説明

負荷回路及びこれを用いた同調回路

【課題】同調回路の同調周波数を大きく変化させても、同調周波数に対し負性抵抗の値を調整する回路が不要で、かつ常に帯域一定で利得一定の特性を持つ同調回路に用いる負荷回路を提供する。
【解決手段】同調回路に用いる本発明の負荷回路10は、インダクタ14と、上記インダクタ14に直列に接続され、上記インダクタ14の直列抵抗成分を打ち消し、インダクタのQを増大させるための負性抵抗回路12とを備える。上記構成の上記負荷回路10を用いて同調回路を構成すると、インダクタ14のもつQよりも、Qの高い同調回路が実現でき、かつ同調周波数を大きく変化させても、常に一定の帯域で利得一定の特性を持つ同調回路を構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、テレビチューナのような受信端末装置の同調回路に使用する負荷回路に関し、より特定的には同調回路のQ(Quality Factor)を増大させることができるように改良された負荷回路に関する。本発明はまた、当該負荷回路を使用した同調回路に関する。
【背景技術】
【0002】
受信機の混変調特性を改善する最善の方法は、受信する周波数における同調回路の周波数選択度を向上させることである。しかしながら、同調回路の周波数選択度の指標となる同調回路のQは、インダクタ回路のQに依存する。インダクタを半導体基板上に形成した場合、インダクタンス成分に直列に発生するメタル抵抗成分により、インダクタ成分のQは小さくなる。半導体基板上に形成したインダクタを使用して同調回路を作成すると、同調回路のQは小さいものしか作成できない。同調回路の周波数選択度を高めるには、同調回路の段数を増やすか、または、負性抵抗回路を使用して、同調回路のQを増大させることが考えられる。
【0003】
同調回路の段数を増やすことは、複数の同調周波数を正確に一致させたまま連動する必要があり困難であるため、負性抵抗回路を用いて同調回路のQを増大させる回路を考える。
【0004】
負性抵抗を用いて同調回路のQを増大する回路構成の一つに、図8に示すように負性抵抗回路62を追加し、同調回路のQを調整する提案がされている(非特許文献1)。図8の回路において、入力信号Viを電圧―電流変換回路17に通し、Voより出力する。また63は電流源である。
【0005】
図8(a)を参照すると、負性抵抗回路62は差動のトランジスタM1、M2のドレインとゲートを互いに接続し、差動のトランジスタM1、M2のソースはそれぞれ互いに接続する。上記した構成で、トランジスタM1、M2のドレイン端から見て−2/gmの値をもつ負性抵抗成分を作る。
【0006】
非特許文献1では、負性抵抗回路62をインダクタ61に対し、周波数調整回路とともに、並列に接続している。このため、インダクタ61が元々持っていた抵抗成分を負性抵抗回路62でQの調整を行っている。
【0007】
【非特許文献1】”Q-Enhanced LC Bandpass Filters for Integrated Wireless Applications” W. B. Kuhn et.al IEEE Trans. MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, vol.46, No.12, Dec. 1998, pp2577
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8(a)に示す回路構成の等価回路を図8(b)に示す。インダクタ61が元々持つ抵抗成分をRMとすると、インダクタ61に含まれるメタル抵抗成分RMの直列回路に、トランジスタM1、M2で構成される負性抵抗回路62からなる負性抵抗値rが並列に接続される形になる。この場合、インダクタ61と負性抵抗回路62の並列インピーダンスをZ、同調周波数をωとすると、
【0009】
【数1】

から
【0010】
【数2】

のときに、
【0011】
【数3】

となり、
Zの実数成分がキャンセルされ、インダクタの値が示される。しかしながら、Zを虚数成分のみにするには、rの値を周波数依存性を持って調整する必要がある。そのため、例えば、テレビチューナのような広帯域通信の同調回路に使用する場合、同調周波数ωにあわせてrの値を調整する必要がある。このため、rの設定回路が新たに必要であり、広帯域通信の同調回路として不向きであるという問題があった。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、同調周波数を大きく変化させても、同調周波数に対しrの値を調整する回路が不要で、かつ常に帯域一定で利得一定の特性を持つ同調回路を実現するための、上記同調回路に用いる負荷回路を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、上記負荷回路を用いた同調回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる負荷回路は、同調回路に用いる負荷回路であって、インダクタと、上記インダクタに直列に接続され、上記インダクタの直列抵抗成分を打ち消し、インダクタのQを増大させるための負性抵抗回路とを備える。
【0015】
上記構成の上記負荷回路を用いて同調回路を構成すると、インダクタのもつQよりも、Qの高い同調回路が実現でき、かつ同調周波数を大きく変化させても、常に一定の帯域で利得一定の特性を持つ同調回路を構成できる。
【0016】
上記負性抵抗回路は負性抵抗素子を備え、上記負性抵抗素子は、互いに差動で動く第1、第2のトランジスタを有し、上記第1のトランジスタのベース端と上記第2のトランジスタのコレクタ端とを接続し、さらに上記第2のトランジスタのベース端と上記第1のトランジスタのコレクタ端とを接続してなるのが好ましい。
【0017】
上記構成の負性回路を用いて同調回路を構成すると、差動回路であることから基板雑音に強いという特徴が現れ、
【0018】
【数4】

で表す負性抵抗を簡単に発生させることが出来る。
【0019】
また、本発明にかかる負荷回路は、上記インダクタと上記負性抵抗回路の直列回路をアンプにて帰還を組み、上記アンプの出力端子に上記インダクタの一方の端子を接続し、上記インダクタの他方の端子を上記負性抵抗回路に接続することでインダクタのQを増大させ、かつ上記アンプの利得に応じて上記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となることを特徴とすることが好ましい。
【0020】
上記構成の上記負荷回路を用いて同調回路を構成すると、インダクタのメタル抵抗成分を打ち消すことが出来ることから、同調回路を組んだときの同調周波数におけるQを高く設定でき、かつ同調周波数を大きく変化させても、常に一定の帯域で利得一定の特性を持つ。
【0021】
また、上記負性抵抗回路は、上記第1のトランジスタのコレクタ端およびベース端に接続された第3のトランジスタと、上記第2のトランジスタのコレクタ端およびベース端に接続された第4のトランジスタと、上記第1、第2のトランジスタのコレクタ端およびベース端に接続された第1の電流源とを備え、上記第1、第2のトランジスタと上記第3、第4のトランジスタに異なる電流を流すようになっていることが好ましい。
【0022】
上記構成によると、第1、第2のトランジスタに流す電流と、第3、第4のトランジスタに流す電流の差から負性抵抗を作ることできるため、見かけ上Qの高いインダクタを作る場合に電流値を抑えることができる。
【0023】
本発明にかかる負荷回路の好ましい実施態様によれば、差動で入力するための2つの入力端子と差動で出力するための2つの出力端子を有するアンプを更に備える。上記インダクタは第1のインダクタと第2のインダクタとを備える。上記アンプの一方の出力端子に、上記第3のトランジスタの入力を接続し、上記アンプの他方の出力端子に上記第4のトランジスタの入力を接続する。上記第3のトランジスタのエミッタ端に第1の電流源と上記第1のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続し、上記第4のトランジスタのエミッタ端に上記第1の電流源と上記第2のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続する。上記第1のトランジスタのエミッタ端には上記第1のインダクタの一方の端子を接続し、上記第2のトランジスタのエミッタ端には上記第2のインダクタの一方の端子を接続する。上記第1のインダクタの他方の端子を上記アンプの一方の入力端子に接続し、上記第2のインダクタの他方の端子を上記アンプの他方の入力端子に接続する。この構成によって、上記インダクタのQを増大させ、かつ上記アンプの利得に応じて上記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となる。
【0024】
したがって、上記構成の上記負荷回路を用いて同調回路を構成すると、Qが高く、さらにインダクタ値が変化する同調回路が構成できるため、帯域一定で同調周波数が大きく変化できる同調回路を作成できる。
【0025】
本発明にかかる負荷回路の他の好ましい実施態様によれば、差動で入力するための2つの入力端子と差動で出力するための2つの出力端子を有するアンプを更に備える。また上記インダクタは第1のインダクタと第2のインダクタとを備える。上記アンプの一方の出力端子に、第5のトランジスタの入力を接続し、上記アンプの他方の出力端子に第6のトランジスタの入力を接続する。第5のトランジスタのドレイン端には、第2の電流源とフォールデッド構成を介して上記第1のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続し、第6のトランジスタのドレイン端には、第2の電流源とフォールデッド構成を介して上記第2のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続する。上記第1のトランジスタのエミッタ端には、上記第1のインダクタの一方の端子を接続し、上記第2のトランジスタのエミッタ端には、上記第2のインダクタの一方の端子を接続する。上記第1のインダクタの他方の端子を上記アンプの一方の入力端子に接続し、上記第2のインダクタの他方の端子を上記アンプの他方の入力端子に接続する。この構成により、上記インダクタのQを増大させ、かつ上記アンプの利得に応じて上記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となる。
【0026】
したがって、上記構成の上記負荷回路を用いて同調回路を構成すると、Qが高く、さらにインダクタ値が変化する同調回路が構成できるため、帯域一定で同調周波数が大きく変化できる同調回路を作成できる。
【0027】
本発明にかかる負荷回路の好ましい実施態様によれば、前記第1、第2のトランジスタのエミッタ端に第3の電流源を接続し、前記第1の電流源と異なる電流を流し負性抵抗を発生させることを特徴とする。
【0028】
また、本発明にかかる負荷回路の他の好ましい実施態様によれば、上記アンプの入力端子に第4の電流源を接続し、上記第1の電流源と異なる電流を流し負性抵抗を発生させることを特徴とする。
【0029】
上記いずれの構成の上記負荷回路によっても、負性抵抗回路の値を電流値の差で決めることができ、容易にインダクタのQを高めることができる。
【0030】
本発明にかかる負荷回路の他の好ましい実施態様によれば、入力端子と出力端子を有するアンプと、上記アンプの出力端子に、その一方端で接続された第1の抵抗素子とを有し、上記第1の抵抗素子の他方端に上記負性抵抗のコレクタ端およびベース端が接続され、上記負性抵抗のエミッタ端に上記インダクタの一方端が接続され、上記インダクタの他方端が上記アンプの入力端に接続されていることにより、上記インダクタのQを増大させ、かつ上記アンプの利得に応じて上記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となることを特徴とする。
【0031】
したがって、上記構成の上記負荷回路を用いて同調回路を構成すると、Qが高く、さらにインダクタ値が変化する同調回路が構成できるため、帯域一定で同調周波数が大きく変化できる同調回路を作成できる。
【0032】
また、本発明にかかる負荷回路の好ましい実施態様によれば、上記アンプの差動の入力端子間に容量素子を接続する。
【0033】
また、本発明にかかる負荷回路の好ましい実施態様によれば、上記アンプの差動の入力端子間に第2の抵抗素子を接続する。
【0034】
上記構成の上記負荷回路は、同調周波数に応じ帯域一定になるように、各同調周波数のQを設定する抵抗を前記入力端子間に接続するので、上記負荷回路を用いて同調回路を構成すると、大きく同調周波数を変化しても帯域一定の同調回路を構成できる。
【0035】
また、本発明にかかる負荷回路における上記第1〜4の電流源は、電流値を調整する機能を備えるのが好ましい。
【0036】
上記構成の上記負荷回路は電流値を調整できるので、上記負荷回路を用いて同調回路を構成すると、温度の変化、プロセスのばらつきなどによりインダクタのメタル抵抗成分がばらついた場合でも、電流値を調整することにより、同調回路のQを所望の値に設定できる同調回路を作成できる。
【0037】
また、本発明にかかる同調回路は上記負荷回路を備え、上記負荷回路の入力に、電圧−電流変換回路が接続されることを特徴とする。
【0038】
上記構成の同調回路は、上記電圧−電流変換回路により、同調信号の入力を電圧信号で受けることができる。
【0039】
また、上記同調回路において、上記インダクタは、上記アンプおよび上記負性抵抗回路と同一半導体基板上に形成されることが好ましい。上記構成の同調回路は、外付け部品を削減でき、部品の小型化に貢献できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、例えばテレビチューナのような端末装置の同調回路に関し、同調回路に負性抵抗回路を直列に付加することによって、同調周波数が高周波数であってもQを増大させ、かつ帯域一定で同調周波数を大きく変化できる。さらにIC化することにより小型化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
同調周波数が高周波数であってもQを増大させ、かつ帯域一定で同調周波数を大きく変化でき、さらにIC化することで小型化することができるように改良された同調回路を得るという目的を、インダクタ、トランジスタ、負性抵抗素子を直列に繋いで構成し、トランジスタと負性抵抗素子に異なる電流を流すことで負性抵抗を発生させ、インダクタの直列抵抗成分を打ち消すことによって実現した。以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0042】
図1は本発明の実施例1に係る同調回路の簡易的な概念図である。図1(a)を参照して、同調回路は可変負荷回路10と電圧―電流変換回路17とを備える。入力信号Viを電圧―電流変換回路17に通し、可変負荷回路10に電流信号を与える。可変負荷回路10は、インダクタ14と負性抵抗回路12を直列に接続し、電圧制御電圧源13にて帰還をかけた可変インダクタ回路11と、周波数を決定する容量素子(以下キャパシタとする)16と、Qを設定する抵抗素子15との並列接続で構成されている。
【0043】
図1(b)に示すように、インダクタ14は半導体基板上で構成される場合、インダクタを構成するメタルの長さに起因するメタル抵抗成分RMが大きいため、インダクタのQが小さい。このため、インダクタ14のQを増大させるために、インダクタ14に負性抵抗回路12(=r<0)を直列に接続すると、
【0044】
【数5】

となり、rが負の数であればRM+rにより、インダクタ14のメタル抵抗成分を小さく出来るため、Qを大きくすることができる。
【0045】
上記のインダクタ14と負性抵抗回路12の直列回路を電圧制御電圧源13にて帰還を組んだ可変インダクタ回路11のインピーダンスZaは、
【0046】
【数6】

であり、電圧制御電圧源13の利得値Aによって、インダクタ値が変わっても、RM+rの値を限りなく0に近い値にすると、周波数に対するメタル抵抗の寄与が表れにくい。
【0047】
RM+r〜0のとき、上記の可変インダクタ回路11とキャパシタ16(=C)、抵抗素子15(=R)を並列につないだインピーダンスの中心周波数ωoとQは
【0048】
【数7】

で表される。同調周波数は電圧制御電圧源13で決めることができる。また、同調周波数に対し帯域一定で、Q値が比較的高い可変負荷回路10を作ることが出来る。可変負荷回路10に電圧―電流変換回路17を接続することによって、高周波数であってもQを増大させ、かつ帯域一定で同調周波数を大きく変化する信号を出力Voより取り出すことが出来る。
【0049】
図2は、同調回路の一実現例である。図2を参照して、第1のトランジスタQ1のベースに、第2のトランジスタQ2のコレクタを接続し、さらに、第2のトランジスタQ2のベースに、第1のトランジスタQ1のコレクタを互いに接続することでクロスカップル回路で構成された負性抵抗素子18を構成する。第1、第2のトランジスタQ1、Q2のコレクタ端にそれぞれインダクタ14、14を接続し、インダクタ14に直列につくメタル抵抗を打ち消す。電圧制御電圧源13で帰還を構成し、可変インダクタ回路11を構成する。この可変インダクタ回路11のインピーダンスZLは、
【0050】
【数8】

である。ここでトランジスタQ1、Q2のトランスコンダクタンスはgmである。よって
【0051】
【数9】

であれば、インダクタに付随するメタル抵抗成分が除去できるため、Qが非常に高いインダクタが実現できる。上記可変インダクタ回路11に、キャパシタ16を並列に接続した可変負荷回路10は、電圧制御電圧源13の値Aにより同調周波数を調整でき、さらに抵抗素子15を並列に接続した可変負荷回路10は、同調周波数におけるQを調整できる。
【0052】
また電流源22、71を付加すれば、後述するように温度が変化したときにおいてもQが非常に高いインダクタが実現できる。
【0053】
図3は実施例1の変形例にかかる回路図である。図2に示す回路と同一部分には同一の参照番号を付してその説明を繰り返さない。
【0054】
実施例1において、上記インダクタ14と上記負性抵抗回路18は直列接続されていることが重要であり、上記負性抵抗素子18と上記インダクタ14の接続順序は問題とならない。すなわち図3に示したように、インダクタ14、14をそれぞれ第1、第2のトランジスタQ1、Q2のエミッタ端に接続し、電圧制御電圧源13で帰還を構成した場合も同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0055】
図4は、同調回路の別の一実現例である。図4を参照して、第3、第4のトランジスタQ3、Q4のエミッタ端に、第1、第2のトランジスタQ1、Q2のコレクタとベースを互いに接続して構成したクロスカップル回路で構成された負性抵抗素子18を接続し、負性抵抗回路12を実現する。トランジスタQ1、Q2のエミッタ端を、インダクタ14を介して、電圧制御電圧源13で帰還を構成し、可変インダクタ回路11を構成する。この可変インダクタ回路11のインピーダンスZLは、
【0056】
【数10】

である。ここでトランジスタQ1、Q2のトランスコンダクタンスをgm1、トランジスタQ3、Q4のトランスコンダクタンスをgm2とする。よって
【0057】
【数11】

であれば、インダクタに付随するメタル抵抗成分が除去できるため、Qが非常に高いインダクタが実現できる。上記可変インダクタ回路11に、キャパシタ16を並列に接続した可変負荷回路10は、電圧制御電圧源13の値Aにより同調周波数を調整でき、さらに抵抗素子15を並列に接続した可変負荷回路10は、同調周波数におけるQを調整できる。トランジスタQ1〜Q2、Q3〜Q4のトランスコンダクタンス値gm1、gm2は、電流値で値を決められるため、トランジスタQ1〜Q2、Q3〜Q4に流す電流値を変えることでQを調整できる。これはトランジスタQ1〜Q2に電流を流し込む電流源21を付加させることで実現でき、電流値を調整することでメタル抵抗RMの除去を行う。
【0058】
また、メタル抵抗RMは温度によってほとんど変化しないものとすると、トランジスタQ1〜Q2、Q3〜Q4のトランスコンダクタンス値の逆数の差1/gm1−1/gm2
【0059】
【数12】

となる。
【0060】
更に電流源22を付加すると、以下に述べるように、温度が変化してもQが非常に高い可変インダクタ回路11が実現できる。例えば、電流源21,22の回路構成の工夫により、トランジスタQ1〜Q2、Q3〜Q4に流れる電流I、Iが温度に比例するように電流源21、22を設定すると、
I1=αT、I2=βTと書け(α、βは定数)、上式にこれを代入すると、
【0061】
【数13】

となり、この式は温度に依存しない。すなわち負性抵抗の値は、温度変化の影響を受けず、温度が変化してもQが非常に高い可変インダクタ回路11が実現できる。
【0062】
上記可変インダクタ回路11を用いた可変負荷回路10の入力に、電圧―電流変換回路17を接続し、Voから信号を取り出す構成とすることで、同調回路を実現する。
【実施例3】
【0063】
図5は、同調回路の別の一実現例である。図4と同一部分には同一の参照番号を付してその説明を繰り返さない。図5を参照して、電流源23をインダクタ14と電圧制御電圧源13との間に接続する。本構成でも、トランジスタQ1〜Q2、Q3〜Q4に流れる電流値を決めることができ、Q値の高い同調回路を実現できる。
【実施例4】
【0064】
図6は、同調回路の別の一実現例である。図6を参照して、トランジスタP1、P2のドレインに、電流源41を介してフォールデッド構成を実現し、折り返された信号を差動のトランジスタQ1、Q2のベースとコレクタを互いに接続して構成したクロスカップル回路で構成された負性抵抗素子18のコレクタ端から入力することで負性抵抗回路12を実現する。トランジスタQ1、Q2のエミッタ端に電流源42と、インダクタ14の片方の端子を接続し、インダクタ14を介して、電圧制御電圧源13で帰還を構成し、可変インダクタ回路11を構成する。
【0065】
上記した構成においても、トランジスタP1、P2のトランスコンダクタンス値gm1とトランジスタQ1、Q2のトランスコンダクタンス値gm2は、電流値で値を決められるため、トランジスタP1〜P2、Q1〜Q2に流す電流値を変えることにより、トランスコンダクタンスgm1、gm2の値を変えるように電流値を調整することで、メタル抵抗RMの除去を行う。上記構成の可変インダクタ回路11にキャパシタ16を並列に接続した可変負荷回路10は同調周波数を調整でき、さらに抵抗素子15を並列に接続した可変負荷回路10は同調周波数におけるQを調整できる。
【0066】
上記可変負荷回路10の入力に、電圧―電流変換回路17を接続し、Voから信号を取り出す構成とすることで、同調回路を構成する。
【0067】
上記した構成でも、実施例3で述べたように、電流源42をインダクタ14と電圧制御電圧源13との間に接続しても良い。本構成でも、トランジスタP1〜P2、Q1〜Q2に流れる電流値を決めることができ、Q値の高い同調回路を実現できる。
【実施例5】
【0068】
図7は、同調回路の別の一実現例である。図7を参照して、電圧制御電圧源13の出力端子に抵抗素子51の一方端を接続し、その他方端を、差動のトランジスタQ1、Q2のベースとコレクタを互いに接続して構成したクロスカップル回路で構成された負性抵抗素子18のコレクタ端に接続することにより、負性抵抗回路12を実現する。トランジスタQ1、Q2のエミッタ端に電流源52と、インダクタ14の片方の端子を接続し、インダクタ14を介して、電圧制御電圧源13で帰還を構成し、可変インダクタ回路11を構成する。
【0069】
上記した構成においても、
【0070】
【数14】

といった式が成り立ち、抵抗素子51の抵抗値R51と、Q1〜Q2のトランスコンダクタンス値gm1の逆数の差でメタル抵抗RMの除去を行う。上記構成の可変インダクタ回路11にキャパシタ16を並列に接続した可変負荷回路10は同調周波数を調整でき、さらに抵抗素子15を並列に接続した可変負荷回路10は同調周波数におけるQを調整できる。
【0071】
可変負荷回路10の入力に、電圧―電流変換回路17を接続し、Voから信号を取り出す構成とすることで、同調回路を構成する。
【0072】
上記した構成においても、電流源71を負性抵抗素子のコレクタ端に接続してもよいし、実施例3で述べたように、電流源52をインダクタ14と電圧制御電圧源13との間に接続しても良い。本構成でも、トランジスタQ1、Q2に流れる電流値を決めることができ、Q値の高い同調回路を実現できる。
【0073】
〔その他の事項〕
本構成では、インダクタ、トランジスタ等、すべて同一基板上に構成することを念頭に説明したが、IC化するにあたり、温度のばらつき、プロセスばらつき等により、同調回路のQが当初設計とおりにいかない場合がある。所望のQを得るために、例えば電流源21、23、41、42、52、71を外部から電流値を設定できるようにすることで、所望のQが得られるように調整回路を構成した場合も含まれる。
【0074】
さらに、上記した構成ではすべてバイポーラトランジスタで構成することを念頭に説明したが、バイポーラトランジスタに限定されるものではなく、MOSトランジスタなどでも構成した場合も含まれる。また、NPNトランジスタの場合について説明したが、PNPトランジスタなどで構成した場合も含まれる。
【0075】
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、例えばテレビチューナのような端末装置の同調回路に関し、同調回路に負性抵抗回路を直列に付加することによって、同調周波数が高周波数であってもQを増大させ、かつ帯域一定で同調周波数を大きく変化でき、さらにIC化することにより小型化に貢献できる同調回路に好適に実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の同調回路の概念図とインダクタの等価回路図である。
【図2】実施例1にかかる同調回路図である。
【図3】実施例1の変形例にかかる同調回路図である。
【図4】実施例2にかかる同調回路図である。
【図5】実施例3にかかる同調回路図である。
【図6】実施例4にかかる同調回路図である。
【図7】実施例5にかかる同調回路図である。
【図8】従来の同調回路における概略図である。
【符号の説明】
【0078】
10 可変負荷回路
11 可変インダクタ回路
12 負性抵抗回路
13 電圧制御電圧源
14,61インダクタ
15,51抵抗素子
16 容量素子(キャパシタ)
17 電流変換回路
18 負性抵抗素子
21,23,41,42,52,63,71 電流源
62 負性抵抗回路
M1,M2 トランジスタ
P1,P2 トランジスタ
Q1〜Q4 トランジスタ
RM メタル抵抗成分
Vi 入力信号
Vo 出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同調回路に用いられる負荷回路であって、
インダクタと、
前記インダクタに直列に接続され、前記インダクタの直列抵抗成分を打ち消し、インダクタのQを増大させるための負性抵抗回路と、を備えた負荷回路。
【請求項2】
前記負性抵抗回路は負性抵抗素子を備え、
前記負性抵抗素子は、互いに差動で動く第1、第2のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタのベース端と前記第2のトランジスタのコレクタ端とを接続し、
さらに前記第2のトランジスタのベース端と前記第1のトランジスタのコレクタ端とを接続してなることを特徴とする請求項1に記載の負荷回路。
【請求項3】
前記インダクタと前記負性抵抗回路の直列回路を、アンプにて帰還を組み、
前記アンプの出力端子に、前記インダクタの一方の端子を接続し、
前記インダクタの他方の端子を前記負性抵抗回路に接続することでインダクタのQを増大させ、かつ前記アンプの利得に応じて前記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となることを特徴とする請求項1に記載の負荷回路。
【請求項4】
前記負性抵抗回路は、
前記第1のトランジスタのコレクタ端に接続された第3のトランジスタと、
前記第2のトランジスタのコレクタ端に接続された第4のトランジスタと、
前記第1、第2のトランジスタのコレクタ端に接続された第1の電流源とを備え、
それによって、前記第1、第2のトランジスタと前記第3、第4のトランジスタに異なる電流を流すようにした請求項2に記載の負荷回路。
【請求項5】
差動で入力するための2つの入力端子と差動で出力するための2つの出力端子を有するアンプを更に備え、
前記インダクタは第1のインダクタと第2のインダクタとを備え、
前記アンプの一方の出力端子に、前記第3のトランジスタの入力を接続し、
前記アンプの他方の出力端子に前記第4のトランジスタの入力を接続し、
前記第3のトランジスタのエミッタ端に第1の電流源と前記第1のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続し、
前記第4のトランジスタのエミッタ端に前記第1の電流源と前記第2のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続し、
前記第1のトランジスタのエミッタ端には前記第1のインダクタの一方の端子を接続し、
前記第2のトランジスタのエミッタ端には前記第2のインダクタの一方の端子を接続し、
前記第1のインダクタの他方の端子を前記アンプの一方の入力端子に接続し、
前記第2のインダクタの他方の端子を前記アンプの他方の入力端子に接続することによって、
前記インダクタのQを増大させ、かつ前記アンプの利得に応じて前記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となることを特徴とする請求項2に記載の負荷回路。
【請求項6】
差動で入力するための2つの入力端子と差動で出力するための2つの出力端子を有するアンプを更に備え、
前記インダクタは第1のインダクタと第2のインダクタとを備え、
前記アンプの一方の出力端子に、第5のトランジスタの入力を接続し、
前記アンプの他方の出力端子に第6のトランジスタの入力を接続し、
第5のトランジスタのドレイン端には、第2の電流源とフォールデッド構成を介して前記第1のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続し、
第6のトランジスタのドレイン端には、前記第2の電流源とフォールデッド構成を介して前記第2のトランジスタのコレクタ端およびベース端を接続し、
前記第1のトランジスタのエミッタ端には、前記第1のインダクタの一方の端子を接続し、
前記第2のトランジスタのエミッタ端には、前記第2のインダクタの一方の端子を接続し、
前記第1のインダクタの他方の端子を前記アンプの一方の入力端子に接続し、
前記第2のインダクタの他方の端子を前記アンプの他方の入力端子に接続することによって、
前記インダクタのQを増大させ、かつ前記アンプの利得に応じて前記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となることを特徴とする請求項2に記載の負荷回路。
【請求項7】
前記第1、第2のトランジスタのエミッタ端に第3の電流源を接続し、前記第1の電流源と異なる電流を流し負性抵抗を発生させることを特徴とする請求項5に記載の負荷回路。
【請求項8】
前記アンプの入力端子に第4の電流源を接続し、前記第1の電流源と異なる電流を流し負性抵抗を発生させることを特徴とする請求項5に記載の負荷回路。
【請求項9】
入力端子と出力端子を有するアンプと、
前記アンプの出力端子に、その一方端で接続された第1の抵抗素子とを有し、
前記第1の抵抗素子の他方端に前記負性抵抗のコレクタ端およびベース端が接続され、
前記負性抵抗のエミッタ端に前記インダクタの一方端が接続され、
前記インダクタの他方端が前記アンプの入力端に接続されることにより、
前記インダクタのQを増大させ、かつ前記アンプの利得に応じて前記アンプの入力端子から見た見かけ上のインダクタ値が可変となることを特徴とする請求項2に記載の負荷回路。
【請求項10】
前記アンプの差動の入力端子間に容量素子を接続することを特徴とする請求項3または請求項5〜9のいずれかに記載の負荷回路。
【請求項11】
前記アンプの差動の入力端子間に第2の抵抗素子を接続することを特徴とする請求項3または請求項5〜10のいずれかに記載の負荷回路。
【請求項12】
前記第1〜4の電流源は、電流値を調整する機能を備えることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の負荷回路。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の負荷回路を備え、
該負荷回路の入力に、電圧−電流変換回路が接続されることを特徴とする同調回路。
【請求項14】
前記インダクタは、前記アンプおよび前記負性抵抗回路と同一半導体基板上に形成されることを特徴とする請求項13に記載の同調回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−274180(P2007−274180A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95485(P2006−95485)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】