
【0012】
また、前記第3発明によれば、保管室内に取り込まれた汚染物質を含む試料を冷蔵保管によってより確実に隔離保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明による試料採取車両の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係る試料採取車両の概略斜視図が示されている。また、図2には、本実施形態の試料採取車両を側面方向から見た部分概略断面図が、図3には、同試料採取車両を上面方向から見た部分概略断面図がそれぞれ示されている。さらに、図4には、本実施形態における空気浄化装置の構成図が示されている。
【0015】
本実施形態の試料採取車両1は、車内空間が、作業者の搭乗する作業者室2と、この作業者室2に隣接配置される保管室3と、この保管室3に隣接配置される前処理室4とに区画形成され、前処理室4の下方に除染(消毒)区画5が設けられて構成されている。ここで、前処理室4と除染区画5とにより前処理装置6が形成されている。また、保管室3と前処理装置6とが安全キャビネットを構成する。
【0016】
前記前処理装置6は車両の後端部に配置され、除染区画5の車外に面する側に取り入れハッチ7が設けられて、この取り入れハッチ7を開けて車外にある試料を取り入れるようにされている。なお、除染区画5への試料の取り入れは、車体の後端部に別途設けられる図示されないマジックハンド等を用いて行われ、またその試料は車外で容器内に収容・密閉された後、車内に取り込まれる。
【0017】
こうして除染区画5に取り入れられた試料収容容器は、取り入れハッチ7を閉鎖した後、その容器外周に除染剤(消毒剤)を散布することによって除染され、この除染後に前処理室4と除染区画5との間に設けられる移送ハッチ8を開けて、適宜の移送手段によって前処理室4内に取り込まれる。この前処理室4では、保管室3での試料の検知・識別等の作業の準備作業が前処理器材等を用いて行われる。
【0018】
前処理室4とそれに隣接する保管室3との間には移送ハッチ9が設けられ、この移送ハッチ9を通して試料が保管室3内に取り込まれるように構成されている。
【0019】
図3に示されるように、前記保管室3は隔壁10により車外空間から隔離されるとともに、作業者室2に対しても隔壁11により隔離されている。そして、作業者室2と保管室3とは第1連通孔12を介して連通するとともに、この第1連通孔12に、作業者室2側から保管室3側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁(第1リリーフ弁)13が介挿されている。また、保管室3と車外空間とは第2連通孔14を介して連通するとともに、この第2連通孔14に、保管室3側から車外空間側への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁(第2リリーフ弁)15が介挿されている。なお、前記保管室3内には、この保管室3内に取り込まれた試料を冷蔵保管するための冷蔵保管庫16が配されている。
【0020】
一方、作業者室2内には空気浄化装置17が配されている。この空気浄化装置17は、図4に示されているように、作業者室2の天井壁18を貫通するように配される集塵ダクト19と、この集塵ダクト19の上端部に設けられる外気吸入口20と、室内側端部に設けられるブロワ21と、集塵ダクト19からブロワ21に至る空気流通路の途中に配されるパーティクルフィルタ22、ガスフィルタ23とを備え、ブロワ21によって室外の汚染空気を集塵吸着して外気吸入口20から室内側に取り入れるように構成されている。
【0021】
前記集塵ダクト19は遠心分離式(サイクロン式)の集塵ダクトであって、汚染空気をパーティクルフィルタ22に導入する前に事前に粗塵埃を集塵してパーティクルフィルタ22の長寿命化を図るために設けられており、集塵後のダストは付設のダスト排出管24により回収され、この回収ダストは必要に応じて車外へ排出される。また、前記ガスフィルタ23は、活性炭等によって汚染成分を物理的に吸着して汚染空気をろ過する機能を有するものである。
【0022】
こうして、室外の汚染空気はブロワ21により外気吸入口20から取り入れられ、粗塵埃が集塵ダクト19により集塵され、その後フィルタ22,23を通過することによってろ過され、浄化後の清浄空気がブロワ21出口から作業者室2内に送風される。なお、車外から作業者室2内に至る空気の流れは図4において実線の矢印にて示されている。
【0023】
前記空気浄化装置17は、作業者室2内に与圧(大気圧に対して例えば5mmAq以上)をかける与圧装置の役目もしている。そして、この作業者室2内の与圧を維持するために、作業者室2と保管室3との隔壁11に設けられる第1差圧調整弁13のリリーフ圧が設定されている。また、保管室3は、密閉状態では作業者室2よりもやや低めで、かつ大気圧よりもやや高めの与圧に維持されており、この与圧を維持するために、保管室3と車外空間との間に設けられる第2差圧調整弁15のリリーフ圧が設定されている。
【0024】
このようにすることで、作業者室2→保管室3→車外空間への空気の流れを形成することができ、外気および保管室3内の汚染空気が作業者室2内へ侵入するのを防止することができ、作業者室2内で作業する作業者の安全を確保することができる。
【0025】
本実施形態の試料採取車両1は以上のように構成されており、車外にある汚染物質を含む試料は、まず取り入れハッチ7から前処理装置6の除染区画5に取り入れられ、この除染区画5において除染された後、移送ハッチ8から前処理室4に持ち込まれて所要の前処理が施される。次いで、前処理の終了した試料は、移送ハッチ9から保管室3内に持ち込まれ、この保管室3内で、必要に応じて検知・識別作業が行われた後、その保管室3内の冷蔵保管庫16内で冷蔵保管される。
【0026】
前記保管室3は作業者室2と隔離されており、また作業者室2内では、ブロワ21によって車外から外気吸入口20を介して取り入れられた汚染空気が空気浄化装置17にて清浄化された後に送気され、かつその送気によって作業者室2が与圧されるので、清浄空気が、作業者室2から第1連通孔12・第1差圧調整弁13を介して保管室3側へ向かい、さらに保管室3から第2連通孔14・第2差圧調整弁15を介して車外空間へ向かう流れになり、車外空間から保管室3への汚染空気の侵入および保管室3から作業者室2への汚染空気の侵入を防ぐことができ、作業者の安全確保を図ることができる。こうして、汚染物質を含む試料を安全、確実に採取して運搬する機能を備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る試料採取車両の概略斜視図
【図2】本実施形態の試料採取車両を側面方向から見た部分概略断面図
【図3】本実施形態の試料採取車両を上面方向から見た部分概略断面図
【図4】本実施形態における空気浄化装置の構成図
【符号の説明】
【0028】
1 試料採取車両
2 作業者室
3 保管室
4 前処理室
5 除染区画
10,11 隔壁
12 第1連通孔
13 第1差圧調整弁
14 第2連通孔
15 第2差圧調整弁
16 冷蔵保管庫
17 空気浄化装置
19 集塵ダクト
20 外気吸入口
21 ブロワ
22 パーティクルフィルタ
23 ガスフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を含む試料を採取する車両であって、
作業者が搭乗する作業者室と、車外の汚染空気を吸引・ろ過し、ろ過後の清浄空気を前記作業者室内へ送気してその作業者室内を与圧する空気浄化装置と、前記作業者室に隣接配置され、採取された試料を保管する保管室と、前記保管室に隣接配置され、採取された試料を保管前に前処理する前処理室とを備え、
前記作業者室と前記保管室とを第1連通孔を介して連通するとともに、この第1連通孔に、前記作業者室側から前記保管室側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁を設け、かつ前記保管室と車外とを第2連通孔を介して連通するとともに、この第2連通孔に、前記保管室側から前記車外への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁を設ける
ことを特徴とする試料採取車両。
【請求項2】
前記空気浄化装置は、汚染空気を導入する外気吸入口と、この外気吸入口を介して車外の汚染空気を吸引するブロワと、このブロワと前記外気吸入口との間の空気流通路内に配されるパーティクルフィルタおよびガスフィルタと、前記パーティクルフィルタの上流側に配される遠心分離式の集塵ダクトとを備えて構成される請求項1に記載の試料採取車両。
【請求項3】
前記保管室内には、採取された試料を冷蔵保管する冷蔵保管庫が設けられる請求項1または2に記載の試料採取車両。
【請求項1】
汚染物質を含む試料を採取する車両であって、
作業者が搭乗する作業者室と、車外の汚染空気を吸引・ろ過し、ろ過後の清浄空気を前記作業者室内へ送気してその作業者室内を与圧する空気浄化装置と、前記作業者室に隣接配置され、採取された試料を保管する保管室と、前記保管室に隣接配置され、採取された試料を保管前に前処理する前処理室とを備え、
前記作業者室と前記保管室とを第1連通孔を介して連通するとともに、この第1連通孔に、前記作業者室側から前記保管室側への空気の流れのみを許容する第1差圧調整弁を設け、かつ前記保管室と車外とを第2連通孔を介して連通するとともに、この第2連通孔に、前記保管室側から前記車外への空気の流れのみを許容する第2差圧調整弁を設ける
ことを特徴とする試料採取車両。
【請求項2】
前記空気浄化装置は、汚染空気を導入する外気吸入口と、この外気吸入口を介して車外の汚染空気を吸引するブロワと、このブロワと前記外気吸入口との間の空気流通路内に配されるパーティクルフィルタおよびガスフィルタと、前記パーティクルフィルタの上流側に配される遠心分離式の集塵ダクトとを備えて構成される請求項1に記載の試料採取車両。
【請求項3】
前記保管室内には、採取された試料を冷蔵保管する冷蔵保管庫が設けられる請求項1または2に記載の試料採取車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−232438(P2007−232438A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51869(P2006−51869)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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