説明

貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料

【課題】貝殻からの貝柱の剥離作業を不要とし、貝柱の生肥としての有効利用を可能にすると共に、栄養価に富んだ肥料・土壌改良材・飼料を作成する。
【解決手段】貝殻と該貝殻中の身である貝柱との成分を含むものとする。貝殻は、固着している貝柱と共に洗浄後に50℃乃至200℃の温度で温風乾燥してから粉・粒状に破砕する。貝殻には、カキ・ホタテ・ハマグリ・アサリ・シジミ・バカ貝・ホッキ貝等の食用貝の貝殻を使用する。フルボ酸またはフルボ酸鉄を成分とする腐植土を含み、該腐植土は、さらに酸化チタンを含むものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生長促進、土壌の改質、さらには動物の飼育促進のための貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貝殻類を使用した肥料として、例えば特許文献1に開示されているように、粉砕されたカキ殻に、粉砕されたブルース石を混合し、さらに水溶性バインダーを混合して混練し、造粒した技術がある。
【0003】
また、特許文献2および特許文献3に開示されているように、微粉砕したカキ殻に、リン酸肥料、腐植肥料、苦土肥料の中から選んだ少なくとも1種以上の肥料を混合し、これにリグニン化合物およびアルコール発酵廃液、粒状珪酸質肥料の中から選んだ少なくとも1種の水溶性バインダーを添加・混練して造粒した技術が存在する。
【0004】
さらに、貝肉エキス、貝肉、貝殻の分離抽出装置として、例えば特許文献4に開示されているように、貝殻を破砕して貝エキスを抽出し、酵素等で貝肉を分解・分離する技術が存在する。
【特許文献1】特開2001−80984号公報
【特許文献2】特許第3087944号公報
【特許文献3】特許第3087947号公報
【特許文献4】特開2004−351307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来における各技術では、貝柱の処理が具体的になされてはおらず、例えば、貝殻から手作業で強制的に剥離してから廃棄処分するか、あるいはホタテ貝等のように貝種によっては、乾燥貝柱として食品に利用されるかしていた。このとき、貝柱は、身と違って貝殻内側にしっかりと固着されているため、手作業では取り難く、作業が非常に面倒である。例えば、カキの場合、生カキ自体の身は食中毒の危険性が非常に大きいため、海から取り出した後に塩素水等で身付き毎洗浄することが食品衛生法の規定によって義務付けられている。
【0006】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、貝殻からの貝柱の剥離作業を不要とし、貝柱の生肥としての有効利用を可能にすると共に、栄養価に富んだ肥料・土壌改良材・飼料を容易に作成することができる貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料あっては、貝殻と該貝殻中の身である貝柱との成分を含むことを特徴とする。
【0008】
このとき、貝殻は、固着されている貝柱と共に洗浄後に温風乾燥してから粉・粒状に破砕処理される。
【0009】
また、貝殻は洗浄後に50℃乃至200℃の温度で温風乾燥される。
【0010】
さらに、貝殻には、カキ・ホタテ・ハマグリ・アサリ・シジミ・バカ貝・ホッキ貝等食用貝の貝殻が使用される。
【0011】
貝殻成分の他に、フルボ酸またはフルボ酸鉄を成分とする腐植土を含むものとすることができる。
【0012】
さらに、この腐植土は、さらに酸化チタンを含むものとすることができる。
【0013】
一方、pH8乃至9の液体肥料に形成可能としたものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1にあっては、貝殻からの貝柱の剥離作業を不要とし、貝柱の生肥としての有効利用を可能にすると共に、栄養価に富んだ肥料・土壌改良材・飼料を容易に作成することができる。
【0015】
すなわち、貝殻と該貝殻中の身である貝柱との成分を含むので、貝殻成分と貝柱成分との合体により、栄養価に富んだ肥料・土壌改良材・飼料を容易で且つ低コストに作成することができる。
【0016】
請求項2にあっては、貝殻は、固着されている貝柱と共に洗浄後に温風乾燥して粉・粒状に破砕処理されて成るので、貝殻からの貝柱の面倒な剥離作業を不要とし、しかも乾燥および破砕粉・粒化によって長期保存の可能な肥料・土壌改良材・飼料を容易に生成することができる。
【0017】
請求項3にあっては、50℃乃至200℃の温度で温風乾燥することにより、貝殻表面のギザギザした部分に付着した塩素水洗浄によるときのカルキを完全に落すことができる。
【0018】
請求項4にあっては、貝殻には、カキ・ホタテ・ハマグリ・アサリ・シジミ・バカ貝・ホッキ貝等の食用貝の貝殻を使用したので、これらの貝類による貝柱の全ての有効利用が可能となる。
【0019】
請求項5にあっては、フルボ酸またはフルボ酸鉄を成分とする腐植土を含むので、貝殻成分と、貝柱成分と、腐植土のフルボ酸またはフルボ酸鉄等の成分とが合体した相乗効果によって、更に栄養価に富んだ肥料・土壌改良材・飼料を容易で且つ低コストに作成することができる。特に、フルボ酸を構成する酢酸と、フルボ酸鉄の鉄イオンと、貝殻成分および貝柱成分に含まれるミネラル類との相互作用によって、水に溶出しにくいミネラル種元素を貝殻および貝柱から土壌中に容易に溶出させることができる。
【0020】
請求項6にあっては、腐植土は、さらに酸化チタンを含むので、貝殻成分、貝柱成分それぞれに含まれるミネラル種によって、施用された際の土壌中に生まれる微生物による有害化学物質の分解に加えて、酸化チタンによる光触媒作用により、病虫害を減少させ、土壌中のダイオキシン等の有害化学物質を効率良く分解することが可能な肥料・土壌改良材・飼料を作成することができる。
【0021】
請求項7にあっては、pH8乃至9の液体肥料に形成可能としたので、アルカリ質の肥料・土壌改良材・飼料の加工が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。図において示される符号Pは、貝殻から肥料・土壌改良材・飼料を製造するための処理工程を示すもので、海から取り出して塩素水等で身付き毎洗浄した後の例えばカキ・ホタテ・ハマグリ・アサリ・シジミ・バカ貝・ホッキ貝等の各種の食用貝殻内から、貝柱を残したままの状態で身(ウロ)だけを取り出す工程Aで処理する。
【0023】
この工程Aで処理される例えばカキ等の貝殻には、酸化チタン41ppm、カルシウム45重量%、鉄6200ppm、亜鉛43.41ppm、マンガン1400ppm、カリウム320ppm、リン1600ppm、マグネシウム5200ppm、セレン52200ppm、モリブデン2748ppm、珪素7100ppm、銅8.61ppm、ナトリウム1.55重量%、ゲルマニウム5ppm未満、クロム1ppm未満、コバルト44重量%、ニッケル1ppm未満、リチウム2ppm未満、バナジウム2ppm未満、キチン質、炭素、ラミナリン、コンキオリン有機窒素15重量%、酸素、水素、硫黄、ヨウ素、フルボ酸等のように、植物の成長に有用なミネラル類が含まれている。
【0024】
また、例えばホタテ貝等の貝柱には、100g当たりの成分として、カルシウムが11mg、リンが76mg、鉄が0.4mg、灰分が1.8g、蛋白質が20.8g、脂質が0.8g、糖質2.4g、ビタミンAが8IU、ビタミンB1が0.04mg、ビタミンB2が0.1mg、ビタミンCが3mg、ニコチン酸が1.4mgが含まれている。
【0025】
そして、海水の塩抜きおよび表面に付着した種々の汚れを取るために、貝殻を例えばカゴ容器に入れてから例えば真水または水道水や井戸水等で洗浄する工程Bと、例えばカキのように貝殻表面のギザギザした部分に付着した塩素水洗浄によるときのカルキを完全に落とすために、カゴ容器に入れられた洗浄後の貝殻を例えばカゴ容器毎、約50℃乃至200℃程度の温度で温風乾燥する工程Cで処理する。
【0026】
さらに、乾燥後の貝殻を例えば2mm以下で、好ましくは0.2mm程度までの粉・粒状に破砕処理するために、上下動するハンマーで貝殻を打ち砕く形式のハンマー破砕機、あるいはミル破砕機等によって破砕する工程Dを行なう。
【0027】
加えて、貝殻の粉・粒状物を計量して包装する工程Eを行なう。このときの貝殻の粉・粒状物の包装は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール等々のようなガスバリア性の強いプラスチックフィルムを一層もしくは多層にわたって真空包装したものが好適である。
【0028】
また、前記した破砕前の乾燥工程Cを仮乾燥とし、破砕処理後に、さらに約50℃乃至200℃程度の温度で温風乾燥する本乾燥工程Fを選択しても良い。
【0029】
このように形成された貝殻の粉・粒状物に対し、フルボ酸またはフルボ酸鉄を成分とし、さらに光触媒作用を有する酸化チタンを含有する腐植土によって形成された腐植肥料を混合することで、水素イオン濃度がpH8乃至9のアルカリ性液体肥料に形成可能とした貝殻および貝柱主体の肥料・土壌改良材・飼料が形成される。
【0030】
このとき腐植肥料には、フルボ酸鉄を鉄成分の重量で0.62重量%含むと共に、フルボ酸を含んでいる。この腐植肥料の分量は、例えばカキやホッキの貝殻に対し約5〜20重量%とする。
【0031】
また、貝殻の粉・粒状物に対し、天然乾燥させて細粒状に破砕して成る例えば藍藻等の藻類を混合しても良い。このとき、貝殻に藻が付着した状態で上記したA〜Fまでの各工程を経るようにしても良い。
【0032】
さらに、前記酸化チタンとして砂鉄を使用しても良い。
【0033】
加えて、松枝、松葉、松笠のうち少なくとも1種以上を含ませるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における貝殻から肥料・土壌改良材・飼料を製造するための処理工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
P 貝殻から肥料・土壌改良材・飼料を製造するための処理工程
A 貝柱を残して身を取り出す工程
B 貝殻の洗浄工程
C 乾燥工程(仮乾燥工程)
D 破砕工程
E 包装工程
F 本乾燥工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻と該貝殻中の身である貝柱との成分を含むことを特徴とする貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料。
【請求項2】
貝殻は、固着されている貝柱と共に洗浄後に温風乾燥してから粉・粒状に破砕処理されて成る請求項1記載の貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料。
【請求項3】
貝殻の洗浄後50℃乃至200℃の温度で温風乾燥した請求項2記載の貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料。
【請求項4】
貝殻には、カキ・ホタテ・ハマグリ・アサリ・シジミ・バカ貝・ホッキ貝等食用貝の貝殻を使用した請求項1または2記載の貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料。
【請求項5】
フルボ酸またはフルボ酸鉄を成分とする腐植土を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料。
【請求項6】
腐植土は、さらに酸化チタンを含む請求項1乃至4のいずれかに記載の貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料。
【請求項7】
pH8乃至9の液体肥料に形成可能とした請求項1乃至5のいずれかに記載の貝殻類を使用した肥料・土壌改良材・飼料。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−176711(P2007−176711A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373943(P2005−373943)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(505450157)
【Fターム(参考)】