説明

調量装置

液状の燃料のための調量装置(1)、特に水素を得るための化学的な改質器または熱を発生させるための後燃焼装置に供給するための調量装置(1)であって、燃料を調量管路(8)に調量するための少なくとも1つの調量部(2)が設けられており、調量管路(8)に接続するノズル体(7)が設けられており、該ノズル体(7)が、少なくとも1つの噴射開口(14)を備えており、該噴射開口(14)が、調量室に開口している形式のものにおいて、ノズル体(7)が、噴射孔付インサート(11)を備えており、該噴射孔付インサート(11)に、少なくとも1つの噴射開口(14)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の形式の調量装置から出発する。
【0002】
背景技術
燃焼電池により支持された搬送系では、炭化水素を含有する燃料、たとえばガソリン、エタノールまたはメタノールから必要な水素を得るために、いわゆる化学的な改質器が使用される。特に冷間始動段階での発熱のために、後燃焼装置が使用される。
【0003】
改質器による反応経過のために必要な全ての物質、たとえば空気、水および燃料は、理想的にはガス状または少なくとも噴霧された状態で反応領域に供給される。しかしながら燃料(たとえばメタノールまたはガソリン)および水は、搬送系において、有利には液状で処理されるので、改質器の反応領域または後燃焼装置に到達する直前に準備する必要がある。このことによって、たとえば適量の燃料または別の物質を微細に噴霧することのできる調量装置を提供する必要がある。
【0004】
たとえば米国特許第3971847号明細書から、改質器に燃料を調量供給するための装置が公知である。ここでは燃料は、改質器から比較的遠くに離れた調量部によって、長い供給管路と簡単な形式のノズルとを介して、温度調節された物質流に調量される。この場合燃料は、先ず、燃料を渦動して燃料を配分しようとするノズルの流出開口の下流側に配置された衝突薄板に衝突し、次いで蒸発プロセスにとって必要な比較的長い蒸発区間を介して、改質器の反応領域に到達する。長い供給管路によって、調量装置は、改質器の熱作用から絶縁することができる。
【0005】
前掲米国特許第3971847号明細書から公知の装置の欠点によれば、特に、改質器の運転温度を下回る温度で、たとえば冷間始動段階で、燃料の噴霧が不十分にしか行われず、調量装置が極めて手間の掛かる形式で大容量に形成されている。この場合に生じる、燃料と酸化剤との間の比較的小さな反応面によって、燃料もしくは化学反応は、ゆっくりにしか行われず、多くの場合不完全である。これにより効率は大幅に低下して、有害物質エミッションは不都合に増加する。不完全な燃焼もしくは不完全な化学反応によって、多くの場合、化学的な改質器もしくは後燃焼装置を破損する恐れのある攻撃性の化合物が形成され、また機能を損なう恐れのある堆積物が形成される。噴霧の行われるノズル領域における、手間の掛かる大容量の構造によって、特に不良の組付易さおよび比較的高い欠陥発生率に基づいて、高い製作コストおよび運転コストがもたらされる。
【0006】
発明の利点
これに対して、本発明による、独立請求項の特徴部に記載の構成を備えた調量装置の有する利点によれば、燃料もしくは燃料−ガス−混合物の噴霧および分配が大幅に改善される。これによってたとえば冷間始動段階は大幅に短縮することができ、冷間始動段階の間に、既に後燃焼装置もしくは化学的な改質器の効率は大幅に向上することができる。ここでは有害物質エミッションは大幅に低減されている。本発明による調量装置によって、調量装置は、極めて簡単かつ精確に、ひいては廉価に製作することができる。さらにまたたとえば公知の燃料噴射弁の大量生産から、大量生産で規格化して製作された構成部材を使用することができる。
【0007】
従属請求項に記載の構成によって、独立請求項に記載の調量装置の有利な実施形態が得られる。
【0008】
本発明による調量装置の1実施形態では、噴射孔付インサートが、噴射孔付ディスクとして形成されている。
【0009】
別の有利な実施形態では、ノズル体が管状に、特に円筒管状に成形されている。これによってノズル体は、たとえば規格化された特殊金属管から、または別の規格化された半製品から、特に簡単に、ひいては経済的に製作することができる。
【0010】
また有利には、ノズル体が、複数部分から、特に管状の支持エレメントと管状の供給管とから成っており、これらの支持エレメントと供給管とは、管状の中間エレメントを介して液密に結合されている。ノズル体の構成部分は、様々な負荷および条件に簡単かつ経済的に適合させることができる。
【0011】
有利には、管状の支持エレメントの噴射側で、リング状の座着エレメントが配置されており、噴射方向でみて座着エレメントの下流側に位置する、噴射開口の設けられた噴射孔付インサートが配置されている。これによってノズル体の噴射側の部分は、特に簡単に製作することができ、これによって特に、燃料噴射弁の大量生産から既知であるノズル体を、僅かなまたは小さな変更で使用することもできる。
【0012】
さらに有利には、着座エレメントおよび噴射孔付インサートを外周面で、支持エレメントと、プレス嵌めまたは溶接、特にレーザ溶接によって液密に接合することができる。これによって接合箇所を、その都度の要求に簡単に適合させることができる。
【0013】
有利には、調量管路と調量部とが、アダプタによって液密で着脱可能に結合されている。これによって組付易さが向上する。
【0014】
有利な実施形態では、調量管路と調量部とを結合するアダプタが、給気部を備えており、この場合給気部はアダプタ内で調量管路と結合されている。これによって既に供給路において混合気を導入することができ、ここでは供給管路に調量された燃料およびまたは調量されたガスは、空気と混合される。これによって燃料および/または調量されたガスの混合気形成および噴霧は、全体的に改善される。
【0015】
有利には、調量部として、たとえば往復動内燃機関のために使用される燃料噴射弁が使用される。そのような弁の使用によって多くの利点が得られる。つまりこのような弁によって、燃料配量の、特に精確な開ループ制御もしくは閉ループ制御が許容され、この場合配量は、複数のパラメータ、たとえば衝撃係数、クロック周波数および場合によってはストローク長さに関して制御することができる。この場合ポンプ圧に関する依存性は、管路横断面を介して燃料の体積流量を制御する調量部の場合と比べてそれ程大きく現れることはなく、調量範囲は著しく大きくなっている。
【0016】
さらに燃料噴射弁は、多面的に実証されていて、その挙動については既知であり、経済的で、使用される燃料に対して化学的に安定していて、かつ信頼性の高い構成部材であり、ここではこのようなことは、特に、調量管路による熱的な分離に基づいて良好に使用可能である、いわゆる低圧燃料噴射弁に当てはまる。
【0017】
供給管路は、有利には壁厚の低減された複数の箇所を有しており、これらの箇所は、供給管路の熱伝導性を低下するか、もしくは冷却体として作用することができる。
【0018】
調量装置の複数部分から成る構成によって、経済的な製作と、規格化された構成部材の使用とが実現される。
【0019】
実施例の説明
次に本発明の実施例を図示し、詳しく説明する。
【0020】
図1に示した、本発明による調量装置1の実施例は、低圧燃料噴射弁に利用するための調量装置1の構成を有している。調量装置1は、特に、水素を得るための、図示していない化学的な改質器または熱を発生させるための図示していない後燃焼装置の、図示していない調量室に、燃料もしくは燃料−ガス−混合気を供給して噴霧するのに適しており、ここでは図示していない調量室の内壁に燃料が湿潤するのを部分的または完全に防止することができる。
【0021】
調量装置1は、本実施例では低圧燃料噴射弁として形成された調量部分2と、調量部2と管状でたとえば10〜100cmの長さを有する調量管路8とを収容するためのアダプタ6と、給気部9と、ノズル体7とから成っている。調量部2は、管状に形成されていて、かつ上側で燃料接続部13を備えている。側方で調量部2は電気接続部5を備えている。調量部2の下側で、調量管路8への燃料または燃料−ガス−混合気の調量が行われ、ここではアダプタ6は、調量部2と調量管路8とを、外部に対して互いに液密に結合する。管状の給気部9は、アダプタ6に通じていて、したがって供給管路8と結合されている。
【0022】
ノズル体7の、調量管路8に向いた側の中空円筒形に成形された端部は、中空円筒形に成形された第1の結合エレメント10.1を介して調量管路8と液密に結合されている。調量管路8自体は、たとえば規格化された、特殊鋼から成る金属管から形成されている。本実施例では、調量管路8は2部分から形成されており、ここでは調量管路8の、アダプタ6に向いた部分は、第2の結合エレメント10.2を介して、調量管路8の、ノズル体7に向いた部分と結合されている。調量部2の下位部分は、アダプタ6に入り込んでいて、かつクランプの構成をした固定エレメント3によって、アダプタ6と液密に結合されている。
【0023】
ノズル体7は、調量管路8の噴射側とは反対側の端部で、図2に示したリング状の座着エレメント4と、少なくとも1つの噴射開口14を有する、噴射方向でみて下流側の噴射孔付インサート11とを備えている。
【0024】
調量部2の上側に位置する燃料接続部13を介して、調量部2に燃料、たとえばガソリン、エタノールまたはメタノールが、図示していない燃料ポンプと燃料管路とによって圧力下で供給される。燃料は、調量装置1の運転時に下向きに流れ、調量部2の下位端部に位置する、図示していないシール座を通って、公知の形式で、シール座の開閉によって供給管路8に調量される。調量部2の直ぐ横でアダプタ6を介して調量管路8に通じる給気部9によって、混合気形成のために、空気または別のガス、たとえば改質プロセスまたは燃料電池プロセスからの可燃性の残留ガスを供給することができる。後続の経過で、燃料もしくは燃料−ガス−混合気は、供給管路8を通ってノズル体7に流れて、そこで図2に示した噴射開口14を通って図示していない調量室に調量される。
【0025】
調量管路8によって、調量部2、特に調量部2の、高温および大きな温度変動に関して敏感な図示していないシール座は、たとえば500度である図示していない調量室における温度から熱的に分離される。調量管路8の長さ、材料および形状は、特に熱的かつ空間的な状況に応じて選択される。有利には調量管路8は、壁厚の減少された箇所を有することができ、壁厚の減少された箇所は、熱絶縁に寄与するか、または冷却体として作用させることができる。
【0026】
図2には、第1実施例のノズル体7を概略的な断面図で示した。
【0027】
ノズル体7は、支持エレメント15と、供給管17と、支持エレメント15と供給管17とを液密に結合する中間エレメント16とから成っている。これら3つの構成部材15,17,16は、それぞれ中空円筒形に成形されていて、かつ金属から成っている。
【0028】
第1の結合エレメント10.1によって図1に示した供給管路8と結合された供給管17は、第1の結合エレメント10.1とは反対側の端部で、中間エレメント16の、結合エレメント10.1に向いた側の端部によって包囲される。支持エレメント15は、中間エレメント16に向いた側の端部で、中間エレメント16の、支持エレメント15に向いた側の端部を包囲している。中間エレメント16は、支持エレメント15および供給管路17と、プレス嵌め、ろう接または溶接、特にレーザ溶接によって、液密に接合されている。結合は、ねじ結合によって実現することもできる。
【0029】
支持エレメント15の、中間エレメント16とは反対の噴射側の端部に、リング状の座着エレメント4と、座着エレメント4よりも噴射側に配置された噴射孔付インサート11とが設けられており、噴射孔付インサート11は、本実施例では、噴射孔付ディスク12として形成されている。支持エレメント15、座着エレメント4および噴射孔付ディスク12の配置構造は、自動車分野の、往復動内燃機関から公知のような、燃料噴射弁の、噴射側の構造に類似するかまたは相当する。しかしながらそこで用いられる、噴射側で座着エレメント4によってシール座を形成することになる弁閉鎖体を備えた弁ニードルは設けられていない。
【0030】
有利には、このような配置構造は、経済的で、かつ本発明によるノズル体7として利用することができる。したがって特にノズル体7のために、既に大量生産で製作された、簡単に提供可能でひいては経済的な多数の噴射孔付ディスクまたは段付ディスクが提供される。噴射孔付ディスクもしくは段付ディスクにおける噴射開口14の配置構造によって、発生する燃料クラウドは、その形状および広がりにおいて有利な形式で影響を及ぼして、渦流で負荷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による調量装置の第1実施例を概略的に示す図である。
【図2】第1実施例のノズル体を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 調量装置、 2 調量部、 3 固定エレメント、 4 座着エレメント、 5 電気接続部、 6 アダプタ、 7 ノズル体、 8 調量管路、 9 給気部、 10.1,10.2 結合エレメント、 11 噴射孔付インサート、 12 噴射孔付ディスク、 13 燃料接続部、 14 噴射開口、 15 支持エレメント、 16 中間エレメント、 17 供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の燃料のための調量装置(1)、特に水素を得るための化学的な改質器または熱を発生させるための後燃焼装置に供給するための調量装置(1)であって、
燃料を調量管路(8)に調量するための少なくとも1つの調量部(2)が設けられており、調量管路(8)に接続するノズル体(7)が設けられており、該ノズル体(7)が、少なくとも1つの噴射開口(14)を備えており、該噴射開口(14)が、調量室に開口している形式のものにおいて、
ノズル体(7)が、噴射孔付インサート(11)を備えており、該噴射孔付インサート(11)に、少なくとも1つの噴射開口(14)が配置されていることを特徴とする、調量装置。
【請求項2】
噴射孔付インサート(11)が、噴射孔付ディスク(12)として形成されている、請求項1記載の調量装置。
【請求項3】
ノズル体(7)が、管状、特に円筒管状に形成されている、請求項1または2記載の調量装置。
【請求項4】
ノズル体(7)が、管状の支持エレメント(15)と、管状の供給管(17)とから成っており、これらの支持エレメント(15)と管状の供給管(17)とが、管状の中間エレメント(16)を介して液密に結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の調量装置。
【請求項5】
管状の支持エレメント(15)の噴射側で、リング状の座着エレメント(4)が配置されており、噴射方向でみて座着エレメント(4)の下流側に、噴射開口(14)を備えた噴射孔付インサート(11)が配置されている、請求項4記載の調量装置。
【請求項6】
座着エレメント(4)と噴射孔付インサート(11)とが、外周面で、支持エレメント(15)と、特にプレス嵌めまたは溶接、特にレーザ溶接によって液密に接合されている、請求項5記載の調量装置。
【請求項7】
調量管路(8)と調量部(2)とが、アダプタ(6)によって、液密で着脱可能に接合されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の調量装置。
【請求項8】
アダプタ(6)が、給気部(9)を備えており、該給気部(9)が、アダプタ(6)内で調量管路(8)と結合されている、請求項7記載の調量装置。
【請求項9】
調量部(2)が、燃料噴射弁である、請求項1から8までのいずれか1項記載の調量装置。
【請求項10】
燃料噴射弁が、低圧燃料噴射弁であり、該低圧燃料噴射弁が、10barまでの燃焼圧もしくは燃料圧で作動するようになっている、請求項1から9までのいずれか1項記載の調量装置。
【請求項11】
調量管路(8)が、軸方向延伸部で、少なくとも1つの壁厚の低減された箇所または壁厚の低減された領域を備えている、請求項1から10までのいずれか1項記載の調量装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−504611(P2006−504611A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549048(P2004−549048)
【出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003070
【国際公開番号】WO2004/041422
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】