説明

調味料充填方法、調味料充填システム、および調味料入ボトル

【課題】ボトル内に最初から存在する酸素量を減らし、調味料の酸化劣化を抑制することが可能な調味料充填方法、調味料充填システム、および調味料入ボトルを提供する。
【解決手段】本発明は、口部31と、ボトル本体32とを有するボトル30に対して調味料43を充填する調味料充填方法である。まず口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42のみを供給してボトル本体32内を不活性ガス42で置換し、その後、口部31からボトル本体32内へ調味料43を充填する。予めボトル本体32内に導入された不活性ガス42により、ボトル本体32内に充填された調味料43に、内部に不活性ガス42を収納した泡43aが生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料充填方法、調味料充填システム、および調味料入ボトルに係り、とりわけボトル内の初期酸素量を減らすことにより、調味料の酸化劣化を抑制することが可能な調味料充填方法、調味料充填システム、および調味料入ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、醤油、ドレッシング等の液状調味料はガラス瓶に充填されて販売されている。一方近年、容器の軽量化を図ること等を目的として、このような液状調味料をPETボトル等のプラスチックボトルに充填することも行われている。
【0003】
しかしながら、このような液状調味料は、酸化劣化によって色や風味に影響が生じやすいという性質がある。したがって、液状調味料を容器に充填する場合、開栓するまでの間に起こりうる初期酸化劣化を抑制することが重要となる。
【0004】
特許文献1には、調味料を充填した後、プラスチックボトル内のヘッドスペース中の酸素を不活性ガスによって置換することにより、ヘッドスペース中の酸素を除去する技術が開示されている。
【0005】
他方、特許文献2には、不活性ガスと洗浄水(リンス水)とを混合した状態で空ボトル内に注入する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−350090号公報
【特許文献2】特開2002−301441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、調味料入りのボトルのヘッドスペース中に液化不活性ガスを滴下し、不活性ガスにより酸素を置換することを行うのみでは、そのガス置換率に限界が存在する。とりわけ調味料の種類によっては、充填時に周囲の空気を巻き込み、泡立ち易く、かつこの泡が消えにくいものもある。このような泡立ちやすい調味料が充填されているボトルの場合、ヘッドスペース中の酸素を不活性ガスにより置換する際、ヘッドスペースのうち泡の外部の空間(液面上方空間)に存在する酸素を置換することはできるが、泡の内部に存在する酸素を置換することはできない。このような、泡内部に存在する酸素は、一定時間の経過後、泡の消滅とともにヘッドスペース中に放出されるため、結果的にヘッドスペース中の酸素量が上昇してしまうことになる。
【0008】
他方、特許文献2においては、不活性ガスを注入する工程と洗浄水(リンス水)を注入する工程とが区別されていないため、洗浄水(リンス水)の水切りを十分に行うことが難しいと考えられる。すなわち、リンス水と不活性ガスとがスプレー状に吹き出してしまうため、リンス水がボトル内壁にミスト状に残り、水切りが難しくなると考えられる。
【0009】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、ボトル内に最初から存在する酸素量を減らすことにより、調味料の酸化劣化を抑制することが可能な、調味料充填方法、調味料充填システム、および調味料入ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、口部と、ボトル本体とを有するボトルに対して調味料を充填する調味料充填方法において、口部からボトル本体内へ不活性ガスのみを供給してボトル本体内を不活性ガスで置換する不活性ガス置換工程と、口部からボトル本体内へ調味料を充填する調味料充填工程とを備えたことを特徴とする調味料充填方法である。
【0011】
本発明は、調味料充填工程において、口部からボトル本体内へ5℃〜55℃の温度で調味料を充填することを特徴とする調味料充填方法である。
【0012】
本発明は、工程全体が無菌雰囲気下で行われることを特徴とする調味料充填方法である。
【0013】
本発明は、不活性ガス置換工程の前に、ボトル内を殺菌する殺菌工程と、口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス工程とが設けられていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0014】
本発明は、不活性ガス置換工程の前に、ボトル内を電子線により殺菌する殺菌工程が設けられていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0015】
本発明は、調味料充填工程の後、口部からボトル本体内へ不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程が設けられていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0016】
本発明は、不活性ガス供給工程の後、口部にキャップを装着するキャップ装着工程が設けられていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0017】
本発明は、調味料充填工程において、口部からボトル本体内へ55℃〜95℃の温度で調味料を充填することを特徴とする調味料充填方法である。
【0018】
本発明は、不活性ガス置換工程の前に、口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス工程が設けられていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0019】
本発明は、調味料充填工程の後、口部にキャップを装着するキャップ装着工程が設けられていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0020】
本発明は、キャップ装着工程の後、ボトル本体内を殺菌する殺菌工程が設けられていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0021】
本発明は、不活性ガス置換工程の際ボトル本体内に導入された不活性ガスにより、調味料充填工程の際、ボトル本体内に充填された調味料に、内部に不活性ガスを収納した泡が生じることを特徴とする調味料充填方法である。
【0022】
本発明は、不活性ガス置換工程から調味料充填工程までの間が0.5秒〜20秒で行われることを特徴とする調味料充填方法である。
【0023】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部に、放射状に延びる複数の突起が形成されていることを特徴とする調味料充填方法である。
【0024】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、ペタロイド形状からなる底部とを有することを特徴とする調味料充填方法である。
【0025】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部の深さは、胴部の外径の4%〜55%であることを特徴とする調味料充填方法である。
【0026】
本発明は、口部と、ボトル本体とを有するボトルに対して調味料を充填する調味料充填システムにおいて、口部からボトル本体内へ不活性ガスのみを供給してボトル本体内を不活性ガスで置換する不活性ガス置換部と、不活性ガス置換部の下流側に設けられ、口部からボトル本体内へ調味料を充填する調味料充填部とを備えたことを特徴とする調味料充填システムである。
【0027】
本発明は、調味料充填部において、口部からボトル本体内へ5℃〜55℃の温度で調味料を充填することを特徴とする調味料充填システムである。
【0028】
本発明は、不活性ガス置換部の上流側に、ボトル内を殺菌する殺菌部が設けられ、不活性ガス置換部の上流側であって殺菌部の下流側に、口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス部が設けられていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0029】
本発明は、不活性ガス置換部の上流側に、ボトル内を電子線により殺菌する殺菌部が設けられていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0030】
本発明は、調味料充填部の下流側に、口部からボトル本体内へ不活性ガスを供給する不活性ガス供給部が設けられていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0031】
本発明は、不活性ガス供給部の下流側に、口部にキャップを装着するキャップ装着部が設けられていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0032】
本発明は、調味料充填部において、口部からボトル本体内へ55℃〜95℃の温度で調味料を充填することを特徴とする調味料充填システムである。
【0033】
本発明は、不活性ガス置換部の上流側に、口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス部が設けられていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0034】
本発明は、調味料充填部の下流側に、口部にキャップを装着するキャップ装着部が設けられていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0035】
本発明は、キャップ装着部の下流側に、ボトル本体内を殺菌する殺菌部が設けられていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0036】
本発明は、不活性ガス置換部でボトル本体内を不活性ガスで置換してから、内容物充填部でボトル本体内へ内容物を充填するまでの間が0.5秒〜20秒で行われることを特徴とする調味料充填システムである。
【0037】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部に、放射状に延びる複数の突起が形成されていることを特徴とする調味料充填システムである。
【0038】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、ペタロイド形状からなる底部とを有することを特徴とする調味料充填システムである。
【0039】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部の深さは、胴部の外径の4%〜55%であることを特徴とする調味料充填システムである。
【0040】
本発明は、ボトル本体と口部とを有するボトルと、ボトルのボトル本体内に充填された調味料とを備え、調味料に、内部に不活性ガスを収納した泡が形成されていることを特徴とする調味料入ボトルである。
【0041】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部に、放射状に延びる複数の突起が形成されていることを特徴とする調味料入ボトルである。
【0042】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、ペタロイド形状からなる底部とを有することを特徴とする調味料入ボトルである。
【0043】
本発明は、ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部の深さは、胴部の外径の4%〜55%であることを特徴とする調味料入ボトルである。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、口部からボトル本体内へ不活性ガスのみを供給してボトル本体内を不活性ガスで置換した後、口部からボトル本体内へ調味料を充填する。このため、ボトル本体内に不活性ガスが充填されるとともに、調味料に、内部に不活性ガスを収納した泡が形成される。これにより、ボトル内に最初から存在する酸素量(初期容器内総酸素量)を減らすことができ、調味料の初期酸化劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態による調味料充填システム(無菌充填システム)を示す構成図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態による調味料充填システムのリンス部および不活性ガス置換部を示す概略断面図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態による調味料充填方法(無菌充填方法)を示すフロー図。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、本発明の第1の実施の形態による調味料充填方法の各工程におけるボトルを示す図。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態による調味料充填システム(ホット充填システム)を示す構成図。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態による調味料充填方法(ホット充填方法)を示すフロー図。
【図7】図7は、保存期間と調味料の色差との関係を示す図。
【図8】図8は、味覚試験機による試験結果を示す図。
【図9】図9(a)および図9(b)は、実施例Aによるボトルを示す図。
【図10】図10(a)および図10(b)は、実施例Bによるボトルを示す図。
【図11】図11(a)および図11(b)は、実施例Cによるボトルを示す図。
【図12】図12(a)および図12(b)は、実施例Dによるボトルを示す図。
【図13】図13(a)および図13(b)は、実施例Eによるボトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図4を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。なお、図1乃至図4に示す第1の実施の形態は、調味料充填システムとして無菌充填システムを用いるものである。
【0047】
(調味料充填システム)
まず図1乃至図2により本実施の形態による調味料充填システム(無菌充填システム)について説明する。
【0048】
図1に示す調味料充填システム10は、口部31と、ボトル本体32とを有するボトル30に対して調味料43を充填するシステムである。この調味料充填システム10は、殺菌部11と、リンス部12と、不活性ガス置換部13と、調味料充填部14と、不活性ガス供給部15と、キャップ装着部16とを備えている。これら殺菌部11、リンス部12、不活性ガス置換部13、調味料充填部14、不活性ガス供給部15、およびキャップ装着部16は、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。
【0049】
また、殺菌部11とリンス部12との間に、ボトル30を殺菌部11からリンス部12へ搬送する第1搬送機構17が設けられている。さらに、不活性ガス置換部13と調味料充填部14との間に、ボトル30を不活性ガス置換部13から調味料充填部14へ搬送する第2搬送機構18が設けられている。
【0050】
殺菌部11は、ミスト状、棒状、または噴水式に噴出される殺菌剤40により空のボトル30内を殺菌するものである。この殺菌剤40としては、例えば過酸化水素水または過酢酸が挙げられる。なお、殺菌部11においては、殺菌剤40を用いる殺菌方法のほか、殺菌剤40を用いない電子線殺菌(以下、EB(Electron Beam)殺菌ともいう)方法が用いられても良い。
【0051】
リンス部12は、殺菌部11で内部が殺菌されたボトル30の口部31からボトル本体32内へリンス水41を供給するものである。このリンス水41は、例えば25℃〜80℃程度の温水(無菌水)からなっている。なお、殺菌部11においてEB殺菌方法を用いる場合、このリンス部12は必ずしも設けられなくても良い。この場合、製造工程において水や電気の使用量を削減することができる。
【0052】
なお、殺菌部11とリンス部12との間に位置する第1搬送機構17において、口部31が下方を向くように、ボトル30を上下反転するようになっている。
【0053】
不活性ガス置換部13は、リンス部12でリンスされたボトル30に対し、その口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42のみを供給し、これによりボトル本体32内を不活性ガス42で置換するものである。この不活性ガス42としては各種のガスを用いることができるが、とりわけ窒素(N2)を用いることが好ましい。また充填する不活性ガス42の量は、ボトル30の容積を上回る量とすることが好ましい。なお、不活性ガス置換部13において、ボトル30は口部31を下方に向けたままの状態である。このように、不活性ガス42を用いてボトル30内の空気(酸素)を置換することにより、ボトル30内に不活性ガス42が充填される。
【0054】
次に図2を用いて、このリンス部12および不活性ガス置換部13の構成について更に詳細に説明する。
【0055】
図2に示すように、リンス部12および不活性ガス置換部13は、それぞれディストリビュータ50上に配置されている。このディストリビュータ50は、固定部51と、固定部51上で一定方向に回転する回転部52とを有している。このうち回転部52に、上方に向けて突出する複数のノズル53が連結されている。そしてボトル30は、回転部52の回転に伴い、口部31内に挿入された各ノズル53とともに一定方向に回転するようになっている。なお、ディストリビュータ50は平面円形形状からなっているが、図2では、便宜上、ディストリビュータ50の一部分のみを模式的に示している。
【0056】
リンス部12は、リンス水41を収容したリンス水タンク59と、リンス水タンク59に連結されたリンス水供給管54と、リンス水供給管54に連結されたリンス水供給空間55とを有している。このうちリンス水供給空間55は、固定部51内に形成されるとともに、回転部52の回転に伴ってリンス水供給空間55上方に移動してきたノズル53と連通するようになっている。これによりリンス水41は、リンス水タンク59から、リンス水供給管54、リンス水供給空間55、および各ノズル53を順次介してボトル30内に供給され、ボトル30内が洗浄される。
【0057】
他方、不活性ガス置換部13は、不活性ガス42を収容した不活性ガスタンク56と、不活性ガスタンク56に連結された不活性ガス供給管57と、不活性ガス供給管57に連結された不活性ガス供給空間58とを有している。このうち不活性ガス供給空間58は、固定部51内に形成されるとともに、回転部52の回転に伴って不活性ガス供給空間58上方に移動してきたノズル53と連通するようになっている。これにより不活性ガス42は、不活性ガスタンク56から、不活性ガス供給管57、不活性ガス供給空間58、および各ノズル53を順次介してボトル30内に供給され、ボトル30内の空気と置換される。
【0058】
再び図1を参照すると、不活性ガス置換部13の下流側に、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ調味料43を充填する調味料充填部14が設けられている。この調味料充填部14において、不活性ガス42が充填された状態のボトル30に対して調味料43が充填される。この場合、充填時における調味料43の温度は5℃〜55℃である。なお、調味料43の種類は限定されるものではないが、例えば、醤油、みりん、酢、ポン酢、だし汁、つけだれ類、めんつゆ等のつゆ類、調理用酒、ドレッシング類、パスタソースやウスターソース等のソース類、ラー油等の辛味調味料類、ケチャップ、マヨネーズ、液状味噌等、液状の調味料を用いることができる。
【0059】
なお不活性ガス置換部13と調味料充填部14との間の第2搬送機構18において、口部31が上方を向くように再度ボトル30を上下反転するようになっている。
【0060】
調味料充填部14の下流側には、不活性ガス供給部15が設けられている。この不活性ガス供給部15は、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42を供給し、ボトル本体32のうち調味料43の液面上方の空間(液面上方空間32a)内に不活性ガス42を充填するものである。なお、不活性ガス42としては、不活性ガス置換部13において供給されるガスと同様に、例えば窒素(N2)を用いることができる。なお、不活性ガス供給部15で供給される不活性ガスが、不活性ガス置換部13で供給される不活性ガスと異なる種類のガスからなっていても良い。この不活性ガス供給部15で充填される不活性ガス42の量は、泡43aおよび液面上方空間32aの合計容積と同等以上の量とすることが好ましい。ここで本明細書中、液面上方空間32aとは、ボトル本体32内部の空間のうち、調味料43の液面上方に形成される空間であって、調味料43に発生する泡43aを除いたものをいう。したがって、泡43aおよび液面上方空間32aに含まれる気体が、市場に出た後におけるヘッドスペース中の気体に相当する。
【0061】
不活性ガス供給部15の下流側に設けられたキャップ装着部16は、ボトル30の口部31にキャップ33を装着することにより、ボトル30を密閉するものである。このように、ボトル30の口部31にキャップ33を装着することにより、調味料入ボトル35が得られる。
【0062】
(調味料充填方法)
次に、図1、図3、および図4(a)〜図4(c)により、本実施の形態による調味料充填方法(無菌充填方法)について説明する。本実施の形態による調味料充填方法は、上述した調味料充填システム10(図1)を用いて行われるものである。
【0063】
まず、殺菌部11において、空のボトル30内を殺菌剤40により殺菌する(殺菌工程)(図3のステップS1)。この殺菌剤40としては、上述したように過酸化水素水または過酢酸が挙げられる。なお、この殺菌工程において、殺菌剤40を用いる殺菌方法のほか、上述したEB殺菌方法を用いても良い。このように、殺菌部11においてボトル30内が殺菌される。
【0064】
次に、殺菌されたボトル30は、第1搬送機構17において口部31が下方を向くように上下反転され、リンス部12に搬送される。次にこのリンス部12において、ボトル30の口部31からボトル本体32内へリンス水41が供給される(リンス工程)(図3のステップS2)。このように、リンス水41を用いてボトル30内を洗浄することにより、ボトル30内に残存する殺菌剤40等を取り除く。なお、殺菌工程においてEB殺菌方法を用いる場合には、殺菌剤40を使用しないため、必ずしもこのリンス工程を設ける必要はない。ただし、この場合であっても、ボトル30内に残存する異物等を除去するために、このリンス工程が設けられていても良い。
【0065】
続いて、ボトル30は、口部31を下方に向けた状態のまま不活性ガス置換部13に搬送される(図2参照)。この不活性ガス置換部13において、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42のみを供給し、ボトル本体32内を不活性ガス42で置換する(不活性ガス置換工程)(図3のステップS3)。このように、ボトル本体32内に下方から不活性ガス42を噴射することにより、ボトル本体32内に残存するリンス水41を効果的に取り除くことができるという効果もある。
【0066】
次に、不活性ガス42が充填されたボトル30は、第2搬送機構18において口部31が上方を向くように上下反転され、調味料充填部14に搬送される。続いて、調味料充填部14において、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ調味料43が充填される(調味料充填工程)(図3のステップS4、図4(a))。この場合、調味料43は5℃〜55℃の温度で無菌充填される。なお、充填される調味料43は、その溶存酸素濃度を抑えるように、予め液処理工程において制御(液脱気)管理されている。
【0067】
この調味料充填工程の際、ボトル30のボトル本体32に充填された調味料43の内部および表面に、充填時の巻き込みにより多数の泡43aが生じる。この場合、上述したように、不活性ガス置換工程において、ボトル本体32内に不活性ガス42が導入されている。したがって、調味料43には、内部に不活性ガス42が収納された泡43aが生じる。また、調味料43中にも不活性ガス42が包み込まれる。
【0068】
本実施の形態において、調味料43は、上述したように醤油、みりん、酢、ポン酢、だし汁、つけだれ類、めんつゆ等のつゆ類、調理用酒、ドレッシング類、パスタソースやウスターソース等のソース類、ラー油等の辛味調味料類、ケチャップ、マヨネーズ、液状味噌等、液状の調味料からなっていることが好ましい。
【0069】
調味料充填工程の後、ボトル30は不活性ガス供給部15に搬送される。次いで、この不活性ガス供給部15において、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42が供給される(不活性ガス供給工程)(図3のステップS5、図4(b))。これにより、ボトル本体32の液面上方空間32a内に不活性ガス42が充填される。この結果、不活性ガス置換部13から調味料充填部14を経て不活性ガス供給部15に至るボトル30の搬送中に一部失われた不活性ガス42が、ボトル本体32内に補填される。
【0070】
不活性ガス供給工程の後、ボトル30はキャップ装着部16に搬送される。その後、キャップ装着部16において、ボトル30の口部31にキャップ33を装着することにより、調味料入ボトル35が得られる(キャップ装着工程)(図3のステップS6、図4(c))。
【0071】
この密栓後の調味料入ボトル35は、ボトル本体32と口部31とを有するボトル30と、ボトル30の口部31に装着されたキャップ33と、ボトル30のボトル本体32内に充填された調味料43とを備えている。また、ボトル本体32の液面上方空間32a内に不活性ガス42が充填されるとともに、内部に不活性ガス42を収納した泡43aが形成されている(図4(c))。したがって、ボトル30内に最初から存在する酸素量(初期容器内総酸素量)がきわめて少なく抑えられている。
【0072】
ところで、本実施の形態において、上述した殺菌工程からキャップ装着工程までの工程全体が無菌雰囲気下で行われるとともに、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ5℃〜55℃、例えば常温(5℃〜35℃)で調味料43を充填するようになっている。すなわち、いわゆる無菌充填方式が採用されている。
【0073】
ここで、本実施の形態による無菌充填方式と、ホットパック充填方式の違いについて説明する。本実施の形態による無菌充填方式の特徴として、調味料43の充填温度が5℃〜55℃であるため、充填時における泡43aおよび液面上方空間32aの気体量は、最も多い場合で、市場に出た後における、製品(調味料入ボトル35)のヘッドスペース容積にほぼ等しいことが挙げられる。
【0074】
これに対して、ホットパック充填方式(後述)を採用した場合には、55℃〜95℃の高温下で調味料を充填する。このため、充填時にヘッドスペースは蒸気で満たされており、ヘッドスペースの酸素濃度は低くなっている。また、その後調味料が常温となった場合には、ヘッドスペースが大きく減少する。さらに、気体の液体への溶解度は一般的に低温である程、増す性質がある。
【0075】
したがって、本実施の形態による無菌充填方式は、ホットパック充填方式と比べて、調味料43の充填時における空気の巻き込みにより、調味料43中の溶存酸素濃度が高まりやすい。加えて、液面上方空間32aが大きいことから、ボトル30内の総酸素量が大きくなりやすい傾向にある。したがって、とりわけ無菌充填方式を用いる場合、ボトル30内に最初から存在する酸素量(初期容器内総酸素量)を抑えることが、調味料43の酸化を防止するうえで効果的となる。
【0076】
なお、本実施の形態において、調味料入ボトル35の生産(搬送)速度は、100bpm〜2000bpmとすることが好ましい。ここでbpm(bottle per minute)とは、1分間当たりのボトル30の搬送速度をいう。この場合、不活性ガス置換工程(図3のステップS3)から調味料充填工程(図3のステップS4)までの間が0.5秒〜20秒で行われることが好ましい。
【0077】
なお、ボトル30の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)等の合成樹脂材料を用いることができる。なお、ボトル30の好ましい形状については後述する。
【0078】
以上のように本実施の形態によれば、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42のみを供給してボトル本体32内を不活性ガス42で置換した後、口部31からボトル本体32内へ調味料43を充填する。このことにより、ボトル本体32内に不活性ガス42が充填されるとともに、調味料43に、内部に不活性ガス42を収納した泡43aが形成される。この結果、ボトル30内の初期容器内総酸素量(製造直後における、液面上方空間32a内部に存在する酸素量、泡43a内部に存在する酸素量、および調味料43に溶解している酸素量の合計)を減らすことができ、調味料43の初期酸化劣化を抑制することができる。具体的には、500mlサイズのボトル30の場合、初期容器内総酸素量を2.0ml以下に抑えることができる。
【0079】
とりわけ本実施の形態によれば、ボトル内容物の初期酸化を抑制する効果が高いため、上述した各種調味料43のように、酸化劣化によって風味や色差が変わりやすい性質を持つものを、効果的に充填して酸化防止を図ることができる。とりわけ保存料を添加しない液状調味料であっても、酸化の進行を遅らせる効果が得られる。また、調味料43としてソース等の粘性の高いものを用いる場合、充填時に泡43aが生じやすく、かつ調味料43内に不活性ガス42を巻き込みやすいため、より酸化防止の効果が得られやすい。
【0080】
また本実施の形態によれば、ボトル30の口部31からボトル本体32内へリンス水41を供給し(リンス工程)、その後、口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42のみを供給してボトル本体32内を不活性ガス42で置換する(不活性ガス置換工程)。したがって、不活性ガス42によってリンス水41を効果的に除去することができる。
【0081】
また本実施の形態によれば、調味料充填工程の後、口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42を供給する不活性ガス供給工程が設けられている。このことにより、搬送中にボトル本体32内から一部失われた不活性ガス42をボトル本体32に補填することができ、調味料43の初期酸化劣化をより確実に抑制することができる。
【0082】
また本実施の形態によれば、口部31からボトル本体32内へ5℃〜55℃で調味料43を充填するとともに、工程全体が無菌雰囲気下で行われる(無菌充填方式)。すなわち、調味料43を加熱することがないので、熱による調味料43の劣化を防止することができる。
【0083】
さらに本実施の形態によれば、従来の無菌充填方式で使用されている設備を大幅に改造する必要がないため、設備コストを抑制することができる。
【0084】
さらに本実施の形態によれば、調味料入ボトル35の生産(搬送)速度は、100bpm〜2000bpmであり、また不活性ガス置換工程から調味料充填工程までの間が0.5秒〜20秒で行われるので、ボトル30に対して高速で調味料43を充填することが可能である。
【0085】
第2の実施の形態
次に、図5および図6を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。図5および図6は、本発明の第2の実施の形態を示す図である。図5および図6に示す第2の実施の形態は、調味料充填システムとしてホット充填システムを用いるものである。図5および図6に示す第2の実施の形態は、調味料43を比較的高温(55℃〜95℃)で充填する点、および殺菌部11に代えて、キャップ装着部16の下流側に殺菌部19を設けた点が異なるものであり、他の構成は上述した第1の実施の形態と略同一である。図5および図6において、図1乃至図4に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0086】
(調味料充填システム)
まず図5により本実施の形態による調味料充填システム(ホット充填システム)について説明する。以下、図1に示す調味料充填システム(無菌充填システム)と異なる点を中心に説明する。
【0087】
図5に示す調味料充填システム10は、リンス部12と、不活性ガス置換部13と、調味料充填部14と、キャップ装着部16と、殺菌部19とを備えている。これらリンス部12、不活性ガス置換部13、調味料充填部14、キャップ装着部16、および殺菌部19は、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。
【0088】
不活性ガス置換部13と調味料充填部14との間には、ボトル30を不活性ガス置換部13から調味料充填部14へ搬送する第2搬送機構18が設けられている。内容物充填部14とキャップ装着部16との間には、ボトル30を内容物充填部14からキャップ装着部16へ搬送する第3搬送機構34が設けられている。またキャップ装着部16と殺菌部19との間には、ボトル30をキャップ装着部16から殺菌部19へ搬送する第4搬送機構36が設けられている。
【0089】
本実施の形態において、調味料充填部14は、不活性ガス42が充填された状態のボトル30に対して調味料43をホット充填するものである。この場合、充填時における調味料43の温度は55℃〜95℃であり、好ましくは60℃〜95℃であり、更に好ましくは85℃〜95℃である。
【0090】
上述したように、第3搬送機構34は、ボトル30を内容物充填部14からキャップ装着部16へ搬送するためのものである。なお、第3搬送機構34において、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42を供給し、ボトル本体32のうち内容物43の液面上方の空間(液面上方空間32a)内に不活性ガス42を充填しても良い(不活性ガス供給部)。
【0091】
また殺菌部19は、調味料入ボトル35を例えば水平に傾けることにより、高温の状態の調味料43をキャップ33の裏面に接触させ、これによりキャップ33の裏面やボトル本体32の内部を殺菌するものである。
【0092】
(調味料充填方法)
次に、図6により、本実施の形態による調味料充填方法(ホット充填方法)について説明する。本実施の形態による調味料充填方法は、上述した調味料充填システム10(図5)を用いて行われるものである。以下、図3に示す調味料充填方法(無菌充填方法)と異なる点を中心に説明する。
【0093】
本実施の形態において、調味料充填方法は、リンス工程(ステップS2)と、不活性ガス置換工程(ステップS3)と、調味料充填工程(ステップS4)と、キャップ装着工程(ステップS6)と、殺菌工程(ステップS7)とを備えている。このうちリンス工程(ステップS2)、不活性ガス置換工程(ステップS3)、およびキャップ装着工程(ステップS6)は、上述した調味料充填方法(無菌充填方法)(図3)における各工程と略同様である。
【0094】
一方、調味料充填工程(ステップS4)において、調味料43は55℃〜95℃、好ましくは85℃〜95℃の温度でホット充填される。そしてボトル30内部のうち調味料43に接触している部分は、加熱された調味料43によって殺菌される。なお、充填する調味料43は、その溶存酸素濃度を抑えるように、予め液処理工程において制御(液脱気)管理されている。
【0095】
また本実施の形態において、キャップ装着工程(ステップS6)の後、調味料入ボトル35は、第4搬送機構36により殺菌部19に搬送される。この殺菌部19において、調味料入ボトル35内部のうち、調味料43に接触していない部分を殺菌する(殺菌工程)(ステップS7))。この際、調味料入ボトル35を例えば水平に傾けることにより、高温状態(例えば55℃〜95℃)の調味料43をキャップ33の裏面に接触させ、これによりキャップ33の裏面やボトル本体32の内部を殺菌する。この場合、ボトル本体32の内部を周方向均一に殺菌するため、調味料入ボトル35をその中心軸線に沿って回転させることが好ましい。
【0096】
本実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態における効果のほか、以下のような効果が得られる。すなわち本実施の形態によれば、口部31からボトル本体32内へ55℃〜95℃、好ましくは85℃〜95℃の温度で調味料43を充填している(ホット充填方式)。一般に、ホット充填方式は、無菌充填方式と比べてボトル30内の初期容器内総酸素量が少ない。ただし、ホット充填方式といえども、充填時の空気巻き込みは避けられない。このため、本実施の形態による調味料充填方法を用いることにより、初期容器内総酸素量を更に低減することが可能となる。この結果、調味料入ボトル35の製品寿命を更に延ばすことが可能となる。
【0097】
次に、図5乃至図8を用いて本実施の形態の具体的実施例を説明する。
【0098】
(実施例)
図5に示す調味料充填システム10を用い、かつ図6に示す調味料充填方法により調味料入ボトル35(実施例)を作製した(ホット充填方式)。なお、ボトル30としては容量750mlの耐熱PETボトルを用い、さらにボトル30の搬送速度は300bpmとした。
【0099】
まずボトル30の口部31からボトル本体32内へリンス水を供給し(リンス工程)、続いて、口部31からボトル本体32内へ窒素からなる不活性ガス42を800ml供給して、ボトル本体32内を窒素ガスで置換した(不活性ガス置換工程)。次に、口部31からボトル本体32内へ醤油からなる調味料43を92℃の温度で充填した(調味料充填工程)。
【0100】
その後、口部31にキャップ33を装着し(キャップ装着工程)、ボトル30内を殺菌することにより(殺菌工程)、本実施例による調味料入ボトル35を得た。
【0101】
(比較例)
リンス工程の後、口部31からボトル本体32内へ窒素ではなく無菌化した空気からなるガスを800ml供給したこと、以外は、上記実施例と同様にして調味料入ボトル(比較例)を作製した。
【0102】
このようにして得られた調味料入ボトル35(実施例)について、充填直後の調味料43中の色を測定するとともに、官能試験(味覚試験機による優位差判定)を実施した。さらに調味料入ボトル35(実施例)および調味料入ボトル(比較例)を温度22℃の環境下で12週間保存し、各ボトルにおける調味料43の色差ΔE*を測定するとともに、官能試験(味覚試験機による優位差判定)を実施した。この結果を図7および図8に示す。なお色差ΔE*とは、充填直後の調味料43の色を0とした場合における、12週間経過後の調味料43の色の変化を数値化したものである。
【0103】
この結果、本実施の形態による調味料入ボトル35(実施例)は、比較例による調味料入ボトルと比べて、12週間経過後における色差ΔE*が小さかった(図7参照)。また味覚試験機による試験結果によれば、本実施の形態による調味料入ボトル35(実施例)は、比較例による調味料入ボトルと比べて、12週間経過後における調味料43の味覚の変化が小さかった(図8参照)。とりわけ、「酸味」、「旨味コク」、および「旨味」の点で基準サンプルとの相違が小さかった。これらのことからも、本実施の形態による調味料充填方法の有効性を確認することができた。
【0104】
ボトルの構成
次に、図9乃至図13を用いて、上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態による調味料充填方法および調味料充填システムにおいて好適に用いられるボトルの構成について説明する。
【0105】
上述したように、上述した各実施の形態においては、ボトル30の口部31からボトル本体32内へ不活性ガス42のみを供給してボトル本体32内を不活性ガス42で置換し(不活性ガス置換工程)、その後口部31からボトル本体32内へ調味料43を充填している(調味料充填工程)。
【0106】
また上述したように、調味料充填工程の際、充填時の巻き込みにより調味料43に多数の泡43aが生じる。この泡43aの内部には、不活性ガス42が閉じこめられている。したがって、多数の泡43aの合計体積(以下、泡立ち体積ともいう)が大きければ大きいほど、ボトル本体32の液面上方空間32a内の酸素量を相対的に減少させることができる。また泡43a内部の不活性ガス42は、キャップ装着工程までの間に外部の酸素とほとんど置換されない。したがって、ボトル30内に存在する酸素量(初期容器内総酸素量)を低く抑えることができる。本発明者らは、このような泡立ち体積はボトル30の形状による影響を受けやすく、とりわけボトル30の底部の形状による影響を受けやすいことを見出した。
【0107】
以下、図9乃至図13により、本実施の形態において用いられるボトル(実施例A〜実施例E)について順次説明する。
【0108】
(実施例A)
図9(a)および図9(b)は、本実施の形態による調味料充填方法および調味料充填システムに好適に用いられるボトル30(30a)を示している(実施例A)。なお図9(a)は、実施例Aによるボトルを示す斜視図であり、図9(b)は、実施例Aによるボトルの底部を示す断面図(図9(a)のIX−IX線断面図)である。
【0109】
図9(a)および図9(b)に示すボトル30(30a)は、口部31と、ボトル本体32とを有している。このうちボトル本体32は、胴部21と、胴部21に連接する底部37とを有している。底部37の中央部には、内方に向けて陥没する陥没部38が形成されている。また陥没部38には、放射状に延びる複数(この場合は8個)の突起39が形成されている。さらに陥没部38の中央には、内方に凹む円形凹部46が設けられている。この場合、胴部21の外径(胴径)は55mm乃至120mm、好ましくは60mm乃至105mmとなっている。
【0110】
(実施例B)
図10(a)および図10(b)は、本実施の形態による調味料充填方法および調味料充填システムに好適に用いられるボトル30(30b)を示している(実施例B)。なお図10(a)は、実施例Bによるボトルを示す斜視図であり、図10(b)は、実施例Bによるボトルの底部を示す断面図(図10(a)のX−X線断面図)である。
【0111】
図10(a)および図10(b)に示すボトル30(30b)は、口部31と、ボトル本体32とを有している。このうちボトル本体32は、胴部21と、胴部21に連接するとともにペタロイド形状からなる底部22とを有している。底部22は、周方向に等間隔に配置された5つの脚部23を有している。この場合、胴部21の外径(胴径)は55mm乃至120mm、好ましくは60mm乃至105mmとなっている。
【0112】
(実施例C)
図11(a)および図11(b)は、本実施の形態による調味料充填方法および調味料充填システムに好適に用いられるボトル30(30c)を示している(実施例C)。なお図11(a)は、実施例Cによるボトルを示す斜視図であり、図11(b)は、実施例Cによるボトルの底部を示す断面図(図11(a)のXI−XI線断面図)である。
【0113】
図11(a)および図11(b)に示すボトル30(30c)は、口部31と、ボトル本体32とを有している。このうちボトル本体32は、胴部21と、胴部21に連接するとともに中央に陥没部25が形成された底部24とを有している。この場合、胴部21の外径(胴径)は55mm乃至120mm、好ましくは60mm乃至105mmとなっている。
【0114】
このボトル30cは、底部24の中央部に内方に向けて陥没する陥没部25を有している。この陥没部25は、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁26と、その上端に設けられた略星形状の中心凹部27とを有している。また陥没部25の深さ、すなわち接地部28から陥没部25の最深部までの距離Hbは、胴径の4%〜55%である。距離Hbが胴径の4%よりも小さいと、泡43aの泡立ち体積を十分大きくすることができない。一方、距離Hbが胴径の55%を越えると、成形性の安定が悪くなり、底部24の形状が出にくいので好ましくない。なお、第1の実施の形態(無菌充填システムおよび無菌充填方法)においては、Hbの値を胴径の4%〜40%とすることが好ましい。一方、第2の実施の形態(ホット充填システムおよびホット充填方法)においては、Hbの値を胴径の10%〜55%とすることが好ましい。
【0115】
(実施例D)
一方、図12(a)および図12(b)は、本実施の形態による調味料充填方法および調味料充填システムに用いることが可能なボトル60を示している(実施例D)。なお図12(a)は、実施例Dによるボトルを示す斜視図であり、図12(b)は、実施例Dによるボトルの底部を示す断面図(図12(a)のXII−XII線断面図)である。
【0116】
図12(a)および図12(b)に示すボトル60は、口部31と、ボトル本体32とを有している。このうちボトル本体32は、胴部21と、胴部21に連接するとともに凹部62が形成された底部61とを有している。凹部62は、複数の段部63、63を有している。この場合、胴部21の外径(胴径)は55mm乃至120mmとなっている。また凹部62の深さ、すなわち接地部64から凹部62の最深部までの距離Hcは、胴径の4%〜35%である。なお、第1の実施の形態(無菌充填システムおよび無菌充填方法)においては、Hcの値を胴径の4%〜15%とすることが可能である。一方、第2の実施の形態(ホット充填システムおよびホット充填方法)においては、Hcの値を胴径の18%〜35%とすることが可能である。
【0117】
(実施例E)
図13(a)および図13(b)は、本実施の形態による調味料充填方法および調味料充填システムに用いることが可能なボトル70を示している(実施例E)。なお図13(a)は、実施例Eによるボトルを示す斜視図であり、図13(b)は、実施例Eによるボトルの底部を示す断面図(図13(a)のXIII−XIII線断面図)である。
【0118】
図13(a)および図13(b)に示すボトル70は、口部31と、ボトル本体32とを有している。このうちボトル本体32は、胴部21と、胴部21に連接するとともに凹部72が形成された底部71とを有している。この場合、胴部21の外径(胴径)は55mm乃至120mmとなっている。また凹部72の深さ、すなわち接地部73から凹部72の最深部までの距離Hdは、胴径の4%〜20%である。なお、第1の実施の形態(無菌充填システムおよび無菌充填方法)においては、Hdの値を胴径の4%〜15%とすることが可能である。一方、第2の実施の形態(ホット充填システムおよびホット充填方法)においては、Hdの値を胴径の10%〜20%とすることが可能である。
【0119】
ボトルの実施例
次に、図9乃至図13に示すボトルを用いた具体的実施例を説明する。
【0120】
まず図9乃至図13に示すボトルを準備した(それぞれ、実施例Aのボトル30a、実施例Bのボトル30b、実施例Cのボトル30c、実施例Dのボトル60、実施例Eのボトル70という)。各ボトル30a、30b、30c、60、70の内容量は750mlであり、底部を除いて各ボトルの形状は互いに同一であった。次にそれぞれのボトルについて、調味料入ボトルを作製した。具体的には以下のようにして、調味料入ボトルを作製した。
【0121】
(実施例A)
図9(a)および図9(b)に示す実施例Aのボトル30bを用いて、調味料入ボトル35(実施例A)を作製した。具体的には、図5に示す調味料充填システム10を用い、かつ図6に示す調味料充填方法により調味料入ボトル35(実施例A)を作製した(ホット充填方式)。なお、ボトル30aとして容量750mlのPETボトルを用い、さらにボトル30aの搬送速度は300bpmとした。
【0122】
この際、まずボトル30aの口部31からボトル本体32内へリンス水を供給し(リンス工程)、続いて、口部31からボトル本体32内へ窒素ガスからなる不活性ガス42を800ml供給して、ボトル本体32内を窒素ガスで置換した(不活性ガス置換工程)。次に、口部31からボトル本体32内へ醤油からなる調味料43を92℃の温度で充填した(調味料充填工程)。
【0123】
その後、口部31にキャップ33を装着し(キャップ装着工程)、ボトル30a内を殺菌することにより(殺菌工程)、実施例Aによる調味料入ボトル35を得た。この場合、ヘッドスペースの容量は30mlであった。
【0124】
このようにして得られた調味料入ボトル35(実施例A)の泡立ち体積および初期容器内総酸素量を測定した。この結果、泡立ち体積は7.0mlであり、初期容器内総酸素量は1.5mlとなった。
【0125】
(実施例B)
図10(a)および図10(b)に示すボトル30bを用いたこと、以外は、実施例Aと同様にして調味料入ボトル35(実施例B)を作製した。この調味料入ボトル35(実施例B)の泡立ち体積および初期容器内総酸素量を測定したところ、泡立ち体積は7.2mlであり、初期容器内総酸素量は1.7mlとなった。
【0126】
(実施例C)
図11(a)および図11(b)に示すボトル30cを用いたこと、以外は、実施例Aと同様にして調味料入ボトル35(実施例C)を作製した。この調味料入ボトル35(実施例C)の泡立ち体積および初期容器内総酸素量を測定したところ、泡立ち体積は6.8mlであり、初期容器内総酸素量は2.0mlとなった。
【0127】
(実施例D)
図12(a)および図12(b)に示すボトル60を用いたこと、以外は、実施例Aと同様にして調味料入ボトル(実施例D)を作製した。この調味料入ボトル(実施例D)の泡立ち体積および初期容器内総酸素量を測定したところ、泡立ち体積は4.2mlであり、初期容器内総酸素量は4.8mlとなった。
【0128】
(実施例E)
図13(a)および図13(b)に示すボトル70を用いたこと、以外は、実施例Aと同様にして調味料入ボトル(実施例E)を作製した。この調味料入ボトル(実施例E)の泡立ち体積および初期容器内総酸素量を測定したところ、泡立ち体積は1.6mlであり、初期容器内総酸素量は5.2mlとなった。
【0129】
この結果、実施例A〜実施例Cによるボトル30a〜30cは、実施例Dおよび実施例Eによるボトル60、70と比較して、不活性ガス42の泡43aによる泡立ちが生じやすい形状を有しており、これにより、実施例A〜実施例Cによる調味料入ボトル35の初期容器内総酸素量を相対的に低く抑えられることが分かった。すなわち、実施例A〜実施例Cによるボトル30a〜30cは、それぞれその底部37、22、24に比較的大きい凹凸が形成されている。このため、調味料43を充填する際に泡立ちが生じやすく、これにより初期容器内総酸素量を低く抑えることができたと考えられる。他方、底部が平底形状の場合、充填液を充填した際、液の乱流現象が起こりにくく、泡立ちも起こりにくいので、初期容器内総酸素量を低く抑えるという効果は小さい。逆に言えば、底部に陥没部が形成されていたり(実施例A、実施例C)、底部がペタロイド形状からなっている場合(実施例B)には、底部の形状が複雑であるため、充填時に乱流が起こりやすく、泡が発生し、且つその泡の中は窒素で満たされるようになる。なお、実施例Dおよび実施例Eによるボトル60、70については、初期容器内総酸素量を抑制する効果は相対的に低くなるが、効果が得られないわけではない。
【0130】
実施例A〜実施例Eにおいて、上述したようにホット充填方式(図5および図6)を用いて調味料入ボトル35を作製した。しかしながら、無菌充填方式(図1および図3)を用いて調味料入ボトル35を作製した場合であっても、上記と略同様の結果が得られる。
【符号の説明】
【0131】
10 調味料充填システム
11 殺菌部
12 リンス部
13 不活性ガス置換部
14 調味料充填部
15 不活性ガス供給部
16 キャップ装着部
17 第1搬送機構
18 第2搬送機構
19 殺菌部
30 ボトル
31 口部
32 ボトル本体
33 キャップ
34 第3搬送機構
35 調味料入ボトル
36 第4搬送機構
41 リンス水
42 不活性ガス
43 調味料
43a 泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、ボトル本体とを有するボトルに対して調味料を充填する調味料充填方法において、
口部からボトル本体内へ不活性ガスのみを供給してボトル本体内を不活性ガスで置換する不活性ガス置換工程と、
口部からボトル本体内へ調味料を充填する調味料充填工程とを備えたことを特徴とする調味料充填方法。
【請求項2】
調味料充填工程において、口部からボトル本体内へ5℃〜55℃の温度で調味料を充填することを特徴とする請求項1記載の調味料充填方法。
【請求項3】
工程全体が無菌雰囲気下で行われることを特徴とする請求項2記載の調味料充填方法。
【請求項4】
不活性ガス置換工程の前に、
ボトル内を殺菌する殺菌工程と、
口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス工程とが設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の調味料充填方法。
【請求項5】
不活性ガス置換工程の前に、ボトル内を電子線により殺菌する殺菌工程が設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の調味料充填方法。
【請求項6】
調味料充填工程の後、口部からボトル本体内へ不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の調味料充填方法。
【請求項7】
不活性ガス供給工程の後、口部にキャップを装着するキャップ装着工程が設けられていることを特徴とする請求項6記載の調味料充填方法。
【請求項8】
調味料充填工程において、口部からボトル本体内へ55℃〜95℃の温度で調味料を充填することを特徴とする請求項1記載の調味料充填方法。
【請求項9】
不活性ガス置換工程の前に、口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス工程が設けられていることを特徴とする請求項8記載の調味料充填方法。
【請求項10】
調味料充填工程の後、口部にキャップを装着するキャップ装着工程が設けられていることを特徴とする請求項8または9記載の調味料充填方法。
【請求項11】
キャップ装着工程の後、ボトル本体内を殺菌する殺菌工程が設けられていることを特徴とする請求項10記載の調味料充填方法。
【請求項12】
不活性ガス置換工程の際ボトル本体内に導入された不活性ガスにより、調味料充填工程の際、ボトル本体内に充填された調味料に、内部に不活性ガスを収納した泡が生じることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項記載の調味料充填方法。
【請求項13】
不活性ガス置換工程から調味料充填工程までの間が0.5秒〜20秒で行われることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項記載の調味料充填方法。
【請求項14】
ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部に、放射状に延びる複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項記載の調味料充填方法。
【請求項15】
ボトルのボトル本体は、胴部と、ペタロイド形状からなる底部とを有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項記載の調味料充填方法。
【請求項16】
ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部の深さは、胴部の外径の4%〜55%であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項記載の調味料充填方法。
【請求項17】
口部と、ボトル本体とを有するボトルに対して調味料を充填する調味料充填システムにおいて、
口部からボトル本体内へ不活性ガスのみを供給してボトル本体内を不活性ガスで置換する不活性ガス置換部と、
不活性ガス置換部の下流側に設けられ、口部からボトル本体内へ調味料を充填する調味料充填部とを備えたことを特徴とする調味料充填システム。
【請求項18】
調味料充填部において、口部からボトル本体内へ5℃〜55℃の温度で調味料を充填することを特徴とする請求項17記載の調味料充填システム。
【請求項19】
不活性ガス置換部の上流側に、ボトル内を殺菌する殺菌部が設けられ、
不活性ガス置換部の上流側であって殺菌部の下流側に、口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス部が設けられていることを特徴とする請求項18記載の調味料充填システム。
【請求項20】
不活性ガス置換部の上流側に、ボトル内を電子線により殺菌する殺菌部が設けられていることを特徴とする請求項18または19記載の調味料充填システム。
【請求項21】
調味料充填部の下流側に、口部からボトル本体内へ不活性ガスを供給する不活性ガス供給部が設けられていることを特徴とする請求項18乃至20のいずれか一項記載の調味料充填システム。
【請求項22】
不活性ガス供給部の下流側に、口部にキャップを装着するキャップ装着部が設けられていることを特徴とする請求項21記載の調味料充填システム。
【請求項23】
調味料充填部において、口部からボトル本体内へ55℃〜95℃の温度で調味料を充填することを特徴とする請求項17記載の調味料充填システム。
【請求項24】
不活性ガス置換部の上流側に、口部からボトル本体内へリンス水を供給するリンス部が設けられていることを特徴とする請求項23記載の調味料充填システム。
【請求項25】
調味料充填部の下流側に、口部にキャップを装着するキャップ装着部が設けられていることを特徴とする請求項23または24記載の調味料充填システム。
【請求項26】
キャップ装着部の下流側に、ボトル本体内を殺菌する殺菌部が設けられていることを特徴とする請求項25記載の調味料充填システム。
【請求項27】
不活性ガス置換部でボトル本体内を不活性ガスで置換してから、内容物充填部でボトル本体内へ内容物を充填するまでの間が0.5秒〜20秒で行われることを特徴とする請求項17乃至26のいずれか一項記載の内容物充填システム。
【請求項28】
ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部に、放射状に延びる複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項17乃至27のいずれか一項記載の調味料充填システム。
【請求項29】
ボトルのボトル本体は、胴部と、ペタロイド形状からなる底部とを有することを特徴とする請求項17乃至27のいずれか一項記載の調味料充填システム。
【請求項30】
ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部の深さは、胴部の外径の4%〜55%であることを特徴とする請求項17乃至27のいずれか一項記載の調味料充填システム。
【請求項31】
ボトル本体と口部とを有するボトルと、
ボトルのボトル本体内に充填された調味料とを備え、
調味料に、内部に不活性ガスを収納した泡が形成されていることを特徴とする調味料入ボトル。
【請求項32】
ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部に、放射状に延びる複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項31記載の調味料入ボトル。
【請求項33】
ボトルのボトル本体は、胴部と、ペタロイド形状からなる底部とを有することを特徴とする請求項31記載の調味料入ボトル。
【請求項34】
ボトルのボトル本体は、胴部と、陥没部が形成された底部とを有し、陥没部の深さは、胴部の外径の4%〜55%であることを特徴とする請求項31記載の調味料入ボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−255908(P2011−255908A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129907(P2010−129907)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】