説明

警報器

【課題】メーカの出荷時から設定時までの電池の寿命の低減を防止し、使い勝手の良い、信頼性の高い、低コストの警報器を提供する。
【解決手段】スイッチ15は、電池11,12から出力される電源電力を入力し、使用開始前においてオフにされるとその電源電力の供給を遮断し、使用開始時においてオン状態に操作されるとこのオン状態が自己保持されてその電源電力を連続的に供給する。火災検出部21及びガス検出部22は、前記電源電力により動作し、監視領域で発生した異常を所定の周期で検出する。検出処理部33は、前記電源電力により動作し、所定の周期で検出部21,22の検出結果を予め定められた閾値と比較し、その検出結果が閾値を超えたときに警報信号を出力する。警報処理部34、表示出力部42、音声出力部45、ランプ43,44、及びスピーカ46は、前記電源電力により動作し、前記警報信号に応答して音響や表示により警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスや一般住宅等の監視領域で発生した火災やガス漏れ等の異常を検出して警報を行ういわゆる住警器等の電池駆動型の警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスや一般住宅等の監視領域では、火災やガス漏れ等の異常を検出して警報を行う電池駆動型の警報器が知られている。電池駆動型の警報器は、設置が容易であるという利点がある。この種の警報器では、例えば、一般住宅の台所、居間及び寝室等にそれぞれ設置して単体で動作させるか、或いは、各部屋に設置した警報器を相互に接続(マルチ接続)して連動させるようになっている。マルチ接続の場合、例えば、台所で警報器が作動した際に、この警報器の警報信号が2階の寝室の警報器へ送られて該警報器が作動し、台所での火災発生やガス漏れ等を知ることができる。
【0003】
警報器では、下記の特許文献等に示すような種々の低消費電力化のための工夫が行われている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−175863号公報
【0005】
この特許文献1の警報器は、電池駆動型ではなく、外部から交流(以下、「AC」という。)電力が供給されて動作するものであり、例えば、火災判断や故障等の異常判断時の各種処理を行う中央処理装置(以下、「CPU」という。)と、このCPUに供給するためのクロックを発振する発振部と、所定時間を計測してCPUを動作させるタイマとを有している。そして、CPUが各種処理を実行していない待機状態(スタンバイ状態)においては、該CPUへのクロックの供給を停止するように発振部を制御し、所定時間が経過すると、タイマの出力によってCPUを動作させ、該CPUを必要な時のみ動作させて消費電力を低減させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の特許文献1の警報器では、受信機に接続され、外部からAC電力が供給されて動作するものである。この警報器では、火災監視動作時の平均消費電力が低減できるのみで、その火災監視処理中には電力を消費している。そのため、設置の容易な電池駆動型の警報器に、特許文献1の技術をそのまま適用しても、充分な低消費電力効果を得ることができなかった。
【0007】
電池駆動型の警報器では、簡単な設置や接触不良等を考慮して電池を接続した状態でメーカから出荷することが望ましい。例えば、設置時にユーザが電池を嵌め込む構造にしておくと、ユーザから見れば、電池の嵌め込み作業が煩わしく、更に、その作業を適正に行わないと、電池の接触不良等が生じて正常に動作しない虞があり、何れにしても、メーカ側で電池を接続した状態で出荷することが望ましい。しかし、電池を接続した状態で出荷すると、この出荷時から設置されるまでの間も電力を消費してしまい、電池寿命が低下するという課題があった。
【0008】
又、ガス漏れ検出の検出部は、寿命が短い(例えば、5年程度)。もし寿命が経過している場合、電池を交換すれば、警報器は見かけ上正常に機能しているように見えるが、実際にはガス漏れ検出を行っていない状態となっている場合も考えられる。これを防止するためには、電池交換を容易にできない状態にし、且つ、メーカの出荷時から設置までの電池の消耗を防止する必要があるが、これらに対して従来の警報器では何らの対策も講じていないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の内の請求項1に係る発明の警報器は、駆動用の電源電力を出力する電池と、前記電池から出力される前記電源電力を入力し、使用開始前においてオフ状態に操作されると前記電源電力の供給を遮断し、使用開始時においてオン状態に操作されるとこのオン状態が自己保持されて前記電源電力を連続的に供給するスイッチ手段と、前記スイッチ手段から連続的に供給される前記電源電力により動作し、監視領域で発生した異常を所定の周期で検出する検出手段と、前記スイッチ手段から連続的に供給される前記電源電力により動作し、前記所定の周期で前記検出手段の検出結果を予め定められた閾値と比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号を出力する検出処理手段と、前記スイッチ手段から連続的に供給される前記電源電力により動作し、前記検出処理手段から出力される警報信号に応答して音響や表示により警報を発生し、この警報発生後に前記スイッチ手段がオン状態に操作されると、この操作に応答して前記警報の内の前記音響を停止する警報手段とを備えている。
【0010】
請求項2に係る発明の警報器は、駆動用の電源電力を出力する電池と、使用開始前において前記電池から出力される前記電源電力が供給されると共に低消費電力モードに設定され、使用開始時においてスイッチ手段が操作されると前記低消費電力モードが解除されて通常の電力消費モードに設定されるモード設定手段と、前記低消費電力モード時には動作を停止し、前記通常の電力消費モード時には監視領域で発生した異常を所定の周期で検出する検出手段と、前記低消費電力モード時には動作を停止し、前記通常の電力消費モード時には前記所定の周期で前記検出手段の検出結果を予め定められた閾値と比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号を出力する検出処理手段と、前記低消費電力モード時には動作を停止し、前記通常の電力消費モード時には前記検出処理手段から出力される警報信号に応答して音響や表示により警報を発生し、この警報発生後に前記スイッチ手段が操作されると、この操作に応答して前記警報の内の前記音響を停止する警報手段とを備えている。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2の警報器において、前記閾値は、前記電池の電源電力によりバックアップされた揮発性の記憶手段に記憶されている。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかの警報器において、前記使用開始時における前記スイッチ手段の操作に応答して警報器機能試験を行い、該試験結果が正常であったときには前記検出手段の動作を行わせ、該試験結果が異常であったときにはその旨を告知する試験処理手段を設けている。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかの警報器において、前記電池は複数個設けられ、前記複数個の電池を当初は並列状態に接続しておき、前記複数個の電池の出力電圧が所定電圧よりも低下したことを検出したときに、直列状態に接続する電源制御手段を設けている。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1〜4のいずれかの警報器において、前記電池の寿命を検出して電池切れ警報を発する手段を設けている。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項6の警報器において、前記電池切れ警報を発する手段は、前記使用開始時から前記電池の消費電力量又は使用時間を計測して予め定められた閾値になったときに電池切れ警報を発する構成になっている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜7に係る発明の警報器によれば、例えば、メーカから電池を接続した状態で出荷して設置までに時間があっても、電池寿命が殆ど短くならず、一旦、監視動作を開始すると容易に停止できない。その上、従来のような電池接続のためのコネクタや、ばね金具等が不要となり、信頼性が向上し、製造コストが低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明では、スイッチ手段が、駆動用の電池から出力される電源電力を入力し、使用開始前においてオフ状態に操作されるとその電源電力の供給を遮断し、使用開始時においてオン状態に操作されるとこのオン状態が自己保持されてその電源電力を連続的に供給する。検出手段は、スイッチ手段から連続的に供給される電源電力により動作し、監視領域で発生した異常を所定の周期で検出する。検出処理手段は、スイッチ手段から連続的に供給される電源電力により動作し、所定の周期で検出手段の検出結果を予め定められた閾値と比較し、その検出結果が閾値を超えたときに警報信号を出力する。警報手段は、スイッチ手段から連続的に供給される電源電力により動作し、検出処理手段から出力される警報信号に応答して音響や表示により警報を発生し、この警報発生後にスイッチ手段がオン状態に操作されると、この操作に応答して警報の内の音響を停止する。
【実施例1】
【0018】
(構成)
図2は、本発明の実施例1における電池駆動型の警報器を用いた警報システムを示す概略の構成図である。
【0019】
この警報システムは、例えば、一般住宅の台所や寝室、居間の他、オフィスの一室等の比較的に小さな監視領域にそれぞれ設置された複数個の電池駆動型の警報器1−1〜1−N(但し、Nは2以上の正の整数)を備え、これらの警報器1−1〜1−Nが連動用リード線2によって相互に通信可能にマルチ接続されている。各警報器1−1〜1−Nには、固有のアドレスが付されている。
【0020】
このような警報システムにおいて、警報器(例えば、1−1)は、監視領域で発生した異常(例えば、火災やガス漏れ)を検出して自ら警報を行うだけでなく、他の警報器(例えば、1−2〜1−N)に対して警報のためのアドレス等が付加された警報信号を送出すると共に、他の警報器(例えば、1−3)からの警報のためのアドレス等が付加された警報信号を受信して連動警報を行うようになっている。
【0021】
図1は、図2中における本発明の実施例1の各警報器1−1〜1−Nを示す概略の構成図である。
【0022】
各警報器1(1−1〜1−N)は、同一の構成であり、警報器全体に駆動電力を供給する電池内蔵の電源部10と、監視領域で発生した異常を検出する検出手段(例えば、火災の発生を検出する火災検出部21、及びCOガスのガス漏れ発生を検出するガス検出部22)とを有し、これらが警報器全体を制御する制御部30に接続されている。
【0023】
電源部10は、例えば、2個の電池11,12を有し、これらが切り替えスイッチ13,14を介して並列接続又は直列接続される。スイッチ13は、制御部30から与えられる制御信号S31により切り替え接続される端子13a,13b,13cを有し、電池11,12の出力電圧が高いときには、制御信号S31により端子13a及び13b間が接続され、電池11,12の出力電圧が所定電圧より低下したときには、制御信号S31により切り替えられて端子13a及び13c間が接続される。スイッチ14は、制御部30から与えられる制御信号S31により切り替え接続される端子14a,14b,14cを有し、電池11,12の出力電圧が高いときには、制御信号S31により端子14a及び14b間が接続され、電池11,12の出力電圧が所定電圧より低下したときには、制御信号S31により切り替えられて端子14a及び14c間が接続される。そのため、電池11,12の出力電圧が高いときには、スイッチ13,14により、該電池11及び12が並列に接続され、電池11,12の出力電圧が所定電圧より低下したときには、スイッチ13,14により、該電池11及び12が直列に接続される構成になっている。
【0024】
スイッチ13の端子13bには、スイッチ手段(例えば、自己復帰型の監視開始スイッチ)15が接続され、この監視開始スイッチ15に自己保持回路が接続されている。自己保持回路は、スイッチ15のオン状態を自己保持する回路であり、そのスイッチ15に並列接続された自己保持素子(例えば、サイリスタ)16と、このサイリスタ16のゲートに接続されてゲート電流を供給するターンオン用の抵抗17とで、構成されている。
【0025】
火災検出部21は、火災により発生する煙、熱、炎、或いはガス等を、制御部30の制御に基づき所定の周期で検出するものである。火災検出部21の具体例としては、発光素子及び受光素子を用いた光電式感知手法、或いは、イオン化式感知手法等を用いて、火災時に発生する煙の濃度を検出し、この検出信号を制御部30に出力する。ガス検出部22は、COガスのガス漏れ発生を、制御部30の制御に基づき所定の周期で検出し、この検出信号を制御部30に出力するものである。
【0026】
制御部30は、電源制御部30、信号伝送用のバス32、検出処理手段である検出処理部33、警報処理部34、音警報停止スイッチ35、連動処理部36、試験処理手段である試験処理部37、及び試験開始スイッチ38等を有し、CPU等により構成されている。
【0027】
電源制御部31は、電源部10の出力電圧を入力し、この出力電圧と予め定められた閾値電圧とを比較し、該出力電圧が閾値電圧よりも低下したことを検出したときには、制御信号S31を出力してスイッチ13,14を並列接続状態から直列接続状態に切り替え制御する電源制御手段としての機能や、その他の機能を有している。スイッチ13,14の並列接続状態では、スイッチ13の端子13a及び13bが接続され、スイッチ14の端子14a及び14bが接続され、2個の電池11及び12が並列に接続される。スイッチ13,14の直列接続状態では、スイッチ13の端子13a及び13cが接続され、スイッチ14の端子14a及び14cが接続され、2個の電池11及び12が直列状態に接続される。
【0028】
電源制御部31の有するその他の機能としては、例えば、電圧変換手段、モード設定手段、電池切れ警報発生手段等としての機能がある。電圧変換手段は、電源部10の出力電圧を所定電圧に変換して制御部30の内部回路等に供給するものである。モード設定手段は、警報器1の使用開始前においてスイッチ15が操作されると制御部30等を低消費電力モード(以下、「節電モード」という。)に設定し、警報器1の使用開始時においてスイッチ15が操作されるとその節電モードを解除して通常の電力消費モードに設定するものである。電池切れ警報発生手段は、電池11,12の寿命を検出して電池切れ警報を発生させるものであり、例えば、警報器1の使用開始時から電池11,12の消費電力量又は使用時間を計測して予め定められた閾値になったときに電池切れ警報を発生させる。
【0029】
電源制御部30の出力側にはバス32が接続され、このバス32に、検出処理部33、警報処理部34、連動処理部36、及び試験処理部37が相互に接続されている。警報処理部34には音警報停止スイッチ35が接続され、更に、試験処理部37に試験開始スイッチ38が接続されている。
【0030】
検出処理部33は、火災検出部21及びガス検出部22からの検出信号を予め定められた閾値と比較し、その検出信号が閾値を超えたときに警報信号を出力するものである。警報処理部34は、検出処理部33から出力される警報信号に応答して音響(例えば、警報音、音声メッセージ等)や表示により警報を発するための信号を出力し、この信号の出力後に音警報停止スイッチ35がオン状態に操作されると、この操作に応答して音響を停止する処理を行うものである。連動処理部36は、検出処理部33から出力される警報信号にアドレス等を付加して出力したり、外部からのアドレス等が付加された警報信号に対する解読等の処理を行うものである。試験処理部37は、警報器1の使用開始時における試験開始スイッチ38の操作に応答して警報器機能試験を行い、この試験結果が正常であったときには火災検出部21及びガス検出部22の検出動作を行わせ、該試験結果が異常であったときには警報器故障を報知させる処理を行うものである。
【0031】
制御部30には、これに対してクロックCKを供給するためのクロック発振部40が接続され、更に、該制御部30内のバス32に、記憶部41が接続されている。記憶部41は、制御部30における処理手順(プログラム)等を記憶する読出し専用メモリ(以下、「ROM」という。)や、電池11,12によりバックアップされて各種の閾値やワーキングデータ等を記憶する揮発性の随時読み書き可能なメモリ(以下、「RAM」という。)等を有している。
【0032】
警報処理部34には、表示出力部42及び音声出力部45が接続され、その表示出力部42に火災警報ランプ43及びガス警報ランプ44が接続され、更に、その音声出力部45にスピーカ46が接続されている。表示出力部42は、警報処理部34の出力信号を駆動して火災警報ランプ43及びガス警報ランプ44を点灯や点滅をさせるものである。音声出力部45は、警報処理部34の出力信号を駆動してスピーカ46から音響を発生させるものである。これらの警報処理部34、表示出力部42、火災警報ランプ43、ガス警報ランプ44、音声出力部45、及びスピーカ46により、警報手段が構成されている。
【0033】
連動処理部36には連動送受信部47が接続され、この連動送受信部47に連動用リード線2が接続されている。連動送受信部47は、連動処理部36から出力されるアドレス等が付加された警報信号を連動用リード線2へ送出したり、その連動用リード線2から送られてくる他の警報器のアドレス等が付加された警報信号を受信して連動処理部36へ与えるものである。
【0034】
(動作)
図3は、図1及び図2の監視動作を示すフローチャートである。
【0035】
(メーカにより電源停止モードに設定されて出荷された警報器1の監視動作)
図1の電源制御部31にモード設定手段が設けられていない場合は、下記のステップST1〜ST14のような監視動作が行われる。
【0036】
ステップST1において、メーカにより警報器1が電源停止モードに設定されて出荷される場合、ステップST2において、メーカにより監視開始スイッチ15がオフ状態にして出荷される。この際、初期状態としてスイッチ13の端子13a及び13bが接続され、スイッチ14の端子14a及び14bが接続され、2個の電池11,12が並列接続されているが、スイッチ15がオフ状態であるから、その電池11,12の出力が停止されている。
【0037】
ステップST3において、ユーザ等により警報器1が設置されて監視開始スイッチ15がオン状態に操作されると、電池11,12の出力電流がスイッチ13,14及びスイッチ15を介して抵抗17に流れ、この抵抗17に流れるゲート電流によってサイリスタ16がターンオンする。すると、スイッチ15が自己復帰してオフ状態になっても、サイリスタ16がオン状態に自己保持され、電池11,12の出力電流がスイッチ13,14及びサイリスタ16を介して制御部30内の電源制御部31へ供給される。
【0038】
次に、ステップST4において、記憶部41中のROMに記憶されたプログラムに従い、試験開始信号が試験処理部37に入力されたか否かが判定され、入力有りのときにはステップST5へ進み、入力無しのときにはステップST7へ進む。試験開始スイッチ38が操作されたときには、試験開始信号が試験処理部37に入力されるので、ステップST5へ進む。この際、予め、監視開始スイッチ15のオン状態への操作と連動して、試験開始スイッチ38がオン状態になるような回路構成に設定しておいても良い。
【0039】
ステップST5において、試験処理部37により機能試験が行われる。機能試験では、試験処理部37により、例えば、試験信号(火災検出部21やガス検出部22の検出信号に類似した信号)が生成され、この試験信号に基づいて火災発生やガス漏れ発生の有無が擬似的に判断される。火災又はガス漏れが発生したと判断された場合には、正常に作動し得ることを示す意味で試験用の警報信号が出力されて警報処理部34へ送られ、ステップS6において、その試験結果が表示出力部42によりランプ43,44から報知、或いは音声出力部45によりスピーカ46から報知される。試験結果が異常のとき、つまり警報器1が故障しているときには、監視動作を終了し、試験結果が正常のときには、ステップST7へ進む。
【0040】
ステップST7において、記憶部41中のROMに記憶されたプログラムに従い、制御部30による監視動作が開始され、クロック発振部40から供給されるクロックCKに同期して、検出制御部33の制御により所定周期で火災検出部21及びガス検出部22の検出処理(サンプリング処理)が行われる。ステップST8において、火災発生、或いはガス漏れ発生により、火災検出部21、或いはガス検出部22によりそれが検出されてその検出値が検出処理部33に入力されると、ステップST9へ進む。ステップST9において、検出処理部33により、火災検出部21、或いはガス検出部22の検出値が、記憶部41中のROMに記憶された閾値と比較される。検出値が閾値よりも小さいときには、ステップST7へ戻り、大きいときには、検出処理部33から警報信号が出力され、ステップST10の警報処理へ進む。
【0041】
ステップST10の警報処理において、検出処理部33から出力された警報信号が警報処理部34に入力されると、その警報信号の情報(火災発生情報やガス漏れ情報)が処理されて表示出力部42や音声出力部45が動作し、火災警報ランプ43やガス警報ランプ44が点灯又は点滅したり、スピーカ46から警報音や音声メッセージが出力される。又、警報処理部33から出力された警報信号が連動処理部36に入力されると、その警報信号にアドレスや警報情報が付加され、連動送受信部47により連動リード線2を介して他の警報器1へ送出され(例えば、警報器1−1から1−3へ送出され)、他の警報器1−3で所定の連動警報処理が行われる。他の警報器1−3での連動警報処理では、アドレスや警報情報が付加された警報信号が連動送受信部(47)で受信され、その警報信号の内容が連動処理部(36)でデコードされ、警報処理部(34)、表示出力部(42)、音声出力部(45)により、ランプ(43,44)やスピーカ(46)から連動警報が報知される。
【0042】
ステップST10において警報出力が開始された後、ステップST11において警報音停止信号の入力の有無が判定される。警報出力の開始後に、音警報停止スイッチ35がオン状態に操作されるか、或いは、監視開始スイッチ15のオン状態の操作に連動して音警報停止スイッチ35がオン状態になる構造になっている場合には、監視開始スイッチ15がオン状態に操作されると、ステップST12において、警報処理部34から警報停止命令が出力され、表示出力部42の動作は継続されるが、音声出力部45の動作のみが停止してスピーカ46からの音響のみが停止する。警報処理部34から出力された警報停止命令は、連動処理部36によりアドレス等が付加され、連動送受信部47を介して連動用リード線2へ送出され、他の警報器1へ送られる。
【0043】
ステップST12の警報音停止後にステップST13へ進み、制御部30内に設けられた計時機能により、所定時間が経過したか否かが判定され、所定時間が経過したときには、ステップST14を介してステップST4又はステップ7へ戻り、監視処理が再開される。
【0044】
(メーカにより節電モードに設定されて出荷された警報器1の監視動作)
図1の電源制御部31にモード設定手段が設けられている場合は、下記のステップST21〜ST24、ST4〜ST14のような監視動作が行われる。
【0045】
ステップST21において、メーカにより警報器1が節電モードに設定されて出荷される場合、ステップST22において、メーカにより監視開始スイッチ15がオン状態にして出荷される。この際、初期状態としてスイッチ13,14により2個の電池11,12が並列接続されており、監視スイッチ15をオン状態にすることにより、その電池11,12の出力電流が抵抗17に流れ、サイリスタ16がターンオンして通電状態が自己保持され、電池11,12の出力電流が電源制御部31へ供給される。又、監視スイッチ15をオン状態にすることにより、これと連動してステップST23において、電源制御部31内のモード設定手段が節電モードに設定され、制御部30が節電モード動作を行う。この節電モード動作では、例えば、電源制御部31から出力される制御信号により、検出処理部33、警報処理部34、連動処理部36、及び試験処理部37等の主動作が停止してスリープ状態(休止状態)になり、電力消費量が低減される。
【0046】
ステップST24において、ユーザ等により警報器1が設置されて監視開始スイッチ15がオン状態に操作されると、これと連動して電源制御部31内のモード設定手段が通常の電力消費モードに設定され、例えば、該電源制御部31から出力される制御信号により、検出処理部33、警報処理部34、連動処理部36、及び試験処理部37等の主動作が起動し、ステップST4の試験処理へ進む。そして、上記の同様のステップST4〜ST13の監視処理が行われ、ステップST14を介してステップST4へ戻る。
【0047】
(効果)
本実施例1では、次の(a)〜(n)のような効果等がある。
【0048】
(a) 図1の電源制御部31にモード設定手段が設けられておらず、メーカにより電源停止モードに設定されて出荷される警報器1の構成の場合、監視開始スイッチ15をオフ状態にして出荷されるので、電池11,12の出力電流がオフ状態の監視開始スイッチ15によって不可逆的に遮断され、ユーザ等により警報器1が設置されて監視開始スイッチ15がオン状態に操作されるまで、その出力電流が制御部30側に供給されない。そのため、出荷時から監視開始までは殆ど電池11,12の出力電力を消費せず、電池11,12を接続した状態において出荷後長い時間経ってから設置する場合でも、電池寿命が短くならない。又、ユーザが電池11,12を接続する手間がいらないので、高齢者等でも簡単に設置でき、しかも、従来のような電池11,12をコネクタやばね金具等で接続する場合に比べて信頼性も高い。
【0049】
(b) 電池11,12を収納するケースの蓋を容易に開放できないような構造にでき、このような構造にすることにより、一旦監視を開始すると、蓋を開いて容易に動作を停止できないため、悪意による動作停止を防止でき、非常に確実に動作させることができる。電池挿脱用の蓋も不要になり、ケースの構造が簡単になって製造コストも低減できる。
【0050】
(c) 図1の電源制御部31内にモード設定手段が設けられ、メーカにより節電モードに設定されて出荷される警報器1の構造の場合、出荷時から設置時までの電池11,12の消費電力量を削減できる。又、設置時に、節電モードを解除して通常の電力消費モードに設定しているが、この通常の電力消費モード時においても、火災検出器21及びガス検出部22による異常検出のサンプリング周期を長くして電力消費量を削減するようにしても良い。又、そのサンプリング周期間のスタンバイ時において、計時手段等により、制御部30の主動作やクロック発振部40等を間欠的に停止する構造にしたり、或いは、火災検出部21及びガス検出部22は継続的に動作させておき、その他の制御部30等の主動作を停止しておき、その火災検出部21及びガス検出部22の検出信号をトリガとしてその主動作を動作させる構造等にすれば、電力消費量をより一層低減できる。
【0051】
(d) 図1の音警報停止スイッチ35或いは試験開始スイッチ38を省略し、監視開始スイッチ15のオン操作に応答して音警報停止信号を出力して警報処理部34に入力したり、或いは、監視開始スイッチ15のオン操作に応答して試験開始信号を出力して試験処理部37に入力する構造にすれば、監視開始スイッチ15の共用化により、スイッチ個数を削減でき、操作の簡単化と、低コスト化が可能になる。
【0052】
(e) 図1の試験開始スイッチ38を省略し、警報器1の設置時に監視開始スイッチ15をオン操作すると、これに応答して試験処理部37が動作を開始する構成にしても良い。このような構成にすれば、出荷後に監視開始スイッチ15をオン操作して監視処理を開始すると、自動的に機能試験が行われ、試験結果が正常であれば、正常に監視処理を開始したことを告知し、万が一故障があった場合には、故障を告知して警報器1の交換を促す。これにより、ユーザは警報器1が正常に監視処理を開始したことを認識できると共に、試験のための監視開始スイッチ15の存在を意識する必要がなくなる。
【0053】
(f) 図1では、出荷時の未監視状態では電池11,12を並列に接続しているが、監視開始後は必要に応じて電源制御部31の制御信号S31により、スイッチ13,14を切り替えて該電池11,12を直列に接続しても良い。これは、回路構成によっては、監視をするためには高い電圧が必要な場合であっても、スタンバイ時には低い電圧でよい場合に、監視開始前には電池11,12を並列に接続して消費電力を削減し、監視開始後は必要に応じて直列に接続して高い電圧を得ることができるからである。
【0054】
(g) 電源制御部31内に電圧低下検出手段を設けておき、通常は電池11,12を並列で使用し、電池11,12が消耗して出力電圧が低下してきた場合に、その電圧低下を電圧低下検出手段で検出し、該電圧低下検出手段から出力される制御信号S31によりスイッチ13,14を直列に切り替えるようにしても良い。これにより、電池11,12を効率良く使用することができる。
【0055】
(h) 図1の制御部30内に、電池11,12の寿命を検出する電池切れ検出機能を設け、この電池切れ検出機能により電池切れを検出したときに、この検出信号に応答して警報処理部34、表示出力部42或いは音声出力部45により、ランプ43,44或いはスピーカ46から電池切れ警報を発する電池切れ警報発生手段を該制御部30内に設けても良い。この電池切れ警報発生手段では、例えば、監視開始からの消費電力又は時間を測定し、この積算値或いは時間が予め定められた閾値になったときに、電池切れ警報を出力する構成になっている。このような構成の場合、監視開始からの消費電力を動作モード毎に設定し、火災検出部21が、例えば、発光素子及び受光素子を用いて煙を検出するものであれば、スタンバイ時10μA、該火災検出部21の出力を増幅するアンプ動作時3mA、発光素子の発光時500mA、鳴動時300mAのように設定し、動作モード毎の時間を測定して消費電力の積算値を求め、予め定められた閾値に達した場合には、電池切れであることを告知する。又、警報器1には設置後の有効期限があるものもあり、この場合には監視時間そのものを積算して有効期限切れを告知する。有効期限のある警報器1では、電池交換できない構造として、使い捨てとする。これにより、低コストで信頼性の高い警報器1を提供できる。
【0056】
(i) 前記電池切れ警報発生手段において、電池切れ警報を一定期間送出後、監視処理部34を停止し、動作電圧以下にならないように構成しても良い。このような構成によれば、電池切れを告知して一定時間を過ぎると、電池電圧の極端な低下による誤動作の防止のため、検出処理部33やこれを含めた制御部30等の動作を停止させる。その結果、消費電力を低減できて電池11,12の電圧低下を防止できる。無論、制御部30内に設けた電圧測定手段によりその制御を行う構成にしても良い。
【0057】
(j) 記憶部37内のRAMに、動作閾値等の設定値を記憶させるので、スリープモードであっても、電池11,12によりRAMがバックアップされていれば、RAMデータが消失しない。そのため、従来であれば、感度調整等はボリュームを使用したり、EEPROM等の不揮発性メモリに閾値を記憶するが、本実施例1では電池11,12を接続したまま出荷できるので、それらのデータをRAMに保存できる。無論、保存するデータは、感度調整に限らず、各種の閾値、アドレス、製造番号等でも良い。
【0058】
(k) 図1の電源部10では、サイリスタ16を用いて監視開始スイッチ15の通電状態を自己保持する回路構成にしたが、ラッチングリレー等の他の自己保持素子、或いは他の電子部品を用いて自己保持回路を構成しても良い。
【0059】
(l) 図4は、図1の電源部10、監視開始スイッチ15及び電源制御部31を他の構成の電源部10A、監視開始スイッチ15及び電源制御部31Aに変更した警報器を示す概略の構成図である。この警報器の電源部10Aでは、図1の電源部10からスイッチ手段である監視開始スイッチ15、サイリスタ16及び抵抗17が削除され、その監視スイッチ15が電源制御部A31に接続されている。電源制御部31Aは、スイッチ15の操作信号を入力して図1の電源制御部30とほぼ同様の制御を行う。このような構成に変更しても、実施例1とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0060】
(m) 図1では2個の電池11,12を用いているが、これらは3個以上設けても良い。この際、電池個数に応じてスイッチ13,14の数や結線状態を適宜変えれば良い。
【0061】
(n) 警報器1(1−1〜1−N)は、マルチ接続しなくても単体でも使用できる。当初から単体専用構造にするのであれば、図1の連動処理部36及び連動送受信部47を省略でき、これによって構造の簡単化と低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1を示す警報器の概略の構成図である。
【図2】本発明の実施例1の警報器を用いた警報システムを示す概略の構成図である。
【図3】図1及び図2の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、図1の電源部10、監視開始スイッチ15及び電源制御部31を他の構成に変更した警報器を示す概略の構成図である。
【符号の説明】
【0063】
1,1−1〜1−N 警報器
10,10A 電源部
11,12 電池
13,14 スイッチ
15 監視開始スイッチ
16 サイリスタ
21 火災検出部
22 ガス検出部
30 制御部
31,31A 電源制御部
33 検出処理部
34 警報処理部
36 連動処理部
37 試験処理部
41 記憶部
42 表示出力部
43,44 ランプ
45 音声出力部
46 スピーカ
47 連動送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の電源電力を出力する電池と、
前記電池から出力される前記電源電力を入力し、使用開始前においてオフ状態に操作されると前記電源電力の供給を遮断し、使用開始時においてオン状態に操作されるとこのオン状態が自己保持されて前記電源電力を連続的に供給するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段から連続的に供給される前記電源電力により動作し、監視領域で発生した異常を所定の周期で検出する検出手段と、
前記スイッチ手段から連続的に供給される前記電源電力により動作し、前記所定の周期で前記検出手段の検出結果を予め定められた閾値と比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号を出力する検出処理手段と、
前記スイッチ手段から連続的に供給される前記電源電力により動作し、前記検出処理手段から出力される警報信号に応答して音響や表示により警報を発生し、この警報発生後に前記スイッチ手段がオン状態に操作されると、この操作に応答して前記警報の内の前記音響を停止する警報手段と、
を備えたことを特徴とする警報器。
【請求項2】
駆動用の電源電力を出力する電池と、
使用開始前において前記電池から出力される前記電源電力が供給されると共に低消費電力モードに設定され、使用開始時においてスイッチ手段が操作されると前記低消費電力モードが解除されて通常の電力消費モードに設定されるモード設定手段と、
前記低消費電力モード時には動作を停止し、前記通常の電力消費モード時には監視領域で発生した異常を所定の周期で検出する検出手段と、
前記低消費電力モード時には動作を停止し、前記通常の電力消費モード時には前記所定の周期で前記検出手段の検出結果を予め定められた閾値と比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号を出力する検出処理手段と、
前記低消費電力モード時には動作を停止し、前記通常の電力消費モード時には前記検出処理手段から出力される警報信号に応答して音響や表示により警報を発生し、この警報発生後に前記スイッチ手段が操作されると、この操作に応答して前記警報の内の前記音響を停止する警報手段と、
を備えたことを特徴とする警報器。
【請求項3】
請求項2記載の警報器において、
前記閾値は、前記電池の電源電力によりバックアップされた揮発性の記憶手段に記憶されていることを特徴とする警報器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の警報器において、
前記使用開始時における前記スイッチ手段の操作に応答して警報器機能試験を行い、該試験結果が正常であったときには前記検出手段の動作を行わせ、該試験結果が異常であったときにはその旨を告知する試験処理手段を、設けたことを特徴とする警報器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の警報器において、
前記電池は複数個設けられ、前記複数個の電池を当初は並列状態に接続しておき、前記複数個の電池の出力電圧が所定電圧よりも低下したことを検出したときに、直列状態に接続する電源制御手段を設けたことを特徴とする警報器。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の警報器において、
前記電池の寿命を検出して電池切れ警報を発する手段を設けたことを特徴とする警報器。
【請求項7】
請求項6記載の警報器において、
前記電池切れ警報を発する手段は、前記使用開始時から前記電池の消費電力量又は使用時間を計測して予め定められた閾値になったときに電池切れ警報を発する構成になっていることを特徴とする警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−31451(P2006−31451A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210108(P2004−210108)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】