説明

誘電性構造体、誘電性構造体を用いた反応装置、および誘電性構造体の製造方法

【課題】プラズマの放電状態を容易に制御することができる誘電性構造体を提供する。
【解決手段】誘電性構造体(1)は、一方向に配列された複数の誘電体(3)と、該各誘電体(3)の内部に設けられた複数の導体層(7)からなる電極(6)とを有する。そして、電極(6)間に電圧を印加することにより誘電体(3)間にプラズマを発生可能である。誘電体(3)の少なくとも1つにおいて、電極(6)は、貫通孔および欠け部の少なくとも一方(9)を有する第1導体層(7a)と、貫通孔および欠け部(9)の少なくとも一方に対応する位置に設けられ、第1導体層(7a)に電気的に接続される第2導体層(7b)とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマ発生体として用いられる誘電性構造体、誘電性構造体を用いた反応装置、並びに誘電性構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ放電技術は、オゾン発生器、電気集塵装置、空気清浄機、および有害ガス分解装置など幅広い分野において利用されている技術である。このプラズマ放電技術を用いるためのプラズマ発生体として、例えば、一方向に配列された複数の平板状電極を有するものがある。このようなプラズマ発生体においては、電極間に高電圧を印加してプラズマ場を発生させる。このプラズマ場内に流体を通過させると、流体中の物質を分解することが可能となり、例えば排ガスの浄化に用いることができる。なお、電極を絶縁体で覆うことにより、流体による電極の腐食を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−221026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のプラズマ発生体においては、プラズマ放電の起点を制御できず、結果としてプラズマ放電が不均一になる場合があった。すなわち、平板状電極で挟まれた空間において放電状態の制御が困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマの放電状態を容易に制御することができる誘電性構造体、その誘電性構造体を用いた放電装置、並びに誘電性構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の誘電性構造体は、一方向に配列された複数の誘電体と、該各誘電体の内部に設けられた複数の導体層からなる電極とを有し、電極間に電圧を印加することにより誘電体間にプラズマを発生可能である。誘電体の少なくとも1つにおいて、電極は、貫通孔および欠け部の少なくとも一方を有する第1導体層と、貫通孔および欠け部に対応する位置に設けられ、第1導体層に電気的に接続される第2導体層とを備える。この誘電性構造体を、第1誘電性構造体という。
【0006】
第1誘電性構造体において、好ましくは、複数の誘電体のうち対向する少なくとも一組の第1誘電体および第2誘電体において、第1誘電体および第2誘電体の各電極は、第1導体層と第2導体層とからなる。また、第1誘電体の第2導体層と第2誘電体の第2導体層は対向している。この誘電性構造体を、第2誘電性構造体という。
【0007】
第2誘電性構造体において、好ましくは、第1誘電体において、第2導体層は、第2誘電体に対向する第1誘電体の表面と第1導体層との間に位置しており、第2誘電体において、第2導体層は、第1誘電体に対向する第2誘電体の表面と第1導体層との間に位置している。この誘電性構造体を、第3誘電性構造体という。
【0008】
第1誘電性構造体において、好ましくは、第1誘電体において、第2導体層は、第2誘電体に対向する該第1誘電体の表面と第1導体層との間に設けられる。また、第2誘電体において、第2導体層は、第1導体層に関して、第1誘電体に対向する表面と反対側に設けられる。この誘電性構造体を、第4誘電性構造体という。
【0009】
第1誘電性構造体において、好ましくは、複数の誘電体は、交互に配列される第1誘電体と第2誘電体とを有する。第1誘電体の電極は、貫通孔および欠け部の少なくとも一方を有する第1導体層と、貫通孔および欠け部に対応する位置に設けられ、第1導体層に電気的に接続される第2導体層とからなる。第2誘電体の電極は、貫通孔および欠け部の少なくとも一方を有する第3導体層と、貫通孔および欠け部に対応する位置に設けられ、第3導体層に電気的に接続される第4導体層とからなる。第1誘電体において、第2導体層は、第2誘電体に対向する該第1誘電体の表面と第1導体層との間に設けられる。第2誘電体において、第4導体層は、第3導体層に関して、第1誘電体に対向する第2誘電体の表面と反対側に設けられる。第2導体層は、第3導体層に対向し、第4導体層は、第1導体層に対向する。隣接する誘電体間において、第2導体層と第3導体層との間の距離、および第4導体層と第1導体層との間の距離は等しい。この誘電性構造体を、第5誘電性構造体という。
【0010】
第1誘電性構造体乃至第5誘電性構造体のいずれかにおいて、好ましくは、少なくとも1つにおいて、第2導体層は、第1導体層に、第2導体層と第1導体層との間に設けられた貫通導体によって電気的に接続されている。この誘電性構造体を、第6誘電性構造体という。
【0011】
第1誘電性構造体乃至第6誘電性構造体のいずれかにおいて、好ましくは、少なくとも1つの誘電体において、第2導体層に対向する表面に触媒が担持されている。
【0012】
本発明の反応装置は、前記いずれかに記載の誘電性構造体と、誘電性構造体の電極間に交流電圧、若しくはパルス電圧を印加するための電源と、誘電体間に流体を供給可能な供給部とを備える。
【0013】
本発明の製造方法は、前記いずれかに記載の誘電性構造体を製造方法であって、誘電体並びに該誘電体に設けられた電極を、複数のセラミックグリーンシートと該セラミックグリーンシートの間に配置された導電ペーストを同時に焼成することにより形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の誘電性構造体によれば、プラズマの放電状態を容易に制御することができる。
【0015】
本発明の反応装置によれば、プラズマの放電状態を容易に制御することができる反応装置を実現できる。
【0016】
本発明の製造方法によれば、プラズマの放電状態を容易に制御することができる誘電性構造体を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の誘電性構造体の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態では、誘電性構造体をプラズマ発生体として用いる場合について説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体の構成例を示す斜視図であり、図2(a)は、図1の誘電性構造体の平面図、図2(b)は、図1の誘電性構造体の側面図である。また、図3(a)は、図2(a)のA−A線における断面図、図3(b)は、図2(b)の誘電体3bの平面透視図、図3(c)は、図2(b)の誘電体3cの平面透視図である。図1から図3に示されるように、本実施の形態による誘電性構造体1は、基体2を備える。この基体2は、一方向に配列された複数の平板状の誘電体3a〜3d(以下では、誘電体3a〜3dを区別せずに、単に「誘電体3」という場合がある。)と、複数の誘電体3a〜3dを所定の間隔をあけて支持する支持部4とを備える。誘電体3a〜3dと支持部4は、放電空間となる空洞5A,5B,5C(以下では、空洞5A〜5Cを区別せずに、単に「空洞5」という場合がある。)を構成する。
【0019】
さらに、各誘電体3の内部には、電極6が設けられる。電極6は、空洞5を挟んで対向し、電極6間に電圧を印加することにより、空洞5内にプラズマを発生させることが可能である。
【0020】
そして、誘電体3b,3cの内部に設けられた電極6は、それぞれ2つの導体層からなる。具体的に、誘電体3bの内部に設けられた電極6は、複数の貫通孔を有する第1導体層7a1と、各貫通孔に対応する位置に設けられ、第1導体層7aに電気的に接続される第2導体層7b1とを有する。また、誘電体3cの内部に設けられた電極6は、複数の貫通孔を有する第1導体層7a2(以下では、第1導体層7a1,7a2を区別せずに、単に「第1導体層7a」という場合がある。)と、各貫通孔に対応する位置に設けられ、第1導体層7a2に電気的に接続される第2導体層7b2(以下では、第2導体層7b1,7b2を区別せずに、単に「第2導体層7b」とを有する。
【0021】
さらに、基体2の端面には、第1導体層7a1と第2導体層7b1とからなる電極6に電気的に接続される外部端子8aと、第1導体層7a2と第2導体層7b2とからなる電極6に電気的に接続される外部端子8bがそれぞれ設けられる。なお、本明細書で基体2とは、内部に形成された第1導体層7a等の他の部品を除いた部分をいい、後述するように誘電性構造体1が複数のセラミックグリーンシートの積層体とその各セラミックグリーンシートの表面および内部に形成された導電体ペーストを同時焼成して得られる場合には、その積層体のみをいう。
【0022】
本実施の形態による誘電性構造体1では、隣接する電極6間に高電圧を印加して空洞5内にプラズマを発生させ、この空洞5内に例えば排気ガス等の流体を通過させることにより、流体中の化学物質を反応および分解させる。
【0023】
また、本実施の形態による誘電性構造体1では、誘電体3b,3cの内部に設けられた電極6は、貫通孔9を有する第1導体層7aを有する。これにより、空洞5B内において、第1導体層7aの貫通孔9の開口部、すなわち貫通孔9に接する第1導体層7aの縁部に対応する領域は、プラズマ放電の起点となる。このように、貫通孔9に接する第1導体層7aの縁部がプラズマ放電の起点となるのは、電極6間に電圧を印加した際に、第1導体層7aの縁部に電界の集中が生じ、その縁部の電位を、周囲の誘電体3の電位と比較して高めることができるからである。
【0024】
また、本実施の形態による誘電性構造体1では、第1導体層7aの貫通孔9に対応する位置に第2導体層7bを設けていることから、隣接する電極6の対向領域(平面視して、電極6が重畳する領域)の面積が低減することによるプラズマ発生効率の低下を抑制することができる。また、同一誘電体3内での導電体7a,7bの重なり部分を小さくできることから、誘電体内での不要な浮遊容量を発生させることなく、プラズマ発生効率の低減を抑制できる。
【0025】
なお、誘電性構造体1では、第2導体層7bは、放電状態を制御したい空洞5に接する誘電体3の表面と、その誘電体3の内部に設けられた第1導体層7aとの間に設けられる。第2導体層7bは、誘電体3の内部に設けられているため、プラズマおよび流体による腐食を抑制することができる。
【0026】
基体2は、電気絶縁材料から成り、例えば、セラミックスから成る。具体的に、基体2を製造する場合には、セラミックグリーンシートを準備し、次に準備したセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、高温(約1300〜1800℃)で焼成することによって製作される。電気絶縁材料としては、例えば、酸化アルミニウム焼結体(アルミナセラミックス)がある。例えば酸化アルミニウム質焼結体から成るグリーンシートは、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、およびマグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤および溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法若しくはカレンダーロール法等を採用し、シート状に成形することによって得られる。
【0027】
セラミックグリーンシートの積層体を作製する場合には、セラミックグリーンシートを積層した後圧着を行なう。圧着は3.0〜8.0MPa程度の圧力を加えて行ない、必要に応じて35〜80℃で加熱を行なう。このとき、空洞5を形成するために、すくなくとも1つのグリーンシートに貫通孔を形成する。また、セラミックグリーンシート同士の十分な接着性を得るために、溶剤と樹脂バインダーを混合するなどして作製した接着剤を用いてもよい。なお、電気絶縁材料としては、酸化アルミニウム質焼結体以外にも、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、コーディライト質焼結体、または炭化珪素質焼結体等が挙げられる。
【0028】
第1導体層7aおよび第2導体層7bは、基体2内に保持されており、空洞5内にプラズマを発生させるための導電体として機能する。第1導体層7aおよび第2導体層7bは、タングステン、モリブデン、銅、または銀等の金属粉末導電体からなり、スクリーン印刷法等の印刷手段を用いて、基体2用のセラミックグリーンシートの所定の位置に第1導体層7aおよび第2導体層7b用の導電体ペーストを印刷塗布し、基体2用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって基体2の内部に所定のパターンに形成することができる。導電体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダーおよび有機溶剤、並びに必要に応じて分散剤等を加えて、ボールミル、三本ロールミル、またはプラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで製作される。導電体ペーストには、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼結後の基体2との接合強度を高めたりするためにガラスやセラミックスの粉末を添加しても良い。
【0029】
なお、図3に示すように、第1導体層7aおよび第2導体層7bは、基体2の内部に空洞5に露出することなく配設するほうがよい。第1導体層7aおよび第2導体層7bを基体2の内部に配設することにより、誘電体3が放電を妨げるバリヤの働きをし、対向する誘電体3間で発生するプラズマがアーク放電となって誘電体3が過熱されて破壊に至ることを抑制できる。
【0030】
次に、基体2の外表面には、外部端子8a,8bが形成されている。電極6は、その端部が基体2の外表面近傍まで導出されており、外部端子8a,8bに直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。外部端子8a,8bは、外部電源から電極6に電圧を印加するための導電路として機能する。外部端子8a,8bは、タングステン、モリブデン、銅、または銀等の金属粉末導電体からなり、スクリーン印刷法等の印刷手段を用いて、基体2用のセラミックグリーンシートの所定の位置に外部端子8a,8b用の導電体ペーストを印刷塗布し、基体2用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって誘電性構造体1の所定の位置に形成することができる。外部端子8a,8b用の導電体ペーストは、第1導体層7aおよび第2導体層7b用の導電体ペーストと同様にして作製されるが、有機バインダーおよび有機溶剤の量により印刷に適した粘度に調製される。
【0031】
なお、外部端子8a,8bの露出する表面には、ニッケルまたは金等の耐蝕性に優れる金属を形成しておくことが好ましい。なお、外部端子8a,8bが酸化腐食するのを抑制するとともに、外部端子8a,8bと外部電源の電源端子との接合をより強固なものとするために、厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚みが0.1〜3μm程度の金めっき層とが順次形成されていることが好ましい。なお、外部端子8a,8bにおいても、上述と同様に、高温下にて使用する場合には、ニッケルまたは金等の耐蝕性に優れる金属を単層で形成しておいても構わない。
【0032】
あるいは、外部端子8a,8bは、基体2用のセラミックグリーンシートの焼成後に、所定の位置に貼り付けられた金属板でもよい。
【0033】
そして、外部電源の電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子8a,8bに電気的に接続し、外部端子8a,8bを通して電極6間に電圧を印加すると、電極6の対向面(平面視して、電極6が重畳する領域)の間にプラズマを発生させることができる。これにより、誘電性構造体1の一方側面から他方側面にかけて形成された空洞5内を通過する流体は、電極6間のプラズマを通過することとなり、このプラズマにより反応および分解されて、浄化される。
【0034】
例えば、NO(窒素酸化物)は、酸素濃度が1%程度以下の低酸素条件下において、下記の式(1)および(2)に示された反応より分解して、NおよびOが生成されて改質される。
【0035】
2NO → 2NO+O・・・・・・・・・・(1)
2NO+O → N+2O・・・・・・・・・・(2)
なお、電極6間にプラズマを発生させるために、周波数の高い交流電圧が印加される。印加される交流電圧は、必要とされるプラズマの強度等によって適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質(PM)や酸化成分等の流体を浄化するプラズマ発生体において印加される交流電圧の周波数は、例えば、1kHz〜100MHzである。
【0036】
また、電極6間に印加する電圧は、交流電圧以外に、パルス電圧であってもよい。なお、交流電圧は、正弦波電圧に限らず、矩形波電圧若しくは方形波電圧等であってよい。
【0037】
以上から、本実施の形態による誘電性構造体1では、空洞5において、第1導体層7aの貫通孔9に接する縁部に対応する領域を、プラズマ放電の起点とすることができるため、空洞5内におけるプラズマの放電状態を制御することができる。また、第1導体層7aに貫通孔9を設けた場合でも、その貫通孔9に対応する位置に第2導体層7bを設けていることから、電極6の対向領域の面積を低減させることがないため、プラズマ発生効率の低減を抑制できる。さらには、同一誘電体3内において第1導体層7aと第2導体層7bとの重なり部分をできるだけ小さくするよう配置していることから、誘電体3内での不要な浮遊容量の発生を低減することができる。
【0038】
また、本実施の形態による誘電性構造体1では、第2導体層7bを、放電状態を制御したい空洞5に接する誘電体3の表面と、その誘電体3の内部に設けられた第1導体層7aとの間に設けている。さらに、空洞6を挟んで対向する誘電体3における第2導体層7b同士は対向している。
【0039】
このような構成では、対向する第2導体層7b間の間隔は、対向する第1導体層7a間の間隔と比較して短くなることから、空洞5内の第2導体層7bが対向する領域においてより強いプラズマを発生させることができる。
【0040】
また、対向する第2導体層7b間の間隔は、対向する第1導体層7a間の間隔と比較して短くなることから、空洞5内の第2導体層7bが対向する領域には、印加する電圧が比較的低電圧であっても、プラズマが発生する。
【0041】
よって、例えば空洞5内の流れる流体に反応させる物質が少量のみ含まれている場合等は、第2導体層7b間のみプラズマを発生させて、流体と少量のプラズマとを反応させることも可能である。
【0042】
なお、空洞5を挟んで隣接する誘電体3のうち、一方の誘電体3において、第2導体層7bを、その空洞5に接する誘電体3の表面と第1導体層7aとの間に設け、他方の誘電体3において、第2導体層7bを、第1導体層7aに関して、その空洞に接する誘電体3の表面と反対側に設けてもよい。すなわち、誘電体3の配列方向Zにおいて、第2導体層は、第1導体層に関して、上側若しくは下側の同じ側に配置されている。
【0043】
図4は、このような場合の誘電性構造体21の構成例を示す図である。ここで、図4(a)は、誘電性構造体21の断面図、図4(b)は、誘電体3bの平面透視図、図4(c)は、誘電体3cの平面透視図である。このように、誘電体3bにおいて、第2導体層7b1を、空洞5Bに接する誘電体3bの表面と第1導体層7a1との間に設け、誘電体3cにおいて、第2導体層7b2を、第1導体層7a2に関して、空洞5Bに接する誘電体3bの表面と反対側に設けると、第1導体層7a1および第1導体層7a2の間隔と、第2導体層7b1および第2導体層7b2の間隔との差を小さくすることができる。その結果、空洞5B内においてプラズマ強度の差が小さくなる。さらに、第1導体層7a1および第1導体層7a2の間隔と、第2導体層7b1および第2導体層7b2の間隔とを同一にすると、空洞5B内においてプラズマの強度をより均一にすることが可能になる。
【0044】
また、本実施の形態による誘電性構造体1では、誘電体3bの第2導体層7b1と誘電体3cの第2導体層7b2とを対向させて位置しているが、図5に示すように、誘電体3bの第2導体層7b1を、誘電体3cの第1導体層7a2に対向させ、誘電体3cの第2導体層7b2を、誘電体3bの第1導体層7a1に対向させてもよい。このように対向させた誘電性構造体31においては、誘電体3の配列方向Zにおける、誘電体3bの電極6と誘電体3cの電極6との間の距離の差を小さくすることができる。その結果、空洞5B内においてプラズマ強度の差が小さくなる。さらに、第1導体層7a1および第2導体層7b2の間隔と、第2導体層7b1および第2導体層7a2の間隔とを同一にすると、空洞5B内においてプラズマの強度をより均一にすることが可能になる。
【0045】
なお、本実施の形態による誘電性構造体1では、誘電体3b,3cの電極6を、第1導体層7aと第2導体層7bとからなる層構造としたが、誘電体3b,3cのうち一方の誘電体3の電極6を、第1導体層7aと第2導体層7bとからなる層構造にしてもよい。そのような場合も、空洞5内における、貫通孔9に接する第1導体層7aの縁部に対応する領域がプラズマ放電の起点となる。
【0046】
また、誘電体3b,3cに限らず、誘電体3a〜3dのうち少なくとも1つ、又は全ての誘電体3a〜3dにおいて、電極6を第1導体層7aと第2導体層7bとからなる層構造にしてもよい。
【0047】
また、上述の説明において、第1導体層7aは貫通孔9を有するとしたが、第1導体層7aは、その外周部に欠け部を有していてもよい。図6は、第1導体層7aが欠け部を有する場合の、第1導体層7aおよび第2導体層7bの配置例を示す図である。図6(a)は、内部に第1導体層7aおよび第2導体層7bを有する誘電体3の断面図、図6(b)は、図6(a)のP−P線における断面図、図6(c)は、図6(a)のQ−Q線における断面図である。このように、電極6が、欠け部9を有する第1導体層7aと、欠け部9に対応する位置に設けられ、第1導体層7aに電気的に接続される第2導体層7bとを有している場合も、第1導体層7aが貫通孔を有している場合と同様の作用効果を有する。
【0048】
なお、第1導体層7aにおいて、貫通孔および欠け部の少なくとも一方を、規則的に配置すると、プラズマ放電の起点が規則的に配置されることになり、例えば空洞5内でプラズマ放電をより均一に発生させたい場合等は有効である。
【0049】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2の実施の形態による誘電性構造体41の構成例を示す図であり、図7(a)は、誘電性構造体41の断面図、図7(b)は、誘電体3bの平面透視図、図7(c)は、誘電体3cの平面透視図である。これらの図は、図3の(a)〜(c)にそれぞれ対応している。なお、図3に示した構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図7に示すように、本実施の形態による誘電性構造体41においては、誘電体3a〜3dの内部に設けられた電極6が、それぞれ2つの導体層からなる。具体的に、誘電体3aa〜3dの内部に設けられた電極6は、複数の貫通孔を有する第1導体層7a1〜7a4と、各誘電体3a〜3dにおいて、貫通孔に対応する位置に設けられ、第1導体層7a1〜7a4に電気的に接続される第2導体層7b1〜7b4とを有する。
【0051】
そして、空洞5を挟んで対向する誘電体3のうち一方の誘電体3の第1導体層7aは、他方の誘電体3の第2導体層7bに対向し、一方の誘電体3の第2導体層7bは、他方の誘電体3の第1導体層7aに対向する。また、空洞5を挟んで対向する2つの誘電体3のうち一方の誘電体3において、第2導体層7bを、その空洞5に接する誘電体3の表面と第1導体層7aとの間に設け、他方の誘電体3において、第2導体層7bを、第1導体層7aに関して、その空洞5に接する誘電体3の表面と反対側に設ける。すなわち、誘電体3の配列方向Zにおいて、対向する誘電体3の一方における第1導体層7aに関する第2導体層7bの位置(上側または下側)は、対向する誘電体3の他方における、第1導体層7aに対する第2導体層7bの位置と、逆である。さらに、各誘電体3において、第1導体層7aと第2導体層7bとの間の距離を等しくする。
【0052】
このように構成することにより、1つの空洞5を挟んで対向する電極6同士の間隔を一定にして、空洞5内のプラズマをより均一にするとともに、隣接する空洞5においては、第1導体層7a同士および第2導体層7b同士の間隔を変化させることができる。すなわち、1つの空洞5A,5B,5Cにおいて、誘電体6の配列方向Zにおける電極6間の距離は同じであるが、空洞5A,5Cを挟んで対向する電極6間の距離Mと、空洞5Bを挟んで対向する電極6間の距離Nとを異ならせることができる。
【0053】
このため、各空洞5内においてプラズマ放電をより均一にできるとともに、1つの誘電性構造体11の中に2種類の異なる強さのプラズマ放電を同時に発生させることができる。その結果、空洞5内に流体を通して処理を行う際に、同時に2種類のプラズマ放電による改質処理を行うことができる。これにより、例えば、流体中に複数の物質が含まれている場合に、各物質を反応させるために適した強度をもつプラズマをそれぞれ生成することができる。これにより改質処理効率を高めることができる。
【0054】
また、上述の誘電性構造体1,21,31,41では、第2導体層7bに対向する表面に触媒が坦持されてもよい。第2導体層7bに対向する表面に触媒が坦持されることにより、プラズマ放電の際に触媒を活性化させやすくなり、空洞11内を通過する流体の処理効率を高めることができる。
【0055】
なお、誘電性構造体1は、基体2が、セラミックグリーンシートを同時焼成することにより形成され、第1導体層7a、第2導体層7bおよび外部端子8a,8bが、導電体ペーストをセラミックグリーンシートと同時に焼成することにより形成されることが好ましい。このことにより、誘電性構造体1はセラミックスと導電体ペーストを同時焼成することにより一体化されているので、高温、高振動等の環境下で長期間使用される場合にも、誘電性構造体1の変形を小さなものとし、空洞5の形状を保持することができる。従って、空洞5内を通過する流体を長期間にわたってより安定して反応させ、分解させて良好に浄化することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係る反応装置100の構造的な構成を示す概念図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
反応装置100は、第1の実施形態の誘電性構造体1を備え、誘電性構造体1により被処理流体を処理して排出する装置として構成されている。被処理流体は、例えば、自動車の内燃機関の排気ガスであり、空洞5(以下、「放電空間」ともいう。)における化学変化によりNOxが改質される。また、例えば、被処理流体は、冷蔵庫やエアコンに冷却媒体として使用されたフロンであり、空洞5における化学変化によりフロンが分解される。なお、以下では、反応装置100のうち、誘電性構造体1以外の部分を、反応装置本体部101ということがある。
【0058】
反応装置本体部101は、被処理流体を供給する流体源103と、流体源103から誘電性構造体1に被処理流体を導く供給管105(供給部の一例)と、誘電性構造体1により処理された被処理流体を排出する排出管107と、被処理流体の流動を制御するための被処理流体用ポンプ109と、冷却媒体を供給する冷媒源111と、冷媒源111から誘電性構造体1に冷却媒体を導く供給用流動管50A(冷却部の一例)と、誘電性構造体1から冷媒源111に冷却媒体を導く排出用流動管50Bと、冷却媒体の流動を制御するための冷却媒体用ポンプ113(冷却部の一例)とを備えている。
【0059】
流体源103は、被処理流体としての排気ガスを排出する自動車の内燃機関等、被処理流体を生成するものである。あるいは、流体源103は、使用済みの冷蔵庫やエアコンの冷却媒体を保持したタンク等、被処理流体を保持するものである。
【0060】
供給管105は、一端側が、流体源103の被処理流体を生成又は保持する空間に連通し、他端側が、誘電性構造体1の空洞5に連通している。供給管105の誘電性構造体1側は、放電空間5の数に対応して第1分岐部105aA、第2分岐部105aB、第3分岐部105aC(以下、単に「分岐部105a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部105aA〜第3分岐部105aCは、それぞれ空洞5A〜空洞5Cに連通している。
【0061】
排出管107は、一端側が、誘電性構造体1の空洞5に、供給管105とは反対側から連通し、他端側が、大気に開放され、又は、処理後の被処理流体を保持若しくは処理後の被処理流体に別の処理を施す不図示の空間に連通している。排出管107の誘電性構造体1側は、空洞5の数に対応して第1分岐部107aA、第2分岐部107aB、第3分岐部107aC(以下、単に「分岐部107a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部107aA〜第3分岐部107aCは、それぞれ空洞5A〜空洞5Cに連通している。なお、排出管107は、省略されてもよい。例えば、処理後の被処理流体が空洞5から大気へ直接的に排出されてもよい。
【0062】
供給管105及び排出管107は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。供給管105及び排出管107は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。分岐部105a及び分岐部107aと、空洞5との接続は、例えば、分岐部105a及び分岐部107aの端部を、基体2における空洞5の開口を有していない側面に当接させて、接着剤や螺合部材などの適宜な固定部材により分岐部105a及び分岐部107aと基体2とを固定することにより行われる。なお、分岐部105aや分岐部107aを空洞5に嵌合挿入したり、流出用接続管等の突出した環状部分を空洞5の端部に基体2と一体的に形成し、その突出部分を分岐部105a及び分岐部107aに嵌合挿入することにより行われてもよい。
【0063】
被処理流体用ポンプ109は、供給管105及び排出管107の少なくともいずれかに設けられている。図8では、供給管105に設けられた場合を例示している。なお、流体源103が内燃機関である場合など、流体源103の動力により被処理流体が流動される場合には、被処理流体用ポンプ109は省略されてもよい。また、被処理流体用ポンプ109は、誘電性構造体1に設けることも可能である。被処理流体用ポンプ109は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0064】
冷媒源111は、例えば、熱交換器を含んで構成され、排出用流動管50Bからの冷却媒体の温度を熱交換器により降下させて供給用流動管50Aに供給する。なお、冷媒源111は、冷却媒体を供給することができればよく、排出用流動管50Bからの冷却媒体を受け入れて冷却媒体を循環させるものでなくてもよい。すなわち、排出用流動管50Bからの冷却媒体は、冷媒源111とは異なる場所へ排出されてよい。例えば、冷却媒体として水道水が利用されるような場合に、排出用流動管50Bからの水は、冷媒源111としての水源とは異なる場所へ排出されてよい。逆に、冷却媒体が循環される構成である場合には、冷媒源111は省略されてもよい。
【0065】
供給用流動管50Aは、一端が冷媒源111に連通するとともに、他端が、上述のように、流入用接続管等を介して誘電性構造体1の空洞5(流路)に連通している。排出用流動管50Bは、一端が、基体2に一体的に設けられた流出用接続管等を介して誘電性構造体1の空洞5に連通するとともに、他端が冷媒源111に連通している。流動管50は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。流動管50は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0066】
冷却媒体用ポンプ113は、供給用流動管50A及び排出用流動管50Bの少なくともいずれかに設けられている。図8では、供給用流動管50Aに設けられた場合を例示している。なお、冷媒源111が高位置にあるタンクであり、重力により冷却媒体を流動させることができるなど、適宜に冷却媒体を流動させる動力が得られる場合には、冷却媒体用ポンプ113は省略されてもよい。また、冷却媒体用ポンプ113は、誘電性構造体1に設けることも可能である。冷却媒体用ポンプ113は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0067】
図9は、反応装置100の電気系の構成を示すブロック図である。ここでは、例として、基体2の内部に基体2の温度を検出するための温度検出素子115と、基体2を加熱するためのヒータ116とが設けられているものする。また、基体2の表面に、電極6に電圧を印加するための外部端子8a、8b、温度検出素子115からの電気信号を出力ためのセンサ用端子118、ヒータ116に電力を供給するためのヒータ用端子119がそれぞれ露出しているものとする。
【0068】
反応装置本体部101は、導電体用端子117、センサ用端子118、ヒータ用端子119に接続される装置側導電体用端子141、装置側センサ用端子143、装置側ヒータ用端子145を備えている。誘電性構造体1は、これら端子を介して反応装置本体部101から電力が供給されて駆動制御される。具体的には、以下のとおりである。
【0069】
電源部121は、例えば、バッテリを含んで構成され、バッテリからの直流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。あるいは、商用周波数の交流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。電源部121の電力は、制御部123、放電制御部125、温度検出部127、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109、冷却媒体用ポンプ113に供給される。
【0070】
放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び導電体用端子117を介して電極6に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。空洞5では、放電制御部125により印加された電圧に応じた量の放電が行われる。
【0071】
温度検出部127は、例えば、温度検出素子115が温度変化により抵抗値が変化する抵抗体により構成されている場合、電源部121から供給される電力を適宜な電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側センサ用端子143及びセンサ用端子118を介して温度検出素子115に供給する。そして、温度検出素子115は、温度検出素子115の抵抗値を検出し、その検出した抵抗値に応じた信号を制御部123に出力する。温度検出素子115は、検出した抵抗値に基づいて温度検出素子115の温度を算出し、その算出値に応じた信号を制御部123に出力してもよい。
【0072】
ヒータ駆動部129は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側ヒータ用導電体145及びヒータ用導電体119を介してヒータ116に供給する。ヒータ駆動部129は、例えば、整流回路や変圧器等の電源回路を含んで構成されている。ヒータ116では、ヒータ駆動部129により印加された電圧に応じた量の発熱が行われる。
【0073】
被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113はそれぞれ、例えば、特に図示しないが、ポンプの駆動源としてのモータと、当該モータを駆動するモータドライバとを含んで構成されており、モータドライバは、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力又は直流電力に変換してモータに印加する。モータは、印加された電圧に応じた回転数で回転し、ひいては、印加された電圧に応じた力が被処理流体や冷却媒体に加えられる。
【0074】
入力部131は、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作に応じた信号を制御部123に出力する。例えば、入力部131は、反応装置100の駆動開始操作、駆動停止操作、温度設定や流量制御に係る各種のパラメータの設定操作を受け付け、操作に応じた信号を出力する。入力部131は、例えば、各種スイッチを含んだ制御パネルやキーボードにより構成されている。
【0075】
制御部123は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を備えたコンピュータにより構成されている。制御部123は、温度検出部127や入力部131からの信号に基づいて、放電制御部125、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113に制御信号を出力する。
【0076】
例えば、制御部123は、入力部131から反応装置100の駆動開始操作に応じた信号が入力された場合には、導電体用端子117への電力の供給を開始するように放電制御部125に制御信号を出力し、入力部131から反応装置100の駆動停止操作に応じた信号が入力された場合には、電極6への電力の供給を停止するように放電制御部125に制御信号を出力する。
【0077】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、電極6へ供給する電力を、通常運転時に供給する電力よりも増加させるように、放電制御部125に制御信号を出力し、誘電性構造体1が目標温度に到達した場合には、電極6へ供給する電力を通常運転時に供給する電力に維持するように、放電制御部125に制御信号を出力する。
【0078】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、ヒータ116へ電力を供給し、又は、ヒータ116へ供給する電力を増加させるように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。そして、誘電性構造体1が目標温度に到達した場合には、ヒータ116へ供給する電力を減少させ、又は、ヒータ116への電力の供給を停止するように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。
【0079】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度、あるいは、誘電性構造体1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の目標温度とを比較し、検出された温度が目標温度よりも高い場合には冷却媒体の流速を高く、低い場合には冷却媒体の流速を低くするように、冷却媒体用ポンプ113へ制御信号を出力する。
【0080】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、被処理流体の流速を低く、達したと判定した場合は、被処理流体の流速を高くするように、被処理流体用ポンプ109へ制御信号を出力する。
【0081】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の温度範囲とを比較し、検出された温度が設定された温度範囲を超えた場合には、不図示の表示装置やスピーカ等の報知部に、異常の発生を報知するように制御信号を出力する。
【0082】
以上の第3の実施形態によれば、反応装置100は、第1の実施形態の誘電性構造体1と、空洞5に被処理流体を供給する供給管105と、空洞5でプラズマ発生を行なって被処理流体を化学変化させた反応流体を排出するための排出管107とを備えているから、第1の実施形態と同様に、誘電性構造体1の耐久性の向上や誘電性構造体1の小型化の効果が得られ、ひいては、反応装置100の耐久性の向上や小型化の効果が得られる。
【0083】
なお、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述においては、自動車、船舶、発電機等に使用されるディーゼルエンジン等の排気ガスの改質について説明を行っているが、その他の用途に使用される誘電性構造体およびその反応装置に適用しても良い。例えば、消臭、ダイオキシン分解、花粉分解等に使用される空気洗浄機器やプラズマエッチング、薄膜装置等に搭載される誘電性構造体および反応装置等に適用することができる。また、プラズマにより空洞5を通過する流体を反応または分解させるための誘電性構造体およびその反応装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態による誘電性構造体の構成例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1の誘電性構造体の平面図、(b)は、図1の誘電性構造体の側面図である。
【図3】(a)は、図2(a)のA−Aにおける断面図、(b)は、図2(b)の誘電体3bの平面透視図、(c)は、図2(b)の誘電体3cの平面透視図である。
【図4】第1の実施の形態による誘電性構造体の変形例を示す図であり、(a)は、誘電体3b,3cの断面図、(b)は、誘電体3bの平面透視図、(c)は、誘電体3cの平面透視図である。
【図5】第1の実施の形態による誘電性構造体の変形例を示す図であり、(a)は、誘電体3b,3cの断面図、(b)は、誘電体3bの平面透視図、(c)は、誘電体3cの平面透視図である。
【図6】第1の実施の形態による誘電性構造体の変形例を示す図であり、(a)は、誘電体3の断面図、(b)は、(a)のP−P線における断面図、(c)は、(a)のQ−Q線における断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による誘電性構造体の構成例を示す図であり、(a)は、誘電性構造体の断面図、(b)は、誘電体3bの平面透視図、(c)は、誘電体3cの平面透視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る反応装置の構造的な構成を示す概念図である。
【図9】図8の反応装置の電気系の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
1・・・誘電性構造体
2・・・基体
3a,3b,3c,3d・・・誘電体
4・・・支持部
5・・・空洞
6・・・電極
7a・・第1導電層
7b・・第2導電層
8a,8b・・・外部端子
9・・・貫通孔
10・・貫通導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配列された複数の誘電体と、該各誘電体の内部に設けられた複数の導体層からなる電極とを有し、前記電極間に電圧を印加することにより前記誘電体間にプラズマを発生可能な誘電性構造体であって、
前記誘電体の少なくとも1つにおいて、前記電極は、貫通孔および欠け部の少なくとも一方を有する第1導体層と、前記貫通孔および欠け部に対応する位置に設けられ、前記第1導体層に電気的に接続される第2導体層とからなる誘電性構造体。
【請求項2】
前記複数の誘電体のうち対向する少なくとも一組の第1誘電体および第2誘電体において、
前記第1誘電体および前記第2誘電体の前記各電極は、前記第1導体層と前記第2導体層とからなり、
前記第1誘電体の前記第2導体層と前記第2誘電体の前記第2導体層は、対向している請求項1に記載の誘電性構造体。
【請求項3】
前記第1誘電体において、前記第2導体層は、前記第2誘電体に対向する該第1誘電体の表面と前記第1導体層との間に位置しており、
前記第2誘電体において、前記第2導体層は、前記第1誘電体に対向する該第2誘電体の表面と前記第1導体層との間に位置している請求項2に記載の誘電性構造体。
【請求項4】
前記第1誘電体において、前記第2導体層は、前記第2誘電体に対向する該第1誘電体の表面と前記第1導体層との間に設けられ、
前記第2誘電体において、前記第2導体層は、前記第1導体層に関して、前記第1誘電体に対向する表面と反対側に設けられる請求項2に記載の誘電性構造体。
【請求項5】
前記複数の誘電体は、交互に配列される第1誘電体と第2誘電体とを有し、
前記第1誘電体の前記電極は、貫通孔および欠け部の少なくとも一方を有する第1導体層と、前記貫通孔および欠け部に対応する位置に設けられ、前記第1導体層に電気的に接続される第2導体層とからなり、
前記第2誘電体の前記電極は、貫通孔および欠け部の少なくとも一方を有する第3導体層と、前記貫通孔および欠け部に対応する位置に設けられ、前記第3導体層に電気的に接続される第4導体層とからなり、
前記第1誘電体において、前記第2導体層は、前記第2誘電体に対向する該第1誘電体の表面と前記第1導体層との間に設けられ、
前記第2誘電体において、前記第4導体層は、前記第3導体層に関して、前記第1誘電体に対向する表面と反対側に設けられ、
前記第2導体層は、前記第3導体層に対向し、
前記第4導体層は、前記第1導体層に対向し、
隣接する誘電体間において、前記第2導体層と前記第3導体層との間の距離、および前記第1導体層と前記第4導体層との間の距離は等しい請求項1に記載の誘電性構造体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの誘電体において、前記第2導体層は、前記第1導体層に、前記第2導体層と前記第1導体層との間に設けられた貫通導体によって電気的に接続されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの誘電体において、前記第2導体層に対向する表面に触媒が担持されている請求項1から6のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の誘電性構造体と、
前記誘電性構造体の前記電極間に交流電圧、若しくはパルス電圧を印加するための電源と、
前記誘電体間に流体を供給可能な供給部と
を備えた反応装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の誘電性構造体を製造するための製造方法であって、
前記誘電体並びに該誘電体に設けられた前記電極を、複数のセラミックグリーンシートと該セラミックグリーンシートの間に配置された導電ペーストを同時に焼成することにより形成する誘電性構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−29795(P2010−29795A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195246(P2008−195246)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】