説明

貫流ポンプエアレ−ション装置

【課題】 曝気槽や養殖槽および培養槽において水流と共に多量の微細気泡を槽内全体に効率良く一様に供給するエアレ−ション装置を必要とする。
【解決手段】
本発明の微細気泡発生機構を有する円筒状多翼羽根車形状の貫流ポンプ(クロスフロ−ポンプ)で構成される貫流ポンプエアレ−ション装置を曝気槽や養殖槽および培養槽内に設置し、ポンプケ−シングを回転伝達機構により、回転軸を中心にしてスイングさせることにより、微小気泡を伴う水流を槽内全体に供給し、効果的なエアレ−ションを行う。微小気泡の発生は羽根車の中空回転軸に穿孔した散気孔および追加で貼り付けた多孔質材から回転とともに得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水処理場における水質浄化、魚介類全般の養殖用の水槽内流れの改善および水耕栽培や藻類栽培などにおけるエアレ−ション技術に関する。
【背景技術】
【0002】
曝気、養殖および植物栽培における従来の技術は以下のようである。
曝気に関する従来技術では、下水処理などで必要な工程の一つであるエアレ−ションによる処理方法として、散気式、気泡噴射式、水中攪拌式などがあるが(例えば特許文献1に開示されたもの)、いずれも気泡径は微小とは言いがたく、浮上速度が速いため短時間に大気に放出される傾向にある。また、エアレ−ションの槽内での一様性や撹拌方法に問題がある。
【0003】
曝気に使用されるポンプ型エアレーション装置としては、特許文献2に開示されているように、プロペラタイプの旋回翼の吐出し側の流れに微細気泡を混入させる方法もあるが、曝気槽は、ポンプ回りの流れ方向の特性を考慮して、基本的に四角槽や円形槽に限定され、種々の形状の水槽に対応できないこと、および均一な微細気泡が得られにくいなどの問題がる。
【0004】
養殖に関する従来技術の微小気泡発生装置と水流供給装置は以下のようものがある。
微小気泡発生装置として、例えば特許文献3、特許文献4および特許文献5に開示されているようにセラミックス材料などを利用した多孔質のエア分散発生器を水槽底面に設置した例もあるが、実際には気泡径は微小とは言いがたく、浮上速度が早く、短時間に大気に放出され、効率が悪い。
【0005】
また、水流供給装置としては、例えば特許文献6に開示されているように送水ポンプに接続された複数のノズル孔を設けたパイプを水面下に設置し、ノズルからの噴流によって流れを供給するものもあるが、噴流後の拡散、乱れのため、水流が遠くまで達せず、安定した自然な流れが得られない。
【0006】
植物栽培に関する従来技術の気泡発生装置としては、培養槽内にブロワにより圧力をかけてノズルより噴射するもの(特許文献7)やセラミックスなどを利用したエア分散発生器を使用したもの、空洞にした水中翼の内部に二酸化炭素ガスを供給し、翼後端より二酸化炭素ガスを微細化して噴出する方法(特許文献8)などがあるが、均一な微細気泡は得られ難く、乱れも大きいため、一様な気泡を伴う水流が遠くまで達しないという問題がる。また、撹拌機による流動(特許文献9)では槽内全体に一様に供給するのが難しい。
【0007】
上記のように、従来技術では気泡径の微小化の問題や微小気泡を含む流れを槽内全体に一様に供給するのが困難などの問題があり、エアレ−ションの効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−48898号広報
【特許文献2】特開2005−59002号広報
【特許文献3】特開平7−31327号広報
【特許文献4】特開平5−168981号公報
【特許文献5】特開2003−125671号広報
【特許文献6】特開平6‐181657号広報
【特許文献7】特公開平8−322553号広報
【特許文献8】特公開平6−78745号広報
【特許文献9】特公開平5−284962号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術では気泡の微細化が不十分であり、浮上速度が早く効率が悪い。さらに微細化した気泡を槽内全体に一様に供給するエアレ−ション技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は曝気槽や養殖槽および培養槽などの槽内全体に微細気泡を一様な流れとともに供給することにある。図1の(a)は貫流ポンプ(クロスフロ−ポンプ)の基本的構造を示す本体50の断面図、(b)は(a)のY−Y矢視断面図で貫流ポンプエアレ−ション装置55を示す。貫流ポンプ本体50は基本的には円筒状の多翼羽根車7を収容したケ−シング15と流れを制御する舌部8および散気孔5を有する中空回転軸3からなる。基本的な貫流ポンプエアレーション装置55は貫流ポンプ本体50にエアなどを供給するためにホ−ス13により接続されたエアポンプ11と液体ポンプ11bおよび散気孔を有する該中空回転軸3に接続した駆動用モ−タ12からなる。
【0011】
流れは図1(a)の羽根車断面図に示すように吸込み側9から吐出し側10に向って2回羽根6を通過する。即ち流れは吸込み側9では、羽根車7の外側から内側へ、吐出し側10では内側から外側へ流出して羽根車7を横断する。羽根車7は幅方向に長くとれること、また、流れが羽根車に接線方向に吐出されることから、吐出し流れは従来技術と異なり、幅広のシ−ト状で乱れも少なく、拡散せずに遠くまで達することができるので、水槽内全体に微小気泡の流れが行き渡る。また、吸込み側における羽根6の入口と出口が吐出し側では逆になるため、物が羽根間に詰まりにくい構造であることは運転上、優れた強みである。
【0012】
微細気泡を発生させる構造は、図1の(a)、(b)に示すように羽根車7内の中空回転軸3の外周面に多数の散気孔5を窄孔、あるいは追加の多孔質材を貼り付け、中空回転軸3を通して羽根車外部のホ−ス13に接続したエアポンプ11および液体ポンプ11bにより、気体や液体を供給できるようにしている。外部から羽根車内に供給された気体が該中空回転軸3の散気孔5からSで示されるように気泡となって放出されることになるが、気泡は回転を伴って散気孔5から放出されるため、回転を伴う効果により気泡は微小径となって放出され、さらに回転する羽根6の間を通過することにより細分化され、一様な微小気泡となって吐出し水流とともに槽内に吐出される。気泡径は回転数が大きいほど微細化される。このように回転する羽根車7内の中空シャフト3の散気孔5からの微細気泡供給方法は、水中への溶存性を効率よく高める働きを有することから、優れた微細気泡供給装置である。
【0013】
本発明では、ポンプケ−シング自体が遊星歯車などの回転伝達機構による回転軸を中心にした首振り機構により、所定の角度スイングさせて吐出し方向を変えるので、撹拌機なしで微小気泡を含む流れを広範囲に供給できる。従って、槽内全体にエアレ−ションが行き渡り、効率が良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の貫流ポンプエアレ−ション装置によれば従来の技術では得られなかった空気やオゾンおよび炭酸ガスなどの微細気泡を含む幅広で良好な一様流れを各用途の使用状況に応じて槽内に供給できる。曝気槽ではエアレ−ション技術による水質改善において、養殖槽では魚類の飼育と水環境の改善に、培養槽では、エアレ−ション技術に加えて、微粒化した培養液も同時に供給できるようにすることによって水耕栽培や藻類栽培の技術改善に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の貫流ポンプエアレ−ション装置の基本的構造を示す。(a)は貫流ポンプ本体の構造を示す断面図、(b)は(a)のY−Y矢視の貫流ポンプエアレ−ション装置の断面図である。
【図2】図2は矩形型曝気槽の中に吐出し方向を周期的に変えるポンプケ−シング首振り機構を有する貫流ポンプエアレ−ション装置を据付けた状態を示す。(a)は平面図、(b)は槽内の流れの状態を示す側断面図である。(実施例1)
【図3】図3は曝気槽の処理能力増強のために、曝気槽内にポンプケ−シング首振り機構を有する貫流ポンプエアレ−ション装置を2台設置した例を示す。(a)は平面図、(b)は曝気槽内の流れの状態を示す側断面図である。(実施例2)
【図4】図4は矩形型水耕栽培用の培養槽の水面下にポンプケ−シング首振り機構を有する貫流ポンプエアレ−ション装置を2台設置した場合の据え付け状態を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例3)
【図5】図5は魚水槽内にポンプケ−シング首振り機構を有する貫流ポンプエアレ−ション装置を据付けたときの流れの状態を示す。(a)は平面図、(b)はY−Y矢視断面図である。(実施例4)
【図6】図6はポンプケ−シング首振り機構を有する縦型の貫流のポンプエアレ−ション装置を魚水槽内に据付けたときの流れの状態を示す。(a)は正面図、(b)は(a)のY−Y矢視の断面図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を利用分野ごとに図2〜図6を参照して説明する。図2、図3は曝気関連、図4は培養槽関連、図5、図6は養殖関連を示す。
【実施例1】
【0017】
図2は本発明の第1実施例で、矩形型の曝気槽20内に貫流ポンプエアレ−ション装置55bを設置した場合の形態を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。矩形型の曝気槽20内に水中モ−タ12b駆動による貫流ポンプエアレ−ション装置55bを曝気槽の底面に設置し、ポンプケ−シング全体を遊星歯車などの回転伝達機構により回転軸を中心にして、所定の角度スイング出来るようにして、吐出し方向を周期的に変えることによりタンク内全体に渡って微細な気泡を水流とともに供給できるようにした装置である。吐出し流れの周期的方向変化の角度θはポンプケ−シングの回転軸を中心にしての首振り機構によって得られる。エアはポンプ羽根車内部において前述の図1に示したようにエアポンプ11からホ−ス13により中空の回転軸3内に供給され、羽根車内部において中空回転軸外周部に穿孔された散気孔5から回転を伴いながら微細気泡となって供給される。
【0018】
この実施の形態によれば、貫流ポンプエアレ−ション装置55bによって供給される流れは、従来技術とは異なり、ポンプケ−シングをスイングさせて吐出し方向を周期的に変えるので、広範囲に渡って一様で微小気泡を含む幅広の水流を処理タンク内全体に渡って供給できることからエアレ−ションの効率が良い。従って処理時間を短縮できる。
【実施例2】
【0019】
図3は本発明の第2実施例で、矩形型の曝気槽20内に図2の実施例1と同様の貫流ポンプエアレ−ション装置55bを2台設置した場合の形態を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。曝気槽内に2台設置することによって、タンク内全体に淀みなく微小気泡を含む流れを供給できるため、エアレ−ションの機能アップを図ることができる。ポンプ台数は処理タンクの大きさによって調整する。ポンプケーシングのスイングによる吐出し方向変化などのエアレ−ションの機能構成は図2の第1実施例の形態と同様である。
【実施例3】
【0020】
図4は本発明の第3実施例で、培養槽21の底面に貫流ポンプエアレ−ション装置55bを2台設置した場合の形態を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。本装置は培養槽21の水面に植物30を育成する水耕栽培用フロ−ト35を浮かせ、水面下の底面に貫流ポンプエアレ−ション装置55bを2台設置した構成になっている。エアは前述の図1に示したようにエアポンプ11からホ−ス13により中空の回転軸3内に供給され、羽根車内部において中空回転軸に穿孔された散気孔5から回転を伴いながら微小気泡となって供給される。培養液は液体ポンプ11bによって同じ散気孔5から供給され、植物栽培に適した環境にすることができる。
【0021】
この実施の形態によれば、貫流ポンプエアレ−ション装置55bのケ−シングの首振り機構によるスイングによって、ポンプの吐出し流れとともに微細気泡や液状微粒化された培養液を培養槽21の水面に浮かべた水耕栽培用フロ−ト35全体に渡って効率よく供給することができる。吐出し流れの周期的方向変化の角度θは前述のようにポンプケ−シングの回転軸を中心にしての首振り機構によって得られる。従来のように撹拌機がなくても槽内全体に安定して供給できる。
【0022】
別形態の使用例として、海洋バイオマスとして注目される藻類の増殖培養に本発明の貫流ポンプエアレ−ション装置を利用すれば効果的である。図4において、水耕栽培用フロ−ト35を外すか、替わりに藻類育成用の網状のものを取付け、他は略同様の構成とした藻類培養槽において、二酸化炭素含有ガスをエアポンプ11から前述の図1に示す中空回転軸3を通して散気孔5から放出させることによって、ポンプ吐出口から槽内に二酸化炭素含有ガスの微細気泡を供給する。その二酸化炭素含有ガスの微細気泡を含む流れは前記水耕栽培の時と同様に槽内全体に行き渡り、藻類増殖に適した環境を作る。
【実施例4】
【0023】
図5は本発明の第4実施例で、魚水槽22に貫流ポンプエアレ−ション装置55bを設置した場合の形態を示す。(a)は平面図、(b)はY−Y矢視断面図である。貫流ポンプエアレ−ション装置55bを矩形の魚水槽22の一方の壁面側の水面下に設置し、槽内全体に渡って微細な気泡伴う幅広の水流を供給できるようにした装置である。吐出し流れの周期的方向変化の角度θは前述のようにポンプケ−シングの回転軸を中心にしての首振り機構によるスイングによって得られる。エアは前述の図1に示したようにエアポンプ11からホ−ス13により中空回転軸3内に供給され、中空回転軸に穿孔された散気孔5から回転を伴いながら羽根車内部に微細気泡となって供給される。
【0024】
この実施の形態によれば貫流ポンプエアレ−ション装置55bによって供給される吐出し流れの方向はポンプケーシングの首振り機構によるスイングによって周期的に首振り角度θの範囲で大きく変えることが出来るので効率良く水槽内全体に微細な気泡伴う幅広の水流を供給できる。魚の育成状況に応じて、スイングを切り替えできるようにした方が良い。
【実施例5】
【0025】
図6は本発明の第5実施例で、魚水槽22に縦型のポンプエアレ−ション装置55cを設置した場合の形態を示す。(a)は正面図、(b)はY−Y矢視断面図である。本実施例では貫流ポンプ本体の据付けが図5の第4実施例とは異なり、図6に示すように縦置きになっているのが特徴である。縦置きでは駆動用のモ−タ−12が水面より上に設置できることから、据付およびメンテナンスが容易である。ポンプケ−シングのスイングによる吐出し方向変化などのエアレ−ションの機能構成は図5の第4実施例の形態と同様である。
【0026】
以上、全体をまとめると、本発明のポンプエアレ−ション装置は曝気、養殖、培養槽関連など広い分野のエアレ−ション技術として貢献できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のエアレ−ション技術は、遊星歯車などの回転伝達機構による回転軸を中心にした首振り機構により、ポンプ吐出しケ−シングをスイングさせて、微細化した大量の気泡を含む吐出し流れを広範囲に渡って供給出来るようにしたことから、曝気、養殖、植物栽培などに関連したエアレ−ション供給装置として、従来技術より効率良い利用が可能である。
【符号の説明】
【0028】
3 散気孔を有する羽根車中空回転軸
5 散気孔
6 羽根
7 貫流ポンプ羽根車
8 ケ−シング舌部
9 ポンプ吸込側
10 ポンプ吐出側
11 エアポンプ
11b 液体ポンプ
12 駆動用モ−タ
12b 駆動用水中モ−タ
13 ホ−ス
15 ポンプケ−シング
17 水面
20 曝気槽
21 培養槽
22 魚水槽
30 植物
35 水耕栽培用フロ−ト
50 貫流ポンプ本体
55、55b、55c 貫流ポンプエアレ−ション装置
B 微小気泡
S 散気孔5から微細気泡や液状微粒子となって噴出する流れ
θ ポンプケ−シングの首振り角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車形状が円筒状で多翼の貫流ポンプ(クロスフロ−ポンプ)羽根車の回転軸を散気孔を有する中空にし、羽根車外部より該中空回転軸へ接続したホ−スを通して空気、オゾン、二酸化炭素および培養液等を羽根車内中心部に供給できるようにした構造の貫流ポンプを曝気槽や養殖槽および培養槽などの水面下に設置し、吐出し方向を遊星歯車などの回転伝達機構により、回転軸を中心にポンプケ−シングを周期的にスイングさせて吐出し方向を変えるようにして、槽内全体に微小気泡によるエアレ−ションが出来るようにしたことを特徴とする貫流ポンプエアレ−ション装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−125690(P2012−125690A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278939(P2010−278939)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(709003735)
【Fターム(参考)】