説明

誘導ビリルアン散乱を使用しないファイバMOPAシステム

誘導ビリルアン散乱に対するしきい値を増大するための方法およびシステム。シード源は、パルス持続時間τおよび周波数チャープを特徴とする1つ以上のチャープド・シード・パルスを生成することができる。このパルス持続時間は、約2ナノ秒より長くてもよい。フォトニック結晶増幅器は、約1キロワットより大きいピーク電力Pを特徴とする1つ以上の増幅パルスを生成するためにシード・パルスを増幅する。パルス持続時間τ、周波数チャープおよびフォトニック結晶ファイバは、フォトニック結晶ファイバの誘導ビリルアン散乱(SBS)に対するしきい値が、ピーク電力Pより大きくなるように選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザおよび光増幅器に関し、特に材料処理用途に適している高ピーク電力およびパルス・エネルギーを有する波長変換した光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力光源は、光の強力なビームが基板または他の目標上に焦点を結ぶ多くの用途に使用される。多くの高出力光源構成においては、シード源からの信号が、信号の電力を増幅する光増幅器に供給される。とりわけ、このような高出力光源構成のうちのあるものは、主発振器、電力増幅器(MOPA)構成と呼ばれる。MOPA構成を使用すれば、増幅出力を高精度にパルス形成することができる。シード信号の光増幅に基づいたレーザ・システムは、多くの場合、レーザ微細加工のような高出力用途に使用される。
【0003】
多くの高出力光学システムは、所望の波長または波長範囲の光を生成するために波長変換を使用する。多くの場合、この変換プロセスは、MOPAソースのような出力源からの入力光に対するある種の非線形光波長変換の実行を含む。従来のファイバMOPAシステムは、通常、約1.7nsより長いパルス幅に対する高ピーク電力をサポートすることができない。例えば、Kane他の米国特許第7,039,076号に、パルス幅の関数としてのファイバ増幅器システムのピーク電力に対する制限について記載されている。図1に示すように、パルス幅が約1.7nsを超えて増大すると、ピーク電力は急激に低減する。さらに、米国特許第7,039,076号に開示されているように、受動的Qスイッチ主発振器を使用すると、柔軟性が低下し、パルス繰返しレートおよびパルス幅が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,039,076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パルスの持続時間がもっと長いと良い結果を得ることができるMOPA構成および波長変換の両方を含む多数の用途がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下記の詳細な説明は、説明のための多くの特定の詳細を含んでいるが、通常の当業者であれば、下記の詳細な説明に対する多くの変更および修正も本発明の範囲に含まれることを理解することができるだろう。それ故、下記の本発明の例示としての実施形態は、すべてのものに適用することができるし、本発明を制限するものでもない。
用語:
本明細書においては、
ある(不定冠詞「a」または「an」)という用語は、別段の指定がない限り、この冠詞に続く1つ以上のアイテムの量を意味する。
【0007】
ビーム・スプリッタという用語は、光のビームを2つ以上の部分に分割することができる光学デバイスを意味する。
ブリルアン散乱という用語は、媒質を通過する光波および音波の間の相互作用による媒質内での光の自然散乱を含む非線形光学現象を意味する。
【0008】
空洞または光共振空洞という用語は、それに沿って光が往復または巡回することができる2つ以上の反射面で形成されている光路を意味する。光路と交差するオブジェクトは、空洞内に位置するといわれる。
【0009】
チャープ(または「周波数チャープ」)という用語は、光源の発光波長の長期ドリフトとは異なる急速な変化を意味する。
連続波(CW)レーザという用語は、パルス状のレーザでのように短いバーストではなく、放射線を連続的に放出するレーザを意味する。
【0010】
デューティ・サイクル(D)という用語は、一定の間隔で生成するパルスに対するパルス持続時間τとパルス繰返し周波数(PRF)との積を意味する。デューティ・サイクルは、例えば、0.01のような比率で表すこともできるし、または等価的に、例えば1%のような百分率で表すこともできる。
【0011】
ダイオード・レーザという用語は、コヒーレントな光の出力を発生するために誘導放出を使用するように設計されている発光ダイオードを意味する。ダイオード・レーザは、また、レーザ・ダイオードまたは半導体レーザとも呼ばれる。
【0012】
ダイオード励起レーザという用語は、ダイオード・レーザによりポンピングされる利得媒質を有するレーザを意味する。
利得という用語は、媒質を通してある点から他の点に送信される信号の強度、パワーまたはパルス・エネルギーの増大を意味する。
【0013】
利得媒質という用語は、レーザに関連して以下に説明するレーザ光を発することができる材料を意味する。
ガーネットという用語は、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)、ガドリニウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネット(GSGG)、イットリウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネット(YSGG)等を含む特定のクラスの酸化物結晶を意味する。
【0014】
例えば、「のような(such as)」、「例えば(for example)」、「等(etc.)」、「など(and the like)」、「してよい(may)」、「できる(can)」、「可能である(could)」、および特定のカテゴリー内で1つのアイテムまたはアイテムのリストと一緒に使用する他の類似の修飾語句を含む「含む」という用語は、このカテゴリーが、1つのアイテムまたはアイテムのリストを含んでいるが、含むことができるものはこれらに限定されないことを意味する。
【0015】
赤外線という用語は、約700ナノメートル(nm)〜約100,000nmの範囲内の真空波長を特徴とする電磁放射線を意味する。
レーザという用語は、放射線の誘導放出による光の増幅の頭字語である。レーザは、レーザを放出することができる材料を含む空洞である。この材料は、任意の材料(結晶、ガラス、液体、半導体、ダイまたはガス)であり、その原子は、例えば光または放電によるポンピングにより準安定状態に励起可能である。光が再度基底状態になった場合に、光が、原子により準安定状態から放出される。光の放出は、放出された光子の位相および方向を誘導している光子と同じものにする、通過する光子の存在により誘導される。光(本明細書においては、誘導放射と呼ぶ)は、空洞内で振動し、空洞から射出されたものの一部は出力ビームを形成する。
【0016】
光:本明細書においては、「光」という用語は、一般に、約1ナノメートル(10−9メートル)から約100ミクロンの真空波長の範囲にほぼ対応する赤外線から紫外線まで
の周波数の範囲内の電磁放射線を意味する。
【0017】
モード・ロックしたレーザという用語は、高ピーク電力およびピコ秒(10−12秒)の領域のような短い持続時間のエネルギー・バーストを内部で選択的に発生する各モードの相対的位相を制御する(場合によっては時間に関する変調により)ことにより機能するレーザを意味する。
【0018】
非線形効果という用語は、通常、レーザが生成するような光のほぼ単色の指向性ビームだけにより見ることができるある種の光学現象を意味する。高調波の発生(例えば、第2、第3および第4高調波の発生)、光パラメータ発振、和周波発生、差周波発生、光パラメータ増幅、および誘導ラマン効果は、非線形効果の例である。
【0019】
非線形光波長変換プロセスは、それにより非線形媒質を通過している所与の真空波長λの入力光が、媒質および/または入力光とは異なる真空波長を有する出力光を生成するような方法で、媒質または媒質を通過している他の光と相互作用する非線形光学プロセスである。非線形波長変換は、非線形周波数変換と等しいものである。何故なら、2つの値は、光の減圧速度により関連しているからである。両方の用語は互換性を有する。非線形光波長変換としては下記のもの等がある。
【0020】
例えば、第2高調波発生(SHG)、第3高調波発生(THG)、第4高調波発生(FHG)等のような高次高調波発生(HHG)。この場合、入力光の2つ以上の光子は、周波数Nfを有する出力光の光子を発生するような方法で相互作用する。この場合、Nは相互作用する光子の数である。例えば、SHGの場合には、N=2である。
【0021】
和周波発生(SFG)。この場合、周波数fの入力光の光子は、周波数f+fを有する出力光の光子を生成するような方法で、周波数fの他の入力光の光子と相互作用する。
【0022】
差周波発生(DFG)。この場合、周波数fの入力光の光子は、周波数f−fを有する出力光の光子を生成するような方法で、周波数fの他の入力光の光子と相互作用する。
【0023】
非線形材料という用語は、非線形効果を起こすことができる光放射に対する非ゼロ非線形誘電応答を含む材料を意味する。非線形材料としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、三ホウ酸リチウム(LBO)、ベータホウ酸バリウム(BBO)、ホウ酸セシウム・リチウム(CLBO)、KDPおよびその同形体、LlLO、および例えば、PPLN、PPSLT、PPKTP等のような擬似位相整合材料の結晶等がある。ファイバ内に微細構造を形成することにより、光ファイバを光放射に対して非線形応答を有するようにすることもできる。
【0024】
光増幅器という用語は、光入力信号のパワーを増幅する装置を意味する。光増幅器は、ポンプ放射により駆動された利得媒質を使用するレーザに類似している。増幅器は、通常、フィードバックを行わないので(すなわち、空洞を有していないので)、利得を有するが、発振はしない。本明細書においては、光電力増幅器という用語は、通常、増幅したビームをターゲットまたは波長変換器に供給する前の最後の光増幅器を意味する。放射線源と電力増幅器との間の増幅器段は、本明細書においては、通常、プリアンプと呼ばれる。
【0025】
位相整合という用語は、波長間のエネルギーのコヒーレントな伝達を行うことができる距離を延ばすために、多重波非線形光学プロセスで使用する技術を意味する。例えば、三波プロセスは、k+k=kの場合には位相整合しているといわれる。この場合、k
は、プロセスに参加しているi番目の波の波ベクトルである。周波数倍加の場合には、例えば、このプロセスは、基本波および第2高調波の位相速度が一致している場合に最も効率的になる。通常、位相整合状態は、非線形材料内の光波長、偏波状態および伝搬方向を注意深く選択することにより達成することができる。
【0026】
パルス持続時間(τ)という用語は、例えば、パルスの前縁部および後縁部上のパワーが半分になる点間の時間間隔のような繰返し信号の持続時間または寿命を意味する。パルス持続時間は、「パルス幅」とも呼ばれる。
【0027】
パルス・エネルギーという用語は、パルス内のエネルギーの量を意味する。パルス・エネルギーは、パルス周期間の瞬時パルス・パワーを積分することにより計算することができる。
【0028】
パルス周期(T)という用語は、2つ以上のパルス列内の連続するパルスの等価点間の時間を意味する。
パルス繰返し周波数(PRF)という用語は、単位時間当たりのパルス繰返しレートを意味する。PRFは、周期Tに反比例する。例えば、PRF=1/Tである。
【0029】
Qという用語は、(2π)×(共鳴装置内に蓄積されている平均エネルギー)/(サイクル当たりの放散エネルギー)として定義される共振器(空洞)のメリットの数値を意味する。光共振器の表面の反射性が高ければ高いほど、吸収損失が少なければ少ないほどQは高くなり、所望のモードからのエネルギー損失は少なくなる。
【0030】
Qスイッチという用語は、光共振器のQを急速に変化するために使用されるデバイスを意味する。
Qスイッチ・レーザという用語は、レーザ媒質内でハイレベルの反転(光利得およびエネルギー蓄積)が達成されるまでレージング作用を防止するために、レーザ空洞内でQスイッチを使用するレーザを意味する。例えば、このスイッチが、音響光学または電気光学変調器または可飽和吸収体により、空洞のQを急速に増大すると、ジャイアント・パルスが発生する。
【0031】
擬似CWという用語は、連続的に現れるために十分速い繰返しレートでのパルスの連続的な発生を意味する。
擬似位相整合(QPM)材料:擬似位相整合材料においては、基本波および高調波の放射が、材料の非線形係数の符号を周期的に変化させることにより位相整合している。符号の変化の周期(KQPM)により、KQPM+k+k=kのような位相整合式に追加の項が追加される。QPM材料においては、基本波および高調波は、同じ偏波を有することができ、多くの場合、効率が改善する。擬似位相整合材料の例としては、周期分極反転のタンタル酸リチウム(PPLT)、周期分極反転のニオブ酸リチウム(PPLN)、周期分極反転の定比組成タンタル酸リチウム(PPSLT)、周期分極反転のリン酸カリウム・チタニル(PPKTP)、または周期分極反転の微細構造ガラス繊維等が挙げられる。
【0032】
ラマン散乱という用語は、散乱した光が入射光よりも低い周波数を有する材料による入射光の散乱を意味する。入射光および散乱光(ラマン・シフトと呼ばれる)の周波数の違いは、散乱材料の固有振動周波数に対応する。
【0033】
光増幅器の飽和という用語は、その周波数に近い入射光のパワーがある値を超えた場合に、ある遷移周波数に近い媒質の利得係数の低減を意味する。利得係数が一定である場合には、媒質が放出するパワーは、入射パワーに比例する。しかし、通常、利得媒質がパワ
ーを放出することができるレートには限界がある。この限界は関連するエネルギー準位の寿命により異なる。この限界に達すると、誘導遷移は、上部エネルギー準位の配置を有意に低減するほど十分高速になり、それにより利得係数が低減する。この効果は、入力電力の関数として増幅電力を「平坦」にする。
【0034】
飽和強度(ISAT):増幅器の利得を、その小さな信号値の半分に低減する強度。増幅器を通過する信号強度が飽和強度よりかなり大きい場合には、増幅器が飽和したという。
【0035】
誘導ビリルアン散乱(SBS)という用語は、強い光が、格子内で超音波を発生する結晶格子を変形させるある種の増幅プロセスを意味する。ブリルアン散乱光は増大し、そのパワーは指数関数的に増大する。
【0036】
入射光のパワーがあるしきい値を超えると、入射光の大部分は入射光より低い周波数を有するブリルアン散乱光に変換される。
誘導ラマン散乱(SRS)は、強い光ビームにより発生させることができるある種のラマン散乱である。ラマン散乱光は増大し、そのパワーは指数関数的に増大する。入射光のパワーがあるしきい値を超えると、入射光の大部分は入射光より低い周波数を有するラマン散乱光に変換される。SRSは、また、誘導ラマン効果またはコヒーレントなラマン効果とも呼ばれる。
【0037】
紫外線(UV)放射線という用語は、可視領域の波長より短いが、軟X線の波長よりは長い真空波長を特徴とする電磁放射線を意味する。紫外線放射は、下記の波長範囲、すなわち、約380nm〜約200nmの近紫外線;約200nm〜約10nmの遠または真空紫外線(FUVまたはVUV);約1nm〜約31nmの極端紫外線(EUVまたはXUV)に細分化することができる。
真空波長:電磁放射線の波長は、通常、波が伝搬する媒質の関数である。真空波長は、所与の周波数の電磁放射線の波長であり、放射線が真空内を伝搬する場合には、真空内の光の速度を周波数で割ることにより得られる。
(発明の説明)
本発明の実施形態においては、シード源は、パルス持続時間τおよび周波数チャープを特徴とする1つ以上のチャープド入力パルスを発生することができる。パルス持続時間τは、約2ナノ秒より長い(例えば、約1.7ナノ秒より長い)。フォトニック結晶増幅器は、約1キロワットより大きいピーク電力Pを特徴とする1つ以上の増幅パルスを生成するために入力パルスを増幅する。パルス持続時間τおよびフォトニック結晶ファイバは、フォトニック結晶ファイバの誘導ビリルアン散乱(SBS)に対するしきい値がピーク電力Pよりも大きくなるように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来技術のMOPAシステム内のピーク電力とパルス幅との間の関係を示すグラフ。
【図2】本発明のある実施形態による、高調波変換を含む全ファイバMOPAシステムの略図。
【図3】本発明のある実施形態による、ファイバMOPAシステム内の2つの異なる駆動電流に対するシード源の周波数シフト対時間のグラフ。
【図4】本発明のある実施形態による、ファイバMOPAシステム内の2つの異なる駆動電流に対するシード源の周波数チャープ率対時間のグラフ。
【図5】本発明のある実施形態による、ファイバMOPAシステム内の周波数チャープされたシード源を含むSBSしきい値対パルス幅のグラフ。
【図6A】レーザの出力をチャープするために半導体レーザに供給した電流パルスの一例。
【図6B】レーザの出力をチャープし、出力パルスのパワーを変化させるために半導体レーザに供給した成形した電流パルスの一例。
【図7】本発明のある実施形態で使用するのに適しているファイバ増幅器の略図。
【図8】本発明のある実施形態で使用するのに適しているファイバ増幅器の略図。
【図9】ファイバMOPAシステム内の電力増幅器で使用することができる、クラッド励起フォトニック結晶ファイバの顕微鏡写真。
【図10】ファイバMOPAシステム内の電力増幅器で使用することができる、単一偏波フォトニック結晶ファイバの光減衰対光波長のグラフ。
【図11】標準ファイバを使用している従来技術と、シード源上にチャープを含んでいないフォトニック結晶ファイバを使用している本発明との比較。
【図12】シード周波数チャープおよびフォトニック結晶ファイバの両方を使用を使用した場合の改善を示すSBSしきい値対パルス幅のグラフ。
【図13】本発明の実施形態で波長変換器として使用するのに適している第3高調波発生器の略図。
【図14】いくつかのパルス幅に対する平均紫外線(UV)パワー対パルス繰返しレートのグラフ。
【図15】3つの異なるパルス幅に対するパルス繰返しレートの関数としてのパルス・エネルギーのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0039】
他の実施形態においては、チャープド入力パルスを、特徴的な真空波長λ、スペクトル線幅δf、パルス持続時間τ、周波数シフトの大きさΔf、および周波数シフトレート(「チャープ率」とも呼ばれる)Δf/Δtによりさらに特徴付けることができる。パルス持続時間τは、約2ナノ秒より長い(例えば、約1.7ナノ秒より長い)。フォトニック結晶増幅器は、約1キロワットより大きいピーク電力Pを特徴とする1つ以上の増幅パルスを生成するために入力パルスを増幅する。λ、δf、τ、Δf、Δf/Δtおよびフォトニック結晶ファイバの値は、フォトニック結晶ファイバの誘導ビリルアン散乱(SBS)に対するしきい値が、ピーク電力Pよりも大きくなるように選択することができる。
【0040】
図2は、本発明のある実施形態による波長変換光学システム100および方法を示す。より詳細には、このシステム100は、通常、コントローラ101と、シード源102と、1つ以上のオプションとしての光増幅器106aおよび106bと、電力増幅器108と、波長変換器110とを含む。シード源102は、シード放射104を発生し、このシード放射は、入力信号107を生成するためにオプションとしてのプリアンプ106aおよび106bにより増幅することができ、この入力信号107は、さらに、増幅出力109を生成するために電力増幅器108で増幅される。別の方法としては、プリアンプを省略して、入力信号107としてシード放射104を使用することができる。当業者であれば周知のように、帯域フィルタおよび光アイソレータを、ビームが後方に伝搬するのを防止し、シードされていない自然放出の影響を最小限度に小さくするために増幅器段間に設置することができる。
【0041】
光電力増幅器108からの増幅出力109は、光学的に波長変換器110に結合される。波長変換器110は、波長変換された出力111を生成するために、増幅出力109の少なくとも一部を波長変換する。本発明のある実施形態においては、システム100は、光増幅器108から増幅出力109を受信し、それを波長変換器110に送信する結合光学系105を含むことができる。ある実施形態では、波長変換器を必要としない。システム100は、また、波長変換された出力111を受信し、最終出力113を送信する結合光学系112を含むことができる。結合光学系112は、簡単な窓を含むことができ、また光ファイバを含むことができる。
【0042】
コントローラ101は、シード源102、および/またはオプションとしての光プリアンプ106aおよび106b、電力増幅器108、および/または波長変換器110と動作可能に結合することができる。コントローラは、シード源102のパルス幅τおよびパルス繰返し周波数のようなシード放射104のパルス特性を制御することができるロジックを含むことができる。一例を挙げて説明すると、シード源102が半導体ダイオード・レーザである場合には、コントローラ101は、シード源をポンピングするために使用する電気駆動回路122に制御信号120を送ることができる。制御信号120は、電気駆動回路122の動作パラメータを調整するように構成することができる。他の実施形態においては、シード源放射線104を、例えば、シード源102として使用するDBRレーザの格子部分を加熱する電流パルスを供給することにより、シード源上のアクチュエータによりスペクトル制御することができる。コントローラ101は、ユーザの制御入力123に応じて、波長変換された平均電力および/またはパルス・エネルギーを調整することができる。ある実施形態においては、システム・コントローラ101は、1つ以上のフィードバック信号に応じて動作することができる。例えば、最終出力113の一部を、例えば、ビーム・スプリッタ114により、電力モニタ116の方向に偏向することができる。残りの出力115は、ターゲット118に結合することができる。別の方法としては、最終出力113をターゲット118と直接結合することができる。
【0043】
最終出力113または残りの出力115を、用途により多数の異なるタイプのプロセスのうちの任意のプロセスを実施するために、多数の異なるタイプのターゲットのうちの任意のターゲットに供給することができる。システム100の用途としては、材料処理、医療、レーザ粒子加速器およびウェーハ検査等があるが、これらに限定されない。ターゲット118の適当な材料の例としては、金属、セラミック、半導体、ポリマー、複合材料、薄膜、有機材料、インビトロまたはインビボ生体試料、および素粒子等が挙げられるが、これらに限定されない。特定の材料処理の場合には、ターゲットは、例えば、ワイヤ、プリント回路(PC)基板、集積回路(IC)パッケージ、ICウェーハ・ダイ、LEDウェーハ、パッケージ、ダイ等を含むことができる。材料処理用途の例としては、表面テクスチャリング、熱処理、表面彫り込み、精密微細加工、表面アブレーション、切断、溝形成、バンプ形成、コーティング、半田づけ、蝋づけ、焼結、密封、溶接、リンク・ブローイング、ウェーハ・スクライブ、ダイシングおよびマーキング、ビア孔あけ、メモリ・リペア、平面パネル・ディスプレイ・リペア、ステレオリソグラフィ、マスクレス・リソグラフィ、表面拡散、および化合物への表面変換等が挙げられる。
【0044】
上記構成要素の他に、光学システム100は、さらに、当業者であれば周知の他の光学構成要素を含むことができる。このような構成要素は、シード放射104、増幅出力109、最終出力113または残りの出力115の後方反射の有害な影響を避けるために、光アイソレータを含むことができる。光学構成要素の他の例としては、増幅した自然放出(ASE)の有害な影響を避けるためのスペクトル・フィルタ、シード放射104、増幅出力109、最終出力113または残りの出力115の偏波状態を所望の方向に回転させるための波長板等があるが、これらに限定されない。別の方法としては、シード源102は、例えば、増幅された誘導放出(ASE源)のようなチャーピングを必要としない十分広い固有の帯域幅を有するソースであってもよい。ある実施形態においては、広い固有の帯域幅のシード源102とフォトニック結晶ファイバ増幅器108(プリアンプを含むまたは含んでいない)を組み合わせると、以下に説明する理由により、SBSしきい値を十分高くすることができる。一例を挙げて説明すると、ASEソースは、そのレージングしきい値以下のDFBレーザであってもよい。
【0045】
シード源102は、1つ以上のシード・パルスの形でシード放射104を生成する。誘導ビリルアン散乱(SBS)のしきい値を増大するために、シード放射104は周波数チ
ャープされる。シード源102は、半導体レーザを含み、シード放射104は、コヒーレントな光の形をしている。シード源102により生成されたシード放射104は、電磁スペクトルの近赤外線または可視部分であってもよい。例えば、シード放射104は、約630nm〜約3000nmの範囲内の真空波長を特徴とすることができる。この範囲内の波長を有する光信号は、異なる基板上に形成された種々の半導体レーザにより入手することができる。
【0046】
シード源102は、多くの異なる設計で作ることができる。例えば、シード源102は、分散フィードバック(DFB)または分散ブラッグ・リフレクタ(DBR)タイプの半導体ダイオード・レーザのような半導体ダイオード・レーザであってもよい。半導体レーザは、ダイオードを通しての駆動電流によりポンピングすることができる。一例を挙げて説明すると、DBRレーザの場合には、シード源102は、約25ミリワット(mW)の特定の連続波(cw)出力電力、約220ミリアンペア(mA)の最大順方向動作電流、約50mAの最大位相動作電流、および約100mAの最大格子動作電流を有することができるが、これらに限定されない。適当な市販のDBRタイプのレーザの例としては、とりわけ、ベルリン所在のEagleyard Photonics社のモデル#EYP−DBR−1063−00025−2000−BFY01−0001レーザ等が挙げられる。
【0047】
一例を挙げて説明すると、DFBレーザの場合には、シード源102は、約40mWの特定のcw出力電力、約250mAの順方向動作電流、および約10MHz未満の線幅を有することができるが、これらに限定されない。適切なDFBタイプのレーザの例としては、とりわけ、同様に、ドイツのベルリン所在のEagleyard Photonics社のモデル#EYP−DFB−1060−00040−BFY01−0000レーザ等が挙げられる。
【0048】
DFBおよびDBRレーザのようなレーザの狭いcw線幅は、大電力増幅には向いていない場合がある。何故なら、SBSのしきい値があまりに低すぎるからである。しかし、レーザのパルス動作は、シード放射104の周波数をパルス持続時間τ中にシフトするのに使用することができる。シード放射をシフトすると、シード放射のスペクトルの拡張に類似の影響が、電力増幅器108の誘導ビリルアン散乱しきい値に影響を与える恐れがある。より詳細には、周波数のシフトが十分大きく、十分急速な場合には、シード放射104のスペクトルの拡張の場合に予想されるように、シフトにより電力増幅器108のSBSしきい値が増大する場合がある。それ故、シード・パルス104をチャープする周波数を、狭い線幅の光源をシード源102として使用することができるようにするために使用することができる。本発明の実施形態におけるDFRおよびDBRレーザのような半導体レーザの特定の利点は、レーザをポンピングするために使用する駆動電流をパルス状にすることにより、その出力を容易にチャープすることができることである。
【0049】
さらに、シード放射104のパルス持続時間τを、駆動電流のデューティ・サイクルおよび/またはパルス繰返し周波数を調整することにより容易に変えることができる。
図3は、100mAおよび300mAの駆動電流の場合のDBRレーザ内のシード源周波数対時間のシフトを示す。この例の場合には、使用したDBRレーザは、ドイツのベルリン所在のEagleyard Photonics社のモデル#EYP−DBR−1063−00025−2000−BFY01−0001であった。DFBレーザは、類似の結果を示した。周波数シフトの大きさは、駆動電流が増大するにつれて増大する。電流による周波数シフトの増大は、通常、スーパーリニアである。図3を見れば分かるように、周波数シフト曲線の形状は、両方の駆動電流に類似している。図3の例の場合には、8GHzおよび40GHzの全周波数シフトは、それぞれ、100mAおよび300mAのピーク電流パルスの場合に得られた。
【0050】
時間の関数としての周波数チャープ率(周波数シフトのレート)を決定するために、図3の周波数シフト対時間のデータの導関数を使用することができる。より詳細には、図4は、図3の周波数シフト対時間のグラフを描くために使用したデータから得られた周波数チャープ率対時間のグラフである。図4を見れば分かるように、チャープ率は、駆動電流が増大すると増大する。より詳細には、100mAの駆動電流の場合には、チャープ率は、電流パルスを供給した200nsの間に、約65MHz/nsから25MHz/nsに変化する。300mAの駆動電流の場合には、チャープ率は、約300MHz/nsから125MHz/nsに変化する。誘導ビリルアン散乱に対するしきい値は、チャープ率により異なる。それ故、シード源を適当にチャープすることにより、SBSしきい値を、そうでない場合には、cw動作のためのものであるレベルより上に増大することができる。このようにして、SBSしきい値を、電力増幅器で増幅されているシード・パルス放射のパワーより高いレベルに増大することができる。例えば、電力増幅器108でSBSを形成するための時間が約10ナノ秒(ns)であり、電力増幅器108の利得媒質に対するSBS帯域幅が約100MHzである場合には、約10MHz/nsまたはそれ以上のチャープ率は、約100MHzまたはそれ以上の周波数シフトを生じ、そのためSBSしきい値が増大する。パルス状の駆動電流により誘起されたチャープ率を制御することにより、電力増幅器108のSBSしきい値を、光学システム100がSBSを起こさずに広いパラメータ範囲上で動作することができるように増大することができる。
【0051】
図5は、SBSしきい値上のシード源102のチャープの影響を示す。この図は、カウンタ・ポンピングしたファイバ・ベースの電力増幅器のSBSしきい値対パルス幅のグラフである。使用したファイバは、デンマークのBirkenrod所在のCrystal
Fibre A/S社のラージ・モード・エリア・フォトニック結晶ファイバである。この図に1つの周波数曲線を描くために、パルス幅を制御するための外部変調器を含むcwモードで動作している、モデル#EYP−DBR−1063−00025−2000−BFY01−0001DBRダイオードを使用した。図5の他の2つの曲線を描くために、DBRおよびDFBレーザを、駆動電流をパルス形成することによりチャープした。図5を見れば分かるように、DBRおよびDFBソース両方を電流パルス形成することにより誘起したチャープにより、周波数チャープを含んでいない1つの周波数源と比較した場合、SBSしきい値が有意に増大した。図5の斜線部分は、シード放射をパルス・チャープしたことによる追加の使用することができる動作範囲を示す。SBSしきい値の増大は、数nsから約100nsのパルス幅の大きな動作範囲上の4のほぼ係数である。
【0052】
DFBおよびDBRソースを容易に比較することができるように、DBRおよびDFBダイオード両方を200mAのピーク電流で駆動した。この値は、この例で使用した特定のレーザのための最大レートのcw動作駆動電流のところまたはそれに近いところのものである。しかし、チャープをさらに増大し、SBSしきい値をさらに高くする有意に大きな駆動電流でレーザを動作させることもできる。本発明者らは、実験により、定格cw動作電流よりかなり大きなパルス状の電流でDFBおよびDBR半導体レーザを高い信頼性で動作させることができることを発見した。低いデューティ・サイクルおよび短いパルス幅で、定格cw電流の5倍の電流で動作させることができる。一例を挙げて説明すると、電流パルスに対するデューティ・サイクルは、約5%未満である場合があり、通常は、約1%未満である。増幅誘導放出(ASE)問題および過度のピーク電力のために、例えば、約0.01%のような非常に低いデューティ・サイクルはあまりに低すぎる。しかし、低い平均電力での非常に低いデューティ・サイクルでシステム100を動作することができる場合がある。例えば、レーザ・ダイオードのパルスを駆動するために使用するエレクトロニクスにより、最小パルス幅を制限することができる。ある例の場合には、最小パルス幅は約2ナノ秒であった。一例を挙げて説明すると、パルス持続時間τは約100nsより短くてもよいが、これに限定されない。これらの低いデューティ・サイクルにおいて
は、半導体レーザが発散した平均の熱は、パルス状の電流レベルが、定格cw動作電流をかなり超えた場合でも定格値より低い。
【0053】
シード源102として半導体レーザを使用する本発明の実施形態においては、定格cw電流より上のレベルの電流のパルス形成は、2つの望ましい効果を有する。より詳細には、パルス形成は、チャープを増大することができ、それにより電力増幅器108でSBSしきい値を増大することができる。さらに、定格cwレベルより上の電流によりダイオードを駆動すると、より大きな電力シード・パルス104を生成することができ、このパルス104は、すべての以降の増幅器で必要な全利得を低減することができる。そのため、シード源102と電力増幅器108の間の1つ以上のプリアンプが不要になり、電力増幅器108に対する入力パルスとしてシード・パルス104を使用することができる。さらに、シード源102がDBRである場合には、大きな出力電力およびチャープを入手するために、ダイオードを位相および格子セクションおよび通常の利得セクションだけで駆動することができる。
【0054】
ある実施形態においては、シード源・チャープ率を、電流パルスの振幅を制御することにより最適化することができる。図6Aは、シード源102を駆動することができる矩形波電流パルス600である。パルス600の特徴は、周期T、持続時間τおよび電流振幅Iで表すことができる。一例を挙げて説明すると、周期Tは、パルス繰返し周波数(1/T)が、約50キロヘルツ(kHz)から約100メガヘルツ(MHz)になるように選択することができる。図6Aにおいては、パルス内の電流振幅Iは、パルス持続時間τの間一定である。シード源102を過度に駆動するために、電流振幅Iを、定格cw電流Icwより大きくすることができる。一例を挙げて説明すると、Iを、約2の係数だけIcwより大きくすることができる。ある実施形態においては、Iは、約5の係数だけIcwより大きくすることができる。
【0055】
ある実施形態においては、電流振幅を、例えば、チャープを増大し、SBSしきい値を増大するために、パルス持続時間τの間電流を増大することにより、パルスの持続時間中に変化させることができる。例えば、図6Bに示すように、電流パルス610は、パルスの持続時間τ中IからIに増大する振幅を有することができる。さらに、電流パルスを、電流の振幅がパルス中に非線形的に変化するように整形することができる。電流振幅の変化は、パルスの持続時間τの間、電力増幅器108での利得のデプレッションを補償するような方法で、シード放射104の出力電力を増大するように構成することができる。別の方法としては、例えば、三角、鋸歯、ガウスまたは他のパルスの形のような任意の所望のパルス形を使用することができる。このようなパルスの整形を、例えば、電力増幅器108の増幅出力109のパワーを、出力パルスの持続時間中ほぼ一定に維持するために使用することができる。
【0056】
オプションとしてのプリアンプ106a、106bは、電力増幅器108に増幅した入力パルス107を供給するために、シード源102からのシード・パルス104を増幅することができる。一例を挙げて説明すると、オプションとしてのプリアンプ106a、106bは、コア・ポンピングできるか、またはクラッド励起できるファイバ増幅器であってもよい。2つ以上のファイバ・プリアンプが存在する場合には、後の段のプリアンプのコアの直径の大きさを、シード源104に近いファイバ・プリアンプのコアに対して増大することができる。このようなコア構成は、プリアンプ106a、106bのSBSしきい値を増大することができる。
【0057】
電力増幅器108は、通常、(いつでもではないが)最大の光パワーを取り扱うので、通常、SBSによりその性能が制限されるシステム100の段である。一例を挙げて説明すると、電力増幅器108は、光ファイバ増幅器であってもよい。本発明のある実施形態
においては、高出力増幅器内の増幅した光の伝搬長さを短くするために、電力増幅器108をカウンタ・ポンピングすることが望ましい。電力増幅器108に対して使用することができる光ファイバ増幅器構成は多数ある。図7および図8は、とりわけ、可能な光ファイバ増幅器構成の2つの例を示す。
【0058】
図7は、光ファイバ702および励起光源704を有するファイバ・プリアンプ700の一例を示す。光ファイバ702は、クラッドおよび添加コアを含む。ファイバ702のコアの直径は、例えば、約6ミクロンであってもよい。ファイバ702は、偏波保存または1つの偏波ファイバであってもよい。ファイバ702は、約5ミクロン〜約10ミクロンのコア直径を有することができる標準無線通信ファイバと比較した場合、比較的大きなモード・エリアを有することができる。増幅される入力放射706は、コアに結合される。励起光源704からのポンプ放射も、通常、コアに結合されるが、クラッドに結合することもできる。一例を挙げて説明すると、入力放射706は、シード源からのものであってもよい。ファイバ702のコア内の、例えば、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、ホルミウム(Ho)、サマリウム(Sm)およびツリウム(Tm)のような希土類元素、またはこれらの2つ以上の組合せのようなドーパント原子は、ポンプ放射からエネルギーを吸収する。当業者であれば、希土類添加ファイバ増幅器(REDFA)スキームおよびアーキテクチャをよく知っているだろう。
【0059】
入力放射706は、ドーパント原子からの放射線の放出を誘導する。誘導放射は、入力放射と同じ周波数および位相を有する。そのため、増幅出力708は、入力放射と同じ周波数および位相を有することになるが、光強度は増大する。光アイソレータ710は、放射線が、例えば反射の結果のように、その出力端部からファイバ702に望ましくない方法で入るのを防止するために、ファイバ702の出力端部と光学的に結合することができる。
【0060】
図8は、とりわけ、図2の光電力増幅器108で使用することができるファイバ電力増幅器800の可能な一例を示す。ファイバ電力増幅器800は、通常、増幅する光信号801を受信する。光信号801は、シード源から入手することができ、シード源とファイバ電力増幅器800との間で予め増幅することができる。例えば、1対のリレー・レンズを有する光カプラ802は、光信号801を第1の端部806のところで光ファイバ804に結合することができる。好適には、ファイバ804は、ポンプ放射(例えば、約90%またはそれ以上)の高い百分率を吸収する十分長いものであることが好ましい。ある実施形態においては、ファイバ804は、大モード・エリア(LMA)ファイバに適しているコア直径を有していることが望ましい。さらに、ファイバ804は、高出力のマルチモード・ポンプ放射線を受け入れるのに適している内部クラッド直径および受光角を有するデュアル・クラッドされているものであることが好ましい。一例を挙げて説明すると、ファイバ804のコアは、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、またはネオジム(Nd)のような希土類元素でドープすることができる。ファイバ804は、偏波保存ファイバまたは単一偏波ファイバであってもよい。
【0061】
励起光源810は、第2の端部808のところで、ファイバ804にポンプ放射811を供給する。励起光源810は、通常、1つ以上の高出力レーザ・ダイオードを含む。これらのレーザ・ダイオードは、単一エミッタの形状をしていてもよいし、または複数の単一エミッタを含むモノリシック・バーの形をしていてもよい。適切な市販のレーザ・ダイオードの特定の例としては、ドイツのDortmund所在のLissotschenko Mikrooptik(LIMO)GmBH社のモデルLIMO110−F400−DL980レーザ・ダイオード、およびカリフォルニア州Irvine所在のApollo InstrumentsのApollo F400−980−4レーザ・ダイオード等がある。別の方法としては、励起光源810は、例えば、カリフォルニア州Milpi
tas所在のJDS Uniphase社のモデルL3 980nmポンプ・パッケージのような光学的に一緒に結合している単一エミッタのアレイであってもよい。
【0062】
好適には、ソース810は、マルチモード・ソースであることが好ましく、ファイバ804は、マルチモード内部クラッドを有していることが好ましい。電力増幅器800においては、ポンプ放射は、通常、ファイバ804の内部クラッドに結合される。ポンプ放射811が単一モードである場合には、ポンプ放射811は、代わりにファイバ804のコアに直接結合することができる。一例を挙げて説明すると、ファイバ812は、励起光源810からのポンプ放射811をコリメータ・レンズ814に結合することができる。ポンプ放射811をファイバ804の片方の端部または両方の端部に結合することができる。ある実施形態においては、励起光源810をシード源の近傍に設置し、励起光源810を、マルチモード・ファイバであってもよいファイバ812を介して出力ヘッドに接続すると有利である。このように配置すると、サイズが小さくなり、出力ヘッド内の熱負荷が低減する。
【0063】
ポンプ放射811は、ファイバ812から発散ビームとして照射する。コリメータ・レンズ814は、発散ビームの焦点を視準したビームに結ぶ。波長選択リフレクタ816(例えば、ダイクロイック・フィルタ)は、ポンプ放射を、視準したポンプ放射の焦点をファイバ804の第2の端部808のところに結ぶ収束レンズ818の方向に反射する。ファイバ804のコア内のドーパント原子は、光信号801の周波数および位相と同じ周波数および位相を有するが、光強度が増幅されている増幅出力放射線820の放出を誘導するポンプ放射811を吸収する。増幅出力放射線820は、ファイバ804の第2の端部808から照射する時に分散する。波長選択リフレクタ816は、増幅出力放射線820を送信するように構成されている。一例を挙げて説明すると、周波数選択フィルタ816は、ポンプ放射811(例えば、約976ナノメートル)の周波数範囲内の放射線を反射するように選択された停止バンド、および増幅出力放射線820(例えば、1.05ミクロン)の周波数範囲内の放射線を透過するように選択された通過域を有するダイクロイック・フィルタであってもよい。次に、増幅出力放射線820は、出力カプラ・レンズ822により焦点を結ぶことができる。
【0064】
本発明の実施形態においては、フォトニック結晶ファイバを、電力増幅器108で利得媒質として使用することができる。そのような場合、フォトニック結晶ファイバを大モード・エリアと一緒に使用することが望ましい。フォトニック結晶ファイバは、また、プリアンプ106a、106bに使用することもできる。図9は、電力増幅器108で使用することができるフォトニック結晶ファイバ900の一例を示す。フォトニック結晶ファイバ900は、コア902を囲んでいて、ファイバ900の全長に沿って延びる空隙904のパターンを有する添加コア902により特徴付けられる。空隙904のパターンは、コア内で光を導き、そのため内部クラッドを形成するように構成されている。コア902および空隙904のパターンは、ファイバ900の全長に沿って延びる空隙の第2のパターンが形成する空気クラッド906により囲むことができる。空気クラッド906は、ポンプ光に対して外部クラッドとしての働きをする。空気クラッド906は、コア902の屈折率とは異なる屈折率により特徴付けることができる。空気クラッド906は、コア902および空隙904のパターンを被覆層908から分離する。ファイバ900は、偏波保存または単一偏波ファイバであってもよい。一例を挙げて説明すると、また一般的な意味で、図9のファイバは、1064nmのところの単一偏波である。図9の例に示すように、ファイバ900は、ファイバ偏波特性を形成する応力部材910を含むことができる。
【0065】
適当な市販のファイバとしては、デンマーク、Crystal Fibre Birkenrodのモデル#DC−200/41−PZ−Yb−3等がある。この特定のファイバの特徴は、約27ミクロンのモード・フィールド直径、580平方ミクロンのモード・
フィールド・エリアである。図10は、この特定のタイプのフォトニック結晶ファイバの偏波および波長特性を示す。図10を見れば分かるように、ファイバの減衰は、波長および偏波により大きく変化する。より詳細には、ゆっくりとした偏波軸の場合には、鎖線の曲線で示すように、約970nmより短い波長に対しては、減衰は比較的大きい。高速偏波軸の場合には、実線のグラフで示すように、約1070nmより短い波長に対しては、減衰は比較的大きい。図10を見れば分かるように、約970nm〜1070nmの波長のところでの動作の場合には、ファイバは単一偏波(PZ)であり、1070nmより長い波長のところでの動作の場合には、ファイバは偏波を維持する(PM)。それ故、単一偏波動作が望ましい場合には、どちらかの範囲内の動作によりこのような動作を入手することができる。しかし、単一偏波範囲内の動作が好ましい。何故なら、このような動作を使用すれば、入力信号偏波上で弛緩したランチ状態とすることができるからである。
【0066】
システム100の電力増幅器108でフォトニック結晶ファイバを使用した場合に得られる利点は、その一部をSBSしきい値の標準モデルで説明することができるだろう。cw動作の標準公式によれば、SBSしきい値は下式により計算することができる。
【0067】
*P*L/A=21
但し、
=ブリルアン散乱利得(材料定数)
P=光パワー
L=ファイバ長
A=ファイバ・モード・エリア。
【0068】
この式の詳細については、例えば、Govind Agrawalの361ページのNonlinear Fiber Opticsを参照されたい。
光周波数がチャープしている場合、またはSBS帯域幅より広い場合には、cwモデルを短パルスに適用することはできないが、このモデルは、依然としてSBSしきい値上のチャープド・パルスの効果の定性的指針として使用することができる。より詳細には、上式から、SBSしきい値を大きくするためには、(a)大モード・エリア・ファイバを使用してモード・エリアAを広くすること、(b)ファイバ長Lを短くすることが望ましいことが分かるだろう。(b)に関しては、カウンタ・ポンピングした増幅器においては、実効ポンプ吸収長、1/eの係数によりその上でポンプ光が減衰する距離のほうが物理的ファイバ長より重要であることに留意されたい。ポンプ吸収長は、高度添加コア、小さな直径の内部クラッド、および最大吸収効率の波長のところでのポンピングを使用することにより最小限度に短くすることができる。約976nmの波長のところでのYb添加ガラス繊維ポンピングの場合には、実効ポンプ吸収長が最も短くなる。
【0069】
本発明者の知る限りでは、フォトニック結晶ファイバが、SBSしきい値を増大することができる望ましい特性を有していることは今まで分かっていなかった。光を案内するためにコアとクラッドとの間の屈折率の違いを使用する通常のファイバも、ブリルアン散乱した音波を案内する働きをすることができる。光の場合には、生成したブリュアン音波を案内すると、音波の自然拡散を除去することができ、ファイバ・コア内に音波を集中することができる。この案内は、SBSしきい値を低減するために役に立つと考えられている。本発明者らは、フォトニック結晶ファイバを、ブリルアン散乱した光を案内しないように製造することができることを知った。より詳細には、フォトニック結晶ファイバは、増幅パルスおよび/または入力パルスのブリルアン散乱によるフォトニック結晶ファイバに由来するブリルアン散乱した放射線を案内しないように構成することができる。ブリュアン波長(ブリルアン散乱した放射線の波長)は、材料内の光波長の半分である。1064nmの波長光のブリルアン散乱は、532nmの波長を有するブリルアン散乱した放射線を生成する。図10を見れば、532nmの光放射が、ファイバ900内で大きく減衰し
、案内されないことが分かる。同一の機構が光波としてブリュアン音波を案内した場合には、音波も案内されないと考えられる。このような観察に基づいて、本発明者らは、ブリルアン散乱した音波に対するファイバの損失を生じる性質は、ほぼ3の係数だけSBSしきい値を増大するものと予想することができると経験的に判断した。
【0070】
図11は、従来のステップ指数ファイバを使用する従来技術と、電力増幅器108でフォトニック結晶ファイバを使用するが、シード源102上にチャープを含んでいない本発明のある実施形態との比較を示す。実線は、従来のファイバのしきい値を、鎖線は、上記タイプのフォトニック結晶ファイバのSBSしきい値を示す。このグラフを描くために、米国特許第7,039,076号に開示されている強度対パルス幅の情報を、強度に推定の580平方ミクロンのモード・フィールド・エリアを掛けることによりピーク電力に換算した。図11の比較は、単一周波数、チャープしていないシード源102を想定している。斜線部分は、フォトニック結晶ファイバの使用による潜在的に使用することができる追加の動作範囲を示す。図11は、約数nsから100nsのパルス幅の広い動作範囲内のSBSしきい値のほぼ3の係数による増大を示唆している。
【0071】
本発明のある実施形態においては、シード源・チャープを、SBSしきい値内のほぼ一次の大きさの増大を行うために、フォトニック結晶ファイバと併用することができる。一例を挙げて説明すると、図12は、シード源102からのチャープド・パルスおよび電力増幅器108のフォトニック結晶ファイバの効果を考慮に入れた場合の改善を示す。実線は、電力増幅器108の従来のファイバのSBSしきい値およびシード源102のチャープしていないパルスを示す。この線を描くために、米国特許第7,039,076号に開示されている強度対パルス幅の情報を、強度に仮定の580平方ミクロンのモード・フィールド・エリアを掛けることによりピーク電力に換算した。波線は、シード源102としてのDBRレーザのチャープド・パルス形成と一緒に、電力増幅器108の上記タイプのフォトニック結晶ファイバのSBSしきい値を示す。一点鎖線は、シード源102としてのDFBレーザのチャープド・パルス形成と一緒に、電力増幅器108の上記タイプのフォトニック結晶ファイバのSBSしきい値を示す。斜線部分は、シード源102のチャープド・パルス形成および電力増幅器108のフォトニック結晶ファイバの組合せによる潜在的な追加の使用することができる動作範囲を示す。シード源のチャープを増大するために、そのcw定格よりも大きくシード源を駆動することにより、SBSしきい値レベルをさらに制御することができることに留意されたい。図12を見れば分かるように、SBSしきい値は、100nsより長いパルス幅の間、引き続き比較的高いレベルに留まることができる。さらに、図4に示すように、シード源102は、100nsより長いパルス幅の間、引き続きチャープすることができる。
【0072】
本発明の実施形態を使用すれば、増幅パルス内でパルス持続時間τを長くすることができる。このことは、波長変換器110を使用して増幅出力109の波長変換を含む用途の場合特に有利である。本発明の実施形態と一緒に使用することができる多数の可能な波長変換器構成がある。図13は、とりわけ、図2のシステム100内の波長変換器110として使用することができる波長変換器1300の一例である。この例の場合には、波長変換器1300は、第3高調波発生器である。波長変換器1300は、通常、第1および第2の非線形結晶1302、1304を含む。適当な非線形結晶としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、三ホウ酸リチウム(LBO)、ホウ酸βバリウム(BBO)、ホウ酸セシウム・リチウム(CLBO)、タンタル三リチウム、定比組成タンタル酸リチウム(SLT)、リン酸カリウム・チタニル(KTPとも呼ばれるKTiOPO)、ADA、ADP、CBO、DADA、DADP、DKDP、DLAP、DRDP、KABO,KDA、KDP、またはLFMおよびその同形体、周期分極反転のニオブ酸リチウム(PPLN)、周期分極反転のタンタル酸リチウム、周期分極反転の定比組成タンタル酸リチウム(PPSLT)のような周期分極反転の材料等がある。このような非線形材料は、例え
ば、中国Fujian所在のFujian Castech Crystals社から入手することができる。
【0073】
第1の非線形結晶1302は、電力増幅器から増幅した入力放射1301を受信する。入力放射1301は、光周波数ωに対応する特徴ある波長λを特徴とする。第1の非線形結晶1302は、第2高調波発生に対して位相整合している。位相整合は、第1の非線形結晶の温度を調整することにより制御することができる。より詳細には、入力放射1301の一部は、光周波数2ωを特徴とする第2高調波放射1303を生成するために、非線形結晶1302内で反応する。第2高調波放射1303および入力放射1301の残りの部分1301’は、第2の非線形結晶1304に結合される。第2の非線形結晶1304は、光周波数2ωの放射線と光周波数ωの放射線との間の和周波発生に対して位相整合される。より詳細には、第2の非線形結晶1304においては、第2高調波放射1303および入力放射1301の残りの部分1301’は、光周波数3ωを特徴とする第3高調波放射1305を生成するために、第2の非線形結晶1304において相互作用する。第3高調波放射1305は、周波数変換出力を供給するために第2の非線形結晶1304から出る。
【0074】
第2の非線形結晶の変換効率が、100%未満である場合には、入力放射1301の残りの部分1301”の一部も、第2の非線形結晶1304から出ることができる。波長変換器1300は、第3高調波放射1305を透過しながら、第2高調波放射1303の残りの部分1301”および残りの部分1303’を反射する光フィルタ1306(例えば、ダイクロイック・フィルタ)を含むことができる。残りの部分1301”、1303’を、光学トラップの方向に向けることもできるし、またはそうでない場合には、不要な光として処分することもできる。別の方法としては、光フィルタ1306を、2つ以上の出力波長を選択的に通過するように構成することができる。
【0075】
例えば、第1の結晶1302は、約520nm〜約540nmの真空波長を有する第2高調波放射1303を生成するために、1.04ミクロンの周波数を2倍にして1.08ミクロンの波長の入力放射1301とすることができる。第2の非線形結晶1304は、約340nm〜360nmの範囲の真空波長を有する第3高調波放射1303を生成するために、第2高調波放射1303と入力放射1301’の残りの部分とを合計する。一例を挙げて説明すると、通常の意味で、第1の結晶1302は、532nmの第2高調波放射1303を生成するために、1.064ミクロンの入力放射1301を2倍にすることができる。第2の結晶は、355nmの第3高調波放射1305を生成するために、入力放射1301’の残りの部分と第2高調波放射1303とを合計する。
【0076】
第2高調波の発生および第3高調波の発生のような多くの波長変換プロセスにおいて、波長変換出力(例えば、第2高調波放射1303および第3高調波放射1305)は、多くの場合、入力放射1301のパルス持続時間τより短いパルス持続時間τ’を有することに留意されたい。
【0077】
図13は、第3高調波発生器の一例を示しているが、当業者であれば、第2高調波発生器、第4高調波発生器、他の高次高調波発生器、和周波発生器、差周波発生器、光パラメータ発振器、光パラメータ増幅器等のような他の非線形波長変換器を光学システム100内の波長変換器110として使用することができることを理解することができるだろう。例えば、第2の非線形結晶1304を省略した場合には、波長変換器1300を第2高調波発生器として構成することができる。
【0078】
本発明者らは、第2高調波変換のための第1の非線形結晶1302として、適切な方向を向いているLBOの15mmの長さの部材を使用し、第3高調波変換のための第2の非
線形結晶1304として、適切な方向を向いているLBOの20mmの長さの部材を使用しているこのアーキテクチャを証明した。レンズ1308は、第1の結晶1302内の約45ミクロンのウェスト半径に、1064nmの波長の入力放射1301の焦点を結ぶために使用することができる。その後のレンズ1309は、第2の結晶1304内の約45ミクロンのウェスト半径に、1064nmの波長の入力放射1301および532nmの波長の第2高調波放射1303両方の焦点を結ぶために使用することができる。このような第3高調波発生器を使用することにより、本発明者らは、11Wの355nmのUV放射を生成するために、電力増幅器108でのフォトニック結晶ファイバと一緒にチャープド・シード源102の使用を証明した。図14は、UV放射対パルス繰返しレートの平均電力を示す。このグラフ内の最大ピークIR電力は、50kWより大きい。これは、従来技術により入手することができるものより1桁大きい。この点での1064nmから355nmへの変換効率は約50%である。
【0079】
多くの用途の場合、パルス・エネルギーは、多くの場合、平均またはピーク・パルス・パワーよりも重要である。全パルス・エネルギーは、パルスの持続時間の間の時間に対する瞬時パルス・パワーの積分であると定義することができる。本発明の実施形態は、約1マイクロジュール(μJ)より大きいか、または約10μJより大きい波長変換全パルス・エネルギーを有するパルスを生成することができる。一例を挙げて説明すると、図15は、いくつかのパルス持続時間に対するパルス・エネルギー対パルス繰返しレートのグラフである。20nsの長さのパルスに対する86kHzパルス繰返しレートのところで得られた最大パルス・エネルギーは、IR内で255μJであり、355nmのところのUVでは81μJであった。
【0080】
今まで本発明の好適な実施形態について詳細に説明してきたが、この実施形態は種々に変更、修正することができ、その等価物も使用することができる。それ故、本発明の範囲は、上記説明により決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の全範囲とともに、この特許請求の範囲により決定されるべきである。好適なものであってもなくても、任意の機能を、好適なものであってもなくても他の任意の機能と組み合わせることができる。添付の特許請求の範囲中、ある(不定冠詞「a」または「an」)という用語は、別段の明示の指定がない限り、このような冠詞の後の1つ以上のアイテムの量を示す。添付の特許請求の範囲は、「に対する手段」という句により所与の請求項に明示してない限り、手段プラス機能制限を含むものと解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状の光信号を生成するための方法であって、
約2ナノ秒より長いパルス持続時間τおよび周波数チャープを特徴とする1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップと、
1キロワットより大きいピーク電力Pを特徴とする1つ以上の増幅パルスを生成するために、前記入力パルスをフォトニック結晶ファイバ光増幅器により増幅するステップと、を含み、
前記周波数チャープおよび前記フォトニック結晶ファイバが、前記フォトニック結晶ファイバの誘導ビリルアン散乱(SBS)に対するしきい値が、前記ピーク電力Pより大きくなるように選択される方法。
【請求項2】
1つ以上の波長変換したパルスを生成するために、前記増幅パルスを波長変換するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記波長変換したパルスが、前記シード・パルスの前記パルス持続時間τより短いパルス持続時間τ’を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記波長変換したパルスが、1マイクロジュールより大きいパルス・エネルギーを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記波長変換したパルスが、10マイクロジュールより大きいパルス・エネルギーを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ピーク電力Pが10キロワットより大きい請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パルス持続時間が、2〜100ナノ秒である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記入力パルスのデューティ・サイクルが5%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記入力パルスのデューティ・サイクルが1%未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記入力パルスの繰返し周波数が50キロヘルツから100メガヘルツの間である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記周波数チャープが10MHz/msより大きいチャープ率を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記周波数チャープが100MHz/nsより大きいチャープ率を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップが、半導体ダイオード・レーザに加えられる駆動電流をパルスの形にするステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記シード源が分散ブラッグ・リフレクタ(DBR)タイプの半導体レーザを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記シード源が分散フィードバック(DFB)タイプの半導体レーザを含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記シード源により1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップが、前記半導体レーザの特定の連続波(cw)電流より大きい電流のところで、パルス形成されたモードで前記半導体レーザを駆動するステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記シード源により1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップが、前記特定のcw電流の2倍より大きい電流のところで、パルス形成されたモードで前記半導体レーザを駆動するステップを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップが、前記特定のcw電流の5倍より大きい電流のところで、パルス形成されたモードで前記半導体レーザを駆動するステップを含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップが、前記増幅器のSBSに対する前記しきい値を、前記増幅器に対するピーク電力より大きくするのに十分な量だけ、前記周波数チャープのチャープ率を増大するような方法で、前記半導体レーザを駆動するステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップが、前記周波数チャープの所望のチャープ率を維持するために、均等でない電流で前記半導体レーザを駆動するステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記フォトニック結晶増幅器が放射線の単一横断モードを支持するように構成される請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記フォトニック結晶増幅器が単一偏波を支持するように構成される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
パルス状の光信号を生成するための装置であって、
約2ナノ秒より長いパルス持続時間τおよび周波数チャープを特徴とする1つ以上のチャープド・シード・パルスを生成するように構成されているシード源と、
前記シード源と光学的に結合しているフォトニック結晶ファイバ光増幅器を備え、前記フォトニック結晶ファイバ光増幅器が、前記シード・パルスに基づいて入力パルスを増幅し、それにより1キロワットより大きいピーク電力Pを特徴とする1つ以上の増幅パルスを生成するように構成され、
前記周波数チャープおよび前記フォトニック結晶ファイバが、前記フォトニック結晶ファイバの誘導ビリルアン散乱(SBS)に対するしきい値が前記ピーク電力Pより大きくなるように選択される装置。
【請求項24】
前記フォトニック結晶ファイバ光増幅器に光学的に結合している波長変換器をさらに備え、前記波長変換器が1つ以上の波長変換したパルスを生成するために前記増幅パルスを波長変換するように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記波長変換器が、前記シード・パルスのパルス持続時間τより短いパルス持続時間τ’を特徴とする波長変換したパルスを生成するように構成される請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記波長変換器が、1マイクジュールより大きいパルス・エネルギーを特徴とする波長変換したパルスを生成するように構成される請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記波長変換器が、10マイクジュールより大きいパルス・エネルギーを特徴とする波長変換したパルスを生成するように構成される請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記フォトニック結晶増幅器が、前記ピーク電力Pが10キロワットを超えるように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項29】
前記シード源が、前記パルス持続時間τが2ナノ秒〜100ナノ秒範囲になるように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項30】
前記シード源が5%未満のデューティ・サイクルの前記シード・パルスを生成するように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項31】
前記シード源が1%未満のデューティ・サイクルの前記シード・パルスを生成するように構成される請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記シード源が50キロヘルツ〜100メガヘルツの範囲内の繰返し周波数の前記シード・パルスを生成するように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項33】
前記シード源が、前記周波数チャープが10MHz/nsより大きいチャープ率を特徴とするように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項34】
前記シード源が、前記周波数チャープが100MHz/nsより大きいチャープ率を特徴とするように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項35】
前記フォトニック結晶ファイバ増幅器が、前記ファイバの縦軸に平行な方向に延びる1つ以上の空隙を有するフォトニック結晶材料でできている光ファイバを含み、前記1つ以上の空隙が、ファイバ内の1つ以上の光放射を案内するように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項36】
前記シード源と前記フォトニック結晶ファイバ光増幅器との間に光学的に結合している1つ以上の光プリアンプをさらに備える請求項23に記載の装置。
【請求項37】
前記シード源が、前記ダイオード・レーザに加えられる駆動電流をパルスの形にすることにより1つ以上のチャープド・シード・パルスを生成するように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項38】
前記シード源が分散ブラッグ・リフレクタ(DBR)タイプの半導体レーザである請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記シード源が分散フィードバック(DFB)タイプの半導体レーザである請求項37に記載の装置。
【請求項40】
前記シード源が、半導体レーザ、および前記半導体レーザの特定の連続波(cw)電流より大きい電流のところで、パルス状モードで前記半導体レーザを駆動するように構成されている電気駆動回路を含む請求項37に記載の装置。
【請求項41】
前記電気駆動回路が、前記特定のcw電流の2倍より大きい電流のところでパルス形成されたモードで前記半導体レーザを駆動するように構成される請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記電気駆動回路が、前記特定のcw電流の5倍より大きい電流のところで、パルス形成されたモードで前記半導体レーザを駆動するように構成される請求項40に記載の装置。
【請求項43】
前記シード源が、前記増幅器のSBSに対する前記しきい値を、前記増幅器に対するピーク電力より大きくするのに十分な量だけ、前記周波数チャープのチャープ率を増大するような方法で、前記半導体レーザを駆動するように構成されている電気駆動回路を含む請求項37に記載の装置。
【請求項44】
前記シード源が、前記周波数チャープの所望のチャープ率を維持するために、均等でない電流で前記半導体レーザを駆動するように構成されている電気駆動回路を含む請求項37に記載の装置。
【請求項45】
前記フォトニック結晶増幅器が、放射線の単一横断モードを支持するように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項46】
前記フォトニック結晶増幅器が単一偏波を支持するように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項47】
前記フォトニック結晶ファイバが、前記増幅パルスおよび/または入力パルスのブリルアン散乱による前記フォトニック結晶ファイバに由来するブリルアン散乱放射線を案内しないように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項48】
パルス状の光信号を生成するための方法であって、
1つ以上のチャープド入力パルスを生成するステップであって、前記入力パルスが、特徴ある真空波長λ、スペクトル幅δf、パルス持続時間τ、周波数シフトΔf、および周波数シフトレートΔf/Δtを特徴とし、τが2ナノ秒より長いステップと、
1キロワットより大きいピーク電力Pを特徴とする1つ以上の増幅パルスを生成するために、フォトニック結晶ファイバ光増幅器により前記入力パルスを増幅するステップであって、λ、δf、τ、Δf、Δf/Δtおよび前記フォトニック結晶ファイバが、前記フォトニック結晶ファイバの誘導ビリルアン散乱(SBS)に対するしきい値がピーク電力Pよりも大きくなるように選択されるステップと、
を含む方法。
【請求項49】
パルス状の光信号を生成するための装置であって、
特徴ある真空波長λ、スペクトル幅δf、パルス持続時間τ、周波数シフトΔf、および周波数シフトレートΔf/Δtを特徴とする1つ以上のチャープド・シード・パルスを生成するように構成されているシード源であって、τが2ナノ秒より長いシード源と、
前記シード源と光学的に結合しているフォトニック結晶ファイバ光増幅器であって、前記シード・パルスに基づいて入力パルスを増幅し、それにより約1キロワットより大きいピーク電力Pを特徴とする1つ以上の増幅パルスを生成するように構成されているフォトニック結晶ファイバ光増幅器と、
を備え、
λ、δf、τ、Δf、Δf/Δtおよび前記フォトニック結晶ファイバが、前記フォトニック結晶ファイバの誘導ビリルアン散乱(SBS)に対するしきい値がピーク電力Pよりも大きくなるように選択される装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−532587(P2010−532587A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515261(P2010−515261)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/069081
【国際公開番号】WO2009/006547
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(508310148)モビアス フォトニクス, インク. (4)
【Fターム(参考)】