誘導加熱装置及び画像形成装置
【課題】入力電圧に拘わらず、スイッチング損失を抑えることができる誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】コイル91が発生する磁束によりベルト92を発熱させる誘導加熱装置であって、スイッチング素子103、104を含みコイル91に電流を供給する電源部100と、スイッチング素子103、104を駆動するパルス信号を出力する駆動回路112と、電源部100への入力電圧を検出する電圧検出部111と、パルス信号の周波数を制御する制御回路113とを備えており、制御回路113は、入力電圧が閾値以上であると、パルス信号の周波数を、コイル91及び共振コンデンサ105の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御する。
【解決手段】コイル91が発生する磁束によりベルト92を発熱させる誘導加熱装置であって、スイッチング素子103、104を含みコイル91に電流を供給する電源部100と、スイッチング素子103、104を駆動するパルス信号を出力する駆動回路112と、電源部100への入力電圧を検出する電圧検出部111と、パルス信号の周波数を制御する制御回路113とを備えており、制御回路113は、入力電圧が閾値以上であると、パルス信号の周波数を、コイル91及び共振コンデンサ105の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置に関する。より具体的には、画像形成装置において、トナー像を定着させる定着器を加熱するための誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、記録材に転写したトナー像を定着させるための定着器を備えている。従来、定着器には、セラミックヒーター等による加熱装置が多く用いられていたが、近年、電磁誘導を利用した誘導加熱装置が用いられるようになっている。特許文献1に記載されている様に、誘導加熱装置は、スイッチング素子により商用電源から生成した交流電流をコイルに供給するものであり、スイッチング素子を駆動する周波数を変化させることでコイルに供給する電力の制御を行っている。
【0003】
ここで、図13に示す様に、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数fとコイルへの供給電力Pの関係は、コイル及び共振コンデンサを含む共振回路の共振周波数frで最大電力Pmaxを示すカーブを描く。例えば、周波数fr以上の領域において、パルス信号の周波数を制御することによって電力制御が可能となる。
【0004】
また、図14に示す様に、スイッチング素子を駆動するパルス信号のパルス幅t(=1/(2f))とコイルへの供給電力Pの関係は、共振周波数frに対応するパルス幅trで最大電力Pmaxを示すカーブを描く。例えば、パルス幅tr以下の領域において、パルス信号を制御することによって電力制御が可能となる。
【0005】
電力制御の簡易な方法は、目標電力と検出電力を比較し、検出電力の方が大きい場合には周波数を上げ、検出電力の方が小さい場合には周波数を下げ、等しい場合には周波数を変化させないというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−223253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力Poをコイルに供給する場合、図15に示す様に、商用電源電圧が100Vの場合にはスイッチング素子の駆動周波数をfaに、商用電源電圧が200Vの場合には駆動周波数をfbにする必要がある。つまり、200Vの場合には、100Vの場合よりも高周波側で制御することになる。このときのスイッチング素子のコレクタエミッタ電圧と、コレクタ電流の関係を図16に示す。なお、図16(a)が100Vの場合を、(b)が200Vの場合を示し、点線がコレクタ電流である。ここで、図16の斜線で示す、コレクタエミッタ電圧とコレクタ電流が重なっている領域がスイッチング損失である。なお、コレクタ電流は、コイル91に供給される電流であり、スイッチンング素子の駆動周波数に拘わらず、共振周波数に等しい正弦波の形状となる様に増減する。100Vの場合には、共振周波数fr付近で制御を行うため、図16(a)に示す様に、コレクタ電流が共振周波数に従い増減し、その値が比較的低くなった時にスイッチング素子の切り替えが発生する。これに対して、200Vの場合には、共振周波数frより高周波側で制御を行う必要がある。つまり、共振周波数より短い間隔でスイッチングを行う必要がある。このため、図16(b)に示す様に、コレクタ電流が共振周波数に従い増加しているときといった、その値が比較的大きいときにスイッチングが発生する。したがって、200Vの場合には、100Vの場合と比較してスイッチング損失が大きくなる。
【0008】
本発明は、入力電圧に拘わらず、スイッチング損失を抑えることができる誘導加熱装置を提供することを目的とする。また、入力電圧に拘わらず、スイッチング損失を抑えることができる誘導加熱装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における誘導加熱装置によれば、磁束発生手段が発生する磁束により発熱体を発熱させる誘導加熱装置であって、スイッチング素子を含み、磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、パルス信号の周波数を制御する制御手段とを備えており、制御手段は、入力電圧が閾値以上であると、パルス信号の周波数を、磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲、ここでnは自然数、で制御することを特徴とする。
【0010】
本発明による画像形成装置によれば、記録材に形成したトナー像を定着させる定着手段と、定着手段の発熱体を発熱させる誘導加熱装置とを備えている画像形成装置であって、誘導加熱装置は、発熱体を発熱させるための磁束を発生する磁束発生手段と、スイッチング素子を含み、磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、パルス信号の周波数を制御する制御手段とを備えており、制御手段は、入力電圧が閾値以上であると、パルス信号の周波数を、磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誘導加熱装置は、入力電圧が閾値以上である場合には、共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲でパルス信号の周波数の制御を行う。これにより、出力電流が大きいときにスイッチングすることを防ぎ、よって、スイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による画像形成装置の構成図である。
【図2】本発明による画像形成装置の定着器を示す図である。
【図3】本発明による誘導加熱装置の機能ブロック図である。
【図4】第一実施形態のフローチャートである。
【図5】パルス幅の設定を示す図である。
【図6】共振周波数以下の範囲を含む、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数と出力電力の関係を示す図である。
【図7】各モードでの動作範囲を示す図である。
【図8】モードAにおけるパルス信号とコイルへの出力電流波形を示す図である。
【図9】モードBにおけるパルス信号とコイルへの出力電流波形を示す図である。
【図10】第二実施形態において電圧が閾値未満の場合の動作範囲を示す図である。
【図11】第二実施形態において電圧が閾値以上の場合の動作範囲を示す図である。
【図12】第二実施形態のフローチャートである。
【図13】スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数と出力電力の関係を示す図である。
【図14】スイッチング素子を駆動するパルス信号のパルス幅と出力電力の関係を示す図である。
【図15】100Vと200Vにおける、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数と出力電力の関係を示す図である。
【図16】100Vと200Vにおけるスイッチング損失を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
(第一実施形態)まず、本発明による画像形成装置について説明する。図1において、帯電部2a〜2dによって感光体1a〜1dが一様に帯電された後、画像信号に応じた露光が露光部3a〜3dによって行われる。これにより、感光体1a〜1d上に静電潜像が形成される。その後、現像部4a〜4dによってトナー像が現像され、4個の感光体1a〜1d上のトナー像は一次転写部53a〜53dによって中間転写ベルト51に多重転写される。中間転写ベルト51上のトナー像は、更に、二次転写部56及び57によって、記録材60に転写される。感光体1a〜1d上に残った転写残トナーはクリーナ6a〜6dにより回収される。同様に、中間転写ベルト51に残った転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ55によって回収される。記録材60上に転写されたトナー像は、本発明による誘導加熱装置の一部である定着器9によって定着され、カラー画像を得る。
【0015】
図2に示す定着器9は、導電性発熱体の表面をゴム層で覆ったベルト92を有している。ベルト92の導電性発熱体の厚さは、例えば、45μmであり、表面のゴム層の厚さは、例えば、300μmである。また、ベルト92は、駆動ローラ93と共に、ニップ部94を形成し、ベルト92は、ニップ部94を介して伝わる駆動ローラ93の回転により、図中の矢印の方向に回転する。また、ベルト92に対向して、磁束発生部であるコイル91がコイルホルダ90内に配置されている。コイル91に交流電流を流して磁束を発生させることにより、ベルト92は、渦電流により自己発熱する。また、ベルト92の導電性発熱体の内側には、例えば、サーミスタといった温度センサ95が設けられており、ベルト92の温度を検出している。
【0016】
続いて、本発明による誘導加熱装置について説明する。図3に示す様に、定着器9に電力を供給する電源部100は、商用電源500に接続されている。商用電源500は、ダイオードブリッジ101及びフィルタコンデンサ102で直流に変換される。電圧検出部111及び電流検出部110は、それぞれ商用電源500から供給される入力電圧及び入力電流を検出し、その検出値を制御回路113へ出力する。また、温度検出回路114は、温度センサ95が出力する電圧に基づき、定着器9のベルト92の温度を判定して制御回路113に出力する。制御回路113は、入力電圧、入力電流及び定着器9のベルト92の温度に基づき、駆動回路112にパルス信号121及び122を生成させ、スイッチング素子103及び104を交互にオン/オフする。これにより、コイル91に高周波の出力電流を供給する。なお、磁束発生部である共振コンデンサ105は、コイル91と共に共振回路を構成している。コイル91に高周波電流を流すと、コイル91が発生する交流磁界により渦電流が誘導されてジュール熱が発生し、ベルト92は加熱される。
【0017】
続いて、図4を用いて、制御回路113による電力制御処理を説明する。制御回路113は、画像形成が開始されると、S1において、電圧検出部111が検出する入力電圧から制御モードを決定し、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminに各モードに対して予め定められた値を設定する。例えば、制御回路113は、検出した電圧が閾値未満であるとモードAとし、検出した電圧が閾値以上であるとモードBとする。閾値には、例えば、175Vを使用する。なお、パルス幅とは、図8のtrで示す様に、立ち上がりから次の立下りまでの期間、又は、立下りから次の立ち上がりまでの期間を意味する。
【0018】
本実施形態においては、図5に示す様に、モードAの場合のtmaxには、共振コンデンサ105及びコイル91の共振回路の共振周波数frに対応するパルス幅trを設定する。また、モードAのtminには、出力電力の制御範囲を考慮して図14のカーブから求めた適切な値tpを設定する。なお、tpはtrより小さい値である。また、モードBの場合のtmaxには、nを自然数として、モードAのtmaxの2n+1倍の値を設定する。さらに、モードBの場合のtminには、モードAのtmaxの2n倍の値を設定する。つまり、本実施形態においては、モードBの場合、共振周波数frより低い領域を使用して制御を行う。なお、その理由については後述する。
【0019】
続いて、制御回路113は、図4のS2において、検出電力が電力の目標値(第1の目標値)と等しいか否かを判定する。なお、検出電力は、電圧検出部111及び電流検出部110が検出する入力電圧及び入力電流により求める。検出電力が目標値と等しくなければ、制御回路113は、S3において、検出電力が目標値より大きいか否かを判定する。検出電力が目標値より大きければ、制御回路113は、S4において、パルス信号のパルス幅を予め制御回路113に設定された値taだけ減少させる。ただし、減少させることでパルス幅が最小値tminより小さくなる場合には、パルス幅を最小値tminとする。一方、S4において、検出電力が目標値より小さければ、制御回路113は、S5において、パルス信号のパルス幅を予め制御回路113に設定された値tbだけ増加させる。ただし、増加させることでパルス幅が最大値tmaxより大きくなる場合には、パルス幅を最大値tmaxとする。また、S2において、検出電力が目標値と等しければ、制御回路113は、パルス幅を変更しない。
【0020】
なお、目標電力と検出電力とを比較する電力制御処理ではなく、温度制御処理の場合、図4のS2において、電力の代わりに、温度センサ95の検出温度と、制御回路113に予め設定した温度の目標値(第2の目標値)を比較する。そして、検出温度が目標値より高い場合には、図4のS4と同じくパルス信号のパルス幅をtaだけ減少させ、低い場合には、図4のS5と同じくパルス信号のパルス幅をtbだけ増加させる。なお、パルス幅を最大値tmaxと最小値tminの間で制御することも同じである。
【0021】
本実施形態においては、図6に示す様に、モードA、つまり、商用電源電圧が100Vである場合には、周波数fr以上、かつ、fp以下の領域で制御を行う。なお、fpはパルス幅tpに対応する周波数である。しかし、モードB、つまり、商用電源電圧が200Vである場合には、共振周波数を2n+1(nは自然数)で除した周波数で生じる出力電力のピーク値から、共振周波数を2nで除した周波数の範囲で制御を行う。以下に、n=1の場合を例にしてその理由を説明する。図9(a)は、モードBにおいて、パルス幅が最大値3trに設定されているときのパルス信号121及び122とコイル91への出力電流ILの波形を示している。また、図9(b)は、モードBにおいて、パルス幅が最小値2trに設定されているときのパルス信号121及び122とコイル91への出力電流ILの波形を示している。なお、出力電流ILは、図3のスイッチング素子103のエミッタとスイッチング素子104のコレクタとの接続点からコイル91に向けて電流が流れている状態を正の値としている。
【0022】
図9(a)において、パルス信号122のオフからオンへの変化は、出力電流ILが正の値から0となったときに発生している。また、図9(b)において、パルス信号122のオフからオンへの変化は、出力電流ILが負の値から0となったときに発生している。つまり、本実施形態においては、パルス信号122のオフからオンの変化は、図9の区間Sで示す、出力電流ILが正のときに発生している。なお、パルス幅をtrより大きく2tr未満の間で設定すると、パルス信号122のオフからオンへの変化は、図9の区間Rで示す、出力電流ILが負のときに発生することになる。
【0023】
パルス信号122がオフで、出力電流ILが負の値の場合、出力電流ILは、図3のスイッチング素子103のコレクタとエミッタを接続するダイオードを経由する様に流れる。この状態で、パルス信号122をオフからオンにすると、スイッチング素子104に急激に電流が流れることによるスイッチング損失が発生する。このスイッチング損失は、出力電流ILが正のときに、パルス信号122をオフからオンに変化させるときに発生する損失より大きい。したがって、本実施形態では、スイッチング損失を抑えるため、共振周波数の(1/(2n+1))倍から(1/(2n))倍(nは自然数)の範囲で制御を行う。
【0024】
なお、パルス幅を共振周波数frに対応するパルス幅trより小さくすると、図9の区間Qにおいて、パルス信号122がオフからオンに変化する。一方、上述した様に、本実施形態においては、図9の区間Sにおいて、パルス信号122がオフからオンに変化する。図9に示す様に、区間Sにおける振幅は、区間Qより減衰している。つまり、本実施形態においては、スイッチング時のコイル91への出力電流ILは、図15の周波数fbで制御するときと比較して小さくなり、よって、スイッチング損失は低くなる。なお、出力電力のピーク値は、nが大きくなるほど小さくなるため、n=1、つまり、共振周波数の1/3倍から1/2倍の範囲で制御を行うことが好ましい。
【0025】
図8は、モードAにおいて、パルス幅が最大値trに設定されているときのパルス信号121及び122とコイル91への出力電流ILの波形を示している。図8に示す様に、共振周波数に対応するパルス幅では、スイッチング時(オン時、オフ時)の出力電流ILはほぼ零であり、スイッチング損失は大変低い。図7は、本実施形態で説明した各電圧での制御範囲をパルス信号のパルス幅で示すものである。
【0026】
本実施形態においては、入力電圧が100Vといった低電圧である場合には、共振周波数以上の範囲で制御を行う。一方、入力電圧が200Vといった高電圧である場合には、大電流のタイミングでのスイッチングを防ぐため、共振周波数より低く、かつ、周波数が増加するにつれて出力電力が減少する領域にて出力電流の制御を行う。これにより、スイッチング損失を低減することができる。
【0027】
(第二実施形態)本実施形態においては、第一実施形態と同じモードAとモードBに加え、共振周波数の1/(2n+3)〜1/(2n+2)の周波数で動作するモードCを使用する。具体的には、閾値を175Vとすると、入力電圧が175V未満の場合には、モードA及びモードBを使用し、入力電圧が175V以上の場合には、モードB及びモードCを使用する。よって、n=1とすると、入力電圧が175V未満のときは、図10に示す様に、共振周波数に対するパルス幅以下と、共振周波数に対するパルス幅の2倍〜3倍が動作範囲となる。また、入力電圧が175V以上のときは、図11に示す様に、共振周波数に対するパルス幅の2倍〜3倍と、4倍〜5倍が動作範囲となる。つまり、n=1の場合、周波数で述べると、入力電圧が175V未満の場合には、共振周波数以上と共振周波数の1/2倍〜1/3倍が動作範囲となり、入力電圧が175V以上の場合には、共振周波数の1/2倍〜1/3倍と1/4倍〜1/5倍が動作範囲となる。本実施形態は、出力電力のピーク値から周波数が高くなるにつれて出力電力が低下する2つの領域を使用して制御を行うものである。なお、出力電力のピーク値は、nが大きくなるほど小さくなるため、n=1とすることが好ましい。また、3つ以上の領域を使用する形態であっても良い。
【0028】
続いて、制御回路113が行う電力制御処理を説明する。なお、以下の説明においてはn=1とする。まず、制御回路113は、電圧検出部111が検出する入力電圧によりモードA及びモードBを使用するのか、モードB及びモードCを使用するのかを判定する。例えば、制御回路113は、検出した電圧が175V未満であるとモードA及びBを使用すると判定し、検出した電圧が175V以上であるとモードB及びCを使用すると判定する。しかしながら、判定に使用する閾値は任意である。
【0029】
図12は、入力電圧からモードA及びBを使用すると判定した場合における、制御回路113が行う電力制御処理を示している。制御回路113は、図12のS11において、現在のモードをモードBとし、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminをモードBの値に設定する。つまり、tmaxには3trを、tminには2trを設定する。なお、S11において設定するモードはモードAであっても良い。続いて、S12において、制御回路113は、検出電力が目標値(第1の目標値)に等しいか否かを判定し、等しくない場合、さらに、S13において検出電力が目標値より高いか否かを判定する。
【0030】
検出電力が目標値より高い場合、制御回路113は、S14において、パルス幅をtaだけ減少させても、tmin以上であるか否かを判定する。tmin以上であれば、制御回路113は、S15において、パルス幅をtaだけ減少させる。一方、S14において、tmin未満となる場合、制御回路113は、S16において、現在のモードを判定する。現在のモードがモードBである場合、制御回路113は、S17においてパルス幅をtminに設定する。一方、現在のモードがモードAである場合には、制御回路113は、S18において、モードBに変更する。つまり、制御回路113は、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminをモードBの値に設定する。また、出力電流のパルス幅を、モードBの動作範囲内の予め定めた値に設定する。
【0031】
一方、S13において、検出電力が目標値より低い場合、制御回路113は、S19において、パルス幅をtbだけ増加させても、tmax以下であるか否かを判定する。tmax以下であれば、制御回路113は、S20において、パルス幅をtbだけ増加させる。一方、S19において、tmaxより大きくなる場合、制御回路113は、S21において、現在のモードを判定する。現在のモードがモードAである場合、制御回路113は、S22においてパルス幅をtmaxに設定する。一方、現在のモードがモードBである場合には、制御回路113は、S23において、モードAに変更する。つまり、制御回路113は、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminをモードAの値に設定する。また、出力電流のパルス幅を、モードAの動作範囲内の予め定めた値に設定する。
【0032】
なお、入力電圧によりモードB及びモードCを使用すると判定した場合は、図12のモードAをモードBと、図12のモードBをモードCと読み替えるのみで、処理内容は同じである。また、温度センサ95が検出した温度により制御する場合には、S12及びS13の検出電力を検出温度に読み替えればよい。
【0033】
本実施形態においては、コイル91への出力電力の複数のピーク値から高周波側の領域を、出力電力の制御に利用することで、出力電力の範囲を拡大することができ、よって、より適切に制御を行うことが可能になる。
【0034】
以上、入力電圧が閾値以上である場合、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数を、コイル91及び共振コンデンサ105を含む磁束発生部の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲で制御する。これにより、大電流のタイミングでスイッチングすることを防ぎ、スイッチング損失を低減することができる。また、例えば、n=1及び2といった複数のnの値を使用することにより、出力電力の制御範囲を大きくすることができ、よって、より適切な制御を行うことが可能になる。なお、出力電力の制御のためには、入力電力又はベルト92の温度を利用することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置に関する。より具体的には、画像形成装置において、トナー像を定着させる定着器を加熱するための誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、記録材に転写したトナー像を定着させるための定着器を備えている。従来、定着器には、セラミックヒーター等による加熱装置が多く用いられていたが、近年、電磁誘導を利用した誘導加熱装置が用いられるようになっている。特許文献1に記載されている様に、誘導加熱装置は、スイッチング素子により商用電源から生成した交流電流をコイルに供給するものであり、スイッチング素子を駆動する周波数を変化させることでコイルに供給する電力の制御を行っている。
【0003】
ここで、図13に示す様に、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数fとコイルへの供給電力Pの関係は、コイル及び共振コンデンサを含む共振回路の共振周波数frで最大電力Pmaxを示すカーブを描く。例えば、周波数fr以上の領域において、パルス信号の周波数を制御することによって電力制御が可能となる。
【0004】
また、図14に示す様に、スイッチング素子を駆動するパルス信号のパルス幅t(=1/(2f))とコイルへの供給電力Pの関係は、共振周波数frに対応するパルス幅trで最大電力Pmaxを示すカーブを描く。例えば、パルス幅tr以下の領域において、パルス信号を制御することによって電力制御が可能となる。
【0005】
電力制御の簡易な方法は、目標電力と検出電力を比較し、検出電力の方が大きい場合には周波数を上げ、検出電力の方が小さい場合には周波数を下げ、等しい場合には周波数を変化させないというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−223253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力Poをコイルに供給する場合、図15に示す様に、商用電源電圧が100Vの場合にはスイッチング素子の駆動周波数をfaに、商用電源電圧が200Vの場合には駆動周波数をfbにする必要がある。つまり、200Vの場合には、100Vの場合よりも高周波側で制御することになる。このときのスイッチング素子のコレクタエミッタ電圧と、コレクタ電流の関係を図16に示す。なお、図16(a)が100Vの場合を、(b)が200Vの場合を示し、点線がコレクタ電流である。ここで、図16の斜線で示す、コレクタエミッタ電圧とコレクタ電流が重なっている領域がスイッチング損失である。なお、コレクタ電流は、コイル91に供給される電流であり、スイッチンング素子の駆動周波数に拘わらず、共振周波数に等しい正弦波の形状となる様に増減する。100Vの場合には、共振周波数fr付近で制御を行うため、図16(a)に示す様に、コレクタ電流が共振周波数に従い増減し、その値が比較的低くなった時にスイッチング素子の切り替えが発生する。これに対して、200Vの場合には、共振周波数frより高周波側で制御を行う必要がある。つまり、共振周波数より短い間隔でスイッチングを行う必要がある。このため、図16(b)に示す様に、コレクタ電流が共振周波数に従い増加しているときといった、その値が比較的大きいときにスイッチングが発生する。したがって、200Vの場合には、100Vの場合と比較してスイッチング損失が大きくなる。
【0008】
本発明は、入力電圧に拘わらず、スイッチング損失を抑えることができる誘導加熱装置を提供することを目的とする。また、入力電圧に拘わらず、スイッチング損失を抑えることができる誘導加熱装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における誘導加熱装置によれば、磁束発生手段が発生する磁束により発熱体を発熱させる誘導加熱装置であって、スイッチング素子を含み、磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、パルス信号の周波数を制御する制御手段とを備えており、制御手段は、入力電圧が閾値以上であると、パルス信号の周波数を、磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲、ここでnは自然数、で制御することを特徴とする。
【0010】
本発明による画像形成装置によれば、記録材に形成したトナー像を定着させる定着手段と、定着手段の発熱体を発熱させる誘導加熱装置とを備えている画像形成装置であって、誘導加熱装置は、発熱体を発熱させるための磁束を発生する磁束発生手段と、スイッチング素子を含み、磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、パルス信号の周波数を制御する制御手段とを備えており、制御手段は、入力電圧が閾値以上であると、パルス信号の周波数を、磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誘導加熱装置は、入力電圧が閾値以上である場合には、共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲でパルス信号の周波数の制御を行う。これにより、出力電流が大きいときにスイッチングすることを防ぎ、よって、スイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による画像形成装置の構成図である。
【図2】本発明による画像形成装置の定着器を示す図である。
【図3】本発明による誘導加熱装置の機能ブロック図である。
【図4】第一実施形態のフローチャートである。
【図5】パルス幅の設定を示す図である。
【図6】共振周波数以下の範囲を含む、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数と出力電力の関係を示す図である。
【図7】各モードでの動作範囲を示す図である。
【図8】モードAにおけるパルス信号とコイルへの出力電流波形を示す図である。
【図9】モードBにおけるパルス信号とコイルへの出力電流波形を示す図である。
【図10】第二実施形態において電圧が閾値未満の場合の動作範囲を示す図である。
【図11】第二実施形態において電圧が閾値以上の場合の動作範囲を示す図である。
【図12】第二実施形態のフローチャートである。
【図13】スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数と出力電力の関係を示す図である。
【図14】スイッチング素子を駆動するパルス信号のパルス幅と出力電力の関係を示す図である。
【図15】100Vと200Vにおける、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数と出力電力の関係を示す図である。
【図16】100Vと200Vにおけるスイッチング損失を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
(第一実施形態)まず、本発明による画像形成装置について説明する。図1において、帯電部2a〜2dによって感光体1a〜1dが一様に帯電された後、画像信号に応じた露光が露光部3a〜3dによって行われる。これにより、感光体1a〜1d上に静電潜像が形成される。その後、現像部4a〜4dによってトナー像が現像され、4個の感光体1a〜1d上のトナー像は一次転写部53a〜53dによって中間転写ベルト51に多重転写される。中間転写ベルト51上のトナー像は、更に、二次転写部56及び57によって、記録材60に転写される。感光体1a〜1d上に残った転写残トナーはクリーナ6a〜6dにより回収される。同様に、中間転写ベルト51に残った転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ55によって回収される。記録材60上に転写されたトナー像は、本発明による誘導加熱装置の一部である定着器9によって定着され、カラー画像を得る。
【0015】
図2に示す定着器9は、導電性発熱体の表面をゴム層で覆ったベルト92を有している。ベルト92の導電性発熱体の厚さは、例えば、45μmであり、表面のゴム層の厚さは、例えば、300μmである。また、ベルト92は、駆動ローラ93と共に、ニップ部94を形成し、ベルト92は、ニップ部94を介して伝わる駆動ローラ93の回転により、図中の矢印の方向に回転する。また、ベルト92に対向して、磁束発生部であるコイル91がコイルホルダ90内に配置されている。コイル91に交流電流を流して磁束を発生させることにより、ベルト92は、渦電流により自己発熱する。また、ベルト92の導電性発熱体の内側には、例えば、サーミスタといった温度センサ95が設けられており、ベルト92の温度を検出している。
【0016】
続いて、本発明による誘導加熱装置について説明する。図3に示す様に、定着器9に電力を供給する電源部100は、商用電源500に接続されている。商用電源500は、ダイオードブリッジ101及びフィルタコンデンサ102で直流に変換される。電圧検出部111及び電流検出部110は、それぞれ商用電源500から供給される入力電圧及び入力電流を検出し、その検出値を制御回路113へ出力する。また、温度検出回路114は、温度センサ95が出力する電圧に基づき、定着器9のベルト92の温度を判定して制御回路113に出力する。制御回路113は、入力電圧、入力電流及び定着器9のベルト92の温度に基づき、駆動回路112にパルス信号121及び122を生成させ、スイッチング素子103及び104を交互にオン/オフする。これにより、コイル91に高周波の出力電流を供給する。なお、磁束発生部である共振コンデンサ105は、コイル91と共に共振回路を構成している。コイル91に高周波電流を流すと、コイル91が発生する交流磁界により渦電流が誘導されてジュール熱が発生し、ベルト92は加熱される。
【0017】
続いて、図4を用いて、制御回路113による電力制御処理を説明する。制御回路113は、画像形成が開始されると、S1において、電圧検出部111が検出する入力電圧から制御モードを決定し、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminに各モードに対して予め定められた値を設定する。例えば、制御回路113は、検出した電圧が閾値未満であるとモードAとし、検出した電圧が閾値以上であるとモードBとする。閾値には、例えば、175Vを使用する。なお、パルス幅とは、図8のtrで示す様に、立ち上がりから次の立下りまでの期間、又は、立下りから次の立ち上がりまでの期間を意味する。
【0018】
本実施形態においては、図5に示す様に、モードAの場合のtmaxには、共振コンデンサ105及びコイル91の共振回路の共振周波数frに対応するパルス幅trを設定する。また、モードAのtminには、出力電力の制御範囲を考慮して図14のカーブから求めた適切な値tpを設定する。なお、tpはtrより小さい値である。また、モードBの場合のtmaxには、nを自然数として、モードAのtmaxの2n+1倍の値を設定する。さらに、モードBの場合のtminには、モードAのtmaxの2n倍の値を設定する。つまり、本実施形態においては、モードBの場合、共振周波数frより低い領域を使用して制御を行う。なお、その理由については後述する。
【0019】
続いて、制御回路113は、図4のS2において、検出電力が電力の目標値(第1の目標値)と等しいか否かを判定する。なお、検出電力は、電圧検出部111及び電流検出部110が検出する入力電圧及び入力電流により求める。検出電力が目標値と等しくなければ、制御回路113は、S3において、検出電力が目標値より大きいか否かを判定する。検出電力が目標値より大きければ、制御回路113は、S4において、パルス信号のパルス幅を予め制御回路113に設定された値taだけ減少させる。ただし、減少させることでパルス幅が最小値tminより小さくなる場合には、パルス幅を最小値tminとする。一方、S4において、検出電力が目標値より小さければ、制御回路113は、S5において、パルス信号のパルス幅を予め制御回路113に設定された値tbだけ増加させる。ただし、増加させることでパルス幅が最大値tmaxより大きくなる場合には、パルス幅を最大値tmaxとする。また、S2において、検出電力が目標値と等しければ、制御回路113は、パルス幅を変更しない。
【0020】
なお、目標電力と検出電力とを比較する電力制御処理ではなく、温度制御処理の場合、図4のS2において、電力の代わりに、温度センサ95の検出温度と、制御回路113に予め設定した温度の目標値(第2の目標値)を比較する。そして、検出温度が目標値より高い場合には、図4のS4と同じくパルス信号のパルス幅をtaだけ減少させ、低い場合には、図4のS5と同じくパルス信号のパルス幅をtbだけ増加させる。なお、パルス幅を最大値tmaxと最小値tminの間で制御することも同じである。
【0021】
本実施形態においては、図6に示す様に、モードA、つまり、商用電源電圧が100Vである場合には、周波数fr以上、かつ、fp以下の領域で制御を行う。なお、fpはパルス幅tpに対応する周波数である。しかし、モードB、つまり、商用電源電圧が200Vである場合には、共振周波数を2n+1(nは自然数)で除した周波数で生じる出力電力のピーク値から、共振周波数を2nで除した周波数の範囲で制御を行う。以下に、n=1の場合を例にしてその理由を説明する。図9(a)は、モードBにおいて、パルス幅が最大値3trに設定されているときのパルス信号121及び122とコイル91への出力電流ILの波形を示している。また、図9(b)は、モードBにおいて、パルス幅が最小値2trに設定されているときのパルス信号121及び122とコイル91への出力電流ILの波形を示している。なお、出力電流ILは、図3のスイッチング素子103のエミッタとスイッチング素子104のコレクタとの接続点からコイル91に向けて電流が流れている状態を正の値としている。
【0022】
図9(a)において、パルス信号122のオフからオンへの変化は、出力電流ILが正の値から0となったときに発生している。また、図9(b)において、パルス信号122のオフからオンへの変化は、出力電流ILが負の値から0となったときに発生している。つまり、本実施形態においては、パルス信号122のオフからオンの変化は、図9の区間Sで示す、出力電流ILが正のときに発生している。なお、パルス幅をtrより大きく2tr未満の間で設定すると、パルス信号122のオフからオンへの変化は、図9の区間Rで示す、出力電流ILが負のときに発生することになる。
【0023】
パルス信号122がオフで、出力電流ILが負の値の場合、出力電流ILは、図3のスイッチング素子103のコレクタとエミッタを接続するダイオードを経由する様に流れる。この状態で、パルス信号122をオフからオンにすると、スイッチング素子104に急激に電流が流れることによるスイッチング損失が発生する。このスイッチング損失は、出力電流ILが正のときに、パルス信号122をオフからオンに変化させるときに発生する損失より大きい。したがって、本実施形態では、スイッチング損失を抑えるため、共振周波数の(1/(2n+1))倍から(1/(2n))倍(nは自然数)の範囲で制御を行う。
【0024】
なお、パルス幅を共振周波数frに対応するパルス幅trより小さくすると、図9の区間Qにおいて、パルス信号122がオフからオンに変化する。一方、上述した様に、本実施形態においては、図9の区間Sにおいて、パルス信号122がオフからオンに変化する。図9に示す様に、区間Sにおける振幅は、区間Qより減衰している。つまり、本実施形態においては、スイッチング時のコイル91への出力電流ILは、図15の周波数fbで制御するときと比較して小さくなり、よって、スイッチング損失は低くなる。なお、出力電力のピーク値は、nが大きくなるほど小さくなるため、n=1、つまり、共振周波数の1/3倍から1/2倍の範囲で制御を行うことが好ましい。
【0025】
図8は、モードAにおいて、パルス幅が最大値trに設定されているときのパルス信号121及び122とコイル91への出力電流ILの波形を示している。図8に示す様に、共振周波数に対応するパルス幅では、スイッチング時(オン時、オフ時)の出力電流ILはほぼ零であり、スイッチング損失は大変低い。図7は、本実施形態で説明した各電圧での制御範囲をパルス信号のパルス幅で示すものである。
【0026】
本実施形態においては、入力電圧が100Vといった低電圧である場合には、共振周波数以上の範囲で制御を行う。一方、入力電圧が200Vといった高電圧である場合には、大電流のタイミングでのスイッチングを防ぐため、共振周波数より低く、かつ、周波数が増加するにつれて出力電力が減少する領域にて出力電流の制御を行う。これにより、スイッチング損失を低減することができる。
【0027】
(第二実施形態)本実施形態においては、第一実施形態と同じモードAとモードBに加え、共振周波数の1/(2n+3)〜1/(2n+2)の周波数で動作するモードCを使用する。具体的には、閾値を175Vとすると、入力電圧が175V未満の場合には、モードA及びモードBを使用し、入力電圧が175V以上の場合には、モードB及びモードCを使用する。よって、n=1とすると、入力電圧が175V未満のときは、図10に示す様に、共振周波数に対するパルス幅以下と、共振周波数に対するパルス幅の2倍〜3倍が動作範囲となる。また、入力電圧が175V以上のときは、図11に示す様に、共振周波数に対するパルス幅の2倍〜3倍と、4倍〜5倍が動作範囲となる。つまり、n=1の場合、周波数で述べると、入力電圧が175V未満の場合には、共振周波数以上と共振周波数の1/2倍〜1/3倍が動作範囲となり、入力電圧が175V以上の場合には、共振周波数の1/2倍〜1/3倍と1/4倍〜1/5倍が動作範囲となる。本実施形態は、出力電力のピーク値から周波数が高くなるにつれて出力電力が低下する2つの領域を使用して制御を行うものである。なお、出力電力のピーク値は、nが大きくなるほど小さくなるため、n=1とすることが好ましい。また、3つ以上の領域を使用する形態であっても良い。
【0028】
続いて、制御回路113が行う電力制御処理を説明する。なお、以下の説明においてはn=1とする。まず、制御回路113は、電圧検出部111が検出する入力電圧によりモードA及びモードBを使用するのか、モードB及びモードCを使用するのかを判定する。例えば、制御回路113は、検出した電圧が175V未満であるとモードA及びBを使用すると判定し、検出した電圧が175V以上であるとモードB及びCを使用すると判定する。しかしながら、判定に使用する閾値は任意である。
【0029】
図12は、入力電圧からモードA及びBを使用すると判定した場合における、制御回路113が行う電力制御処理を示している。制御回路113は、図12のS11において、現在のモードをモードBとし、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminをモードBの値に設定する。つまり、tmaxには3trを、tminには2trを設定する。なお、S11において設定するモードはモードAであっても良い。続いて、S12において、制御回路113は、検出電力が目標値(第1の目標値)に等しいか否かを判定し、等しくない場合、さらに、S13において検出電力が目標値より高いか否かを判定する。
【0030】
検出電力が目標値より高い場合、制御回路113は、S14において、パルス幅をtaだけ減少させても、tmin以上であるか否かを判定する。tmin以上であれば、制御回路113は、S15において、パルス幅をtaだけ減少させる。一方、S14において、tmin未満となる場合、制御回路113は、S16において、現在のモードを判定する。現在のモードがモードBである場合、制御回路113は、S17においてパルス幅をtminに設定する。一方、現在のモードがモードAである場合には、制御回路113は、S18において、モードBに変更する。つまり、制御回路113は、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminをモードBの値に設定する。また、出力電流のパルス幅を、モードBの動作範囲内の予め定めた値に設定する。
【0031】
一方、S13において、検出電力が目標値より低い場合、制御回路113は、S19において、パルス幅をtbだけ増加させても、tmax以下であるか否かを判定する。tmax以下であれば、制御回路113は、S20において、パルス幅をtbだけ増加させる。一方、S19において、tmaxより大きくなる場合、制御回路113は、S21において、現在のモードを判定する。現在のモードがモードAである場合、制御回路113は、S22においてパルス幅をtmaxに設定する。一方、現在のモードがモードBである場合には、制御回路113は、S23において、モードAに変更する。つまり、制御回路113は、パルス幅の最大値tmaxと最小値tminをモードAの値に設定する。また、出力電流のパルス幅を、モードAの動作範囲内の予め定めた値に設定する。
【0032】
なお、入力電圧によりモードB及びモードCを使用すると判定した場合は、図12のモードAをモードBと、図12のモードBをモードCと読み替えるのみで、処理内容は同じである。また、温度センサ95が検出した温度により制御する場合には、S12及びS13の検出電力を検出温度に読み替えればよい。
【0033】
本実施形態においては、コイル91への出力電力の複数のピーク値から高周波側の領域を、出力電力の制御に利用することで、出力電力の範囲を拡大することができ、よって、より適切に制御を行うことが可能になる。
【0034】
以上、入力電圧が閾値以上である場合、スイッチング素子を駆動するパルス信号の周波数を、コイル91及び共振コンデンサ105を含む磁束発生部の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲で制御する。これにより、大電流のタイミングでスイッチングすることを防ぎ、スイッチング損失を低減することができる。また、例えば、n=1及び2といった複数のnの値を使用することにより、出力電力の制御範囲を大きくすることができ、よって、より適切な制御を行うことが可能になる。なお、出力電力の制御のためには、入力電力又はベルト92の温度を利用することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束発生手段が発生する磁束により発熱体を発熱させる誘導加熱装置であって、
スイッチング素子を含み、前記磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、
前記スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、
前記電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記パルス信号の周波数を制御する制御手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値以上であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値未満であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数以上の範囲で制御することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値以上であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数の1/2から1/3及び1/4から1/5の範囲で制御し、前記入力電圧が閾値未満であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数以上及び前記共振周波数の1/2から1/3の範囲で制御することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記電源手段への入力電流を検出する電流検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記入力電圧と前記入力電流から求めた前記電源手段への入力電力が第1の目標値となる様に前記パルス信号の周波数を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記発熱体の温度を検出する温度検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記温度が第2の目標値となる様に前記パルス信号の周波数を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
記録材に形成したトナー像を定着させる定着手段と、
前記定着手段の発熱体を発熱させる誘導加熱装置と、
を備えている画像形成装置であって、
前記誘導加熱装置は、
前記発熱体を発熱させるための磁束を発生する磁束発生手段と、
スイッチング素子を含み、前記磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、
前記スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、
前記電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記パルス信号の周波数を制御する制御手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値以上であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
磁束発生手段が発生する磁束により発熱体を発熱させる誘導加熱装置であって、
スイッチング素子を含み、前記磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、
前記スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、
前記電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記パルス信号の周波数を制御する制御手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値以上であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値未満であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数以上の範囲で制御することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値以上であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数の1/2から1/3及び1/4から1/5の範囲で制御し、前記入力電圧が閾値未満であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数以上及び前記共振周波数の1/2から1/3の範囲で制御することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記電源手段への入力電流を検出する電流検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記入力電圧と前記入力電流から求めた前記電源手段への入力電力が第1の目標値となる様に前記パルス信号の周波数を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記発熱体の温度を検出する温度検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記温度が第2の目標値となる様に前記パルス信号の周波数を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
記録材に形成したトナー像を定着させる定着手段と、
前記定着手段の発熱体を発熱させる誘導加熱装置と、
を備えている画像形成装置であって、
前記誘導加熱装置は、
前記発熱体を発熱させるための磁束を発生する磁束発生手段と、
スイッチング素子を含み、前記磁束発生手段に電流を供給する電源手段と、
前記スイッチング素子を駆動するパルス信号を出力する駆動手段と、
前記電源手段への入力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記パルス信号の周波数を制御する制御手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記入力電圧が閾値以上であると、前記パルス信号の周波数を、前記磁束発生手段の共振周波数の1/(2n)から1/(2n+1)の範囲(nは自然数)で制御することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−138303(P2012−138303A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291124(P2010−291124)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]