説明

調節機構、およびこの機構を含む車両シート

【課題】調節機構をさらに改善し、特に、出口部材を支持する軸の案内を改善する。
【解決手段】調節機構は、ケーシング12、13と、ケーシング12、13に対して移動可能な入口部材14と、出口スプロケット28と、を備える。出口スプロケット28は歯の集合28aを有し、ケーシング12、13に固定されているか、またはケーシングと一体であり、出口スプロケットの側面に位置する第1および第2軸受け31、69内で回転するように実装される。出口スプロケット28は、ケーシング内に含まれる伝達装置を介して入口部材14に接続される。ケーシング12、13は、出口スプロケットが外部部材66と噛み合うことができるように、出口スプロケット上の歯の集合に面する少なくとも1つの側面開口部64を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節機構、および該機構を含む車両シートに関する。
【背景技術】
【0002】
詳細には、本発明は、ケーシングと、ケーシングに対して移動可能な入口部材と、歯の円形集合を備え、ケーシングに固定されているか、またはケーシングと一体の第1および第2軸受け内で回転するように実装された出口スプロケットであって、前記ケーシング内に含まれる伝達装置を介して入口部材に接続される出口スプロケットと、を含む調節機構に関する。
【0003】
特許文献1には、全体に満足なこのような調節機構が記載されている。
【0004】
【特許文献1】仏国特許公開第826320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の特定の目的は、このタイプの機構をさらに改善し、特に、出口部材を支持する軸の案内を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明によると、当該タイプの調節機構は、第1および第2軸受けが出口スプロケットの側面に位置し、ケーシングには、前記出口スプロケット上の歯の集合に面する少なくとも1つの側面開口部が設けられ、外側部材と噛み合うことを特徴とする。
【0007】
本発明の好ましい実施形態では、以下の項目の1つまたは複数を任意に使用することも可能である。
【0008】
ケーシングは、スプロケットの歯の集合が内部に収容される打ち抜き皿状部分が設けられた基部を含み、前記基部には、側面開口部が設けられる。
【0009】
前記基部の打ち抜き皿状部分は、枢軸に実質的に平行な側壁と、枢軸に実質的に垂直な端壁とを有し、前記側面開口部は前記側壁内に設けられる。
【0010】
出口スプロケットの歯の集合は、前記側壁から前記側面開口部を通って側方に突出し、前記端壁は、前記側面開口部において軸方向に少なくとも部分的に前記出口スプロケットの歯の集合を覆う。
【0011】
第2軸受けは、前記打ち抜き皿状部分の前記端壁内に形成された円筒状壁部を含む。
【0012】
前記打ち抜き皿状部分は、内部が裏打ち部分によって少なくとも部分的に覆われる。
【0013】
前記ケーシングは、前記基部に固締されたカバーを備え、第1軸受けは、前記カバーに固定されているか、または前記カバーと一体のリングによって形成される。
【0014】
入口部材は、枢軸周囲で前記ケーシングに対して回転するように実装され、前記入口部材は、弾性的に静止位置方向に圧迫され、第1角度領域上を静止位置から第1方向に移動可能であり、第2角度領域上を第1方向に対向する第2方向に前記静止位置から移動可能である。
【0015】
調節機構はさらに、以下を含む。
【0016】
枢軸周囲で回転するように実装された中間部材。
【0017】
入口部材を前記中間部材に接続する駆動部であって、前記入口部材が静止位置から離れて移動する時に、少なくとも1つの駆動部材を介して、前記入口部材とともに前記中間部材を正駆動し、前記駆動部材が前記中間部材を摩擦すると同時に前記入口部材が前記静止位置へ戻るときに、前記入口部材とともに前記駆動部材を移動させるように適合された駆動部。
【0018】
ケーシングと一体であるか、または前記ケーシングに固定され、枢軸の周囲で円状に左右対称である遮断表面。
【0019】
出口スプロケットに固定され、前記遮断表面と協働して第1および第2の中空楔形空間を含む少なくとも1対の楔形空間を規定する出口カムであって、前記第1および第2の楔形空間が、それぞれ第1角方向および第2角方向に分岐する出口カム。
【0020】
中間部材を出口カムに接続する係止部。前記係止部は、以下を含む。
・ 第1および第2楔形空間のそれぞれの内部に配置され、第1および第2の角方向のそれぞれの空間に弾性的に圧迫されて、前記出口部材と、前記遮断表面と、の間に楔締めされる第1および第2の剛性の圧締体を含む少なくとも1対の圧締体。
・ 前記中間部材に固定されているか、または前記中間部材と一体であり、前記第1および第2角方向のそれぞれに面する少なくとも第1および第2の剛性当接面であって、前記第1当接面は、前記中間部材が前記第1角方向に回転したときに、前記第1圧締体に当接して前記第1圧締体を解除するように適合され、前記第2当接面は、前記中間部材が前記第2角方向に回転したときに、前記第2圧締体に当接して前記第2圧締体を解除するように適合され、前記第1および第2当接面は、前記第1および第2圧締体に対してある量の角隙間を有する剛性当接面。
・ 前記出口カムに固定されているか、または前記出口カムと一体の少なくとも第1および第2推進面であって、前記第1推進面は、前記当接面が前記第1圧締体を十分に遠くに移動させて解除した後、前記出口カムが前記中間部材によって駆動されるように、前記第1角方向における前記出口カムに対する前記中間部材の相対運動を制限するように適合され、前記第2推進面は、前記第2当接面が前記第2圧締体を十分に遠くに移動させて解除した後、前記出口カムが前記中間部材によって駆動されるように(具体的には前記中間部材に対する直接的な接触か、または実際には前記中間部材の前記当接面が前記圧締体を動かしている間、前記推進面に対して当接する圧締体によって)、前記第2角方向における前記出口カムに対する前記中間部材の相対運動を制限するように適合される前記推進面。
【0021】
上記の係止部において、圧締体の各々の対の前記第1および第2圧締体は、圧縮ばねによって圧迫されて離れ、前記中間部材に固定されているか、または前記中間部材と一体の第1および第2軸方向指状部を含む1対の軸方向指状部によって側面に位置する。前記第1および第2軸方向指状部は、前記第1および第2当接面のそれぞれ1つを有し、前記出口部材の前記第1推進面は、前記中間部材が前記第1角方向に移動するときに、前記中間部材の前記第2軸方向指状部に当接するように適合される。前記出口部材の前記第2推進面は、前記中間部材が前記第2角方向に移動するときに、前記中間部材の前記第1軸方向指状部に当接するように適合される。
【0022】
前記駆動部は、次のものを含む。
【0023】
前記中間部材に固定されているか、または前記中間部材と一体の当接部表面。前記当接部表面は前記枢軸(X)周囲で円形対称であり、前記入口部材とともに、中空の中間環状空間を半径方向に規定する。前記入口部材は、前記中間環状空間内に突出し、前記中間環状空間内に第1および第2楔形領域を規定し、前記第1および第2楔形領域は、前記第1および第2角方向のそれぞれ一方において分岐する。
【0024】
第1および第2の剛性楔形体を含む1対の楔形体。前記第1および第2の剛性楔形体は、前記中間環状空間内に配置され、前記中間環状空間の前記第1および第2楔形領域方向に弾性的に圧迫されて、前記入口部材上の突出部と、中間部材の当接部表面と、の間に楔締めされる。前記第1および第2楔形体の各々は、前記駆動部材のそれぞれ1つを構成する。
【0025】
前記ケーシングに固定されているか、または前記ケーシングと一体であり、前記中間環状空間内に配置された少なくとも1つの静止軸方向指状部。前記入口部材上の突出部は、前記入口部材がその静止位置にあるときに、前記静止軸方向指状部に面して配置される。
【0026】
前記駆動部は、少なくとも3対の楔形体を含み、各々の対の楔形体の前記第1および第2楔形体は、前記静止軸方向指状部と、前記入口部材上の突出部と、のいずれかの側に配置され、各々の対の楔形体の前記第1楔形体は、圧縮ばねによって、隣接する対の第2楔形体から離間配置して保持される。
【0027】
さらに、本発明は、上記の調節機構を含む車両シートも提供する。シートの場合、シート本体の高さは、上昇装置によって調節可能であり、該調節機構がこの上昇装置を制御する。
【0028】
本発明のその他の特性および利点は、非制限的な例として、添付の図面に関して記載される本発明の実施形態のうちの2つに関する以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
様々な図面では、類似の参照符号は、同じであるかまたは類似する要素を指示するために使用する。
【0030】
図1は、車両の床4上に取り付けられたシート本体3自体によって、たとえば長手方向軌条4aによって支持される背もたれ2を含む車両シートを示す。
【0031】
シート本体3は、本質的に公知の上昇機構を介して軌条4aに接続される。上昇装置は、例えば、前記シート本体3の高さを調節するために、シート本体のいずれかの側に2つの上昇リンク5a、5bを含むことができる。上昇機構は調節機構6によって駆動され、調節機構6自体は、制御レバー7などの作動部材、または横方向の水平枢軸X周囲で回転するように実装された作動部材によって駆動される。
【0032】
レバー7は、レバーが、たとえば実質的に水平に配置される静止位置N方向に弾性的に圧迫される。静止位置N内で、レバー7は例えば実質的に水平に配置されてよい。レバーは、この静止位置から開始して、静止位置Nと第1当接部表面位置B1との間に規定された第1角度領域9上を第1角方向8へ、および静止位置Nと第2当接部位置B2との間に規定された第2角度領域11上を第2角方向10へ、移動することが可能である。
【0033】
図2および3に示すように、調節機構6は、実質的に円筒状のケーシング内に含まれる機械式伝達装置を含み、前記ケーシングは、軸X上の中心に配置され、一緒に組み立てられるカバー12および基部13をそれぞれ構成する板金側板(チークプレート)12、13から作られる。
【0034】
前記ケーシングは、シート本体の金属枠組み3aに固締され、この枠組みは、たとえば、横材3cによって互いに接続された2つの垂直側部側板3bを含んでよい(図2および3では、1枚のみ見える)。図示の例では、横材は、少なくとも1つの後部横材3cから構成され、この横材3cは、後部上昇リンク5bに固定され、一緒に回転するようにシート本体の側板3b上に取り付けられる少なくとも一つの後部横材を含む。
【0035】
詳細には、本明細書の例では、調節機構6のケーシングの基部13は、たとえば、軸Xに実質的に垂直に延び、ボルト13c、リベットなどによって側板3bの1つに固締することができる2つの固締タブを備えることができる。カバー12は、軸Xに実質的に垂直な端壁12aと、軸Xを軸とする円筒状側壁とを有することができる。前記側壁は、基部13内のスロット13d内に圧着された留め具12cによって伸ばされる。
【0036】
さらに、側板3aには、基部13の突出部分61が貫通して伸びる孔3dが設けられる。図3および7に示すように、前記突出部分61は、たとえば、基部13内に設けられた打ち抜き皿状部分によって形成され、軸Xに実質的に平行な側壁62と、軸Xに実質的に垂直な端壁63とを有することができる。側壁62は、全体として円形円筒状であり、軸Xを軸として、一定の角度領域上で途絶して側面開口部64を形成する。開口部64は、調節機構の出口スプロケット28上で円形の歯の集合28aに面して配置される。したがって、歯の集合28aは、上記のリンク5bに固定された歯付き領域66に属する円形の弓形歯の集合65と係合し、前記リンク5bを回転させて、シート本体3の高さを調節することが可能である。
【0037】
図2〜7に示す例では、スプロケット28は、開口部54から側方外側に突出し、開口部は、側壁62の2つの軸方向縁部67と、2つの軸方向縁部67を相互接続する、端壁63の直線縁部68と、によって規定される。
【0038】
したがって、この実施形態では、軸方向壁部63は、スプロケットの歯の集合22aの上、および歯付き領域66の歯の集合65の上に突出しない。
【0039】
図4から6に示すように、調節機構6は入口部材14をさらに含み、入口部材14は金属の環状入口カムであって、その外形が実質的に三角形であり、丸みのある頂点が、半径方向外側に突出する3つの突出部15を構成する入口カムであってよい(図5参照)。
【0040】
入口部材14は周囲リング14aを含み、周囲リング14aは、突出部15を含み、3つの凹部18によって互いに角度的に分離されている3つの橋17を介して、軸Xを軸とする中心部分16に接続される。入口部材14の中心部分16には、上記レバー7を固締することを可能にするねじ穴19が設けられる。カバー12に属する留め具12dは、前記凹部内に貫入することが可能である。
【0041】
さらに、調節機構6は、軸X周囲で回転するように実装されるとともに、枢軸Xを中心とするリング21を備える金属中間部材20をさらに備える(図4および5)。このリング21は、軸Xの周囲で円形対称の内部円筒状表面または当接部円筒状表面を有し、前記リング21は、入口部材のリング14aの周囲に配置される。
【0042】
入口部材14とともに、当接部の円筒状表面21aは中空の中間空間22(図4参照)を半径方向に規定し、この中間空間22は、入口部材上の各々の突出部15のいずれかの側に、第1および第2方向8、10のそれぞれに分岐する第1および第2楔形領域22a、22bを形成する。
【0043】
中間部材20は、カバー12に対向する側部に、リング21と一体に形成された基部23をさらに備え、前記基部23には、3対の軸方向指状部24、25(図4および6)がさらに設けられる。前記軸方向指状部の対の各々は、軸Xに平行なケーシングの基部13方向に延びる第1および第2軸方向指状部24、25を備える。
【0044】
中間環状空間22には、3つの軸方向指状部26が配置され、この軸方向指状部26は、特に、ケーシングのカバー12から切断した舌状部から構成され、前記ケーシングの軸方向内側方向に折り返される。機構6が静止位置にある場合、入口部材14の突出部15は、3つの静止軸方向指状部26のそれぞれに位置合わせして配置される。
【0045】
さらに、図3および5に示すように、調節機構6は、基部13に固定された厚い金属リング33をさらに備え、このリングは、ケーシングの基部13と中間部材20との間に軸方向に挿置される。リング33は、軸Xを中心とする円環形を有し、前記軸X周囲で円形対称の内部円筒状表面34、または「遮断」円筒状表面を有する。
【0046】
静止リング33の内部では、出口カム35に、上記のスプロケットを支持するシャフト27が圧力嵌めされている溝付き孔36などが内部に設けられる。
【0047】
図6に示すように、出口カム35は、3つの半径方向指状部37が外側に設けられ、この指状部は、遮断円筒状表面34に接触するまで外側に突出し、互いに120°の角度で離間配置されている。
【0048】
各々の指状部37は、それぞれ第2角方向10および第1角方向8に面する第1および第2推進面38、38によって側方に規定される。
【0049】
出口カム35の周囲には3つの後退区域も設けられ、各々の区域は、2つの隣接する突出指状部37の付近に、軸Xを実質的に中心とする環状弓形を有する2つの丸みのある区域41だけ延在する中心平坦部40を有する。遮断円筒状表面34とともに、各々の平坦部40は、それぞれ第1角方向8および第2角方向10に分岐する第1および第2楔形空間42、43を規定する。
【0050】
出口カム35を支持する上記のシャフト27は、以下の2つの軸受け上の軸X周囲で回転するように実装される。
【0051】
第一軸受けは、この例では、プラスチックまたはその他のある材料から製造され、軸X周囲で実質的に円形円筒状であり、ケーシングのカバー12の留め具12dの間に圧力で係合されて前記ケーシングを固定する案内リング31によって形成される。前記案内リング31は、スプロケット28から対向して位置するシャフト27の端部27aに形成される円筒状軸受け表面30を収容する。
第2軸受けは、たとえば、基部13の端壁63の中心に形成された円筒状壁部69によって形成される。前記円筒状壁部は、端部27aに対向して位置するシャフト27の端部27bに形成される円筒状軸受け表面70を収容する。
【0052】
裏打ち部分71の円筒状壁部72は、円筒状壁部69と、シャフト27の軸受け表面70との間に任意に挿置することができる。裏打ち部分71は、金属またはプラスチック材料から製造することができ、たとえば、基部13の端壁63を内面的に覆う端壁73と、基部13の側壁62を内面的に覆う側壁74と、半径方向外側に突出し、基部13と、特にカム35と、の間に挿置されるカラー75と、を有することができる。裏打ち部分71は、特に、打ち抜き皿状部分61を強化することができる。
【0053】
上記の機構6は、入口カム14を中間部材20に接続する駆動部44(図5)と、中間部材20を出口カム35に接続する係止部48と、によって動作する。
【0054】
図5に示すように、駆動部44は、3対の第1および第2剛性楔形体45、46を備え、これらの楔形体は、この例では、鋼球またはローラーであり、入口部材14上の各々の突出部のいずれかの側に位置する第1および第2楔形領域22a、22b内の中間環状空間22のそれぞれの中に配置される。
【0055】
圧縮ばね47は、入口部材上にある隣接突出部15に対応する第1楔形体45および第2楔形体46の各々の間に挿置され、この圧縮ばねは、中間環状空間22内にも収容されて、楔形体を楔形領域22a、22b方向に圧迫する。
【0056】
したがって、作動レバー7は静止位置Nから離れて角方向8、10のいずれかに移動したときに、入口本体14上の突出部15は、レバーが第1角方向8に作動した場合、第1楔形体45を当接部表面21aに対してしっかり遮断し、レバーが第2角方向10に作動した場合、当接部表面21aに対して第2楔形体46を遮断する。次に、入口部材14は、レバー7が非常に少量の角度で空転した後、中間部材20を駆動する。この角度の空転は約1°でよい。この運動の際、他のすべての楔形体は、静止指状部26に対して当接部内に留まる。
【0057】
使用者が、レバー7が作動された後に、その都度レバーを解除すると、レバーは、駆動部のばね47によって静止位置Nに復帰する。この静止位置方向への復帰運動の際、入口カム14によって変位した楔形体45、46は、リング21の内面21aを摩擦しながら、前記入口カムとともに最初の位置方向に復帰する。しかし、この摩擦は、エラストマーリング32が存在するため、中間部材20の運動を誘発しない。
【0058】
上記駆動部は、任意に歯止め駆動機構、またはレバー7の前後運動によって作動するその他の何らかの機構と置き換えることができる点に注目するべきである。
【0059】
さらに、図6に示すように、係止部48は、3対の第1および第2圧締体49、50(たとえば、鋼球またはローラ)を備える。これらの圧締体は、第1および第2楔形空間42、43のそれぞれに配置され、圧縮ばね51によって圧迫されて離れており、その結果、静止位置では、圧締体42、43は、遮断表面に対して楔締めすることによって、出口部材35を静止状態に保持する。
【0060】
さらに、出口カムの2つの半径方向指状部37間に配置された圧締体の各々の対の第1および第2圧締体49、50は、ある程度の角隙間がある状態で、中間部材20の1対の第1および第2軸方向指状部24、25によって側面に位置する。
【0061】
詳細には、各々の第1軸方向指状部24は、第1圧締体49の1つと、対応する第2推進面39と、の間に配置され、前記第1指状部24は、対応する第1圧締本体を移動させるように適合される第1当接面を有する。各々の第2軸方向指状部25は、第2圧締体50の1つと、対応する第1推進面38と、の間に配置され、前記第2指状部25は、対応する第2圧締本体を移動させるように適合される第2当接面を有する。
【0062】
レバー7が使用者によって作動され、上記のとおり、中間部材20が、たとえば、その静止位置Nから第2角方向10に(つまり、第2角度領域11上に)回転する場合、中間部材20の各々の指状部25の当接面は、対応する第2圧締体50を第2角方向10に移動させ、その結果第2圧締体を解除する。
【0063】
第2圧締体50が解除された後、第1圧締体49は、ばね51の影響によって、出口部材35を角方向10に圧迫する。
【0064】
この圧迫は、特に、機構6が空作動する場合、つまり対向するトルクが加わらない状態で作動する場合、出口部材35を回転させるのに十分であればよい。
【0065】
逆に、機構6が荷重下で動作する場合、中間部材20の回転によって、出口部材35は、中間部材20の第1軸方向指状部24が出口部材の第2推進面39と接触する場合にのみ、角方向10に回転する。
【0066】
レバー7の動作の終わりに、前記レバーが静止位置N方向に戻ると、上記のように、中間部材20が静止し、その結果、出口部材35および結合シャフト27が静止する。使用者が、第2角度領域11上で数回の「揚水(ポンプ)」運動を行うと、出口部材35および結合シャフト27は、連続的に複数回同じ角方向10に回転する。
【0067】
装置は、レバー7が第1角度領域9上で繰り返し作動する場合、必要な変更を加えた上で同様に動作するであろう。
【0068】
図4に示すように、調節機構6をシート本体の側板(チークプレート)3b上に取り付けると、蝶番機構のケーシング12、13を側方に多少移動させて、スプロケット28と、歯付き領域66の歯と、の間を完全に噛み合せることができる。この目的のため、たとえば基部13の留め具13b内に、側板3bにおける孔78に面して配置された孔79を設けることができる。孔79は、歯付き領域66から対向方向に、孔78に対して多少中心を外れる。
【0069】
たとえばプラスチック材料、または任意に金属から製造される円錐キー80などが、孔79、78に係合する。本明細書で考察する例では、前記キーは、最初に孔79に係合し、次に、孔78内に貫通して、歯付き領域66に対向して位置する孔78の縁部の部分に当接する。したがって、この係合の際、全体のケーシング12、13は、歯付き領域66方向に移動し、たるみを取ることによって、上記のように歯と完全に係合する。
【0070】
図3に示すように、基部13のボルト13cは、側板3b内の孔81内の隙間に係合し、基部13上の突出部分61は、側板3b内の対応する孔3d内の隙間に係合する。このため、前記ボルト13cは、キー80によって生じる運動を妨げない。ナット82がボルト13c上に締め付けられると、ケーシング12、13は、側板3bに対して静止状態を保つ。
【0071】
スプロケット28は、2つの軸受け35、69によって側面に位置するため、キー80によって生じるわずかな応力で、シャフト27が移動して位置関係が狂うことがなく、したがって、調節機構6の誤作動が生じることはない点に注目するべきである。
【0072】
図8に対応する本発明の第2実施形態は、ケーシングの基部13が、開口部64の2つの軸方向縁部67を相互に接続する環状弓形縁部76を有する円盤状端壁63を有する。その結果、端壁63が、側面開口部64において軸方向に出口スプロケット上の歯の集合28aを覆う突出部分77を有するという点でのみ、上記の第1実施形態と異なる。この突出部分77は、歯の集合28aと噛み合う歯の集合65の部分も覆い、その結果、前記突出部分77は、特に、シートが実装された車両が事故に遭遇した場合、歯付き領域66が出口スプロケット28から離脱するのを防止するのに役立つ。
【0073】
端壁63の突出部分77は、前記突出部分が、出口スプロケットの歯の集合28a、および歯付き領域66の歯の集合65の少なくとも一部分を覆うことを条件として、環状弓形以外の縁部76を有してよい点に注目するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】シート本体の高さが本発明の調節機構により調節可能な車両シートの線図である。
【図2】図1のシートの一部分の斜視図であり、調節機構が、シート本体の側板の1つの上にどのように実装されるかを示す。
【図3】図1のシートの一部分の斜視図であり、調節機構が、シート本体の側板の1つの上にどのように実装されるかを示す。
【図4】図2および3の調節機構を通る軸方向断面図である。
【図5】図4の線V−Vおよび線VI−VI上の断面図である。
【図6】図4の線VI−VI上の断面図である。
【図7】図4の調節機構の基部の斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態における調節機構の基部の斜視図であり、基部は、図7の対向方向に係止しているように示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(12、13)と、
ケーシング(12、13)に対して移動可能な入口部材(14)と、
歯の円形集合(28a)を備え、ケーシング(12、13)に固定されているか、またはケーシング(12、13)と一体の第1および第2軸受け(31、69)内で回転するように実装された出口スプロケット(28)であって、前記ケーシング内に含まれる伝達装置(44、48)を介して前記入口部材(14)に接続される出口スプロケット(28)と、を含む調節機構であって、
前記調節機構は、前記第1および第2軸受け(31、69)が前記出口スプロケット(28)の側面に位置し、前記ケーシング(12、13)は、前記出口スプロケット上の歯の集合(28a)に面する少なくとも1つの側面開口部(64)を備え、前記側面開口部(64)は、前記出口スプロケット(28)が外部部材(66)に噛み合うことが可能であるように適合されることを特徴とする調節機構。
【請求項2】
前記ケーシング(12、13)は、前記出口スプロケットの歯の集合(28a)が内部に収容される打ち抜き皿状部分(61)を備える基部(13)を含み、前記基部(13)は、前記側面開口部(64)を備える請求項1記載の調節機構。
【請求項3】
前記基部の前記打ち抜き皿状部分(61)は、回転する前記軸(X)に実質的に平行な側壁(32)と、回転する前記軸(X)に実質的に垂直な端壁(63)と、を有し、前記側面開口部(64)は、前記側壁(62)内に設けられる請求項2記載の調節機構。
【請求項4】
前記出口スプロケットの歯の集合(28a)は、前記側面開口部(64)を介して前記側壁(62)から側方に突出し、前記端壁(63)は、前記側面開口部(64)において前記枢軸の方向に少なくとも部分的に前記出口スプロケットの歯の集合(28a)を覆う請求項3記載の調節機構。
【請求項5】
前記第2軸受けは、前記打ち抜き皿状部分(61)の前記端壁(63)内に形成される円筒状壁部(70)を備える請求項3または4記載の調節機構。
【請求項6】
前記打ち抜き皿状部分は、裏打ち部分(71)によって少なくとも部分的に内面を覆われる請求項3から5いずれか記載の調節機構。
【請求項7】
前記ケーシングは、前記基部(13)に固締されたカバー(12)を含み、前記第1軸受けは、前記カバー(12)に固定されているか、または前記カバー(12)と一体のリング(31)を備える請求項2から6いずれか記載の調節機構。
【請求項8】
前記入口部材(14)は、前記枢軸(X)周囲で前記ケーシング(12、13)に対して回転するように実装され、前記入口部材は、静止位置(N)方向に弾性的に圧迫され、第1角度領域(9)上を前記静止位置から第1方向(8)に移動可能であり、第2角度領域(11)上を第1方向に対向する第2方向(10)に前記静止位置から移動可能であり、前記調節機構はさらに、
前記枢軸周囲で回転するように実装された中間部材(20)と、
前記入口部材(14)を前記中間部材(20)に接続する駆動部(44)であって、前記入口部材が前記静止位置から離れて移動するときに、少なくとも1つの駆動部材(45、46)を介して、前記入口部材とともに前記中間部材を正駆動し、前記入口部材が前記中間部材を摩擦する前記駆動部材(45、46)とともに前記静止位置に戻るときに、前記入口部材とともに前記駆動部材を移動させるように適合される駆動部と、
前記ケーシング(12、13)と一体であるか、または前記ケーシング(12、13)に固定され、前記枢軸(X)の周囲で円形対称である遮断表面(34)と、
前記出口スプロケット(28)に固定され、前記遮断表面(34)と協働して第1および第2の中空楔形空間を含む少なくとも1対の楔形空間(42、43)を規定する出口カム(35)であって、前記第1および第2の楔形空間(42、43)が、それぞれ前記第1角方向(8)および前記第2角方向(10)に分岐する出口カム(35)と、
前記中間部材(20)を前記出口カム(35)に接続する係止部(48)であって、
第1および第2楔形空間(42、43)のそれぞれの内部に配置され、前記第1および第2の角方向(8、10)のそれぞれに弾性的に圧迫されて、前記出口部材(35)と、前記遮断表面(34)と、の間に楔締めされる第1および第2の剛性の圧締体を含む少なくとも1対の圧締体(49、50)と、
前記中間部材(20)に固定されているか、または前記中間部材(20)と一体であり、前記第1および第2角方向(8、10)のそれぞれに面する少なくとも第1および第2の剛性の当接面(24、25)であって、前記第1当接面(24)は、前記中間部材が前記第1角方向(8)に回転したときに、前記第1圧締体(49)に当接して前記第1圧締体(49)を解除するように適合され、前記第2当接面(25)は、前記中間部材が前記第2角方向(10)に回転したときに、前記第2圧締体(50)に当接して前記第2圧締体(50)を解除するように適合され、前記第1および第2当接面は、前記第1および第2圧締体に対してある量の角隙間を有する剛性の当接面(24、25)と、
前記出口カム(35)に固定されているか、または前記出口カム(35)と一体の少なくとも第1および第2推進面(38、39)であって、前記第1推進面(38)は、前記当接面(24)が前記第1圧締体(49)を十分に遠くに移動させて解除した後、前記出口カム(35)が前記中間部材によって駆動されるように、前記第1角方向(8)における前記出口カム(35)に対する前記中間部材(20)の相対運動を制限するように適合され、前記第2推進面(39)は、前記第2当接面が前記第2圧締体(50)を十分に遠くに移動させて解除した後、前記出口カム(35)が前記中間部材(20)によって駆動されるように、前記第2角方向(10)における前記出口カム(35)に対する前記中間部材(20)の相対運動を制限するように適合される前記推進面と、を含む係止部と、を含む調節機構である請求項1から7いずれか記載の調節機構。
【請求項9】
圧締体の各々の対の前記第1および第2圧締体(49、50)は、圧縮ばね(51)によって圧迫されて離れ、前記中間部材(20)に固定されているか、または前記中間部材(20)と一体の第1および第2軸方向指状部(24、25)を含む1対の軸方向指状部によって側面に位置し、前記第1および第2軸方向指状部は、前記第1および第2当接面のそれぞれ1つを有し、前記出口部材の前記第1推進面(38)は、前記中間部材が前記第1角方向(8)に移動するときに、前記中間部材の前記第2軸方向指状部(25)に当接するように適合され、前記出口部材の前記第2推進面(39)は、前記中間部材が前記第2角方向(10)に移動するときに、前記中間部材の前記第1軸方向指状部(24)に当接するように適合される請求項8記載の調節機構。
【請求項10】
前記駆動部(44)は、
前記中間部材(20)に固定されているか、または前記中間部材(20)と一体の当接部表面(21a)であって、前記当接部表面が前記枢軸(X)周囲で円形対称であり、前記入口部材(14)と共に、中空の中間環状空間(22)を半径方向に規定し、前記入口部材は、前記中間環状空間内に突出し、前記中間環状空間内に第1および第2楔形領域(22a、22b)を規定し、前記第1および第2楔形領域は、前記第1および第2角方向(8、10)のそれぞれ一方において分岐する当接部表面(21a)と、
第1および第2の剛性の楔形体を含む1対の楔形体(45、46)であって、前記第1および第2の剛性の楔形体(45、46)は、前記中間環状空間内に配置され、前記中間環状空間の前記第1および第2楔形領域(22a、22b)方向に弾性的に圧迫されて、前記入口部材上の突出部(15)と、前記中間部材の前記当接部表面(21a)と、の間に楔締めされ、前記第1および第2楔形体の各々が、前記駆動部材のそれぞれ1つを構成する前記一対の楔形体(45、46)と、
前記ケーシング(12、13)に固定されているか、または前記ケーシング(12、13)と一体であり、前記中間環状空間内に配置された少なくとも1つの静止軸方向指状部(26)であって、前記入口部材上の前記突出部(15)は、前記入口部材が前記静止位置(N)にあるときに、前記静止軸方向指状部(26)に面して配置される前記静止軸方向指状部と、を備える請求項8または9記載の調節機構。
【請求項11】
前記駆動部(44)は、少なくとも3対の楔形体(45、46)を含み、各々の対の楔形体の前記第1および第2楔形体は、前記静止軸方向指状部(26)と、前記入口部材上の前記突出部(15)と、のいずれかの側に配置され、各々の対の楔形体の前記第1楔形体(45)は、圧縮ばね(47)によって、隣接する対の前記第2楔形体から離間配置して保持される請求項10に記載の調節機構。
【請求項12】
前記請求項1から11いずれか記載の調節機構(6)を含む車両シート。
【請求項13】
シート本体(3)の高さは、上昇装置(5)によって調節可能であり、前記調節機構(6)は、前記上昇装置(5)を制御する請求項12記載のシート。
【請求項14】
支持体(3b)であって、前記支持体は、この支持体(3b)上に固締される前記ケーシングと、前記出口スプロケット(28)と噛み合う歯付き部材(66)と、を含み、前記出口スプロケット(28)と、前記歯付き部材(66)と、は、前記出口スプロケット(28)の歯と、前記歯付き部材(66)の歯と、が完全に噛み合うことを保証する、たるみ取り装置(78、79、80)によって互いに圧迫される請求項12または請求項13記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−290344(P2006−290344A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−109632(P2006−109632)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(503411060)フォルシア シエジュ ドトモビル  (25)
【Fターム(参考)】