説明

認証装置、並びに、それを備える携帯端末装置及び鍵開閉管理装置

【課題】 正確性に優れ、かつ、小型化を達成可能な認証装置、並びに、それを備える携帯端末装置及び鍵開閉管理装置を提供する。
【解決手段】 メモリ136は、正規の使用者の呼気中の1つ以上の特定成分のレベルである濃度に基づく識別情報データを予め記憶し、ガスセンサ140は、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に応じた信号を出力し、CPU130の演算機能は、ガスセンサ140により出力された信号に基づいて、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を算出し、CPU130の判定機能は、識別情報データ、及び、CPU130の算出結果に基づいて、使用者が正規の使用者であるか否かを判定するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が正規の使用者であるか否かを判定するための認証装置に関し、特に、生体試料から得られる情報を用いて判定を行なう認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、盗難にあった携帯電話装置及び自動車等が不正に使用される等の第三者の不正使用に基づく犯罪が増加している。そのため、悪意を持った第三者による不正使用を防止するために、使用者が正規の使用者であるのか、又は、正規の使用者ではない者、例えば、不正に操作しようとする第三者であるのかを判定する個人認証機能付きの機器又は装置の普及が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、正規ユーザの生体情報を利用した個人認証機能付きの携帯電話機器について開示されている。特許文献1に開示されるように、個人に固有の特徴である指紋情報又は顔画像情報等の生体情報を利用する個人認証は、情報漏洩等により第三者が知り得る可能性のあるパスワード等を利用する個人認証と比べて、セキュリティ面に優れるという利点がある。
【特許文献1】特開2004−304294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術では、生体情報として指紋情報を使用する場合には、検体である指と同等の大きさの面積を有する指紋センサを設ける必要があり、生体情報として顔画像情報を使用する場合には、CCDカメラ等のカメラを設ける必要があるため、個人認証機能付きの携帯電話機器が大型化してしまうという問題がある。また、1つの生体情報を利用して個人認証を行なっているので、類似の特徴を有する第三者が存在する場合には誤った判定がなされるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正確性に優れ、かつ、小型化を達成可能な認証装置、並びに、それを備える携帯端末装置及び鍵開閉管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面に係る認証装置は、使用者が正規の使用者であるか否かを判定するための認証装置であって、正規の使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに基づく識別情報を予め記憶する記憶手段と、使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに応じた信号を出力するセンサと、センサにより出力された信号に基づいて、使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルを算出する第1の演算手段と、識別情報及び第1の演算手段の算出結果に基づいて、使用者が正規の使用者であるか否かを判定する判定手段とを含む。
【0007】
このように、使用者によってそれぞれ異なる固有の特徴を示す、生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに基づいて判定を行なうので、誤った判定を回避することができ、使用者が正規の使用者であるか否かの判定を正確に行なうことができる。また、生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに応じた信号を出力可能なセンサを使用して判定を行なうので、例えば指等の測定対象となる検体と同等の大きさのセンサを必要とする装置、及び、カメラを必要とする装置等と比較して、装置の小型化が可能になる。したがって、判定の正確性に優れ、装置の小型化を達成可能な認証装置を得ることができる。
【0008】
好ましくは、判定手段は、識別情報と、第1の演算手段の算出結果とが一致する場合に、使用者が正規の使用者であると判定する。これにより、使用者が正規の使用者であるか否かの判定をより一層正確に行なうことができる。
【0009】
更に好ましくは、センサは、カーボンナノ構造体からなるセンサ素子を1つ以上含む。カーボンナノ構造体の形状はナノオーダーの微細構造であるので、カーボンナノ構造体からなるセンサ素子は、応答性に優れかつ検出下限が非常に低く、ppbオーダー程度の微量の特定成分の検出が可能である。したがって、使用者が正規の使用者であるか否かの判定をより一層高精度に行なうことができる。
【0010】
更に好ましくは、カーボンナノ構造体は、生体試料中の特定成分を選択的に検出するための表面修飾物質により表面修飾され、表面修飾物質は、センサ素子毎にそれぞれ異なる。これによって、生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルをより一層効率良く検出することができる。したがって、使用者が正規の使用者であるか否かの判定をより一層効率良く行なうことができる。
【0011】
更に好ましくは、認証装置は、第1の演算手段の算出結果に基づいて、生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに対応する1つ以上の整数値を算出するための第2の演算手段を更に備え、記憶手段は、正規の使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに対応する1つ以上の整数値と、正規の使用者名とを関連付けて識別情報として記憶し、判定手段は、識別情報、及び、第2の演算手段によって算出された1つ以上の整数値に基づいて、使用者が正規の使用者であるか否かを判定する。
【0012】
このように、生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに対応する1つ以上の整数値を用いて、記憶手段における記憶処理及び判定手段における判定処理を行なうので、記憶手段及び判定手段にかかる負荷を低減することができる。したがって、使用者が正規の使用者であるか否かの判定を迅速に効率良く行なうことができる。
【0013】
更に好ましくは、前記整数値は、予め定められる、生体試料中の特定成分の濃度範囲に対応するように設定される。これにより、第2の演算手段にかかる負荷を更に低減することができるので、使用者が正規の使用者であるか否かの判定をより一層迅速に効率良く行なうことができる。
【0014】
更に好ましくは、認証装置は、センサの出力に対して影響を与える要因による影響を排除するための信号を出力する補正用センサを更に備え、第1の演算手段は、補正用センサにより出力された信号に基づいて、センサにより出力された信号に基づいて算出された使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルを補正する。これにより、センサの出力に対して影響を与える要因による影響を排除することができ、信頼性の高い検出結果を得ることができるので、使用者が正規の使用者であるか否かの判定をより一層正確に行なうことができる。
【0015】
更に好ましくは、生体試料は、使用者により吐出される呼気である。呼気は、迅速かつ簡便にサンプリング及び分析が可能であり、かつ、ガス状であるため非侵襲で分析可能である生体試料である。したがって、生体試料として呼気を使用することにより、使用者が正規の使用者であるか否かの判定をより一層迅速かつ簡便に行なうことができる。
【0016】
本発明の第2の局面に係る携帯端末装置は、上述の認証装置と、判定手段の判定結果に基づいて、判定を必要とする機能として予め定められる機能が、使用可能な状態又は使用不可能な状態となるように制御する制御手段とを含み、制御手段は、判定手段により使用者が正規の使用者であると判定された場合に、予め定められる機能が使用可能な状態となるように制御する。正規の使用者ではない第三者は、判定を必要とする機能として予め定められる機能を使用することができないので、第三者による不正使用を確実に防ぐことが可能な防犯性に優れる携帯端末装置を得ることができる。
【0017】
本発明の第3の局面に係る鍵開閉管理装置は、上述の認証装置と、判定手段の判定結果に基づいて、鍵の施錠及び解錠を制御する制御手段とを含み、制御手段は、判定手段により使用者が正規の使用者であると判定された場合に、鍵を解錠するように制御する。正規の使用者ではない第三者は、鍵を解錠することができないので、第三者による鍵の解錠を確実に防ぐことが可能な防犯性に優れる鍵開閉管理装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用者が正規の使用者であるか否かを判定するための認証装置において、記憶手段は、正規の使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに基づく識別情報を予め記憶し、センサは、使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに応じた信号を出力し、第1の演算手段は、センサにより出力された信号に基づいて、使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルを算出し、判定手段は、識別情報及び第1の演算手段の算出結果に基づいて、使用者が正規の使用者であるか否かを判定する。
【0019】
このように、使用者によってそれぞれ異なる固有の特徴を示す、生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに基づいて判定を行なうので、誤った判定を回避することができ、使用者が正規の使用者であるか否かの判定を正確に行なうことができる。また、生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに応じた信号を出力可能なセンサを使用して判定を行なうので、例えば指等の測定対象となる検体と同等の大きさのセンサを必要する装置、及び、カメラを必要とする装置等と比較して、装置の小型化が可能になる。したがって、判定の正確性に優れ、装置の小型化を達成可能な認証装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下の説明及び図面においては、同一の部品には同一の参照符号及び名称を付してある。それらの機能も同様である。したがって、それらについての詳細な説明をその都度繰返すことはしない。
【0021】
[第1の実施の形態]
−携帯電話装置100−
(ハードウェア構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る携帯電話装置100の外観を示す正面図であり、図2は、携帯電話装置100の構成を示すブロック図である。図1を参照して、携帯電話装置100は、上下方向の長さが左右方向の長さより長い略直方体形状の筺体102と、筺体102の上部端面に設けられるアンテナ104と、筺体102の正面に設けられる操作キー群106及び液晶ディスプレイ108と、筺体102の背面に設けられる電源部(図示せず)とを含む。筺体102の正面において、上部には受話口110が形成され、下部には送話口112が形成される。本実施の形態において、送話口112は、測定対象ガスである呼気を吹込むための吹込口としても使用される。また、筺体102の背面には、筺体102内部に導入された呼気を排出するための呼気排出口(図示せず)が形成される。
【0022】
図2を参照して、携帯電話装置100は更に、中央演算処理装置(以下「CPU(Central Processing Unit)」と記す。)130を含む。CPU130は、ROM(Read−Only Memory)132、RAM(Random Access Memory)134及びメモリ136と電気的に接続される。
【0023】
ROM132は、携帯電話装置100の各構成部の動作等を実行し制御するためのコンピュータプログラム(以下単に「プログラム」と記す。)を記憶する読出専用メモリである。本実施の形態において、ROM132には、通信基地局(図示せず。)との無線通信等を含む携帯電話装置100の一般的な動作を実行するためのプログラムとともに、識別情報登録処理及び個人認証処理を実行するためのプログラムが記憶される。ここで、個人認証処理とは、携帯電話装置100を操作する使用者が、正規の使用者であるのか、又は、正規の使用者ではない者、例えば、不正に操作しようとする第三者であるのかを判定する処理のことであり、識別情報登録処理とは、個人認証処理の前準備として行なわれる処理のことである。このプログラムにおける、識別情報登録処理及び個人認証処理を実現するためのプログラム構造については後述する。
【0024】
RAM134は、CPU130が各種プログラムを実行する際に、ROM132内のプログラムが展開されたり、ワーキングメモリとして使用されたりする、一時記憶用メモリである。すなわち、RAM134内には、画像データ等の各種データが一時的に保存され、時間的に古いデータは消去される、又は、最新のデータが上書きされることによって、各種データが一時的に記憶される。
【0025】
メモリ136は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリからなり、必要に応じてデータの読出又は書込が行なわれるメモリである。メモリ136には、画像データ、電話番号情報及びメールアドレス情報等の各種データが記憶される。また、識別情報登録処理前には、パスワード、濃度換算式又は濃度換算表及び評価値換算表が予め記憶され、個人認証処理前には、識別情報データが予め記憶される。濃度換算式又は濃度換算表は、後述するガスセンサ140により出力された信号に基づいて使用者の呼気中の1つ以上の特定成分のレベルである濃度を算出するために、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されない。評価値換算表及び識別情報データについては後述する。
【0026】
CPU130は、操作キー群106等から出力される使用者の指示に応じた制御信号に従って各種プログラムを実行することによって、携帯電話装置100の各構成部の動作、及び、通信基地局(図示せず。)との無線通信等の所望の処理を実行する。上記の各種プログラムは、予めROM132に記憶されており、所望の処理の実行時において、当該ROM132から読出されてRAM134に転送される。CPU130は、CPU130内のプログラムカウンタと呼ばれるレジスタ(図示せず。)に格納された値によって指定される、RAM134内のアドレスからプログラムの命令を読出し、解釈する。CPU130はまた、読出された命令によって指定されるアドレスから演算に必要なデータを読出し、そのデータに対し命令に対応する演算を実行する。実行の結果も、RAM134、メモリ136及びCPU130内のレジスタ等の、命令によって指定されるアドレスに格納される。
【0027】
CPU130には、更に、操作キー群106、駆動回路138、送受信回路124、及び、A/D(Analog−to−Digital)変換器126が電気的に接続される。
【0028】
操作キー群106は、使用者からの各種指示等を入力するための入力装置として使用されるユーザインターフェイスであり、電話番号、メールアドレス、パスワード及び使用者名等の入力を行なうためのテンキー、電源を入れる又は切るための電源ボタン、識別情報登録処理を開始させるための識別情報登録キー、及び、後述するガスセンサ140の再生処理を開始させるための再生処理開始キー等の複数のキーを含む。操作キー群106によれば、使用者の入力操作によってなされる各種指示に応じた制御信号をCPU130に出力することで、使用者の入力操作に応じた処理を実現する。
【0029】
駆動回路138は、液晶ディスプレイ108と電気的に接続され、CPU130から入力される制御信号に従って、液晶ディスプレイ108を駆動し、RAM134内に一時的に記憶される画像データ等の画像を液晶ディスプレイ108に表示させる。液晶ディスプレイ108は、使用者に対して各種情報を出力するための出力装置として使用されるユーザインターフェイスである。
【0030】
送受信回路124には、アンテナ104、受話器120及び送話器122が電気的に接続される。アンテナ104は、通信基地局(図示せず)と無線通信を行なうために、電波信号とアナログ信号とを相互に変換する。受話器120は、筺体102内部において受話口110近傍に受話口110に臨むように設けられ、通話の際に送受信回路124から入力される電気信号(以下「音声信号」と記す。)を音声に変換して出力する。送話器122は、筺体102内部において送話口112近傍に送話口112に臨むように設けられ、通話の際に使用者の音声を音声信号に変換して送受信回路124に与える。送受信回路124は、アンテナ104を介して無線により電話通信及びデータ通信を行なうためのベースバンド回路であって、モデム機能及びチャネルコーデック機能を有する。すなわち、通信基地局からの電波信号受信時には、送受信回路124には、受信した電波信号に基づくアナログ信号がアンテナ104から入力される。送受信回路124のモデム機能は、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換して復調する。送受信回路124のチャネルコーデック機能は、復調されたデジタル信号に対して所定のデジタル処理を施すとともに、デジタル信号を音声信号と制御信号とに分離する。分離された音声信号は受話器120に対して入力され、制御信号はCPU130に対して入力される。一方、通信基地局に対する電波信号送信時には、送受信回路124のチャネルコーデック機能は、CPU130から入力される制御信号と、送話器122から入力される音声信号とを結合するとともに、所定のデジタル処理を施す。送受信回路124のモデム機能は、デジタル処理が施されたデジタル信号をアナログ信号に変換して変調する。変調されたアナログ信号は、送受信回路124からアンテナ104に対して出力され、アンテナ104は、入力されたアナログ信号に基づく電波信号を通信基地局に対して送信する。
【0031】
A/D変換器126は、後述するガスセンサ140と電気的に接続され、ガスセンサ140によりアナログ信号として出力される電位変化をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をCPU130に対して出力する。ガスセンサ140は、CPU130の制御に従って動作して、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度の変化に応じた強度のアナログ信号を電位変化として出力する。ガスセンサ140は、図1に示す筺体102内部において、送話口112に臨むように、送話器122の近傍に設けられる。ガスセンサ140の設置位置としては、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を検出可能な位置であれば特に限定されない。例えば、送話器122とガスセンサ140とがともに送話口112に臨むように、同一基板表面に並んで設けられる。このような位置に設けられることによって、使用者が通話を行なうときと同じように携帯電話装置100を持つと、ガスセンサ140が送話口112を介して使用者の口元に接近するので、送話口112から導入される呼気中の1つ以上の特定成分の濃度をより一層効率的に検出することができる。
【0032】
図3は、ガスセンサ140の構成を示す上面図である。図3を参照して、ガスセンサ140は、平板状の基板142と、基板142表面に所望の配列に並ぶように設けられる1つ以上のガスセンサ素子144とを含むセンサアレイである。本実施の形態においては、25個のガスセンサ素子144a〜144yが、5行5列の配列を形成するように二次元平面である基板142表面に設けられる。基板142としては、絶縁体からなる基板であれば特に限定されず、セラミック等からなる基板を使用できる。基板142の形状及びサイズとしては、筺体102内部に設置可能な形状及びサイズであれば特に限定されない。本実施の形態では、基板142として、上面の形状が、一辺の長さが2センチ〜3センチの長方形状のものであって、厚みが0.5mm〜1mmであるものを使用する。
【0033】
ガスセンサ素子144a〜144yは、後述する表面修飾物質158が異なる点以外は同一の構成を有するので、以下、これらを代表してガスセンサ素子144aの構成について説明する。なお、以下の記載において、各ガスセンサ素子144a〜144yに対応する各構成部においては、各ガスセンサ素子144a〜144yを表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。図4は、ガスセンサ素子144aの構成を概略して示す図である。図4を参照して、ガスセンサ素子144aは、センシング部150aと、センシング部150aの両端に配置される電極152a,154aとを含む。電極152a,154aの構成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、タングステン又はそれらの合金等からなるものを使用できる。
【0034】
図5は、センシング部150aの様子を模式的に示す図である。図5を参照して、センシング部150aは、例えば、カーボンナノチューブ(以下「CNT(Carbon Nano Tube)」と記す場合がある。)からなるカーボンナノ構造体156aと、カーボンナノ構造体156a表面に固定された、呼気中の特定成分を選択的に検出するための表面修飾物質158aとを含む。センシング部150aを構成するカーボンナノ構造体156aは、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなることが好ましく、更にはCNTからなることが好ましい。このようなグループから選択されるカーボンナノ構造体156の形状はナノオーダーの微細構造であるので、このようなカーボンナノ構造体156aからなるガスセンサ素子144aは、応答性に優れかつ検出下限が非常に低く、ppbオーダーの微量の特定成分の検出が可能である。したがって、個人認証処理をより一層高精度に行なうことができる。これらの中でも、CNTからなるカーボンナノ構造体156aは上述の効果を特に発現しやすい。
【0035】
本実施の形態においては、ガスセンサ素子144a〜144yのセンシング部150a〜150yは、それぞれ異なる表面修飾物質158a〜158yによって表面修飾される。例えば、ガスセンサ素子144aのセンシング部150aとして、アセトンを選択的に吸着する金属錯体であるマンガンフタロシアニン(以下「MnPc」と記す。)により塗着されることで表面修飾されたものを使用し、ガスセンサ素子144bのセンシング部150bとして、一酸化窒素(NO)を選択的に吸着する金属錯体であるコバルトフタロシアニン(以下「CoPc」と記す。)により塗着されることで表面修飾されたものを使用する。このように、ガスセンサ素子144a〜144yのセンシング部150a〜150yがそれぞれ異なる表面修飾物質158によって表面修飾されることによって、呼気中の25種類の特定成分の濃度をより一層効率良く検出することができる。したがって、個人認証処理をより一層効率良く行なうことができる。
【0036】
以下、ガスセンサ素子144aにおける、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度の検出原理について説明する。すなわち、カーボンナノ構造体156aの表面に何らかの化学物質が付着すると、電子移動が起こり起電力が発生する。言い換えれば、カーボンナノ構造体156aの2点間に電位差又は電気抵抗の変化が生じる。この電気抵抗の変化を検出すれば、化学物質の検出(センシング)が可能となる。また、ある特定成分を選択的に検出するための表面修飾物質158aによりカーボンナノ構造体156aの表面を修飾すると、上述の電気抵抗の変化は、表面修飾物質158aの挙動に連動するようになるので、特定成分の濃度のみを検出できるガスセンサ素子144aを得ることができる。したがって、MnPcによりカーボンナノ構造体156aの表面を修飾すると、呼気中のアセトンが選択的にMnPcに吸着される。その結果、前述のようにカーボンナノ構造体156aの電気抵抗が変化する。この変化量は、カーボンナノ構造体156a表面に吸着したアセトンの量に応じて変わるので、センシング部150aに電流を通したときの抵抗値の変化に応じた信号を得ることにより、呼気中のアセトンの濃度を知ることができる。
【0037】
図6は、ガスセンサ素子144aの抵抗変化を測定するための測定回路160aの構成を示す図である。図6を参照して、測定回路160aは、定電圧源162aと、定電圧源162aの両端子間に直列に接続されるガスセンサ素子144a及び負荷抵抗164aと、ガスセンサ素子144a及び負荷抵抗164a間の接点に接続された入力を持ち、この接点の電位変化を増幅するための増幅器168aとを含む。呼気中の特定成分の濃度の検出時には、この電位変化を測定するために、増幅器168aの入力とは反対側にある他方の端子に、A/D変換器126が接続される。図4に示すガスセンサ素子144aの電極152aは、定電圧源162aのプラス端子に、電極154aは、負荷抵抗164a及び増幅器168aにそれぞれ接続される。負荷抵抗164aの抵抗値は既知である。このような測定回路160aを用いてガスセンサ素子144a及び負荷抵抗164a間の接点の電位変化に応じた信号を得ることにより、ガスセンサ素子144aの電気抵抗の変化を知ることができるので、ガスセンサ素子144aに吸着した特定成分であるアセトンの濃度を知ることができる。本実施の形態では、25個のガスセンサ素子144a〜144yに対応して、25個の測定回路160a〜160yが設けられる。
【0038】
電源部(図示せず)は、例えば、二次電池等のバッテリからなり、CPU130から入力される制御信号に従って、携帯電話装置100の各構成部に対して電力を供給する。なお、CPU130に対する電力供給は、使用者等による操作キー群106の電源ボタンからの入力操作によって開始される。
【0039】
(ソフトウェア構成)
−識別情報登録処理のプログラム構造−
図7は、CPU130によって実行される、識別情報登録処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。上述したように、ROM132に記憶されるプログラムは、識別情報登録処理を実行するようにプログラミングされている。この識別情報登録処理は、CPU130が、上記プログラムに従って携帯電話装置100の各構成部の動作を制御することによって、ハードウェアとプログラムとの協働により実現する、判定機能、演算機能及び記憶機能等により実行される。なお、この携帯電話装置100により実現される判定機能は、パスワードが一致するか否か、及び、使用者名が入力されたか否か等の後述する各種判定処理を行なう機能であり、演算機能は、ガスセンサ140により出力された信号に基づいて、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を算出し、算出した呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の整数値を算出する等の後述する各種演算処理を行なう機能であり、記憶機能とは、算出した1つ以上の整数値と使用者名とを関連付けて識別情報データとしてメモリ136に記憶させる機能である。
【0040】
図7を参照して、識別情報登録処理を実現するためのプログラムは、使用者等により操作キー群106の識別情報登録キーからの入力操作がなされることによって起動される。このプログラムは、液晶ディスプレイ108に、例えば「パスワードを入力して下さい。」等のパスワードの入力を促す旨の表示を表示させるステップS100と、予め記憶されるパスワードをメモリ136から読出し、読出したパスワードと操作キー群106のテンキーから入力されたパスワードとが一致するか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップS101とを含む。
【0041】
このプログラムは更に、ステップS101において、パスワードが一致しないと判定された場合(NOの場合)に実行され、液晶ディスプレイ108に、例えば「パスワードが間違っています。」等のパスワードが誤っている旨の表示を表示させるとともに、本処理を終了するステップS102を含む。
【0042】
このプログラムは更に、ステップS101において、パスワードが一致すると判定された場合(YESの場合)に実行され、液晶ディスプレイ108に、例えば「使用者名を登録して下さい。」等の使用者名の入力を促す旨の表示を表示させるステップS103と、操作キー群106のテンキーから使用者名が入力されたか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップS104とを含む。ステップS104において、使用者名が入力されていないと判定された場合(NOの場合)には、入力されたと判定されるまで、ステップS104が繰返される。
【0043】
このプログラムは更に、ステップS104において、使用者名が入力されたと判定された場合(YESの場合)に実行され、定電圧源162a〜162yにより、ガスセンサ素子144a〜144yと負荷抵抗164a〜164yとを直列接続したものの両端に予め定める一定電圧をかけて、ガスセンサ素子144a〜144yを起動させるステップS105と、液晶ディスプレイ108に、例えば「呼気を吹込んで下さい。」等の呼気の導入を促す旨の表示を表示させるステップS106とを含む。
【0044】
このプログラムは更に、濃度換算表又は濃度換算式をメモリ136から読出し、読出した濃度換算表又は濃度換算式、及び、A/D変換器126から入力されるデジタル信号に基づいて、使用者により吐出された呼気中のアセトン及び一酸化窒素(NO)等を含む25種類の特定成分の濃度をそれぞれ算出するステップS107と、25種類の特定成分の濃度にそれぞれ対応する評価値換算表をメモリ136から読出し、読出した評価値換算表、及び、ステップS107において算出された25種類の特定成分の濃度に基づいて、各特定成分の濃度に対応する整数値である評価値を算出するステップS108とを含む。テーブル1に、呼気中のアセトンの濃度に対応する評価値を算出するための評価値換算表の一例を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
テーブル1を参照して、評価値である0〜5は、予め定められる6つの濃度範囲に対応するようにそれぞれ設定される。ステップS108では、このように、予め定められる、呼気中の各特定成分の濃度範囲に対応するように設定される整数値である評価値に基づいて、ステップS107において算出された呼気中の25種類の特定成分の濃度に対応する評価値をそれぞれ算出する。例えば、使用者により吐出された呼気中のアセトンの濃度が250ppmであった場合には、対応する評価値として3が算出される。このように、予め定められる、呼気中の各特定成分の濃度範囲に対応するように設定される整数値である評価値に基づいて、呼気中の25種類の特定成分の濃度に対応する評価値をそれぞれ算出することにより、CPU130にかかる負荷を更に低減することができるので、個人認証処理をより一層迅速に効率良く行なうことができる。
【0047】
このプログラムは更に、ステップS108において算出された25種類の特定成分に対応する評価値と、入力された使用者名とを関連付けて識別情報データとしてメモリ136に記憶させるステップS109を含む。識別情報データは、例えば、テーブル形式で記憶される。テーブル2に、テーブル形式で記憶される識別情報データの一例を示す。テーブル2中、a〜yのアルファベットは、各ガスセンサ素子144a〜144yにより選択的に検出される特定成分を示す。例えば、aはアセトンを示し、bは一酸化窒素(NO)を示す。
【0048】
【表2】

【0049】
テーブル2を参照して、メモリ136には、使用者名A〜Gと、各使用者名A〜Gに対応した呼気中の25種類の特定成分に対応する評価値(以下「呼気情報」と記す場合がある。)とが、それぞれ関連付けて記憶される。このようにして記憶される呼気情報は、テーブル2に示されるように、使用者によってそれぞれ異なる固有の特徴を示すので、このような呼気情報を用いて個人認証処理を行なうことにより、より一層正確に個人の特定が行なえるようになる。したがって、誤った判定をより一層確実に回避することができ、個人認証処理をより一層正確に行なうことができる。以下、識別情報データにおいて使用者名A〜Gとして登録される7名の使用者を正規の使用者と呼ぶ。この正規の使用者とは、予め許可されることにより、識別情報登録処理を行なうために必要となるパスワードを知らされていた者である。このような複数の正規の使用者のグループとしては、例えば、携帯電話装置100を正規に使用する可能性のある家族等がある。
【0050】
−個人認証処理のプログラム構造−
図8は、CPU130によって実行される、個人認証処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。上述したように、ROM132に記憶されるプログラムは、個人認証処理を実行するようにプログラミングされている。この個人認証処理は、CPU130が、上記プログラムに従って携帯電話装置100の各構成部の動作を制御することによって、ハードウェアとプログラムとの協働により実現する演算機能及び判定機能等により実行される。なお、この携帯電話装置100により実現される演算機能は、ガスセンサ140により出力された信号に基づいて、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を算出し、算出した呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の整数値を算出する等の各種演算を行なう機能であり、判定機能は、識別情報データ中に、算出した全ての整数値と一致するものがあるか否かを判定する等の後述する判定動作を行なう機能である。
【0051】
図8を参照して、個人認証処理を実現するためのプログラムは、使用者等により操作キー群106から、例えば、メールアドレスを表示するための入力操作がなされる等の制限された機能を使用するための入力操作がなされることによって、起動される。ここで、制限された機能とは、正規の使用者によって個人認証処理を必要とする機能として予め設定される機能であり、例えば、通話機能、並びに、電話番号及びメールアドレス等を含む個人情報を表示させる機能等である。制限された機能は、個人認証処理によって使用者が正規の使用者であると判定された場合のみに使用可能となる。
【0052】
このプログラムにおいて、ステップS200〜ステップS203における各処理は、図7に示す識別情報登録処理を実現するためのプログラムにおけるステップS105〜ステップS108における各処理と同じである。
【0053】
このプログラムは更に、識別情報データをメモリ136から読出し、読出した識別情報データと、ステップS203において算出された25種類の特定成分に対応する各評価値とを比較して、識別情報データ中に、算出した全ての評価値と一致するものがあるか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップS204を含む。
【0054】
このプログラムは更に、ステップS204において、全ての評価値と一致するものがないと判定された場合(NOの場合)に実行され、液晶ディスプレイ108に、例えば「使用を許可できません。」等の使用者によって指示された機能を使用できない旨の表示を表示させるとともに、本処理を終了するステップS205を含む。
【0055】
このプログラムは更に、ステップS204において、全ての評価値と一致するものがあると判定された場合(YESの場合)に実行され、使用者によって指示された機能を使用可能な状態にするステップS206を含む。すなわち、ステップS206において、CPU130は、指示された機能を実現するために動作する各構成部に対して制御信号を出力し、これらの各構成部の動作制御を開始する。
【0056】
(動作)
図1〜図6を参照して、本実施の形態に係る携帯電話装置100は以下のように動作する。なお、携帯電話装置100のうち、送受信回路124を用いた電話通信及びデータ通信等の通信に関わる動作、及び、携帯電話装置100のコンピュータとしての一般的な動作はいずれも周知であるのでここでは説明せず、識別情報登録処理時及び個人認証処理時における動作についてのみ説明する。また、識別情報登録処理及び個人認証処理は、携帯電話装置100が待機状態のときに実行される。ここで、待機状態とは、使用者等による操作キー群106の電源ボタンからの入力操作によって、携帯電話装置100の電源が投入され、CPU130に電力が供給された状態にあることを示す。この待機状態にある携帯電話装置100は、液晶ディスプレイ108に、例えば時計機能等によって現在の時刻及びカレンダー等が表示された状態にある。
【0057】
−識別情報登録処理時の動作−
通常、正規の使用者は、携帯電話装置100を新規に使用する際に、携帯電話装置100の識別情報登録処理を行なう。まず、使用者等が、操作キー群106の識別情報登録キーから入力操作を行なうと、液晶ディスプレイ108に、例えば「パスワードを入力して下さい。」等のパスワードの入力を促す旨の表示が表示される。
【0058】
使用者等が、液晶ディスプレイ108の表示を確認して操作キー群106のテンキーから、数値及び文字を組合せて構成されるパスワードを入力すると、CPU130は、予め記憶されるパスワードをメモリ136から読出し、読出したパスワードと入力されたパスワードとが一致するか否かを判定する。そして、パスワードが一致すると判定した場合には、液晶ディスプレイ108に、例えば「使用者名を登録して下さい。」等の使用者名の入力を促す旨の表示を表示させる。一方、パスワードが一致しないと判定した場合には、液晶ディスプレイ108に、「パスワードが間違っています。」等のパスワードが誤っている旨の表示を表示させる。
【0059】
使用者等が、液晶ディスプレイ108に表示される使用者名の入力を促す旨の表示を確認して操作キー群106のテンキーから使用者名を入力すると、CPU130は、定電圧源162a〜162yにより、ガスセンサ素子144a〜144yと負荷抵抗164a〜164yとを直列接続したものの両端に予め定める一定電圧をかけてガスセンサ素子144a〜144yを起動させ、次いで、液晶ディスプレイ108に、例えば「呼気を吹込んで下さい。」等の呼気の導入を促す旨の表示を表示させる。
【0060】
使用者等が、液晶ディスプレイ108の表示を確認して送話口112から筺体102内部に呼気を吐出すると、呼気中の1つ以上の特定成分はガスセンサ素子144a〜144yにそれぞれ選択的に検出される。例えば、呼気中のアセトン及び一酸化窒素(NO)は、ガスセンサ素子144a,144bにそれぞれ選択的に吸着されることで選択的に検出される。その結果、ガスセンサ素子144a〜144yの電極152a〜152y及び電極154a〜154y間の電気抵抗がそれぞれ増加する。その変化は、増幅器168a〜168yの出力電圧の変化としてA/D変換器126に対して出力される。このようにして、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に応じたアナログ信号が出力される。
【0061】
A/D変換器126は、入力されたガスセンサ素子144a〜144yの電位変化をそれぞれデジタル信号に変換してCPU130に対して出力する。CPU130は、濃度換算表又は濃度換算式をメモリ136から読出し、読出した濃度換算表又は濃度換算式、及び、A/D変換器126から入力されるデジタル信号に基づいて、使用者により吐出された呼気中のアセトン及び一酸化窒素(NO)等を含む25種類の特定成分の濃度をそれぞれ算出する。更に、25種類の特定成分の濃度にそれぞれ対応する評価値換算表(テーブル1参照)をメモリ136から読出し、読出した評価値換算表、及び、算出した25種類の特定成分の濃度に基づいて、各特定成分の濃度に対応する整数値である評価値を算出する。そして、算出された25種類の特定成分に対応する評価値と、入力された使用者名とを関連付けて識別情報データとしてメモリ136に記憶させる。識別情報データは、例えば、テーブル形式(テーブル2参照)で記憶される。
【0062】
ガスセンサ素子144a〜144yに1つ以上の特定成分が検出された呼気は、筺体102に設けられる呼気排出口(図示せず)から携帯電話装置100外部に排出され、これによって、識別情報登録処理が終了する。
【0063】
なお、識別情報登録処理は、入力されたパスワードとメモリ136に予め記憶されるパスワードとが一致しない場合には実行されない。したがって、正しいパスワードを知らされていない正規の使用者以外の第三者は、識別情報登録処理を実行することができないので、より一層確実に第三者による携帯電話装置100の不正使用を防止することができる。また、正規の使用者が複数存在する場合には、上述の識別情報登録処理が、正規の使用者の数の分だけ繰返して行なわれる。
【0064】
−個人認証処理時の動作−
携帯電話装置100は、以下のようにして個人認証処理を行なう。使用者等が、操作キー群106から、例えば、メールアドレスを表示するための入力操作を行なう等の制限された機能を使用するための入力操作を行なうと、CPU130は、ガスセンサ素子144a〜144yを起動させる。なお、ガスセンサ素子144a〜144yを起動させる動作、及び、ガスセンサ素子144a〜144yを起動させてから、25種類の特定成分の濃度に対応する評価値が算出されるまでの動作は、識別情報登録処理時における動作と同じである。
【0065】
評価値が算出されると、CPU130は、識別情報データをメモリ136から読出し、読出した識別情報データと、算出した25種類の特定成分に対応する各評価値とを比較して、識別情報データ中に、算出した全ての評価値と一致するものがあるか否かを判定する。そして、全ての評価値と一致するものがない、すなわち使用者が正規の使用者ではないと判定した場合には、液晶ディスプレイ108に、例えば「使用を許可できません。」等の、使用者によって指示された機能を使用できない旨の表示を表示させる。一方、全ての評価値と一致するものがある、すなわち使用者が正規の使用者であると判定された場合には、CPU130は、指示された機能を実現するために動作する各構成部に対して制御信号を出力し、これらの各構成部の動作制御を開始することによって、使用者によって指示された機能を使用可能な状態にする。
【0066】
ガスセンサ素子144a〜144yに1つ以上の特定成分が検出された呼気は、筺体102に設けられる呼気排出口(図示せず)から携帯電話装置100外部に排出され、これによって、個人認証処理が終了する。
【0067】
使用者は、ガスセンサ素子144a〜144yの検出感度を向上させるために、例えば、一日毎等のように定期的に、ガスセンサ140の再生処理を行なう。すなわち、使用者が、操作キー群106の再生処理開始キーから入力操作を行なうと、CPU130は、定電圧源162a〜162yにより、ガスセンサ素子144a〜144yと負荷抵抗164a〜164yとを直列接続したものの両端に予め定める所定の電圧を所定の時間かけることで、ガスセンサ素子144a〜144yの温度を50℃〜100℃に上昇させる。この操作によって、ガスセンサ素子144a〜144yに吸着したガス成分等が脱離されてガスセンサ素子144a〜144yが再生されるので、ガスセンサ素子144a〜144yの検出感度が向上する。
【0068】
本実施の形態に係る携帯電話装置100によれば、CPU130は、使用者が正規の使用者であるか否かの判定結果に基づいて、個人認証処理を必要とする機能として予め設定される、例えば、通話機能、並びに、電話番号及びメールアドレス等を含む個人情報を表示させる機能等が、使用可能な状態又は使用不可能な状態になるように制御する。そして、使用者が正規の使用者であると判定した場合には、上述の予め設定される機能が使用可能な状態となるように制御する。これにより、正規の使用者ではない第三者は、個人認証処理を必要とする機能を使用することができないので、第三者による不正使用を確実に防ぐことが可能な防犯性に優れる携帯電話装置100を得ることができる。
【0069】
また、携帯電話装置100において、メモリ136は、正規の使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の評価値と、正規の使用者名とを関連付けて識別情報データとして予め記憶し、CPU130の演算機能は、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の評価値を算出し、CPU130の判定機能は、識別情報データ、及び、演算機能により算出された1つ以上の評価値に基づいて、使用者が正規の使用者であるか否かを判定する。このように、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の評価値を用いて、メモリ136における記憶処理及びCPU130における判定処理を行なうので、メモリ136及びCPU130にかかる負荷を低減することができる。したがって、個人認証処理を迅速に効率良く行なうことができる。
【0070】
更に、CPU130の判定機能は、識別情報データに含まれる全ての評価値と、個人認証処理時において、CPU130の演算機能により算出された全ての評価値とが一致する場合に、使用者が正規の使用者であると判定する。これにより、個人認証処理をより一層正確に行なうことができる。
【0071】
なお、上記実施の形態では、送話口112(図1参照)が呼気の吹込口を兼ねていたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、吹込口を送話口112とは別に設けてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、携帯端末装置の一例として携帯電話装置100を使用したが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、携帯電話装置100に代えて、PHS(Personal Handyphone System)電話装置及びPDA装置(Personal Digital Assistant)等の携帯端末装置を使用してもよい。
【0073】
[第2の実施の形態]
−鍵開閉管理装置200−
(ハードウェア構成)
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る鍵開閉管理装置200の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る鍵開閉管理装置200は、例えば、特定領域である部屋の出入口に設けられる自動扉近傍に設置され、自動扉に備えられる電子錠の施錠及び解錠を制御することによって、部屋に対する使用者の出入りを管理する装置である。
【0074】
鍵開閉管理装置200は、外観(図示せず。)が異なる点、受話器120及び送話器122が設けられない点、並びに、ガスセンサ140において補正用センサ204,206が設けられる点以外は第1の実施の形態に係る携帯電話装置100と同一又は類似の構成を有する。したがって、鍵開閉管理装置200において、携帯電話装置100と同一又は類似の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さず、異なる点のみ説明する。
【0075】
図9を参照して、鍵開閉管理装置200は、略直方体形状の筺体(図示せず)と、筺体の上部端面に設けられるアンテナ104と、筺体の正面に設けられる操作キー群106及び液晶ディスプレイ108と、筺体の背面に設けられる電源部(図示せず)とを含む。また、筺体の正面において、操作キー群106及び液晶ディスプレイ108が設けられない部分、例えばこれらの下方には、測定対象ガスである呼気を吹込むための吹込口(図示せず)が形成され、筺体の背面には、筺体内部に導入された呼気を排出するための呼気排出口(図示せず)が形成される。
【0076】
鍵開閉管理装置200において、ROM132は、鍵開閉管理装置200の各構成部の動作等を実行し制御するためのプログラムを記憶する。本実施の形態において、ROM132には、電気錠の施錠及び解錠処理等を含む鍵開閉管理装置200の一般的な動作を実行するためのプログラムとともに、識別情報登録処理及び個人認証処理を実行するためのプログラムが記憶される。ここで、個人認証処理とは、特定領域である部屋に対して入室しようとする使用者が、正規の使用者であるのか、又は、正規の使用者ではない者、例えば、不正に出入りしようとする第三者であるのかを判定する処理のことであり、識別情報登録処理とは、個人認証処理の前準備として行なわれる処理のことである。このプログラムにおける、識別情報登録処理及び個人認証処理を実現するためのプログラム構造については後述する。CPU130は、操作キー群106等から出力される使用者の指示に応じた制御信号に従って各種プログラムを実行することによって、鍵開閉管理装置200の各構成部の動作、及び、CPU130の演算機能によって算出された呼気中の1つ以上の特定成分の濃度の値の補正処理等の所望の処理を実行する。
【0077】
操作キー群106は、パスワード及び使用者名等の入力を行なうためのテンキー、電源を入れる又は切るための電源ボタン、識別情報登録処理を開始させるための識別情報登録キー、個人認証処理を開始させるための個人認証開始キー、及び、ガスセンサ140の再生処理を開始させるための再生処理開始キー等の複数のキーを含む。
【0078】
送受信回路124には、アンテナ104が電気的に接続される。アンテナ104は、第1の実施の形態に係る携帯電話装置100等の外部装置と無線通信を行なうために、電波信号とアナログ信号とを相互に変換する。送受信回路124は、アンテナ104を介して無線によりデータ通信を行なうためのベースバンド回路であって、モデム機能及びチャネルコーデック機能を有する。すなわち、外部装置からの電波信号受信時には、送受信回路124には、受信した電波信号に基づくアナログ信号がアンテナ104から入力される。送受信回路124のモデム機能は、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換して復調する。送受信回路124のチャネルコーデック機能は、復調されたデジタル信号に対して所定のデジタル処理を施す。所定のデジタル処理が施されたデジタル信号は、制御信号としてCPU130に対して入力される。一方、外部装置に対する電波信号送信時には、送受信回路124のチャネルコーデック機能は、CPU130から入力される制御信号に対して所定のデジタル処理を施す。送受信回路124のモデム機能は、デジタル処理が施された制御信号をデジタル信号からアナログ信号に変換して変調する。変調されたアナログ信号は、送受信回路124からアンテナ104に対して出力され、アンテナ104は、入力されたアナログ信号に基づく電波信号を外部装置に対して送信する。
【0079】
ガスセンサ140は、筺体(図示せず。)内部において、吹込口に臨むように、吹込口(図示せず)近傍に設けられる。このような位置に設けられることによって、使用者が吹込口に口元を近づけると、ガスセンサ140が吹込口を介して使用者の口元に接近するので、吹込口から導入される呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を効率的に検出することができる。
【0080】
図10は、ガスセンサ140の構成を示す上面図である。図10を参照して、ガスセンサ140は、平板状の基板142と、二次元平面である基板142表面に5行5列の配列を形成するように設けられる25個のガスセンサ素子144a〜144yと、これらガスセンサ素子144a〜144yの近傍、例えば、5行5列の配列においてその第6行目にあたる位置に並んで設けられる2つの補正用センサ素子204,206とを含むセンサアレイである。補正用センサ素子204,206は、表面修飾物質158が異なる点以外はガスセンサ素子144a〜144yと同一の構成を有する。本実施の形態においては、補正用センサ素子204のセンシング部150として、大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)を選択的に吸着する表面修飾物質158により表面修飾されたものを使用し、補正用センサ素子206のセンシング部150として、大気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を選択的に吸着する表面修飾物質158により表面修飾されたものを使用する。補正用センサ素子204,206には、ガスセンサ素子144a〜144yと同様に、補正用センサ素子204,206の抵抗変化を検出するための測定回路160がそれぞれ設けられる。
【0081】
本実施の形態において、鍵開閉管理装置200は、自動車の交通量の多い道路近傍等に設置される場合、鍵開閉管理装置200周辺の大気中には、自動車の排気ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)が通常の大気中よりも多く含まれる。ガスセンサ素子144a〜144yは、呼気中の25種類の特定成分の濃度を検出し、検出した濃度に応じた信号を出力するが、このガスセンサ素子144a〜144yの検出結果は、大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)等の、通常の大気中よりも多く含まれる成分(以下「妨害成分」と記す。)の影響を受けるおそれがある。したがって、より信頼性の高い検出結果を得るためには、大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)等の妨害成分の影響を排除する必要がある。本実施の形態では、補正用センサ素子204,206によって大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)の濃度を選択的に検出し、その検出結果に基づいて、ガスセンサ素子144a〜144yの検出結果の補正を行なう。ガスセンサ素子144a〜144yの検出結果に対する補正方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されないが、ガスセンサ素子144a〜144yにより出力された信号に基づいて算出された特定成分の濃度の値から、補正用センサ素子204,206により出力された信号に基づいて算出された妨害成分の濃度の値を差引く方法等がある。
【0082】
このように、CPU130は、大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)等の妨害成分の濃度に応じた信号を出力する補正用センサ素子204,206の検出結果に基づいて、ガスセンサ素子144a〜144yの検出結果の補正を行なうので、大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)等の妨害成分の影響を排除することができる。したがって、信頼性の高い検出結果を得ることができるので、個人認証処理をより一層正確に行なうことができる。
【0083】
電源部(図示せず)は、例えば、二次電池等のバッテリからなり、CPU130から入力される制御信号に従って、鍵開閉管理装置200の各構成部に対して電力を供給する。なお、CPU130に対する電力供給は、使用者等による操作キー群106の電源ボタンからの入力操作によって開始される。
【0084】
(ソフトウェア構成)
−識別情報登録処理のプログラム構造−
図11は、CPU130によって実行される、識別情報登録処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。上述したように、ROM132に記憶されるプログラムは、識別情報登録処理を実行するようにプログラミングされている。この識別情報登録処理は、CPU130が、上記プログラムに従って鍵開閉管理装置200の各構成部の動作を制御することによって、ハードウェアとプログラムとの協働により実現する、判定機能、演算機能及び記憶機能等により実行される。なお、鍵開閉管理装置200により実現される判定機能は、パスワードが一致するか否か、及び、使用者名が入力されたか否か等の各種判定動作を行なう機能であり、演算機能は、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を算出し、算出した呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の整数値を算出する等の各種演算処理を行なう機能であり、記憶機能とは、算出した1つ以上の整数値と使用者名とを関連付けてメモリ136に記憶させる機能である。
【0085】
図11を参照して、このプログラムにおいて、ステップS300〜ステップS309における各処理は、ステップS307において、演算機能により算出された、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度の値の補正処理が行なわれる以外は、図7に示す携帯電話装置100における識別情報登録処理を実現するためのプログラムにおけるステップS100〜ステップS109における各処理と同じである。以下、異なる部分のみ説明する。
【0086】
ステップS307において、CPU130は、濃度換算表又は濃度換算式をメモリ136から読出し、読出した濃度換算表又は濃度換算式、及び、A/D変換器126から入力されるデジタル信号に基づいて、使用者により吐出された呼気中のアセトン及び一酸化窒素(NO)、並びに、大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)等を含む27種類の特定成分の濃度をそれぞれ算出する。そして、ガスセンサ素子144a〜144yから出力される信号に基づいて算出された各特定成分の濃度の値から、補正用センサ素子204,206により出力される信号に基づいて算出された大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)の濃度の値を差引くことで、呼気中の各特定成分の濃度の値の補正を行なう。
【0087】
−個人認証処理のプログラム構造−
図12は、CPU130によって実行される、個人認証処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。上述したように、ROM132に記憶されるプログラムは、個人認証処理を実行するようにプログラミングされている。この個人認証処理は、CPU130が、上記プログラムに従って鍵開閉管理装置200の各構成部の動作を制御することによって、ハードウェアとプログラムとの協働により実現する演算機能及び判定機能等により実行される。なお、この鍵開閉管理装置200により実現される演算機能は、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を算出し、算出した呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の整数値を算出する等の各種演算処理を行なう機能であり、判定機能は、識別情報データ中に、算出した全ての整数値と一致するものがあるか否かを判定する等の後述する判定動作を行なう機能である。
【0088】
図12を参照して、個人認証処理を実現するためのプログラムは、使用者等により操作キー群106の個人認証開始キーからの入力操作がなされることによって起動される。このプログラムにおいて、ステップS400〜ステップS403における各処理は、図11に示す識別情報登録処理を実現するためのプログラムにおけるステップS305〜ステップS308における各処理と同じである。
【0089】
このプログラムは更に、識別情報データをメモリ136から読出し、読出した識別情報データと、ステップS403において算出された25種類の特定成分に対応する各評価値とを比較して、識別情報データ中に、算出した全ての評価値と一致するものがあるか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップS404を含む。
【0090】
このプログラムは更に、ステップS404において、全ての評価値と一致するものがないと判定された場合(NOの場合)に実行され、液晶ディスプレイ108に、例えば「入室を許可できません。」等の電子錠が解錠されない旨の表示を表示させるとともに、本処理を終了するステップS405を含む。
【0091】
このプログラムは更に、ステップS404において、全ての評価値と一致するものがあると判定された場合(YESの場合)に実行され、電子錠を解錠するステップS406を含む。すなわち、ステップS406において、CPU130は、電子錠に対して制御信号を出力することで電子錠を解錠させ、特定領域である部屋の出入口に設けられる自動扉を開かせる。
【0092】
(動作)
図4〜図6、図9及び図10を参照して、本実施の形態に係る鍵開閉管理装置200は、識別情報登録処理時及び個人認証処理時において以下のように動作する。なお、識別情報登録処理及び個人認証処理は、鍵開閉管理装置200が待機状態のときに実行される。ここで、待機状態とは、使用者等による操作キー群106の電源ボタンからの入力操作によって、鍵開閉管理装置200の電源が投入され、CPU130に電力が供給された状態にあることを示す。
【0093】
−識別情報登録処理時の動作−
通常、正規の使用者は、鍵開閉管理装置200を新規に使用する際に、鍵開閉管理装置200の識別情報登録処理を行なう。なお、鍵開閉管理装置200の識別情報登録処理において、識別情報登録処理が開始されてから液晶ディスプレイ108に呼気の導入を促す旨の表示が表示されるまでの動作は、第1の実施の形態に係る携帯電話装置100における識別情報登録処理時の動作と同じである。
【0094】
使用者等が、液晶ディスプレイ108の表示を確認して吹込口(図示せず。)から筺体内部に呼気を吐出すると、呼気中の1つ以上の特定成分はガスセンサ素子144a〜144yにそれぞれ選択的に検出される。例えば、呼気中のアセトン及び一酸化窒素(NO)は、ガスセンサ素子144a,144bにそれぞれ選択的に吸着されることで選択的に検出される。その結果、ガスセンサ素子144a〜144yの電極152a〜152y及び電極154a〜154y間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器168a〜168yの出力電圧の変化としてA/D変換器126に対して出力される。同時に、大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)は、補正用センサ素子204,206にそれぞれ選択的に吸着され、その結果、補正用センサ素子204,206にそれぞれ対応する電極152,154間の電気抵抗が増加する。その変化は、補正用センサ素子204,206にそれぞれ対応する増幅器168の出力電圧の変化としてA/D変換器126に対して出力される。
【0095】
A/D変換器126は、入力されたガスセンサ素子144a〜144y及び補正用センサ素子204,206の電位変化をそれぞれデジタル信号に変換してCPU130に対して出力する。CPU130は、濃度換算表又は濃度換算式をメモリ136から読出し、読出した濃度換算表又は濃度換算式、及び、A/D変換器126から入力されるデジタル信号に基づいて、使用者により吐出された呼気中のアセトン及び一酸化窒素(NO)、並びに、硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)等を含む27種類の特定成分の濃度をそれぞれ算出する。ここで、CPU130は、補正用センサ素子204,206の検出結果に基づいて、ガスセンサ素子144a〜144yの検出結果の補正を行なう。すなわち、CPU130は、ガスセンサ素子144a〜144yにより出力される信号に基づいて算出された各特定成分の濃度の値から、補正用センサ素子204,206により出力される信号に基づいて算出された硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)の濃度の値を差引くことで、呼気中の各特定成分の濃度の値の補正を行なう。
【0096】
CPU130は、更に、25種類の特定成分の濃度にそれぞれ対応する評価値換算表(テーブル1参照)をメモリ136から読出し、読出した評価値換算表、及び、算出した25種類の特定成分の濃度に基づいて、各特定成分の濃度に対応する整数値である評価値を算出する。そして、算出された25種類の特定成分に対応する評価値と、入力された使用者名とを関連付けて識別情報データとしてメモリ136に記憶させる。識別情報データは、例えば、テーブル形式(テーブル2参照)で記憶される。
【0097】
ガスセンサ素子144a〜144y及び補正用センサ素子204,206に1つ以上の特定成分が検出された呼気は、筺体に設けられる呼気排出口(図示せず。)から鍵開閉管理装置200外部に排出され、これによって、識別情報登録処理が終了する。
【0098】
なお、識別情報登録処理は、入力されたパスワードとメモリ136に予め記憶されるパスワードとが一致しない場合には実行されない。したがって、正しいパスワードを知らされていない正規の使用者以外の第三者は、識別情報登録処理を実行することができないので、より一層確実に第三者が特定領域である部屋に不正に入室することを防止することができる。また、正規の使用者が複数存在する場合には、上述の識別情報登録処理が、正規の使用者の数の分だけ繰返して行なわれる。
【0099】
−個人認証処理時の動作−
鍵開閉管理装置200は、以下のようにして個人認証処理を行なう。使用者等が、操作キー群106の個人認証開始キーから入力操作を行なうと、CPU130は、ガスセンサ素子144a〜144yを起動させる。なお、ガスセンサ素子144a〜144yを起動させる動作、及び、ガスセンサ素子144a〜144yを起動させてから25種類の特定成分の濃度に対応する評価値が算出されるまでの動作は、識別情報登録処理時における動作と同じである。
【0100】
評価値が算出されると、CPU130は、識別情報データをメモリ136から読出し、読出した識別情報データと、算出した25種類の特定成分に対応する各評価値とを比較して、識別情報データ中に、算出した全ての評価値と一致するものがあるか否かを判定する。そして、全ての評価値と一致するものがない、すなわち、使用者が正規の使用者ではないと判定した場合には、液晶ディスプレイ108に、例えば、「入室を許可できません。」等の電子錠が解錠されない旨の表示を表示させる。このとき、CPU130からは、電子錠に対して制御信号が出力されないので、電子錠は施錠されたままであり、特定領域である部屋の出入口に設けられる自動扉は閉じられたままである。したがって、使用者は部屋に入室することができない。一方、全ての評価値と一致するものがある、すなわち使用者が正規の使用者であると判定された場合には、CPU130は、電子錠に対して制御信号を出力することで電子錠を解錠させ、特定領域である部屋の出入口に設けられる自動扉を開かせる。これによって、使用者は部屋に入室することができる。
【0101】
ガスセンサ素子144a〜144及び補正用センサ素子204,206に1つ以上の特定成分が検出された呼気は、筺体に設けられる呼気排出口(図示せず。)から鍵開閉管理装置200外部に排出され、これによって、個人認証処理が終了する。
【0102】
本実施の形態に係る鍵開閉管理装置200によれば、CPU130は、使用者が正規の使用者であるか否かの判定結果に基づいて、電子錠の施錠及び解錠を制御する。そして、使用者が正規の使用者であると判定した場合には、電子錠を解錠するように制御する。これにより、正規の使用者ではない第三者は電子錠を解錠させることができないので、第三者による特定領域である部屋に対する不正な出入りを確実に防ぐことが可能な防犯性に優れる鍵開閉管理装置200を得ることができる。
【0103】
また、鍵開閉管理装置200において、メモリ136は、正規の使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の評価値と、正規の使用者名とを関連付けて識別情報データとして予め記憶し、CPU130の演算機能は、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の評価値を算出し、CPU130の判定機能は、識別情報データ、及び、演算機能により算出された1つ以上の評価値に基づいて、使用者が正規の使用者であるか否かを判定する。このように、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に対応する1つ以上の評価値を用いて、メモリ136における記憶処理及びCPU130における判定処理を行なうので、メモリ136及びCPU130にかかる負荷を低減することができる。したがって、個人認証処理を迅速に効率良く行なうことができる。
【0104】
更に、CPU130の判定機能は、識別情報データに含まれる全ての評価値と、個人認証処理時において、CPU130の演算機能により算出された全ての評価値とが一致する場合に、使用者が正規の使用者であると判定する。これにより、個人認証処理をより一層正確に行なうことができる。
【0105】
なお、上記実施の形態では、補正用センサ素子204,206により大気中に含まれる硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)による影響を排除する構成であったが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、鍵開閉管理装置200が活火山近傍に設置され、補正用センサ素子204,206は、火山性ガスに含まれる硫化水素(HS)及び二酸化硫黄(SO)による影響を排除する構成であってもよい。また、鍵開閉管理装置200が工場近傍に設置され、補正用センサ素子204,206は、例えば、ベンゼン及びトルエン等の揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)等の大気汚染ガスに含まれる化学物質による影響を排除する構成であってもよい。
【0106】
また、例えば、補正用センサ素子によって、気温による影響を排除してもよい。この場合、補正用センサ素子としては、ガスセンサ素子144a〜144の周辺雰囲気の温度を測定可能な、例えば、白金抵抗温度センサ等を使用でき、メモリ136には、温度と補正係数との関係を示す補正表が予め記憶される。補正用センサ素子は、ガスセンサ素子144a〜144の周辺雰囲気の温度を測定し、その測定結果に基づいて、ガスセンサ素子144a〜144yの検出結果の補正を行なう。すなわち、メモリ136に記憶される補正表から、測定した周辺雰囲気の温度に対応する補正係数を求め、求めた補正係数をガスセンサ素子144a〜144yにより出力された信号に基づいて算出された特定成分の濃度の値に乗じることによって、ガスセンサ素子144a〜144yの検出結果の補正を行なう。
【0107】
また、上記実施の形態では、鍵開閉管理装置200は、特定領域である部屋の自動扉に設けられる電子錠の施錠及び解錠を制御するために使用されたが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、自動車、ロッカー又は金庫等に設けられる鍵の施錠及び解錠を制御するために使用されてもよい。
【0108】
また、上記実施の形態では、識別情報登録処理によって識別情報データを入手する構成であったが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、送受信回路124を用いた無線によるデータ通信等によって、第1の実施の形態に係る携帯電話装置100のメモリ136に記憶される識別情報データを入手する構成であってもよい。このように、データ通信を利用して識別情報データを入手することによって、識別情報登録処理を省くことができるので、個人認証処理をより一層簡便に行なうことが可能になる。また、携帯電話装置100を他の装置における個人認証処理に使用することができるので、携帯電話装置100をより一層有効利用することができる。
【0109】
(作用・効果)
本実施の形態に係る携帯電話装置100及び鍵開閉管理装置200によれば、メモリ136は、正規の使用者の呼気中の1つ以上の特定成分のレベルである濃度に基づく識別情報データを予め記憶し、ガスセンサ140は、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に応じた信号を出力し、CPU130の演算機能は、ガスセンサ140により出力された信号に基づいて、使用者の呼気中の1つ以上の特定成分の濃度を算出し、CPU130の判定機能は、識別情報データ、及び、CPU130の算出結果に基づいて、使用者が正規の使用者であるか否かを判定する。
【0110】
このように、使用者によってそれぞれ異なる固有の特徴を示す、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に基づいて判定を行なうので、誤った判定を回避することができ、使用者が正規の使用者であるか否かの判定を正確に行なうことができる。また、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に応じた信号を出力可能なガスセンサ140を使用して判定を行なうので、例えば指等の測定対象となる検体と同等の大きさのセンサを必要する装置、及び、カメラを必要とする装置等と比較して、装置の小型化が可能になる。また、呼気中の1つ以上の特定成分の濃度に応じた信号を同時に出力可能なガスセンサ140を使用するので、判定時間の短縮化が可能になる。したがって、判定の正確性及び迅速性に優れ、装置の小型化を達成可能な携帯電話装置100及び鍵開閉管理装置200を得ることができる。
【0111】
なお、上記実施の形態では、迅速かつ簡便にサンプリング及び分析が可能であり、かつ、ガス状であり非侵襲で分析可能であるため個人認証処理をより一層迅速かつ簡便に行なうことができる呼気を用いて個人認証処理を行なったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、血液、汗又は唾液等の生体試料を用いて、これらに含まれる、例えば体臭の原因物質等の特定成分を用いて個人認証処理を行なってもよい。また、呼気を含む複数の生体試料を用いて個人認証処理を行なうことが可能な構成としてもよい。この場合、操作キー群106からの入力操作によって測定対象となる生体試料を選択できる構成にしてもよい。このように、複数の生体試料を用いて個人認証処理を行うことによって、個人認証を更に正確に行なうことができるようになる。なお、液体又は固体からなる生体試料中の特定成分を用いて個人認証処理を行なう場合には、各成分を気化するためのヒータ等の構成が設けられることが好ましい。
【0112】
また、上記実施の形態では、識別情報登録処理は携帯電話装置100又は鍵開閉管理装置200を新規に使用する際に一度だけ行なわれたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば、1カ月毎に行なうことで識別情報データを定期的に更新してもよい。このように、識別情報登録処理が定期的に行なわれることによって、個人認証処理をより一層正確に行なうことができる。
【0113】
また、上記実施の形態では、メモリ136には1つの使用者名に対して1つの登録状況時の呼気情報が記憶されたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、1つの使用者名に対して複数の登録状況時の呼気情報が記憶されてもよい。テーブル3に、テーブル形式で記憶される識別情報データの一例を示す。テーブル3中、a〜yのアルファベットは、各ガスセンサ素子144a〜144yにより選択的に検出される特定成分を示す。例えば、aはアセトンを示し、bは一酸化窒素(NO)を示す。
【0114】
【表3】

【0115】
テーブル3を参照して、メモリ136には、複数の登録状況時、ここでは、朝、夜、食前、食後及び体調不良時の5つの登録状況時における呼気情報が、使用者名Aに関連付けて記憶される。一般的に、使用者により吐出される呼気中の特定成分の濃度は、生活のリズム又は体調により変動するため、常に同じ状態であるとは限らない。したがって、このように、1つの使用者名に対して複数の登録状況時の呼気情報が記憶されることによって、使用者の呼気吐出時における状況に左右されることなく個人認証処理を行なうことができるので、個人認証処理における誤った判定をより一層確実に回避することができ、個人認証をより一層正確に行なうことができる。
【0116】
また、上記実施の形態では、全てのガスセンサ素子144を使用して25種類の特定成分の濃度に基づいて個人認証処理を行なったが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、第1行目に位置するガスセンサ素子144a〜144eを使用して5種類の特定成分の濃度に基づいて個人認証処理を行なってもよいし、使用者によって濃度が大きく異なる傾向のある特定成分を検出するガスセンサ素子144を複数選択し、これらを使用して複数種の特定成分の濃度に基づいて個人認証処理を行なってもよい。このように、必要に応じて、個人認証処理に使用するガスセンサ素子144の数を減らすことにより、個人認証処理に要する消費電力を減らすことができる。
【0117】
また、上記実施の形態では、使用者が正規の使用者であると判定された場合に、個人認証処理が必要な機能として予め設定される機能が使用可能な状態になる、又は、鍵が解錠される構成であったが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、家庭用ゲーム機、エアーコンディショナー、ロボット、及び、パーソナルコンピュータ等において、使用者が正規の使用者であると判定された場合に、これらが起動される構成であってもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、ガスセンサ素子144a〜144y及び補正用センサ素子204,206それぞれに対して1つの測定回路160が設けられたが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、並列に接続される5つのガスセンサ素子144に対して、1つの測定回路160が設けられる構成であってもよい。図13は、ガスセンサ素子144a〜144yの抵抗変化を測定するための測定回路160の他の構成例を示す図である。以下、測定回路160の他の構成例において、測定回路160aと同一の機能を有する構成部には同じ参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さない。図13を参照して、測定回路160の他の構成例において、ガスセンサ素子144a及び負荷抵抗164a間の接点には、マルチプレクサー(以下「MUX」と記す。)300の1本の入力302aが接続される。MUX300は、25本の入力302a〜302yと1本の出力304とを含み、残りの24本の入力302b〜302yには、ガスセンサ素子144b〜144y及び負荷抵抗164b〜164y間の接点が、入力302aと同様にして、それぞれ接続される。MUX300の出力304には、25個の接点における電位変化をそれぞれ増幅するための、1つの増幅器168の入力が接続される。増幅器168の入力とは反対側にある他方の端子には、A/D変換器126が接続される。MUX300は、アナログスイッチであり、25個の入力信号から1つの信号を自動的に選択して順次出力する。このような測定回路160を用いてガスセンサ素子144a〜144y及び負荷抵抗164a〜164y間の接点の電位変化に応じた信号を得ることにより、ガスセンサ素子144a〜144yの電気抵抗の変化を知ることができるので、ガスセンサ素子144aによって検出された特定成分の濃度を知ることができるとともに、装置の小型化をより一層達成することができる。
【0119】
また上記実施の形態では、呼気中の特定成分を選択的に検出するために、ガスセンサ素子144を構成するカーボンナノ構造体156を表面修飾物質158である金属錯体によって表面修飾する構成であったが、本発明は、そのような実施の形態には限定されない。例えば、米国特許第6894359号明細書及び米国特許第6905655号明細書に開示される技術のように、カーボンナノ構造体156の表面を、表面修飾物質158である、雰囲気中の特定成分を篩うことが可能な膜により覆う構成であってもよい。このような構成にすることによって、呼気中の特定成分を選択的にセンシング部150の表面に到達させることができるので、表面修飾物質158を使用した場合と同様に、呼気中の特定成分を選択的に検出することが可能になる。
【0120】
また上記実施の形態では、ガスセンサ140の再生処理を使用者が任意に行なう構成であったが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、予め定める所定の時間が経過する毎に、自動的に再生処理が行なわれる構成であってもよい。このような構成にすることにより、個人認証処理時において、常に、ガスセンサ素子144a〜144yの検出感度を高い状態に維持することができるので、より一層正確な個人認証処理を行なうことができる。
【0121】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、この発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。この発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る携帯電話装置の外観を示す正面図である。
【図2】携帯電話装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ガスセンサの構成を示す上面図である。
【図4】ガスセンサ素子の構成を概略して示す図である。
【図5】センシング部の様子を模式的に示す図である。
【図6】ガスセンサ素子の抵抗変化を測定するための測定回路の構成を示す図である。
【図7】識別情報登録処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。
【図8】個人認証処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る鍵開閉管理装置の構成を示すブロック図である。
【図10】ガスセンサの構成を示す上面図である。
【図11】識別情報登録処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。
【図12】個人認証処理を実現するためのプログラム構造を示すフローチャートである。
【図13】ガスセンサ素子の抵抗変化を測定するための測定回路の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0123】
100 携帯電話装置
102 筺体
104 アンテナ
106 操作キー群
108 液晶ディスプレイ
110 受話口
112 送話口
120 受話器
122 送話器
124 送受信回路
126 A/D変換器
130 CPU
132 ROM
134 RAM
136 メモリ
138 駆動回路
140 ガスセンサ
142 基板
144 ガスセンサ素子
150 センシング部
152,154 電極
156 カーボンナノ構造体
158 表面修飾物質
160 測定回路
162 定電圧源
164 負荷抵抗
168 増幅器
200 鍵開閉管理装置
204,206 補正用センサ素子
300 MUX
302 入力
304 出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が正規の使用者であるか否かを判定するための認証装置であって、
前記正規の使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに基づく識別情報を予め記憶する記憶手段と、
前記使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに応じた信号を出力するセンサと、
前記センサにより出力された信号に基づいて、前記1つ以上の特定成分のレベルを算出する第1の演算手段と、
前記識別情報及び前記第1の演算手段の算出結果に基づいて、前記使用者が前記正規の使用者であるか否かを判定する判定手段とを含むことを特徴とする認証装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記識別情報と、前記第1の演算手段の算出結果とが一致する場合に、前記使用者が前記正規の使用者であると判定することを特徴とする請求項1に記載の認証装置。
【請求項3】
前記センサは、カーボンナノ構造体からなるセンサ素子を1つ以上含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の認証装置。
【請求項4】
前記カーボンナノ構造体は、前記生体試料中の特定成分を選択的に検出するための表面修飾物質により表面修飾され、
前記表面修飾物質は、前記センサ素子毎にそれぞれ異なることを特徴とする請求項3に記載の認証装置。
【請求項5】
前記第1の演算手段の算出結果に基づいて、前記生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに対応する1つ以上の整数値を算出するための第2の演算手段を更に備え、
前記記憶手段は、前記正規の使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルに対応する1つ以上の整数値と、正規の使用者名とを関連付けて識別情報として記憶し、
前記判定手段は、識別情報、及び、前記第2の演算手段によって算出された前記1つ以上の整数値に基づいて、前記使用者が前記正規の使用者であるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の認証装置。
【請求項6】
前記整数値は、予め定められる、生体試料中の特定成分の濃度範囲に対応するように設定されることを特徴とする請求項5に記載の認証装置。
【請求項7】
前記センサの出力に対して影響を与える要因による影響を排除するための信号を出力する補正用センサを更に備え、前記第1の演算手段は、前記補正用センサにより出力された信号に基づいて、前記センサにより出力された信号に基づいて算出された前記使用者の生体試料中の1つ以上の特定成分のレベルを補正することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の認証装置。
【請求項8】
前記生体試料は、前記使用者により吐出される呼気であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の認証装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の認証装置と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記判定を必要とする機能として予め定められる機能が使用可能な状態又は使用不可能な状態となるように制御する制御手段とを含む携帯端末装置であって、
前記制御手段は、前記判定手段により前記使用者が前記正規の使用者であると判定された場合に、前記予め定められる機能が使用可能な状態となるように制御することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の認証装置と、
前記判定手段による判定結果に基づいて、鍵の施錠及び解錠を制御する制御手段とを含む鍵開閉管理装置であって、
前記制御手段は、前記判定手段により前記使用者が前記正規の使用者であると判定された場合に、前記鍵を解錠するように制御することを特徴とする鍵開閉管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−26747(P2010−26747A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186728(P2008−186728)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】