説明

誘導用テープ、建築用内装材及び誘導方法

【課題】
視覚障害者を連続的に誘導することができ且つ視覚障害者が安心して確実に誘導先まで歩行できる誘導用テープ、建築用内装材及び誘導方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決するために講じた本発明の手段は、視覚障害者を誘導する誘導用テープであって、一定の色調または柄を有する目的別の識別単位を連続的に設けた誘導用テープとしたことであり、歩行方向を示す方向指示単位を設けた誘導用テープとしたことであり、誘導用テープを一体的に形成してなる建築用内装材としたことであり、目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出するセンサーを視覚障害者が使用する杖の先端部分に設置し、上記目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出して、その情報を視覚障害者に伝達し誘導することを特徴とする視覚障害者誘導方法としたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や建築物の通路等における視覚障害者誘導用のテープ、建築用内装材及び誘導方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、視覚障害者の誘導は通路表面に凹凸を設けて、その凹凸パターンを足裏や杖の先で視覚障害者に認識させる点字ブロックタイプのものが知られている。近年、床材にバーコードを付与し杖の先にコードリーダーを取り付けてコードを読み取って視覚障害者を誘導、警告するシステムが提案されている(特許文献1参照)。また、ICタグを内蔵したブロックを路面に設置することで視覚障害者に無線で情報を提供する方法が提案されている(特許文献2参照)。さらに、携帯電話機、インターネット網等を利用する個人ナビゲ−シヨンシステムが提案されている(特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のものについては、バーコード等のパターンを利用するため汚れの付着、傷等により誤認の恐れがあり重大事故に繋がりかねない。また、バーコード等のパターンは段差部分、分岐点等の手前に設置して誘導、警告するにはよいが、通路に連続的に設置すると通常の健常者には違和感を与え、違和感を和らげるためパターンを小さくすると誤認の恐れが増大してしまい、視覚障害者の歩行を連続的に誘導する方法には向いていない。
【0004】
特許文献2、3のものについては、多くの情報を得られる利点は大きいが、これらもまた視覚障害者の歩行を連続的に誘導する方法には向いていない。また、システムが複雑となり故障など不具合の頻度も高くなる恐れがあり、コスト的にも不利である。
【0005】
【特許文献1】特開平10−102442号公報
【特許文献2】特開2005−097972号公報
【特許文献3】特開2004−117094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、連続的な誘導が可能であり且つ視覚障害者が安心して確実に誘導先まで歩行できる誘導用テープ、建築用内装材及び誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために講じた本発明の手段は、視覚障害者を誘導する誘導用テープであって、一定の色調または柄を有する目的別の識別単位を連続的に設けた誘導用テープとしたことであり(請求項1)、歩行方向を示す方向指示単位を設けた誘導用テープとしたことであり(請求項2)、誘導用テープを一体的に形成してなる建築用内装材としたことであり(請求項3)、目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出するセンサーを視覚障害者が使用する杖の先端部分に設置し、上記目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出して、その情報を視覚障害者に伝達し誘導することを特徴とする視覚障害者誘導方法としたことである(請求項4)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目的別の識別単位を連続的に設けたことにより視覚障害者を連続的に誘導することができ、歩行方向を示す方向指示単位を設けたことにより視覚障害者は間違えることなく安心して確実に誘導先に到達することができる。また、建築用内装材と一体化することにより、建物内においても誘導が可能となり内装材と同時に施工できるのでコスト的にも有利になる。さらに、目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出するセンサーを杖の先端部分に設置すれば、誘導テープと組合わせて視覚障害者を誘導することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の誘導用テープは、一定の色調または柄を有する目的別の識別単位を連続的に設けたもので、通常、誘導先に合せて複数の目的別の識別単位を有しており、歩行面、壁面などに貼り付けて使用される。誘導用テープには、上記目的別の識別単位の他に歩行方向を示す方向指示単位を合せて設けることが好ましい。
また、誘導用テープを床材、壁装材、巾木、腰壁等の建築用内装材に一体的に形成することが好ましい。目的別の識別単位或いは方向指示単位を上記建築用内装材の意匠として取り入れることにより、健常者に対しても違和感が軽減される。
視覚障害者は、先端部分に目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出するセンサーを設置した杖を使用して、誘導用テープに添って連続的に、安心して、確実に誘導先まで歩行することができる。
【0010】
本発明の「一定の色調を有する」とは、可視光線の他に赤外線、紫外線などの光線をも含み、「一定の波長範囲の光線を反射または放射する」という意味である。
【0011】
誘導用テープの材質については、特に限定されないが取扱い易いという点では合成樹脂、ゴム、金属、それらの複合体などがよく、なかでもオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルミ箔またはそれらの組合せたものが好適に使用できる。また、耐摩耗性、耐傷性を向上するため誘導用テープ表面に紫外線硬化塗料、電子線硬化塗料等で表面処理を施すこともできる。
【0012】
誘導用テープの幅は、使用される部位にもよるが、通常10〜1000mmであり、意匠、判別性を考慮すると30〜400mmが好ましく、50〜300mmがより好ましい。厚さは、これも使用される部位によるが、通常0.1〜3mmであり、耐久性、歩行時の躓き性を考えれば0.3〜1mmが好ましい。長さについては、特に限定はなく数メートル程度の定尺もの、数メートル〜数百メートル程度の巻物でもよい。
【0013】
本発明の目的別の識別単位のうち一定の色調を有するものは、赤、橙、黄色、緑、青、紫等の着色剤、蛍光増白剤、蛍光剤、蓄光剤、赤外線放射物質、紫外線放射物質、波長変換材料などの材料を含有する塗料、フィルム、シートなどから形成することができる。同じように、柄を目的別の識別単位とするものは、印刷、フィルム、シートの貼付により形成することができる。
【0014】
誘導用テープの基材に、一定の色調または柄を有するフィルム、シートを積層することや、一定の色調または柄を有する塗料を印刷することなどによって、目的別の識別単位を誘導用テープへ付与することができ、この場合、耐久性を考えれば、耐摩耗性のよい透明な誘導テープの基材を選択し、誘導テープの基材裏面に目的別の識別単位を設けることが好ましい。また、目的別の識別単位が誘導用テープの全厚にわたっているものでも良い。
【0015】
一定の色調を有する目的別の識別単位は、形状に制限はなく繰り返し単位が連続的に或いは断続的に歩行方向に繋がっていればよい。連続線、破線、丸、多角形、他の形状或いはそれらの組合せで構成することができる。例えば、図3の(3−1)は連続ライン状のみで構成されており、(3−2)は破線ライン状のみの構成であり、(3−3)は連続ライン状、多角形状、その他形状の構成である。
【0016】
本発明の方向指示単位は、分岐点などで進行方向を指示するためのものであり、形状で判別する方法、色調で判別する方法、形状と色調で判別する方法などがある。形状で判別する方法には、例えば、矢印状のもの、大きさの異なる同形状のものを連続的に設ける方法などがあり、図4の(4−1)では矢印の向きが進行方向を示し、(4−2)〜(4−6)では大きい方から小さい方が進行方向を示している。もちろん逆も可能である。
色調で判別する方法には、「赤」は右方向、「青」は左方向を示すというようなひとつの色調で進行方向を示す方法や、「赤」、「青」と連続してあれば右方向を示すというような複数の色調を使用する方法などがある。
【0017】
方向指示単位に色調で判別する方法を選択し、一定の色調を有する目的別の識別単位と併用する場合、誤認を避けるために目的別の識別単位と方向指示単位は、近似する色調を避けるべきである。
また、方向指示単位に形状で判別する方法を選択し、柄を有する目的別の識別単位と併用する場合、誤認を避けるために目的別の識別単位と方向指示単位は、近似する形状を避けるべきである。
【0018】
方向指示単位は、誘導用テープの中間点、分岐点などに部分的に設けてもよいが、目的別の識別単位と同様に連続的に設けることが好ましい。
方向指示単位は、目的別の識別単位とは独立して設けてもよいが、意匠的には方向指示単位と目的別の識別単位を組合せることが好ましい。図2は、連続ライン状の一定の色調を有する目的別の識別単位と矢印及び丸印状の方向指示単位とを組合せたものである。また、形状で判別する方向指示単位を一定の色調を有する目的別の識別単位の色調で形成することにより、目的別の識別単位と方向指示単位とを簡単に組合せることができる。
【0019】
歩行面、壁面などへの誘導用テープの貼り付けは、接着剤、粘着剤、磁力、誘導加熱、熱ラミなど任意の方法で行なうことができるが、接着剤、粘着剤での貼り付けが比較的容易である。また、予め誘導用テープ裏面に粘着剤を塗工しておくことで、誘導用テープを簡単に施工することができるようになる。
【0020】
誘導用テープは耐久性、施工性などを考慮すると、床材、壁装材、巾木、腰壁等の建築用内装材と一体的に設けることが好ましい。誘導用テープを上記建築用内装材と一体的に形成するには、誘導用テープを粘着剤、接着剤、熱ラミネート、誘導加熱などにより上記建築用内装材に積層したり、上記建築用内装材表面にフィルムの積層、塗料の印刷により目的別の識別単位及び方向指示単位を形成し、その表面に保護層を設けるなどの方法がある。
誘導用テープ一体型の熱可塑性樹脂製床材は、まず、カレンダー成形機、押出成形機等により熱可塑性樹脂等をシート状に成形して床材のベース生地を作成し、その表面の適宜の位置に、適宜の幅で印刷を施すことにより目的別の識別単位を形成する。または、印刷等で目的別の識別単位を形成したフィルムを上記ベース生地に貼合わせることもでき、或いは、床材のベース生地の上層を目的別の識別単位の色調で形成しその表面の適宜の位置に、適宜の幅を残して目的別の識別単位の色調とは異なる層を設けて目的別の識別単位を形成することもできる。同様にして、方向指示単位を合せて形成してもよい。通常はその上に保護層として、カレンダー成形機、押出成形機等により透明な熱可塑性樹脂等を積層し、誘導用テープ一体型の熱可塑性樹脂製床材を製造することができる。
【0021】
本発明の誘導用テープは、目的別の識別単位単独或いは識別単位と方向指示単位を組合せて用いられ、形状や色調を判別するため、キズなどによる誤認が少ない。また、一定の色調を有する識別単位が同じなら、前述した杖から得られる情報は同じになるので、形状を変えることで意匠性をあげることもできる。
また、杖の先端に設置したセンサーにより一定の色調の判別を確実にするため、目的別の識別単位、方向指示単位ともにその大きさは、テープ幅を上限として長幅で5mm以上がよく、10mm以上がより好ましい。
【0022】
本発明の誘導用テープを使用して視覚障害者を誘導する方法は、誘導用テープの目的別の識別単位或いは方向指示単位から発せられる情報を、視覚障害者用杖の先端に設置したセンサーで検出、判別しその情報を視覚障害者に伝達し誘導するものである。
視覚障害者用杖は、取っ手及び筒状の杖本体から形成され、その内部には誘導先設定手段、誘導用テープの目的別の識別単位或いは方向指示単位を検出するセンサー、検出した情報を電気信号に変換する手段、音声や振動により視覚障害者に情報を直接伝達する伝達手段、バッテリー等の電源などの構成要素が収納されている。また、杖の先端部に発光部を設けることにより、上記センサーの検出感度を高めることや、蛍光増白剤、蛍光剤、蓄光剤など特定波長の光線を当てることにより別の特定波長の光線を放出する物質を目的別の識別単位或いは方向指示単位に応用すれば感度を高めることができる(例えば、蛍光剤の付いた衣服にブラックライトを当てると青白く光ることは良く知られている)。その他必要に応じてスイッチなどが設けられている。
【0023】
視覚障害者を誘導する場合、まず視覚障害者が歩行する歩行面に誘導用テープを貼り付け、上述した視覚障害者用杖の誘導先の設定を行うだけで、誘導用テープに添って歩行できるようになる。杖の先端に設けられたセンサーで誘導用テープの目的別の識別単位を検出してその情報を電気信号に変換し、伝達手段に送られるため、視覚障害者は伝達された情報を連続的に得ることができる。伝達手段としては、通常、偏心振動子を利用したバイブレーター、音声として利用できるスピーカーなどが用いられる。
【0024】
図1、2により、誘導方法を詳しく説明する。通路には、誘導先Aの目的別の識別単位を黄色で形成し、方向指示単位を大小丸形状(小さい丸から大きい丸の方向が進行方向)で形成して、誘導先Bの目的別の識別単位を緑色で形成し、方向指示単位を矢印形状(矢印の尖ったほうが進行方向)で形成した誘導用テープが連続して設けられている。(イ)出発点から分岐点a、b、cを経由して誘導先Aにいく場合、(ロ)出発点から分岐点a、b、cを経由して誘導先Aにいき、続いて分岐点c、dを経由して誘導先Bにいく場合、(ハ)出発点から分岐点a、dを経由して誘導先Bにいく場合について説明する。
【0025】
上記(イ)の場合、出発点において視覚障害者は先ず、杖の設定手段を操作して目的別の識別単位を誘導先Aの黄色に、方向指示単位を大小丸形状に設定する。次に、出発点から黄色にそって直進し、分岐点aでは方向指示単位が右折方向に変わるので右折し、右折後直進して分岐点bでは方向指示単位が左折方向に変わるので左折し、左折後直進し分岐点cでは直進方向なのでそのまま直進し誘導先Aに到達することができる。
【0026】
上記(ロ)の場合、(イ)と同様にして誘導先Aにいき、その後、目的別の識別単位を誘導先Bの緑色に、方向指示単位を矢印形状に設定する。誘導先Aから直進し分岐点cでは方向指示単位が右折方向に変わるので右折し、右折後直進して分岐点dでは直進方向なのでそのまま直進し誘導先Bに到達することができる。
【0027】
上記(ハ)の場合、先ず出発点において視覚障害者は杖の設定手段を操作して目的別の識別単位を誘導先Bの緑色に、方向指示単位を矢印形状に設定する。次に、出発点から緑色にそって直進し、分岐点aでは直進方向なのでそのまま直進する。分岐点dでは方向指示単位が左折方向に変わるので左折し、左折後直進し誘導先Bに到達することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の誘導用テープ、建築用内装材及び誘導方法により、視覚障害者は連続的に、安心して確実に誘導先に到達することができるため、各種施設内、道路などに広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の1実施態様を示す模式平面図
【図2】分岐点a部分の拡大図
【図3】本発明の誘導用テープに使用する目的別の識別単位の例 (3−1)連続ライン状の構成(3−2)破線ライン状の構成(3−3)連続ライン状、多角形状、その他形状の構成
【図4】本発明の誘導用テープに使用する方向指示単位の例 (4−1)矢印(4−2)〜(4−6)形状の大小
【符号の説明】
【0030】
1 歩行路
2 誘導用テープ
3 目的別の識別単位
4 方向指示単位



























【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚障害者を誘導する誘導用テープであって、一定の色調または柄を有する目的別の識別単位を連続的に設けたことを特徴とする誘導用テープ。
【請求項2】
歩行方向を示す方向指示単位を設けたことを特徴とする請求項1に記載の誘導用テープ
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘導用テープを一体的に形成してなることを特徴とする建築用内装材。
【請求項4】
上記目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出するセンサーを視覚障害者が使用する杖の先端部分に設置し、上記目的別の識別単位または目的別の識別単位と方向指示単位とを検出して、その情報を視覚障害者に伝達し誘導することを特徴とする視覚障害者誘導方法。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−170100(P2007−170100A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371377(P2005−371377)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】