誘導加熱調理器
【課題】被加熱物の位置を精度よく検知することのできる誘導加熱調理器を得る。
【解決手段】加熱口に対応して設けられた複数の温度センサ6と、複数の加熱コイルのそれぞれの上方に被加熱物が載置されているか否かを検知する載置位置検知部131と、複数の温度センサ6の検出値に基づいて、加熱口における被加熱物の載置位置を検知する載置位置検知部132と、載置位置検知部131の検知結果及び載置位置検知部132の検知結果に基づいて、複数の加熱コイルに供給する高周波電流を可変するよう駆動制御部12を制御する制御部13とを備えた。
【解決手段】加熱口に対応して設けられた複数の温度センサ6と、複数の加熱コイルのそれぞれの上方に被加熱物が載置されているか否かを検知する載置位置検知部131と、複数の温度センサ6の検出値に基づいて、加熱口における被加熱物の載置位置を検知する載置位置検知部132と、載置位置検知部131の検知結果及び載置位置検知部132の検知結果に基づいて、複数の加熱コイルに供給する高周波電流を可変するよう駆動制御部12を制御する制御部13とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器として、「平面状に捲回された中央コイルと、前記中央コイルの周辺に配設された複数の周辺コイルと、前記中央コイルおよび前記周辺コイルのそれぞれに独立して高周波電流を供給する複数の電源回路部と、被加熱体が前記中央コイルおよび前記各周辺コイルの上方に載置されている状態を検出する検知手段と、前記検知手段が検出する前記被加熱体の載置状態に応じて、前記中央コイルおよび前記周辺コイルのそれぞれに選択的に高周波電流が供給されるように前記電源回路部を制御する駆動制御部」を備えた」ものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、それぞれの加熱コイル(中央コイル、複数の周辺コイル)の上に鍋が載置されているか否かを検出するための構成として、「電流検出部63を用いて、中央コイル20および周辺コイル30a〜30dに流れる電流量を検出する」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/101202号公報(第3頁、第9頁、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の誘導加熱調理器は、様々な大きさや形容を有する鍋を使用でき、また、鍋が加熱口に対して例えば前後左右に寄った位置に載置された場合であっても効率よく加熱できるようにすることを目的としている。このような、使用する鍋の形、大きさや鍋配置の自由度を高めつつ効率よく加熱する、という特徴をさらに生かすためには、鍋の位置をより精度よく検知することが求められる。上記特許文献1においては、複数の加熱コイル(中央コイル、複数の周辺コイル)のインピーダンスの変化を検出して鍋等の被加熱物が載置されている加熱コイルを検知することが記載されているが、被加熱物の材質によっては誤判定が生じる可能性もある。このため、被加熱物の載置位置(鍋ずれ)をより精度よく検知することが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、被加熱物の位置を精度よく検知することのできる誘導加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る誘導加熱調理器は、被加熱物が載置される天板と、加熱口に対応して前記天板の下方に配置され、前記天板に載置された被加熱物を誘導加熱する加熱コイル群と、前記加熱コイル群を構成する複数の加熱コイルのそれぞれに、独立して高周波電流を供給する複数の駆動部と、前記加熱口に対応して設けられた複数の温度検知装置と、前記複数の加熱コイルのそれぞれの上方に前記被加熱物が載置されているか否かを検知する第一載置位置検知部と、前記複数の温度検知装置の検出値に基づいて、前記加熱口における前記被加熱物の載置位置を検知する第二載置位置検知部と、前記第一載置位置検知部の検知結果及び前記第二載置位置検知部の検知結果に基づいて、前記複数の加熱コイルに供給する高周波電流を可変するよう前記駆動部を制御する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、第一載置位置検知部によって各加熱コイル上に被加熱物が載置されているか否かを検知するとともに、第二載置位置検知部によって被加熱物の載置位置を検知するので、被加熱物の載置位置を精度よく検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す上面図である。
【図2】実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の主要部の機能ブロック図である。
【図4】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の被加熱物の載置位置(鍋ずれ)の判断処理を説明する図である。
【図8】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。
【図9】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の被加熱物の鍋反りの判断処理を説明する図である。
【図11】実施の形態3に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【図12】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態1では、厨房家具に形成された設置口に設置されるいわゆるビルトイン型の誘導加熱調理器に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0011】
(全体構成)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す上面図である。
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。なお、図1、図2及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0012】
図1、図2に示すように、誘導加熱調理器は、本体1と、本体1の上に設けられ、鍋などの被加熱物9が載置される天板2とを備える。この誘導加熱調理器は、3つの加熱口を備え、各加熱口に対応して、第一加熱部3a、第二加熱部3b、第三加熱部3cという加熱部を備えており、それぞれの加熱口に対して被加熱物9を載置して加熱することができるものである。本実施の形態1では、本体1の手前側に左右に並べて第一加熱部3aと第二加熱部3bが設けられ、本体1の奥側ほぼ中央に第三加熱部3cが設けられている。
【0013】
天板2は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の材料で構成されており、本体1の上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。天板2には、第一加熱部3a、第二加熱部3b及び第三加熱部3cの加熱範囲(加熱口)に対応して、鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布や印刷等により形成されている。
【0014】
本体1の手前側には、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cで被加熱物9を加熱する際の火力や調理メニューを設定するための入力装置として、操作部8a、操作部8b、及び操作部8c(以下、操作部8と総称する場合がある)が設けられている。また、操作部8の近傍には、誘導加熱調理器の動作状態や操作部8からの入力・操作内容等を表示する表示部7a、表示部7b、表示部7c(以下、表示部7と総称する場合がある)が設けられている。
【0015】
天板2の下方であって本体1の内部には、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cにそれぞれ対応した加熱手段を備えている。本実施の形態1では、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cの加熱手段は、複数の誘導加熱コイルで構成されている。なお、これらの加熱手段はいずれも同様の構成であるので、以降の説明では、第一加熱部3aの加熱手段(加熱コイル)を例に説明する。
【0016】
本体1の内部には、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cの加熱手段である加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路10と、駆動回路10を含め誘導加熱調理器全体の動作を制御するための各種制御回路が実装された回路部11が設けられている。
【0017】
本体1の上面後方には、本体1内部と連通し、本体1内部に冷却風を取り込むための吸気口17と、本体1内部に取り込んだ冷却風を排出するための排気口18とが設けられている。吸気口17から本体1内に吸引された空気は、本体1内部の駆動回路10や回路部11等の各種電気部品や加熱コイル等を冷却した後、排気口18から本体1の外部へと排気される。なお、本実施の形態1では天板2の後方に通気孔を形成する例を示しているが、通気孔の形成位置はこれに限定されるものではなく、例えば、天板2の後方には通気孔を設けず、本体1の前面及び背面に通気孔を形成してもよい。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の主要部の機能ブロック図である。
第一加熱部3aの加熱手段は、加熱口のほぼ中央に配置された中央コイル4と、中央コイル4の周辺に配置された複数の周辺コイル5とを備える。中央コイル4と周辺コイル5の形状及び配置の例については後述する。中央コイル4と周辺コイル5は、コイル支持台(図示せず)によって保持されている。
なお、以降の説明において、中央コイル4と周辺コイル5を、「加熱コイル」と総称する場合がある。
【0019】
温度センサ6(温度検知装置)は、接触式温度センサあるいは非接触式温度センサであり、天板2または天板2の上方に載置される被加熱物9の温度を検出するためのものである。温度センサ6が接触式温度センサである場合には、温度センサ6は、天板2の下面に接触するように配置され、天板2の温度を示す検知信号を出力する。温度センサ6が非接触式温度センサである場合には、温度センサ6は、天板2の上方に載置される被加熱物9からの熱放射を捉えることができるようにして天板2の下方に配置され、検知した熱放射量を示す検知信号を出力する。本実施の形態1では、第一加熱部3aに対して複数の温度センサ6が設けられており、以降の説明では、それぞれを温度センサ6a、6b・・・のように区別して表記する場合がある。温度センサ6の配置については後述する。
【0020】
駆動回路10は、インバータ回路により構成され、中央コイル4と周辺コイル5に高周波電流を供給する。駆動回路10は、中央コイル4と複数の周辺コイル5のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、第一加熱部3aの加熱手段を構成する各加熱コイルは、それぞれに対応した駆動回路10によって独立して駆動される。図3では、各加熱コイルに対応した駆動回路10を、駆動回路a、b、cのように区別して記載している。
【0021】
回路部11は、主要な機能部として、駆動制御部12と、制御部13と、負荷検知部14と、温度検出部15とを備える。制御部13は、負荷検知部14からの出力に基づいて被加熱物9の載置位置を判断する載置位置検知部131(第一載置位置検知部)と、温度センサ6の検出値等に基づいて被加熱物9の載置位置を判断する載置位置検知部132(第二載置位置検知部)とを有する。
【0022】
駆動制御部12は、駆動回路10の動作を制御して被加熱物9への投入電力(出力)を制御する。駆動制御部12は、複数の駆動回路10を、個々に制御できるように構成されており、各加熱コイルに対して任意の駆動条件で高周波電流を流すことができる。
【0023】
負荷検知部14は、中央コイル4及び周辺コイル5のそれぞれに流れる電流量を検出するための電流検出回路を備える。負荷検知部14によって検出された各加熱コイルに流れる電流量は、制御部13の載置位置検知部131に出力される。
【0024】
載置位置検知部131は、負荷検知部14が検出した各加熱コイルに流れる電流量に基づいて、各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出する。
一般に、加熱コイルのインピーダンスは、加熱コイルの上方に載置された被加熱物9の有無、大きさ(面積)、及び材質に依存して変化し、これに伴って駆動回路10を構成するインバータ回路に流れる電流量も変化する。そこで、載置位置検知部131は、負荷検知部14が検出した中央コイル4及び周辺コイル5に流れる電流量に基づいて、各加熱コイルのインピーダンス値を検出し、これによって各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を判別する。
【0025】
温度検出部15は、温度センサ6と電気的に接続されており、温度センサ6からの検知信号に基づいて、天板2の温度または天板2の上に載置された被加熱物9の温度を検出する。温度検出部15は、検出した温度情報を制御部13及び載置位置検知部132に出力する。
【0026】
載置位置検知部132は、温度検出部15を介して取得した複数の温度センサ6の検出温度に基づいて、加熱口に対する被加熱物9の載置位置を検出する。載置位置の検出処理については後述する。
【0027】
制御部13は、操作部8からの信号、負荷検知部14からの信号、温度センサ6の検出値、載置位置検知部131、及び載置位置検知部132の検出結果等に基づいて駆動制御部12を制御する。また、制御部13は、報知部16を制御して使用者に対する報知を行う他、誘導加熱調理器全体の動作を制御する。
【0028】
制御部13は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0029】
報知部16は、表示部7や、図示しないブザー、音声出力装置等により構成されている。なお、報知部16は、使用者に対して視覚的あるいは聴覚的に情報を報知できる装置であれば具体的構成は問わない。
【0030】
[加熱コイルと温度センサの配置]
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。第一加熱部3aの加熱コイルは、中央コイル4と、複数の周辺コイル5を備える。また、加熱コイルの巻き線同士の隙間には、複数の温度センサ6が設けられている。
【0031】
中央コイル4は、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線が円周方向に巻回されて構成され円形の平面形状を有する内側中央コイル4aと、内側中央コイル4aよりも径方向外側において導電線が円周方向に巻回されて構成され環状の平面形状を有する外側中央コイル4bとを有する。内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間には、環状の隙間が設けられている。内側中央コイル4aと外側中央コイル4bは、本実施の形態1では直列に接続されており、単一の駆動回路10(インバータ回路)で駆動される。なお、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとを並列接続してもよく、この場合は、それぞれ独立した駆動回路(インバータ回路)を用いて駆動することができる。
【0032】
周辺コイル5は、本実施の形態1では、中央コイル4の外周側に4つ(周辺コイル5a、5b、5c、5dと区別して称する場合がある)設けられている。周辺コイル5は、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線を、楕円の平面形状を成す環状に巻き回して構成されている。周辺コイル5aは中央コイル4の奥側(図4の紙面上側)に、周辺コイル5bは中央コイル4の左側に、周辺コイル5cは中央コイル4の手前側(図4の紙面下側)に、周辺コイル5dは中央コイル4の右側に、それぞれ、中央コイル4の外周との間に所定の隙間をおいて配置されている。なお、周辺コイル5の数や配置は、図示のものに限定されない。
各周辺コイル5は、それぞれ、駆動回路10で個別に駆動される。
【0033】
温度センサ6は、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間に設けられた環状の隙間と、中央コイル4と周辺コイル5との間に設けられた隙間と、内側中央コイル4aの中央の円形の隙間に、合計9つ(温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6iと区別して称する場合がある)配置されている。本実施の形態1では、温度センサ6a、6b、6c、6dは、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間に、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるよう配置されている。また、中央コイル4と周辺コイル5dとの間に温度センサ6eが、中央コイル4と周辺コイル5aとの間に温度センサ6fが、中央コイル4と周辺コイル5bとの間に温度センサ6gが、中央コイル4と周辺コイル5cとの間に温度センサ6hが配置されている。温度センサ6e、6f、6g、6hは、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるように配置されている。また、内側中央コイル4aの中央には、温度センサ6iが配置されている。本実施の形態1では、温度センサ6iは、第一加熱部3aの略中央位置に対応している。
【0034】
本実施の形態1のように、独立して駆動可能な中央コイル4とその周辺に配置された複数の周辺コイル5とによって一つの加熱口の加熱手段を構成した場合、各加熱コイル同士は、なるべく近くに配置するのが望ましい。加熱コイル同士が離れすぎていると、例えば大型の被加熱物9であれば加熱ムラが生じる可能性があり、例えば小型の被加熱物9であれば載置位置によっては十分に加熱されない可能性があるためである。
また、複数の温度センサ6のうち少なくとも1つ以上は、なるべく加熱コイルの近くに配置するのが好ましい。温度センサ6と加熱コイルとが離れすぎていると、温度検出位置と加熱位置とが離れすぎることとなり、被加熱物の温度を精度よく検出することができないためである。
【0035】
[加熱動作]
図5は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。図5では、被加熱物9の2パターンの載置位置を、それぞれ、符号X1、X2にて示している。図6は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。以下、適宜図5を参照しつつ、図6に沿って実施の形態1に係る誘導加熱調理器の動作を説明する。
【0036】
使用者が、天板2上に被加熱物9を載置し、操作部8により所望の火力で調理を行うよう火力を設定し、加熱開始のスイッチ等を押下すると、制御部13は、操作部8から火力設定に関する情報と加熱開始指示の信号を受ける(S1)。
【0037】
制御部13は、加熱開始指示の信号を受けると、各加熱コイルに微弱電流(鍋判定電流)が流れるように駆動制御部12を制御し、駆動回路10によって各加熱コイルに高周波電流を供給する(S2)。
【0038】
載置位置検知部131は、負荷検知部14により検知された各加熱コイルに流れる電流値に基づいて、それぞれの加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出する(S3)。なお、以降の説明において、上方に被加熱物9が載置された加熱コイルを「負荷あり加熱コイル」、上方に被加熱物9が載置されていない加熱コイルを「負荷なし加熱コイル」と称する場合がある。図5に示す例では、中央コイル4、周辺コイル5a、5dが負荷あり加熱コイルであり、周辺コイル5b、5cが負荷なし加熱コイルである。なお、図5では、負荷なし加熱コイルを白抜き表示している。
【0039】
加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出した制御部13は、中央コイル4の上に被加熱物9が載置されているか否か判断する(S4)。本実施の形態1では、中央コイル4の上に被加熱物9が載置されていることを、当該加熱口における駆動条件としている。本実施の形態1のように加熱口に対して中央コイル4の占める割合が大きい構成の場合、中央コイル4上に被加熱物9が載置されていないということは、加熱口に対して被加熱物9が載置されていない、あるいはスプーンやナイフなどの小物が載置されている等、加熱に適さない状態である可能性が高い。このため、本実施の形態1では、中央コイル4上に被加熱物9が載置されていることを、当該加熱口における駆動条件としており、中央コイル4の上に被加熱物9が載置されていない場合には(S4;No)、加熱停止とする(S16)。
【0040】
中央コイル4の上に被加熱物9が載置されている場合、すなわち駆動条件を満足している場合には(S4;Yes)、制御部13は、駆動するコイルとして負荷あり加熱コイル(中央コイル4、周辺コイル5a、5d)を選択する(S5)。
【0041】
次に、載置位置検知部132は、駆動中の加熱コイルに対応した温度センサ6を選択し、これらの検出値を参照する(S6)。
【0042】
ここで、駆動中の加熱コイルと各温度センサ6との対応付けについて説明する。
各加熱コイルと各温度センサ6とは、互いの配置関係に基づいて予め対応付けが定められている。対応付けは、ある加熱コイルが駆動中である場合に被加熱物9の温度をより検出しやすい温度センサ6が対応付けられるようにして定められている。基本的には、各加熱コイルの近傍に配置された温度センサ6が、当該加熱コイルに対して対応付けられる。この対応付けに関する情報は、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0043】
本実施の形態1では、中央コイル4が駆動中であれば温度センサ6a、6b、6c、6d、6iを参照するよう対応付けられている。また、中央コイル4と周辺コイル5aが駆動中であれば、温度センサ6a、6b、6c、6d、6iに加え、中央コイル4と周辺コイル5aに挟まれた位置に配置された温度センサ6fを参照するよう対応付けられている。同様にして、中央コイル4と周辺コイル5bが駆動中であれば温度センサ6g、中央コイル4と周辺コイル5cが駆動中であれば温度センサ6g、中央コイル4と周辺コイル5dが駆動中であれば温度センサ6eを、温度センサ6a、6b、6c、6d、6iに加えて参照するよう、対応付けられている。なお、本実施の形態1では、同時に駆動される加熱コイルの組み合わせが複数存在するが、いずれの組み合わせで加熱コイルが駆動されている場合でも、2つ以上の温度センサ6の検出値を参照できるよう、対応付けが行われる。
【0044】
したがって、ステップS6において、図5に示す例では、中央コイル4と周辺コイル5a、5dが駆動中であるので、温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6iの検出値が参照される。なお、図5では、参照されない温度センサ6g、6hを白抜き表示している。
また、例えば、図5では図示しないが、すべての加熱コイル上に被加熱物9が載置されている場合には、すべての加熱コイルが駆動され、すべての温度センサ6の検出値が参照される。
【0045】
次に、制御部13は、ステップS5で選択した負荷あり加熱コイルに対しては高周波電流を供給し、負荷なし加熱コイルに対しては高周波電流を抑制あるいは供給しないよう、駆動制御部12を制御する(S7)。このとき、制御部13は、操作部8にて設定された火力が得られるように、駆動制御部12を介して駆動回路10を制御する。上方に被加熱物9が載置された加熱コイルを主に駆動することで、小型の鍋や、楕円形の鍋、角形の鍋など円形以外の被加熱物9であっても、効率よく加熱することができる。この加熱制御においては、制御部13は、温度センサ6の検出温度に基づいて被加熱物9の温度を判断し、操作部8にて設定された加熱状態となるように駆動制御部12を制御する。
【0046】
次に、載置位置検知部132は、ステップS6で参照した温度センサ6の検出値のうち、最大値Tmaxと最小値Tminを取得する(S8)。そして、載置位置検知部132は、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値A(例えば、50℃)を超えたか否かを判定することにより、被加熱物の載置位置(鍋ずれ)の判断を行う(S9)。
【0047】
ここで、被加熱物9の鍋ずれの判断について説明する。図7は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の被加熱物の鍋ずれの判断処理を説明する図である。図7(a)では、被加熱物9を横から見た場合における加熱コイルと温度センサの配置及び動作を示し、図7(b)では、加熱時間の経過に伴う各温度センサの検出温度の変化例を模式的に示している。なお、図7では、実施の形態1における中央コイル4と複数の周辺コイル5を、加熱コイルa〜eとして概念的に示し、複数の温度センサ6を温度センサa〜dとして概念的に示している。
【0048】
図7(a)に示すように、加熱コイルa、b、c、dの上方に被加熱物9が載置されており、加熱コイルa〜dが駆動中(ON)、加熱コイルeが停止中(OFF)であるものとする。そして、温度センサa、b、c、dの検出値のすべてを参照するものとする。
この場合、図7(b)に示すように、被加熱物9によって覆われている温度センサa、b、cの検出温度は、加熱時間の経過とともに上昇していく。これに対し、被加熱物9によって覆われていない温度センサdの検出温度は、天板2を介した伝熱によって上昇するものの、温度センサa、b、cの検出温度と比べると低い値となる。
【0049】
このように、被加熱物9と温度センサ6との位置関係によって温度センサ6の検出温度が異なるので、各温度センサ6による温度検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分に基づいて、被加熱物9が鍋ずれ状態であるか否かを判断することができる。
【0050】
例えば、図5に示す例において、被加熱物9がX1に載置された場合とX2に載置された場合とでは、駆動される加熱コイルは同じである。しかし、被加熱物9がX2に載置された場合には、被加熱物9の底面に占める加熱コイルの割合が少ないために、相対的に加熱効率が良くない。このため、被加熱物9がX2に載置された場合のように、加熱可能であっても効率の良い加熱が困難である場合には、これを「鍋ずれ」であると判断できるよう、温度検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分を評価するための所定のしきい値Aを定めることができる。
【0051】
すなわち、被加熱物9がX1の位置に載置されている場合には、被加熱物9によって覆われていない温度センサ6cの検出値は、他の温度センサ6の検出値と比べると低いが、温度センサ6cは被加熱物9との距離が近いため、天板2を介した伝熱によって他の温度センサ6の検出値と近い値となりうる。
一方、被加熱物9がX2の位置に載置されている場合にも、被加熱物9によって覆われていない温度センサ6cの検出値は、他の温度センサ6の検出値と比べると低い値となる。そして、被加熱物9がX1の位置に載置されている場合と比べると、温度センサ6cは被加熱物9からの距離が遠いため、検出値の上昇はあまり見込めない。すなわち、温度センサ6cによって検出される最小値Tminと、他の温度センサ6により検出される最大値Tmaxとの差が大きくなる。
そこで、例えばX2に示す位置に被加熱物9が載置された場合に、「鍋ずれ」であると判断できるよう、所定のしきい値Aを定める。
【0052】
本実施の形態1のように、一つの加熱口に対して複数の加熱コイルを備えた構成の場合、被加熱物9の載置位置や形容の自由度を高めつつ効率よく加熱することができることが特徴の一つであるが、例えば被加熱物9が極端にずれた位置に配置されている場合には効率よい加熱が困難であり、また、加熱は可能であっても温度センサ6の検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合には、被加熱物9が温度過昇状態となっていることも考えられる。本実施の形態1では、載置位置検知部131による被加熱物9の載置位置の検知に加え、温度センサ6の検出値に基づいた載置位置検知部132による被加熱物9の検知を行うことで、被加熱物9の位置をより精度良く検出することができる。
【0053】
図6の説明に戻る。
ステップS9にて、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えていない場合、すなわち鍋ずれではない場合には(S9;No)、制御部13は、設定された火力を得るための制御を継続する(S15)。
【0054】
一方、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合には(S9;Yes)、制御部13は、報知部16を制御して、使用者に対して鍋ずれである旨の報知を行う(S10)。このように報知を行うことで、使用者に対して被加熱物9の載置状態の確認を促している。
報知は、表示部7にてランプを点灯したり警告メッセージを表示したりしてもよいし、これに代えてあるいはこれに加えて、図示しないブザーやスピーカにて音声を出力してもよい。このようにすることで、使用者に鍋ずれが生じていることを認識させることができる。
【0055】
ステップS10にて被加熱物9の載置位置に関する報知を行った後、制御部13は、再び、各温度センサ6による温度検出値の最大値Tmaxと最小値Tminを取得し(S11)、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えているか否か判断する(S12)。ここでは、報知によって使用者が鍋ずれを解消したか否かを、温度センサ6の検出温度に基づいて判断しているのである。
【0056】
そして、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えていない場合、すなわち、鍋ずれが解消された場合には(S12;No)、ステップS2に戻って載置位置検知部131による被加熱物9の載置位置を検出し、設定された火力を得るための制御を継続する。
【0057】
一方、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合、すなわち、鍋ずれ状態が継続している場合には(S12;Yes)、制御部13は、ステップS10にて報知を行ってから所定時間αが経過したか否か判断する(S13)。所定時間αの経過前においては(S13;No)、制御部13は、ステップS11に戻って最大値Tmaxと最小値Tminに基づく鍋ずれの判断を行う。所定時間αが経過した場合には(S13;Yes)、制御部13は、操作部8にて設定された火力に対して火力制限を行うよう、駆動制御部12を制御して加熱コイルに供給する高周波電流を変更する(S14)。このようにすることで、鍋ずれ状態が生じている場合における被加熱物9や加熱コイルの過度な昇温を抑制することができる。
【0058】
次に、図6に示した誘導加熱調理器の加熱動作の応用例を説明する。
【0059】
(ステップS14の応用例)
(1)火力制限の動作例
火力制限を行う場合には、駆動中の加熱コイルのすべてについて、投入電力を低下または停止させてもよい。このようにすることで、被加熱物9や加熱コイル全体の急激な温度上昇を抑制することができる。
また、各加熱コイルと各温度センサ6とを両者の近接度合いによって予め対応づけておき、複数の加熱コイルのうち、最小値Tminを検出した温度センサ6の近傍に配置されている加熱コイルへの投入電力を、選択的に低下または停止させてもよい。また、最小値Tminを検出した温度センサ6の方向(加熱コイルの中央を基準とした方向)に配置されている加熱コイルへの投入電力を、選択的に低下または停止させてもよい。すなわち、温度センサ6の検出温度に基づいて、被加熱物9が載置されていない、あるいは載置面積が小さい可能性の高い加熱コイルを判定し、その加熱コイルについて選択的に投入電力を低下または停止させるのである。このようにすることで、被加熱物9の加熱に寄与しない無駄な電力を削減でき、また、加熱コイルの過度な温度上昇を抑制することができる。
【0060】
(2)火力制限前の動作
鍋ずれの検知に伴って火力制限を行う前に、報知部16により、火力制限を行う旨の報知を行ってもよい。このようにすることで、使用者に対して鍋ずれの解消を促すことができる。そして、火力制限を行う旨の報知を行った後、再び温度センサ6の検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分としきい値Aとの比較を行い、差分がしきい値Aを下回っていれば、報知部16による報知を停止するとともに、火力制限を行わないこととする。鍋ずれが解消されれば、火力制限が行われないため、使用者にとっての調理感を損なうこともなく、使い勝手のよい誘導加熱調理器とすることができる。なお、火力制限を行う旨の報知を行った後においても、最大値Tmaxと最小値Tminの差分がしきい値よりも大きい場合には火力制限を行うものとする。
【0061】
(ステップS9〜S14の応用例)
図6では、ステップS9にて鍋ずれが検知された場合、ステップS10にて鍋ずれの報知を行った後、所定時間αが経過してから火力制限を行うものとして説明した。しかし、制御部13は、ステップS9にて鍋ずれを検知した場合、鍋ずれの報知と火力制限を、同時に行うこととしてもよい。このようにすることで、より早期に火力制限が行え、被加熱物9や加熱コイルの過度な温度上昇を抑制することができる。
【0062】
(載置位置検知部132による鍋ずれ判断の応用例)
上記説明では、複数の温度センサ6の検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えたか否かにより、被加熱物9の載置位置を判断(鍋ずれ判断)する例を示した。しかし、温度センサ6の検出値の単位時間当たりの上昇量に基づいて、当該温度センサ6の上方に被加熱物9が載置されているか否かを判断することもできる。例えば、複数の温度センサ6の検出値の単位時間当たりの上昇量を比較し、ある温度センサ6の検出値の上昇量が所定のしきい値より小さい場合や、他の温度センサ6と比べて上昇量が小さい場合に、当該温度センサ6の上方に被加熱物9が載置されていないと判断することができる。
【0063】
(載置位置検知部131と載置位置検知部132と判断結果の比較による異常判断)
載置位置検知部131により検出された被加熱物9の載置位置と、載置位置検知部132により検出された被加熱物9の載置位置とが一致しない場合には、異常が生じたものとして、これを報知部16により報知するとともに投入電力を低下または停止するようにしてもよい。
【0064】
以上のように、本実施の形態1では、独立して駆動可能な中央コイル4と複数の周辺コイル5を備えた第一加熱部3aにおいて、中央コイル4と周辺コイル5との間に複数の温度センサ6を配置した。そして、載置位置検知部131により、各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出するとともに、載置位置検知部132により、複数の温度センサ6の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置を検出するようにした。このため、被加熱物9の載置位置をより精度よく検出することができる。
【0065】
また、駆動中の加熱コイルとの配置関係に基づいて、載置位置検知部132が被加熱物9の載置位置を判断するに際して参照する温度センサ6を選定するようにした。より詳しくは、駆動中の加熱コイルの近傍に配置された温度センサ6の検出値に基づいて、載置位置検知部132が被加熱物9の載置位置を検出するようにした。このため、鍋ずれ判断の誤判定を低減できる。例えば、参照する温度センサ6が、駆動中の加熱コイルの配置とは無関係に定められていると、加熱コイルから離れた温度センサ6の値を参照する場合もある。このような場合、当該温度センサ6は、被加熱物9からも離れているということであり、当該温度センサ6は大きな温度上昇を検出できず、当該温度センサ6が検出する最小値Tminと他の温度センサ6が検出する最大値Tmaxとの差異が大きくなり、鍋ずれと判断される可能性がある。すなわち、本実施の形態1のように独立駆動される複数の加熱コイルを備えた構成においては加熱の継続が可能であるにもかかわらず、鍋ずれと判断してしまい、結果として加熱を継続できないということが生じうる。しかし、本実施の形態1では、駆動中の加熱コイルとの配置関係に基づいて検出値を参照する温度センサ6を選定するようにしたので、このような鍋ずれ判断の誤判定を低減することができる。
【0066】
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、被加熱物9の載置位置として鍋ずれを判断する例を示したが、本実施の形態2では、鍋ずれに加え、被加熱物9の鍋反り(被加熱物9の底面が反った状態)を検出する動作例を説明する。なお、本実施の形態2の誘導加熱調理器の基本的な構成は実施の形態1と同様であり、本実施の形態2では誘導加熱調理器の動作を中心に説明する。
【0067】
図8は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。図8では、被加熱物9の載置位置の例を、符号X1にて示している。図9は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。以下、適宜図8を参照しつつ、図9に沿って実施の形態2に係る誘導加熱調理器の動作を説明する。
【0068】
ステップS1〜ステップS6については、実施の形態1で示した図6のステップS1〜S6と同様である。
【0069】
本実施の形態2では、ステップS6にて駆動中の加熱コイルに対応した温度センサ6を選択した後、選択された温度センサ6の中から、中央センサCTを決定する(S6A)。
ここで、中央センサCTとは、ステップS6にて選択された温度センサ6のうち、被加熱物9の載置範囲内に配置されていると推定される温度センサ6である。より好ましくは、中央センサCTは、ステップS6にて選択された温度センサ6のうち、被加熱物9の中央により近いと推定される温度センサ6である。
【0070】
ここで、中央センサCTの選択方法について説明する。
中央センサCTは、被加熱物9の載置範囲内に配置されていると推定される温度センサ6であり、駆動中の加熱コイルの組み合わせ毎に定められる。すなわち、ある組み合わせで加熱コイルが駆動されているとして(1つの加熱コイルが駆動されている場合も含む)、当該組み合わせとなるときの被加熱物9の載置領域を推定し、この被加熱物9の載置範囲内に配置されていると推定されている温度センサ6を、中央センサCTとする。
より好ましくは、ある組み合わせで加熱コイルが駆動されているとして(1つの加熱コイルが駆動されている場合も含む)、当該組み合わせとなるときの被加熱物9の載置領域を推定し、この被加熱物9の中央により近いと推定される温度センサ6を、中央センサCTとする。後述するように中央センサCTの検出値は、被加熱物9の鍋反りを判断するための情報として用いられるため、鍋反りが生じやすい被加熱物9の中央に近い位置に配置された温度センサ6を中央センサCTとすることで、鍋反りを検出しやすい。
【0071】
例えば、図8では、中央コイル4、周辺コイル5a、5dが駆動され、温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6iが選択されているものとする。この場合、本実施の形態2では、駆動中の加熱コイル(中央コイル4、周辺コイル5a、5d)のほぼ中央に位置する温度センサ6aが中央センサCTとなるよう、予め加熱コイルと各温度センサ6との対応付けが設定されている。
駆動中の加熱コイルの組み合わせにおいてどの温度センサ6を中央センサCTとするかは、各加熱コイルと各温度センサ6の配置関係に基づいて予め定められており、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0072】
図9の説明に戻る。
ステップS7〜ステップS9については、実施の形態1で示した図6のステップS7〜S9と同様である。
【0073】
ステップS9にて、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合には(S9;Yes)、制御部13は、最小値Tminが、中央センサCTの検出値であるか否か判断する(S9A)。最小値Tminが、中央センサCTの検出値でなければ(S9A;No)、ステップS10に進む。
【0074】
一方、最小値Tminが、中央センサCTの検出値であれば(S9A;Yes)、鍋反り制御を行う(S9B)。
【0075】
ここで、被加熱物9の鍋反りの判断について説明する。図10は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の被加熱物の鍋反りの判断処理を説明する図である。図10(a)では、被加熱物9を横から見た場合における加熱コイルと温度センサの配置及び動作を示し、図10(b)では、加熱時間の経過に伴う各温度センサの検出温度の変化例を模式的に示している。なお、図10では、実施の形態2における中央コイル4と複数の周辺コイル5を、加熱コイルa〜eとして概念的に示し、複数の温度センサ6を温度センサa〜dとして概念的に示している。
【0076】
図10(a)に示すように、加熱コイルa、b、c、dの上方に被加熱物9が載置されており、加熱コイルa〜dが駆動中(ON)、加熱コイルeが停止中(OFF)であるものとする。そして、温度センサa、b、c、dの検出値のすべてを参照するものとする。
また、被加熱物9は、鍋底の中央部が上方に向かって凹んでおり、鍋反りの状態であるものとする。
この場合、図10(b)に示すように、被加熱物9の底面のうち天板2に接している部分に対応する温度センサa、cの検出温度は、加熱時間の経過とともに上昇していく。しかし、被加熱物9の鍋反り部分(上方に向かって凹んだ部分)に対応した位置にある温度センサbの検出温度は、天板2を介した伝熱によって上昇するものの、被加熱物9の反りの程度にもよるが温度センサa、cの検出温度と比べると低い温度となる。
【0077】
このように、最大値Tmaxと最小値Tminとの差分が所定のしきい値Aを超えている場合においては、最小値Tminを検出した温度センサ6の上方の天板2には、鍋ずれあるいは鍋反りによって被加熱物9が接していないと捉えることができる。
そして、最小値Tminを検出した温度センサ6が、中央センサCTである場合には、鍋反りであると判断することができる。
【0078】
なお、被加熱物9によって覆われていない温度センサdの検出温度は、天板2を介した伝熱によって上昇するものの、温度センサa、cの検出温度と比べると低い温度となる点は、実施の形態1で示した通りであり、図10(b)では図示を省略する。
【0079】
図9の説明に戻る。
ステップS9Aにて最小値Tminを検出した温度センサ6が中央センサCTである場合、すなわち被加熱物9が鍋反り状態であると判断した場合には(S9A;Yes)、制御部13は、鍋反り状態である場合の専用の制御シーケンスにより、駆動制御部12や報知部16を制御する(S9B)。
【0080】
ステップS9Bにおける処理としては、例えば、報知部16により被加熱物9が加熱に適さないものである旨の報知を行い、また、駆動制御部12を制御して加熱コイルによる加熱を停止させることができる。被加熱物9が鍋反り状態である場合には、反っている部分の温度検出を精度よく行うことができないので、操作部8にて設定された条件で加熱制御を行うのは困難である。このため、鍋反りが検出された場合には、報知を行うとともに加熱を停止することで、使用者に対して被加熱物9の交換を促すようにする。
【0081】
また、ステップS9Bにおける他の処理としては、例えば、中央センサCTの位置への加熱に最も寄与する加熱コイルによる加熱を、選択的に低下あるいは停止させることができる。すなわち、温度センサ6に、当該温度センサ6が中央センサCTとされた場合に停止させるべき加熱コイルを予め対応づけて記憶装置(図示せず)に記憶させておく。そして、鍋ずれが検知された場合には、中央センサCTに対応する加熱コイルによる加熱を、選択的に低下させ、あるいは停止させる。本実施の形態2の各加熱コイルは、独立して駆動可能であるので、鍋反り部分に対応する加熱コイルに対する個別制御が可能である。このようにすることで、被加熱物9に対する加熱を継続しつつ、温度検出を精度よく行いにくい鍋反り部分に対する加熱を抑制して過度な温度上昇を抑制することができる。
【0082】
ステップS10〜ステップS14、ステップS15、ステップS16については、実施の形態1で示した図6のステップS10〜ステップS14、ステップS15、ステップS16と同様である。
【0083】
次に、図9に示した誘導加熱調理器の加熱動作の応用例を説明する。
【0084】
(ステップS9Aの応用例)
上記説明では、最小値Tminを検出した温度センサ6が中央センサCTである場合には鍋反りであると判断することとして説明した。しかし、最小値Tminを検出した温度センサ6が中央センサCTである場合に、さらに、最大値Tminと最小値Tminの差異が、所定のしきい値B(但し、しきい値Bはしきい値Aよりも大きい値)を超えている場合に、鍋反りであると判断してもよい。このようにすることで、例えば反り量が少ない被加熱物9であれば鍋反りと判断されにくくなり、使用可能な被加熱物9の自由度が高まる。この場合、しきい値Bは、鍋反りがある場合でも被加熱物9の温度制御が可能なものについては鍋反りと判断しないような値に設定する。
【0085】
以上のように、本実施の形態2では、独立して駆動可能な中央コイル4と複数の周辺コイル5を備えた第一加熱部3aにおいて、中央コイル4と周辺コイル5との間に複数の温度センサ6を配置した。そして、載置位置検知部131により、各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態(載置の有無)を検出するとともに、載置位置検知部132により、複数の温度センサ6の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置と被加熱物9の鍋反り状態を検出するようにした。このため、実施の形態1で説明した効果に加え、被加熱物9の鍋反り状態を判定することができる。被加熱物9が鍋反り状態である場合、その反った部分に対応する温度センサ6は、被加熱物9との距離が離れているために被加熱物9の温度を精度よく検出することができず、操作部8にて設定された条件での被加熱物9の温度制御(加熱)が困難であるが、鍋反り状態を検出することで、鍋反り状態に応じた加熱制御が可能となる。
【0086】
被加熱物9が鍋反り状態であると検出された場合には、加熱を抑制あるいは停止することで、被加熱物9の過度の温度上昇を抑制することができる。また、被加熱物9が鍋反り状態であると検出された場合には、報知部16により報知することで、被加熱物9の交換を使用者に促すことができる。
【0087】
実施の形態3.
本実施の形態3では、加熱コイルの他の構成例を説明する。なお、本実施の形態3は、加熱コイルの構成と温度センサの配置に特徴を有するものであり、前述の実施の形態1または実施の形態2と組み合わせて用いることができる。
図11は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【0088】
中央コイル40と周辺コイル50は、円形の平面形状を有し、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線が円周方向に巻回されることにより構成されている。本実施の形態3では、中央コイル40の方が周辺コイル50よりも径が大きく、また、導電線の巻数も多いが、これに限定するものではない。実施の形態1の中央コイル4は、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとからなるいわゆる二重コイルであったが、本実施の形態3の中央コイル40は、一重コイルである。
【0089】
また、本実施の形態3では、6つの周辺コイル50(周辺コイル50a、50b、50c、50d、50e、50fと区別して称する場合がある)が設けられている。各周辺コイル50は、中央コイル40の外周側に、円形上に実質的に沿うようにしてほぼ等間隔で配置されている。なお、周辺コイル50の数や配置は、図示のものに限定されない。
【0090】
中央コイル40と周辺コイル50は、それぞれ対応する駆動回路10によって電流制御され、独立して駆動される。
【0091】
本実施の形態3では、複数の温度センサ60が設けられており、それぞれを温度センサ60a、60b・・・のように区別して表記する。温度センサ60aは中央コイル40と周辺コイル50aの間に配置され、温度センサ60bは中央コイル40と周辺コイル50bの間に配置され、温度センサ60cは中央コイル40と周辺コイル50cの間に配置され、温度センサ60dは中央コイル40と周辺コイル50dの間に配置され、温度センサ60eは中央コイル40と周辺コイル50eの間に配置され、温度センサ60fは中央コイル40と周辺コイル50fの間に配置されている。
また、温度センサ60g、60hは、環状に構成された中央コイル40の中央の空間に配置されており、この温度センサ60g、60hの配置位置は、第一加熱部3aのほぼ中央(すなわち、当該加熱口のほぼ中央)に対応している。
【0092】
実施の形態1、2で示したように、載置位置検知部132は、複数の温度センサ60の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置や鍋反りを検出する。鍋ずれや鍋反りを判断するに際して参照される温度センサ60は、実施の形態1で示したように、駆動中の加熱コイルと対応付けられた温度センサ60となる。
駆動中の加熱コイルと各温度センサ60との対応付けは、ある加熱コイルが駆動中である場合に被加熱物9の温度をより検出しやすい温度センサ60が対応付けられるようにして、加熱コイルと温度センサ60の配置関係に基づいて予め定められており、この対応付けに関する情報は図示しない記憶装置に記憶されている。
【0093】
本実施の形態3では、例えば、中央コイル40が駆動中であれば温度センサ60g、60hを参照するよう対応付けられている。また、中央コイル40と周辺コイル50aが駆動中であれば、温度センサ60g、60hに加え、両加熱コイルに挟まれた位置に配置された温度センサ60aを参照するように対応付けられている。同様にして、中央コイル40と周辺コイル50bが駆動中であれば温度センサ6b、中央コイル40と周辺コイル50cが駆動中であれば温度センサ6c、中央コイル40と周辺コイル50dが駆動中であれば温度センサ6d、中央コイル40と周辺コイル50eが駆動中であれば温度センサ6e、中央コイル40と周辺コイル50fが駆動中であれば温度センサ6fを、温度センサ60g、60hに加えて参照するよう、対応付けられている。
【0094】
なお、ここで説明した加熱コイルと各温度センサ60との対応付けは一例であり、各加熱コイル上に被加熱物9が載置された場合にその被加熱物9の温度を検出しやすい位置に設けられた温度センサ60を対応付けるとよい。
また、図11の例では加熱コイルの数(1つの中央コイル40、6つの周辺コイル50)と同数の温度センサ60を設ける例を示しているが、例えば、図11に破線で示す温度センサ60xのように、中央コイル40と2つの周辺コイル50とに囲まれた空間に設けることもでき、この場合には、中央コイル40に加え、周辺コイル50aと周辺コイル50bの少なくとも何れか一方が駆動している場合に温度センサ60xを参照するよう、対応付けることができる。
【0095】
以上のように、本実施の形態3のような加熱コイルと温度センサの配置を採用してもよく、実施の形態1または実施の形態2と組み合わせることで、同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態3で示した中央コイル40に代えて、実施の形態1で示したいわゆる二重コイルである中央コイル4を採用してもよい。
【0096】
実施の形態4.
本実施の形態4では、加熱コイルと温度センサの他の構成例を説明する。なお、本実施の形態4は、加熱コイルの構成と温度センサの配置に特徴を有するものであり、前述の実施の形態1または実施の形態2と組み合わせて用いることができる。
図12は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【0097】
中央コイル4は、実施の形態1で示したものと同様の構成であり、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線が円周方向に巻回されて構成され円形の平面形状を有する内側中央コイル4aと、内側中央コイル4aよりも径方向外側において導電線が円周方向に巻回されて構成され環状の平面形状を有する外側中央コイル4bとを有する。内側中央コイル4aと外側中央コイル4bは、本実施の形態4では直列に接続されており、単一の駆動回路10(インバータ回路)で駆動される。なお、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとを並列接続してもよく、この場合は、それぞれ独立した駆動回路(インバータ回路)を用いて駆動することができる。
【0098】
また、本実施の形態4では、4つの周辺コイル500(周辺コイル500a、500b、500c、500dと区別して称する場合がある)が設けられている。周辺コイル500は、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線を、ほぼ1/4円弧状の平面形状を成す環状に巻き回して構成されている。周辺コイル500の中央コイル4に近接する側のほぼ円弧状の辺は、所定間隔をおいて中央コイル4の円形の外周にほぼ沿っており、中央コイル4と周辺コイル500との間には所定長さの円弧状の空間が設けられている。
【0099】
4つの周辺コイル500は、中央コイル4の円形の外形にほぼ沿うようにして、中央コイル4の外側に配置されている。各周辺コイル500は、中央コイル4に対してほぼ90°ずつずれた配置となっている。なお、周辺コイル500の数は4つに限定されるものではない。
【0100】
中央コイル4と周辺コイル500は、それぞれ対応する駆動回路10によって電流制御され、独立して駆動される。
【0101】
本実施の形態4では、複数の温度センサ600が設けられており、それぞれを温度センサ600a、600b・・・のように区別して表記する。
【0102】
内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間に設けられた環状の隙間には、温度センサ600a、600b、600c、600dが、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるよう配置されている
また、中央コイル4と周辺コイル500dとの間に温度センサ600eが、中央コイル4と周辺コイル500aとの間に温度センサ600fが、中央コイル4と周辺コイル500bとの間に温度センサ600gが、中央コイル4と周辺コイル500cとの間に温度センサ600hが配置されている。温度センサ600e、600f、600g、600hは、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるように配置されている。
また、第一加熱部3aの中央から延びる放射線を仮定すると、温度センサ600a〜600dと、温度センサ600e〜600hは、同一の放射線上にならないよう配置されている。このようにすることで、第一加熱部3aの中央部から見た温度センサ600の配置方向の偏りを低減し、多数の方向に温度センサ600を配置している。
【0103】
また、温度センサ600iは、環状に構成された内側中央コイル4aの中央の空間に配置されており、この温度センサ600iの配置位置は、第一加熱部3aのほぼ中央(すなわち、当該加熱口のほぼ中央)に対応している。
【0104】
実施の形態1、2で示したように、載置位置検知部132は、複数の温度センサ600の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置や鍋反りを検出する。鍋ずれや鍋反りを判断するに際して参照される温度センサ600は、実施の形態1で示したように、駆動中の加熱コイルと対応付けられた温度センサ600となる。
駆動中の加熱コイルと各温度センサ600との対応付けは、ある加熱コイルが駆動中である場合に被加熱物9の温度をより検出しやすい温度センサ600が対応付けられるようにして、加熱コイルと温度センサ600の配置関係に基づいて予め定められており、この対応付けに関する情報は図示しない記憶装置に記憶されている。
【0105】
本実施の形態4では、例えば、中央コイル4が駆動中であれば温度センサ600a、600b、600c、600d、600iを参照するように対応付けられている。また、中央コイル4と周辺コイル50aが駆動中であれば、これらに挟まれた位置に配置された温度センサ600eを600a、600b、600c、600d、600iに加えて参照するように対応付けられている。同様にして、中央コイル4と周辺コイル500bが駆動中であれば温度センサ600f、中央コイル4と周辺コイル500cが駆動中であれば温度センサ600g、中央コイル4と周辺コイル500dが駆動中であれば温度センサ600hを、600a、600b、600c、600d、600iに加えて参照するよう、対応付けられている。
【0106】
なお、ここで説明した加熱コイルと各温度センサ600との対応付けは一例であり、各加熱コイル上に被加熱物9が載置された場合にその被加熱物9の温度を検出しやすい位置に設けられた温度センサ600を対応付けるとよい。
また、例えば、図12に破線で示す温度センサ600xのように、中央コイル4と2つの周辺コイル500とに囲まれた空間に設けることもでき、この場合には、中央コイル4に加え、周辺コイル500aと周辺コイル500bの少なくとも何れか一方が駆動している場合に温度センサ600xを参照するよう、対応付けることができる。
【0107】
以上のように、本実施の形態4のような加熱コイルと温度センサの配置を採用してもよく、実施の形態1または実施の形態2と組み合わせることで、同様の効果を得ることができる。
【0108】
なお、上記説明では、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cのうちいずれかの加熱手段を、例えば輻射によって加熱するタイプの電気ヒータ(例えばニクロム線やハロゲンヒータ、ラジエントヒータ)で構成してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 本体、2 天板、3a 第一加熱部、3b 第二加熱部、3c 第三加熱部、4 中央コイル、4a 内側中央コイル、4b 外側中央コイル、5 周辺コイル、5a 周辺コイル、5b 周辺コイル、5c 周辺コイル、5d 周辺コイル、6 温度センサ、7 表示部、7a 表示部、7b 表示部、7c 表示部、8 操作部、8a 操作部、8b 操作部、8c 操作部、9 被加熱物、10 駆動回路、11 回路部、12 駆動制御部、13 制御部、14 負荷検知部、15 温度検出部、16 報知部、17 吸気口、18 排気口、40 中央コイル、50 周辺コイル、60 温度センサ、131 載置位置検知部、132 載置位置検知部、500 周辺コイル、600 温度センサ、CT 中央センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器として、「平面状に捲回された中央コイルと、前記中央コイルの周辺に配設された複数の周辺コイルと、前記中央コイルおよび前記周辺コイルのそれぞれに独立して高周波電流を供給する複数の電源回路部と、被加熱体が前記中央コイルおよび前記各周辺コイルの上方に載置されている状態を検出する検知手段と、前記検知手段が検出する前記被加熱体の載置状態に応じて、前記中央コイルおよび前記周辺コイルのそれぞれに選択的に高周波電流が供給されるように前記電源回路部を制御する駆動制御部」を備えた」ものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、それぞれの加熱コイル(中央コイル、複数の周辺コイル)の上に鍋が載置されているか否かを検出するための構成として、「電流検出部63を用いて、中央コイル20および周辺コイル30a〜30dに流れる電流量を検出する」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/101202号公報(第3頁、第9頁、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の誘導加熱調理器は、様々な大きさや形容を有する鍋を使用でき、また、鍋が加熱口に対して例えば前後左右に寄った位置に載置された場合であっても効率よく加熱できるようにすることを目的としている。このような、使用する鍋の形、大きさや鍋配置の自由度を高めつつ効率よく加熱する、という特徴をさらに生かすためには、鍋の位置をより精度よく検知することが求められる。上記特許文献1においては、複数の加熱コイル(中央コイル、複数の周辺コイル)のインピーダンスの変化を検出して鍋等の被加熱物が載置されている加熱コイルを検知することが記載されているが、被加熱物の材質によっては誤判定が生じる可能性もある。このため、被加熱物の載置位置(鍋ずれ)をより精度よく検知することが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、被加熱物の位置を精度よく検知することのできる誘導加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る誘導加熱調理器は、被加熱物が載置される天板と、加熱口に対応して前記天板の下方に配置され、前記天板に載置された被加熱物を誘導加熱する加熱コイル群と、前記加熱コイル群を構成する複数の加熱コイルのそれぞれに、独立して高周波電流を供給する複数の駆動部と、前記加熱口に対応して設けられた複数の温度検知装置と、前記複数の加熱コイルのそれぞれの上方に前記被加熱物が載置されているか否かを検知する第一載置位置検知部と、前記複数の温度検知装置の検出値に基づいて、前記加熱口における前記被加熱物の載置位置を検知する第二載置位置検知部と、前記第一載置位置検知部の検知結果及び前記第二載置位置検知部の検知結果に基づいて、前記複数の加熱コイルに供給する高周波電流を可変するよう前記駆動部を制御する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、第一載置位置検知部によって各加熱コイル上に被加熱物が載置されているか否かを検知するとともに、第二載置位置検知部によって被加熱物の載置位置を検知するので、被加熱物の載置位置を精度よく検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す上面図である。
【図2】実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の主要部の機能ブロック図である。
【図4】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の被加熱物の載置位置(鍋ずれ)の判断処理を説明する図である。
【図8】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。
【図9】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の被加熱物の鍋反りの判断処理を説明する図である。
【図11】実施の形態3に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【図12】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態1では、厨房家具に形成された設置口に設置されるいわゆるビルトイン型の誘導加熱調理器に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0011】
(全体構成)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す上面図である。
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。なお、図1、図2及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0012】
図1、図2に示すように、誘導加熱調理器は、本体1と、本体1の上に設けられ、鍋などの被加熱物9が載置される天板2とを備える。この誘導加熱調理器は、3つの加熱口を備え、各加熱口に対応して、第一加熱部3a、第二加熱部3b、第三加熱部3cという加熱部を備えており、それぞれの加熱口に対して被加熱物9を載置して加熱することができるものである。本実施の形態1では、本体1の手前側に左右に並べて第一加熱部3aと第二加熱部3bが設けられ、本体1の奥側ほぼ中央に第三加熱部3cが設けられている。
【0013】
天板2は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の材料で構成されており、本体1の上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。天板2には、第一加熱部3a、第二加熱部3b及び第三加熱部3cの加熱範囲(加熱口)に対応して、鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布や印刷等により形成されている。
【0014】
本体1の手前側には、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cで被加熱物9を加熱する際の火力や調理メニューを設定するための入力装置として、操作部8a、操作部8b、及び操作部8c(以下、操作部8と総称する場合がある)が設けられている。また、操作部8の近傍には、誘導加熱調理器の動作状態や操作部8からの入力・操作内容等を表示する表示部7a、表示部7b、表示部7c(以下、表示部7と総称する場合がある)が設けられている。
【0015】
天板2の下方であって本体1の内部には、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cにそれぞれ対応した加熱手段を備えている。本実施の形態1では、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cの加熱手段は、複数の誘導加熱コイルで構成されている。なお、これらの加熱手段はいずれも同様の構成であるので、以降の説明では、第一加熱部3aの加熱手段(加熱コイル)を例に説明する。
【0016】
本体1の内部には、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cの加熱手段である加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路10と、駆動回路10を含め誘導加熱調理器全体の動作を制御するための各種制御回路が実装された回路部11が設けられている。
【0017】
本体1の上面後方には、本体1内部と連通し、本体1内部に冷却風を取り込むための吸気口17と、本体1内部に取り込んだ冷却風を排出するための排気口18とが設けられている。吸気口17から本体1内に吸引された空気は、本体1内部の駆動回路10や回路部11等の各種電気部品や加熱コイル等を冷却した後、排気口18から本体1の外部へと排気される。なお、本実施の形態1では天板2の後方に通気孔を形成する例を示しているが、通気孔の形成位置はこれに限定されるものではなく、例えば、天板2の後方には通気孔を設けず、本体1の前面及び背面に通気孔を形成してもよい。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の主要部の機能ブロック図である。
第一加熱部3aの加熱手段は、加熱口のほぼ中央に配置された中央コイル4と、中央コイル4の周辺に配置された複数の周辺コイル5とを備える。中央コイル4と周辺コイル5の形状及び配置の例については後述する。中央コイル4と周辺コイル5は、コイル支持台(図示せず)によって保持されている。
なお、以降の説明において、中央コイル4と周辺コイル5を、「加熱コイル」と総称する場合がある。
【0019】
温度センサ6(温度検知装置)は、接触式温度センサあるいは非接触式温度センサであり、天板2または天板2の上方に載置される被加熱物9の温度を検出するためのものである。温度センサ6が接触式温度センサである場合には、温度センサ6は、天板2の下面に接触するように配置され、天板2の温度を示す検知信号を出力する。温度センサ6が非接触式温度センサである場合には、温度センサ6は、天板2の上方に載置される被加熱物9からの熱放射を捉えることができるようにして天板2の下方に配置され、検知した熱放射量を示す検知信号を出力する。本実施の形態1では、第一加熱部3aに対して複数の温度センサ6が設けられており、以降の説明では、それぞれを温度センサ6a、6b・・・のように区別して表記する場合がある。温度センサ6の配置については後述する。
【0020】
駆動回路10は、インバータ回路により構成され、中央コイル4と周辺コイル5に高周波電流を供給する。駆動回路10は、中央コイル4と複数の周辺コイル5のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、第一加熱部3aの加熱手段を構成する各加熱コイルは、それぞれに対応した駆動回路10によって独立して駆動される。図3では、各加熱コイルに対応した駆動回路10を、駆動回路a、b、cのように区別して記載している。
【0021】
回路部11は、主要な機能部として、駆動制御部12と、制御部13と、負荷検知部14と、温度検出部15とを備える。制御部13は、負荷検知部14からの出力に基づいて被加熱物9の載置位置を判断する載置位置検知部131(第一載置位置検知部)と、温度センサ6の検出値等に基づいて被加熱物9の載置位置を判断する載置位置検知部132(第二載置位置検知部)とを有する。
【0022】
駆動制御部12は、駆動回路10の動作を制御して被加熱物9への投入電力(出力)を制御する。駆動制御部12は、複数の駆動回路10を、個々に制御できるように構成されており、各加熱コイルに対して任意の駆動条件で高周波電流を流すことができる。
【0023】
負荷検知部14は、中央コイル4及び周辺コイル5のそれぞれに流れる電流量を検出するための電流検出回路を備える。負荷検知部14によって検出された各加熱コイルに流れる電流量は、制御部13の載置位置検知部131に出力される。
【0024】
載置位置検知部131は、負荷検知部14が検出した各加熱コイルに流れる電流量に基づいて、各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出する。
一般に、加熱コイルのインピーダンスは、加熱コイルの上方に載置された被加熱物9の有無、大きさ(面積)、及び材質に依存して変化し、これに伴って駆動回路10を構成するインバータ回路に流れる電流量も変化する。そこで、載置位置検知部131は、負荷検知部14が検出した中央コイル4及び周辺コイル5に流れる電流量に基づいて、各加熱コイルのインピーダンス値を検出し、これによって各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を判別する。
【0025】
温度検出部15は、温度センサ6と電気的に接続されており、温度センサ6からの検知信号に基づいて、天板2の温度または天板2の上に載置された被加熱物9の温度を検出する。温度検出部15は、検出した温度情報を制御部13及び載置位置検知部132に出力する。
【0026】
載置位置検知部132は、温度検出部15を介して取得した複数の温度センサ6の検出温度に基づいて、加熱口に対する被加熱物9の載置位置を検出する。載置位置の検出処理については後述する。
【0027】
制御部13は、操作部8からの信号、負荷検知部14からの信号、温度センサ6の検出値、載置位置検知部131、及び載置位置検知部132の検出結果等に基づいて駆動制御部12を制御する。また、制御部13は、報知部16を制御して使用者に対する報知を行う他、誘導加熱調理器全体の動作を制御する。
【0028】
制御部13は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0029】
報知部16は、表示部7や、図示しないブザー、音声出力装置等により構成されている。なお、報知部16は、使用者に対して視覚的あるいは聴覚的に情報を報知できる装置であれば具体的構成は問わない。
【0030】
[加熱コイルと温度センサの配置]
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。第一加熱部3aの加熱コイルは、中央コイル4と、複数の周辺コイル5を備える。また、加熱コイルの巻き線同士の隙間には、複数の温度センサ6が設けられている。
【0031】
中央コイル4は、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線が円周方向に巻回されて構成され円形の平面形状を有する内側中央コイル4aと、内側中央コイル4aよりも径方向外側において導電線が円周方向に巻回されて構成され環状の平面形状を有する外側中央コイル4bとを有する。内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間には、環状の隙間が設けられている。内側中央コイル4aと外側中央コイル4bは、本実施の形態1では直列に接続されており、単一の駆動回路10(インバータ回路)で駆動される。なお、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとを並列接続してもよく、この場合は、それぞれ独立した駆動回路(インバータ回路)を用いて駆動することができる。
【0032】
周辺コイル5は、本実施の形態1では、中央コイル4の外周側に4つ(周辺コイル5a、5b、5c、5dと区別して称する場合がある)設けられている。周辺コイル5は、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線を、楕円の平面形状を成す環状に巻き回して構成されている。周辺コイル5aは中央コイル4の奥側(図4の紙面上側)に、周辺コイル5bは中央コイル4の左側に、周辺コイル5cは中央コイル4の手前側(図4の紙面下側)に、周辺コイル5dは中央コイル4の右側に、それぞれ、中央コイル4の外周との間に所定の隙間をおいて配置されている。なお、周辺コイル5の数や配置は、図示のものに限定されない。
各周辺コイル5は、それぞれ、駆動回路10で個別に駆動される。
【0033】
温度センサ6は、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間に設けられた環状の隙間と、中央コイル4と周辺コイル5との間に設けられた隙間と、内側中央コイル4aの中央の円形の隙間に、合計9つ(温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6iと区別して称する場合がある)配置されている。本実施の形態1では、温度センサ6a、6b、6c、6dは、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間に、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるよう配置されている。また、中央コイル4と周辺コイル5dとの間に温度センサ6eが、中央コイル4と周辺コイル5aとの間に温度センサ6fが、中央コイル4と周辺コイル5bとの間に温度センサ6gが、中央コイル4と周辺コイル5cとの間に温度センサ6hが配置されている。温度センサ6e、6f、6g、6hは、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるように配置されている。また、内側中央コイル4aの中央には、温度センサ6iが配置されている。本実施の形態1では、温度センサ6iは、第一加熱部3aの略中央位置に対応している。
【0034】
本実施の形態1のように、独立して駆動可能な中央コイル4とその周辺に配置された複数の周辺コイル5とによって一つの加熱口の加熱手段を構成した場合、各加熱コイル同士は、なるべく近くに配置するのが望ましい。加熱コイル同士が離れすぎていると、例えば大型の被加熱物9であれば加熱ムラが生じる可能性があり、例えば小型の被加熱物9であれば載置位置によっては十分に加熱されない可能性があるためである。
また、複数の温度センサ6のうち少なくとも1つ以上は、なるべく加熱コイルの近くに配置するのが好ましい。温度センサ6と加熱コイルとが離れすぎていると、温度検出位置と加熱位置とが離れすぎることとなり、被加熱物の温度を精度よく検出することができないためである。
【0035】
[加熱動作]
図5は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。図5では、被加熱物9の2パターンの載置位置を、それぞれ、符号X1、X2にて示している。図6は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。以下、適宜図5を参照しつつ、図6に沿って実施の形態1に係る誘導加熱調理器の動作を説明する。
【0036】
使用者が、天板2上に被加熱物9を載置し、操作部8により所望の火力で調理を行うよう火力を設定し、加熱開始のスイッチ等を押下すると、制御部13は、操作部8から火力設定に関する情報と加熱開始指示の信号を受ける(S1)。
【0037】
制御部13は、加熱開始指示の信号を受けると、各加熱コイルに微弱電流(鍋判定電流)が流れるように駆動制御部12を制御し、駆動回路10によって各加熱コイルに高周波電流を供給する(S2)。
【0038】
載置位置検知部131は、負荷検知部14により検知された各加熱コイルに流れる電流値に基づいて、それぞれの加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出する(S3)。なお、以降の説明において、上方に被加熱物9が載置された加熱コイルを「負荷あり加熱コイル」、上方に被加熱物9が載置されていない加熱コイルを「負荷なし加熱コイル」と称する場合がある。図5に示す例では、中央コイル4、周辺コイル5a、5dが負荷あり加熱コイルであり、周辺コイル5b、5cが負荷なし加熱コイルである。なお、図5では、負荷なし加熱コイルを白抜き表示している。
【0039】
加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出した制御部13は、中央コイル4の上に被加熱物9が載置されているか否か判断する(S4)。本実施の形態1では、中央コイル4の上に被加熱物9が載置されていることを、当該加熱口における駆動条件としている。本実施の形態1のように加熱口に対して中央コイル4の占める割合が大きい構成の場合、中央コイル4上に被加熱物9が載置されていないということは、加熱口に対して被加熱物9が載置されていない、あるいはスプーンやナイフなどの小物が載置されている等、加熱に適さない状態である可能性が高い。このため、本実施の形態1では、中央コイル4上に被加熱物9が載置されていることを、当該加熱口における駆動条件としており、中央コイル4の上に被加熱物9が載置されていない場合には(S4;No)、加熱停止とする(S16)。
【0040】
中央コイル4の上に被加熱物9が載置されている場合、すなわち駆動条件を満足している場合には(S4;Yes)、制御部13は、駆動するコイルとして負荷あり加熱コイル(中央コイル4、周辺コイル5a、5d)を選択する(S5)。
【0041】
次に、載置位置検知部132は、駆動中の加熱コイルに対応した温度センサ6を選択し、これらの検出値を参照する(S6)。
【0042】
ここで、駆動中の加熱コイルと各温度センサ6との対応付けについて説明する。
各加熱コイルと各温度センサ6とは、互いの配置関係に基づいて予め対応付けが定められている。対応付けは、ある加熱コイルが駆動中である場合に被加熱物9の温度をより検出しやすい温度センサ6が対応付けられるようにして定められている。基本的には、各加熱コイルの近傍に配置された温度センサ6が、当該加熱コイルに対して対応付けられる。この対応付けに関する情報は、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0043】
本実施の形態1では、中央コイル4が駆動中であれば温度センサ6a、6b、6c、6d、6iを参照するよう対応付けられている。また、中央コイル4と周辺コイル5aが駆動中であれば、温度センサ6a、6b、6c、6d、6iに加え、中央コイル4と周辺コイル5aに挟まれた位置に配置された温度センサ6fを参照するよう対応付けられている。同様にして、中央コイル4と周辺コイル5bが駆動中であれば温度センサ6g、中央コイル4と周辺コイル5cが駆動中であれば温度センサ6g、中央コイル4と周辺コイル5dが駆動中であれば温度センサ6eを、温度センサ6a、6b、6c、6d、6iに加えて参照するよう、対応付けられている。なお、本実施の形態1では、同時に駆動される加熱コイルの組み合わせが複数存在するが、いずれの組み合わせで加熱コイルが駆動されている場合でも、2つ以上の温度センサ6の検出値を参照できるよう、対応付けが行われる。
【0044】
したがって、ステップS6において、図5に示す例では、中央コイル4と周辺コイル5a、5dが駆動中であるので、温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6iの検出値が参照される。なお、図5では、参照されない温度センサ6g、6hを白抜き表示している。
また、例えば、図5では図示しないが、すべての加熱コイル上に被加熱物9が載置されている場合には、すべての加熱コイルが駆動され、すべての温度センサ6の検出値が参照される。
【0045】
次に、制御部13は、ステップS5で選択した負荷あり加熱コイルに対しては高周波電流を供給し、負荷なし加熱コイルに対しては高周波電流を抑制あるいは供給しないよう、駆動制御部12を制御する(S7)。このとき、制御部13は、操作部8にて設定された火力が得られるように、駆動制御部12を介して駆動回路10を制御する。上方に被加熱物9が載置された加熱コイルを主に駆動することで、小型の鍋や、楕円形の鍋、角形の鍋など円形以外の被加熱物9であっても、効率よく加熱することができる。この加熱制御においては、制御部13は、温度センサ6の検出温度に基づいて被加熱物9の温度を判断し、操作部8にて設定された加熱状態となるように駆動制御部12を制御する。
【0046】
次に、載置位置検知部132は、ステップS6で参照した温度センサ6の検出値のうち、最大値Tmaxと最小値Tminを取得する(S8)。そして、載置位置検知部132は、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値A(例えば、50℃)を超えたか否かを判定することにより、被加熱物の載置位置(鍋ずれ)の判断を行う(S9)。
【0047】
ここで、被加熱物9の鍋ずれの判断について説明する。図7は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の被加熱物の鍋ずれの判断処理を説明する図である。図7(a)では、被加熱物9を横から見た場合における加熱コイルと温度センサの配置及び動作を示し、図7(b)では、加熱時間の経過に伴う各温度センサの検出温度の変化例を模式的に示している。なお、図7では、実施の形態1における中央コイル4と複数の周辺コイル5を、加熱コイルa〜eとして概念的に示し、複数の温度センサ6を温度センサa〜dとして概念的に示している。
【0048】
図7(a)に示すように、加熱コイルa、b、c、dの上方に被加熱物9が載置されており、加熱コイルa〜dが駆動中(ON)、加熱コイルeが停止中(OFF)であるものとする。そして、温度センサa、b、c、dの検出値のすべてを参照するものとする。
この場合、図7(b)に示すように、被加熱物9によって覆われている温度センサa、b、cの検出温度は、加熱時間の経過とともに上昇していく。これに対し、被加熱物9によって覆われていない温度センサdの検出温度は、天板2を介した伝熱によって上昇するものの、温度センサa、b、cの検出温度と比べると低い値となる。
【0049】
このように、被加熱物9と温度センサ6との位置関係によって温度センサ6の検出温度が異なるので、各温度センサ6による温度検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分に基づいて、被加熱物9が鍋ずれ状態であるか否かを判断することができる。
【0050】
例えば、図5に示す例において、被加熱物9がX1に載置された場合とX2に載置された場合とでは、駆動される加熱コイルは同じである。しかし、被加熱物9がX2に載置された場合には、被加熱物9の底面に占める加熱コイルの割合が少ないために、相対的に加熱効率が良くない。このため、被加熱物9がX2に載置された場合のように、加熱可能であっても効率の良い加熱が困難である場合には、これを「鍋ずれ」であると判断できるよう、温度検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分を評価するための所定のしきい値Aを定めることができる。
【0051】
すなわち、被加熱物9がX1の位置に載置されている場合には、被加熱物9によって覆われていない温度センサ6cの検出値は、他の温度センサ6の検出値と比べると低いが、温度センサ6cは被加熱物9との距離が近いため、天板2を介した伝熱によって他の温度センサ6の検出値と近い値となりうる。
一方、被加熱物9がX2の位置に載置されている場合にも、被加熱物9によって覆われていない温度センサ6cの検出値は、他の温度センサ6の検出値と比べると低い値となる。そして、被加熱物9がX1の位置に載置されている場合と比べると、温度センサ6cは被加熱物9からの距離が遠いため、検出値の上昇はあまり見込めない。すなわち、温度センサ6cによって検出される最小値Tminと、他の温度センサ6により検出される最大値Tmaxとの差が大きくなる。
そこで、例えばX2に示す位置に被加熱物9が載置された場合に、「鍋ずれ」であると判断できるよう、所定のしきい値Aを定める。
【0052】
本実施の形態1のように、一つの加熱口に対して複数の加熱コイルを備えた構成の場合、被加熱物9の載置位置や形容の自由度を高めつつ効率よく加熱することができることが特徴の一つであるが、例えば被加熱物9が極端にずれた位置に配置されている場合には効率よい加熱が困難であり、また、加熱は可能であっても温度センサ6の検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合には、被加熱物9が温度過昇状態となっていることも考えられる。本実施の形態1では、載置位置検知部131による被加熱物9の載置位置の検知に加え、温度センサ6の検出値に基づいた載置位置検知部132による被加熱物9の検知を行うことで、被加熱物9の位置をより精度良く検出することができる。
【0053】
図6の説明に戻る。
ステップS9にて、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えていない場合、すなわち鍋ずれではない場合には(S9;No)、制御部13は、設定された火力を得るための制御を継続する(S15)。
【0054】
一方、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合には(S9;Yes)、制御部13は、報知部16を制御して、使用者に対して鍋ずれである旨の報知を行う(S10)。このように報知を行うことで、使用者に対して被加熱物9の載置状態の確認を促している。
報知は、表示部7にてランプを点灯したり警告メッセージを表示したりしてもよいし、これに代えてあるいはこれに加えて、図示しないブザーやスピーカにて音声を出力してもよい。このようにすることで、使用者に鍋ずれが生じていることを認識させることができる。
【0055】
ステップS10にて被加熱物9の載置位置に関する報知を行った後、制御部13は、再び、各温度センサ6による温度検出値の最大値Tmaxと最小値Tminを取得し(S11)、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えているか否か判断する(S12)。ここでは、報知によって使用者が鍋ずれを解消したか否かを、温度センサ6の検出温度に基づいて判断しているのである。
【0056】
そして、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えていない場合、すなわち、鍋ずれが解消された場合には(S12;No)、ステップS2に戻って載置位置検知部131による被加熱物9の載置位置を検出し、設定された火力を得るための制御を継続する。
【0057】
一方、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合、すなわち、鍋ずれ状態が継続している場合には(S12;Yes)、制御部13は、ステップS10にて報知を行ってから所定時間αが経過したか否か判断する(S13)。所定時間αの経過前においては(S13;No)、制御部13は、ステップS11に戻って最大値Tmaxと最小値Tminに基づく鍋ずれの判断を行う。所定時間αが経過した場合には(S13;Yes)、制御部13は、操作部8にて設定された火力に対して火力制限を行うよう、駆動制御部12を制御して加熱コイルに供給する高周波電流を変更する(S14)。このようにすることで、鍋ずれ状態が生じている場合における被加熱物9や加熱コイルの過度な昇温を抑制することができる。
【0058】
次に、図6に示した誘導加熱調理器の加熱動作の応用例を説明する。
【0059】
(ステップS14の応用例)
(1)火力制限の動作例
火力制限を行う場合には、駆動中の加熱コイルのすべてについて、投入電力を低下または停止させてもよい。このようにすることで、被加熱物9や加熱コイル全体の急激な温度上昇を抑制することができる。
また、各加熱コイルと各温度センサ6とを両者の近接度合いによって予め対応づけておき、複数の加熱コイルのうち、最小値Tminを検出した温度センサ6の近傍に配置されている加熱コイルへの投入電力を、選択的に低下または停止させてもよい。また、最小値Tminを検出した温度センサ6の方向(加熱コイルの中央を基準とした方向)に配置されている加熱コイルへの投入電力を、選択的に低下または停止させてもよい。すなわち、温度センサ6の検出温度に基づいて、被加熱物9が載置されていない、あるいは載置面積が小さい可能性の高い加熱コイルを判定し、その加熱コイルについて選択的に投入電力を低下または停止させるのである。このようにすることで、被加熱物9の加熱に寄与しない無駄な電力を削減でき、また、加熱コイルの過度な温度上昇を抑制することができる。
【0060】
(2)火力制限前の動作
鍋ずれの検知に伴って火力制限を行う前に、報知部16により、火力制限を行う旨の報知を行ってもよい。このようにすることで、使用者に対して鍋ずれの解消を促すことができる。そして、火力制限を行う旨の報知を行った後、再び温度センサ6の検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分としきい値Aとの比較を行い、差分がしきい値Aを下回っていれば、報知部16による報知を停止するとともに、火力制限を行わないこととする。鍋ずれが解消されれば、火力制限が行われないため、使用者にとっての調理感を損なうこともなく、使い勝手のよい誘導加熱調理器とすることができる。なお、火力制限を行う旨の報知を行った後においても、最大値Tmaxと最小値Tminの差分がしきい値よりも大きい場合には火力制限を行うものとする。
【0061】
(ステップS9〜S14の応用例)
図6では、ステップS9にて鍋ずれが検知された場合、ステップS10にて鍋ずれの報知を行った後、所定時間αが経過してから火力制限を行うものとして説明した。しかし、制御部13は、ステップS9にて鍋ずれを検知した場合、鍋ずれの報知と火力制限を、同時に行うこととしてもよい。このようにすることで、より早期に火力制限が行え、被加熱物9や加熱コイルの過度な温度上昇を抑制することができる。
【0062】
(載置位置検知部132による鍋ずれ判断の応用例)
上記説明では、複数の温度センサ6の検出値の最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えたか否かにより、被加熱物9の載置位置を判断(鍋ずれ判断)する例を示した。しかし、温度センサ6の検出値の単位時間当たりの上昇量に基づいて、当該温度センサ6の上方に被加熱物9が載置されているか否かを判断することもできる。例えば、複数の温度センサ6の検出値の単位時間当たりの上昇量を比較し、ある温度センサ6の検出値の上昇量が所定のしきい値より小さい場合や、他の温度センサ6と比べて上昇量が小さい場合に、当該温度センサ6の上方に被加熱物9が載置されていないと判断することができる。
【0063】
(載置位置検知部131と載置位置検知部132と判断結果の比較による異常判断)
載置位置検知部131により検出された被加熱物9の載置位置と、載置位置検知部132により検出された被加熱物9の載置位置とが一致しない場合には、異常が生じたものとして、これを報知部16により報知するとともに投入電力を低下または停止するようにしてもよい。
【0064】
以上のように、本実施の形態1では、独立して駆動可能な中央コイル4と複数の周辺コイル5を備えた第一加熱部3aにおいて、中央コイル4と周辺コイル5との間に複数の温度センサ6を配置した。そして、載置位置検知部131により、各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態を検出するとともに、載置位置検知部132により、複数の温度センサ6の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置を検出するようにした。このため、被加熱物9の載置位置をより精度よく検出することができる。
【0065】
また、駆動中の加熱コイルとの配置関係に基づいて、載置位置検知部132が被加熱物9の載置位置を判断するに際して参照する温度センサ6を選定するようにした。より詳しくは、駆動中の加熱コイルの近傍に配置された温度センサ6の検出値に基づいて、載置位置検知部132が被加熱物9の載置位置を検出するようにした。このため、鍋ずれ判断の誤判定を低減できる。例えば、参照する温度センサ6が、駆動中の加熱コイルの配置とは無関係に定められていると、加熱コイルから離れた温度センサ6の値を参照する場合もある。このような場合、当該温度センサ6は、被加熱物9からも離れているということであり、当該温度センサ6は大きな温度上昇を検出できず、当該温度センサ6が検出する最小値Tminと他の温度センサ6が検出する最大値Tmaxとの差異が大きくなり、鍋ずれと判断される可能性がある。すなわち、本実施の形態1のように独立駆動される複数の加熱コイルを備えた構成においては加熱の継続が可能であるにもかかわらず、鍋ずれと判断してしまい、結果として加熱を継続できないということが生じうる。しかし、本実施の形態1では、駆動中の加熱コイルとの配置関係に基づいて検出値を参照する温度センサ6を選定するようにしたので、このような鍋ずれ判断の誤判定を低減することができる。
【0066】
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、被加熱物9の載置位置として鍋ずれを判断する例を示したが、本実施の形態2では、鍋ずれに加え、被加熱物9の鍋反り(被加熱物9の底面が反った状態)を検出する動作例を説明する。なお、本実施の形態2の誘導加熱調理器の基本的な構成は実施の形態1と同様であり、本実施の形態2では誘導加熱調理器の動作を中心に説明する。
【0067】
図8は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱コイル及び温度センサと被加熱物の位置関係の例を示す図である。図8では、被加熱物9の載置位置の例を、符号X1にて示している。図9は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱動作を説明するフローチャートである。以下、適宜図8を参照しつつ、図9に沿って実施の形態2に係る誘導加熱調理器の動作を説明する。
【0068】
ステップS1〜ステップS6については、実施の形態1で示した図6のステップS1〜S6と同様である。
【0069】
本実施の形態2では、ステップS6にて駆動中の加熱コイルに対応した温度センサ6を選択した後、選択された温度センサ6の中から、中央センサCTを決定する(S6A)。
ここで、中央センサCTとは、ステップS6にて選択された温度センサ6のうち、被加熱物9の載置範囲内に配置されていると推定される温度センサ6である。より好ましくは、中央センサCTは、ステップS6にて選択された温度センサ6のうち、被加熱物9の中央により近いと推定される温度センサ6である。
【0070】
ここで、中央センサCTの選択方法について説明する。
中央センサCTは、被加熱物9の載置範囲内に配置されていると推定される温度センサ6であり、駆動中の加熱コイルの組み合わせ毎に定められる。すなわち、ある組み合わせで加熱コイルが駆動されているとして(1つの加熱コイルが駆動されている場合も含む)、当該組み合わせとなるときの被加熱物9の載置領域を推定し、この被加熱物9の載置範囲内に配置されていると推定されている温度センサ6を、中央センサCTとする。
より好ましくは、ある組み合わせで加熱コイルが駆動されているとして(1つの加熱コイルが駆動されている場合も含む)、当該組み合わせとなるときの被加熱物9の載置領域を推定し、この被加熱物9の中央により近いと推定される温度センサ6を、中央センサCTとする。後述するように中央センサCTの検出値は、被加熱物9の鍋反りを判断するための情報として用いられるため、鍋反りが生じやすい被加熱物9の中央に近い位置に配置された温度センサ6を中央センサCTとすることで、鍋反りを検出しやすい。
【0071】
例えば、図8では、中央コイル4、周辺コイル5a、5dが駆動され、温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6iが選択されているものとする。この場合、本実施の形態2では、駆動中の加熱コイル(中央コイル4、周辺コイル5a、5d)のほぼ中央に位置する温度センサ6aが中央センサCTとなるよう、予め加熱コイルと各温度センサ6との対応付けが設定されている。
駆動中の加熱コイルの組み合わせにおいてどの温度センサ6を中央センサCTとするかは、各加熱コイルと各温度センサ6の配置関係に基づいて予め定められており、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0072】
図9の説明に戻る。
ステップS7〜ステップS9については、実施の形態1で示した図6のステップS7〜S9と同様である。
【0073】
ステップS9にて、最大値Tmaxと最小値Tminの差分が所定のしきい値Aを超えている場合には(S9;Yes)、制御部13は、最小値Tminが、中央センサCTの検出値であるか否か判断する(S9A)。最小値Tminが、中央センサCTの検出値でなければ(S9A;No)、ステップS10に進む。
【0074】
一方、最小値Tminが、中央センサCTの検出値であれば(S9A;Yes)、鍋反り制御を行う(S9B)。
【0075】
ここで、被加熱物9の鍋反りの判断について説明する。図10は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の被加熱物の鍋反りの判断処理を説明する図である。図10(a)では、被加熱物9を横から見た場合における加熱コイルと温度センサの配置及び動作を示し、図10(b)では、加熱時間の経過に伴う各温度センサの検出温度の変化例を模式的に示している。なお、図10では、実施の形態2における中央コイル4と複数の周辺コイル5を、加熱コイルa〜eとして概念的に示し、複数の温度センサ6を温度センサa〜dとして概念的に示している。
【0076】
図10(a)に示すように、加熱コイルa、b、c、dの上方に被加熱物9が載置されており、加熱コイルa〜dが駆動中(ON)、加熱コイルeが停止中(OFF)であるものとする。そして、温度センサa、b、c、dの検出値のすべてを参照するものとする。
また、被加熱物9は、鍋底の中央部が上方に向かって凹んでおり、鍋反りの状態であるものとする。
この場合、図10(b)に示すように、被加熱物9の底面のうち天板2に接している部分に対応する温度センサa、cの検出温度は、加熱時間の経過とともに上昇していく。しかし、被加熱物9の鍋反り部分(上方に向かって凹んだ部分)に対応した位置にある温度センサbの検出温度は、天板2を介した伝熱によって上昇するものの、被加熱物9の反りの程度にもよるが温度センサa、cの検出温度と比べると低い温度となる。
【0077】
このように、最大値Tmaxと最小値Tminとの差分が所定のしきい値Aを超えている場合においては、最小値Tminを検出した温度センサ6の上方の天板2には、鍋ずれあるいは鍋反りによって被加熱物9が接していないと捉えることができる。
そして、最小値Tminを検出した温度センサ6が、中央センサCTである場合には、鍋反りであると判断することができる。
【0078】
なお、被加熱物9によって覆われていない温度センサdの検出温度は、天板2を介した伝熱によって上昇するものの、温度センサa、cの検出温度と比べると低い温度となる点は、実施の形態1で示した通りであり、図10(b)では図示を省略する。
【0079】
図9の説明に戻る。
ステップS9Aにて最小値Tminを検出した温度センサ6が中央センサCTである場合、すなわち被加熱物9が鍋反り状態であると判断した場合には(S9A;Yes)、制御部13は、鍋反り状態である場合の専用の制御シーケンスにより、駆動制御部12や報知部16を制御する(S9B)。
【0080】
ステップS9Bにおける処理としては、例えば、報知部16により被加熱物9が加熱に適さないものである旨の報知を行い、また、駆動制御部12を制御して加熱コイルによる加熱を停止させることができる。被加熱物9が鍋反り状態である場合には、反っている部分の温度検出を精度よく行うことができないので、操作部8にて設定された条件で加熱制御を行うのは困難である。このため、鍋反りが検出された場合には、報知を行うとともに加熱を停止することで、使用者に対して被加熱物9の交換を促すようにする。
【0081】
また、ステップS9Bにおける他の処理としては、例えば、中央センサCTの位置への加熱に最も寄与する加熱コイルによる加熱を、選択的に低下あるいは停止させることができる。すなわち、温度センサ6に、当該温度センサ6が中央センサCTとされた場合に停止させるべき加熱コイルを予め対応づけて記憶装置(図示せず)に記憶させておく。そして、鍋ずれが検知された場合には、中央センサCTに対応する加熱コイルによる加熱を、選択的に低下させ、あるいは停止させる。本実施の形態2の各加熱コイルは、独立して駆動可能であるので、鍋反り部分に対応する加熱コイルに対する個別制御が可能である。このようにすることで、被加熱物9に対する加熱を継続しつつ、温度検出を精度よく行いにくい鍋反り部分に対する加熱を抑制して過度な温度上昇を抑制することができる。
【0082】
ステップS10〜ステップS14、ステップS15、ステップS16については、実施の形態1で示した図6のステップS10〜ステップS14、ステップS15、ステップS16と同様である。
【0083】
次に、図9に示した誘導加熱調理器の加熱動作の応用例を説明する。
【0084】
(ステップS9Aの応用例)
上記説明では、最小値Tminを検出した温度センサ6が中央センサCTである場合には鍋反りであると判断することとして説明した。しかし、最小値Tminを検出した温度センサ6が中央センサCTである場合に、さらに、最大値Tminと最小値Tminの差異が、所定のしきい値B(但し、しきい値Bはしきい値Aよりも大きい値)を超えている場合に、鍋反りであると判断してもよい。このようにすることで、例えば反り量が少ない被加熱物9であれば鍋反りと判断されにくくなり、使用可能な被加熱物9の自由度が高まる。この場合、しきい値Bは、鍋反りがある場合でも被加熱物9の温度制御が可能なものについては鍋反りと判断しないような値に設定する。
【0085】
以上のように、本実施の形態2では、独立して駆動可能な中央コイル4と複数の周辺コイル5を備えた第一加熱部3aにおいて、中央コイル4と周辺コイル5との間に複数の温度センサ6を配置した。そして、載置位置検知部131により、各加熱コイル上への被加熱物9の載置状態(載置の有無)を検出するとともに、載置位置検知部132により、複数の温度センサ6の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置と被加熱物9の鍋反り状態を検出するようにした。このため、実施の形態1で説明した効果に加え、被加熱物9の鍋反り状態を判定することができる。被加熱物9が鍋反り状態である場合、その反った部分に対応する温度センサ6は、被加熱物9との距離が離れているために被加熱物9の温度を精度よく検出することができず、操作部8にて設定された条件での被加熱物9の温度制御(加熱)が困難であるが、鍋反り状態を検出することで、鍋反り状態に応じた加熱制御が可能となる。
【0086】
被加熱物9が鍋反り状態であると検出された場合には、加熱を抑制あるいは停止することで、被加熱物9の過度の温度上昇を抑制することができる。また、被加熱物9が鍋反り状態であると検出された場合には、報知部16により報知することで、被加熱物9の交換を使用者に促すことができる。
【0087】
実施の形態3.
本実施の形態3では、加熱コイルの他の構成例を説明する。なお、本実施の形態3は、加熱コイルの構成と温度センサの配置に特徴を有するものであり、前述の実施の形態1または実施の形態2と組み合わせて用いることができる。
図11は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【0088】
中央コイル40と周辺コイル50は、円形の平面形状を有し、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線が円周方向に巻回されることにより構成されている。本実施の形態3では、中央コイル40の方が周辺コイル50よりも径が大きく、また、導電線の巻数も多いが、これに限定するものではない。実施の形態1の中央コイル4は、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとからなるいわゆる二重コイルであったが、本実施の形態3の中央コイル40は、一重コイルである。
【0089】
また、本実施の形態3では、6つの周辺コイル50(周辺コイル50a、50b、50c、50d、50e、50fと区別して称する場合がある)が設けられている。各周辺コイル50は、中央コイル40の外周側に、円形上に実質的に沿うようにしてほぼ等間隔で配置されている。なお、周辺コイル50の数や配置は、図示のものに限定されない。
【0090】
中央コイル40と周辺コイル50は、それぞれ対応する駆動回路10によって電流制御され、独立して駆動される。
【0091】
本実施の形態3では、複数の温度センサ60が設けられており、それぞれを温度センサ60a、60b・・・のように区別して表記する。温度センサ60aは中央コイル40と周辺コイル50aの間に配置され、温度センサ60bは中央コイル40と周辺コイル50bの間に配置され、温度センサ60cは中央コイル40と周辺コイル50cの間に配置され、温度センサ60dは中央コイル40と周辺コイル50dの間に配置され、温度センサ60eは中央コイル40と周辺コイル50eの間に配置され、温度センサ60fは中央コイル40と周辺コイル50fの間に配置されている。
また、温度センサ60g、60hは、環状に構成された中央コイル40の中央の空間に配置されており、この温度センサ60g、60hの配置位置は、第一加熱部3aのほぼ中央(すなわち、当該加熱口のほぼ中央)に対応している。
【0092】
実施の形態1、2で示したように、載置位置検知部132は、複数の温度センサ60の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置や鍋反りを検出する。鍋ずれや鍋反りを判断するに際して参照される温度センサ60は、実施の形態1で示したように、駆動中の加熱コイルと対応付けられた温度センサ60となる。
駆動中の加熱コイルと各温度センサ60との対応付けは、ある加熱コイルが駆動中である場合に被加熱物9の温度をより検出しやすい温度センサ60が対応付けられるようにして、加熱コイルと温度センサ60の配置関係に基づいて予め定められており、この対応付けに関する情報は図示しない記憶装置に記憶されている。
【0093】
本実施の形態3では、例えば、中央コイル40が駆動中であれば温度センサ60g、60hを参照するよう対応付けられている。また、中央コイル40と周辺コイル50aが駆動中であれば、温度センサ60g、60hに加え、両加熱コイルに挟まれた位置に配置された温度センサ60aを参照するように対応付けられている。同様にして、中央コイル40と周辺コイル50bが駆動中であれば温度センサ6b、中央コイル40と周辺コイル50cが駆動中であれば温度センサ6c、中央コイル40と周辺コイル50dが駆動中であれば温度センサ6d、中央コイル40と周辺コイル50eが駆動中であれば温度センサ6e、中央コイル40と周辺コイル50fが駆動中であれば温度センサ6fを、温度センサ60g、60hに加えて参照するよう、対応付けられている。
【0094】
なお、ここで説明した加熱コイルと各温度センサ60との対応付けは一例であり、各加熱コイル上に被加熱物9が載置された場合にその被加熱物9の温度を検出しやすい位置に設けられた温度センサ60を対応付けるとよい。
また、図11の例では加熱コイルの数(1つの中央コイル40、6つの周辺コイル50)と同数の温度センサ60を設ける例を示しているが、例えば、図11に破線で示す温度センサ60xのように、中央コイル40と2つの周辺コイル50とに囲まれた空間に設けることもでき、この場合には、中央コイル40に加え、周辺コイル50aと周辺コイル50bの少なくとも何れか一方が駆動している場合に温度センサ60xを参照するよう、対応付けることができる。
【0095】
以上のように、本実施の形態3のような加熱コイルと温度センサの配置を採用してもよく、実施の形態1または実施の形態2と組み合わせることで、同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態3で示した中央コイル40に代えて、実施の形態1で示したいわゆる二重コイルである中央コイル4を採用してもよい。
【0096】
実施の形態4.
本実施の形態4では、加熱コイルと温度センサの他の構成例を説明する。なお、本実施の形態4は、加熱コイルの構成と温度センサの配置に特徴を有するものであり、前述の実施の形態1または実施の形態2と組み合わせて用いることができる。
図12は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと温度センサの配置を説明する図である。
【0097】
中央コイル4は、実施の形態1で示したものと同様の構成であり、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線が円周方向に巻回されて構成され円形の平面形状を有する内側中央コイル4aと、内側中央コイル4aよりも径方向外側において導電線が円周方向に巻回されて構成され環状の平面形状を有する外側中央コイル4bとを有する。内側中央コイル4aと外側中央コイル4bは、本実施の形態4では直列に接続されており、単一の駆動回路10(インバータ回路)で駆動される。なお、内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとを並列接続してもよく、この場合は、それぞれ独立した駆動回路(インバータ回路)を用いて駆動することができる。
【0098】
また、本実施の形態4では、4つの周辺コイル500(周辺コイル500a、500b、500c、500dと区別して称する場合がある)が設けられている。周辺コイル500は、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線を、ほぼ1/4円弧状の平面形状を成す環状に巻き回して構成されている。周辺コイル500の中央コイル4に近接する側のほぼ円弧状の辺は、所定間隔をおいて中央コイル4の円形の外周にほぼ沿っており、中央コイル4と周辺コイル500との間には所定長さの円弧状の空間が設けられている。
【0099】
4つの周辺コイル500は、中央コイル4の円形の外形にほぼ沿うようにして、中央コイル4の外側に配置されている。各周辺コイル500は、中央コイル4に対してほぼ90°ずつずれた配置となっている。なお、周辺コイル500の数は4つに限定されるものではない。
【0100】
中央コイル4と周辺コイル500は、それぞれ対応する駆動回路10によって電流制御され、独立して駆動される。
【0101】
本実施の形態4では、複数の温度センサ600が設けられており、それぞれを温度センサ600a、600b・・・のように区別して表記する。
【0102】
内側中央コイル4aと外側中央コイル4bとの間に設けられた環状の隙間には、温度センサ600a、600b、600c、600dが、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるよう配置されている
また、中央コイル4と周辺コイル500dとの間に温度センサ600eが、中央コイル4と周辺コイル500aとの間に温度センサ600fが、中央コイル4と周辺コイル500bとの間に温度センサ600gが、中央コイル4と周辺コイル500cとの間に温度センサ600hが配置されている。温度センサ600e、600f、600g、600hは、隣り合うもの同士の距離がほぼ等しくなるように配置されている。
また、第一加熱部3aの中央から延びる放射線を仮定すると、温度センサ600a〜600dと、温度センサ600e〜600hは、同一の放射線上にならないよう配置されている。このようにすることで、第一加熱部3aの中央部から見た温度センサ600の配置方向の偏りを低減し、多数の方向に温度センサ600を配置している。
【0103】
また、温度センサ600iは、環状に構成された内側中央コイル4aの中央の空間に配置されており、この温度センサ600iの配置位置は、第一加熱部3aのほぼ中央(すなわち、当該加熱口のほぼ中央)に対応している。
【0104】
実施の形態1、2で示したように、載置位置検知部132は、複数の温度センサ600の検出値に基づいて、被加熱物9の載置位置や鍋反りを検出する。鍋ずれや鍋反りを判断するに際して参照される温度センサ600は、実施の形態1で示したように、駆動中の加熱コイルと対応付けられた温度センサ600となる。
駆動中の加熱コイルと各温度センサ600との対応付けは、ある加熱コイルが駆動中である場合に被加熱物9の温度をより検出しやすい温度センサ600が対応付けられるようにして、加熱コイルと温度センサ600の配置関係に基づいて予め定められており、この対応付けに関する情報は図示しない記憶装置に記憶されている。
【0105】
本実施の形態4では、例えば、中央コイル4が駆動中であれば温度センサ600a、600b、600c、600d、600iを参照するように対応付けられている。また、中央コイル4と周辺コイル50aが駆動中であれば、これらに挟まれた位置に配置された温度センサ600eを600a、600b、600c、600d、600iに加えて参照するように対応付けられている。同様にして、中央コイル4と周辺コイル500bが駆動中であれば温度センサ600f、中央コイル4と周辺コイル500cが駆動中であれば温度センサ600g、中央コイル4と周辺コイル500dが駆動中であれば温度センサ600hを、600a、600b、600c、600d、600iに加えて参照するよう、対応付けられている。
【0106】
なお、ここで説明した加熱コイルと各温度センサ600との対応付けは一例であり、各加熱コイル上に被加熱物9が載置された場合にその被加熱物9の温度を検出しやすい位置に設けられた温度センサ600を対応付けるとよい。
また、例えば、図12に破線で示す温度センサ600xのように、中央コイル4と2つの周辺コイル500とに囲まれた空間に設けることもでき、この場合には、中央コイル4に加え、周辺コイル500aと周辺コイル500bの少なくとも何れか一方が駆動している場合に温度センサ600xを参照するよう、対応付けることができる。
【0107】
以上のように、本実施の形態4のような加熱コイルと温度センサの配置を採用してもよく、実施の形態1または実施の形態2と組み合わせることで、同様の効果を得ることができる。
【0108】
なお、上記説明では、第一加熱部3a、第二加熱部3b、及び第三加熱部3cのうちいずれかの加熱手段を、例えば輻射によって加熱するタイプの電気ヒータ(例えばニクロム線やハロゲンヒータ、ラジエントヒータ)で構成してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 本体、2 天板、3a 第一加熱部、3b 第二加熱部、3c 第三加熱部、4 中央コイル、4a 内側中央コイル、4b 外側中央コイル、5 周辺コイル、5a 周辺コイル、5b 周辺コイル、5c 周辺コイル、5d 周辺コイル、6 温度センサ、7 表示部、7a 表示部、7b 表示部、7c 表示部、8 操作部、8a 操作部、8b 操作部、8c 操作部、9 被加熱物、10 駆動回路、11 回路部、12 駆動制御部、13 制御部、14 負荷検知部、15 温度検出部、16 報知部、17 吸気口、18 排気口、40 中央コイル、50 周辺コイル、60 温度センサ、131 載置位置検知部、132 載置位置検知部、500 周辺コイル、600 温度センサ、CT 中央センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が載置される天板と、
加熱口に対応して前記天板の下方に配置され、前記天板に載置された被加熱物を誘導加熱する加熱コイル群と、
前記加熱コイル群を構成する複数の加熱コイルのそれぞれに、独立して高周波電流を供給する複数の駆動部と、
前記加熱口に対応して設けられた複数の温度検知装置と、
前記複数の加熱コイルのそれぞれの上方に前記被加熱物が載置されているか否かを検知する第一載置位置検知部と、
前記複数の温度検知装置の検出値に基づいて、前記加熱口における前記被加熱物の載置位置を検知する第二載置位置検知部と、
前記第一載置位置検知部の検知結果及び前記第二載置位置検知部の検知結果に基づいて、前記複数の加熱コイルに供給する高周波電流を可変するよう前記駆動部を制御する制御部とを備えた
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記第二載置位置検知部は、
前記第一載置位置検知部の検知結果に基づいて、前記複数の温度検知装置の中からさらに複数の温度検知装置を選択し、当該選択された温度検知装置の検出値に基づいて、前記加熱口における前記被加熱物の載置位置を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱コイル群を構成する加熱コイルと、前記複数の温度検知装置のそれぞれは、予め配置関係に基づいて対応付けられており、
前記第二載置位置検知部は、
前記第一載置位置検知部によって上方に前記被加熱物が載置されていると判断された前記加熱コイルに対応付けられた前記温度検知装置を選択する
ことを特徴とする請求項2記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記第二載置位置検知部は、
前記複数の温度検知装置の検出値の最大値と最小値との差異が、所定のしきい値を超えたか否かにより、前記被加熱物が予め定められた領域から外れて載置された状態である鍋ずれを検知し、
前記制御部は、
前記鍋ずれが検知された場合には、前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよう、前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記第二載置位置検知部は、
前記複数の温度検知装置の検出値の最小値と最大値との差異が、所定のしきい値を超えた場合であって、前記最小値を検出した前記温度検知装置の設置位置が、前記第一載置位置検知部の検知結果により推定される前記被加熱物の載置範囲内であるか否かにより、前記被加熱物の底が反った状態である鍋反りを検知し、
前記制御部は、
前記鍋反りが検知された場合には、前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよう、前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記第二載置位置検知部は、
前記複数の温度検知装置の検出値の最小値と最大値との差異が、所定の第一しきい値を超え、かつ、前記最小値を検出した前記温度検知装置の設置位置が、前記第一載置位置検知部の検知結果により推定される前記被加熱物の載置範囲内である場合に、前記最小値と最大値との差異が、前記第一しきい値よりも大きい値である第二しきい値を超えたか否かにより、前記被加熱物の底が反った状態である鍋反りを検知し、
前記制御部は、
前記鍋反りが検知された場合には、前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよう、前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記鍋ずれが検知された場合に報知を行う報知部を備えた
ことを特徴とする請求項4記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記鍋反りが検知された場合に報知を行う報知部を備えた
ことを特徴とする請求項5または請求項6記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記報知部は、前記制御部が前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよりも前に報知を行う
ことを特徴とする請求項7または請求項8記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記第二載置位置検知部は、前記報知部による報知が行われた後、再び、前記被加熱物の載置位置を検知する
ことを特徴とする請求項9記載の誘導加熱調理器。
【請求項11】
前記第二載置位置検知部の検知結果に基づいて前記加熱コイルへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させる前に、高周波電流の供給を抑制する旨の報知を行う報知部を備えた
ことを特徴とする請求項4〜請求項10のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項12】
前記加熱コイル群を構成する前記加熱コイルとして、中央コイルと、前記中央コイルの周辺に配置された複数の周辺コイルとを備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項1】
被加熱物が載置される天板と、
加熱口に対応して前記天板の下方に配置され、前記天板に載置された被加熱物を誘導加熱する加熱コイル群と、
前記加熱コイル群を構成する複数の加熱コイルのそれぞれに、独立して高周波電流を供給する複数の駆動部と、
前記加熱口に対応して設けられた複数の温度検知装置と、
前記複数の加熱コイルのそれぞれの上方に前記被加熱物が載置されているか否かを検知する第一載置位置検知部と、
前記複数の温度検知装置の検出値に基づいて、前記加熱口における前記被加熱物の載置位置を検知する第二載置位置検知部と、
前記第一載置位置検知部の検知結果及び前記第二載置位置検知部の検知結果に基づいて、前記複数の加熱コイルに供給する高周波電流を可変するよう前記駆動部を制御する制御部とを備えた
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記第二載置位置検知部は、
前記第一載置位置検知部の検知結果に基づいて、前記複数の温度検知装置の中からさらに複数の温度検知装置を選択し、当該選択された温度検知装置の検出値に基づいて、前記加熱口における前記被加熱物の載置位置を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱コイル群を構成する加熱コイルと、前記複数の温度検知装置のそれぞれは、予め配置関係に基づいて対応付けられており、
前記第二載置位置検知部は、
前記第一載置位置検知部によって上方に前記被加熱物が載置されていると判断された前記加熱コイルに対応付けられた前記温度検知装置を選択する
ことを特徴とする請求項2記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記第二載置位置検知部は、
前記複数の温度検知装置の検出値の最大値と最小値との差異が、所定のしきい値を超えたか否かにより、前記被加熱物が予め定められた領域から外れて載置された状態である鍋ずれを検知し、
前記制御部は、
前記鍋ずれが検知された場合には、前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよう、前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記第二載置位置検知部は、
前記複数の温度検知装置の検出値の最小値と最大値との差異が、所定のしきい値を超えた場合であって、前記最小値を検出した前記温度検知装置の設置位置が、前記第一載置位置検知部の検知結果により推定される前記被加熱物の載置範囲内であるか否かにより、前記被加熱物の底が反った状態である鍋反りを検知し、
前記制御部は、
前記鍋反りが検知された場合には、前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよう、前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記第二載置位置検知部は、
前記複数の温度検知装置の検出値の最小値と最大値との差異が、所定の第一しきい値を超え、かつ、前記最小値を検出した前記温度検知装置の設置位置が、前記第一載置位置検知部の検知結果により推定される前記被加熱物の載置範囲内である場合に、前記最小値と最大値との差異が、前記第一しきい値よりも大きい値である第二しきい値を超えたか否かにより、前記被加熱物の底が反った状態である鍋反りを検知し、
前記制御部は、
前記鍋反りが検知された場合には、前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよう、前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記鍋ずれが検知された場合に報知を行う報知部を備えた
ことを特徴とする請求項4記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記鍋反りが検知された場合に報知を行う報知部を備えた
ことを特徴とする請求項5または請求項6記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記報知部は、前記制御部が前記複数の加熱コイルのうち少なくともいずれかへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させるよりも前に報知を行う
ことを特徴とする請求項7または請求項8記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記第二載置位置検知部は、前記報知部による報知が行われた後、再び、前記被加熱物の載置位置を検知する
ことを特徴とする請求項9記載の誘導加熱調理器。
【請求項11】
前記第二載置位置検知部の検知結果に基づいて前記加熱コイルへの高周波電流の供給を選択的に低下もしくは停止させる前に、高周波電流の供給を抑制する旨の報知を行う報知部を備えた
ことを特徴とする請求項4〜請求項10のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項12】
前記加熱コイル群を構成する前記加熱コイルとして、中央コイルと、前記中央コイルの周辺に配置された複数の周辺コイルとを備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−54951(P2013−54951A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192936(P2011−192936)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
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