説明

調節装置

【課題】 調節装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、自動車分野の調節装置であって、固定された案内要素(16)と、この固定された案内要素(16)に対して移動可能に配置されかつ基準要素(20)を有する調節要素(18)とを有し、調節行程(32)内で調節要素(18)を駆動するECモータ(14)を有し、及びECモータ(14)用の制御手段を有する制御ユニットを有し、調節行程(32)が、第1及び第2の捕捉領域(28、30)内にそれぞれ配置される第1及び第2の端点(24、26)によって境界付けられ、調節行程(32)の外側に配置される少なくとも1つの機械式端部ストッパー(22)が設けられる調節装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車分野の調節装置であって、固定された案内要素と、この固定された案内要素に対して移動可能に配置されかつ基準要素(a referencing element)を有する調節要素とを有し、調節行程内で調節要素を駆動するECモータを有し、及びECモータ用の作動手段を有し、調節行程が、第1及び第2の捕捉領域内にそれぞれ配置される第1及び第2の端点によって境界付けられる調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような調節装置は下記特許文献1から公知である。本文献は、特に座席調節手段として適切な調節装置を開示している。このため、ECモータによって案内要素に対して駆動することができる調節要素が設けられる。さらに、調節装置は、調節要素の調節行程を規定する第1及び第2の機械式端部ストッパーを有する。保護ストッパー点と呼ばれるものが、調節行程内のこれらの機械式端部ストッパーから離間して設けられ、この保護ストッパー点は、調節要素が当該保護ストッパー点を越えて移動するときに作動手段によってトリガーとして扱われ、調節エネルギーの低減をもたらす。これによって、機械式端部ストッパーは、調節要素の衝突による過度に高い機械的負荷を受けないことが保証される。しかし、衝撃が発生したときに負荷が低減しても、端部ストッパーは依然として負荷を受ける。したがって、機械式端部ストッパーは、重量の増加をもたらす中実の設計となる。さらに、調節要素及び関連のECモータは機械式端部ストッパーに衝突することによって損傷する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国実用新案第20221068U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を回避する調節装置を提供することである。さらに、本発明の目的は、調節装置を標準化するための方法と、調節装置を再標準化するための方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、調節行程の外側に配置される少なくとも1つの機械式端部ストッパーが設けられることによって達成される。このことにより、通常の運転モードにおいて、調節要素が第1の端点と第2の端点との間でのみ移動することが保証される。したがって、調節要素は、通常の運転モード中、機械式端部ストッパーにもはや衝突しない。
【0006】
特に有利な実施形態は、調節要素が捕捉領域に配置される場合、ECモータを反対側の端点の方向にのみ始動させることが可能であるように作動手段が構成されることを特徴とする。このことにより、特に簡単かつ費用効果的に、調節要素と機械式端部ストッパーとの間の距離が短いときでも、ECモータの動力制限が捕捉領域内で行われるように作動手段が構成されることが保証される。
【0007】
さらに、本発明の目的は、基準データ(referencing data)が記憶されていない、このような調節装置を標準化するための方法によって達成される。本方法は、以下のステップ、すなわち、基準モード(a referencing mode)が制御ユニットで選択されるステップ、ECモータの回転方向、調節要素の調節行程、機械式ストッパーからの隣接する端点の距離、及び端点用の捕捉領域が、基準動作(a referencing run)のために規定されて記憶されるステップを含む。調節要素の基準動作は、オペレータ制御スイッチをトリガーとして始動され、調節要素は機械式端部ストッパーまで移動し、この結果、ECモータが遮断され、ECモータの回転方向が変更され、調節要素が該当距離だけ移動し、第1の端点が記憶され、第2の端点が調節行程に基づいて計算されて記憶され、捕捉領域が端点に割り当てられて記憶され、基準動作が終了する。調節装置を標準化するためのこの方法は、その結果として、1つのみの機械式端部ストッパーが原則として設けられるという利点を提供する。このことにより、かなりの重量節減が得られる。このような調節装置を標準化するための特定の有利な方法は、基準データが記憶されていない場合、基準動作全体に対して第1の動力制限が規定されるという事実によって規定される。このことにより、移動状態で調節装置のECモータを全力で使用できないことが保証される。したがって、モータの全トルクが少なくとも1つの端部ストッパーにかけられ得ないので、この端部ストッパーもそれほど頑丈でないように具現化すべきである。さらに、機械式端部ストッパーに達することに対して第2の動力制限を規定することが有利であり得る。さらに、本発明の目的は、基準データが記憶される、調節装置を再標準化するための方法によって達成される。本方法は、以下のステップ、すなわち、調節要素の基準動作が、オペレータ制御スイッチをトリガーにして始動されるステップと、調節要素が端点まで移動し、ECモータがスイッチオフされるステップと、オペレータ制御スイッチが、最も近い端部ストッパーの方向に少なくとも1回作動されるステップとによって規定される。調節要素は、機械式端部ストッパーまで移動し、この結果、ECモータが移動し、ECモータの回転方向が変更され、調節要素が該当距離だけ移動し、第1の端点が記憶され、第2の端点が調節行程に基づいて計算されて記憶され、捕捉領域が端点に割り当てられて記憶され、基準動作が終了する。このことにより、同様に一つの機械式端部ストッパーのみが使用される簡単な再標準化方法が提供される。
【0008】
本発明の例示的な実施形態について図面に示し、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】複数の調節装置を有する自動車の座席の図面である。
【図2】制御ユニットに記憶されるパラメータによって自動車の座席を長手方向に調節するための本発明による調節装置の案内要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、5つの調節装置、すなわち、長手方向調節装置4、垂直方向調節装置6、背もたれ調節装置8、ヘッドレスト調節装置10及びシートベルト調節装置12を有する認可された自動車の座席2を示している。各調節装置はECモータ14を有する。長手方向調節装置4を参照して、本発明について以下により詳細に説明する。
【0011】
図2は、調節要素18が移動可能に配置される固定された案内要素16の概略図である。調節要素18は、公知のように、位置を決定するための基準要素20を有する。制御ユニット及び作動手段を有するECモータ14(より詳細には図示せず)は、この場合、調節要素18を駆動する。
【0012】
本例では、案内要素16は、1つのみの機械式端部ストッパー22を有する。さらに、基準データ、具体的には、第1の端点24及び第2の端点26、第1の捕捉領域28及び第2の捕捉領域30、調節行程32及び端部距離34は、この機械式端部ストッパー22の関数として提供される。通常のカスタマー運転モードでは、長手方向調節装置4の調節要素18をその基準要素20と共に、第1の端点24と第2の端点26との間で、すなわち調節行程32に沿ってのみ移動させることができる。機械式端部ストッパー22は負荷を受けず、したがって、簡単かつ軽量の設計であることができる。本発明の例示的な実施形態では、調節要素18、したがって基準要素20が捕捉領域34に配置されるときに、ECモータ14を端点26の方向にのみ始動させることができるように作動手段が構成される。調節要素18及びその基準要素20が捕捉領域30に配置されるとしても、ECモータ14を端点24の方向にのみ始動させることが可能である。これに関連して、調節要素18を移動させるための作動力又は作動トルクを規定可能な値に制限するために、捕捉領域28、30内でECモータ14の動力が制限されるように作動手段が構成されるのも特に有利である。
【0013】
基準データが調節装置4の制御ユニット(図示せず)に未だ記憶されていない場合、本例では、動力制限が規定されるので、速度を制限してのみ調節要素18を動作させることができることが意図される。この動力制限は10%〜80%であることができる。長手方向調節装置4は以下のように標準化される。基準動作のために、第一に、基準モードが制御ユニットで選択され、ECモータ14の回転方向が基準動作のために規定されて記憶され、調節要素18の調節行程32が規定されて記憶され、機械式端部ストッパー22に対する隣接する端点24の端部距離34が規定されて記憶され、捕捉領域28と30が規定されて記憶される。調節要素18及び/又は基準要素20の基準動作は、オペレータ制御スイッチをトリガーとすることによって始動される。次に、調節要素18が基準要素20と共に機械式端部ストッパー22まで移動し、この結果、ECモータ14が遮断される。その後、ECモータ14の回転方向が変更される。次に、調節要素18が端部距離34だけ移動する。それで、基準要素20が第1の端点24にくる。この第1の端点24が記憶される。同様に、第2の端点26が、以前に規定された調節行程32を加えることによって計算されて記憶される。捕捉領域28と30はそれぞれの端点24と26に割り当てられて記憶される。その後、基準動作が終了する。そして、長手方向調節装置4が標準化される。有利な一実施形態では、機械式端部ストッパー22の負荷をさらに低減するために、基準動作中に機械式端部ストッパー22に達することに対する動力制限を規定することも可能である。
【0014】
長手方向調節装置4の再標準化の場合、以下のように進めることが可能である。調節要素4の基準動作が、オペレータ制御スイッチをトリガーとすることによって再始動される。次に、調節要素18が基準要素20と共に端点24まで移動し、ECモータ14がスイッチオフされる。次に、オペレータ制御スイッチが、最も近い端部ストッパー22の方向に少なくとも1回作動される。次に、基準要素20の調節要素18が機械式端部ストッパー22まで移動し、この結果、ECモータ14が遮断される。次に、ECモータ14の回転方向が変更される。次に、調節要素18が端部距離34だけ移動し、この結果、次に基準要素20が第1の端点24に到達する。次に、この端点24が記憶され、第2の端点26が調節行程32に基づいて再計算され、また記憶される。その後、捕捉領域28と30がそれぞれの端点24、26に割り当てられて記憶される。その後、基準動作を終了することができる。
【符号の説明】
【0015】
14 ECモータ
16 案内要素
18 調節要素
20 基準要素
22 機械式端部ストッパー
24 第1の端点
26 第2の端点
28 第1の捕捉領域
30 第2の捕捉領域
32 調節行程
34 端部距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車分野の調節装置であって、固定された案内要素(16)と、前記固定された案内要素(16)に対して移動可能に配置されかつ基準要素(20)を有する調節要素(18)とを有し、調節行程(32)内で前記調節要素(18)を駆動するECモータ(14)を有し、及び前記ECモータ(14)用の制御手段を有する制御ユニットを有し、前記調節行程(32)が、第1及び第2の捕捉領域(28、30)内にそれぞれ配置される第1及び第2の端点(24、26)によって境界付けられる調節装置において、前記調節行程(32)の外側に配置される少なくとも1つの機械式端部ストッパー(22)が設けられることを特徴とする調節装置。
【請求項2】
前記調節要素(18)の前記基準要素(20)が捕捉領域(28、30)に配置される場合、前記ECモータ(14)を前記反対側の端点(24、26)の方向にのみ始動させることが可能であるように作動手段が構成されることを特徴とする、請求項1に記載の調節装置。
【請求項3】
前記ECモータ(14)の動力制限が前記調節領域(32)内で行われるように前記作動手段が構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の調節装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の、基準データが記憶されていない、調節装置を標準化するための方法において、以下のステップ、すなわち、
−基準モードが前記制御ユニットで選択されるステップと、
−前記ECモータ(14)の回転方向、前記調節要素の前記調節行程(32)、前記機械式端部ストッパー(22)からの前記隣接する端点(24)の端部距離(34)、及び前記端点(24、26)用の前記捕捉領域(28、30)が、前記基準動作のために規定されて記憶されるステップと、
−前記調節要素(18)の基準動作が、オペレータ制御スイッチをトリガーとすることによって始動されるステップと、
−前記調節要素(18)が前記基準要素(20)と共に前記機械式端部ストッパー(22)まで移動し、この結果、前記ECモータ(14)が遮断されるステップと、
−前記ECモータ(14)の回転方向が変更されるステップと、
−前記調節要素(18)が前記端部距離(34)だけ移動するステップと、
−前記第1の端点(24)が記憶されるステップと、
−前記第2の端点(26)が前記調節行程に基づいて計算されて記憶されるステップと、
−前記捕捉領域(28、30)が前記端点(24、26)に割り当てられて記憶されるステップと、
−前記基準動作が終了するステップと、
を特徴とする方法。
【請求項5】
基準データが記憶されていない場合、前記基準動作全体のための第1の動力制限が規定されることを特徴とする、請求項4に記載の調節装置を標準化するための方法。
【請求項6】
前記機械式端部ストッパー(22)に達することに対して第2の動力制限が規定されることを特徴とする、請求項5に記載の調節装置を標準化するための方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の、基準データが記憶される、調節装置を再標準化するための方法において、以下のステップ、すなわち、
−前記調節要素の前記基準動作が、オペレータ制御スイッチをトリガーとすることによって始動されるステップと、
−前記調節要素(18)が前記基準要素(20)と共に前記端点(24)まで移動し、前記ECモータ(14)がスイッチオフされるステップと、
−前記オペレータ制御スイッチが、前記最も近い端部ストッパー(22)の方向に少なくとも1回作動されるステップと、
−前記調節要素(18)が前記基準要素と共に前記機械式端部ストッパー(22)まで移動し、この結果、前記ECモータ(14)が遮断されるステップと、
−前記ECモータ(14)の回転方向が変更されるステップと、
−前記調節要素(18)が前記端部距離(34)だけ移動するステップと、
−前記第1の端点(24)が記憶されるステップと、
−前記第2の端点(26)が前記調節行程(32)に基づいて計算されて記憶されるステップと、
−前記捕捉領域(28、30)が前記端点(24、26)に割り当てられて記憶されるステップと、
−前記基準動作が終了するステップと、
を特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−1395(P2013−1395A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−134557(P2012−134557)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】