識別情報付シートおよびその製造方法
【課題】本発明は、物品への固着を容易に行うことが可能であり、識別情報の位置や数を把握しやすく、識別情報の認識を容易にかつ正確に行うことができる識別情報付シート、および上記識別情報付シートを容易に製造することが可能な識別情報付シートの製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】基底部と、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の凸部または凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とする識別情報付シートを提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】基底部と、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の凸部または凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とする識別情報付シートを提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の任意の位置に識別情報を配置可能であり、かつ容易に真贋判定を行うことが可能な識別情報付シート、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷技術の発達により、高精細な印刷が可能となったことから、クレジットカード、有価証券類、各種証明書等の物品についての偽造が懸念されており、偽造を防止するための偽造防止技術の開発が推奨されている。
【0003】
このような偽造防止技術としては、例えば透かし模様、ホログラム等の偽造防止手段を挙げることができる。これらの偽造防止手段は目視により認証を行うことが可能であるため、認証を容易に行うことができるといった利点を有する。しかしながら、より高いセキュリティ性を必要とする物品に対する偽造防止機能としては不十分な場合があるといった問題があった。
【0004】
そこで、目視ではなく、ルーペ、顕微鏡等の拡大手段を用いて観察することにより認証を行う偽造防止技術が注目されている(例えば特許文献1〜4)。このような偽造防止技術は、物品を一見するだけでは、その物品に偽造防止技術が付されていることを認識することができないため、目視により認識可能な偽造防止技術に比べて、より高い偽造防止機能を発揮することが可能となる。
このような偽造防止技術の1つとして、タガントを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。ここで、タガントとは、例えば表面にμオーダーで表示された文字、記号、柄等を有する粒子状の構造物や、特異な形状を有する粒子状の構造物、紫外線等を照射することにより発色する粒子状の構造物等の識別情報を有する粒子状の構造物を指すものであり、タガントが有する識別情報をルーペ等で観察することにより真贋判定が行われるものである。また上述したタガントは、通常、液状の樹脂塗工液やインキ中に混在させ、上記樹脂塗工液やインキを物品に塗布したり、フィルム化することにより上述した物品に固着されるものである。
【0005】
しかしながら、上記タガントを用いる偽造防止技術においては、物品に付された樹脂塗工液やインキ中に存在するタガントの数にバラツキが生じやすいため、タガントの数が少ない場合は、真贋判定を行うことが困難となる場合や、タガントの存在位置を特定するために多くの時間がかかり、真贋判定に時間が多くかかるといった問題があった。
また、タガントは通常、液状の樹脂塗工液やインキ中ではあらゆる方向に分散するものであることから、例えばタガントの一部に文字等が表示されているものを用いた場合においては、必ずしもタガントの表示面が観察者側を向いて物品に固着されるとは限らず、タガントの表示面が観察者側とは反対側に配置されてしまう場合も考えられる。このように、タガントを用いる偽造防止技術においては、タガントが粒子状構造物であるため、その制御が難しいといった問題があった。
【0006】
そこで、偽造防止技術の分野においては、物品へ固着する際の扱いが容易であり、偽造防止機能が高く、かつ真贋判定や物品の認証を容易に、かつ正確に行うことが可能な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3665282号公報
【特許文献2】特開2003−274834号公報
【特許文献3】特開2001−288698号公報
【特許文献4】特開2009−193069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、物品への固着を容易に行うことが可能であり、識別情報の位置や数を把握しやすく、識別情報の認識を容易にかつ正確に行うことができる識別情報付シート、および上記識別情報付シートを容易に製造することが可能な識別情報付シートの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、基底部と、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の上記凸部または上記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とする識別情報付シートを提供する。
【0010】
本発明によれば、識別部を有することにより、一定の面積を有する識別部に含まれる識別情報の数および位置を予め決めることができるため、識別情報の認識を容易に行うことが可能な識別情報付シートとすることができる。よって、本発明の識別情報付シートを固着した物品の真贋判定を短時間で正確に行うことが可能となる。
【0011】
本発明においては、上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することが好ましい。上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することで、識別情報付シートに種々の識別情報を付与することができるため、識別情報付シートの偽造防止機能を向上させることが可能となるからである。
【0012】
本発明においては、上記識別情報付シートの上記識別部側に金属層が形成されていることが好ましい。本発明においては、金属層が形成されていることにより、識別部に形成されている凸部や凹部が有する識別情報の視認性を向上させることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記識別情報付シートの少なくとも一方の表面に粘着層が形成されていることが好ましい。粘着層を有することにより、上記識別情報付シートを容易に物品に貼付することが可能となるからである。
【0014】
本発明は、基底部と、上記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察可能な凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の上記凸部または上記凹部は、形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する識別情報付シートを製造する識別情報付シートの製造方法であって、基体表面に、上記識別部の上記凹凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する原版形成工程と、樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する識別情報付シート形成用層準備工程と、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に上記識別部の上記凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、上記識別情報付シート形成用層から上記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する固化・剥離工程とを有することを特徴とする識別情報付シートの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、上述した構成を有する識別情報付シートを精度よく、かつ簡便な方法で製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、上記識別情報付シート形成用層は紫外線硬化性樹脂を含むことが好ましい。識別情報付シート形成用層が紫外線硬化性樹脂を含むことにより、賦型される識別部の凸部や凹部の立体形状が複雑な場合であっても高精細な識別情報付シートを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の識別情報付シートは、物品への固着を容易に行うことが可能であり、識別情報の位置や数を把握しやすく、識別情報の認識を容易にかつ正確に行うことができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の識別情報付シートの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略平面図である。
【図5】本発明における識別部の凸部または凹部に用いられる立体形状の概略図である。
【図6】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図7】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図8】本発明の識別情報付シートの識別部に用いられる識別情報を例示した模式図である。
【図9】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図10】本発明の識別情報付シートの識別部に用いられる識別情報を例示した模式図である。
【図11】本発明の識別情報付シートを用いたカードの一例を示す概略図である。
【図12】本発明の識別情報付シートの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の識別情報付シート、およびその製造方法について説明する。
【0020】
A.識別情報付シート
まず、本発明の識別情報付シートについて説明する。
本発明の識別情報付シートは、基底部と、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の上記凸部または上記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とするものである。
【0021】
ここで、本発明において「凸部」とは、識別部側表面の識別情報を有さない部分に対して凸形状である部分を指す。また、「凹部」とは、識別部側表面の識別情報を有さない部分に対して凹形状である部分を指す。
【0022】
また、「凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状」とは、上記凸部または上記凹部が形成されてなる形状を指す。
【0023】
またここで、「識別部が凹凸形状を有する」とは、識別部が1つの凹凸形状を有する場合だけではなく、複数の凹凸形状を有する場合を含む概念である。
また、「複数の凹凸形状」とは、上記凸部が複数形成されてなる凹凸形状、上記凹部が複数形成されてなる凹凸形状、凸部および凹部が形成されてなる凹凸形状を指す。
【0024】
また、本発明において「拡大することにより観察可能である」とは、目視では観察することが困難であり、拡大手段を用いて拡大した場合に観察することができることを指す。
また、本発明において「形状に基づいて識別することが可能な識別情報」とは、固有の形状を有する情報を指すものであり、例えば色彩等の無形の情報のみからなる情報を含まないものとする。
【0025】
ここで、本発明の識別情報付シートについて図を用いて説明する。図1(a)は本発明の識別情報付シートの一例を示す概略図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。図1(a)、(b)に示すように、本発明の識別情報付シート10は、基底部11と、基底部11上に形成された凸部12aを備える複数の凹凸形状を有する識別部12とを有し、各々の凸部12aは、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報Sを有するものである。なお、図1(a)、(b)においては、凸部12aの立体形状s1が直方体であることを識別情報Sとして有する例について示している。
【0026】
また、図2(a)は、本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図であり、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。図2(a)、(b)においては、識別部12が複数の凹部12bを備える複数の凹凸形状を有するものであり、凹部12bの立体形状s2が直方体であることを識別情報Sとして有する例について示している。なお、図2において説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0027】
本発明によれば、識別部を有することにより、一定の面積を有する識別部に含まれる識別情報の数および位置を予め決めることができるため、識別情報の認識を容易に行うことが可能な識別情報付シートとすることができる。よって、本発明の識別情報付シートを固着した物品の真贋判定を短時間で正確に行うことが可能となる。
【0028】
以下、本発明の識別情報付シートの構成について説明する。
【0029】
1.識別部
本発明における識別部は、基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有し、各々の上記凸部または上記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有するものである。
【0030】
(1)識別情報の種類
まず、本発明に用いられる識別情報について説明する。本発明における識別情報は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な情報、すなわち拡大手段を用いて拡大した場合に観察することが可能であり、かつ固有の形状を有する情報である。
【0031】
なお、拡大手段とは、識別情報を拡大観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばルーペ等の簡易拡大鏡、顕微鏡、CCDカメラを用いたコンピュータソフトウェアによる拡大画像表示等が挙げることができる。
【0032】
識別情報の大きさとしては、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。識別情報が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、識別情報が小さすぎると、各々の凸部または凹部に所望の識別情報を付与することが困難となったり、簡易拡大鏡での観察が難しく、顕微鏡等を用いることが必要となり、容易に真贋判定することが困難になったりする場合があるからである。
【0033】
このような識別情報としては、上述した大きさを有し、識別部における各々の凸部または凹部に付与することが可能であれば特に限定されるものではなく、具体的には、凸部または凹部の立体形状と、凸部または凹部の一部に表示される印(しるし)と、2種類以上の識別情報を組み合わせることによる組み合わせ情報とを挙げることができる。
以下、それぞれについて説明する。
【0034】
(a)凸部または凹部の立体形状
本発明における凸部または凹部の立体形状は、拡大して観察することで識別可能なものであり、基底部表面に形成可能な立体形状であれば特に限定されるものではない。ここで、本発明における各々の凸部または凹部は基底部表面に形成されるものであることから、凸部または凹部の立体形状は少なくとも基底部側の面(以下、基底部面と称して説明する場合がある。)に平面を有するものである。
なお、「基底部面に平面を有する」とは、図1(b)および図2(b)に示すように、凸部12aまたは凹部12bにおいて二点鎖線で示される部分が平面であることを指す。
【0035】
このような凸部または凹部の立体形状s1、s2としては、例えば、図1(b)、図2(b)に示すように、凸部12a表面または凹部12b底面が平坦となる柱体、図3(a)、(b)に示すように、凸部12a表面または凹部12b底面が尖っている錐形体等を挙げることができる。なお、図3(a)、(b)は本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0036】
立体形状が柱体や錐形体である場合の平面視上の形状としては、三角形、四角形等の多角形、円、楕円等の幾何学形状の他、文字、数字、符号、標章等の記号等を挙げることができる。
【0037】
また、本発明においては、凸部または凹部の立体形状s1、s2として、図4(a)、(b)に示すように、凸部上面または凹部底面が少なくとも曲面を有する立体形状(以下、曲面立体形状と称して説明する場合がある。)を用いることも可能である。なお、図4(a)、(b)は本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0038】
ここで、曲面立体形状について図を用いて説明する。
図5(a)、(b)は凸部または凹部に用いられる曲面立体形状の一例を示す模式図であり、図5(a)は凸部上面または凹部底面側からみた図、図5(b)は図5(a)のC−C線断面図である。図5(a)、(b)に示す曲面立体形状s(ティーポット)は、凸部上面または凹部底面t1および基底部面t2を有し、凸部上面または凹部底面t1が曲面で構成されているものである。
【0039】
曲面立体形状が少なくとも曲面を有することは、反射特性を測定することにより確認することができる。平面は法線方向が一つであるのに対して、曲面は法線方向が場所によって異なる。そのため、平面と曲面とでは反射光の明暗が異なる。また、平面と曲面とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
また、具体的に曲面立体形状が曲面を有することは、破壊式または非破壊式の検査方法によって確認することができる。
上記破壊式の検査方法としては、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等によりシートを切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する方法が挙げられる。
一方、非破壊式の検査方法としては、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する方法が挙げられる。接触式の形状測定においては、例えば針をシートに接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定機を用いることができる。非接触式の形状測定においては、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型などの等光路干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いることができる。
【0040】
曲面立体形状としては、凸部上面または凹部底面が少なくとも曲面を有していればよく、凸部上面または凹部底面が曲面のみを有していてもよく、凸部上面または凹部底面が曲面および平面を有するものであってもよい。なかでも凸部上面または凹部底面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましく、75%以上が曲面で構成されていることがより好ましい。凸部上面または凹部底面での曲面の割合が多いほど、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
なお、上記曲面の割合は、上述の破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することが可能である。
【0041】
また、曲面立体形状は、図5(b)に示すように、少なくとも、凸部上面または凹部底面t1と基底部面t2とを有していればよく、凸部上面または凹部底面、基底部面、および側面を有していてもよい。
【0042】
このような曲面立体形状としては、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の立体形状とすることができる。
【0043】
本発明においては、上述した柱体、錐体、および曲面立体形状を組み合わせた立体形状を用いることもできる。
【0044】
立体形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。立体形状が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあり、また立体形状が小さすぎると、簡易拡大鏡での観察が難しく、顕微鏡等を用いることが必要となり、容易に真贋判定することが困難になる場合があるからである。
【0045】
これらの立体形状は、本発明の識別情報付シートの用途等に合わせた形状とすることができ、また所定の意味を表現する形状とすることもできる。
【0046】
(b)印
印は、凸部または凹部の一部に表示されるものである。
【0047】
印の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。印が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあり、また印が小さすぎると、簡易拡大鏡での観察が難しく、顕微鏡等を用いることが必要となり、容易に真贋判定することが困難になる場合があるからである。
【0048】
印としては、例えば、文字、数字、符号、標章等の記号等が挙げられる。これらの印は、本発明の識別情報付シートの用途等に合わせた印とすることができ、所定の意味を表現する印とすることができる。
【0049】
このような印の形成方法としては、凸部または凹部の一部に所望の印を形成することができる方法であれば特に限定されない。例えば、印刷法を用いて凸部または凹部の一部に印を形成する方法、凸部または凹部の一部に賦型することにより印を形成する方法、凸部または凹部を形成する際に同時に印を形成する方法等を挙げることができる。
【0050】
印を印刷法により形成する場合、用いられるインクとしては一般的な印刷法に用いられるインクと同様とすることができる。また、上記インクに紫外線発光材料、赤外線発光材料、および量子ドット材料等を含有させて用いてもよい。発光により印の識別が可能であり、真贋判定をさらに容易に行うことができるからである。なお、上述した材料については、後述する「識別材料シートの材料」の項で説明するものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0051】
(c)組み合わせ情報
本発明においては、2種類以上の識別情報を組み合わせることによる組み合わせ情報を識別情報として用いることができる。組み合わせ情報としては、具体的には、図6に示すように2種類以上の凸部または凹部の立体形状(図6では凸部12aの立体形状が円柱s11と直方体s12)、図7に例示するような凸部12aと凹部12b、図8(a)に例示するような凸部または凹部の大小関係、図8(b)に例示するような2種類以上の印(図8(b)では「A」,「B」、および「C」)、図8(c)に例示するような印の大小関係、図8(d)に例示するような印の有無、さらに凸部または凹部の立体形状と付される印との組み合わせ等の異なる2種類以上の識別情報の組み合わせ等を挙げることができる。なお、図6、図7は本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。図8は本発明に用いられる識別情報の例の模式図である。また、凸部または凹部の立体形状については平面四角形状で示している。
【0052】
(2)識別部の形態
次に本発明における識別部の表示形態について説明する。
【0053】
本発明における識別部は少なくとも1つの凹凸形状、すなわち1つの凹部または1つの凸部を有するものであってもよく、複数の凹凸形状、すなわち複数の凸部もしくは複数凹部、または凸部および凹部を有するものであってもよい。
【0054】
また、識別部が複数の凹凸形状を有する場合、識別部における各々の凸部または凹部は、図1(a)、図2(a)に示すように同一の立体形状s1のみを有するものであってもよく、図6に示すように異なる立体形状s11、s12を有するものであってもよい。
【0055】
また、識別部が複数の凹凸形状を有する場合、識別部における各々の凸部または凹部は、同一の印を有するものであってもよく、異なる印を有するものであってもよい。
【0056】
本発明においては、識別部の各々の凸部または凹部がそれぞれ識別情報を有するものであることから、識別部は種々の形態をとることができる。
【0057】
具体的には、識別部における各々の凸部または凹部のすべてが同一の識別情報を有する態様(第1態様)と、識別部における各々の凸部または凹部が2種類以上の異なる識別情報を有する形態(第2態様)と、識別部における各々の凸部または凹部が共通識別情報および非共通識別情報を有する態様(第3態様)とを挙げることができる。
【0058】
(a)第1態様
本態様の識別部の形態は、識別部における各々の凸部または凹部のすべてが同一の識別情報のみを有するものである。
【0059】
本態様においては、識別部が少なくとも1つの凹凸形状を有するものであれば特に限定されないが、複数の凹凸形状を有することが好ましい。
【0060】
本態様に用いられる識別情報としては、識別部における各々の凸部または凹部のすべてに付与することができるものであれば特に限定されるものではない。
なお、識別部は凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を必須の構成として有することから、少なくとも任意の凸部または凹部の立体形状が識別情報として用いられるものである。
【0061】
また、本態様においては、図9に示すように、識別情報Sとして任意の凸部12の立体形状s1の他に、任意の印s’を併用することができる。なお、図9は、本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
(b)第2態様
本態様の識別部の形態は、識別部における各々の凸部または凹部が2種類以上の異なる識別情報を有するものである。
【0063】
本態様においては、識別部は複数の凹凸形状を有するものである。
【0064】
ここで、本態様において「各々の凸部または凹部が2種類以上の異なる識別情報を有する」とは、識別部における各々の凸部または凹部の全てが同一の識別情報を有さないことを指し、識別部における凸部または凹部には、2種類以上の異なる識別情報のうち1種類の識別情報を有する凸部または凹部と、上記1種類の識別情報を有さない凸部または凹部とが混在していることを指す。
なお、識別部は凸部または凹部を備える複数の凹凸形状を必須の構成として有することから、少なくとも任意の異なる2種類の凸部または凹部の立体形状、または凸部と凹部が識別情報として用いられるものである。
【0065】
本態様においては、2種類以上の異なる識別情報が用いられていればよく、具体的な2種類以上の異なる識別情報の組み合わせについては、上述した組み合わせ情報の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0066】
また本態様において、識別部における2種類以上の異なる識別情報の比率としては、識別部において各々の識別情報が同じ比率であってもよく、異なる比率であってもよい。
【0067】
(c)第3態様
本態様の識別部の形態は、識別部における各々の凸部または凹部が共通識別情報と、非共通識別情報とを有するものである。
【0068】
本態様においては、識別部は複数の凹凸形状を有するものである。
【0069】
ここで、共通識別情報とは、識別部における各々の凸部または凹部の全てが共通して有する同一の識別情報である。
一方、非共通識別情報とは、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となる識別情報であり、識別部における各々の凸部または凹部の全てが共通して有さない識別情報である。
【0070】
ここで、本発明の識別情報付シートにおいて、より高い偽造防止機能を発揮させるためには、識別部において複数の識別情報を表示することが考えられる。しかしながら、図7に示すように、各々の凸部または凹部に異なる識別情報を付与した場合、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて識別部を観察する際には、複数の凸部または凹部を同時に確認することが困難である場合があり、1つの凸部または凹部を確認することにより認証が行われる場合がある。この場合は、観察者により識別される識別情報が異なってしまう可能性があり、正確な真贋判定を行うことが困難となる場合がある。また、識別部に形成される各々の凸部または凹部が有するすべての識別情報を把握していなければならず、真贋判定に多くの時間がかかる可能性も考えられる。
【0071】
一方、識別部における各々の凸部または凹部が共通識別情報および非共通識別情報を有する場合は、まず識別部における各々の凸部または凹部の全てに共通する共通識別情報を一次条件として真贋判定を行い、さらに非共通識別情報を真贋判定の条件として用いることができるため、複数の条件を課して真贋判定を行うことが可能となる。これにより、識別情報付シートの偽造防止機能を向上させることが可能となる。
【0072】
ここで、共通識別情報および非共通識別情報を用いた真贋判定の一例について図を用いて説明する。図10(a)〜(f)は、種々の識別情報の例の模式図である。なお、図10(a)〜(f)中、平面四角形状は凸部の立体形状が直方体であることを、平面円形状は凸部の立体形状が円柱であることを、平面六角形状は凸部の立体形状が六角柱であることを示すものとする。
【0073】
図10(a)〜(f)に示されるいずれかの識別情報を有する識別情報付シートを用いて物品の真贋判定を行う場合、まず真正品を認証するための一次条件が、「A」で示される印を共通識別情報として有することであるとすると、図10(a)〜(d)に示すように、「A」で示される印を共通識別情報として有する識別情報付シートが付された物品を真正品、図10(e)〜(f)に示すように、「A」で示される印を共通識別情報として有さない識別情報付シートが付された物品を複製品と認証することができる。
【0074】
次に、真正品を認証するための二次条件が、直方体と円柱との2種類の異なる凸部の立体形状を非共通識別情報として有することであるとすると、図10(a)に示すように、上述した凸部の立体形状の種類を非共通識別情報として有する識別情報付シートが付された物品を真正品、図10(b)〜(d)に示すように、上述した凸部の立体形状の種類を非共通識別情報として有さない識別情報付シートが付された物品を複製品と認証することができる。
【0075】
なお、図示はしないが、本発明においては、共通識別情報および非共通識別情報を複数用いることにより、二次条件以降もさらに条件を課して認証を行うことができる。
【0076】
共通識別情報としては、識別部における各々の凸部または凹部の全てに共通して付与することが可能な識別情報であれば特に限定されるものではなく、具体的には、任意の凸部または凹部の立体形状や、任意の印等を挙げることができる。
共通識別情報としては、1つの識別情報のみを用いてもよく、複数の識別情報を用いてもよい。
【0077】
一方、非共通識別情報としては、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となる情報であれば特に限定されるものではなく、具体的には上述した組み合わせ情報の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、非共通識別情報としては、上述した組み合わせ情報のうちいずれか1つの組み合わせ情報を用いてもよく、2つ以上の組み合わせ情報を用いることも可能である。
【0078】
また、非共通識別情報に用いられる組み合わせ情報に用いられる各々の識別情報の比率については、識別部において各々の識別情報が同じ比率で存在してもよく、異なる比率で存在してもよい。各々の識別情報が異なる比率で存在する場合は、より高い偽造防止機能を発揮することができる。
【0079】
(3)識別部の構造
本発明における識別部は、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有するものである。
【0080】
また、上記凹凸形状を構成する各々の凸部または凹部の大きさとしては、各々の凸部または凹部が上述した識別情報を有することが可能な程度の大きさであれば特に限定されるものではない。ここで、本発明においては上述したように識別情報として少なくとも凸部または凹部の立体形状が用いられることから、上記各々の凸部または凹部の大きさとしては、通常、識別情報と同様に、拡大することにより観察可能な程度の大きさとされる。
【0081】
上記凸部または凹部の大きさとしては、拡大することにより拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には、上述した立体形状の大きさと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0082】
上記凸部の高さ、または上記凹部の深さとしては、基底部表面に形成可能であり、上述した立体形状を有することが可能であれば特に限定されるものではないが、0.1μm〜500μmの範囲内、なかでも1μm〜100μmの範囲内、特に5μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記凸部の高さ、または上記凹部の深さが上記範囲であれば、光の反射により凸部または凹部を視認しやすく、容易に識別可能となる。一方、上記凸部の高さ、または上記凹部の深さが薄すぎる場合、または厚すぎる場合は、各々の凸部または凹部に所望の識別情報を付与することが困難となる場合があるからである。
【0083】
なお、上記凸部の高さについては、凸部12aの形状が平坦な上面を有する場合は、図1(b)に示すように識別情報付シートの凸部12aが形成されていない部分の表面から凸部12aの上面までの距離x1を指し、凸部12aの形状が平坦な上面を有さない場合は、図3(a)および図4(a)に示すように、識別情報付シートの凸部12aが形成されていない部分の表面から凸部12aの高さが最大となる部分までの距離x2を指すものとする。
また、上記凹部の深さについては、凹部12bの形状が平坦な底面を有するものである場合は、図2(b)に示すように、識別情報付シートの凹部12bが形成されていない部分の表面から凹部12bの底面までの距離y1を指し、凹部12bの形状が平坦な底面を有さない場合は、図3(b)および図4(b)に示すように、識別情報付シートの凹部12bが形成されていない部分の表面から凹部12bの深さが最大となる部分までの距離y2を指すものとする。
【0084】
また、本発明においては、凸部または凹部の大きさ(u)および凸部の高さ(x1,x2)または凹部の深さ(y1,y2)が、それぞれx1,x2/u≧1/100またはy1,y2/u≧1/100を満たすことが好ましく、なかでもx1,x2/u≧30またはy1,y2/u≧30、さらにx1,x2/u≧20またはy1,y2/u≧20、特にx1,x2/u≧10またはy1,y2/u≧10であることが好ましい。凸部または凹部の大きさ(u)に対する凸部の高さ(x1,x2)または凹部の深さ(y1,y2)の比が上記範囲であれば、光の反射により凸部または凹部の立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。一方、上記の比が小さすぎる場合、または大きすぎる場合は、所望の識別情報を有する凸部または凹部を形成することが困難となる場合があるからである。
なお、上記凸部または凹部の大きさ(u)は、凸部または凹部の平面視における最大距離とする。例えば平面視における形状が図5(a)に示す形状である場合は、距離L1を指す。
上記凸部または凹部の大きさ(u)および凸部の高さ(x1,x2)または凹部の深さ(y1,y2)は、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
【0085】
識別部は、1つの凹凸形状を有するものであってもよく、複数の凹凸形状を有するものであってもよいが、上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することが好ましい。上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することで、識別情報付シートに種々の識別情報を付与することができるため、識別情報付シートの偽造防止機能を向上させることが可能となるからである。
【0086】
より具体的には、識別部を構成する凸部または凹部の個数としては、1個以上であれば特に限定されるものではなく、識別情報付シートが固着される物品の用途により適宜選択されるものであるが、10個〜1,000,000,000個の範囲内、なかでも100個〜1,000,000個の範囲内であることが好ましい。識別部に形成される凸部または凹部の個数が上記範囲に満たない場合は、識別情報を有する凸部または凹部の位置の特定や、識別情報自体の認識を行う際に多くの時間がかかる可能性があるからである。なお、凸部または凹部の個数については、本発明の識別情報付シートの用途により適宜選択することができる。
【0087】
識別部における凸部または凹部の配置としては、識別部に表示される識別情報を認識することができる配置であれば特に限定されるものではなく、図1(a)に示すように、規則性を有するように配置されてもよく、図示しないが規則性を有さないようにランダムに配置されてもよい。
【0088】
また、本発明における識別部全体の大きさとしては、識別部の各々の凸部または凹部が有する情報を拡大することにより観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、識別部全体を目視することができる程度の大きさであってもよく、識別部全体についても拡大することにより観察することができるものであってもよく、本発明の識別情報付シートの用途により適宜選択することが可能である。
【0089】
2.基底部
本発明における基底部は、その表面に上述した識別部を有するものである。
【0090】
上記基底部の厚みとしては、基底部の表面に上述した識別部を形成することができ、識別情報付シートを所望の物品に用いることができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1μm〜800μmの範囲内、なかでも10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。基底部の厚みが上記範囲に満たない場合は、凹部を有する識別部を形成することが困難となる場合や、凸部を有する識別部を形成した場合に十分な自己支持性を有することが困難となるからであり、上記基底部の厚みが上記範囲を超える場合は、識別情報付シートが厚膜となるため、識別情報付シートを加工することが困難となる可能性があるからである。また、本発明の識別情報付シートが固着される物品の規格に沿わない場合があるからである。
なお、本発明における基底部の厚みとは、図1(b)や図2(b)に示すように、識別情報付シート10の識別部が形成されていない部分zを指すものである。また、基底部の厚みについては、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
なお、通常、識別情報付シートが凸部を備える凹凸形状を有するものである場合は、識別情報付シートの凸部の高さおよび基底部の厚みの総和である識別情報付シート全体の厚み、および凸部の高さをそれぞれ測定し、識別情報付シート全体の厚みと凸部の高さとの差を算出することにより、基底部の厚みが求められる。
【0091】
3.識別情報付シートの構造
本発明の識別情報付シートは、基底部の表面に識別部を有するものであれば特に限定されず、識別部が識別情報付シートの一部の面に形成されているものであってもよいし、識別情報付シートの全面に形成されているものであってもよい。
また、1つの識別情報付シートに1つの識別部が形成されているものであってもよく、複数の識別部が形成されているものであってもよい。
【0092】
また、本態様においては基底部の表面に識別部を有するものであれば特に限定されるものではなく、基底部と識別部とが一体で形成されていてもよく、基底部と識別部とが別体で形成されていてもよいが、基底部と識別部とが一体で形成されていることがより好ましい。本発明の識別情報付シートを簡便な方法で形成することが可能となるからである。
【0093】
本発明の識別情報付シートは、無色であってもよく有色であってもよく、後述の識別情報付シートの材料に応じて適宜選択される。識別情報付シートが有色である場合には、識別部の各々の凸部または凹部が有する識別情報を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0094】
また、本発明の識別情報付シートは、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、後述の識別情報付シートの材料に応じて適宜選択される。識別情報付シートが光透過性を有さない場合には、識別部の各々の凸部または凹部が有する識別情報を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0095】
また、本発明の識別情報付シートの形状としては、特に限定されるものではなく、矩形、多角形、円形、楕円形、その他、任意の形状とすることができる。
【0096】
本発明の識別情報付シートは、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0097】
4.識別情報付シートの材料
識別情報付シートの材料としては、上述した構成を有する識別情報付シートを製造できる材料であれば特に限定されるものではなく、通常、樹脂を含む材料が用いられる。
【0098】
上記樹脂としては、上記構成を有する識別情報付シートを形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な樹脂製部材に用いられている樹脂を挙げることができる。具体的には、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂等を挙げることができる。
【0099】
上記電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、特開2000−272295号公報に記載のウレタン変性アクリレート樹脂等を挙げることができる。
【0100】
上記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0101】
上記熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等を挙げることができる。
【0102】
これらの樹脂は、単独重合体または2種以上の共重合体として使用してもよい。
【0103】
感光性樹脂としては、ポジ型感光性樹脂およびネガ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。
【0104】
本発明に用いられる樹脂としては、上述した樹脂のなかでも、紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。紫外線硬化性樹脂を用いることにより、識別部の凸部や凹部が複雑な立体形状を有する場合であっても高精細に形成することが可能となるからである。
【0105】
本発明に用いられる識別情報付シートの材料としては、上述した樹脂以外にも適宜必要な成分を含有することが可能である。このような成分としては、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、顔料や染料等の着色材料等の機能性材料を含有することが好ましい。上述したように、凸部または凹部が有する識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるからである。中でも、本発明の識別情報付シートは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの材料は、材料の特性による識別が可能であり、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明の識別情報付シートは、紫外線発光材料、赤外線発光材料および量子ドット材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。発光により識別が可能であり、真贋判定をさらに容易に行うことができるからである。
以下、各機能性材料に分けて説明する。
【0106】
(1)紫外線発光材料
本発明に用いられる紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0107】
識別情報付シート中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0108】
(2)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0109】
識別情報付シート中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0110】
(3)赤外線反射材料
本発明に用いられる赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0111】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0112】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0113】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0114】
識別情報付シート中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0115】
(4)赤外線吸収材料
本発明に用いられる赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0116】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0117】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂や感光性樹脂を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0118】
識別情報付シート中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0119】
(4)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズの微粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0120】
量子ドット材料は、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0121】
量子ドット材料のコアとなる材料として具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0122】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。
【0123】
なかでも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0124】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0125】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0126】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0127】
また、量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0128】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0129】
識別情報付シート中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0130】
(5)磁性材料
本発明に用いられる磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0131】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明の識別情報付シートの存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有する識別情報付シートと、磁性材料を含有しない識別情報付シートとに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有する識別情報付シートでは共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しない識別情報付シートでは共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することにより識別情報付シートの存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0132】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す識別情報付シートを例示することができる。
【0133】
識別情報付シート中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲内がより好ましい。磁性材料の含有量が少なすぎると、識別が困難となり、磁性材料の含有量が多すぎると、識別情報付シート表面への立体形状の形成が困難となる場合があるからである。
【0134】
(6)着色材料
本発明に用いられる着色材料としては、顔料、染料を挙げることができる。
着色材料は、識別情報付シートに含有させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な顔料、染料を用いることができる。
【0135】
識別情報付シート中の着色材料の含有量としては、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0136】
5.その他の構成
本発明の識別情報付シートは、上記基底部および識別部を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な構成を適宜選択して用いることが可能である。
なお、以下の説明において「識別情報付シートの表面に形成される」とは、直接形成される場合だけではなく、他の層を介して形成される場合を含む概念である。
【0137】
(1)金属層
本発明の識別情報付シートは、識別情報付シートの識別部側の面に金属層が形成されていることが好ましい。識別部側の面に金属層が形成されていることにより、光の反射により識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、後述するハードコート層を形成する場合、ハードコート層も樹脂を用いて形成されるものであることから、識別情報付シートおよびハードコート層の屈折率の差が小さいために、識別情報付シートとハードコート層との界面が見えにくくなり、各々の凸部または凹部が有する識別情報を視認するのが困難になることが懸念されるが、識別部側の面に金属層が形成されていることで、識別情報の視認性を高めることが可能となる。
金属層の厚みとしては、識別部における各々の識別情報の視認性を向上させることができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜250nm程度とすることができ、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。金属層が厚すぎると、識別情報が損なわれてしまうおそれがあり、金属層が薄すぎると、金属層の形成が困難であったり、識別情報の視認性を高める効果が十分に得られなかったりする可能性があるからである。
【0138】
このような金属層に用いられる材料としては、金属および金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物が用いられ、例えばAl、ZnS、TiO2、Cu、Au、Pt等が挙げられる。
【0139】
また、金属層の形成方法としては、識別情報付シートの識別部側の面に所望の厚みで金属層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば金属蒸着法、金属メッキ法、スパッタ法等を挙げることができる。
【0140】
(2)粘着層
本発明の識別情報付シートは上記識別情報付シートの少なくとも一方の表面に粘着層が形成されていることが好ましい。上記粘着層を有することにより、本発明の識別情報付シートを所望の物品に容易に貼付することが可能となる。
【0141】
上記粘着層の形成位置としては、本発明の識別情報付シートの少なくとも一方の表面に形成されていればよく、本発明の識別情報付シートが固着される物品により適宜選択することができる。具体的には、識別情報付シートの識別部側に形成されていてもよく、識別情報付シートの識別部側とは反対側に形成されていてもよく、識別情報付シートの両側表面に形成されていてもよい。
【0142】
上記粘着層の厚みとしては、本発明の識別情報付シートを所望の物品に固着することができ、かつ固着された識別情報付シートの物品から容易に剥離しないものとすることができる程度であれば特に限定されるものではなく、本発明の識別情報付シートの用途に応じて適宜選択することが可能である。
【0143】
粘着層に用いられる粘着剤としては一般的な粘着剤と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0144】
(3)剥離層
本発明における識別情報付シートが、上述した粘着層を有する場合、粘着層上に剥離層が配置されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本発明の識別情報付シートの取り扱いが容易になるからである。
本発明の識別情報付シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0145】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0146】
(4)識別情報付シート用基材
本発明の識別情報付シートは識別情報付シートの識別部側とは反対側の基底部表面に識別情報付シート用基材が配置されていることが好ましい。識別情報付シート用基材を有することにより、識別情報付シートの強度を高めることが可能となる。
【0147】
識別情報付シート用基材としては、識別情報付シートを支持することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、透明基材であってもよいし、透明性を有さない基材であってもよいが、透明基材であることが好ましい。識別情報付シート用基材が透明性を有することにより、識別情報付シート用基材側からも識別情報を観察することが可能となるからである。
【0148】
透明基材の光透過性としては、各々の凸部または凹部が有する識別情報が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0149】
また、透明基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本発明の識別情報付シートを種々の形状の物品に適用することが可能となるからである。
【0150】
このような透明基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0151】
また、透明基材の表面は、識別情報付シートとの密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、識別情報付シートおよび透明基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、透明基材製造時に処理されるものと、製造後の透明基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した透明基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の透明基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0152】
透明基材の厚みは、本発明の識別情報付シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0153】
(5)ハードコート層
本発明においては、識別情報付シートの識別部側の面上にハードコート層が形成されていてもよい。これにより、識別部が有する凹凸形状を保護することが可能となり、各々の凸部または凹部が損傷することにより識別情報が消失してしまうことを防止することができる。
【0154】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、各々の凸部または凹部の識別情報が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0155】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、識別部を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0156】
ハードコート層の膜厚は、識別部を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0157】
(6)ホログラム層
本発明においては、識別情報付シートの識別部側と反対側の表面にホログラム層が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0158】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0159】
6.識別情報付シートの製造方法
本発明の識別情報付シートの製造方法としては、上述した構成を有する識別情報付シートを製造することができる方法であれば特に限定されず、例えば、後述する「B.識別情報付シートの製造方法」の項で説明する製造方法や、以下の製造方法を用いることができる。
識別情報付シートの製造方法としては、例えば上述した識別情報付シートの材料を含む樹脂層の表面に切削加工を施すことにより、上述した識別部における凹凸形状を形成して識別情報付シートを製造する方法を用いることができる。
また例えば上述した識別情報付シートの材料として感光性樹脂を用いた場合は、感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層の表面に階調露光を施し、現像することにより凹凸形状を有する識別部を形成して識別情報付シートを製造することができる。なお、階調露光および現像に関する条件等については、後述する「B.識別情報付シートの製造方法」の項で説明するのでここでの説明は省略する。
【0160】
7.識別情報付シート
本発明の識別情報付シートは、偽造防止用途に好適に用いられ、そのままラベルとして使用することもでき、偽造防止媒体に適用することもできる。
【0161】
上記識別情報付シートを偽造防止媒体に適用する際には、そのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。さらに、本発明の識別情報付シートは、偽造防止媒体は複数層から構成される場合は、偽造防止媒体の任意の層間に挟み込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合は識別情報付シートを細長く切断し、紙にすき込んでもよい。
【0162】
本発明の識別情報付シートは、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0163】
8.カード
本発明の識別情報付シートは、カードの偽造防止に好適に用いることができる。
このようなカードとしては、上記識別情報付シートが固定されているものであれば特に限定されるものではなく、カード表面に識別情報付シートが固定されていてもよいし、カードの内部に埋め込まれていてもよいが、カードの内部に埋め込まれていることが好ましい。カードを構成する層により識別情報付シートを保護することができ、識別情報付シートが有する識別情報を長期間にわたり良好な状態で保持することができるからである。以下、識別情報付シートが埋め込まれたカード(以下、埋め込みカードと称して説明する場合がある。)について説明する。
【0164】
図11(a)は、埋め込みカードの一例を示す概略断面図であり、図11(b)は、埋め込みカードにおける識別情報付シートの配置を示す図である。
図11(a)、(b)に示すように、埋め込みカード100は、カード基材101と、カード基材101上に形成された第1樹脂層102と、第1樹脂層102上に配置された識別情報付シート10と、識別情報付シート10上に形成された第2樹脂層103とを有するものである。
【0165】
上記埋め込みカードにおける識別情報付シートの配置としては、識別情報付シートが第1樹脂層および第2樹脂層の間に配置されていれば特に限定されるものではなく、埋め込みカードの一部分に配置されていてもよいし、埋め込みカードの全面に配置されていてもよい。また、埋め込みカードにおいては、通常、識別情報付シートの識別部側に第2樹脂層が配置されるが、カード基材および第1樹脂層が光透過性を有する場合は、識別情報付シートの識別部側に第1樹脂層が配置されていてもよい。
【0166】
カード基材としては、カードの用途に応じて適宜選択されるものである。カード基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。カード基材の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0167】
また、第1樹脂層は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。中でも、カード基材と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、上述した識別情報付シート用基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、上述した識別情報付シート用基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第2樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
カード基材と第1樹脂層と識別情報付シートと第2樹脂層との積層方法としては、例えば、各層を接着層を介して積層する方法、各層を熱圧着により積層する方法等を挙げることができる。
【0168】
また、埋め込みカードとしては、上述した構成を有するものあれば特に限定されるものではなく、必要に応じて任意の層を有することができる。これらの層については、一般的なカードに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0169】
B.識別情報付シートの製造方法
次に、本発明の識別情報付シートの製造方法について説明する。
本発明の識別情報付シートの製造方法は、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明した識別情報付シートを製造する製造方法であり、基体表面に、上記識別部の上記凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する原版形成工程と、樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する識別情報付シート形成用層準備工程と、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に上記識別部の上記凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、上記識別情報付シート形成用層から上記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する固化・剥離工程とを有することを特徴とする製造方法である。
【0170】
ここで、本発明の識別情報付シートの製造方法について図を用いて説明する。図12(a)〜(f)は、本発明の識別情報付シートの製造方法の一例を示す工程図である。本発明の識別情報付シートの製造方法においては、まず、図12(a)に示すように基体21を準備し、次に図12(b)に示すように基体21の表面に所望の凹凸形状の反転形状を有する転写部22を形成して原版20を形成する(原版形成工程)。次いで、図12(c)に示すようにスペーサ32が配置された基材31上に、樹脂を含む識別情報付シート用塗工液を塗布することにより識別情報付シート形成用層10’を形成する(識別情報付シート形成用層準備工程)。次いで、図12(d)に示すように、識別情報付シート形成用層10’と原版20の転写部22とを密着させることにより、識別情報付シート形成用層10の表面に所望の凹凸形状を賦型する(賦型工程)。次いで、図示はしないが、賦型工程後に、凹凸形状が賦型された識別情報付シート形成用層10’を固化し、次いで、図12(e)に示すように、固化された識別情報付シート形成用層10’から原版20を剥離して識別情報付シート10を形成する(固化・剥離工程)。その後、図12(f)に示すように、必要に応じてスペーサ32や基材31を識別情報付シート10から剥離する工程等が行われる。なお、図示はしないが、本発明における固化・剥離工程では識別情報付シート形成用層から原版を剥離した後、識別情報付シート形成用層を固化することにより識別情報付シートを形成してもよい。
本発明の識別情報付シートの製造方法は、上述した各工程を経ることにより識別情報付シート10を製造することができる。なお、識別情報付シートの各構成については図1(b)で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0171】
本発明によれば、上述した「A.識別情報付シート」の項で記載した構成を有する識別情報付シートを精度高く、かつ簡便な方法で製造することが可能となる。
以下、本発明の識別情報付シートの各工程について説明する。
【0172】
1.原版形成工程
本発明における原版形成工程は、基体の表面に、上記識別部の凹凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する工程である。
【0173】
識別部の凹凸形状の反転形状については、識別情報付シートの識別部が所望の識別情報を有することが可能となる形状であれば特に限定されず、製造される識別情報付シートの用途に応じて適宜選択することができる。
なお、識別部および識別情報については、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明したので、ここでの説明は省略する。
【0174】
本工程に用いられる基体としては、その表面に所望の転写部を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、原版の形成方法に合わせて適宜選択することができる。基体としては、具体的にはガラス基板や、感光性樹脂を含む樹脂層を有する基板、金属層を有する基板等を挙げることができる。
【0175】
本工程に用いられる原版の形成方法としては、所望の反転形状を有する転写部を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、例えば基体の表面に切削加工を施すことにより所望の反転形状を形成する方法、エッチング法による方法、フォトリソグラフィー法による方法等を挙げることができる。なかでも、エッチング法による方法、フォトリソグラフィー法による方法を用いることが好ましい。以下、これらの方法について説明する。
【0176】
(1)エッチング法による原版の形成方法
エッチング法による原版の形成方法について説明する。この方法は、基体としてガラス基板を用い、ガラス基板の表面をエッチングして所望の反転形状のパターンを形成することにより、転写部を形成する方法である。
ガラス基板の表面をエッチングする方法については、一般的な方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0177】
(2)フォトリソグラフィー法による原版の形成方法
次に、フォトリソグラフィー法による原版の形成方法について説明する。この方法は、ガラス基板等の基材表面に、感光性樹脂層を形成し、露光を行った後、現像することにより、転写部を形成する方法である。
【0178】
感光性樹脂層については、一般的な感光性樹脂を用いることにより形成することができる。また、感光性樹脂層の膜厚については、所望の反転形状を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、製造される識別情報付シートの用途に合わせて適宜調整される。
【0179】
本発明における露光方法としては、所望の反転形状を形成することができるものであれば特に限定されないが、階調露光であることが好ましい。階調露光を用いることにより、種々の反転形状を有する原版を形成することができるからである。
感光性樹脂層に階調露光を施す方法としては、感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行うことで、所定の立体形状を形成可能であれば特に限定されるものではないが、感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法、および、階調マスクを用いる方法が好ましい。複雑な立体形状も形成可能となるからである。
【0180】
感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法の場合、描画装置としては、例えば、レーザー描画装置や電子線描画装置を用いることができる。
本発明において、所定の立体形状の他に所定の印を有する凸部または凹部を製造する場合にも、1回の直接描画を行うことで、立体形状および印を形成することができる。
【0181】
また、階調マスクを用いる方法の場合、階調マスクとしては、例えば、露光波長では解像しない微細なドットパターンの分布状態により、露光する際の透過光量(露光量)分布を制御するフォトマスクや、透明基板上に遮光剤が所定の濃度パターンで分散しているフォトマスク(グレイマスク)を用いることができる。
ドットパターンのフォトマスクについては、特開2004−296590号公報を参照することができる。また、グレイマスクについては、特開2002−6473号公報を参照することができる。
本発明において、所定の立体形状の他に所定の印を各々の凸部または凹部に賦型する場合には、2種類の階調マスクを準備し、階調マスクを変えて2回露光することで、立体形状および印を形成することができる。
【0182】
現像処理を行う方法としては、特に限定されるものではないが、例えば現像液を用いる方法等を挙げることができる。現像液としては、一般的な現像液を用いることができ、感光性樹脂層の種類等に応じて適宜選択される。
【0183】
現像条件は、一般的なフォトリソグラフィー法に用いられる現像条件と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0184】
(3)原版
本工程で用いられる原版としては、上述した形成方法により形成された原版をそのまま用いてもよく、上記原版をマスター版とし、マスター版から複製された複製版を用いてもよい。なお、複製版の形成方法については公知の方法を用いることができる。
【0185】
また、上記原版の転写部側表面に離型処理が施されていてもよい。
【0186】
2.識別情報付シート形成用層準備工程
本発明における識別情報付シート形成用層形成工程は、樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する工程である。
【0187】
本工程においては、所望の凹凸形状を有する識別部を形成することが可能な識別情報付シート形成用層を準備することが可能であればよく、具体的には、熱可塑性樹脂からなる基板を予め準備してもよく、樹脂を含む識別情報付シート用塗工液を用いて識別情報付シート形成用層を形成してもよい。
【0188】
熱可塑性樹脂からなる基板を用いる場合、基板に用いられる熱可塑性樹脂については、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、基板の厚みについては、製造される識別情報付シートの用途等により適宜選択することができる。
【0189】
一方、識別情報付シート用塗工液を用いる場合、上記識別情報付シート用塗工液としては、所望の識別情報付シートを形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明した樹脂やその他の成分のほか、必要に応じて溶剤や反応開始剤、硬化剤、離型剤等の各種の添加剤を添加することができる。溶剤および添加剤等については、一般的な樹脂部材を形成する際に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0190】
本工程により準備される上記識別情報付シート形成用層は紫外線硬化性樹脂を含むことが好ましい。識別情報付シート形成用層が紫外線硬化性樹脂を含むことにより、後述する賦型工程で、識別情報付シート形成用層に賦型される識別部の凸部や凹部の立体形状が複雑な場合であっても高精細な識別情報付シートを製造することが可能となる。
【0191】
識別情報付シート形成用層の厚みとしては、基底部および基底部上に形成された識別部を有する識別情報付シートを形成することができる程度であれば特に限定されず、製造される識別情報付シートの用途に応じて適宜選択することができる。
【0192】
上記識別情報付シート形成用層の形成方法としては、上述した厚みを有するように形成することが可能であり、かつ後述する賦型工程で識別情報付シート形成用層の表面に上述した凹凸形状を形成することが可能であれば特に限定されず、例えば基材上に識別情報付シート用塗工液を塗布することにより形成する方法、上述した原版の転写部側表面に識別情報付シート用塗工液を塗布することにより形成する方法等を挙げることができる。
【0193】
基材上に識別情報付シート用塗工液を塗布する場合に用いられる基材としては、識別情報付シート形成用層を支持することが可能であれば特に限定されるものではなく、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0194】
また、上記基材上にはスペーサが配置されていることが好ましい。スペーサを有することにより、識別情報付シート形成用層の厚みをより好適に制御して形成することが可能であり、後述する賦型工程においても識別情報付シート形成用層の表面に凹凸形状を賦型しやすくなるからである。
【0195】
このようなスペーサとしては、スペーサで囲われた領域内に識別情報付シート用塗工液を保持することができるものであれば特に限定されないが、樹脂製フィルムであることが好ましい。スペーサが樹脂製フィルムである場合は、識別情報付シートの厚みを制御しやすくなるからである。
【0196】
なお、本工程は、必要に応じて識別情報付シート形成用層を乾燥する工程を有していてもよい。
【0197】
3.賦型工程
上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に上記識別部の凹凸形状を賦型する工程である。
【0198】
本工程においては、例えば上記識別情報付シート形成用層に含まれる樹脂が電離放射線硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂である場合は、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させ、必要に応じて圧力を加えることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に凹凸形状を賦型することができる。
【0199】
一方、上記識別情報付シート形成用層に含まれる樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させて加熱することにより上記識別情報付シート形成用層表面に凹凸形状を賦型することができる。なお、この場合も必要に応じて圧力を加えてもよい。
【0200】
4.固化・剥離工程
本発明における固化・剥離工程は、上記賦型工程後に、上記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、上記識別情報付シート形成用層から上記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する工程である。
【0201】
本工程においては、上記識別情報付シート形成用層を固化した後に、上記識別情報付シート形成用層から原版を剥離して識別情報付シートを形成してもよく、上記識別情報付シート形成用層から原版を剥離した後、上記識別情報付シート形成用層を固化して識別情報付シートを形成してもよい。
【0202】
本工程において、上記識別情報付シート形成用層を固化した後に原版を剥離する場合、上記識別情報付シート形成用層を固化する固化方法としては、所望の凹凸形状を有する識別情報付シートを形成することができれば特に限定されるものではなく、乾燥させてもよく、識別情報付シート形成用層が熱可塑性樹脂からなる場合は冷却による固化処理を行ってもよく、識別情報付シート形成用層が熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂からなる場合は、種々の硬化処理により硬化させてもよい。
【0203】
本工程に用いられる固化処理、硬化処理としては、識別情報付シートに用いられる樹脂により適宜選択される。具体的な固化処理、硬化処理については、公知の方法を用いることができる。
【0204】
また、固化された識別情報付シート形成用層から原版を剥離する剥離方法としては、識別情報付シート形成用層に形成された凹凸形状を損傷させることなく剥離することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。
【0205】
なお、識別情報付シート形成用層を乾燥させて固化した場合は、原版を剥離した後、上述した固化処理または硬化処理が行われる。
【0206】
一方、本工程において上記識別情報付シート形成用層から原版を剥離した後に固化を行う場合、識別情報付シート形成用層から原版を剥離する方法としては、識別情報付シート形成用層に形成された凹凸形状を損傷させることなく剥離することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、識別情報付シート形成用層が熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂からなる場合は、未乾燥な状態の識別情報付シート形成用層から原版を剥離してもよく、また例えば、識別情報付シート形成用層が熱可塑性樹脂からなる場合は、軟化された状態の識別情報付シート形成用層から原版を剥離してもよい。
【0207】
なお、原版を剥離した後の識別情報付シート形成用層の固化方法については、上述した固化処理、硬化処理と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0208】
6.その他の工程
本発明の識別情報付シートの製造方法は、上述した原版形成工程、識別情報付シート形成用層形成工程、賦型工程、固化・剥離工程を有する製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜選択して追加することが可能である。
【0209】
このような工程としては、例えば、識別情報付シート形成用層形成工程に用いられる基材を剥離する工程を挙げることができる。なお、剥離方法については識別情報付シートを損傷させることなく基材から識別情報付シートを剥離することが可能であれば特に限定されない。
また、このような工程としては、識別情報付シートにおける識別部の各々の凹部または凸部に印を印刷する工程、識別情報付シートの識別部側表面に金属層を形成する工程、識別情報付シートの一方の表面に粘着層を形成する工程等を挙げることができる。
【0210】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0211】
以下、実施例についてさらに具体的に説明する。
【0212】
[原版の形成]
厚さ0.7mmのガラス基板上にポジ型レジスト(東京応化工業製LA900)をスピンコーターを用いて塗布し、130℃で10分間加熱することにより、塗膜を形成した。なお、塗膜の厚さについては、現像硬化後の最大膜厚が2μmとなるように調整した。
【0213】
次に、縦100μm、横100μmの領域内に形成されたハート型形状パターンで、パターンの中央部が遮光部であり、パターンの中央部から外側に向かって露光光の透過率が連続的に高くなるような濃度階調を有する階調マスクを用い、アライナーにて365nmの紫外光を照射した。なお、露光量は800mJとした。露光後に現像液(東京応化工業製NMD−3)を用いて5分間現像した後、純水にて洗浄することにより、中央部の膜厚が高く周辺部の膜厚が低いハート型のパターンを有する原版を形成した。
【0214】
[識別情報付シートの形成]
次に、厚さ0.7mmのガラス基板に、スペーサとして厚さ110μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けた。なお、PETフィルムはガラス基板を底面とし、PETフィルムが側面とする空間が形成されるように配置した。上記空間内にUV硬化性樹脂を充填して識別情報付シート形成用層を形成し、識別情報付シート形成用層と原版の転写部とが密着し、上述した空間を塞ぐようにして、原版を配置した。
【0215】
原版側からUV照射機にて、波長365nmの紫外線を1000mJ照射し、識別情報付シート形成用層を固化させた後、原版およびガラス基板を剥離することにより、識別情報付シートを形成した。
【0216】
なお、識別情報付シートの識別部には、所望の凹凸形状を形成することができた。
【符号の説明】
【0217】
10 … 識別情報付シート
10’ … 識別情報付シート形成用層
11 … 基底部
12 … 識別部
12a … 凸部
12b … 凹部
S … 識別情報
20 … 原版
21 … 基体
22 … 転写部
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の任意の位置に識別情報を配置可能であり、かつ容易に真贋判定を行うことが可能な識別情報付シート、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷技術の発達により、高精細な印刷が可能となったことから、クレジットカード、有価証券類、各種証明書等の物品についての偽造が懸念されており、偽造を防止するための偽造防止技術の開発が推奨されている。
【0003】
このような偽造防止技術としては、例えば透かし模様、ホログラム等の偽造防止手段を挙げることができる。これらの偽造防止手段は目視により認証を行うことが可能であるため、認証を容易に行うことができるといった利点を有する。しかしながら、より高いセキュリティ性を必要とする物品に対する偽造防止機能としては不十分な場合があるといった問題があった。
【0004】
そこで、目視ではなく、ルーペ、顕微鏡等の拡大手段を用いて観察することにより認証を行う偽造防止技術が注目されている(例えば特許文献1〜4)。このような偽造防止技術は、物品を一見するだけでは、その物品に偽造防止技術が付されていることを認識することができないため、目視により認識可能な偽造防止技術に比べて、より高い偽造防止機能を発揮することが可能となる。
このような偽造防止技術の1つとして、タガントを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。ここで、タガントとは、例えば表面にμオーダーで表示された文字、記号、柄等を有する粒子状の構造物や、特異な形状を有する粒子状の構造物、紫外線等を照射することにより発色する粒子状の構造物等の識別情報を有する粒子状の構造物を指すものであり、タガントが有する識別情報をルーペ等で観察することにより真贋判定が行われるものである。また上述したタガントは、通常、液状の樹脂塗工液やインキ中に混在させ、上記樹脂塗工液やインキを物品に塗布したり、フィルム化することにより上述した物品に固着されるものである。
【0005】
しかしながら、上記タガントを用いる偽造防止技術においては、物品に付された樹脂塗工液やインキ中に存在するタガントの数にバラツキが生じやすいため、タガントの数が少ない場合は、真贋判定を行うことが困難となる場合や、タガントの存在位置を特定するために多くの時間がかかり、真贋判定に時間が多くかかるといった問題があった。
また、タガントは通常、液状の樹脂塗工液やインキ中ではあらゆる方向に分散するものであることから、例えばタガントの一部に文字等が表示されているものを用いた場合においては、必ずしもタガントの表示面が観察者側を向いて物品に固着されるとは限らず、タガントの表示面が観察者側とは反対側に配置されてしまう場合も考えられる。このように、タガントを用いる偽造防止技術においては、タガントが粒子状構造物であるため、その制御が難しいといった問題があった。
【0006】
そこで、偽造防止技術の分野においては、物品へ固着する際の扱いが容易であり、偽造防止機能が高く、かつ真贋判定や物品の認証を容易に、かつ正確に行うことが可能な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3665282号公報
【特許文献2】特開2003−274834号公報
【特許文献3】特開2001−288698号公報
【特許文献4】特開2009−193069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、物品への固着を容易に行うことが可能であり、識別情報の位置や数を把握しやすく、識別情報の認識を容易にかつ正確に行うことができる識別情報付シート、および上記識別情報付シートを容易に製造することが可能な識別情報付シートの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、基底部と、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の上記凸部または上記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とする識別情報付シートを提供する。
【0010】
本発明によれば、識別部を有することにより、一定の面積を有する識別部に含まれる識別情報の数および位置を予め決めることができるため、識別情報の認識を容易に行うことが可能な識別情報付シートとすることができる。よって、本発明の識別情報付シートを固着した物品の真贋判定を短時間で正確に行うことが可能となる。
【0011】
本発明においては、上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することが好ましい。上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することで、識別情報付シートに種々の識別情報を付与することができるため、識別情報付シートの偽造防止機能を向上させることが可能となるからである。
【0012】
本発明においては、上記識別情報付シートの上記識別部側に金属層が形成されていることが好ましい。本発明においては、金属層が形成されていることにより、識別部に形成されている凸部や凹部が有する識別情報の視認性を向上させることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記識別情報付シートの少なくとも一方の表面に粘着層が形成されていることが好ましい。粘着層を有することにより、上記識別情報付シートを容易に物品に貼付することが可能となるからである。
【0014】
本発明は、基底部と、上記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察可能な凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の上記凸部または上記凹部は、形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する識別情報付シートを製造する識別情報付シートの製造方法であって、基体表面に、上記識別部の上記凹凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する原版形成工程と、樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する識別情報付シート形成用層準備工程と、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に上記識別部の上記凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、上記識別情報付シート形成用層から上記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する固化・剥離工程とを有することを特徴とする識別情報付シートの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、上述した構成を有する識別情報付シートを精度よく、かつ簡便な方法で製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、上記識別情報付シート形成用層は紫外線硬化性樹脂を含むことが好ましい。識別情報付シート形成用層が紫外線硬化性樹脂を含むことにより、賦型される識別部の凸部や凹部の立体形状が複雑な場合であっても高精細な識別情報付シートを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の識別情報付シートは、物品への固着を容易に行うことが可能であり、識別情報の位置や数を把握しやすく、識別情報の認識を容易にかつ正確に行うことができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の識別情報付シートの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略平面図である。
【図5】本発明における識別部の凸部または凹部に用いられる立体形状の概略図である。
【図6】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図7】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図8】本発明の識別情報付シートの識別部に用いられる識別情報を例示した模式図である。
【図9】本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図である。
【図10】本発明の識別情報付シートの識別部に用いられる識別情報を例示した模式図である。
【図11】本発明の識別情報付シートを用いたカードの一例を示す概略図である。
【図12】本発明の識別情報付シートの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の識別情報付シート、およびその製造方法について説明する。
【0020】
A.識別情報付シート
まず、本発明の識別情報付シートについて説明する。
本発明の識別情報付シートは、基底部と、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、上記識別部の各々の上記凸部または上記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とするものである。
【0021】
ここで、本発明において「凸部」とは、識別部側表面の識別情報を有さない部分に対して凸形状である部分を指す。また、「凹部」とは、識別部側表面の識別情報を有さない部分に対して凹形状である部分を指す。
【0022】
また、「凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状」とは、上記凸部または上記凹部が形成されてなる形状を指す。
【0023】
またここで、「識別部が凹凸形状を有する」とは、識別部が1つの凹凸形状を有する場合だけではなく、複数の凹凸形状を有する場合を含む概念である。
また、「複数の凹凸形状」とは、上記凸部が複数形成されてなる凹凸形状、上記凹部が複数形成されてなる凹凸形状、凸部および凹部が形成されてなる凹凸形状を指す。
【0024】
また、本発明において「拡大することにより観察可能である」とは、目視では観察することが困難であり、拡大手段を用いて拡大した場合に観察することができることを指す。
また、本発明において「形状に基づいて識別することが可能な識別情報」とは、固有の形状を有する情報を指すものであり、例えば色彩等の無形の情報のみからなる情報を含まないものとする。
【0025】
ここで、本発明の識別情報付シートについて図を用いて説明する。図1(a)は本発明の識別情報付シートの一例を示す概略図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。図1(a)、(b)に示すように、本発明の識別情報付シート10は、基底部11と、基底部11上に形成された凸部12aを備える複数の凹凸形状を有する識別部12とを有し、各々の凸部12aは、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報Sを有するものである。なお、図1(a)、(b)においては、凸部12aの立体形状s1が直方体であることを識別情報Sとして有する例について示している。
【0026】
また、図2(a)は、本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図であり、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。図2(a)、(b)においては、識別部12が複数の凹部12bを備える複数の凹凸形状を有するものであり、凹部12bの立体形状s2が直方体であることを識別情報Sとして有する例について示している。なお、図2において説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0027】
本発明によれば、識別部を有することにより、一定の面積を有する識別部に含まれる識別情報の数および位置を予め決めることができるため、識別情報の認識を容易に行うことが可能な識別情報付シートとすることができる。よって、本発明の識別情報付シートを固着した物品の真贋判定を短時間で正確に行うことが可能となる。
【0028】
以下、本発明の識別情報付シートの構成について説明する。
【0029】
1.識別部
本発明における識別部は、基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有し、各々の上記凸部または上記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有するものである。
【0030】
(1)識別情報の種類
まず、本発明に用いられる識別情報について説明する。本発明における識別情報は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な情報、すなわち拡大手段を用いて拡大した場合に観察することが可能であり、かつ固有の形状を有する情報である。
【0031】
なお、拡大手段とは、識別情報を拡大観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばルーペ等の簡易拡大鏡、顕微鏡、CCDカメラを用いたコンピュータソフトウェアによる拡大画像表示等が挙げることができる。
【0032】
識別情報の大きさとしては、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。識別情報が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、識別情報が小さすぎると、各々の凸部または凹部に所望の識別情報を付与することが困難となったり、簡易拡大鏡での観察が難しく、顕微鏡等を用いることが必要となり、容易に真贋判定することが困難になったりする場合があるからである。
【0033】
このような識別情報としては、上述した大きさを有し、識別部における各々の凸部または凹部に付与することが可能であれば特に限定されるものではなく、具体的には、凸部または凹部の立体形状と、凸部または凹部の一部に表示される印(しるし)と、2種類以上の識別情報を組み合わせることによる組み合わせ情報とを挙げることができる。
以下、それぞれについて説明する。
【0034】
(a)凸部または凹部の立体形状
本発明における凸部または凹部の立体形状は、拡大して観察することで識別可能なものであり、基底部表面に形成可能な立体形状であれば特に限定されるものではない。ここで、本発明における各々の凸部または凹部は基底部表面に形成されるものであることから、凸部または凹部の立体形状は少なくとも基底部側の面(以下、基底部面と称して説明する場合がある。)に平面を有するものである。
なお、「基底部面に平面を有する」とは、図1(b)および図2(b)に示すように、凸部12aまたは凹部12bにおいて二点鎖線で示される部分が平面であることを指す。
【0035】
このような凸部または凹部の立体形状s1、s2としては、例えば、図1(b)、図2(b)に示すように、凸部12a表面または凹部12b底面が平坦となる柱体、図3(a)、(b)に示すように、凸部12a表面または凹部12b底面が尖っている錐形体等を挙げることができる。なお、図3(a)、(b)は本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0036】
立体形状が柱体や錐形体である場合の平面視上の形状としては、三角形、四角形等の多角形、円、楕円等の幾何学形状の他、文字、数字、符号、標章等の記号等を挙げることができる。
【0037】
また、本発明においては、凸部または凹部の立体形状s1、s2として、図4(a)、(b)に示すように、凸部上面または凹部底面が少なくとも曲面を有する立体形状(以下、曲面立体形状と称して説明する場合がある。)を用いることも可能である。なお、図4(a)、(b)は本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0038】
ここで、曲面立体形状について図を用いて説明する。
図5(a)、(b)は凸部または凹部に用いられる曲面立体形状の一例を示す模式図であり、図5(a)は凸部上面または凹部底面側からみた図、図5(b)は図5(a)のC−C線断面図である。図5(a)、(b)に示す曲面立体形状s(ティーポット)は、凸部上面または凹部底面t1および基底部面t2を有し、凸部上面または凹部底面t1が曲面で構成されているものである。
【0039】
曲面立体形状が少なくとも曲面を有することは、反射特性を測定することにより確認することができる。平面は法線方向が一つであるのに対して、曲面は法線方向が場所によって異なる。そのため、平面と曲面とでは反射光の明暗が異なる。また、平面と曲面とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
また、具体的に曲面立体形状が曲面を有することは、破壊式または非破壊式の検査方法によって確認することができる。
上記破壊式の検査方法としては、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等によりシートを切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する方法が挙げられる。
一方、非破壊式の検査方法としては、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する方法が挙げられる。接触式の形状測定においては、例えば針をシートに接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定機を用いることができる。非接触式の形状測定においては、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型などの等光路干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いることができる。
【0040】
曲面立体形状としては、凸部上面または凹部底面が少なくとも曲面を有していればよく、凸部上面または凹部底面が曲面のみを有していてもよく、凸部上面または凹部底面が曲面および平面を有するものであってもよい。なかでも凸部上面または凹部底面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましく、75%以上が曲面で構成されていることがより好ましい。凸部上面または凹部底面での曲面の割合が多いほど、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
なお、上記曲面の割合は、上述の破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することが可能である。
【0041】
また、曲面立体形状は、図5(b)に示すように、少なくとも、凸部上面または凹部底面t1と基底部面t2とを有していればよく、凸部上面または凹部底面、基底部面、および側面を有していてもよい。
【0042】
このような曲面立体形状としては、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の立体形状とすることができる。
【0043】
本発明においては、上述した柱体、錐体、および曲面立体形状を組み合わせた立体形状を用いることもできる。
【0044】
立体形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。立体形状が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあり、また立体形状が小さすぎると、簡易拡大鏡での観察が難しく、顕微鏡等を用いることが必要となり、容易に真贋判定することが困難になる場合があるからである。
【0045】
これらの立体形状は、本発明の識別情報付シートの用途等に合わせた形状とすることができ、また所定の意味を表現する形状とすることもできる。
【0046】
(b)印
印は、凸部または凹部の一部に表示されるものである。
【0047】
印の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。印が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあり、また印が小さすぎると、簡易拡大鏡での観察が難しく、顕微鏡等を用いることが必要となり、容易に真贋判定することが困難になる場合があるからである。
【0048】
印としては、例えば、文字、数字、符号、標章等の記号等が挙げられる。これらの印は、本発明の識別情報付シートの用途等に合わせた印とすることができ、所定の意味を表現する印とすることができる。
【0049】
このような印の形成方法としては、凸部または凹部の一部に所望の印を形成することができる方法であれば特に限定されない。例えば、印刷法を用いて凸部または凹部の一部に印を形成する方法、凸部または凹部の一部に賦型することにより印を形成する方法、凸部または凹部を形成する際に同時に印を形成する方法等を挙げることができる。
【0050】
印を印刷法により形成する場合、用いられるインクとしては一般的な印刷法に用いられるインクと同様とすることができる。また、上記インクに紫外線発光材料、赤外線発光材料、および量子ドット材料等を含有させて用いてもよい。発光により印の識別が可能であり、真贋判定をさらに容易に行うことができるからである。なお、上述した材料については、後述する「識別材料シートの材料」の項で説明するものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0051】
(c)組み合わせ情報
本発明においては、2種類以上の識別情報を組み合わせることによる組み合わせ情報を識別情報として用いることができる。組み合わせ情報としては、具体的には、図6に示すように2種類以上の凸部または凹部の立体形状(図6では凸部12aの立体形状が円柱s11と直方体s12)、図7に例示するような凸部12aと凹部12b、図8(a)に例示するような凸部または凹部の大小関係、図8(b)に例示するような2種類以上の印(図8(b)では「A」,「B」、および「C」)、図8(c)に例示するような印の大小関係、図8(d)に例示するような印の有無、さらに凸部または凹部の立体形状と付される印との組み合わせ等の異なる2種類以上の識別情報の組み合わせ等を挙げることができる。なお、図6、図7は本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。図8は本発明に用いられる識別情報の例の模式図である。また、凸部または凹部の立体形状については平面四角形状で示している。
【0052】
(2)識別部の形態
次に本発明における識別部の表示形態について説明する。
【0053】
本発明における識別部は少なくとも1つの凹凸形状、すなわち1つの凹部または1つの凸部を有するものであってもよく、複数の凹凸形状、すなわち複数の凸部もしくは複数凹部、または凸部および凹部を有するものであってもよい。
【0054】
また、識別部が複数の凹凸形状を有する場合、識別部における各々の凸部または凹部は、図1(a)、図2(a)に示すように同一の立体形状s1のみを有するものであってもよく、図6に示すように異なる立体形状s11、s12を有するものであってもよい。
【0055】
また、識別部が複数の凹凸形状を有する場合、識別部における各々の凸部または凹部は、同一の印を有するものであってもよく、異なる印を有するものであってもよい。
【0056】
本発明においては、識別部の各々の凸部または凹部がそれぞれ識別情報を有するものであることから、識別部は種々の形態をとることができる。
【0057】
具体的には、識別部における各々の凸部または凹部のすべてが同一の識別情報を有する態様(第1態様)と、識別部における各々の凸部または凹部が2種類以上の異なる識別情報を有する形態(第2態様)と、識別部における各々の凸部または凹部が共通識別情報および非共通識別情報を有する態様(第3態様)とを挙げることができる。
【0058】
(a)第1態様
本態様の識別部の形態は、識別部における各々の凸部または凹部のすべてが同一の識別情報のみを有するものである。
【0059】
本態様においては、識別部が少なくとも1つの凹凸形状を有するものであれば特に限定されないが、複数の凹凸形状を有することが好ましい。
【0060】
本態様に用いられる識別情報としては、識別部における各々の凸部または凹部のすべてに付与することができるものであれば特に限定されるものではない。
なお、識別部は凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を必須の構成として有することから、少なくとも任意の凸部または凹部の立体形状が識別情報として用いられるものである。
【0061】
また、本態様においては、図9に示すように、識別情報Sとして任意の凸部12の立体形状s1の他に、任意の印s’を併用することができる。なお、図9は、本発明の識別情報付シートの他の例を示す概略図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
(b)第2態様
本態様の識別部の形態は、識別部における各々の凸部または凹部が2種類以上の異なる識別情報を有するものである。
【0063】
本態様においては、識別部は複数の凹凸形状を有するものである。
【0064】
ここで、本態様において「各々の凸部または凹部が2種類以上の異なる識別情報を有する」とは、識別部における各々の凸部または凹部の全てが同一の識別情報を有さないことを指し、識別部における凸部または凹部には、2種類以上の異なる識別情報のうち1種類の識別情報を有する凸部または凹部と、上記1種類の識別情報を有さない凸部または凹部とが混在していることを指す。
なお、識別部は凸部または凹部を備える複数の凹凸形状を必須の構成として有することから、少なくとも任意の異なる2種類の凸部または凹部の立体形状、または凸部と凹部が識別情報として用いられるものである。
【0065】
本態様においては、2種類以上の異なる識別情報が用いられていればよく、具体的な2種類以上の異なる識別情報の組み合わせについては、上述した組み合わせ情報の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0066】
また本態様において、識別部における2種類以上の異なる識別情報の比率としては、識別部において各々の識別情報が同じ比率であってもよく、異なる比率であってもよい。
【0067】
(c)第3態様
本態様の識別部の形態は、識別部における各々の凸部または凹部が共通識別情報と、非共通識別情報とを有するものである。
【0068】
本態様においては、識別部は複数の凹凸形状を有するものである。
【0069】
ここで、共通識別情報とは、識別部における各々の凸部または凹部の全てが共通して有する同一の識別情報である。
一方、非共通識別情報とは、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となる識別情報であり、識別部における各々の凸部または凹部の全てが共通して有さない識別情報である。
【0070】
ここで、本発明の識別情報付シートにおいて、より高い偽造防止機能を発揮させるためには、識別部において複数の識別情報を表示することが考えられる。しかしながら、図7に示すように、各々の凸部または凹部に異なる識別情報を付与した場合、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて識別部を観察する際には、複数の凸部または凹部を同時に確認することが困難である場合があり、1つの凸部または凹部を確認することにより認証が行われる場合がある。この場合は、観察者により識別される識別情報が異なってしまう可能性があり、正確な真贋判定を行うことが困難となる場合がある。また、識別部に形成される各々の凸部または凹部が有するすべての識別情報を把握していなければならず、真贋判定に多くの時間がかかる可能性も考えられる。
【0071】
一方、識別部における各々の凸部または凹部が共通識別情報および非共通識別情報を有する場合は、まず識別部における各々の凸部または凹部の全てに共通する共通識別情報を一次条件として真贋判定を行い、さらに非共通識別情報を真贋判定の条件として用いることができるため、複数の条件を課して真贋判定を行うことが可能となる。これにより、識別情報付シートの偽造防止機能を向上させることが可能となる。
【0072】
ここで、共通識別情報および非共通識別情報を用いた真贋判定の一例について図を用いて説明する。図10(a)〜(f)は、種々の識別情報の例の模式図である。なお、図10(a)〜(f)中、平面四角形状は凸部の立体形状が直方体であることを、平面円形状は凸部の立体形状が円柱であることを、平面六角形状は凸部の立体形状が六角柱であることを示すものとする。
【0073】
図10(a)〜(f)に示されるいずれかの識別情報を有する識別情報付シートを用いて物品の真贋判定を行う場合、まず真正品を認証するための一次条件が、「A」で示される印を共通識別情報として有することであるとすると、図10(a)〜(d)に示すように、「A」で示される印を共通識別情報として有する識別情報付シートが付された物品を真正品、図10(e)〜(f)に示すように、「A」で示される印を共通識別情報として有さない識別情報付シートが付された物品を複製品と認証することができる。
【0074】
次に、真正品を認証するための二次条件が、直方体と円柱との2種類の異なる凸部の立体形状を非共通識別情報として有することであるとすると、図10(a)に示すように、上述した凸部の立体形状の種類を非共通識別情報として有する識別情報付シートが付された物品を真正品、図10(b)〜(d)に示すように、上述した凸部の立体形状の種類を非共通識別情報として有さない識別情報付シートが付された物品を複製品と認証することができる。
【0075】
なお、図示はしないが、本発明においては、共通識別情報および非共通識別情報を複数用いることにより、二次条件以降もさらに条件を課して認証を行うことができる。
【0076】
共通識別情報としては、識別部における各々の凸部または凹部の全てに共通して付与することが可能な識別情報であれば特に限定されるものではなく、具体的には、任意の凸部または凹部の立体形状や、任意の印等を挙げることができる。
共通識別情報としては、1つの識別情報のみを用いてもよく、複数の識別情報を用いてもよい。
【0077】
一方、非共通識別情報としては、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となる情報であれば特に限定されるものではなく、具体的には上述した組み合わせ情報の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、非共通識別情報としては、上述した組み合わせ情報のうちいずれか1つの組み合わせ情報を用いてもよく、2つ以上の組み合わせ情報を用いることも可能である。
【0078】
また、非共通識別情報に用いられる組み合わせ情報に用いられる各々の識別情報の比率については、識別部において各々の識別情報が同じ比率で存在してもよく、異なる比率で存在してもよい。各々の識別情報が異なる比率で存在する場合は、より高い偽造防止機能を発揮することができる。
【0079】
(3)識別部の構造
本発明における識別部は、上記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有するものである。
【0080】
また、上記凹凸形状を構成する各々の凸部または凹部の大きさとしては、各々の凸部または凹部が上述した識別情報を有することが可能な程度の大きさであれば特に限定されるものではない。ここで、本発明においては上述したように識別情報として少なくとも凸部または凹部の立体形状が用いられることから、上記各々の凸部または凹部の大きさとしては、通常、識別情報と同様に、拡大することにより観察可能な程度の大きさとされる。
【0081】
上記凸部または凹部の大きさとしては、拡大することにより拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には、上述した立体形状の大きさと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0082】
上記凸部の高さ、または上記凹部の深さとしては、基底部表面に形成可能であり、上述した立体形状を有することが可能であれば特に限定されるものではないが、0.1μm〜500μmの範囲内、なかでも1μm〜100μmの範囲内、特に5μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記凸部の高さ、または上記凹部の深さが上記範囲であれば、光の反射により凸部または凹部を視認しやすく、容易に識別可能となる。一方、上記凸部の高さ、または上記凹部の深さが薄すぎる場合、または厚すぎる場合は、各々の凸部または凹部に所望の識別情報を付与することが困難となる場合があるからである。
【0083】
なお、上記凸部の高さについては、凸部12aの形状が平坦な上面を有する場合は、図1(b)に示すように識別情報付シートの凸部12aが形成されていない部分の表面から凸部12aの上面までの距離x1を指し、凸部12aの形状が平坦な上面を有さない場合は、図3(a)および図4(a)に示すように、識別情報付シートの凸部12aが形成されていない部分の表面から凸部12aの高さが最大となる部分までの距離x2を指すものとする。
また、上記凹部の深さについては、凹部12bの形状が平坦な底面を有するものである場合は、図2(b)に示すように、識別情報付シートの凹部12bが形成されていない部分の表面から凹部12bの底面までの距離y1を指し、凹部12bの形状が平坦な底面を有さない場合は、図3(b)および図4(b)に示すように、識別情報付シートの凹部12bが形成されていない部分の表面から凹部12bの深さが最大となる部分までの距離y2を指すものとする。
【0084】
また、本発明においては、凸部または凹部の大きさ(u)および凸部の高さ(x1,x2)または凹部の深さ(y1,y2)が、それぞれx1,x2/u≧1/100またはy1,y2/u≧1/100を満たすことが好ましく、なかでもx1,x2/u≧30またはy1,y2/u≧30、さらにx1,x2/u≧20またはy1,y2/u≧20、特にx1,x2/u≧10またはy1,y2/u≧10であることが好ましい。凸部または凹部の大きさ(u)に対する凸部の高さ(x1,x2)または凹部の深さ(y1,y2)の比が上記範囲であれば、光の反射により凸部または凹部の立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。一方、上記の比が小さすぎる場合、または大きすぎる場合は、所望の識別情報を有する凸部または凹部を形成することが困難となる場合があるからである。
なお、上記凸部または凹部の大きさ(u)は、凸部または凹部の平面視における最大距離とする。例えば平面視における形状が図5(a)に示す形状である場合は、距離L1を指す。
上記凸部または凹部の大きさ(u)および凸部の高さ(x1,x2)または凹部の深さ(y1,y2)は、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
【0085】
識別部は、1つの凹凸形状を有するものであってもよく、複数の凹凸形状を有するものであってもよいが、上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することが好ましい。上記識別部が複数の上記凹凸形状を有することで、識別情報付シートに種々の識別情報を付与することができるため、識別情報付シートの偽造防止機能を向上させることが可能となるからである。
【0086】
より具体的には、識別部を構成する凸部または凹部の個数としては、1個以上であれば特に限定されるものではなく、識別情報付シートが固着される物品の用途により適宜選択されるものであるが、10個〜1,000,000,000個の範囲内、なかでも100個〜1,000,000個の範囲内であることが好ましい。識別部に形成される凸部または凹部の個数が上記範囲に満たない場合は、識別情報を有する凸部または凹部の位置の特定や、識別情報自体の認識を行う際に多くの時間がかかる可能性があるからである。なお、凸部または凹部の個数については、本発明の識別情報付シートの用途により適宜選択することができる。
【0087】
識別部における凸部または凹部の配置としては、識別部に表示される識別情報を認識することができる配置であれば特に限定されるものではなく、図1(a)に示すように、規則性を有するように配置されてもよく、図示しないが規則性を有さないようにランダムに配置されてもよい。
【0088】
また、本発明における識別部全体の大きさとしては、識別部の各々の凸部または凹部が有する情報を拡大することにより観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、識別部全体を目視することができる程度の大きさであってもよく、識別部全体についても拡大することにより観察することができるものであってもよく、本発明の識別情報付シートの用途により適宜選択することが可能である。
【0089】
2.基底部
本発明における基底部は、その表面に上述した識別部を有するものである。
【0090】
上記基底部の厚みとしては、基底部の表面に上述した識別部を形成することができ、識別情報付シートを所望の物品に用いることができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1μm〜800μmの範囲内、なかでも10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。基底部の厚みが上記範囲に満たない場合は、凹部を有する識別部を形成することが困難となる場合や、凸部を有する識別部を形成した場合に十分な自己支持性を有することが困難となるからであり、上記基底部の厚みが上記範囲を超える場合は、識別情報付シートが厚膜となるため、識別情報付シートを加工することが困難となる可能性があるからである。また、本発明の識別情報付シートが固着される物品の規格に沿わない場合があるからである。
なお、本発明における基底部の厚みとは、図1(b)や図2(b)に示すように、識別情報付シート10の識別部が形成されていない部分zを指すものである。また、基底部の厚みについては、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
なお、通常、識別情報付シートが凸部を備える凹凸形状を有するものである場合は、識別情報付シートの凸部の高さおよび基底部の厚みの総和である識別情報付シート全体の厚み、および凸部の高さをそれぞれ測定し、識別情報付シート全体の厚みと凸部の高さとの差を算出することにより、基底部の厚みが求められる。
【0091】
3.識別情報付シートの構造
本発明の識別情報付シートは、基底部の表面に識別部を有するものであれば特に限定されず、識別部が識別情報付シートの一部の面に形成されているものであってもよいし、識別情報付シートの全面に形成されているものであってもよい。
また、1つの識別情報付シートに1つの識別部が形成されているものであってもよく、複数の識別部が形成されているものであってもよい。
【0092】
また、本態様においては基底部の表面に識別部を有するものであれば特に限定されるものではなく、基底部と識別部とが一体で形成されていてもよく、基底部と識別部とが別体で形成されていてもよいが、基底部と識別部とが一体で形成されていることがより好ましい。本発明の識別情報付シートを簡便な方法で形成することが可能となるからである。
【0093】
本発明の識別情報付シートは、無色であってもよく有色であってもよく、後述の識別情報付シートの材料に応じて適宜選択される。識別情報付シートが有色である場合には、識別部の各々の凸部または凹部が有する識別情報を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0094】
また、本発明の識別情報付シートは、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、後述の識別情報付シートの材料に応じて適宜選択される。識別情報付シートが光透過性を有さない場合には、識別部の各々の凸部または凹部が有する識別情報を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0095】
また、本発明の識別情報付シートの形状としては、特に限定されるものではなく、矩形、多角形、円形、楕円形、その他、任意の形状とすることができる。
【0096】
本発明の識別情報付シートは、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0097】
4.識別情報付シートの材料
識別情報付シートの材料としては、上述した構成を有する識別情報付シートを製造できる材料であれば特に限定されるものではなく、通常、樹脂を含む材料が用いられる。
【0098】
上記樹脂としては、上記構成を有する識別情報付シートを形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な樹脂製部材に用いられている樹脂を挙げることができる。具体的には、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂等を挙げることができる。
【0099】
上記電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、特開2000−272295号公報に記載のウレタン変性アクリレート樹脂等を挙げることができる。
【0100】
上記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0101】
上記熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等を挙げることができる。
【0102】
これらの樹脂は、単独重合体または2種以上の共重合体として使用してもよい。
【0103】
感光性樹脂としては、ポジ型感光性樹脂およびネガ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。
【0104】
本発明に用いられる樹脂としては、上述した樹脂のなかでも、紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。紫外線硬化性樹脂を用いることにより、識別部の凸部や凹部が複雑な立体形状を有する場合であっても高精細に形成することが可能となるからである。
【0105】
本発明に用いられる識別情報付シートの材料としては、上述した樹脂以外にも適宜必要な成分を含有することが可能である。このような成分としては、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、顔料や染料等の着色材料等の機能性材料を含有することが好ましい。上述したように、凸部または凹部が有する識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるからである。中でも、本発明の識別情報付シートは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの材料は、材料の特性による識別が可能であり、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明の識別情報付シートは、紫外線発光材料、赤外線発光材料および量子ドット材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。発光により識別が可能であり、真贋判定をさらに容易に行うことができるからである。
以下、各機能性材料に分けて説明する。
【0106】
(1)紫外線発光材料
本発明に用いられる紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0107】
識別情報付シート中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0108】
(2)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0109】
識別情報付シート中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0110】
(3)赤外線反射材料
本発明に用いられる赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0111】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0112】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0113】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0114】
識別情報付シート中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0115】
(4)赤外線吸収材料
本発明に用いられる赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0116】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0117】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂や感光性樹脂を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0118】
識別情報付シート中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0119】
(4)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズの微粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0120】
量子ドット材料は、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0121】
量子ドット材料のコアとなる材料として具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0122】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。
【0123】
なかでも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0124】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0125】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0126】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0127】
また、量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0128】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0129】
識別情報付シート中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0130】
(5)磁性材料
本発明に用いられる磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0131】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明の識別情報付シートの存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有する識別情報付シートと、磁性材料を含有しない識別情報付シートとに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有する識別情報付シートでは共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しない識別情報付シートでは共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することにより識別情報付シートの存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0132】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す識別情報付シートを例示することができる。
【0133】
識別情報付シート中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲内がより好ましい。磁性材料の含有量が少なすぎると、識別が困難となり、磁性材料の含有量が多すぎると、識別情報付シート表面への立体形状の形成が困難となる場合があるからである。
【0134】
(6)着色材料
本発明に用いられる着色材料としては、顔料、染料を挙げることができる。
着色材料は、識別情報付シートに含有させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な顔料、染料を用いることができる。
【0135】
識別情報付シート中の着色材料の含有量としては、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0136】
5.その他の構成
本発明の識別情報付シートは、上記基底部および識別部を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な構成を適宜選択して用いることが可能である。
なお、以下の説明において「識別情報付シートの表面に形成される」とは、直接形成される場合だけではなく、他の層を介して形成される場合を含む概念である。
【0137】
(1)金属層
本発明の識別情報付シートは、識別情報付シートの識別部側の面に金属層が形成されていることが好ましい。識別部側の面に金属層が形成されていることにより、光の反射により識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、後述するハードコート層を形成する場合、ハードコート層も樹脂を用いて形成されるものであることから、識別情報付シートおよびハードコート層の屈折率の差が小さいために、識別情報付シートとハードコート層との界面が見えにくくなり、各々の凸部または凹部が有する識別情報を視認するのが困難になることが懸念されるが、識別部側の面に金属層が形成されていることで、識別情報の視認性を高めることが可能となる。
金属層の厚みとしては、識別部における各々の識別情報の視認性を向上させることができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜250nm程度とすることができ、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。金属層が厚すぎると、識別情報が損なわれてしまうおそれがあり、金属層が薄すぎると、金属層の形成が困難であったり、識別情報の視認性を高める効果が十分に得られなかったりする可能性があるからである。
【0138】
このような金属層に用いられる材料としては、金属および金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物が用いられ、例えばAl、ZnS、TiO2、Cu、Au、Pt等が挙げられる。
【0139】
また、金属層の形成方法としては、識別情報付シートの識別部側の面に所望の厚みで金属層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば金属蒸着法、金属メッキ法、スパッタ法等を挙げることができる。
【0140】
(2)粘着層
本発明の識別情報付シートは上記識別情報付シートの少なくとも一方の表面に粘着層が形成されていることが好ましい。上記粘着層を有することにより、本発明の識別情報付シートを所望の物品に容易に貼付することが可能となる。
【0141】
上記粘着層の形成位置としては、本発明の識別情報付シートの少なくとも一方の表面に形成されていればよく、本発明の識別情報付シートが固着される物品により適宜選択することができる。具体的には、識別情報付シートの識別部側に形成されていてもよく、識別情報付シートの識別部側とは反対側に形成されていてもよく、識別情報付シートの両側表面に形成されていてもよい。
【0142】
上記粘着層の厚みとしては、本発明の識別情報付シートを所望の物品に固着することができ、かつ固着された識別情報付シートの物品から容易に剥離しないものとすることができる程度であれば特に限定されるものではなく、本発明の識別情報付シートの用途に応じて適宜選択することが可能である。
【0143】
粘着層に用いられる粘着剤としては一般的な粘着剤と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0144】
(3)剥離層
本発明における識別情報付シートが、上述した粘着層を有する場合、粘着層上に剥離層が配置されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本発明の識別情報付シートの取り扱いが容易になるからである。
本発明の識別情報付シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0145】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0146】
(4)識別情報付シート用基材
本発明の識別情報付シートは識別情報付シートの識別部側とは反対側の基底部表面に識別情報付シート用基材が配置されていることが好ましい。識別情報付シート用基材を有することにより、識別情報付シートの強度を高めることが可能となる。
【0147】
識別情報付シート用基材としては、識別情報付シートを支持することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、透明基材であってもよいし、透明性を有さない基材であってもよいが、透明基材であることが好ましい。識別情報付シート用基材が透明性を有することにより、識別情報付シート用基材側からも識別情報を観察することが可能となるからである。
【0148】
透明基材の光透過性としては、各々の凸部または凹部が有する識別情報が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0149】
また、透明基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本発明の識別情報付シートを種々の形状の物品に適用することが可能となるからである。
【0150】
このような透明基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0151】
また、透明基材の表面は、識別情報付シートとの密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、識別情報付シートおよび透明基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、透明基材製造時に処理されるものと、製造後の透明基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した透明基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の透明基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0152】
透明基材の厚みは、本発明の識別情報付シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0153】
(5)ハードコート層
本発明においては、識別情報付シートの識別部側の面上にハードコート層が形成されていてもよい。これにより、識別部が有する凹凸形状を保護することが可能となり、各々の凸部または凹部が損傷することにより識別情報が消失してしまうことを防止することができる。
【0154】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、各々の凸部または凹部の識別情報が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0155】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、識別部を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0156】
ハードコート層の膜厚は、識別部を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0157】
(6)ホログラム層
本発明においては、識別情報付シートの識別部側と反対側の表面にホログラム層が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0158】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0159】
6.識別情報付シートの製造方法
本発明の識別情報付シートの製造方法としては、上述した構成を有する識別情報付シートを製造することができる方法であれば特に限定されず、例えば、後述する「B.識別情報付シートの製造方法」の項で説明する製造方法や、以下の製造方法を用いることができる。
識別情報付シートの製造方法としては、例えば上述した識別情報付シートの材料を含む樹脂層の表面に切削加工を施すことにより、上述した識別部における凹凸形状を形成して識別情報付シートを製造する方法を用いることができる。
また例えば上述した識別情報付シートの材料として感光性樹脂を用いた場合は、感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層の表面に階調露光を施し、現像することにより凹凸形状を有する識別部を形成して識別情報付シートを製造することができる。なお、階調露光および現像に関する条件等については、後述する「B.識別情報付シートの製造方法」の項で説明するのでここでの説明は省略する。
【0160】
7.識別情報付シート
本発明の識別情報付シートは、偽造防止用途に好適に用いられ、そのままラベルとして使用することもでき、偽造防止媒体に適用することもできる。
【0161】
上記識別情報付シートを偽造防止媒体に適用する際には、そのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。さらに、本発明の識別情報付シートは、偽造防止媒体は複数層から構成される場合は、偽造防止媒体の任意の層間に挟み込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合は識別情報付シートを細長く切断し、紙にすき込んでもよい。
【0162】
本発明の識別情報付シートは、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0163】
8.カード
本発明の識別情報付シートは、カードの偽造防止に好適に用いることができる。
このようなカードとしては、上記識別情報付シートが固定されているものであれば特に限定されるものではなく、カード表面に識別情報付シートが固定されていてもよいし、カードの内部に埋め込まれていてもよいが、カードの内部に埋め込まれていることが好ましい。カードを構成する層により識別情報付シートを保護することができ、識別情報付シートが有する識別情報を長期間にわたり良好な状態で保持することができるからである。以下、識別情報付シートが埋め込まれたカード(以下、埋め込みカードと称して説明する場合がある。)について説明する。
【0164】
図11(a)は、埋め込みカードの一例を示す概略断面図であり、図11(b)は、埋め込みカードにおける識別情報付シートの配置を示す図である。
図11(a)、(b)に示すように、埋め込みカード100は、カード基材101と、カード基材101上に形成された第1樹脂層102と、第1樹脂層102上に配置された識別情報付シート10と、識別情報付シート10上に形成された第2樹脂層103とを有するものである。
【0165】
上記埋め込みカードにおける識別情報付シートの配置としては、識別情報付シートが第1樹脂層および第2樹脂層の間に配置されていれば特に限定されるものではなく、埋め込みカードの一部分に配置されていてもよいし、埋め込みカードの全面に配置されていてもよい。また、埋め込みカードにおいては、通常、識別情報付シートの識別部側に第2樹脂層が配置されるが、カード基材および第1樹脂層が光透過性を有する場合は、識別情報付シートの識別部側に第1樹脂層が配置されていてもよい。
【0166】
カード基材としては、カードの用途に応じて適宜選択されるものである。カード基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。カード基材の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0167】
また、第1樹脂層は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。中でも、カード基材と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、上述した識別情報付シート用基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、上述した識別情報付シート用基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第2樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
カード基材と第1樹脂層と識別情報付シートと第2樹脂層との積層方法としては、例えば、各層を接着層を介して積層する方法、各層を熱圧着により積層する方法等を挙げることができる。
【0168】
また、埋め込みカードとしては、上述した構成を有するものあれば特に限定されるものではなく、必要に応じて任意の層を有することができる。これらの層については、一般的なカードに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0169】
B.識別情報付シートの製造方法
次に、本発明の識別情報付シートの製造方法について説明する。
本発明の識別情報付シートの製造方法は、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明した識別情報付シートを製造する製造方法であり、基体表面に、上記識別部の上記凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する原版形成工程と、樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する識別情報付シート形成用層準備工程と、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に上記識別部の上記凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、上記識別情報付シート形成用層から上記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する固化・剥離工程とを有することを特徴とする製造方法である。
【0170】
ここで、本発明の識別情報付シートの製造方法について図を用いて説明する。図12(a)〜(f)は、本発明の識別情報付シートの製造方法の一例を示す工程図である。本発明の識別情報付シートの製造方法においては、まず、図12(a)に示すように基体21を準備し、次に図12(b)に示すように基体21の表面に所望の凹凸形状の反転形状を有する転写部22を形成して原版20を形成する(原版形成工程)。次いで、図12(c)に示すようにスペーサ32が配置された基材31上に、樹脂を含む識別情報付シート用塗工液を塗布することにより識別情報付シート形成用層10’を形成する(識別情報付シート形成用層準備工程)。次いで、図12(d)に示すように、識別情報付シート形成用層10’と原版20の転写部22とを密着させることにより、識別情報付シート形成用層10の表面に所望の凹凸形状を賦型する(賦型工程)。次いで、図示はしないが、賦型工程後に、凹凸形状が賦型された識別情報付シート形成用層10’を固化し、次いで、図12(e)に示すように、固化された識別情報付シート形成用層10’から原版20を剥離して識別情報付シート10を形成する(固化・剥離工程)。その後、図12(f)に示すように、必要に応じてスペーサ32や基材31を識別情報付シート10から剥離する工程等が行われる。なお、図示はしないが、本発明における固化・剥離工程では識別情報付シート形成用層から原版を剥離した後、識別情報付シート形成用層を固化することにより識別情報付シートを形成してもよい。
本発明の識別情報付シートの製造方法は、上述した各工程を経ることにより識別情報付シート10を製造することができる。なお、識別情報付シートの各構成については図1(b)で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0171】
本発明によれば、上述した「A.識別情報付シート」の項で記載した構成を有する識別情報付シートを精度高く、かつ簡便な方法で製造することが可能となる。
以下、本発明の識別情報付シートの各工程について説明する。
【0172】
1.原版形成工程
本発明における原版形成工程は、基体の表面に、上記識別部の凹凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する工程である。
【0173】
識別部の凹凸形状の反転形状については、識別情報付シートの識別部が所望の識別情報を有することが可能となる形状であれば特に限定されず、製造される識別情報付シートの用途に応じて適宜選択することができる。
なお、識別部および識別情報については、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明したので、ここでの説明は省略する。
【0174】
本工程に用いられる基体としては、その表面に所望の転写部を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、原版の形成方法に合わせて適宜選択することができる。基体としては、具体的にはガラス基板や、感光性樹脂を含む樹脂層を有する基板、金属層を有する基板等を挙げることができる。
【0175】
本工程に用いられる原版の形成方法としては、所望の反転形状を有する転写部を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、例えば基体の表面に切削加工を施すことにより所望の反転形状を形成する方法、エッチング法による方法、フォトリソグラフィー法による方法等を挙げることができる。なかでも、エッチング法による方法、フォトリソグラフィー法による方法を用いることが好ましい。以下、これらの方法について説明する。
【0176】
(1)エッチング法による原版の形成方法
エッチング法による原版の形成方法について説明する。この方法は、基体としてガラス基板を用い、ガラス基板の表面をエッチングして所望の反転形状のパターンを形成することにより、転写部を形成する方法である。
ガラス基板の表面をエッチングする方法については、一般的な方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0177】
(2)フォトリソグラフィー法による原版の形成方法
次に、フォトリソグラフィー法による原版の形成方法について説明する。この方法は、ガラス基板等の基材表面に、感光性樹脂層を形成し、露光を行った後、現像することにより、転写部を形成する方法である。
【0178】
感光性樹脂層については、一般的な感光性樹脂を用いることにより形成することができる。また、感光性樹脂層の膜厚については、所望の反転形状を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、製造される識別情報付シートの用途に合わせて適宜調整される。
【0179】
本発明における露光方法としては、所望の反転形状を形成することができるものであれば特に限定されないが、階調露光であることが好ましい。階調露光を用いることにより、種々の反転形状を有する原版を形成することができるからである。
感光性樹脂層に階調露光を施す方法としては、感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行うことで、所定の立体形状を形成可能であれば特に限定されるものではないが、感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法、および、階調マスクを用いる方法が好ましい。複雑な立体形状も形成可能となるからである。
【0180】
感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法の場合、描画装置としては、例えば、レーザー描画装置や電子線描画装置を用いることができる。
本発明において、所定の立体形状の他に所定の印を有する凸部または凹部を製造する場合にも、1回の直接描画を行うことで、立体形状および印を形成することができる。
【0181】
また、階調マスクを用いる方法の場合、階調マスクとしては、例えば、露光波長では解像しない微細なドットパターンの分布状態により、露光する際の透過光量(露光量)分布を制御するフォトマスクや、透明基板上に遮光剤が所定の濃度パターンで分散しているフォトマスク(グレイマスク)を用いることができる。
ドットパターンのフォトマスクについては、特開2004−296590号公報を参照することができる。また、グレイマスクについては、特開2002−6473号公報を参照することができる。
本発明において、所定の立体形状の他に所定の印を各々の凸部または凹部に賦型する場合には、2種類の階調マスクを準備し、階調マスクを変えて2回露光することで、立体形状および印を形成することができる。
【0182】
現像処理を行う方法としては、特に限定されるものではないが、例えば現像液を用いる方法等を挙げることができる。現像液としては、一般的な現像液を用いることができ、感光性樹脂層の種類等に応じて適宜選択される。
【0183】
現像条件は、一般的なフォトリソグラフィー法に用いられる現像条件と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0184】
(3)原版
本工程で用いられる原版としては、上述した形成方法により形成された原版をそのまま用いてもよく、上記原版をマスター版とし、マスター版から複製された複製版を用いてもよい。なお、複製版の形成方法については公知の方法を用いることができる。
【0185】
また、上記原版の転写部側表面に離型処理が施されていてもよい。
【0186】
2.識別情報付シート形成用層準備工程
本発明における識別情報付シート形成用層形成工程は、樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する工程である。
【0187】
本工程においては、所望の凹凸形状を有する識別部を形成することが可能な識別情報付シート形成用層を準備することが可能であればよく、具体的には、熱可塑性樹脂からなる基板を予め準備してもよく、樹脂を含む識別情報付シート用塗工液を用いて識別情報付シート形成用層を形成してもよい。
【0188】
熱可塑性樹脂からなる基板を用いる場合、基板に用いられる熱可塑性樹脂については、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、基板の厚みについては、製造される識別情報付シートの用途等により適宜選択することができる。
【0189】
一方、識別情報付シート用塗工液を用いる場合、上記識別情報付シート用塗工液としては、所望の識別情報付シートを形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明した樹脂やその他の成分のほか、必要に応じて溶剤や反応開始剤、硬化剤、離型剤等の各種の添加剤を添加することができる。溶剤および添加剤等については、一般的な樹脂部材を形成する際に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0190】
本工程により準備される上記識別情報付シート形成用層は紫外線硬化性樹脂を含むことが好ましい。識別情報付シート形成用層が紫外線硬化性樹脂を含むことにより、後述する賦型工程で、識別情報付シート形成用層に賦型される識別部の凸部や凹部の立体形状が複雑な場合であっても高精細な識別情報付シートを製造することが可能となる。
【0191】
識別情報付シート形成用層の厚みとしては、基底部および基底部上に形成された識別部を有する識別情報付シートを形成することができる程度であれば特に限定されず、製造される識別情報付シートの用途に応じて適宜選択することができる。
【0192】
上記識別情報付シート形成用層の形成方法としては、上述した厚みを有するように形成することが可能であり、かつ後述する賦型工程で識別情報付シート形成用層の表面に上述した凹凸形状を形成することが可能であれば特に限定されず、例えば基材上に識別情報付シート用塗工液を塗布することにより形成する方法、上述した原版の転写部側表面に識別情報付シート用塗工液を塗布することにより形成する方法等を挙げることができる。
【0193】
基材上に識別情報付シート用塗工液を塗布する場合に用いられる基材としては、識別情報付シート形成用層を支持することが可能であれば特に限定されるものではなく、上述した「A.識別情報付シート」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0194】
また、上記基材上にはスペーサが配置されていることが好ましい。スペーサを有することにより、識別情報付シート形成用層の厚みをより好適に制御して形成することが可能であり、後述する賦型工程においても識別情報付シート形成用層の表面に凹凸形状を賦型しやすくなるからである。
【0195】
このようなスペーサとしては、スペーサで囲われた領域内に識別情報付シート用塗工液を保持することができるものであれば特に限定されないが、樹脂製フィルムであることが好ましい。スペーサが樹脂製フィルムである場合は、識別情報付シートの厚みを制御しやすくなるからである。
【0196】
なお、本工程は、必要に応じて識別情報付シート形成用層を乾燥する工程を有していてもよい。
【0197】
3.賦型工程
上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に上記識別部の凹凸形状を賦型する工程である。
【0198】
本工程においては、例えば上記識別情報付シート形成用層に含まれる樹脂が電離放射線硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂である場合は、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させ、必要に応じて圧力を加えることにより、上記識別情報付シート形成用層表面に凹凸形状を賦型することができる。
【0199】
一方、上記識別情報付シート形成用層に含まれる樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、上記識別情報付シート形成用層表面と上記原版の上記転写部とを密着させて加熱することにより上記識別情報付シート形成用層表面に凹凸形状を賦型することができる。なお、この場合も必要に応じて圧力を加えてもよい。
【0200】
4.固化・剥離工程
本発明における固化・剥離工程は、上記賦型工程後に、上記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、上記識別情報付シート形成用層から上記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する工程である。
【0201】
本工程においては、上記識別情報付シート形成用層を固化した後に、上記識別情報付シート形成用層から原版を剥離して識別情報付シートを形成してもよく、上記識別情報付シート形成用層から原版を剥離した後、上記識別情報付シート形成用層を固化して識別情報付シートを形成してもよい。
【0202】
本工程において、上記識別情報付シート形成用層を固化した後に原版を剥離する場合、上記識別情報付シート形成用層を固化する固化方法としては、所望の凹凸形状を有する識別情報付シートを形成することができれば特に限定されるものではなく、乾燥させてもよく、識別情報付シート形成用層が熱可塑性樹脂からなる場合は冷却による固化処理を行ってもよく、識別情報付シート形成用層が熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂からなる場合は、種々の硬化処理により硬化させてもよい。
【0203】
本工程に用いられる固化処理、硬化処理としては、識別情報付シートに用いられる樹脂により適宜選択される。具体的な固化処理、硬化処理については、公知の方法を用いることができる。
【0204】
また、固化された識別情報付シート形成用層から原版を剥離する剥離方法としては、識別情報付シート形成用層に形成された凹凸形状を損傷させることなく剥離することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。
【0205】
なお、識別情報付シート形成用層を乾燥させて固化した場合は、原版を剥離した後、上述した固化処理または硬化処理が行われる。
【0206】
一方、本工程において上記識別情報付シート形成用層から原版を剥離した後に固化を行う場合、識別情報付シート形成用層から原版を剥離する方法としては、識別情報付シート形成用層に形成された凹凸形状を損傷させることなく剥離することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、識別情報付シート形成用層が熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂からなる場合は、未乾燥な状態の識別情報付シート形成用層から原版を剥離してもよく、また例えば、識別情報付シート形成用層が熱可塑性樹脂からなる場合は、軟化された状態の識別情報付シート形成用層から原版を剥離してもよい。
【0207】
なお、原版を剥離した後の識別情報付シート形成用層の固化方法については、上述した固化処理、硬化処理と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0208】
6.その他の工程
本発明の識別情報付シートの製造方法は、上述した原版形成工程、識別情報付シート形成用層形成工程、賦型工程、固化・剥離工程を有する製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜選択して追加することが可能である。
【0209】
このような工程としては、例えば、識別情報付シート形成用層形成工程に用いられる基材を剥離する工程を挙げることができる。なお、剥離方法については識別情報付シートを損傷させることなく基材から識別情報付シートを剥離することが可能であれば特に限定されない。
また、このような工程としては、識別情報付シートにおける識別部の各々の凹部または凸部に印を印刷する工程、識別情報付シートの識別部側表面に金属層を形成する工程、識別情報付シートの一方の表面に粘着層を形成する工程等を挙げることができる。
【0210】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0211】
以下、実施例についてさらに具体的に説明する。
【0212】
[原版の形成]
厚さ0.7mmのガラス基板上にポジ型レジスト(東京応化工業製LA900)をスピンコーターを用いて塗布し、130℃で10分間加熱することにより、塗膜を形成した。なお、塗膜の厚さについては、現像硬化後の最大膜厚が2μmとなるように調整した。
【0213】
次に、縦100μm、横100μmの領域内に形成されたハート型形状パターンで、パターンの中央部が遮光部であり、パターンの中央部から外側に向かって露光光の透過率が連続的に高くなるような濃度階調を有する階調マスクを用い、アライナーにて365nmの紫外光を照射した。なお、露光量は800mJとした。露光後に現像液(東京応化工業製NMD−3)を用いて5分間現像した後、純水にて洗浄することにより、中央部の膜厚が高く周辺部の膜厚が低いハート型のパターンを有する原版を形成した。
【0214】
[識別情報付シートの形成]
次に、厚さ0.7mmのガラス基板に、スペーサとして厚さ110μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けた。なお、PETフィルムはガラス基板を底面とし、PETフィルムが側面とする空間が形成されるように配置した。上記空間内にUV硬化性樹脂を充填して識別情報付シート形成用層を形成し、識別情報付シート形成用層と原版の転写部とが密着し、上述した空間を塞ぐようにして、原版を配置した。
【0215】
原版側からUV照射機にて、波長365nmの紫外線を1000mJ照射し、識別情報付シート形成用層を固化させた後、原版およびガラス基板を剥離することにより、識別情報付シートを形成した。
【0216】
なお、識別情報付シートの識別部には、所望の凹凸形状を形成することができた。
【符号の説明】
【0217】
10 … 識別情報付シート
10’ … 識別情報付シート形成用層
11 … 基底部
12 … 識別部
12a … 凸部
12b … 凹部
S … 識別情報
20 … 原版
21 … 基体
22 … 転写部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部と、
前記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、
前記識別部の各々の前記凸部または前記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とする識別情報付シート。
【請求項2】
前記識別部が複数の前記凹凸形状を有することを特徴とする請求項1に記載の識別情報付シート。
【請求項3】
前記識別情報付シートの前記識別部側に金属層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の識別情報付シート。
【請求項4】
前記識別情報付シートの少なくとも一方の表面に粘着層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の識別情報付シート。
【請求項5】
基底部と、前記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察可能な凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、前記識別部の各々の前記凸部または前記凹部は、形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する識別情報付シートを製造する識別情報付シートの製造方法であって、
基体表面に、前記識別部の前記凹凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する原版形成工程と、
樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する識別情報付シート形成用層準備工程と、
前記識別情報付シート形成用層表面と前記原版の前記転写部とを密着させることにより、前記識別情報付シート形成用層表面に前記識別部の前記凹凸形状を賦型する賦型工程と、
前記賦型工程後に、前記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、前記識別情報付シート形成用層から前記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する固化・剥離工程と
を有することを特徴とする識別情報付シートの製造方法。
【請求項6】
前記識別情報付シート形成用層は紫外線硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の識別情報付シートの製造方法。
【請求項1】
基底部と、
前記基底部の表面に形成され、凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、
前記識別部の各々の前記凸部または前記凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有することを特徴とする識別情報付シート。
【請求項2】
前記識別部が複数の前記凹凸形状を有することを特徴とする請求項1に記載の識別情報付シート。
【請求項3】
前記識別情報付シートの前記識別部側に金属層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の識別情報付シート。
【請求項4】
前記識別情報付シートの少なくとも一方の表面に粘着層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の識別情報付シート。
【請求項5】
基底部と、前記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察可能な凸部または凹部の少なくとも一方を備える凹凸形状を有する識別部とを有し、前記識別部の各々の前記凸部または前記凹部は、形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する識別情報付シートを製造する識別情報付シートの製造方法であって、
基体表面に、前記識別部の前記凹凸形状の反転形状を有する転写部を形成して原版を形成する原版形成工程と、
樹脂を含む識別情報付シート形成用層を準備する識別情報付シート形成用層準備工程と、
前記識別情報付シート形成用層表面と前記原版の前記転写部とを密着させることにより、前記識別情報付シート形成用層表面に前記識別部の前記凹凸形状を賦型する賦型工程と、
前記賦型工程後に、前記識別情報付シート形成用層を固化する工程、および、前記識別情報付シート形成用層から前記原版を剥離する工程を順不同に行い識別情報付シートを形成する固化・剥離工程と
を有することを特徴とする識別情報付シートの製造方法。
【請求項6】
前記識別情報付シート形成用層は紫外線硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の識別情報付シートの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【公開番号】特開2012−121177(P2012−121177A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271914(P2010−271914)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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