説明

識別機能を有する装置及びこれに使用する被識別部材

【課題】
製品の真贋を簡単にかつ確実に行う識別機能を備えた装置を提供する。
【解決手段】
識別機能を備えた装置は、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた被識別部材と、この被識別部材を取り外し可能に装着する本体とを有する。前記本体には、前記被識別部材が本体に装着されたときに被識別部材のコア部から放出される電磁波等を感知するセンサ部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別機能を有する装置に関し、特に、プリンタ、複写機、ファクシミリ等で使用するインクカートリッジ、ゲーム機で使用するROMカートリッジ、認証カード等の識別(真贋、即ち正規品か非正規品かの判定等)に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の印刷装置において、非正規品のインクカートリッジが使用されると、印刷性能が劣化し、故障を誘発し、またメンテナンスに支障をきたす。そこで、インクカートリッジを識別して非正規品の使用を排除する必要がある。
【0003】
こうした非正規品を識別する従来のシステムを図17に示す。図示において、識別のための情報を記憶させたICチップ(ICタグ)をカートリッジに設け、カートリッジを装置本体に装着させたときに、本体側に設けたリーダ(又はセンサ)がICチップ内の情報を読み取り、その読み取られた情報に基づき、真贋判定ロジックが、装着されたカートリッジの真贋を判定していた(例えば、特開2000−246921、特開2004−90517)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−246921号公報
【特許文献2】特開2004−90517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のシステムにおいては、使用されるICチップに必要な情報が記憶されているから、ICチップそのものを挿げ替えられてしまった場合は、正規品か非正規品か区別がつかなくなってしまうという致命的な問題がある。
【0006】
そこで、各種認証に利用される真性〈真正〉なランダムパルス発生器(RPG)を、こうしたカートリッジ等の識別に利用できないか検討してみると、次のような問題があることが分かった。
【0007】
RPGは、通常、基礎となる素子部分(放射線源、(例えば、原子核の自然崩壊によりα粒子を放出する放射体)を含んだ溶液を、例えば専用のプレートに滴下したコア部と、放出されたα粒子を受け止め電気信号に変化するセンサ部とを一体に組み合わせたもの)とアンプなどの各種周辺回路を含む一個のモジュールとして取り扱われるように設計されている。そのため、RPGは、これと、RPGから不定期に出力されるパルスに応答するだけの単純な回路とを組むだけで、すぐに利用できるというメリットをもたらす。
【0008】
しかし、RPGを使用せず、他の回路に差し替えられたとき、果たしてそのパルスが自然原理に則した真性なものであるのか、それとも人工的なものなのか、瞬時に判断する術が無いため、真贋判定が不可能となってしまう。もちろん、パルスをある一定の時間以上観察し続けられるようであれば、パルスの間隔に贋品固有の人工的な作為を見出すことは可能であるかも知れないが、判定時間に対して余裕が許されない場合(現状ではそのような場合がほとんど)は、これでは解決にはならない。
【0009】
RPGを利用するにせよ、あるいは真贋を識別するための情報を記憶させたICチップを利用するにせよ、これまでの真贋判定(正規品、非正規品の識別)の技術では、判定する機器本体(例えばプリンタ本体)と判定される部品(インクカートリッジ等)間を、信号を交信する単純なインターフェイスを用いて分断せざるを得ない。信号源(情報源)がICチップやRPGモジュール等に含まれそれ自体で完結して閉じている限り、この部分で成りすませば、インターフェイスの先にある認証機器本体を騙すことができてしまう。しかもそれは真贋を判定される側、即ち、インクカートリッジ側を改造することで成立してしまう。そのため、個人でも改造が容易となり、非正規品の使用に歯止めが効かないことになる。
【0010】
こうした問題を解決するため、信号源そのものを分断して、その一部を認証機器本体側に実装し、本体側と部品側の両方が揃って初めて信号源として成り立つようすることが考えられる。
【0011】
しかしICチップそのものについては、これを分割することは不可能であり、ICチップとその周辺回路の間で分割することになろうが、それは単にインターフェイスを複雑にするだけであって、問題を解決したことにはならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、こうした従来の問題点を解決してRPGを真贋判定に利用することを一つの目的とするもので、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた被識別部材(例えば、インクカートリッジ、ゲーム用ROMカートリッジ、認証カード等)と、この被識別部材を取り外し可能に装着する本体(例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ等、PC、ゲーム機、カードリーダ等)とを有し、前記本体には、前記被識別部材が本体に装着されたときに被識別部材のコア部から放出される電磁波等を感知するセンサ部を設けた識別機能を有する装置を提供する。
【0013】
また本発明の一実施形態による装置は、放射体が、自然崩壊によりランダムなα粒子又はその他の放射線を放出する。
【0014】
また本発明の他の実施形態による装置は、被接続部材を装置本体に装着する前は閉じられ、また装着したとき又はその後に開くシャッターを更に有する。
【0015】
また本発明の他の一実施形態による装置は、シャッターが被識別部材側及び装置本体側のいずれか又は両方に設けられる。
【0016】
また本発明の他の一実施形態による装置は、シャッターが被識別部材のコア部を覆う剥離自在のテープ又は剥離紙等である。
【0017】
また本発明の他の一実施形態による装置は、更に、被識別部材のコア部から放出される電磁波等の特性を監視する監視手段を設ける。
【0018】
また本発明の他の一実施形態による装置は、監視手段が、前記コア部から放出された電磁波等に基づき得られた乱数の発生確率を監視する。
【0019】
また本発明は、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた被識別部材を提供する。
【0020】
また本発明の一実施形態による被識別部材は、電池、又はデータ、プログラム等を記録した又は記録するための媒体、又は当該媒体を含むボード、カートリッジ等である。
【0021】
また本発明は、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた、被識別部材に取り付ける識別用部材を提供する。
【0022】
また本発明の一実施形態による識別用部材は、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を有する剥離可能なシール又はシート等である。
【0023】
また本発明の他の一実施形態による識別用部材は、シール等が、コア部と、このコア部を覆う剥離自在のテープ又は剥離紙等とを有するシール等である。
【0024】
また本発明の他の一実施形態による識別用部材は、コア部を、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含んだ材料を使用して印刷することにより形成する。
【0025】
また本発明の他の一実施形態による装置は、被識別部材を本体に装着したときに、前記コア部と前記センサ部との間に隙間の生じないように、センサ部の側に筒状のスペーサ部材を設ける。
【0026】
また本発明の他の一実施形態による装置は、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部から放出されるパルスを検知するためのセンサ部を、フォトICに組み込む。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る装置は、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を被識別部材に設け、かつその放出されたランダムな電磁波等を感知するセンサ部を本体側に設けるから、被識別部材が本体に装着されたときにのみコア部とセンサ部とが一体化し(このときコア部とセンサ部とが揃い、信号源(情報源)が成立するとみなせる)、センサ部がコア部から放出される電磁波等を感知すれば被識別部材が真正であると判定する。従って、従来の情報源(コード等)がICチップ等に記憶されていて、その情報源からのデータを読み取り認証するものに比べ、極めて簡単な構造で真贋判定ができる。しかも、ランダムな電磁波等を利用するから、真贋判定の精度は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態の梗概的な構成を示す図である。ここでは、図17と比較のため、ICチップは、ICチップAとICチップBとに分割可能なものとして説明している。
【0029】
図示実施形態に係る装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の印刷機能を有する装置10であって、真贋(正規品か非正規品か)の判定の対象となる被識別部材は、インク、トナー等の消耗品を収納するカートリッジ又は容器等1である。このカートリッジ等1は、装置の本体2に取り外し自在に装着できる。
【0030】
図1において、ICチップは、真性なランダムパルスの発生器(RPGモジュール)を含む。このRPGモジュール中の要となるRPG素子は、自然崩壊によりランダムな放射線(特にα粒子線)を放出する放射体を有するコア部1A(後述の図2参照)と、その放射線を受け止め、電気信号に変換するセンサ(例えばフォトダイオード)部2A(後述の図2参照)とが一対となって構成される。図示の如く、本実施形態では、ICチップは、被識別体(カートリッジ等)側のICチップAと装置の本体側のICチップBとに分けられる。ICチップAは、RPG素子のコア部1Aを含み、カートリッジ等1に取り付けられ、ICチップBはセンサ部2Aを含み、装置の本体2に取り付けられる。RPGモジュールにおいて、RPG素子を除く部分は、センサから得た信号を増幅整形するアンプ回路等(図示せず)で、図示実施形態ではICチップBに含まれる。
【0031】
本発明では、従来の真贋判定と異なり、信号線を境に分断するのではなく、構成素子そのものを分断するため、コピーICチップによる成りすましや、リセットによる判定の突破などが不可能となる。
【0032】
なお、本実施形態では、RPG素子のコア部1Aの放射体としてα粒子線を放出するものを用いたが、他にベータ線、ガンマ線等を放出するものの利用も考えられる。更に、半導体の熱雑音を利用したもの、擬似的なランダムパルス発生器の信号源等も適用可能である。
【0033】
図示において、RPG素子のコア部1Aを取り付けたカートリッジまたは容器等1を装置の本体2に装着されると、カートリッジ等側のコア部1Aと本体側のセンサ部2Aとが一体になってRPG素子(RPGモジュール)を構成し、本体側のセンサ部2Aが、カートリッジ等側のコア部1Aの放射体からの放射線を受けとり、ICチップBから装置の本体側に設けた真贋判定ロジック2Bに検知信号(電気信号)を出力し、本体に装着されたカートリッジ等が正規品(本物)であると判定される。
【0034】
本実施形態では、カートリッジ等を装置本体に装着する前にセンサ部が作動することがないように、カートリッジ等の装着前には閉じられ、また装着したとき又はその後に開くシャッター〈図示せず〉を設ける。このシャッターは、カートリッジ等側及び本体側のいずれか一方又は両方に設けられ、α粒子を遮蔽するために金属製となっている。またこのシャッターは、RPG素子のコア部とセンサ部とを保護する機能も合せ持つ。
【0035】
なお、被識別部材に設けるシャッターは被識別部材のコア部を覆う剥離自在のテープ又は剥離紙等を利用可能である。
【0036】
図2は、図1に示した実施形態の要部であるRPG素子を示す。カートリッジ等1を装置の本体2に装着する前は、RPG素子は、カートリッジ等1に取り付けたコア部1Aと本体2に取り付けたセンサ部2Aとが互いに分離され、カートリッジ等1を本体2に装着すると、コア部1Aとセンサ部2Aとが一体化してRPG素子として機能する。なお、コア部は、例えば、放射線源(例えばα粒子を放出する放射体)を含む溶液を滴下装置で所要箇所に滴下する等して形成される。
【0037】
本発明に係るプリンタ等の印刷機能を有する装置において、カートリッジ等1に搭載されたRPG素子のコア部1Aは、何ら電気的エネルギーの供給も無い状態で放射線(α粒子線)を放出し続けている。カートリッジ等1が装置の本体2に装着されると、カートリッジ等側のコア部1Aと本体側のセンサ(フォトダイオード)部2Aとが一体となってRPG素子(RPGモジュール)を構成する。そしてシャッターが開けられると、コア部1Aからの放射線をセンサ部2Aが感知する。このときは、センサ部2Aに対し、受信信号(パルス)として認識できるような何らかの刺激を与えるのはコア部1A以外にはないから、装着されたカートリッジ等1は、そのようなコア部を有する正規品(本物)であると判定される。
【0038】
本願発明に係るカートリッジ等に取り付けられるRPG素子のコア部は、その占有面積は小さく、プリンタのインクカートリッジのような形状の小さな製品にも容易に取り付け可能であり、また、自発的に放射線を継続的に放出するから、電源の供給の必要がなく、それだけ安価でもある。
【0039】
なお、悪意のある人間が、センサ部をバイパスしてコア部から放出される放射線を直接受け取ることで、RPG素子(RPGモジュール)全体の「成りすまし」を図ろうとしても、本発明に係るRPG素子は、そのセンサ部が装置の本体側に実装されているから、そのような「成りすまし」は、センサ部の実装されている本体部位の周辺に手を加えることになり、装置本体の改造となる。これは、「不法な改造」となり、装置のメーカーは補償の対象から除外することになるだろう。
【0040】
図3は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、RPG素子のコア部から受け取るパルスの特性を利用してパルスを監視する機能を盛り込んだものでる。図1及び図2の実施態様と比較し、この実施形態が異なるのは、コア部から受け取るパルスを判定するセクションを設けたことである。かかる判定セクションを設けることにより、より確実な真贋判定が可能となる。
【0041】
RPG素子のセンサ(フォトダイオード)部は光を信号に変えるデバイスであるので、悪意のある人間が、この素子に光を当てることで擬似的にパルスを生み出し、RPG素子のコア部を他のデバイスで代用しようと図る可能性がある。しかし、RPG素子から放射される真性なランダムなパルスは、その特性として、パルスの発生する確率が指数分布上に展開されるから、そのような分布状態を調べることで、発生しているパルスがRPG素子からのものか、人為的なものなのか判断することができる。図示のRPGパルス監視機構(手段、回路)22は、そうした機能を有する判定手段である。具体的には、この機構は、インクカートリッジを交換してからプリンタ本体が印刷準備を完了するまでの数秒の時間を利用して、コア部からのパルスをサンプリングし、その発生確率が指数分布に展開されるかどうかを調べ、真性なランダムパルスか否かを判定する。なお、21はインクカートリッジの受け側(センサ部を含む)を示し、23はプリンタのヘッド機構、24はプリンタの印刷機構を示す。
【0042】
こうした本発明のパルス監視機構までも真似て製作しようとすると、カートリッジ側にマイコンチップや電源が必要となるため、そのような贋品の製作は手間とコストがかかり割が合わないものとなるであろう。
【0043】
図4は、本発明の更に別の実施形態を示す。図示の装置では、コア部10Aを設けた真贋判定の対象物(被識別部材)10(例えばインクカートリッジ)を、真贋判定する本体機器11の収納部12に装着し、センサ部12A(例えばフォトダイオードを含む)でコア部からのランダムパルスを検知する。乱数生成部13は、センサ部12Aによって検知されたパルスの発生間隔を計測し乱数に変換する。頻度計数部14は乱数生成部13によって生成された乱数の発生頻度(発生確率、登場頻度)をカウントする。判定部15は、頻度計数部14でカウントする際に、後述する評価範囲等の設定を行い、発生頻度をグラフ化するとともに真贋判定を行う。なお、この実施形態では、判定結果はPC16のモニター上に表示する。
【0044】
ランダムパルス発生器によって発生されるパルスは、例えば図5に示すように、パルスの発生間隔(r1乃至r8)が不定であるため、あるパルスの発生した瞬間からその次のパルスの発生までの経過時間はランダム(ランダムパルスの発生)となる。しかしながら、このようなランダムパルスの発生確率は、図6に示すように、ある瞬間(t0)から見て、より短い間隔で発生する確率は高く、経過時間が長くなるにつれ(tn)、その発生確率は0%へ限りなく近づいていく傾向がある。即ち、経過時間をそのまま乱数とした場合、その値は指数分布に沿った偏りが存在する。図4に示す装置による真贋判定は、ランダムパルスの発生確率がこのような指数分布を呈する性質を利用する。
【0045】
図7は、判定部15でグラフ化される乱数の発生頻度を表示するモニターの画面を示す。図中の標本曲線は理想の指数分布を示している。ランダムパルスを監視し続ければ、やがて標本結果のほとんどはこの曲線上に収束する。
【0046】
真贋判定には、ある程度の数量のパルスをサンプリングする必要があるため、時間がかかる。そこで、真贋判定の時間を減らすとともにより確実な判断を行うために、以下に示す近似範囲、評価範囲の設定を行う。なお、これらの範囲の設定は、判定対象ごとに調整が必要となろう。
【0047】
近似範囲: パルスの発生頻度がこの範囲に収まれば有効と判断できるような、理想の標本曲線に近似する上限及び下限にはさまれた領域をいう。
【0048】
評価範囲: 発生するパルスの時間間隔の有効な判定領域をいう。即ち、時間間隔の短い部分と長い部分とをカットして実効的な判定領域を定める。
【0049】
なお、本実施形態では、こうして設定された評価範囲内において、真贋判断の基準となる合格率(%)を設定することができ、また、真贋判定のための制限時間も設定できる。
【0050】
図8は、本実施形態における真贋判定の手順を示すフローチャートである。
まずバッファ等の初期化を行う(ステップS1)。これは、真贋判定対象(例えば、インクカートリッジ)を本体に装着する際に入り込んだ光によってパルスが発生し、それによって生成された乱数がバッファに残っている可能性があるからで、例えば、乱数生成部のパルス監視回路内で乱数をバッファリングする構成の場合は、この開始段階でバッファに残っている値を破棄する。
【0051】
次に、乱数生成部13で、パルス間隔をタイマーで計測して乱数値を得る(ステップS2)。このとき、パルスの発生の有無が調べられ(ステップS3)、パルスが検出できない場合、判定対象の装着状態を確認する旨の表示を行い(ステップS4)、ステップ2に戻す。ただし、ステップ2の乱数の取得の開始から一定の時間以上パルスが検出できない場合は、贋品と判断する。
【0052】
次に乱数の発生頻度(登場頻度)をカウントし(ステップS5)、発生頻度をグラフ化する(ステップS6)。グラフ化は、乱数の発生頻度の内、その瞬間に最も多い頻度を100%として、その他の頻度はその割合を計算することにより行う。仮に0から255までの乱数の内、128が5回で最も多いとすると、グラフではその128を示す位置に100%の棒グラフを描画し、同じ時に129の登場頻度が4回であった場合、4÷5=0.80であるので、129の位置に80%の棒グラフを描画する。また、グラフ化に際しては、前述した近似範囲、評価範囲を考慮する。
【0053】
そして、制限時間内に合格比率を満たした場合、真品と判断し、制限時間内に合格比率を満たせなかった場合、贋品と判断する(ステップS7乃至S10)。また、まだ合格しておらず、かつ経過時間もまだ制限時間内であれば、再びステップS2に戻る。
【0054】
本発明の実施形態には、他に、(a)ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた被識別部材、及び(b)ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた、被識別部材に取り付ける識別用部材がある。
【0055】
前記(a)の部材としては、前述した識別機能を有する装置に使用される、「インク、トナー等を収納するカートリッジ又は容器等」、また、「データ、プログラム等を記録した又は記録するための媒体、又は当該媒体を含むボード、カートリッジ等」がある。即ち、本発明は、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けたインク、トナー等を収納するカートリッジ又は容器等、更に、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けたデータ、プログラム等を記録した又は記録するための媒体、又は当該媒体を含むボード、カートリッジ等を提供する。
【0056】
前記(2)の部材、即ち、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた、被識別部材に取り付ける識別用部材としては、例えば、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部と、このコア部を覆う剥離自在のテープ(剥離紙、シール等を含む)とを有するシール(主として認証用)がある。以下、図9乃至12を参照して、このシールについて詳説する。
【0057】
なお、本発明は、放射線源を含むコア部を、直接設けるか、あるいは識別用部材(識別用シール)を介して設けることができれば、被識別部材(真贋判定対象)を上記に限定する必要はない。従って、例えば、携帯機器その他に使用されるバッテリも本発明の識別対象とすることができる。
【0058】
図9は、認証用シールの構造を示す断面図である。図の右側には、部分的に拡大した図が描かれている。図示の如く、このシール30は、多層構造で、最上面から、被識別部材(ここではインクカートリッジ)を使用する際に剥がすテープ(剥離紙等も含む)31、剥離性のある接着剤32、コア部1Aを設けたプレート部材33、剥離性の無い接着剤34、被識別部材を破棄するときに剥がすテープ(剥離紙等を含む)35及び剥離性のある接着剤36を含む。コア部1Aは、プレート部材22の適所に設けた凹陥部に、例えば、放射線源を含む速乾性溶液を滴下することによって形成する。なお、図示のシールの構造は例示であって、限定的なものではない。例えば、テープ35及び接着剤36は不要な場合もあるであろう。
【0059】
図10及び図11は、実際に真贋判定対象の製品(インクカートリッジ)に、本実施形態の認証シールを適用した例を示す。
【0060】
図示実施形態では、プリンタ用インクカートリッジの製造工程で、充填口1Bからインクを充填し終えた時点で、その口を塞ぐように、本願のシールを貼り付ける(図10参照)。次に、カートリッジをプリンタに装着する直前にテープ31を剥がし、当該カートリッジをプリンタ本体に装着する(図11参照)。コア部1Aは剥き出しとなり、α粒子の放出が始まるため、プリンタ側に搭載されたセンサ(フォトダイオード)部で真贋判定の認証が可能となる。
【0061】
本実施形態では、放射線源を含む溶液を専用のプレートに滴下し、その上をα粒子の放出を防ぐためのテープで覆い、出来上がったシールを被識別部材(インクカートリッジ)に貼るという作業だけであるから、識別対象の製造工程内で行う必要はなく、別個専用のラインで行えばよく、カートリッジの製造工程を複雑化させることはない。
【0062】
なお、カートリッジ内のインクが切れてインクの再充填をしようとしたとき、テープ35を剥がしてインクの充填口を開けなければならない(図12参照)。このとき、コア部1Aはテープ35とともに剥がされてしまい、そのため、センサ部は、RPG素子からのパルスを受信できなくなる。従って、本発明の認証シールを利用すれば、プリンタに装着されたカートリッジが、正規品か、又はインクをカートリッジ内に再充填した再生品かどうか識別できる。即ち、不正なカートリッジの使用を排除することができる。
【0063】
本実施形態の認証シールは、厚さは数ミリ程度の薄いもので、ICチップによる認証と異なり、電気的な機構が必要無いため、一見しただけでは、ただ単に充填口を塞ぐためのシールにしか見えない。コア部1Aを覆ったテープ31を剥がすのも、使用開始までインクが出ないように空気穴を塞いでいたのを開放する機構も兼ねているとすれば、利用者も疑いは持たないであろう。即ち、予めこのシールが認証シールであるということを知らなければ、真贋判定機構そのものが搭載されていることさえ気づかれない。
【0064】
なお、本実施形態の認証シールは、真贋判定対象の製品とは別の生産工程で量産できるため、真贋判定が必要となる一部のロットにのみ適用するなどといった柔軟な対応も可能である。
【0065】
CD,DVD等のメディアの識別に本実施形態の認証シールを使用することができる。この場合は、例えば、センサ(フォトダイオード)部を備えた専用ドライブ(CD/DVD-ROMドライブ)に、認証シールの貼られたメディアを挿入することで真贋判定を行い、コピーされたメディアでは読み込まないといった実施形態となる。
【0066】
社員証などの個人証明書の識別に本実施形態の認証シールをしようすることができる。例えば、各種証明のカードなどに本実施形態の認証シールを貼っておけば、偽造カードの判定が可能となる。
【0067】
携帯ゲーム機のROMカートリッジ等に本実施形態の認証シールを使用することができる。例えば、提供されるソフトがカートリッジ式のゲーム機の場合、そのカートリッジに本実施形態の認証シールを貼ることで海賊版の判定が可能となる。
【0068】
次に認証シール(剥離可能なテープ)に放射線源を塗布する別の方法について説明する。
【0069】
放射線源を含んだ溶液を滴下する方法は、当該シールの生産数量が多いと溶液の滴下に多大の時間を要す(例えば、剥離可能なテープシートが横50枚x縦50枚(2500枚)の場合2500回滴下を行うことが必要である)。
【0070】
時間当たりの生産数量を上げるために、プリンタ(例えばインクジェットプリンタ)を利用する方法が考えられる。もっとも、この方法は、プリンタのヘッドを横に移動し、指定した場所に放射線源を含む溶剤を印字し、シートをロールアップし、再度ヘッドを横に移動して印字するので、印字のための時間を必要とする。そこで、もっとも効率的な方法として別の印刷技術を使う方法がある。この方法は、例えば、(1)放射線源を溶かした透明の溶剤を印刷された文字(例えばブランド名)、図形等の上に再度印刷する、(2)印刷インクに放射線源を溶解させ印刷する。前者の印刷例を図13に示す。即ち、「Product」の“P”の部分(一点鎖線で囲まれた斜線部、実際は透明)に放射線源を含んだ溶剤を印刷する。なお、文字の大きさにより、印刷する箇所は、1文字以上の文字数になる場合もある。
【0071】
次に、放射線源を含むコア部(例えばインクカートリッジに貼った認証用シール(剥離可能なテープ)に放射線源を含む溶液を滴下しまたは放射線源を含む溶剤を印刷して形成したコア部)とセンサ部(例えばインクカートリッジを格納するケースに設けたセンサ部)との間に隙間があると光が漏れて入り安定的な真贋判定ができないので、これを改善する方法を述べる。真贋判定対象物(例えばインクカートリッジ)では、図14Bに示すように、認証用シール40を、適度なクッションが生じるよう、クッション材40Aを設けた2重構造にする。また、図14Aに示すように、真贋判定対象物を装着する本体60(例えばインクカートリッジを格納するケース)のセンサ部が設けられた部位に、筒状の突起物61を設け、真贋判定物異物(インクカートリッジ)を本体(ケース)に格納したときに、隙間(遊び)が生じないようにして、識別用シール40に設けたコア部50からのパルスを本体(ケース)に設けたセンサ部が確実に検知できるようにする。この筒状の突起物(外壁部)の材質は、真贋判定物異物(インクカートリッジ)がずれて隙間が生じることのないように、格納ケース本体よりも少し柔らかい材質にするのが望ましい。
【0072】
本発明は、更に、被識別部材が、データ、プログラム等を記録した又は記録するための媒体、又は当該媒体を含むボード、カートリッジ(ROMカートリッジ)等であり、前記本体が当該媒体等を利用するPC、ゲーム機、カードリーダ、あるいはCD/DVD−ROMドライブ等の装置の本体である場合においても実施可能である。なお、こうしたROMカートリッジのように、真贋対象となる製品が充分に小さいもので、なおかつそれ単体には電源を搭載しないものであれば、本発明のようなRPG(ランダムパルス発生器)を利用した真贋判定はより強固なものとなるであろう。
【0073】
図15、本発明に係る真贋判定用のセンサ部をフォトIC(フォトディテクトICを含む)に組み込んだ実施形態を示す。図示のものは、特に、CD/DVD用の光ピックアップに使用されるフォトICに本発明の真贋判定用のセンサ部を設けたものである。
【0074】
光ピックアップ(後述の図16参照)には、半導体レーザー(図示では2波長LD)と受光素子がキーデバイスとして用いられる。図15において、符号a乃至d(DVD用)、A乃至D(CD用)及びE,Fは、受光素子を示し、これらの素子から得られる信号に基づき、トラッキング信号、フォーカス信号が生成される。これらの受光素子は、通常プラスチック又はガラス製のカバーが施されるが、真贋判定用のセンサにはカバーは不要であろう。なお、光ピックアップは、CD/DVDメディアのドライブユニットに実装されるから、センサ部を設け、判定対象であるCD/DVDメディアを装着するための本体は、このドライブユニットとなる。
【0075】
一方、真贋判定の対象となるCD/DVDメディアには、放射線源を含むコア部を設ける。コア部は、当該CD/DVDメディアをドライブユニットに挿入した状態で真贋判定用のセンサ部に対向する当該CD/DVDメディア上の位置に、放射線源を溶解した溶液をプリント等して形成される。図16は、ドライブユニットにCD/DVDメディアを挿入した状態での、CD/DVDメディアとセンサ部を設けたフォトICとの位置完成を示す。図示では、ドライブユニットにCD/DVDメディアを挿入した初期状態で真贋判定をし、真性であると判定されると、当該CD/DVDメディアを更に移動し、ドライブユニット内に装着するように構成されているが、ドライブユニット内にし装着した状態で真贋判定するように構成してもよい。本実施形態によれば、コア部を設けた真性なメディアと、コア部を有しない不正なメディア(コピーされたもの)とを判別することができる。
なお、こうしたコア部を、その表面に印刷する等して形成可能なものとして、CD/DVDメディアの他にゲーム用メディア、ディプリ用メディア等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1に示す実施形態の要部を示す説明図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明の更に別の実施形態を示すブロック図である。
【図5】一般的なランダムパルス発生器によって発生されるランダムパルスの例を示す図である。
【図6】一般的なランダムパルスの、経過時間に対する発生確率を示すグラフである。
【図7】図4の実施形態の装置におけるモニター画面を示す。
【図8】図4の実施形態の装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係るシールの断面図である。
【図10】図9のシールの使用例を示す説明図である。
【図11】図9のシールの使用例を示す説明図である。
【図12】図9のシールの使用例を示す説明図である。
【図13】本発明に係るコア部を印刷により形成した実施態様を示す説明図である。
【図14】本発明に係るコア部を本体に安定的に装着する機構を示す本体側の断面図である。
【図15】本発明に係るセンサ部をフォトICに組み込んだ実施形態を示す平面図である。
【図16】図15のフォトICの使用状態を示す説明図である。
【図17】従来の識別システムを示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた被識別部材と、この被識別部材を取り外し可能に装着する本体とを有し、前記本体には、前記被識別部材が本体に装着されたときに被識別部材のコア部から放出される電磁波等を感知するセンサ部を設けた、識別機能を有する装置。
【請求項2】
被識別部材がインク、トナー等を収納するカートリッジ又は容器等であり、前記本体がインク、トナー等を使用して印刷を行うプリンタ、複写機、ファクシミリ等の印刷機能を有する装置の本体であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
被識別部材がデータ、プログラム等を記録した又は記録するための媒体、又は当該媒体を含むボード、カートリッジ等であり、前記本体が当該媒体等を利用するPC、ゲーム機、カードリーダ等の装置の本体であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
放射体は、自然崩壊によりランダムなα粒子又はその他の放射線を放出することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
被識別部材を装置本体に装着する前は閉じられ、また装着したとき又はその後に開くシャッターを更に有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
シャッターが被識別部材側及び装置本体側のいずれか又は両方に設けられることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
シャッターが被識別部材のコア部を覆う剥離自在のテープ又は剥離紙等であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
更に、前記被識別部材のコア部から放出される電磁波等の特性を監視する監視手段を設けた、請求項1乃至7の何れかに記載の装置。
【請求項9】
前記監視手段は、前記コア部から放出された電磁波等に基づき得られた乱数の発生確率を監視することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた被識別部材。
【請求項11】
前記被識別部材が、電池、又はデータ、プログラム等を記録した又は記録するための媒体、又は当該媒体を含むボード、カートリッジ等であることを特徴とする請求項10に記載の被識別部材。
【請求項12】
ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を設けた、被識別部材に取り付ける識別用部材。
【請求項13】
前記識別用部材が、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部を有する剥離可能なシール又はシート等であることを特徴とする請求項12に記載の識別用部材。
【請求項14】
前記シール等が、前記コア部と、このコア部を覆う剥離自在のテープ又は剥離紙等とを有するシール等であることを特徴とする請求項13に記載の識別用部材。
【請求項15】
前記コア部を、ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含んだ材料を使用して印刷することにより形成することを特徴とする、請求項12乃至14のいずれかに記載の識別用部材。
【請求項16】
前記被識別部材を前記本体に装着したときに、前記コア部と前記センサ部との間に隙間の生じないように、センサ部の側に筒状のスペーサ部材を設けたことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
ランダムな電磁波又は粒子線を放出する放射体を含むコア部から放出されるパルスを検知するためのセンサ部を、フォトICに組み込んだことを特徴とする、請求項1又は3に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−6693(P2009−6693A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226895(P2007−226895)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(506165210)
【Fターム(参考)】