説明

認識装置および分注装置

【課題】載置されるべき載置部と異なる載置部に保持体が載置されるのを確実に防止することができる認識装置および分注装置を提供すること。
【解決手段】ラック認識装置500は、検体を収容する試験管400を保持するラック100aと、ラック100aに設置され、ラック100aを識別する識別情報を発信するIDタグ510aと、ラック100aに設けられ、光を発する発光部と、ラック100aを載置可能な載置部540aと、載置部540aに設けられ、載置部540aに載置されたラック100aのIDタグ510aと通信可能なアンテナ521aと、アンテナ521aを介してIDタグ510aからの識別情報を受信し、該識別情報に基づいて、載置部540aに対しラック100aが載置されているか否かを判断する判定部と、前記判定部の判断結果に応じて、ラック100aの発光部の光の発光状態を変化させるような指令を出力する指令部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認識装置およびそれを備えた分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料を自動的に分注するために分注装置が広く用いられている。この分注装置では、例えばディスポーザブルのノズルチップにより、試験管ラックに保持されている複数の試験管に、それぞれ、液体試料が分注される。試験管ラックは、分注装置に設けられた分注テーブルに複数個載置されている。
【0003】
しかしながら、このような分注装置では、分注テーブルに誤った試験管ラックが載置されたり、分注が完了し交換されるべき試験管ラックが交換されず、誤った他の試験管ラックが交換されたりする等の問題があった。このため、試験管ラックの試験管内の検体の取り違えや、誤った試験管ラックの試験管に液体試料を分注して、試験管内の検体を誤って混合させてしまう多重分注を起こす問題があった。
【0004】
前述したような問題に対し、従来の分注装置は、分注テーブルに載置されている試験管ラックが正しいものであるか否かを認識するラック認識装置を備えるものがある。このような認識装置において、ハンディバーコードリーダで、試験管ラックに貼り付けられたバーコードラベルを読み取る操作は、オペレータが手動で行うため、操作が面倒であり、かつ読み取るべきラックを誤認識してしまう問題があった。
【0005】
また、他の従来の分注装置に、バーコーダリーダが機械的に移動して、分注テーブルに載置されている試験管ラックのバーコードラベルを自動的に読み取るものもあるが、機構(装置)が複雑で大掛かりとなり、ラック認識装置のコストが高くなっていた。試験管ラックにおいては、バーコードラベルが正確に読み取られる位置に、バーコードラベルを貼り付ける必要がある。このため、試験管ラックによっては、このような位置にバーコードラベルを貼ることが困難な場合があった。
【0006】
また、従来のラック認識装置には、分注装置の操作画面(表示部)や分注テーブルの付近に配置された発光素子により交換すべき試験管ラックを表示したり、交換すべき試験管ラックを指示する項目を表示するものがある(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、このようなラック認識装置であっても、試験管ラックが分注テーブルに多数載置されている場合には、たとえオペレータがこの発光素子あるいは表示装置の指示項目を見ても、誤認識して誤った試験管ラックを載置してしまったり、交換を怠るという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−237387号公報
【特許文献2】特開2000−258436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、保持体の誤載置、交換忘れ等を防止することができる認識装置および分注装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
(1) 検体を収容する容器を複数個並べて保持する保持体と、
前記保持体に設置され、前記保持体を識別する識別情報を発信するRFIDタグと、
前記保持体に設けられ、光を発する発光部と、
前記保持体を載置可能な複数の載置部と、
前記各載置部に設けられ、該載置部に載置された保持体における前記RFIDタグと通信可能なアンテナと、
前記アンテナを介して前記RFIDタグから発信された前記識別情報を受信し、該受信した識別情報に基づいて、前記載置部に対し正しい前記保持体が載置されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判断結果に応じて、該保持体における前記発光部の光の発光状態を変化させるような指令を出力する指令部とを備えたことを特徴とする認識装置。
【0011】
(2) 前記発光部は、前記アンテナから電磁誘導により電力が供給されて発光するよう構成されている上記(1)に記載の認識装置。
【0012】
(3) 前記アンテナは、前記保持体を載置する箇所の周囲に沿ったループ状をなしている上記(1)または(2)に記載の認識装置。
【0013】
(4) 前記発光部は、互いに異なる色の光を発する発光素子を有し、
正しい前記保持体が載置されているとき、一方の発光素子が点灯し、誤った前記保持体が載置されているとき、他方の発光素子が点灯する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の認識装置。
【0014】
(5) 前記RFIDタグは、それが設置されている保持体に関する情報を有しており、
正しい前記保持体が載置されているとき、前記保持体に関する情報が取り込まれ、誤った前記保持体が載置されているとき、前記保持体に関する情報が取り込まれない上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の認識装置。
【0015】
(6) 液体試料を分注する分注装置であって、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の認識装置を備えたことを特徴とする分注装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保持体の誤載置、交換忘れを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の認識装置および分注装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の分注装置を示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、水平な一方向(装置の左右方向)をx軸方向、x軸方向に対し垂直かつ水平な方向(装置の前後方向)をy軸方向、鉛直方向(上下方向)をz軸方向と言う。また、図1中では、分注ヘッド、アーム等の細部を省略して図示する。
【0019】
図1に示すように、分注装置1は、装置本体2と、該装置本体2に対し移動可能に設置された分注ヘッド3とを備えている。この分注装置1は、患者から採取した例えば血液または血清等の血液成分、尿等の液体状の親検体を分注して小分けにする(取り分ける)ことにより検査用の子検体を作成したり、あるいは、少量の試薬(薬液)を予め設定された吐出位置に吐出する分注動作を行う装置である。
【0020】
装置本体2は、作業台21と、作業台21の後ろ側に立設された機器収納部22と、機器収納部22の上方に設けられた第2の機器収納部23と、第2の機器収納部23の片側の部分から前方に突出する突出部24と、ラック認識装置(認識装置)500とを有している。
【0021】
作業台21は、ラック認識装置500が有する試験管ラック(以下、単に「ラック」と言う)100a、100bおよび100cに保持された試験管400(図4参照)に分注が行われる部位である。
【0022】
また、作業台21上におけるラック100a、100bおよび100cの後方には、チップラック200を載置可能になっている。チップラック200は、ディスポーザブル(使い捨て)のノズルチップ300(図4参照)を立てた状態で行列状に複数並べて保持し得るようになっている。
【0023】
装置本体2には、分注ヘッド3を支持するアーム11が設置されている。アーム11は、その長手方向がy軸方向となる姿勢で配置され、その後端部は、機器収納部22に支持されている。機器収納部22には、後述するx軸方向移動手段4が設けられており、この作動により、アーム11は、x軸方向に移動する。
【0024】
分注ヘッド3は、アーム11の長手方向、すなわちy軸方向に沿って移動可能に支持されている。分注ヘッド3は、後述するy軸方向移動手段5の作動により、装置本体2に対しy軸方向に移動する。
【0025】
突出部24の前面には、例えばタッチパネルで構成された表示手段25が設置されている。表示手段25には、例えば各種条件を設定する入力画面等が表示され、操作者は、表示手段25に指で触れることにより、各種条件の設定等を行う。また、表示手段25には、例えば分注装置1の状態、エラーの発生等の情報も表示される。
【0026】
図2は、機器収納部22に収納されているx軸方向移動手段4を示す斜視図である。x軸方向移動手段4は、機器収納部22に設置されたガイドレール12の案内によりx軸方向に沿って移動可能に設置されたスライドブロック41と、ガイドレール12の両端付近にそれぞれ設置された駆動プーリー42および従動プーリー43と、駆動プーリー42を回転駆動するパルスモーター44と、駆動プーリー42および従動プーリー43に掛けられたベルト45とを有している。
【0027】
スライドブロック41は、突出形成された固定部411にてベルト45に固定されている。スライドブロック41には、アーム11の後端部が固定されている。
【0028】
パルスモーター44が駆動プーリー42を回転駆動すると、ベルト45が回転し、ベルト45に牽引されてスライドブロック41がx軸方向に移動する。これに伴って、アーム11もx軸方向に移動する。
【0029】
ベルト45は、駆動プーリー42および従動プーリー43の外周面に形成された歯と噛み合う歯を有する歯付きベルトで構成されており、駆動プーリー42および従動プーリー43に対し滑りを生じないようになっている。
【0030】
図3は、y軸方向移動手段5、z軸方向移動手段6および分注ヘッド3を示す斜視図である。y軸方向移動手段5は、図示しないガイドレールの案内によりアーム11の長手方向に沿って移動可能に設置されたスライドブロック51と、アーム11の後端付近に設置された駆動プーリー52と、アーム11の前端付近に設置された従動プーリー53と、アーム11の後端付近に設置され、駆動プーリー52を回転駆動するパルスモーター54と、駆動プーリー52および従動プーリー53に掛けられたベルト55とを有している。
【0031】
スライドブロック51は、ベルト55に固定されている。スライドブロック51には、分注ヘッド3のフレーム31が固定されている。
【0032】
パルスモーター54が駆動プーリー52を回転駆動すると、ベルト55が回転し、ベルト55に牽引されてスライドブロック51がアーム11のy軸方向に移動する。これに伴って、分注ヘッド3も、y軸方向に移動する。スライドブロック51および分注ヘッド3は、パルスモーター54の正転/逆転の切り換えにより、装置本体2に対し前方または後方に移動する。
【0033】
ベルト55は、駆動プーリー52および従動プーリー53の外周面に形成された歯と噛み合う歯を有する歯付きベルトで構成されており、駆動プーリー52および従動プーリー53に対し滑りを生じないようになっている。
【0034】
分注ヘッド3は、z軸方向に長い部材で構成された骨格をなすフレーム31と、ノズルチップ300を装着可能なチップ装着部32とを有している。
【0035】
また、z軸方向移動手段6は、フレーム31に対し図示しないガイドレールの案内によりz軸方向に沿って移動可能に設置されたスライドブロック(移動体)61と、フレーム31の上端付近および下端付近にそれぞれ設置された従動プーリー(ベルト車)62および63と、ベルト64とを有している。
【0036】
スライドブロック61は、固定部材67を介して、ベルト64に固定されている。スライドブロック61には、支持部68を介して、チップ装着部32が固定されている。
【0037】
スライドブロック51の内部には、ベルト64を駆動する駆動プーリー(図示せず)が設置されており、ベルト64は、従動プーリー62および63に掛けられ、その中間の部分においてスライドブロック51内に引き込まれ、この駆動プーリーにも掛けられている。
【0038】
スライドブロック51内の駆動プーリーは、アーム11の後端付近に設置されたパルスモーター65により回転駆動される。アーム11には、アーム11の長手方向に沿って延びるプロペラシャフト66が回転可能に設置されており、パルスモーター65の出力軸は、このプロペラシャフト66に接続されている。プロペラシャフト66は、スライドブロック51およびその内部の駆動プーリーを貫通しており、スライドブロック51は、プロペラシャフト66を挿通した状態でy軸方向に移動する。スライドブロック51内の駆動プーリーは、プロペラシャフト66とともに回転するようになっている。
【0039】
パルスモーター65がプロペラシャフト66を介してスライドブロック51内の駆動プーリーを回転駆動すると、ベルト64が回転し、ベルト64に牽引されて、スライドブロック61がz軸方向に移動する。これに伴って、ノズルチップ300は、パルスモーター65の正転/逆転の切り換えにより、z軸方向に上昇または下降する。フレーム31には、空気を吸入・排出するポンプ7が設けられ、このポンプ7とチップ装着部32とは、可撓性の配管チューブ33で連通されている。
【0040】
図4は、液体の吸入・吐出動作の説明図である。チップ装着部32は、その内部に通気流路321が形成されたほぼ管状の部材で構成されている。
【0041】
ノズルチップ300は、合成樹脂材料で構成された管状の部材であり、好ましくは少なくともその先端側の部分が先細りになっている。このノズルチップ300は、その基端開口302に、チップ装着部32の下端部を挿入して嵌合することにより、チップ装着部32に着脱自在に装着される。
【0042】
ポンプ7は、シリンダ71とプランジャ(ピストン)72とを有するシリンジポンプ(ピストンポンプ)で構成されている。ポンプ駆動手段14によりポンプ7が作動すると、チップ装着部32の下端開口322から空気(気体)が流入・流出し、これにより、ノズルチップ300内の圧力を増減させて、ノズルチップ300の先端開口301から液体を吸入・吐出することができる。
【0043】
ポンプ駆動手段14は、図示を省略するが、例えば、ボールねじ(送りねじ)機構とこれを駆動するパルスモーター(図示せず)とによってプランジャ72をシリンダ71に対して移動させるように構成されている。ポンプ7の作動は、このポンプ駆動手段14を介して、後述する制御手段13によって制御される。
【0044】
図5は、本発明の認識装置の斜視図である。ラック認識装置(認識装置)500は、複数のラック(保持体)100a、100bおよび100cと、RFIDタグ510a、510b、510cと、光を発する発光部としての緑色LED(発光素子(発光部))511および橙色LED(発光素子(発光部))512と、複数の載置部540a、540b、540c、540d、540eおよび540fと、アンテナ521a、521b、521c、521d、521e、521fと、送受信機530とを備えている。
【0045】
ラック100a、100bおよび100cは、それぞれ、検体を収容する試験管(容器)400を複数個並べて保持するものである。
【0046】
ラック100aは、いわゆる50本ラックと呼ばれるものであり、50本の試験管400を立てた状態で、行列状に保持することができる。このラック100aに保持されている試験管400には、親検体が収容されている。
【0047】
ラック100bおよび100cは、それぞれ、いわゆる10本ラックと呼ばれるものであり、10本の試験管400を立てた状態で、1列に保持することができる。このラック100b、100cに保持されている試験管400には、親検体から分注された液体試料が子検体として収容される。
【0048】
これらのラック100a、100bおよび100cには、それぞれ、RFIDタグ(以下、単に「タグ」と言う)510a、510bおよび510cが設置されている。
【0049】
タグ510a、510bおよび510cは、それぞれ、ほぼ同様の機能を有していため、ここでは、タグ510aについて代表的に説明する。
【0050】
タグ510aは、ラック100aをラック認識装置500に載置したときに、タグ510aが分注装置1の前面に設置されている。
【0051】
タグ510aには、ラック100aを識別する識別情報、すなわち、ラック100aのID番号が予め記憶されている。このID番号(識別情報)は、電波として発信される。
【0052】
また、タグ510aは、ID番号の他に、例えば、ラック100a、100b、100cの親検体や子検体の入荷日時、材料、分類、分析項目等のような各ラックの検体に関する情報を記憶している。
【0053】
緑色LED511と、橙色LED512とは、タグ510aを介してラック100aに設けられて、すなわち、タグ510aに組み込まれた状態でラック100aに設けられている。また、ラック100b、100cについても同様に、緑色LED511と、橙色LED512とが設けられている(図6参照)。
【0054】
また、緑色LED511と橙色LED512とは、分注装置1の前方に向けて光を発するように設置されているので、オペレータがそれらの光を確実に視認することができる。
【0055】
載置部540a、540b、540c、540d、540eおよび540fは、それぞれ、ラック100a、100bおよび100cを載置可能であり、分注装置1の作業台21として設けられている。これにより、ラック認識装置500を分注装置1に有効に設けることができる。
【0056】
また、載置部540a、540b、540c、540d、540eおよび540fは、x軸方向に沿って、一列に配置されている。これにより、ラック100a、100bおよび100cをx軸方向に沿って、一列に配置することができ、オペレータが各ラック100a、100bおよび100cの載置状態を確認することができる。
【0057】
なお、載置部540a、540b、540c、540d、540eおよび540fは、それぞれ、ほぼ同様の機能を有していため、ここでは、載置部540aについて代表的に説明する。載置部540aには、位置決め部(図示せず)が設けられている。この位置決め部は、例えばラック100aが載置部540aに載置されたとき、載置部540aに対してラック100aを位置決めする部位である。これにより、載置部540aに対するラック100aの位置ズレを防止することができる。
【0058】
載置部540a、540b、540c、540d、540eおよび540fの下側には、それぞれ、アンテナ521a、521b、521c、521d、521eおよび521fが設置されている。アンテナ521a、521b、521c、521d、521eおよび521fは、それぞれ、ほぼ同様の機能を有していため、アンテナ521aおよびそれに対応する載置部540a、ラック100aについて代表的に説明する。
【0059】
アンテナ521aは、載置部540aに載置されたラック100aのタグ510aと通信可能なものである。
【0060】
また、アンテナ521aは、形状がループ状をなしている。換言すれば、アンテナ521aは、ラック100aを載置する箇所の周囲に沿った、すなわち、ラック100aの底面外周を囲むような形状をなしている。これにより、アンテナ521aにおける通信可能な範囲(エリア)を大きくすることができ、よって、タグ510aと確実に通信することができる。
【0061】
また、アンテナ521aは、ケーブル535を介して送受信機530に接続されており、この送受信機530がアンテナ521aに通電することにより、電磁誘導が生じる。この電磁誘導により、タグ510aに電力が供給されて、緑色LED511と橙色LED512とが発光(点灯)する。これにより、たとえタグ510aに電池を内蔵していなくても、緑色LED511と橙色LED512とが確実に作動する(発光する)ことができる。
【0062】
なお、アンテナ521aには、巻線数、線径等がそれぞれ異なる緑色LED用のループおよび橙色LED用のループが設けられている。各ループからの電磁誘導により、緑色LED511および橙色LED512がそれぞれ点灯する(切り替えられる)。
【0063】
また、アンテナ521aから発する電磁波の周波数や出力強度を適宜設定することにより、緑色LED511および橙色LED512の一方を発光させることができたり、緑色LED511および橙色LED512のそれぞれの発光状態(例えば、点灯または点滅)を変更したりすることができる。
【0064】
また、前記電磁誘導により、タグ510aがID番号(ラック情報)を送信することができる。
【0065】
図7は、ラック認識装置500を備えた分注装置1のブロック図である。ラック認識装置500を備える分注装置1は、各部の作動を制御する制御手段13を備えている。制御手段13は、CPU(Central Processing Unit)131と、記憶部132とを有している。
【0066】
記憶部132は、CPU131に読み取り可能な記憶媒体を有し、プログラムやデータ等を記憶する。この記憶媒体は、記憶部132に固定的に設けたもの、もしくは着脱自在に装着するものであり、この記憶媒体には、分注装置1の各部に対応する各種アプリケーションプログラム、分注装置1の制御動作を実行するためのプログラム等の各種プログラムおよび各種データが予め記憶されているとともに、各プログラムで処理されたデータおよび制御手段13に接続された各部からの入力データ等が記憶される。
【0067】
制御手段13には、ポンプ駆動手段14、ノズル移動手段15、表示手段25および送受信機530がそれぞれ接続されている。制御手段13は、記憶部132に記憶された各種プログラムおよびデータを必要に応じて読み出し、そのプログラムおよびデータに基づいて、これらの各部の作動を制御して上述のように分注装置1を駆動させる。なお、ポンプ駆動手段14、ノズル移動手段15に対する制御手段13の制御は、オープンループ制御でも、クローズドループ制御でもよい。
【0068】
送受信機530は、判定部536と、指令部537とを備えている。
また、この送受信機530は、接続されているアンテナ521a、521b、521c、521d、521e、521fのうちのいずれかのアンテナに適宜切り替えることができるよう構成されている。
【0069】
例えば、アンテナ521aに切り替えた場合、判定部536では、載置部540aに載置されたラック100aのタグ510aから発信されたID番号を、アンテナ521aを介して受信する。その後、判定部536は、受信したタグ510aのID番号に基づいて、載置部540aに対し正しいラック(この場合は、ラック100a)が載置されているか否かを判断する。
【0070】
判定部536の判断結果において、「正しいラックが載置されている」、すなわち、ラック100aが載置部540aに載置されているとなった場合には、指令部537が、例えばタグ510aの緑色LED511を発光させる指令(命令)を、アンテナ521aを介してタグ510aに出す。
【0071】
また、判定部536の判断結果において、「正しいラックが載置されていない」、すなわち、ラック100aと異なるラックが載置部540aに載置されているとなった場合には、指令部537が、例えばタグ510aの橙色LED512を発光させる指令(命令)を、アンテナ521aを介してタグ510aに出力する。
【0072】
このような分注装置1の基本的な分注動作は、次のようなものである。
なお、以下の説明では、分注装置1は、載置部540aにラック100aを載置可能とし、載置部540bにラック100bを載置可能とし、載置部540cにラック100cを載置可能とするように予め設定されていることとする。また、ラック100aには、50本の試験管400が予め保持されており、ラック100bおよび100cには、それぞれ、10本の試験管400が予め保持されている。
【0073】
次いで、ノズルチップ300を上昇させてから吐出先の例えばラック100bの試験管400の位置に分注ヘッド3を移動させる。次いで、ノズルチップ300を吐出先の試験管400内に下降させ、ポンプ7を作動してノズルチップ300内の圧力を増大させることにより、吸入した液体を吐出する。
【0074】
まず、オペレータが、載置部540aにラック100aを載置し、載置部540bにラック100bを載置し、載置部540cにラック100cを載置する。
【0075】
ここで、分注装置1が分注動作を開始する前には、送受信機530の作動により、アンテナ521a、521b、521cがそれぞれ、所定周波数の電波を発している。アンテナ521a、521b、521cは、それぞれ、機能がほぼ同一であるため、アンテナ521aおよびこれに対応する載置部540a、ラック100aについて代表的に説明する。
【0076】
ラック100aのタグ510aは、アンテナ521aからの電波を受けると、そのID番号を送信する。送受信機530は、タグ510aからのID番号を受信し、確認する。その後、判定部536により、載置部540aに正しいラック100aが載置されているか否かを判定する。なお、この判定は、ラック認識装置500に予め設定されている正しいID番号と、受信したID番号とを比較することにより行われる。
【0077】
判定部536の判断の結果、載置部540aにラック100aが載置されていると判断された場合には、指令部537の作動によりアンテナ521aから所定周波数の電波を発信して、タグ510aの緑色LED511を発光させる。
【0078】
また、載置部540aにラック100aと異なるラックが載置されていると判断された場合には、指令部537の作動によりアンテナ521aから所定周波数の電波を発信して、タグ510aの橙色LED512を発光させる。また、橙色LED512の発光を確認したオペレータは、この橙色LED512が発光しているラックを載置部540aから取り除き、ラック100aを載置部540aに載置する。
【0079】
このように、判定部536の判断結果によって緑色LED511と橙色LED512とが、それぞれ、発光するため、載置部540aに対するラック100aの載置状態が正しい載置か否かを色により認識することができる。従って、載置部540aと異なる載置部にラック100aが誤って載置されるのをより確実に防止することができる。
【0080】
なお、判定部536の判断の結果、載置部540aにラック100aが載置されていると判断された場合には、ラック100aのラック情報を取り込んで、制御手段13の記憶部132に記憶するのが好ましい。これにより、例えば、ラック100aのラック情報を表示手段25に表示して、このラック情報を確認することができる。
【0081】
なお、載置部540aにラック100aと異なるラックが載置されていると判断された場合には、異なるラックのラック情報は、取り込まれないのが好ましい。これにより、不要な情報が取り込まれる(記憶される)のを確実に防止することができる。
【0082】
次に、分注装置1が分注動作を行っているときの、ラック認識装置500の動作について説明する。
【0083】
載置部540aにラック100aが載置され、載置部540bにラック100bが載置され、載置部540cにラック100cが載置されていることが、ラック認識装置500により確認されると、分注装置1が分注動作を開始する。
【0084】
まず、ノズル移動手段15を作動して、分注ヘッド3を吸入先、すなわち、親検体の試験管400が保持されているラック100aの上方に移動した後、チップ装着部32および装着されたノズルチップ300を下降させて当該試験管400内にノズルチップ300を挿入する。この状態でポンプ7を作動してノズルチップ300内の圧力を減少させることにより、ノズルチップ300内に液体(液体試料)を吸入する。
【0085】
ここで、例えば載置部540bに載置されたラック100bの試験管400への分注が完了した場合、ラック100bを交換する必要がある。このとき、送受信機530が作動して、アンテナ521bから所定周波数の電波を送信することにより、ラック100bのタグ510bの橙色LED512が点滅する。
【0086】
また、橙色LED512の点滅を確認したオペレータは、この橙色LED512が点滅しているラック100bを載置部540bから取り除き、例えば新たなラック100bを載置部540bに載置する。なお、新たなラック100bが載置部540bに載置されたときも、前述と同様に、判定部536の作動により、載置部540bにおける判断(確認)が行われる。
【0087】
このように、橙色LED512が点滅することにより、載置部540bにおいて、ラック100bを交換する必要になったのをオペレータが容易に認識することができる。
【0088】
なお、ラック100a、100cの交換についても、前述したラック100bの交換と同様である。
【0089】
以上のような構成のラック認識装置500により、送受信機530の判定部536の判断結果に応じて、緑色LED511および橙色LED512の一方が発光するため、ラック100a(ラック100b、100c)が載置部540a(載置部540b、540c)と異なる載置部に誤って載置されるのを確実に防止することができる。
【0090】
また、ラック認識装置500により、誤ったラックの試験管400に液体を分注して、試験管400内の検体を誤って混合させてしまう多重分注事故を未然に防止することができる。
【0091】
以上、本発明の認識装置および分注装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明の認識装置および分注装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができ、また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0092】
また、分注装置(ラック認識装置)が有するラックの個数は、3つに限定されず、例えば、1つ、2つ、4つ以上であってもよい。
【0093】
また、分注装置(ラック認識装置)に設けられる載置部の個数は、6つであるのに限定されず、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、7つ以上であってもよい。
【0094】
また、ラックが保持可能な試験管の本数は、10本、50本であるのに限定されず、例えば、5本等であってもよい。
【0095】
また、タグと発光部とは、一体的に構成されてラックに設けられているのに限定されず、それぞれ、別部材として構成されてラックに設けられていてもよい。
【0096】
また、タグと発光部とが別部材として構成されてラックに設けられている場合、タグは、ラックの前面に設置されるのに限定されず、例えば、ラックの底面、側面、背面等に設置されてもよい。
【0097】
また、発光部において発する光の色は、緑色と橙色とであるのに限定されず、例えば、青色、赤色等であってもよい。
【0098】
また、発光部において発する光が複数ある場合には、アンテナに加える電圧の強度を変化させることにより、発光部が1つの光を発するよう構成されていてもよい。
【0099】
また、発光部の光の色が緑色と橙色とである場合、載置部に正しいラックが載置されているとき、緑色に発光し、載置部に誤ったラックが載置されているとき、橙色に発光するのに限定されず、載置部に正しいラックが載置されているとき、橙色に発光し、載置部に誤ったラックが載置されているとき、緑色に発光してもよい。
【0100】
また、発光部は、LED(発光ダイオード)で構成されているのに限定されず、例えば、豆電球等で構成されていてもよい。
【0101】
また、アンテナの形状は、ループ状であるのに限定されず、例えば、棒状等であってもよい。
【0102】
また、アンテナは、載置部の下方(下側)に設置されるのに限定されず、例えば、設置部の後方、側方、前方等に設置されてもよい。
【0103】
また、ラック認識装置は、載置部にラックをその前後(向き)を逆に載置したとき、当該ラックの向きが逆であると認知させるよう構成されていてもよい。また、ラック認識装置は、載置部の所定位置からズレてラックを載置したとき、当該ラックの載置位置が適正でないことを認識させるよう構成されている。
【0104】
また、載置部に対するラックの向き(前後)が不問である場合には、発光部は、ラックの両端部(両側)に設置されているのが好ましい。
【0105】
この場合、発光部は、両側の発光部が発光するよう構成されていてもよいし、前側の発光部が発光するよう構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の分注装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す分注装置におけるx軸方向移動手段を示す斜視図である。
【図3】図1に示す分注装置におけるy軸方向移動手段、z軸方向移動手段および分注ヘッドを示す斜視図である。
【図4】図1に示す分注装置におけるポンプ、チップ装着部およびノズルチップを示す縦断面図である。
【図5】図1に示す分注装置における本発明の認識装置の斜視図である。
【図6】図5に示す認識装置におけるRFIDタグの斜視図である。
【図7】図1に示す分注装置の概略的なブロック図である。
【符号の説明】
【0107】
1 分注装置
11 アーム
12 ガイドレール
13 制御手段
131 CPU
132 記憶部
14 ポンプ駆動手段
15 ノズル移動手段
2 装置本体
21 作業台
22 機器収納部
23 第2の機器収納部
24 突出部
25 表示手段
3 分注ヘッド
31 フレーム
32 チップ装着部
321 通気流路
322 下端開口
33 配管チューブ
4 x軸方向移動手段
41 スライドブロック
411 固定部
42 駆動プーリー
43 従動プーリー
44 パルスモーター
45 ベルト
5 y軸方向移動手段
51 スライドブロック
52 駆動プーリー
53 従動プーリー
54 パルスモーター
55 ベルト
6 z軸方向移動手段
61 スライドブロック
62、63 従動プーリー
64 ベルト
65 パルスモーター
66 プロペラシャフト
67 固定部材
68 支持部
7 ポンプ
71 シリンダ
72 プランジャ
100a、100b、100c ラック(試験管ラック)
200 チップラック
300 ノズルチップ
301 先端開口
302 基端開口
400 試験管
500 ラック認識装置
510a、510b、510c IDタグ(RFIDタグ)
511 緑色LED
512 橙色LED
521a、521b、521c、521d、521e、521f アンテナ
530 送受信機
535 ケーブル
536 判定部
537 指令部
540a、540b、540c、540d、540e、540f 載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する容器を複数個並べて保持する保持体と、
前記保持体に設置され、前記保持体を識別する識別情報を発信するRFIDタグと、
前記保持体に設けられ、光を発する発光部と、
前記保持体を載置可能な複数の載置部と、
前記各載置部に設けられ、該載置部に載置された保持体における前記RFIDタグと通信可能なアンテナと、
前記アンテナを介して前記RFIDタグから発信された前記識別情報を受信し、該受信した識別情報に基づいて、前記載置部に対し正しい前記保持体が載置されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判断結果に応じて、該保持体における前記発光部の光の発光状態を変化させるような指令を出力する指令部とを備えたことを特徴とする認識装置。
【請求項2】
前記発光部は、前記アンテナから電磁誘導により電力が供給されて発光するよう構成されている請求項1に記載の認識装置。
【請求項3】
前記アンテナは、前記保持体を載置する箇所の周囲に沿ったループ状をなしている請求項1または2に記載の認識装置。
【請求項4】
前記発光部は、互いに異なる色の光を発する発光素子を有し、
正しい前記保持体が載置されているとき、一方の発光素子が点灯し、誤った前記保持体が載置されているとき、他方の発光素子が点灯する請求項1ないし3のいずれかに記載の認識装置。
【請求項5】
前記RFIDタグは、それが設置されている保持体に関する情報を有しており、
正しい前記保持体が載置されているとき、前記保持体に関する情報が取り込まれ、誤った前記保持体が載置されているとき、前記保持体に関する情報が取り込まれない請求項1ないし4のいずれかに記載の認識装置。
【請求項6】
液体試料を分注する分注装置であって、
請求項1ないし5のいずれかに記載の認識装置を備えたことを特徴とする分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−30035(P2006−30035A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210718(P2004−210718)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】