説明

誘導灯装置

【課題】誘導効果が高く、しかも催し会場や美術館等のように通路の形態が頻繁に変更される場所に容易に対応できる誘導灯装置を提供することにある。
【解決手段】誘導灯装置Aは有機EL発光素子10からなる可撓性を有するシート状のセグメント発光体1を誘導方向に沿って複数連接して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時等において人を誘導する誘導灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、避難誘導のための誘導灯装置は、ビル、劇場、ホテル等多数の人が出入りする場所に設置されているが、壁面に取り付けられたり、天井からの吊り下げられ、非常用出口の存在方向を示す矢印を表示したり、非常用出口の存在場所を示す絵文字が表示されるものが一般的であった。
【0003】
このような誘導灯装置以外に例えば廊下に沿って複数のランプを床面に埋設した誘導灯装置(例えば特許文献1)や、廊下の天井面にLEDをライン状に埋設し、非常時には間引き点灯させる誘導灯装置(特許文献2)等もある。
【特許文献1】特開平6−15014号公報(図5)
【特許文献2】特開2006−32364号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1,2に記載されている誘導灯装置は、廊下に沿って照明されるため、避難誘導には効果的であるが、床面や、天井等に埋設する恒久的な設備構成であるため、催し会場や、美術館等展示内容に応じた通路を変更させるような場所には対応できなかった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、誘導効果が高く、しかも催し会場や美術館等のように通路の形態が頻繁に変更される場所に容易に対応できる誘導灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、有機EL発光素子からなる可撓性を有する矩形状のセグメント発光体を誘導方向に沿ってライン状に複数連接して構成されることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、各セグメント発光体に駆動部を備えるとともに、外部からの情報に基づいて各セグメント発光体の駆動部を制御して各セグメント発光体の発光状態を変化させて情報伝達を行う制御部を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記制御部は、火報装置からの発報情報に基づいて誘導する非常用出口を判断し、当該非常用出口への誘導方向に各セグメント発光体を走査発光させることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明では、請求項2の発明において、前記制御部は、設置場所の混雑度合いを監視する監視装置から情報に基づいて当該設置場所の混雑度を判断するとともに、混雑度に応じて誘導する出口を判断し、当該出口への誘導方向に各セグメント発光体を走査発光させることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明では、請求項2の発明において、複数の誘導方向に対応するようにセグメント発光体を複数連接配置するとともに、各誘導方向を選択する入力部と、各誘導方向に対応するセグメント発光体の配置パターンを記憶する記憶部とを備え、前記制御部は前記入力部で選択された誘導方向に対応する配置パターンを前記記憶部から読み出して当該配置パターンに基づいたセグメント発光体群を当該誘導方向に走査発光させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、セグメント発光体が有機EL発光素子からなるシート状であるため、設置場所の床面や天井面に貼り付ける形で設置することができるので、埋設のための敷設工事が不要であり、しかも撤去が容易なため、催し会場や美術館等のように通路の形態が頻繁に変更される場所に簡単に対応させることができ、更に矩形状のセグメント発光体を誘導方向に沿ってライン状に複数連接して構成されるので、誘導案内の効果が高い上にセグメント発光体の数を増減することで設置場所に容易に適合できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を実施形態により説明する。
(実施形態1)
本実施形態の誘導灯装置Aは、図1(a)〜(c)に示す有機EL発光素子を光源としたセグメント発光体1を、図1(d)に示すように設置場所の通路の床面にライン状に連接配置して構成されるものである。
【0013】
セグメント発光体1は、薄い例えばポリアクリレートのフィルムのような薄く、可撓性を有する基板の表面に設けた背面電極を形成し、この背面電極の表面にEL材料を積層しして発光層を形成し、この発光層の表面に透明電極を形成し、更に透明電極の表面側に例えばポリアクリレートのフィルムからなる可撓性を有する透明シートで覆い、表面側に長方形状の発光面を形成した有機EL発光素子10からなり、両端には背面電極に電気的に接続された例えば+極の取り出し用電極11a、11bを夫々設けるとともに、透明電極に電気的に接続された例えば−極の取り出し用電極12a、12bを設けてある。尚実施形態では両端の取り出し電極11a、11bの一方を背面電極に接続し、この一方と他方の間を銀ペース等からなる補助電極11c、11cを介して接続している。
【0014】
ここで一端(図では上端側)側の電極11a,12aの背面位置と、他端側の電極11b、12bの表面位置とを同じとすることで、セグメント発光体1を連接する際に一方のセグメント発光体1の一端側の電極11a、12aの背面を、他方のセグメント発光体1の他端側の電極11b、12bの表面に重ねることで、発光面10を面一とした状態で、夫々のセグメント発光体1同士を電気的に並列接続することができることになる。
【0015】
而して、図1(d)に示すような設置場所(図示例では例えば美術館)の通路の床面F上に通路に沿うようにセグメント発光体1をライン状に連接配置することで、通路に沿った誘導灯装置Aを設置することができる。この際各セグメント発光体1の背面を両面テープや、面状ファスナーなどで床面に貼り付ければ、展示物によって通路が変更される場合にも容易に撤去することができる上に再使用も可能となり、そのため美術館の他に、展示物などによって通路変更が頻繁に行われる催し会場等にも最適な誘導灯装置Aを提供できることになる。勿論恒久的な設備として誘導灯装置Aを設置する場合にも、埋設等の敷設工事が必要でないため、施工コストの安価な誘導灯装置Aとして提供することができる。
【0016】
尚角部で直交するようにセグメント発光体1を連接する場合には、セグメント発光体1の両側側部にも+、−用の電極を設けた角部用のセグメント発光体1を用いる
さて、上述のように複数のセグメント発光体1を連接配置して構成された誘導灯装置Aは、図2に示すように一端側に配置されるセグメント発光体1の取り出し電極11a,12a間又は11b、12b間に直流電圧を印加することで、全てのセグメント発光体1の有機EL発光素子10を発光させる駆動電源部2と、この駆動電源部2を制御する制御部3とを備えており、例えば火報装置Bから発報情報を受け取ると制御部3によって駆動電源部2を制御し、各セグメント発光体1に供給する電力を断続させることで発光状態を点滅させ、これにより非常発生を人に知らせるようになっている。尚駆動電源部2は商用電源ACから直流電圧を得る。
(実施形態2)
ところで、上述の実施形態では誘導灯装置Aを構成するセグメント発光体1の発光は一括して制御される構成であるが、本実施形態では図3に示すようにセグメント発光体1毎に発光状態を制御する発光制御部4を搭載し、駆動電源部2から供給される直流電圧上に重畳させた制御信号を制御部3から各セグメント本体1の発光制御部4毎に割り当てたアドレス宛に送り、各発光制御部4が自己宛の制御信号に基づいてスイッチ素子SWを介して有機EL発光素子10への発光電源供給を制御する構成としている。
【0017】
尚各セグメント発光体1の発光制御部4に制御部3から制御信号を送る方法としては上述のように直流電圧に重畳させるものではなく、各発光制御部4に対して制御部3から所謂ゾロ引き配線した信号線によって制御信号を送るようにしても良い。また夫々のセグメント発光体1に駆動電源部2から各別に配線した電源路から電源供給を行うようにして、夫々に駆動電源部2からの電源供給を各別に制御することで上述の走査発光を実現するようにしても良い。
【0018】
次に本実施形態の使用例を説明する。
【0019】
使用例1
本例は火災発生時の避難誘導に誘導灯装置Aを用いる例であって、例えば図4に示すように非常用出口EXが二箇所ある場所に設置するものと想定して誘導灯装置Aのセグメント発光体1群の両端が夫々の非常用出口EX付近に位置するようにセグメント発光体1を連接配置する。一方制御部3に火報装置Bから送られてくる発報情報に含まれる発火場所情報から発火場所を通らずに或いは離れた場所へ退避できる非常用出口EXを判断する機能を備える。
【0020】
而して火報装置Bから発報情報があると、制御部3は発報情報に含まれる発火場所の情報に基づいて二箇所の非常用出口EXの何れを退避に用いるか判断し、この判断に基づいて誘導方向に走査発光するように各セグメント発光体1の発光制御部4へ制御信号を駆動電源部2から供給する直流電源電圧に重畳させて送信する。これにより各セグメント発光体1では発光制御部4が有機EL発光素子10に発光電源供給を制御することで、誘導灯装置A全体では発光位置が誘導方向に進行するように走査発光される。これにより人は非常用出口EXに誘導案内されることになり、スムースに且つ安全に退避行動がとれることになる。
【0021】
尚非常用出口EXが三箇所以上のある場合には上述したような角部用のセグメント発光体1をT字路など分岐点に配置することで、各非常用出口に対応した走査発光が可能となる。
【0022】
また、セグメント発光体1の有機EL発光素子10として複数の色が発光できるものを用いて、通常時の発光色(例えば緑色)と、避難誘導時での発光色(赤色)と異ならせるようにすれば、人々に注意喚起することができる。
【0023】
使用例2
本例は催し会場や美術館等で人が大勢おしかける場所で、混雑を避けてスムースに退出させる誘導案内に誘導灯装置Aを用いる例であって、例えば図5に示すように退出口EX’が二箇所ある場所に設置するものと想定して誘導灯装置Aのセグメント発光体1群の両端が夫々の退出口EX’付近に位置するようにセグメント発光体1を連接配置する。一方制御部3に人感センサや監視カメラによって人の混雑状態を監視する監視装置Cからの監視情報に基づいて人をスムースに退出できる退出口E’を判断する機能を備える。尚監視情報は例えば状態をモニタしている監視人の判断に基づいて退出口EX’を指示するように送られてくる信号であっても良い。
【0024】
而して監視情報に基づいて、制御部3は混雑を回避してスムースに退出できる退職口をか判断し、この判断に基づいて誘導方向に走査発光するように各セグメント発光体1の発光制御部4へ制御信号を駆動電源部2から供給する直流電源電圧に重畳させて送信する。
【0025】
これにより各セグメント発光体1では発光制御部4が有機EL発光素子10に発光電源供給を制御することで、誘導灯装置A全体では発光位置が誘導方向に進行するように走査発光される。これにより人は混雑回避できる退出口EX’に誘導案内されることになり、スムースに且つ安全に退出する行動がとれることになる。
【0026】
尚本例においても、退出口が三箇所以上のある場合には上述したような角部用のセグメント発光体1をT字路など分岐点に配置することで、各退出口EX’に対応した走査発光が可能となる。
【0027】
また上述の何れの使用例でも制御信号を発光制御部4へ制御部3から電圧重畳によって送信する方法を採用しているが、以外に例えばUWB(Ultra Wide Band)のような無線通信を用いて送信するようにしてもよい。
(実施形態3)
本実施形態の誘導灯装置Aは、オフィスビル等のフロアの受け付けから部屋(オフィス)へ来訪者を誘導案内するためのものであって、例えば図6(a)に示すようにフロアのメイン通路M及びメイン通路Xから分岐してから夫々の部屋Yの位置に至る複数の分岐通路X’に夫々セグメント発光体1の連接配置してメイン通路Xから分岐通路X’を経て部屋Yへ誘導案内できるようにしたものである。つまり各分岐通路X’に連接配置したセグメント発光体1群により分岐通路X’に対応する部屋Yへの誘導方向を示すようになっている。
【0028】
上述の誘導案内に対応して図6(b)に示すように、制御部3との間で有線(又は無線)で通信を行う機能と来訪者が訪問したい部屋Yに対応した誘導方向を選択するために夫々の部屋Yに対応付けた選択釦(図示せず)とを有する入力部5と、各分岐通路X’に対する誘導方向に基づいたセグメント発光体1群の配置パターンと部屋Yとの対応関係を示すテーブルを記憶する記憶部6とを備えている。
【0029】
尚入力部5は、例えばディスプレイとタッチスイッチとを組み合わせ、例えば部屋Yの部署名を例えばアイコンで表示し、来訪者によって部署名のアイコンがタッチされると、当該部屋Yの選択信号を取り込むようになっているものを用いる。
【0030】
制御部3は、入力部5との間で通信を行う機能を有するとともに、入力部5からの選択信号に基づいて対応する分岐通路X’のセグメント発光体1の配置パターンを記憶部6から読み出し、該配置パターンに対応するセグメント1発光体1群を走査発光させるように駆動電源部4を制御する機能とを備えている。
【0031】
而して、来訪者は、フロアの入り口に設置された入力部5によって自分が訪問したい部屋Yを選択すると、この選択信号が制御部3に送られ、制御部3は選択された部屋Yに対応した誘導方向を示すセグメント発光体1の配置パターンを記憶部6から読み出し、当該配置パターンに対応する分岐通路X’のセグメント発光体1群を選択された部屋Yに誘導する方向に走査発光させる制御を、駆動電源部4を通じて行う。
【0032】
一方。制御部3はメイン通路Xのセグメント発光体1群を順路方向に常時走査発光させて入場者を順路に沿った誘導するのである。
【0033】
そして入力部5で部屋Yを選択した来訪者は、分岐通路X’のセグメント発光体1の走査発光によって当該部屋Yに誘導されることになる。この場合分岐通路X’のセグメント発光体1の発光色と、メイン通路Xのセグメント発光体1の発光色とを変えることで分岐通路X’とメイン通路Xとに識別性を持たせることで、来訪者が迷わないようにする。
【0034】
尚セグメント発光体1の走査発光の制御方法は実施形態2と同じであるので説明は省略する。
【0035】
ところで、部屋Yの代わり、例えば役所、銀行等の各種窓口が複数存在するようなフロアにも本実施形態は適用できる。この場合、入力部5で来訪者が選択するのは窓口となる。
【0036】
また入場者が限定されるような美術館や催し会場での展示物への誘導案内にも本実施形態は適用できる。この場合、入力部5で来訪者が選択するのは入場者が見たい展示物となる。
【0037】
尚一度に多数の入場者や来訪者が予測される場合には、メイン通路Xと分岐通路X’との分岐点に当該分岐通路X’が誘導案内する場所、展示物等を明示するような案内板を補助的に設けておけば良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1を示し、(a)はセグメント発光体の正面図、(b)はセグメント発光体の側面図、(c)はセグメント発光体の下面図、(d)は誘導灯装置の配置例図である。
【図2】実施形態1の全体構成図である。
【図3】実施形態2に用いるセグメント発光体の構成図である。
【図4】実施形態2の使用例1の構成図である。
【図5】実施形態2の使用例2の構成図である。
【図6】(a)は実施形態3の通路のレイアウト例図、(b)は要部の構成図である。
【符号の説明】
【0039】
A 誘導灯装置
B 火報装置
F 床面
AC 商用電源
1 セグメント発光体
10 有機EL発光素子
11a,11b,12a,12b 取り出し用電極
11c 補助電極
2 駆動電源部
3 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL発光素子からなる可撓性を有すシート状のセグメント発光体を誘導方向に沿って複数連接して構成されることを特徴とする誘導灯装置。
【請求項2】
各セグメント発光体に駆動部を備えるとともに、外部からの情報に基づいて各セグメント発光体の駆動部を制御して各セグメント発光体の発光状態を変化させ情報伝達を行う制御部を備えていることを特徴とする請求項1記載の誘導灯装置。
【請求項3】
前記制御部は、火報装置からの発報情報に基づいて誘導する非常用出口を判断し、当該非常用出口への誘導方向に各セグメント発光体を走査発光させることを特徴とする請求項2記載の誘導灯装置。
【請求項4】
前記制御部は、設置場所の混雑度合いを監視する監視装置から情報に基づいて当該設置場所の混雑度を判断するとともに、混雑度に応じて誘導する出口を判断し、当該出口への誘導方向に各セグメント発光体を走査発光させることを特徴とする請求項2記載の誘導灯装置。
【請求項5】
複数の誘導方向に対応するようにセグメント発光体を複数連接配置するとともに、各誘導方向を選択する入力部と、各誘導方向に対応するセグメント発光体の配置パターンを記憶する記憶部とを備え、前記制御部は前記入力部で選択された誘導方向に対応する配置パターンを前記記憶部から読み出して当該配置パターンに基づいたセグメント発光体群を当該誘導方向に走査発光させることを特徴とする請求項2記載の誘導灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−171204(P2008−171204A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3804(P2007−3804)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】