説明

警報器

【課題】設置環境に応じた受信感度に設定することができる警報器を提供する。
【解決手段】状態検出部としての火災検出回路7と、火災検出回路7の出力信号に基づいて状態を判断し、判断結果に基づいて警報を出力させる制御回路1と、を備える警報器10であって、他の警報器に無線信号を送信するとともに、所定周期で受信サンプリングを行って他の警報器からの無線信号を受信する送受信回路5と、送受信回路5が他の警報器から受信した無線信号の電界強度を測定する電界強度測定部53と、送受信回路5の受信感度を切り替える受信感度切替部12とを有し、受信感度切替部12は、電界強度測定部53が測定した電界強度に応じて、現在の受信感度を、所定の受信感度に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機器の間で状態信号等の送受信を行う警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内等に発生した熱や煙を検知して警報を行う警報器がある。このような警報器は、各警報器が単独で警報動作を行う他に、各部屋に設けた複数の警報器が連動して警報動作を行う場合がある。連動して警報動作を行う際には、各警報器は互いに無線通信を行う。
【0003】
従来の無線通信を行うワイヤレスコントローラにおいては、「全てのワイヤレスセンサからデータを受信したときの受信レベルがスイッチ9の第2位置の受信感度で定められる最小受信レベル以上になるように、当該コントローラ、あるいはワイヤレスセンサの設置位置等を調整する。」、「そして、種々の調整を行って、全てのワイヤレスセンサからのデータを正常に受信できるようになったら、スイッチ9を第1位置に切り換え、受信感度を高くして運用状態に入る。」ことが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−96468号公報(第2頁、第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の記載によれば、運用時の受信感度は設置時の受信感度より高くなされるので、何らかの原因によって電波的な環境が悪化しても無線信号を有効に受信できる可能性は高まる。
【0006】
しかし、受信感度を高めに設定しておくと受信処理に要する消費電流も増加するので、必要以上に受信感度を高く設定することは電池寿命の短縮につながってしまう。
また、電波環境は、設置場所の構造やノイズ発生源の有無に大きな影響を受けて変化しうるものである。したがって、運用を開始した後に電波環境が変化することもあり、この場合は最適な受信感度を設定できない。
さらに、例えば工場などノイズ発生源の多い場所に設置される場合と、一般住宅などノイズ発生源の少ない場所に設置される場合とでは、同じ受信感度を設定したとしてもノイズの影響により通信が成立する確率が異なる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、設置環境に応じた適切な受信感度に設定することができる警報器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る警報器は、状態検出部と、該状態検出部の出力信号に基づいて状態を判断する状態判別部と、該状態判別部の判断結果に基づいて警報を出力させる制御部と、を備える警報器であって、他の警報器に無線信号を送信するとともに、所定周期で受信サンプリングを行って他の警報器からの無線信号を受信する送受信部と、前記送受信部が他の警報器から受信した無線信号の電界強度を測定する電界強度測定部と、前記送受信部の受信感度を切り替える受信感度切替部とを有し、前記受信感度切替部は、前記電界強度測定部が測定した電界強度に応じて、現在の受信感度を、所定の受信感度に切り替えるものである。
【0009】
また、本発明に係る警報器は、送受信部が他の警報器から受信した無線信号の電界強度を測定する電界強度測定部と、前記送受信部の受信感度を切り替える受信感度切替部と、前記電界強度測定部が測定した電界強度の履歴を格納する記憶部と、を有し、前記受信感度切替部は、前記電界強度の履歴に基づいて設定すべき受信感度を算出し、現在の受信感度を、算出した設定すべき受信感度に切り替えるものである。
【0010】
また、本発明に係る警報器は、送受信部の受信感度を切り替える受信感度切替部と、前記電界強度測定部が測定した電界強度の履歴を格納する記憶部と、前記記憶部に格納されたデータを読み出し可能な外部インタフェースとを備えたものである。
【0011】
また、受信感度切替部に対して受信感度を設定する操作手段を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電界強度測定部が測定した電界強度に応じて受信感度を切り替えるので、警報器の設置環境に適した受信感度に設定することができる。
また、電界強度測定部が測定した電界強度の履歴に基づいて算出した設定すべき受信感度に切り替えるので、過去の電界強度を反映した受信感度に設定することができる。
また、記憶部に対して読み出し可能な外部インタフェースを設けた。このため、外部機器を用いて、記憶部に格納された電界強度の履歴を読み出し、この履歴に基づいて受信感度を算出することができる。
さらに、受信感度切替部に対して受信感度を設定する操作手段を有するので、最適な受信感度を手動で設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1を示す火災警報器の機能ブロック図である。
【図2】実施の形態1を示す火災警報器で構成する警報システムの構成図である。
【図3】実施の形態1を示す定期送信の動作の流れを示す図である。
【図4】受信感度テーブル21の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1を示す火災警報器の受信処理のフローチャートである。
【図6】実施の形態2を示す火災警報器の受信処理のフローチャートである。
【図7】電界強度測定テーブル22の構成を示す図である。
【図8】電界強度測定テーブル22の他の構成を示す図である。
【図9】実施の形態3を示す火災警報器の機能ブロック及び外部検査装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
本実施の形態1では、電池で駆動されて無線通信を行う火災警報器に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態1に係る火災警報器の主要構成を示す機能ブロック図である。
図1において、火災警報器10は、制御回路1、電池2、電源回路3、電池電圧検出回路4、送受信回路5、無線信号を送受信するためのアンテナ6、火災検出回路7、警報音制御回路8、表示灯回路9、操作部13を備える。また、制御回路1は、各種情報を記憶する記憶部11と、受信感度切替部12を有している。
【0016】
電池2は、電源回路3に直流電源を供給する。電源回路3は、電池2の電圧を所定電圧に制御し、制御回路1、送受信回路5、火災検出回路7、警報音制御回路8、表示灯回路9に供給する。
【0017】
電池電圧検出回路4は、電源回路3に印加される電池2の電圧を検出し、検出した電圧に応じた電池電圧検出信号を制御回路1に出力する。電池電圧検出回路4は、電池残量が低下したこと、または、電池切れの閾値を超えたこと、を検出すると、制御回路1によって警報音制御回路8と表示灯回路9を駆動させるとともに、電池切れの状態情報を含む状態信号を送受信回路5より出力させる。
【0018】
火災検出回路7は本発明の状態検出部に相当し、火災現象に基づく煙または熱等の検知対象物の物理量または物理的変化を検出して、検出内容に応じた信号を制御回路1に出力する。警報音制御回路8は、ブザー・スピーカ等による音声鳴動の動作を制御する回路である。表示灯回路9は、発光ダイオード等の表示灯の点灯動作を制御する回路である。
【0019】
送受信回路5は、無線信号を送受信するためのアンテナ6に接続されており、送信回路51と受信回路52とを備える。受信回路52は、所定周期で受信サンプリング動作を行ってアンテナ6から入力された無線信号を処理し、自己宛の信号の場合には受信処理を行う。また、自己宛以外の信号の場合には受信処理を行わない。受信処理した信号は、制御回路1へ出力する。また、送信回路51は、制御回路1に制御されて、状態信号などの信号の送信処理を行う。
電界強度測定部53は、制御回路1に制御されて、アンテナ6から入力された無線信号の電界強度を測定する。測定値は、制御回路1に出力される。
【0020】
制御回路1は、火災検出回路7によって出力された信号に基づいて火災状態を判別する状態判別部としての機能を有し、警報音制御回路8及び表示灯回路9を制御して警報及び警報停止を行う。また、送受信回路5が受信した信号に基づいて必要な処理を行うとともに、必要に応じて送受信回路5を制御して他の火災警報器へ状態信号などを送信する。
【0021】
記憶部11は、制御回路1の動作プログラムや各種データを記憶する。動作プログラムとしては、親機として動作する場合の動作プログラムと、子機として動作する場合の動作プログラムの両方を備える。また、記憶部11は、受信感度切替部12が受信回路52の受信感度を切り替える際に参照するデータを格納する(詳細は後述する)。
【0022】
受信感度切替部12は、受信回路52の無線信号の受信感度を切り替える。なお、動作については後述する。
【0023】
操作部13は、受信感度切替部12に対して受信感度の設定を行うための操作手段であり、例えばディップスイッチやロータリスイッチなどの切替スイッチを用いることができる。操作部13を操作することにより、受信感度切替部12に対して受信感度の設定を指示することができる。
【0024】
図2は、上記のように構成された複数の火災警報器10が構成する警報システム100を示す図である。図2において、警報システム100は、火災警報器10a〜火災警報器10dにより構成され、親機として機能するものを親機10a、子機として機能するものを子機10b〜子機10dと称する。火災警報器10a〜10dを結ぶ実線は、互いに無線送受信が可能であることを示している。
【0025】
上記のように構成された警報システム100において、火災が発生した場合の動作を説明する。
親機10aが設置された環境で火災が発生すると、火災検出回路7により火災を検出し、警報音制御回路8や表示灯回路9により音声や表示灯を用いて警報を行うとともに、火災に関する警報情報を連動信号として他の子機10b〜子機10dに送信する。そして、親機10aにより送信された連動信号を受信した子機10b〜子機10dは音声や表示灯によって必要な警報を行う。その後、親機10aが火災を検出しなくなると自己復旧して警報を停止するとともに、子機10b〜子機10dへの連動信号の送信を停止する。そして、連動信号を受信しなくなった子機10b〜子機10dも警報を停止する。
【0026】
また、子機10bが設置された環境で火災が発生すると、子機10bは火災検出回路7により火災を検出し、音声や表示灯によって警報を行うとともに、火災に関する情報を連動信号として親機10a、子機10c、及び子機10dに送信する。そして、子機10bにより送信された連動信号を受信した親機10a、子機10c、及び子機10dは音声や表示灯によって必要な警報を行う。
さらに、子機10bにより発せられた連動信号を受信した親機10aは、送信元の子機10b以外の子機10c、子機10dに連動信号を転送する。よって、各子機同士が離れているために、子機10bが送信した連動信号が子機10c、子機10dで受信されなくても親機10aにより転送された連動信号が子機10c、子機10dで受信される。その後、子機10bは火災を検出しなくなると自己復旧して警報停止するとともに、親機10aと子機10c、子機10dへの連動信号の送信を停止する。そして、連動信号を受信しなくなった親機10aと子機10c、子機10dも警報を停止する。
【0027】
また、いずれかの警報器が火災を検出して連動警報を行っている場合において、連動先の火災警報器10の警報停止ボタンが押された場合は、火元以外の火災警報器10は火災警報(連動警報)を停止する。また、火元の火災警報器10の警報停止ボタンが押された場合には、連動先の火災警報器10の連動警報は停止し、火元の火災警報器10の音響鳴動のみ停止(表示灯は点灯したまま)という状態になる。さらに、火災警報器10が自己復旧した後に、再度火災を検出した場合には、最初の火災検出と同じ動作を行う。一方、再度火災を検出しない場合には、定期送信の動作に移行する。
【0028】
以上のように火災発生時には警報システム100内の親機10aと子機10b〜子機10dが連動して火災警報を行うことで、より確実に火災の発生を警報することができる。
【0029】
次に、警報システム100を構成する親機10aと子機10b〜10dの、火災監視(定常状態)中における定期送信の動作を説明する。
定期送信とは、例えば電池残量や通信状態などの自己の状態情報を含む信号を、他の火災警報器に互いに送信するものであり、他の火災警報器の状態を互いに確認することを目的として行われるものである。定期送信は、所定の周期(例えば15〜20時間毎に1回)で行われる。
【0030】
図3は、定期送信の動作の流れを示す図である。
(S101)
親機10aは、定められた送信タイミングになると、親機10aまたはそれが属するグループの状態情報と、送信元を識別するための自己アドレスやグループIDを含む情報とを状態信号として子機10b〜子機10dに送信する。
【0031】
(S102、S103、S104)
また、子機10b〜子機10dは、親機10aからの状態信号を受信した後、それぞれの送信タイミングになると、例えば、電池残量などの機器状態に関する状態情報と、送信元を識別するための自己アドレスやグループIDを含む情報とを状態信号として、親機10aに送信する。
この際、親機10aと子機10b〜10dは、それぞれの状態信号に含まれる自己アドレスによりどの火災警報器からの信号であるかを区別できる。
【0032】
(S105)
親機10aは、子機10b〜子機10dにより送信された状態信号を受信すると、すべての子機に対して応答信号を返送する。
【0033】
親機10aまたはそれが属するグループの状態情報の例としては、火災検出回路7のセンサ状態(劣化、汚損等)、異常が発生している子機のアドレスやグループID、無線通信が成立していない子機のアドレスやグループID情報などが挙げられる。一方、子機10b〜10dが親機10aに送信する子機の状態情報の例としては、火災検出回路7のセンサ状態(劣化、汚損等)、受信処理回数(規定以外の無線に対する処理の回数)などが挙げられる。
なお、いずれかの火災警報器が火災を検出すると、前述の火災警報の動作に移行する。
このように、電池残量などの各種状態情報を互いに送信して状態確認を行う定期送信の動作を所定時間毎に行い、各火災警報器同士の状態確認を行う。
【0034】
次に、火災警報器10の受信処理における、受信感度の設定動作を説明する。
図4は記憶部11に格納された受信感度テーブル21の構成を示す図である。受信感度テーブル21は、火災警報器10の製造時(工場出荷時)に予め記憶部11に格納されており、ある電界強度レベルのときにどの受信感度に設定すべきかを示すデータである。受信感度テーブル21は、電界強度レベル領域21a、受信感度領域21bを有している。電界強度レベル領域21aには、無線信号の電界強度が複数のレベルに分かれて格納されている。ここでは、例えば、強度レベル1〜強度レベル5までの5レベルに分類されており、強度レベル1は電界強度が弱く、強度レベル5は電界強度が強いことを示している。そして、受信感度領域21bは、各電界強度レベルに対応した受信感度の設定値が記憶されている。
【0035】
図5は、受信処理における受信感度の設定動作を示すフローチャートである。主に電界強度測定部53、制御回路1、及び受信感度切替部12が、協働して図5に示す処理を行う。
ここで、火災警報器10を家屋等へ設置する際には、設置者が周囲の電波環境を調査し、操作部13を用いて最適な受信感度を設定しているものとする。あるいは、工場出荷時に設定された受信感度の初期値がそのまま設定されているものとする。
そして、火災警報器10は、定期的に受信されるべき無線信号(例えば、上述の定期送信)があるものとして、以下、説明する。
【0036】
火災警報器10は、所定周期の受信サンプリングタイミングになると(S201)、受信サンプリングを行い、受信した無線信号の電界強度を測定する(S202)。
【0037】
そして、測定した電界強度が有効値であるか否かを判断する(S203)。ここで有効値とは、図4で示した強度レベル1〜強度レベル5のいずれかに属する値をいう。有効値でないとは、すなわち、自己宛の無線信号を受信できなかったことを意味する。
【0038】
電界強度が有効値であった場合、測定した電界強度レベルに対応する受信感度を設定する(S204)。例えば、電界強度レベルが”強度レベル2”であった場合には、これに対応して、受信感度を”高”に設定する。すなわち、無線信号の電界強度レベルが低めであるので、受信感度を高く設定することにより、無線信号を正常受信する確率を高めるのである。また、例えば、電界強度レベルが”強度レベル5”であった場合には、これに対応して、受信感度を”最低”に設定する。すなわち、無線信号の電界強度レベルが高い(十分に受信可能である)ので、受信感度を低く設定することにより、受信回路52の消費電流を低減するのである。
また、測定した電界強度レベルが低い場合(”強度レベル1”、”強度レベル2”)のみ受信感度を変更し、電界強度レベルが高い場合は受信感度を現状のまま維持するようにしてもよい。このようにしても、無線信号を正常受信する確率を高めることのできる受信感度を維持できる。
【0039】
また、電界強度が低くて有効値でなかった場合、受信感度を最高値である”最高”に設定する(S205)。すなわち、無線信号を受信できなかったため、例えば周辺環境の変化により電波の受信環境が悪化したものと判断し、受信感度を高めることによって無線信号をより受信しやすくするのである。なお、既に受信感度が”最高”に設定されている状態でもなお、電界強度が有効値でなかった場合には、何らかの異常が発生しているものと判断し、警報音制御回路8あるいは表示灯回路9によってユーザーに異常を報知することとしてもよい。
【0040】
そして、受信サンプリングタイミングごとに、ステップS102〜ステップS105の処理を行い、定期的に受信感度を切り替えるようにする。
【0041】
以上のように本実施の形態1に係る火災警報器10によれば、定期的な受信サンプリングの処理において無線信号の電界強度を測定し、測定した電界強度に応じて受信回路52の受信感度を切り替えるようにした。このため、火災警報器10が設置された環境において適切な受信感度に設定することができる。適切な受信感度を自動的に設定できるので、予め異なる受信感度を有する火災警報器のラインナップを揃えておく必要もなく、製造コストの増加を抑制することができる。
一般的に、火災警報器10を家屋や工場等に設置する場合には、設置場所の電波環境を調査し、その環境に応じた受信感度を設定するので、初期設置時には最適な無線通信を行うことができる。しかし、電波環境は、設置場所の構造や、ノイズ発生源の有無に大きな影響を受けて変化しうる。例えば、設置場所の近くにモーターなどのノイズ発生源が配置されると、火災警報器10の電界強度が弱い場合、モーターが発するノイズにより無線信号を受信できず通信エラーが発生する可能性がある。火災警報器10は一度設置されると頻繁には設置場所が変化しないのに対し、ノイズ発生源となりうるモーターなどは配置場所が変化しうるものである。言い換えると、火災警報器10の初期設置時には最適な受信感度であっても、その後は最適とはいえない状態となりうる。
しかし、本実施の形態1に係る火災警報器10によれば、実際の電界強度に基づいて定期的に受信感度を切り替えるので、電波環境が変化しても最適な受信感度に設定することができる。
【0042】
また、本実施の形態1に係る火災警報器10によれば、実際の電界強度に基づいて受信感度を設定するので、予め受信感度を高めに設定する必要がない。受信感度を高く設定すると受信回路52による消費電流が高くなるので、電界強度が十分に強い場合には無駄に電流を消費することとなって電池寿命の短縮につながるが、本実施の形態1に係る火災警報器10によればそのようなこともない。
【0043】
なお、本実施の形態1に係る火災警報器10は操作部13を設ける構成としたが、操作部13を設けない構成とすることもできる。この場合、記憶部11に受信感度の初期値を予め格納しておき、家屋等への設置後は、上述の通り火災警報器10自身により受信感度の切り替えを行うようにする。
【0044】
実施の形態2.
本実施の形態2では、実際に測定した電界強度の履歴に基づいて、受信感度を切り替える場合の実施の形態を説明する。
本実施の形態2に係る火災警報器10は、前述の実施の形態1と同様の構成であり、受信処理における動作と、記憶部11に電界強度の履歴が格納される点が異なる。本実施の形態2では、前述の実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0045】
図6は、受信処理における受信感度の設定動作を示すフローチャートである。主に、電界強度測定部53、制御回路1、受信感度切替部12が協働して図6に示す処理を行う。
【0046】
図7は記憶部11に格納される電界強度測定テーブル22の例、図8は、同じく記憶部11に格納される電界強度測定テーブル22の他の例である。図7及び図8において、電界強度測定テーブル22は、電界強度の測定結果を履歴として格納するテーブルであり、電界強度レベル領域22aと、頻度領域22bを有する。電界強度レベル領域22aは強度レベル1〜強度レベル5までの電界強度のレベルを表す。頻度領域22bは、電界強度レベルに応じた電界強度の測定回数(頻度)が格納されている。
以下、図6に基づいて、適宜図7及び図8を参照しつつ説明する。
【0047】
火災警報器10は、所定周期の受信サンプリングのタイミングになると(S301)、受信サンプリングを行い、受信した無線信号の電界強度を測定する(S302)。
【0048】
そして、測定した電界強度が有効値であるか否かを判断する(S303)。
電界強度が有効値でなかった場合は、ステップS305へ進む。電界強度が有効値であった場合、測定した電界強度レベルに基づいて、それに対応する電界強度測定テーブル22の頻度領域22bのカウント数をインクリメントする(S304)。
【0049】
続けて、電界強度の測定を予め定めた所定回数実施したか否かを判断する(S305)。実施していなければステップS301に戻り、実施していればステップS306へ進む。
【0050】
電界強度の測定を所定回数実施した場合は、電界強度測定テーブル22に格納された電界強度レベルのカウント総数(頻度領域22bのカウント数の合計)と、予め定めた有効値基準値Pとを比較する(S306)。
ここで、有効値基準値Pは、電界強度を測定した中で、十分な回数の有効値が測定できたか否かを判断するための値である。電界強度測定テーブル22のカウント総数が有効値基準値Pを超えていれば、強度レベル1〜強度レベル5のいずれかの電界強度で無線信号を規定回数以上受信できたことを意味する。しかし、電界強度レベルのカウント総数が有効値基準値Pを超えていなければ、電界強度が低くて無線信号を規定回数未満しか受信できなかったことを意味する。
【0051】
電界強度レベルのカウント総数が有効値基準値P未満であれば、受信感度を”最高”に設定し、電界強度測定テーブル22の頻度領域22bのカウント数をクリアする(S307)。すなわち、電界強度測定を所定回数実施した中で無線信号を十分に受信できなかったため、現状では受信感度の設定が低すぎると判断し、受信感度を高めることによって無線信号をより受信しやすくするのである。なお、既に受信感度が”最高”に設定されている状態でもなお、電界強度が有効値でなかった場合には、警報音制御回路8あるいは表示灯回路9によってユーザーに異常を報知することとしてもよい。その後、ステップS301へ戻る。
【0052】
電界強度レベルのカウント総数が有効値基準値P以上であれば、電界強度レベルの最頻カウント数と、最頻値基準値Qとを比較する(S308)。ここで、電界強度レベルの最頻カウント数とは、電界強度測定テーブル22の頻度領域22bに格納されたカウント数のうち、最も度数の大きい値をいう。また、最頻値基準値Qとは、測定した電界強度の値のばらつきの大きさを判断するための値である。最頻カウント数が最頻値基準値Qに達していれば、電界強度のばらつきが小さいと判断できる。
【0053】
図7、図8を例に具体的に説明する。図7、図8の例ではいずれも電界強度レベルのカウント総数は30であり、最頻値基準値Q=15が設定されているものとする。
図7において、電界強度測定テーブル22のうち、最頻カウント数は”強度レベル3”の”18”である。この場合は、最頻カウント数が最頻値基準値Q以上であり、受信する無線信号の電界強度はほぼ安定して強度レベル3であると判断し、ステップS310へ進む。
一方、図8において、電界強度測定テーブル22のうち、最頻カウント数は”強度レベル4”の”9”である。この場合は、最頻カウント数が最頻値基準値Q未満であり、受信する無線信号の電界強度のばらつきが大きいと判断し、ステップS309へ進む。
【0054】
ステップS309では、最頻カウント数が最頻値基準値Q未満である(電界強度のばらつきが大きい)場合の、受信感度の切替を行う。
電界強度測定テーブル22の頻度領域22bのカウント数のうち、最低値基準値R以上の頻度の電界強度レベルを抽出する。ここで、最低値基準値Rとは、電界強度レベル毎のカウント数のうち、極端に少ないもの(頻度の小さいもの)を区別するための値である。そして、最低値基準値R以上の頻度の電界強度レベルのうち、最も低いレベルよりも1レベル低い電界強度を特定し、これに対応する受信感度を設定する。すなわち、最低値基準値R以上の電界強度レベルを抽出することで多数を占める電界強度レベルを把握でき、これらの電界強度レベルよりも電界強度の低い無線信号を十分に受信できるように受信感度を高くするのである。
【0055】
図8を例に具体的に説明する。
図8の例において、最低値基準値R=6とすると、最低値基準値R以上のカウント数を有する”強度レベル2”、”強度レベル3”、”強度レベル4”が、抽出される。
そして、これらの電界強度レベルのうち、最も低いレベルである”強度レベル2”よりも1レベル低い電界強度レベル”強度レベル1”に対応する受信感度を設定する。”強度レベル1”に対応する受信感度は、図4を参照すると”最高”であるのでこれを設定することとなる。このようにすることで、最適な受信感度を設定することができる。
【0056】
そして、電界強度測定テーブル22の頻度領域22bのカウント数をクリアしてステップS301へ戻る。
【0057】
ステップS310では、最頻カウント数が最頻値基準値Q以上である(電界強度にばらつきが少ない)場合の、受信感度の切替を行う。
電界強度測定テーブル22のうち、最も頻度の高い電界強度レベルから、減算基準値Tを減算した電界強度レベルを特定する。そして、この電界強度レベルに対応する受信感度を設定する。すなわち、最も頻度の高い電界強度レベルよりも電界強度の低い無線信号を十分に受信できるように受信感度を高くするのである。
【0058】
図7を例に具体的に説明する。
図7の例において、減算基準値T=1とすると、最も頻度の高い電界強度レベルである”強度レベル3”から1を減算した電界強度レベル”強度レベル2”を特定し、これに対応する受信感度を設定する。”強度レベル2”に対応する受信感度は、図4を参照すると”高”であるのでこれを設定することとなる。このようにすることで、最適な受信感度を設定することができる。
【0059】
そして、電界強度測定テーブル22の頻度領域22bのカウント数をクリアしてステップS301へ戻る。
【0060】
以上のように本実施の形態2に係る火災警報器10によれば、電界強度の測定履歴に基づいて受信感度を切り替えるようにした。このため、前述の実施の形態1と同様に、火災警報器10が設置された環境において適切な受信感度に設定することができる。
さらに、電界強度の測定履歴に基づいて受信感度を切り替えるので、過去に測定した電界強度の値を反映したより最適な受信感度を設定することができる。
【0061】
なお、電界強度の履歴に基づく受信感度の算出方法は、図6で説明した方法に限定するものではない。電界強度の履歴データに対して、必要な統計処理を施し、この結果に基づいて受信感度を算出することもでき、同様の効果を得ることができる。
【0062】
実施の形態3.
本実施の形態3では、測定した電界強度の履歴に基づいて、外部検査装置を用いて最適な受信感度を算出する場合の実施の形態を説明する。
【0063】
図9は、本実施の形態3に係る火災警報器30の主要構成及び火災警報器30と接続される外部検査装置40を示す機能ブロック図である。火災警報器30は、入出力インタフェース14を備えた点が、前述の実施の形態1、2の火災警報器10と異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0064】
入出力インタフェース14は、外部検査装置40と通信接続するための外部インタフェースであり、記憶部11のデータを読み書きする機能を有する。
【0065】
外部検査装置40は、火災警報器30の状態を検査・点検するための外部機器であり、必要に応じて通信ケーブル等を用いて火災警報器30を接続される。また、外部検査装置40は、入出力インタフェース14を介して、記憶部11にデータを読み書きすることができる。
【0066】
このように構成された火災警報器30は、前述の実施の形態2と同様、所定周期で受信サンプリングを行い、無線信号の電界強度を測定し、記憶部11に電界強度の測定履歴を格納しておく。
例えば検査・点検を実施する作業者は、外部検査装置40を火災警報器30に接続し、記憶部11から電界強度の測定履歴を読み出す。そして、図6のステップS306〜S310で述べたのと同様の手順で外部機器を用いて最適な受信感度を算出し、算出した受信感度に基づいて操作部13を操作して受信感度を設定する。あるいは、操作部13を用いて受信感度を設定するのではなく、入出力インタフェース14を介して記憶部11の所定の領域に切り替え先の受信感度を書き込み、受信感度切替部12が書き込まれた受信感度に基づいて受信感度を設定するようにしてもよい。
【0067】
このように本実施の形態3によれば、受信感度の測定履歴を外部検査装置40で読み出し、外部検査装置40を用いて最適な受信感度の算出を行うようにした。このため、前述の実施の形態2と同様の効果を得ることができるとともに、受信感度の算出に要する火災警報器30の処理負担を軽減することができる。また、工場や施設等に設置された火災警報器は、作業者による外部検査装置を用いた定期的な検査・点検が行われる。このような定期的な検査・点検時に併せて受信感度の最適化を行うことができるので、作業者の負担も軽く、ユーザーの負担もなく、運用コストを低減することができる。
【0068】
なお、本実施の形態3に係る火災警報器30は操作部13を設ける構成としたが、操作部13を設けない構成とすることもできる。
【0069】
なお、上記説明では、電池で駆動される火災警報器に本発明を適用した場合を例に説明したが、火災警報器の電源の供給方法はこれに限定するものではない。例えば、電源アダプタを介して電源を供給する火災警報器に適用することもできる。また、火災警報器以外に異常検出用などの警報器に適用することも可能である。また、自動火災報知システムの受信機や感知器等に用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 制御回路、2 電池、3 電源回路、4 電池電圧検出回路、5 送受信回路、6 アンテナ、7 火災検出回路、8 警報音制御回路、9 表示灯回路、10 火災警報器、10a 親機、10b 子機、10c 子機、10d 子機、11 記憶部、12 受信感度切替部、13 操作部、14 入出力インタフェース、21 受信感度テーブル、21a 電界強度レベル領域、21b 受信感度領域、22 電界強度測定テーブル、22a 電界強度レベル領域、22b 頻度領域、30 火災警報器、40 外部検査装置、51 送信回路、52 受信回路、53 電界強度測定部、100 警報システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態検出部と、
該状態検出部の出力信号に基づいて状態を判断する状態判別部と、
該状態判別部の判断結果に基づいて警報を出力させる制御部と、を備える警報器において、
他の警報器に無線信号を送信するとともに、所定周期で受信サンプリングを行って他の警報器からの無線信号を受信する送受信部と、
前記送受信部が他の警報器から受信した無線信号の電界強度を測定する電界強度測定部と、
前記送受信部の受信感度を切り替える受信感度切替部と、を有し、
前記受信感度切替部は、前記電界強度測定部が測定した電界強度に応じて、現在の受信感度を、所定の受信感度に切り替えることを特徴とする警報器。
【請求項2】
状態検出部と、
該状態検出部の出力信号に基づいて状態を判断する状態判別部と、
該状態判別部の判断結果に基づいて警報を出力させる制御部と、を備える警報器において、
他の警報器に無線信号を送信するとともに、所定周期で受信サンプリングを行って他の警報器からの無線信号を受信する送受信部と、
前記送受信部が他の警報器から受信した無線信号の電界強度を測定する電界強度測定部と、
前記送受信部の受信感度を切り替える受信感度切替部と、
前記電界強度測定部が測定した電界強度の履歴を格納する記憶部と、を有し、
前記受信感度切替部は、前記電界強度の履歴に基づいて設定すべき受信感度を算出し、現在の受信感度を、算出した設定すべき受信感度に切り替えることを特徴とする警報器。
【請求項3】
状態検出部と、
該状態検出部の出力信号に基づいて状態を判断する状態判別部と、
該状態判別部の判断結果に基づいて警報を出力させる制御部と、を備える警報器において、
他の警報器に無線信号を送信するとともに、所定周期で受信サンプリングを行って他の警報器からの無線信号を受信する送受信部と、
前記送受信部が他の警報器から受信した無線信号の電界強度を測定する電界強度測定部と、
前記送受信部の受信感度を切り替える受信感度切替部と、
前記電界強度測定部が測定した電界強度の履歴を格納する記憶部と、
前記記憶部に格納されたデータを読み出し可能な外部インタフェースとを備えたことを特徴とする警報器。
【請求項4】
前記受信感度切替部に対して受信感度を設定する操作手段を有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−211375(P2010−211375A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54927(P2009−54927)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】