説明

調理器

【課題】簡単な構成を有しつつ被加熱物の電気的特性を利用して被加熱物と電極の接触率を上げながら通電し、被加熱物を解凍および/または加熱する高効率な調理器を提供する。
【解決手段】被加熱物1を収容する容器2に、被加熱物1を挟む一対の電極5aと5b、電極5a、5bに電力を供給する電源6、電極5a、5b間の電流値を検知する電流値検知手段7、被加熱物1の温度を検知する温度検知手段9、電極5a、5bの距離を可変する駆動モータ(電極間距離可変手段)13、容器2を可動する容器可動手段12を備え、被加熱物1と電極5a、5bの接触率を検知した電流値により推測し、最も接触率の高い状態を選択して被加熱物1を解凍および/または加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュール熱を用いて被加熱物を解凍、加熱する調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のジュール熱を利用して食品を加熱する通電加工装置には、湿潤性が良くフレキシブルな多数のブラシと、ブラシに接触するように食品を搬送する多孔性搬送面を有するコンベアと、搬送面の下面に配置された下部電極と、ブラシと下部電極との間に交流電圧を印加する手段より成る通電加工装置(例えば、特許文献1参照)や食品を搬送する搬送手段と、搬送手段の上方に配設された上部電極と、上部電極と対向し、かつ食品下部に配設された下部電極と、上部電極と下部電極間に電圧を印加する電源を備え、上部電極を搬送方向に並列する複数の電極棒と、電極棒に揺動可能に吊下げられた多数のリング状電極とで構成された通電加熱装置(例えば、特許文献2参照)がある。
【特許文献1】特開平11−192060号公報
【特許文献2】特開2005−209571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1および前記特許文献2の構成は、ともに複雑な構造の装置が必要で、流動性の高い冷凍状態食品の解凍や液状食品の加熱には利用できないという課題がある。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡単な構成を有しつつ被加熱物の電気的特性を利用して、被加熱物と電極の接触率を上げながら通電加熱を実行し、高効率かつ短時間で被加熱物を解凍および/または加熱する調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の調理器は、被加熱物を収容する容器と、前記被加熱物を昇温させる一対の電極と、前記電極に電力を供給する電源と、前記一対の電極間の電流値を測定する電流値検知手段と、前記一対の電極間距離を変化させる電極間距離可変手段と、前記電源を制御する制御手段を備えた調理器において、前記制御手段は前記電流値検知手段の検知信号に基づいて前記被加熱物の状態を検知し、前記電極間距離可変手段により前記電極間距離を可変制御するものである。
【0006】
これによって、簡単な構成を有しつつ被加熱物の電気的特性を利用して被加熱物と電極の接触率を上げながら通電加熱を実行し、高効率で短時間に被加熱物を解凍および/または加熱することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調理器は、簡単な構成を有しつつ被加熱物の電気的特性を利用し、被加熱物と電極の接触率を上げながら通電加熱を実行し、高効率で短時間で被加熱物を解凍および/または加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、被加熱物を収容する容器と、前記被加熱物を昇温させる一対の電極と、前記電極に電力を供給する電源と、前記一対の電極間の電流値を測定する電流値検知手段と、前記一対の電極間距離を変化させる電極間距離可変手段と、前記電源を制御する制御手段を備えた調理器において、前記制御手段は前記電流値検知手段の検知信号に基づいて
前記被加熱物の状態を検知し、前記電極間距離可変手段により前記電極間距離を可変制御するものである。
【0009】
これにより、簡単な構成を有しつつ被加熱物の電気的特性を利用して被加熱物と電極の接触率を上げながら通電加熱し、高効率で短時間に被加熱物を解凍および/または加熱することができる。
【0010】
第2の発明は、被加熱物を収容する容器と、前記被加熱物を昇温させる一対の電極と、前記電極に電力を供給する電源と、前記一対の電極間の電流値を測定する電流値検知手段と、前記被加熱物が収容された前記容器を前記電極が対向する方向に対して略平行方向に可動させる容器可動手段と、前記電源を制御する制御手段を備えた調理器において、前記制御手段は前記電流値検知手段の検知信号に基づいて前記被加熱物の状態を検知し、前記容器可動手段により前記容器を可動制御するものである。
【0011】
これにより、簡単な構成を有しつつ容器を可動制御して、被加熱物と電極の接触率を上げながら通電加熱し、高効率で短時間に被加熱物を解凍および/または加熱することができる。
【0012】
第3の発明は、特に請求項1または2に記載の容器は、電極の幅寸法を受け入れる長さの辺と、規定した電極間距離より大きい長さからなる辺から構成されたことを特徴とするものである。
【0013】
これにより、電極の電極間距離の変更あるいは容器可動制御が円滑に行なえるので、加熱効率を容易に上げることができる。
【0014】
第4の発明は、特に請求項1に記載の電極間距離可変手段は、電極の移動を支持する電極支持手段を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
これにより、電極を被加熱物に強く押し当てることを可能にし、被加熱物と電極の接触率を更に上げることができ、加熱効率を容易に上げることができる。
【0016】
第5の発明は、特に請求項1、2、4に記載の電極は、電極が被加熱物に当たった時に被加熱物からの反発力を電極を介して検知する圧力検知手段を設けることを特徴とする。
【0017】
これにより、電極が被加熱物に過度に押さえつけられることを防ぎ、被加熱物の形状を保ち、被加熱物の品質を保持することができる。
【0018】
第6の発明は、特に請求項1または2に記載の調理器は、被加熱物の温度を検知する温度検知手段を設け、制御手段は、前記被加熱物が所望の温度に到達するまでに電流値検知手段が電流値の変化を検知しなくなった時点で、通電と停止を交互に行い、前記被加熱物が所望の温度に到達すると加熱を終了する制御を行なうことを特徴とする。
【0019】
これにより、被加熱物の加熱むらをふせぎながら通電加熱調理を行なうことができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における調理器の概略図、図2は、図1の電極間距離を変化させた時の概略図である。
【0022】
図1および図2に示すように、本実施の形態1における調理器は、被加熱物1を収容する容器2と、容器2に着脱可能な蓋3と、外郭4で形成されている。容器2には、被加熱物1を挟んで一対の電極5a、電極5bが対向して配設される。電極5a、5bは、電力を供給する電源6に接続される。電源6は供給電力の電圧、周波数を自在に可変することができる。
【0023】
電流値検知手段7は、電源6と電極5aおよび電極5bの間の電流値を検出し、温度検知手段9は、容器2を介し被加熱物1の温度を検出し、それぞれ制御手段8へ信号を送る。制御手段8は、電流値検知手段7と温度検知手段9の信号に基づき電源6の動作を制御する。電極5aには、容器2の壁面との間に圧力検知手段10aを内蔵した電極支え部11aを配する。また電極5bは、可動する電極とし、電極支持手段12との間に圧力検知手段10b〜10dを内蔵した電極支え部11b〜11dを配する。この電極支え部11b〜11dを介して電極5bは電極支持手段12に支持されている。また電極支持手段12は、図示したように電極5bに略平行の板面に続いて、その上部をコの字状に折り曲げた構成とし、コの字状の二つの板面を貫通する駆動モータ13(電極間距離可変手段)の出力軸13aを配し少なくとも一つの板面と駆動モータ13の出力軸13aとをねじ嵌合させた構成とし、駆動モータ13を正逆に回転させることで電極支持手段12が電極間距離を可変するように移動する構成としている。
【0024】
図2は駆動モータ13を動作させて電極5a、5bの間の距離を短縮させた状態の図を示す。容器可動手段14は、容器2を電極5a、5bが対向する方向に対して略平行方向(本実施の形態では、左右方向)に可動させる。
【0025】
上記構成からなる調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0026】
被加熱物1は、電極5aと電極5bに挟まれた状態で、容器2に保持される。蓋3は、容器2の開口部を覆うように配設される。容器2は、電極5a、5bの電極の幅寸法を受け入れる長さの辺と、電極間距離の標準寸法として規定した電極間距離より、大きい長さからなる辺とで構成される。この規定した電極間距離より大きい長さは、電極を可動させて電極間距離を最大にした距離の寸法よりも大きい寸法としている。
【0027】
容器2の一辺を電極間距離より大きめにすることで、支障なく容器2を振動させることができる。
【0028】
電極5a、5bは、チタン、ステンレス、セラミック加工を施した金属などで構成され、それぞれは電気的に絶縁されている。
【0029】
電流値検知手段7は、電源6と電極5aおよび電極5bの間の電流値、つまり電源6の供給電圧値と電流値検知手段7の検出した電流値に基づけば、電極5aと電極5bにはさまれた被加熱物1のインピーダンスを測定することになる。温度検知手段9は、サーミスタなどの温度センサから構成され、容器2を介して被加熱物1の温度を検出する。制御手段8は、電流値検知手段7、温度検知手段9の信号に基づき被加熱物1の状態を推定する。
【0030】
電源6は、電極5a、5bに任意の周波数と任意の電圧により交流電力を供給する。周波数は商用電源周波数(50Hz/60Hz)から20kHz程度の周波数帯、電圧は0〜200Vの範囲で選択できる。
【0031】
電極5aには、容器2の壁面との間に圧力検知手段10a、電極支え部11aが配設さ
れる。電極5bには、電極支持手段12の板壁面との間に圧力検知手段10b〜10d、電極支え部11bが配設されている。圧力検知手段10a、10b〜10dは電極5a、5bにかかる被加熱物1からの反発力を電極5a、5bを介して検知する。
【0032】
電極支え部11a、11b〜11dは接触率を高めるために電極5a、5bを被加熱物1に押し付ける。電極支え部11a、11b〜11dはバネ様の構成を有する。容器駆動手段12は容器2を電極5a、5bが対向する方向に対して略平行方向(本実施の形態では左右方向)に駆動する。
【0033】
次に、被加熱物1の通電方法の一例について図を用いて説明する。
【0034】
図1、図2において、使用者が被加熱物1を電極5a、5bの間に入れると、温度検知手段9が被加熱物1の初期温度を検知し、制御手段8は被加熱物1が冷凍か、そうでないかを判別する。
【0035】
被加熱物1が冷凍と判断した場合は、被加熱物1と電極5a、5bの接触率を上げるために、制御手段8は駆動モータ13を動作して電極5bを移動制御させ、電極支え部11a、11b〜11dにより電極5bを被加熱物1に押し当てる。同時に、制御手段8は電流値検知手段7の検出値を電極5a、5bの接触条件ごとに比較し、その時点での最大電流値を検知した状態で電極5a、5bを所定時間保持する。所定時間が経過すると、制御手段8は再び電極5bを移動制御させ、電極支え部11a、11b〜11dにより電極5a、5bを被加熱物1に押し当てる。この一連の動作を温度検知手段9の検出温度が0℃以上になるまで繰り返す。電極5bを移動制御させることで、それぞれの電極5a、5bと被加熱物1の距離を可変することができるものである。駆動モータ13(電極間距離可変手段)と電極支え部11a、11b〜11dを設けることで、電極支え部11a、11b〜11dがない場合より接触率が上昇するものである。
【0036】
一方、駆動モータ13での電極間距離可変量では電極部に流れる電流値が小さすぎる場合は、容器可動手段12により容器2そのものを電極5a、5bが対向する方向に対して略平行方向(本実施の形態では左右方向)に駆動させる。
【0037】
被加熱物1が冷凍の場合は被加熱物1の形状が変化しないため、被加熱物1の凹部と電極5a、5bの間には空気層ができ、接触率は低く電流は流れにくい。接触率を高めるため、電極5bを動かすことで被加熱物1と電極5a、5bの接触率が高い状態を検出し、加熱速度を大きくする。一方、液体で冷凍状態の被加熱物1が解凍し始めると水分が流出し、電極5a、5bを動かさなくても被加熱物の溶けた水分が電極5a、5bと被加熱物1の凹部の間に水膜を形成するため、接触率が上がり電流が流れやすくなる。
【0038】
電流値検知手段7は、被加熱物1の温度が0℃以下の場合でも電極5bを移動制御させても電流値検知手段7の電流値が変化しない場合は被加熱物1の解凍が開始されたと判断する。
【0039】
一方、圧力検知手段10a、10b〜10dは、被加熱物1が電極5a、5bを押し返す力を検知する。押し返す力が強い場合は被加熱物1は形状を保っているが、押し返す力が弱くなると被加熱物1が電極5a、5bにより変形していると推定する。圧力検知手段10a、10b〜10dが検出する圧力値が所定値より低くなると反発力が弱くなった、つまり変形が開始したと判断する。変形が開始したことにより、制御手段8は被加熱物1が解凍を開始したと判断し、電極支え部11a、11b〜11dによる被加熱物1を押す動作を停止する、あるいは容器可動手段12の動作を停止するものである。
【0040】
被加熱物1の解凍が開始されると、制御手段8は温度検知手段9により被加熱物1の温度上昇の状態を検知しながら電源6の通電を制御する。被加熱物1の解凍が終了し、加熱過程に移行すると、制御手段8は被加熱物1が所定温度になるまで電源6を動作させて加熱を継続する。温度検知手段9が被加熱物1が所定温度に到達したと検知すると、制御手段8は電源6の動作を停止し、加熱が終了する。
【0041】
また、被加熱物が液体の場合には、電極間距離を最大距離に可変制御し、前記被加熱物が所望の温度に到達すると加熱を終了するように制御を行なう。これにより、液体の被加熱物に対する制御を簡便にして加熱を実行することができる。
【0042】
被加熱物1の解凍後の加熱においては、電源6の電極5a、5bへの通電方法は、断続通電でも連続通電でも構わないものとする。
【0043】
また、上記では、圧力検知手段を複数個配設した構成を説明したが、圧力検知手段は各電極に対応して一個だけ配設してもよいし、可動する電極のみに配設する構成でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る調理器は、被加熱物と電極の接触率を上げてジュール熱を有効に利用できるため、無駄なエネルギーを利用せず被加熱物を解凍および加熱できるので、各種調理器に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1における調理器の概略図
【図2】図1の電極間距離を変化させた時の概略図
【符号の説明】
【0046】
1 被加熱物
2 容器
5a、5b 電極
6 電源
7 電流値検知手段
8 制御手段
9 温度検知手段
10a、10b〜10d 圧力検知手段
11a、11b〜11d 電極支え部
12 電極支持手段
13 駆動モータ(電極間距離可変手段)
14 容器可動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する容器と、前記被加熱物を昇温させる一対の電極と、前記電極に電力を供給する電源と、前記一対の電極間の電流値を測定する電流値検知手段と、前記一対の電極間距離を変化させる電極間距離可変手段と、前記電源を制御する制御手段を備えた調理器において、前記制御手段は前記電流値検知手段の検知信号に基づいて前記被加熱物の状態を検知し、前記電極間距離可変手段により前記電極間距離を可変制御する調理器。
【請求項2】
被加熱物を収容する容器と、前記被加熱物を昇温させる一対の電極と、前記電極に電力を供給する電源と、前記一対の電極間の電流値を測定する電流値検知手段と、前記被加熱物が収容された前記容器を前記電極が対向する方向に対して略平行方向に可動させる容器可動手段と、前記電源を制御する制御手段を備えた調理器において、前記制御手段は前記電流値検知手段の検知信号に基づいて前記被加熱物の状態を検知し、前記容器可動手段により前記容器を可動制御する調理器。
【請求項3】
容器は、電極の幅寸法を受け入れる長さの辺と、規定した電極間距離より大きい長さからなる辺から構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の調理器。
【請求項4】
電極間距離可変手段は、前記電極の移動を支持する電極支持手段を設けた請求項1に記載の調理器。
【請求項5】
電極は、前記電極が前記被加熱物に当たった時に前記被加熱物からの反発力を前記電極を介して検知する圧力検知手段を設けた請求項1、2、4に記載の調理器。
【請求項6】
被加熱物の温度を検知する温度検知手段を設け、制御手段は、前記被加熱物が所望の温度に到達するまでに電流値検知手段が電流値の変化を検知しなくなった時点で、通電と停止を交互に行い、前記被加熱物が所望の温度に到達すると加熱を終了する制御を行なう請求項1または2に記載の調理器。
【請求項7】
制御手段は、被加熱物が液体の場合に、前記電極間距離を最大距離に可変制御し、前記被加熱物が所望の温度に到達すると加熱を終了する制御を行なう請求項1に記載の調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−254434(P2009−254434A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104420(P2008−104420)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】