説明

調心方法および調心装置

【課題】メタライズ等を損傷せずに大出力で調心を行う。
【解決手段】被覆物2aを備えている光ファイバ2と、光ファイバ2に向けてマルチモードレーザを出射する半導体レーザ1との相対位置を調整する調心方法であって、半導体レーザ1を一定の光量で発光させるとともに、光ファイバ2を半導体レーザ1に対して相対的に移動させながら、光ファイバ2から出射するファイバ出射光の光量を測定した後、ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に相対位置を調整するサブ調心工程を複数回含み、各サブ調心工程の間に、前の回のサブ調心工程における一定の光量よりも大きくなるように、次の回のサブ調心工程における一定の光量を決定する決定工程をさらに含んでおり、決定工程では、次の回のサブ調心工程において被覆物2aが損傷しないように、次の回のサブ調心工程における一定の光量を、前の回のサブ調心工程の測定結果を用いて決定する調心方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザと、該半導体レーザからの光が導入される光ファイバとの間の相対位置を調整する調心方法に関するものであり、特に、マルチモードレーザを出射する半導体レーザを用いる場合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザと、該半導体レーザからの光が導入される光ファイバとを備えるLDモジュールを製造する際、半導体レーザと、光ファイバとの間の相対位置を結合効率が最大となる位置に調整する(LDモジュールを調心する)ことは、半導体レーザおよび光ファイバ間の結合ロスの低減および光ファイバの被覆物の損傷を防ぐため、非常に重要である。LDモジュールを調心するための技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、半導体レーザを小出力で駆動して調心を行った後、半導体レーザを大出力で駆動して、所望の結合効率が得られた否かを判定する技術が記載されている。
【0003】
また、近年、マルチモードレーザを出射する大出力の半導体レーザを備えたLDモジュールが多くの場面で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−182014号公報(平成17年7月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マルチモードレーザを出射する大出力の半導体レーザを備えるLDモジュールを調心する場合、以下のような問題がある。
【0006】
マルチモードレーザの場合、半導体レーザへの電流注入量に応じて空間的なモード分布が変化する。すなわち、大電流を流し、大出力で駆動する程、高次モードが現れ、放射角が広くなる傾向にある。そして、高次モードが現れると、結合効率またはファイバ出力が最大となる相対位置(以降、本明細書において最適位置と称する場合もある)もまた変化する場合が多い。それゆえ、小出力で駆動したときの最適位置と、大出力で駆動したときの最適位置とは、ずれている可能性がある。したがって、できるだけ実際に使用する出力に近い、大きな出力で調心を行うことが好ましい。
【0007】
一方、大きな出力で調心を行う場合には、最適位置を検出するためのスキャンの過程において、以下のような問題が発生するおそれがある。例えば、半田等を用いて光ファイバを固定するため、光ファイバをメタライズ(被覆物)により被覆している場合、上記スキャンの過程において、クラッド層に漏れた光が上記メタライズに吸収され、メタライズが発熱して損傷することが起こり得る。また、光ファイバに結合しなかった光(反射成分等)が光モジュールの筐体、治具等に照射され、これらが発熱して機器を損傷することも起こり得る。
【0008】
それゆえ、メタライズ等を損傷せずに、大きな出力で調心を行うための技術を開発することは非常に有用である。
【0009】
なお、特許文献1に記載の技術では、半導体レーザを小出力で駆動して調心を行った後、半導体レーザの出力を一度に大出力とするため、マルチモードレーザを出射する半導体レーザを用いた場合、当該半導体レーザを大出力で駆動したときのモード分布の形状によっては、メタライズ等が損傷するおそれがある。
【0010】
このように、従来、メタライズ等を損傷せずに、大出力で調心を行うための技術は開発されていない。本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、メタライズ等を損傷せずに、大出力で調心を行うための技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る調心方法は、被覆物を備えている光ファイバと、該光ファイバに向けてマルチモードレーザを出射する半導体レーザとの相対位置を調整する調心方法であって、該半導体レーザを一定の光量で発光させるとともに、該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させながら、該光ファイバから出射するファイバ出射光の光量を測定した後、該ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に該相対位置を調整するサブ調心工程を複数回含み、各サブ調心工程の間に、前の回の該サブ調心工程における該一定の光量よりも大きくなるように、次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を決定する決定工程をさらに含んでおり、該決定工程では、該次の回の該サブ調心工程において該被覆物が損傷しないように、該次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を、該前の回の該サブ調心工程の測定結果を用いて決定することを特徴としている。
【0012】
上記の方法では、各サブ調心工程の間に、次の回のサブ調心工程における半導体レーザの発光量を、前の回よりも大きくなるように決定する決定工程を含んでいる。そして、決定工程では、次の回のサブ調心工程において光ファイバが備えるメタライズ等の被覆物が損傷しないように、次の回のサブ調心工程における一定の光量を、前の回のサブ調心工程の測定結果を用いて決定する。
【0013】
前の回のサブ調心工程の測定結果は、ある光量で半導体レーザを発光させたときの、半導体レーザおよび光ファイバの間の相対位置と、半導体から出射して光ファイバに結合する光(ファイバ出射光)の量との関係を示す。そのため、前の回のサブ調心工程の測定結果によれば、半導体レーザおよび光ファイバの間の相対位置と、半導体から出射して光ファイバに結合しない光(漏れ光)の量との関係を推定することができる。よって、次の回のサブ調心工程において光ファイバが備えるメタライズ等の被覆物が損傷しないように、次の回のサブ調心工程における半導体レーザの発光量を好適に決定することができる。
【0014】
これにより、特許文献1のように、予め決められた幅で半導体レーザの発光量を増加させる場合とは異なり、発光量の増加幅を状況に応じて決定することができるため、半導体レーザの発光量を増加した後のサブ調心工程においても、半導体レーザの発光量の増加およびそれに起因するモード分布の変化によって光ファイバにおける漏れ光量が増加して、メタライズ等が損傷することを好適に防ぐことができる。
【0015】
また、本発明に係る調心方法において、上記決定工程では、上記前の回の上記サブ調心工程の測定結果における上記最適位置の周囲における上記ファイバ出射光の光量の最低値P0’’を用いて、上記次の回の上記サブ調心工程における上記一定の光量P1を決定することが好ましい。
【0016】
2回目以降のサブ調心工程における半導体レーザと光ファイバとの相対位置の移動は、前の回の測定結果における中心位置から開始するため、2回目以降のサブ調心工程における当該中心位置の周囲での漏れ光量を予測することができれば、半導体レーザの適切な発光量を決定することができる。前の回の測定結果における上記中心位置の周囲でのファイバ出射光の光量の最低値を用いれば、次の回のサブ調心工程における漏れ光量、すなわち、半導体レーザから出射する光の量と、ファイバ出射光との差の最大値を予測することができる。よって、上記の方法によれば、上記漏れ光量がメタライズ等を損傷しないような値となるように、半導体レーザの発光量を決定することができる。これにより、各サブ調心工程間の半導体レーザの発光量の増加幅を適切に決定し、半導体レーザの発光量が増加したサブ調心工程を行ったときに、光ファイバのメタライズ等が損傷することをより好適に避けることができる。
【0017】
また、本発明に係る調心方法において、上記決定工程では、上記半導体レーザの光量をP0からP1に増加させたときの、当該半導体レーザからの光の広がり角の拡大に起因する、上記光ファイバに結合しない光の増加量を過剰損失αとし、予め定められた閾値をPthとしたとき、下記式(1)を満たすように上記次の回の上記サブ調心工程における上記一定の光量P1を決定することを特徴としている。
【0018】
【数1】

【0019】
上記決定工程において、次の回のサブ調心工程における半導体レーザの発光量をP1とし、前の回の測定結果における最適位置を中心としたある幅の範囲でのファイバ出射光の光量の最低値をP0’’とし、前の回のサブ調心工程における半導体レーザの発光量をP0とし、半導体レーザの光量をP0からP1に増加させたときの、半導体レーザからの光の広がり角の拡大に起因する、漏れ光(光ファイバに結合しない光)の増加量を過剰損失αとし、予め定められた閾値をPthとしたとき、P1を、上記式(1)を満たすように設定することにより、上記最大漏れ光量は、上記予め定められた閾値Pth未満となる。これにより、漏れ光量を所定の範囲内に収め、メタライズ等が損傷することを首尾よく避けることができる。
【0020】
また、本発明に係る調心方法において、上記決定工程では、上記過剰損失αを、予め測定した、上記半導体レーザの光量と当該半導体レーザから出射する光の広がり角および光強度分布との関係から算出することが好ましい。
【0021】
過剰損失αは、半導体レーザの光量をP0からP1に増加させたときの、半導体レーザからの光の広がり角の拡大に起因する、漏れ光(光ファイバに結合しない光)の増加量であり、言い換えれば、半導体レーザから広がり角の拡大した部分に出射される光の量である。そのため、上記の方法によれば、過剰損失αを首尾よく算出することができる。
【0022】
また、本発明に係る調心方法において、上記決定工程では、次の回のサブ調心工程における上記一定の光量を、前の回のサブ調心工程の測定結果を用いて決定する代わりに、上記半導体レーザが発光する光量を漸増させながら、上記ファイバ出射光の光量を測定し、該半導体レーザが発光する光量と測定した該ファイバ出射光の光量との差が、予め定められた閾値を越えたとき、該半導体レーザが発光する光量の漸増を停止し、停止したときの該光量に基づいて上記次の回のサブ調心工程における上記一定の光量を決定するものであってもよい。
【0023】
上記の方法によれば、一つのサブ調心工程の終了後、漏れ光量をモニタしながら、半導体レーザの発光量を漸増させることにより、メタライズ等を損傷せずにどの程度まで半導体レーザの発光量を増加し得るかを取得することができる。これに基づいて、各サブ調心工程間の半導体レーザの発光量の増加幅を決定することにより、半導体レーザの発光量が増加したサブ調心工程を行ったときに、光ファイバのメタライズ等が損傷することをより好適に避けることができる。
【0024】
また、本発明に係る調心方法において、上記サブ調心工程では、上記一定の光量と、測定した上記ファイバ出射光の光量との差が、予め定められた閾値を越えたとき、上記光ファイバの上記半導体レーザに対する相対的な移動を反転または停止することが好ましい。
【0025】
上記の方法によれば、サブ調心工程において、光ファイバの半導体レーザに対する相対的な移動は、半導体レーザの発光量とファイバ出射光の光量との差、すなわち光ファイバにおける漏れ光量が所定の閾値以下である範囲で行われる。これにより、光ファイバの半導体レーザに対する相対的な移動の際に、光ファイバにおける漏れ光量が増大し、メタライズ等を損傷することを好適に避けることができる。
【0026】
また、本発明に係る調心方法では、上記光ファイバに入射する光の光量と上記光ファイバから出射する光の光量との差がある値を超える場合に上記被覆物が損傷するとき、上記予め定められた閾値は、該ある値よりも小さい値に設定されていることが好ましい。
【0027】
上記の方法によれば、上記予め定められた閾値は、光ファイバにおける漏れ光量が、該閾値以下であれば、光ファイバの被覆物(メタライズ等)を損傷しないような値に設定されている。これにより、本発明に係る調心方法を好適に実施することができる。
【0028】
上記調心方法において、1回目の上記サブ調心工程における上記一定の光量は、上記予め定められた閾値以下に設定されていることが好ましい。
【0029】
上記の方法によれば、1回目のサブ調心工程において、半導体レーザの発光量が、上記予め定められた閾値以下であるため、半導体レーザの出射光がすべて漏れ光となっても、メタライズ等は損傷されない。よって、1回目のサブ調心工程においても好適にメタライズ等の損傷を避けることができる。
【0030】
本発明に係る調心装置は、被覆物を備えている光ファイバと、該光ファイバに向けてマルチモードレーザを出射する半導体レーザとの相対位置を調整する調心装置であって、該半導体レーザが発光する光量を制御する発光量制御手段と、該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させる移動手段と、該光ファイバから出射するファイバ出射光の光量を測定する光量検出手段と、該発光量制御手段を制御して該半導体レーザを一定の光量で発光させるとともに、該移動手段を制御して該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させながら、該光量検出手段を介して該ファイバ出射光の光量を取得した後、該移動手段を制御して該ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に該相対位置を調整することを複数回行い、各回の間に、前の回における該一定の光量よりも大きくなるように、次の回の該一定の光量を決定する制御手段とを備えており、該制御手段は、該次の回の該サブ調心工程において該被覆物が損傷しないように、該次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を、該前の回の該サブ調心工程の測定結果を用いて決定することを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、本発明に係る調心方法と同等の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る調心方法は、光ファイバと、該光ファイバに向けてマルチモードレーザを出射する半導体レーザとの相対位置を調整する調心方法であって、該半導体レーザを一定の光量で発光させるとともに、該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させながら、該光ファイバから出射するファイバ出射光の光量を測定した後、該ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に該相対位置を調整するサブ調心工程を複数回含み、各サブ調心工程の間に、前の回の該サブ調心工程における該一定の光量よりも大きくなるように、次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を決定する決定工程をさらに含んでいる。これにより、メタライズ等を損傷せずに、大きな出力で調心を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のいくつかの実施形態(第1および第2実施形態)に係る調心装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心装置の主制御部の詳細を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心方法の各段階におけるスキャン範囲を説明するためのグラフである。
【図4】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心方法の第2測定工程を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心方法の第2測定工程におけるスキャン範囲を説明するためのグラフである。
【図6】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心方法の決定工程を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心方法の決定工程を説明するためのグラフである。
【図8】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心方法において用いる閾値を説明するためのグラフである。
【図9】本発明の一実施形態(第2実施形態)に係る調心方法の第2測定工程を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態(第2実施形態)に係る調心装置の主制御部の詳細を説明するためのブロック図である。
【図11】本発明のいくつかの実施形態(第1および第2実施形態)に係る調心方法における相対位置の調整のための各軸を説明するための図である。
【図12】本発明のいくつかの実施形態(第1および第2実施形態)における半導体レーザの駆動電流と出力との位置関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔第1実施形態〕
(調心装置)
まず、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る調心装置10について図面を参照して説明する。調心装置10は、半導体レーザ1および光ファイバ2との相対位置を調整する調心方法を実施するために用いることができる。
【0035】
図1に示すように、調心装置10は、可変電流源(発光量制御手段)3、電動ステージ(移動手段)4、光検出器5、光量検出部(光量検出手段)6、および主制御部(制御手段)7を備えており、半導体レーザ1および光ファイバ2が装置内に配置されている。また、図2に示すように、主制御部7は、測定制御部71、調整制御部72、および決定部73を備えている。
【0036】
半導体レーザ1は、マルチモードレーザを光ファイバ2に向けて出射する半導体レーザである。半導体レーザ1が出射した光は、光ファイバ2に導入され、半導体レーザ1に対向する端面とは反対側の光ファイバ2の端面から出射される。本明細書において、「ファイバ出射光」とは、この、半導体レーザ1に対向する端面とは反対側の光ファイバ2の端面から出射される光を指す。
【0037】
光ファイバ2は、図1に示すように、半導体レーザ1に対向する端面がくさび形となっている。当該くさび形の稜線は、半導体レーザ1の積層方向と直交する方向に伸びている。また、光ファイバ2の一部の表面は、メタライズ(被覆物)によって被覆されている。
【0038】
可変電流源3は、半導体レーザ1に電流を供給する電源である。可変電流源3が半導体レーザ1に供給する電流の量は、主制御部7によって制御される。
【0039】
電動ステージ4は、半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置を移動させるものであり、本実施形態では、光ファイバ2の位置を移動されるものであるが、半導体レーザ1と光ファイバ2との少なくとも何れかを移動させるものであればよい。また、本実施形態では、電動ステージ4は、X軸、Y軸およびZ軸の3軸に沿って光ファイバ2を移動させる。各軸については後述する。電動ステージ4による半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置の移動は、主制御部7によって制御される。
【0040】
光検出器5および光量検出部6は、光ファイバ2から出射する光の光量を測定する測定手段として働くものである。光検出器5は、例えば、一般的なフォトダイオードであり、光量検出部6は、光検出器5からの信号を変換して、上記光量を検出する。光量検出部6が検出した光量の情報は、信号として主制御部7に送られる。
【0041】
ここで、図11を参照して、半導体レーザ1と光ファイバ2との間の相対位置の調整における各軸について説明する。図11(a)は、半導体レーザ1と光ファイバ2とを、側方から観察した側面図であり、図11(b)および(c)は、半導体レーザ1と光ファイバ2とを、上方から観察した上面図である。Y方向(Y軸)は、図11(a)中矢印で示すように、光ファイバ2の長手方向に直交する方向であって、半導体レーザ1の積層方向に平行な方向である。X方向(X軸)は、図11(b)中矢印で示すように、光ファイバ2の長手方向に直交する方向であって、半導体レーザ1の積層方向に直交する方向である。Z方向(Z軸)は、図11(c)中矢印で示すように、光ファイバ2の長手方向である。なお、電動ステージ4は、上述した各方向の他にも、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれを回転軸としてファイバ2を回転(傾斜)させるものであってもよい。
【0042】
以下では、半導体レーザ1と光ファイバ2との間の相対位置を、X軸にそって調整することについて言及するが、本発明はこれに限定されず、他の軸についても相対位置の調整を行うものであってよい。ただし、上述したような高次モードが現れることによるモード分布は、X軸に沿う変化が最も大きいため、本発明は、X軸に沿って相対位置の調整するために工程に適用することができる。
【0043】
(調心方法の概要)
次に、本実施形態に係る調心方法の概要について説明する。上記調心方法は、複数、好ましくは3回以上のサブ調心工程を包含している。そして、各サブ調心工程の間に、次の回のサブ調心工程における半導体レーザ1の発光量を決定する決定工程を包含している。
【0044】
上記サブ調心工程では、半導体レーザ1を一定の光量で発光させるとともに、光ファイバ2を半導体レーザ1に対して、一つの軸に沿って、相対的に移動させながら、光ファイバ2から出射するファイバ出射光の光量を測定する。これにより、その測定結果として、半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置と、ファイバ出射光の光量との関係を取得する。そして、当該測定結果に基づき、ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置を調整する。
【0045】
なお、以降、サブ調心工程において、上述したように、光ファイバ2を半導体レーザ1に対して相対移動させながら、ファイバ出射光の光量を測定することを、単に、スキャンすると記載することがある。
【0046】
また、上記決定工程では、前の回のサブ調心工程における上記一定の光量よりも増加するように、次の回のサブ調心工程における上記一定の光量を決定する。これにより、徐々に半導体レーザ1の発光量を増加させながら、スキャンすることができるため、最終的には大出力で半導体レーザを駆動しながら、スキャンを行い、調心することができる。
【0047】
図3は、上記調心方法の一例を説明するためのグラフであり、(a)〜(c)は、それぞれ1回目〜3回目のサブ調心工程を示す。図中、横軸は半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置(図3ではX方向の移動量として表記)を示し、縦軸はファイバ出射光の光量を示す。Ptotal1〜Ptotal3は半導体レーザ1の発光量を示し、Pthは予め定められた閾値を示し、Ppeak1〜Ppeak3はファイバ出射光の最大光量を示す。図3では、(a)、(b)、(c)の順に、縦軸の縮尺率が高くなっており、Ptotal1、Ptotal2、Ptotal3の順に光量は増大し、Pthはいずれも同じ大きさを示す。また、図3における曲線は、各相対位置における光ファイバ2のファイバ出射光の光量(単位:ワット)を示すが、各サブ調心工程において測定されるのは、図中W1〜W3によって示される範囲内だけである。
【0048】
図3(a)〜(c)に示すように、1回目から3回目に進むにつれて、徐々に、半導体レーザ1の発光量Ptotal1〜Ptotal3およびPpeak1〜Ppeak3が増加し、メタライズ等を損傷せずにスキャンし得る範囲W1〜W3も狭まっていく。また、各回における最適位置もずれていく。後述するように、本実施形態に係る調心方法では、首尾よくW1〜W3の範囲内でスキャンを行い、かつ、1回目から2回目、2回目から3回目のサブ調心工程間における半導体レーザ1の発光量の増加幅が適切に設定される。
【0049】
なお、上述したように、1回目のスキャンを行った後、一度に半導体レーザの発光量を増加させてスキャンを行うと、半導体レーザ1を小出力で駆動したときと、半導体レーザ1を大出力で駆動したときとのモード分布のずれによっては、メタライズ等が損傷するおそれがある。本実施形態に係る調心方法によれば、上記決定工程において、次の回のサブ調心工程における半導体レーザ1の発光量を適切に決定することができるため、光ファイバのメタライズ等が損傷することを好適に避けることができる。また、本実施形態に係る調心方法では、好ましくは、3回以上のサブ調心工程を行う。これにより、半導体レーザ1から出射されるマルチモードレーザのモード分布が、半導体レーザ1の発光量に応じてずれていったとしても、多段階のサブ調心工程を行うため、都度当該ずれに対応して、半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置を修正することができる。これにより、漏れ光量の増加を抑制し、半導体レーザの発光量が増加したサブ調心工程を行ったときに、光ファイバのメタライズ等が損傷することを好適に避けることができる。
【0050】
以下、各工程について、図4を参照して詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る調心方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態において、上記サブ調心工程は、主制御部7が実施する。
【0051】
(サブ調心工程)
主制御部7の測定制御部71は、まず、半導体レーザ1の発光量を決定し、対応する電流値を設定する(ステップS11)。1回目のサブ調心工程では、発光量は小さいことが好ましいが、用いる半導体レーザ1および光ファイバ2の特性に応じて適宜設定すれば良い。好ましくは、1回目のサブ調心工程における半導体レーザ1の発光量は、半導体レーザ1から出射した光が全て漏れ光となっても、光ファイバ2のメタライズ2aを損傷しない値(後述の閾値Pth未満の値)に設定されている。2回目以降のサブ調心工程における半導体レーザ1の発光量は、決定工程において、決定部73が決定する。決定工程については後述する。
【0052】
なお、一般的な半導体レーザの発光量と供給する電流値との関係は、図12に示すようものである。よって、半導体レーザ1に供給する電流値と半導体レーザ1の発光量を測定しておき、その結果をテーブルまたは所定の関数の係数として主制御部7に記憶させておくことにより、測定制御部71は、決定した発光量で半導体レーザ1を発光させるために可変電流源3が半導体レーザ1に供給すべき電流値を計算することができる。
【0053】
続いて、主制御部7の測定制御部71は、可変電流源3を制御して、測定制御部71が設定した電流値で半導体レーザ1に対して電流を供給させることによって、半導体レーザ1を決定した発光量で発光させる(ステップS12)。
【0054】
続いてスキャンを実施する。まず、測定制御部71は、光検出器5および光量検出部6が測定した光ファイバ2のファイバ出射光の光量を示す情報を、光量検出部6から取得する。測定制御部71は、当該情報に基づき、光ファイバ2における漏れ光量を計算する(ステップS13)。漏れ光量とは、光ファイバ2のクラッド層に漏れたと推定される光の量であり、本実施形態において、測定制御部71は、半導体レーザ1の発光量(測定制御部71が決定した発光量)から上記ファイバ出射光の光量を減算することによって、漏れ光量を計算する。
【0055】
なお、他の実施形態において、測定制御部71は、漏れ光量に代えて、または漏れ光量に加えて、光ファイバ2における結合効率を計算してもよい。結合効率とは、半導体レーザ1から出射された光のうち、光ファイバ2に結合された光の比率を示す値である。上記他の実施形態において、測定制御部71は、光ファイバ2のファイバ出射光の光量を、半導体レーザ1の発光量で除算することにより算出する。
【0056】
ステップS13の後、測定制御部71は、計算した漏れ光量と、予め定められた閾値Pthとを比較する(ステップS14)。当該漏れ光量が閾値Pth以下である場合、測定制御部71は、電動ステージ4を制御して、光ファイバ2を移動させる(ステップS16)。これにより、半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置を変化させた後、ステップS13に戻る。
【0057】
一方、ステップS14において、上記漏れ光量が閾値Pthを超える場合、測定制御部71は、光ファイバ2の半導体レーザ1に対する相対的な移動を反転または停止させる(ステップS15)。上記移動を反転または停止することにより、上記漏れ光量が閾値Pthを超える状態が継続することを防ぐことができる。また、上記相対的な移動を反転させることにより、スキャン範囲を両方向に伸ばすことができる。測定制御部71がステップS15において光ファイバ2の移動を停止した場合、主制御部7の調整制御部72が、電動ステージ4を制御してファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置を調整し、当該サブ調心工程を終了する。
【0058】
なお、測定制御部71が、ステップS13において結合効率を計算していた場合、測定制御部71は、ステップS14では、結合効率に基づいた処理により、漏れ光量と閾値Pthとを比較する処理と同一の結果を得ることができる。すなわち、1から結合効率を減算したものと、閾値Pthを半導体レーザ1の発光量で除算したものを比較することにより、漏れ光量と閾値Pthとを比較した場合と同一の結果を得ることができる。
【0059】
ここで、図5を参照して、上記測定工程におけるスキャンについて詳細に説明する。図5は、半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置と、光ファイバ2のファイバ出射光の光量との関係の例を示すグラフであり、横軸は相対位置、縦軸はファイバ出射光の光量を示す。グラフ中Ptotalで示す光量は、半導体レーザ1の発光量であり、測定制御部71は、漏れ光量(半導体レーザ1の発光量Ptotalと、光ファイバ2のファイバ出射光の光量との差)が、閾値Pthを超えた地点、すなわち、図中、Xで示す相対位置に到達したときに、スキャン方向を反転させる(ステップS15)。後述するように、閾値Pthは、漏れ光量が当該閾値Pth以下である場合には、光ファイバ2のメタライズ2aが損傷しないような値に設定されているため、測定制御部71が上述したようにスキャン方向の反転を行い、漏れ光量が当該閾値Pth以下である範囲でスキャンを行うことにより、メタライズ2aを損傷させずに、サブ調心工程を実施することができる。
【0060】
(決定工程)
続いて、各サブ調心工程の間(2回目以降のサブ調心工程の前)に行う決定工程について説明する。本実施形態において、決定工程では、主制御部7の決定部73が、次の回のサブ調心工程における半導体レーザ1の発光量を決定する。
【0061】
図6は、前の回のサブ調心工程におけるスキャンの測定結果を示すグラフである。横軸は半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置、縦軸は光ファイバ2におけるファイバ出射光の光量を示す。P0は、前の回のサブ調心工程における半導体レーザ1の発光量であり、P0’は前の回のサブ調心工程におけるファイバ出射光の最大光量である。また、次の回のサブ調心工程における半導体レーザ1の発光量をP1と表記する。
【0062】
次の回のサブ調心工程では、前の回のサブ調心工程における最適位置からスキャンを開始するため、当該最適位置の周囲の漏れ光量を予測し、これが閾値Pthを超えないようにP1を決定することにより、次の回のサブ調心工程におけるスキャンにおいて漏れ光量が閾値を越えず、メタライズ2a等を損傷することがないようにすることができる。
【0063】
具体的には、決定部73は、前の回のサブ調心工程の測定結果における上記最適位置からある幅Wの範囲内でのファイバ出射光の光量の最低値P0’’および過剰損失αを用いて、下記式(1)を満たし、かつP0よりも大きいP1を決定する。
【0064】
【数2】

【0065】
ここで、過剰損失αについて、図7を用いて説明する。図7の横軸は、半導体レーザ1に供給する電流値、縦軸は、光量を指す。線(1)に、上記電流値と、半導体レーザ1からの出射光の光量との関係を示す。示すように、電流値I0に対して、半導体レーザ1は光量P0で発光し、電流値I1に対して、半導体レーザ1は光量P1で発光する。
【0066】
線(2)に、半導体レーザ1に供給する電流値を上げ、半導体レーザ1の発光量を増大させたとき、半導体レーザ1から出射する光の広がり角(放射角)が変化しないとしたときに予測される、各電流値Iにおける上記範囲内でのファイバ出射光の光量の最低値を示す。半導体レーザ1の発光量を増大させても、半導体レーザ1から出射する光の広がり角が変化しないときには、単純な比例計算により、ファイバ出射光の光量を予測することができる。すなわち、電流値I0に対して、測定された上記範囲内でのファイバ出射光の最低値がPa(I0)=P0’’であったとき、単純な比例計算により予測される電流値I1に対する上記範囲内でのファイバ出射光の光量の最低値は、Pa(I1)=P0’’×P1/P0となる。
【0067】
しかしながら、実際には、半導体レーザ1に供給する電流値を上げ、半導体レーザ1の発光量を増大させたとき、半導体レーザ1から出射する光の広がり角(放射角)は広がる。電流値I0のときの広がり角をθ0、電流値I1のときの広がり角をθ1とすると、一般的に、I0<I1のとき、θ0<θ1となり、光が広がった分、損失(光ファイバ2に結合しない光量)が増える。この損失を、本明細書において、過剰損失と称する。線(3)に、過剰損失αを考慮して予測された、各電流値Iにおける上記範囲内でのファイバ出射光の光量の最低値を示す。示すように、半導体レーザ1の発光量がP1のとき(電流値がI1のとき)、上記範囲内でのファイバ出射光の光量の最低値Pb(I1)=P1’’は、Pa(I1)−αと予測される。言い換えれば、α=Pa(I1)−Pb(I1)である。
【0068】
したがって、次の回のサブ調心工程における上記最適位置の周囲における漏れ光量は、半導体レーザ1から出射する光の広がり角の拡大に起因する漏れ光量の増大(過剰損失)も考慮すれば、前の回のサブ調心工程における上記最適位置の周囲におけるファイバ出射光の最低値P0’’を用いて、(P0−P0’’)×P1/P0+αと予測される。これが、閾値Pthよりも小さくなればよい。すなわち、上記式(1)を満たすように、P1を決定することにより、次の回のサブ調心工程のスキャンにおいて、スキャンを開始する上記最適位置の周囲(上記最適位置を中心とした幅Wの範囲)では、漏れ光の光量を閾値Pth以下とすることができる。これにより、次の回のサブ調心工程におけるメタライズ等の損傷を首尾よく避けることができる。
【0069】
なお、過剰損失αは、決定部73によって、以下のように算出され得る。まず、半導体レーザを各光量で発光させたとき(各電流値を供給したとき)の広がり角θおよび光強度分布(ファーフィールドパターン)P(θ)を予め測定しておき、電流値または光量と関連付けてテープルとして決定部73に記憶させておく。
【0070】
上記決定工程では、決定部73は、記憶された上記テーブルを用いて、以下のように、過剰損失αを算出する。前の回のサブ調心工程における電流値をI0とし、次の回のサブ調心工程における半導体レーザ1に供給する電流値の候補値をI1とすると、まず、上記テーブルを参照して、電流値I0のときの広がり角θ0および電流値I1のときの広がり角θ1を取得する。続いて、電流値I1のときの光強度分布p(θ)を上記テーブルを参照して取得し、下記式(2)を用いて、α’を算出する。
【0071】
【数3】

【0072】
取得した電流値I1のときの光強度分布p(θ)を、全範囲のθにおいて積分したものをpとすると、下記式(3)により、電流値をIからI1に上げたときに対応する過剰損失αを求めることができる。
【0073】
α=P1×α’/p ・・・ (3)
なお、もし、上記式(1)を満たし、かつ、P0よりも大きい値が存在しない場合、上記ある幅Wを狭くして、前の回のサブ調心工程の測定結果からP0’’を算出し直し、算出し直したP0’’を用いて、P1を決定する。Wを狭くすることにより、P0’’を算出するために用いる前の回のサブ調心工程の測定結果として、上記最適位置の近傍の、より漏れ光が少ない範囲における測定結果が用いられるため、P0’’の値が上昇し、結果、上記式(1)の右辺も上昇する。これにより、上記式(1)を満たし、かつ、P0よりも大きい値を首尾よくP1として決定することができる。なお、Wを狭くする方法としては、特に限定されず、一定値を減じていってもよいし、1以下の一定比を乗じていってもよい。
【0074】
続いて、上述した予め定められた閾値について詳細に説明する。当該閾値は、光ファイバ2における漏れ光量が、当該閾値以下である場合、メタライズ2a等の損傷が抑制されるように設定されている。光ファイバ2に入射する光の光量と、光ファイバ2から出射する光の光量との差が、ある特定の値を超える場合に、メタライズ2aが損傷するとき、当該特定の値を上記予め定められた閾値としてもよいし、当該特定の値をk倍(k<1)したものを上記予め定められた閾値としてもよい。図8では、上記特定の値をPth、上記特定の値をk倍(k<1)したものPth’として表す。図8に示すように、上記閾値を上記特定の値Pthに設定した場合、サブ調心工程において、(2)の範囲でスキャンが行われる。また、上記閾値を上記特定の値をk倍(k<1)したPth’に設定した場合、サブ調心工程において、(1)の範囲でスキャンが行われる。示すように、(1)の方が、(2)よりもスキャン範囲が狭く、(2)よりもメタライズ2a等を損傷する危険性を少なくすることができる。
【0075】
以上のように、測定工程におけるスキャンにおいてメタライズ2a等が損傷することを首尾よく避けながら、数段階に亘り半導体レーザ1の出力を増加させることにより、メタライズ等を損傷せずに、大きな出力で調心を行うことができる。
【0076】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の他の実施形態(第2実施形態)について説明する。図9は、本実施形態に係る調心方法を説明するためのフローチャートである。また、図10は、本実施形態に係る調心装置10の主制御部7の概略構成を示すブロック図である。本実施形態では、図2に示すように、主制御部7が、決定部73の代わりに漸増部76を備えており、決定工程を、漸増部76が行う点において第1実施形態と異なっている。第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0077】
図9では、1回目のサブ調心工程(ステップS21〜S23)、決定工程(ステップS24およびS25)、ならびに2回目のサブ調心工程(S26)を示している。まず、測定制御部71は、半導体レーザ1の発光量を決定した上で、可変電流源3が半導体レーザ1に供給する電流値を設定し(ステップS21)、設定した電流値で半導体レーザ1に電流を供給するように測定制御部71が可変電流源3を制御する(ステップS22)。さらに、測定制御部71が電動ステージ4を制御しつつ光量検出部6から光量を示す情報を取得し、スキャンを実施する。そして、調整制御部72が、電動ステージ4を制御して、当該スキャンによって得られた最適位置に、光ファイバ2を移動させる(ステップS23)。
【0078】
本実施形態において、決定工程では、決定部73の代わりに、漸増部76が半導体レーザ1の発光量を決定する。ステップS23の後、漸増部76は、可変電流源3を制御して、半導体レーザ1の発光量を漸増させる(ステップS24)。漸増の幅は、例えば、電流換算で0.1A程度とすることができる。
【0079】
そして、漸増部76は、光ファイバ2のファイバ出射光の光量を示す情報を光量検出部6から取得する。漸増部76は、取得した情報に基づき、漏れ光量(半導体レーザ1の発光量と、ファイバ出射光の光量との差)と、閾値Pthとを比較する(ステップS25)。当該漏れ光量が、閾値Pth以下である場合には、漸増部76は、ステップS24に戻り、さらに半導体レーザ1の発光量を漸増させる。ただし、半導体レーザ1の発光量が実際に使用する出力となったときには、漸増を停止することが好ましい。一方、当該漏れ光量が、閾値Pthを超える場合には、漸増部76は、半導体レーザ1の発光量の漸増を停止する。そして、測定制御部71が、停止した時点における半導体レーザ1の発光量のまま、スキャンを再度行い、その結果に従い、調整制御部72が、半導体レーザ1と光ファイバ2との相対位置を調整する(ステップS26)。
【0080】
以上により、決定工程において、漸増部76が増大させた発光量において、スキャンおよび相対位置の調整を実施することができる。このとき、半導体レーザ1の出力は、漏れ光量が閾値Pthを超えないように設定されているため、当該スキャンにおいてメタライズ2a等への損傷を好適に防ぐことができる。以上のように、本実施形態に係る調心方法においても、メタライズ等を損傷せずに、大きな出力で調心を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、半導体レーザと光ファイバとを備える光モジュールの製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体レーザ
2 光ファイバ
3 可変電流源(発光量制御手段)
4 電動ステージ(移動手段)
5 光検出器
6 光量検出部(光量検出手段)
7 主制御部(制御手段)
10 調心装置
71 測定制御部
72 調整制御部
73 決定部
76 漸増部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆物を備えている光ファイバと、該光ファイバに向けてマルチモードレーザを出射する半導体レーザとの相対位置を調整する調心方法であって、
該半導体レーザを一定の光量で発光させるとともに、該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させながら、該光ファイバから出射するファイバ出射光の光量を測定した後、該ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に該相対位置を調整するサブ調心工程を複数回含み、
各サブ調心工程の間に、前の回の該サブ調心工程における該一定の光量よりも大きくなるように、次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を決定する決定工程をさらに含んでおり、
該決定工程では、該次の回の該サブ調心工程において該被覆物が損傷しないように、該次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を、該前の回の該サブ調心工程の測定結果を用いて決定することを特徴とする調心方法。
【請求項2】
上記決定工程では、上記前の回の上記サブ調心工程の測定結果における上記最適位置の周囲における上記ファイバ出射光の光量の最低値P0’’を用いて、上記次の回の上記サブ調心工程における上記一定の光量P1を決定することを特徴とする請求項1に記載の調心方法。
【請求項3】
上記決定工程では、上記半導体レーザの光量をP0からP1に増加させたときの、当該半導体レーザからの光の広がり角の拡大に起因する、上記光ファイバに結合しない光の増加量を過剰損失αとし、予め定められた閾値をPthとしたとき、下記式(1)を満たすように上記次の回の上記サブ調心工程における上記一定の光量P1を決定することを特徴とする請求項2に記載の調心方法。
【数1】

【請求項4】
上記決定工程では、上記過剰損失αを、予め測定した、上記半導体レーザの光量と当該半導体レーザから出射する光の広がり角および光強度分布との関係から算出することを特徴とする請求項3に記載の調心方法。
【請求項5】
被覆物を備えている光ファイバと、該光ファイバに向けてマルチモードレーザを出射する半導体レーザとの相対位置を調整する調心方法であって、
該半導体レーザを一定の光量で発光させるとともに、該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させながら、該光ファイバから出射するファイバ出射光の光量を測定した後、該ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に該相対位置を調整するサブ調心工程を複数回含み、
各サブ調心工程の間に、前の回の該サブ調心工程における該一定の光量よりも大きくなるように、次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を決定する決定工程をさらに含んでおり、
該決定工程では、該半導体レーザが発光する光量を漸増させながら、該ファイバ出射光の光量を測定し、該半導体レーザが発光する光量と測定した該ファイバ出射光の光量との差が、予め定められた閾値を越えたとき、該半導体レーザが発光する光量の漸増を停止し、停止したときの該光量に基づいて該次の回のサブ調心工程における該一定の光量を決定することを特徴とする調心方法。
【請求項6】
上記サブ調心工程では、上記一定の光量と、測定した上記ファイバ出射光の光量との差が、予め定められた閾値を越えたとき、上記光ファイバの上記半導体レーザに対する相対的な移動を反転または停止することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の調心方法。
【請求項7】
被覆物を備えている光ファイバと、該光ファイバに向けてマルチモードレーザを出射する半導体レーザとの相対位置を調整する調心装置であって、
該半導体レーザが発光する光量を制御する発光量制御手段と、
該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させる移動手段と、
該光ファイバから出射するファイバ出射光の光量を測定する光量検出手段と、
該発光量制御手段を制御して該半導体レーザを一定の光量で発光させるとともに、該移動手段を制御して該光ファイバを該半導体レーザに対して相対的に移動させながら、該光量検出手段を介して該ファイバ出射光の光量を取得した後、該移動手段を制御して該ファイバ出射光の光量が最大となる位置である最適位置に該相対位置を調整することを複数回行い、各回の間に、前の回における該一定の光量よりも大きくなるように、次の回の該一定の光量を決定する制御手段とを備えており、
該制御手段は、該次の回の該サブ調心工程において該被覆物が損傷しないように、該次の回の該サブ調心工程における該一定の光量を、該前の回の該サブ調心工程の測定結果を用いて決定することを特徴とする調心装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−215409(P2011−215409A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84166(P2010−84166)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】