説明

誘導加熱コイル及び半導体材料から成る細粒を溶融するための方法

【課題】シリコン等の単結晶の製造において、原材料としての細粒を溶融させかつ溶融状態を維持するための誘導加熱コイルを提供する。
【解決手段】出口管11を有するプレート9上で、半導体材料から成る細粒13を溶融させるための誘導加熱コイルにおいて、電流案内スロットが設けられたコイルボディ1が設けられている。コイルボディ1の中央外側に位置する領域に、細粒のための通過開口6を有しており、コイルボディ1の下側中央において突出し、下端部においてウェブ3によって導電可能に結合された通電セグメント2とを有している。細粒を溶融させるための前記誘導加熱コイルは、溶融した半導体材料のフィルム12と、フィルム12によって包囲された自由面を備えた溶融物とを誘導加熱し、これらを液体に保つので、プレート9から単結晶10への連続的で制御可能な溶融物流を保証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱コイル、及び出口管を備えたプレート上で半導体材料から成る細粒を溶融するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの誘導加熱コイルは、独国特許出願公開第10204178号明細書によれば、原材料としての細粒を用いて半導体材料の単結晶を製造することができるために必要とされる。
【0003】
図4は、単結晶の製造中の配置における公知の誘導加熱コイルを示している。誘導加熱コイルによって溶融された細粒は、プレートの中央の開口を流過しながら、半導体材料の漏斗状フィルムを形成しながら溶融物となる。溶融物は、引張りコイルによって制御される、体積を増大しながら単結晶において結晶化する貯蔵容器を形成している。結晶成長が妨害されることなく進行するために、特にフィルム及び隣接する溶融物が液体のままであることが重要である。フィルム及び溶融物の制御されない凍結を排除するために、放射加熱システムが設けられている。しかしながら、このような放射加熱システムは複雑で、極めて効率的であるわけではない。なぜならば、フィルムに衝突する放射の大部分が反射されるので、非効果的なままである。さらに、放射の個々の入射角が著しく異なるのでフィルム及び溶融物が均一に加熱されることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10204178号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より単純にかつより効果的にフィルム及び隣接する溶融物の均一な加熱を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、出口管を備えたプレート上において半導体材料から成る細粒を溶融するための誘導加熱コイルに関し、この誘導加熱コイルはコイルボディを有しており、コイルボディには電流案内スロットが設けられており、コイルボディは上側及び下側を有しており、コイルボディは、中心の外側に位置するコイルボディの領域における細粒のための通過開口と、コイルボディの下側の中央において突出しておりかつ下端部においてウェブによって導電可能に結合された通電セグメントとを有している。
【0007】
本発明は、誘導加熱コイルによって、出口管を備えたプレート上で半導体材料から成る細粒を溶融させるための方法にも関し、この方法は、出口管を濡らす溶融した半導体材料のフィルムと、フィルムによって包囲された自由面を備えた半導体材料の溶融物とを形成することを含み、フィルムと溶融物とは、誘導加熱コイルの下側の中央において突出しておりかつ下端部においてウェブによって導電可能に結合されている通電セグメントによって、自由面の領域において加熱される。
【0008】
本発明によれば、細粒を溶融させるための誘導加熱コイルは、フィルムと、溶融物の隣接する上側領域とを誘導加熱し、これらを液体に保つためにも使用される。これは、プレートから単結晶への連続的で制御可能な溶融物流を保証するという目的を達成する。この目的のために、コイルボディは、コイルボディの下側の中央において突出しておりかつ側部では半導体材料のフィルムによって、底部においては溶融物によって仕切られたチャネル内に突出した通電セグメントを有している。セグメントは、好適には、フィルムと溶融物の誘導加熱が、フィルムによって包囲された溶融物の自由面の領域において特に有効であるように構成されている。特に好適なセグメントの形状は、このセグメントに基づいてチャネルの体積がほとんど完全にセグメントによって満たされるような形状である。したがって、セグメントは、例えば2つのセグメントとして形成されており、これらのセグメントは、円錐台形を形成しかつ下端部においてウェブによって互いに導電可能に結合されている。
【0009】
本発明のこの特徴及びその他の特徴は、図面を参照に以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】作動中の装置における本発明による誘導加熱コイルの好適な実施形態を概略的な縦断面図で示している。
【図2】誘導加熱コイルの平面図である。
【図3】誘導加熱コイルの断面図である。
【図4】従来技術を示す、図1に相当する図である。同じタイプの特徴は同じ参照符号によって示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
誘導加熱コイルは、高周波電流が実質的にコイルボディ1及びセグメント2に流れるように形成されている(図2及び図3)。セグメントは、下端部において薄いウェブ3によって互いに導電可能に結合されている。コイルボディは、放射方向に向けられた電流案内スロット4を有しており、これらの電流案内スロットは、コイルボディを通る蛇行経路における電流の流れを制限する。経路は、コイルボディ1の縁部におけるコイル結合部5から、コイル中央におけるセグメント2へ、さらにセグメント及びコイルボディを通り、コイル結合部へ戻る。このように、プレートの表面の全ての領域が電磁場によって均一に網羅され、これは、この領域に、細粒を溶融させかつ溶融状態を維持するための電流を誘発することを保証する。
【0012】
コイルボディ1は、外側領域において、半導体材料から成る細粒を回転するプレート上に供給するための少なくとも1つの通過開口6を有している。通過開口は、好適には、この目的のための区分において拡大された、電流案内スロット4のうちの1つによって形成されている。
【0013】
誘導加熱コイルには、さらに、コイルボディ1における冷却チャネル7を含む冷却システムが設けられており、冷却チャネル7内を冷媒、例えば水が流過する。また、セグメント2を集中的に冷却するために、冷却チャネルは、セグメントへ案内され、管ブリッジ8を介して互いに結合されている。管ブリッジは、コイルボディ1の上側の中央においてセグメント2にまで到達しており、例えばセグメント2にろう接又は溶接されている。管ブリッジ8は、十分に高いインダクタンスを有するように、一回又は複数回巻成されている。したがって、高周波電流は、実質的に、管ブリッジ8を介してではなく、セグメント2を結合するウェブ3を介して流れる。電流の流れにより、力線密度はウェブの領域において特に高く、単結晶の製造中にウェブの真向かいに位置する溶融物の誘導加熱が、特に有効である。好適には、同じ電位、特に好適には大地電位が、溶融物及びウェブに存在する。
【0014】
単結晶10の製造中の誘導加熱コイル及びプレート9の好適な相対配置が図1に示されている。セグメント2は円錐台を形成し、ウェブ3の領域においてほぼ溶融物まで達している。プレート9の出口管11から流出する溶融した半導体材料のフィルム12は、チャネルを包囲しており、このチャネルの体積は、ほぼ完全に通電セグメント2によって満たされている。好適には、セグメントの外面の傾斜角と出口管の内面の傾斜角とは同じである。プレートから溶融物への、溶融した半導体材料の連続的な流れは、円錐台がチャネル内に僅かに非対称に配置されておりひいては一方の側が優先的に加熱されることによって、さらに改良されることができる。その結果、規定された閉鎖された溶融物通路は、成長プロセスの開始時に、まだ小さな溶融物流が要求されている場合に形成される。
【0015】
プレート9は、好適には細粒13と同じ半導体材料から成り、好適には独国特許出願公開第10204178号明細書に記載された容器のような形式で具体化されており、この明細書の内容は言及したことにより本明細書に記載されたものとする。しかしながら、特に、比較的小さな直径を有する単結晶を製造するために細粒を溶融するために使用される場合、中央出口管を備えた単純な平坦な板として具体化されることもできる。参照符号14は漏斗を示しており、この漏斗に細粒13が搬入される。
【0016】
本発明は、好適には、シリコン単結晶を製造するために使用される。単結晶から裁断された半導体ウェハは、例えば、太陽電池又は電子部品、例えばパワートランジスタ及びサイリスタを製造するのに適している。
【0017】
例:
図1に示した構成において本発明による誘導加熱コイルを用いることにより、シリコン単結晶は、チャネル及び隣接する溶融物のための放射加熱システムを提供することなく製造された。引き出された単結晶は、転位がなく、溶融物のフィルム又は隣接する領域におけるシリコン固化の結果として、歩留りの損失は生じなかった。
【符号の説明】
【0018】
1 コイルボディ、 2 セグメント、 3 ウェブ、 4 スロット、 5 コイル結合部、 6 通過開口、 7 冷却チャネル、 8 管ブリッジ、 9 プレート、 10 単結晶、 11 出口管、 12 フィルム、 13 細粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出口管を有するプレート上で、半導体材料から成る細粒を溶融させるための誘導加熱コイルにおいて、コイルボディが設けられており、該コイルボディが、電流案内スロットが設けられておりかつ上側及び下側を有しており、前記コイルボディが、中央の外側に位置するコイルボディの領域において、細粒のための通過開口を有しており、通電セグメントが設けられており、該通電セグメントが、コイルボディの下側の中央において突出しておりかつ下端部においてウェブによって導電可能に互いに結合されていることを特徴とする、誘導加熱コイル。
【請求項2】
電流案内スロットのうちの少なくとも1つが、通過開口を形成するために拡開している、請求項1記載の誘導加熱コイル。
【請求項3】
前記セグメントが、円錐台形状を形成している、請求項1又は2記載の誘導加熱コイル。
【請求項4】
通電セグメントの外面の傾斜角と、出口管の内面の傾斜角とが同じである、請求項1から3までのいずれか1項記載の誘導加熱コイル。
【請求項5】
コイルボディ及びセグメントを冷却するための冷却システムが設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の誘導加熱コイル。
【請求項6】
冷却システムが、巻成された管ブリッジを含み、該管ブリッジを通って冷媒が流過するようになっており、前記管ブリッジが、コイルボディの上側の中央において通電セグメントと接触している、請求項5記載の誘導加熱コイル。
【請求項7】
誘導加熱コイルによって、出口管を備えたプレート上で、半導体材料から成る細粒を溶融させるための方法において、溶融した半導体材料のフィルムを形成し、該フィルムが出口管を濡らし、フィルムによって包囲された自由面を備えた、半導体材料の溶融物を形成し、フィルムと溶融物とが、誘導加熱コイルの下側の中央において突出しておりかつ下端部においてウェブによって導電可能に結合されている通電セグメントによって、自由面の領域において加熱されることを特徴とする、誘導加熱コイルによって、出口管を備えたプレート上で、半導体材料から成る細粒を溶融させるための方法。
【請求項8】
シリコンから成る細粒が、シリコンから成るプレート上で溶融される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ウェブ及び溶融物が、同じ電位に置かれる、請求項6又は7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−215159(P2009−215159A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−55941(P2009−55941)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】