説明

貴金属を含有する廃棄物の処理方法及び該方法を実施するための装置

【課題】廃棄物中に含まれる貴金属を高比率で回収できる廃棄物処理法や設備を提供する。
【解決手段】鉛被覆コンテナ(15)、該鉛被覆コンテナ(15)の入力に接続された溶融鉛系組成物供給ライン(24)、前記鉛被覆コンテナ(15)の入力に接続された前処理物質供給ライン(14)、前記鉛被覆コンテナ(15)と連携する上澄み取得手段(16)、前記鉛被覆コンテナ(15)の出力に接続された上澄み混合物取り出しライン(21)、該上澄み混合物取り出しライン(21)に接続された上澄み混合物精製手段(36)、及び該上澄み混合物精製手段(36)の出力に接続された貴金属取り出しライン(38)を備える廃棄物処理設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属を含有する廃棄物の処理方法及び該方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機、携帯電話、電子機器及び他のライフの短いハイテク装置の使用の増加は、希少金属及び貴金属を含む廃棄物の量を増加させている。この状況では廃棄物に含まれる金属を処理し回収する問題が生じる。このような廃棄物は、非鉄系の希少で価値のある金属源である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子的な廃棄物は、現在のところ、集められ、運び出され、非鉄金属用の大規模工業設備で処理され、ここでは幾つかのプラントを連続して使用することが要求され、鉛、銅及び亜鉛が抽出され、これらの高価値物質は、採鉱又は二次的なソースの原料の流れの中で希釈される。従って現在法は、大量の鉛、銅及び純粋な亜鉛を生産するためには最適であるが、少量しか存在しない希少金属又は貴金属を生産することに適用するのは困難である。
【0004】
従って、廃棄物中に含まれる貴金属を高比率で回収できる廃棄物処理法が設計できれば望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の目的は、
―貴金属を含む廃棄物を、溶融した鉛系の組成物と接触させる工程、
―得られた混合物の上澄みを取る工程、及び
―当該上澄み混合物を電解により精製して前記貴金属を回収する工程、
の連続ステップを含んで成る廃棄物の処理方法。
【0006】
本発明の特定の態様では、上澄み取得工程において、
―廃棄物を第2の溶融した鉛系の組成物と接触させ、
―得られた混合物の上澄みを取り、及び
―上澄み混合物を回収し、前記溶融した鉛系の組成物の少なくとも一部を供給して処理することにより、残渣を回収する。
【0007】
特定の態様では、前記上澄み混合物精製工程が、
―前記上澄み混合物をアノード中に成型し、
―該アノードを使用してフルオロケイ酸溶液を電解し、
―貴金属を含むアノード性スラッジを回収する、
サブ工程を備える。
【0008】
特定の態様では、前記方法は、アノード性スラッジを回収する工程の前後に又は同時に、
―鉛及び必要に応じてスズのカソード析出物を回収して、溶融鉛系組成物の少なくとも一部及び/又は第2の溶融鉛系組成物を与える。
【0009】
特定の態様では、アノード性スラッジ回収のサブステップ後に、上澄み混合物精製ステップが、次のサブステップ、
―酸素の存在下で、回収したアノード性スラッジを溶融する、
―溶融アノード性スラッジの上澄みを取り、かつ
―溶融しかつ上澄みを取ったアノード性スラッジをインゴットに成型する、
を備える。
【0010】
特定の態様では、各溶融鉛系組成物が、0から50%のスズを含む。
【0011】
特定の態様では、廃棄物を溶融鉛系組成物と接触させるステップの前に、
―選択的溶解により、廃棄物から銅を抽出するステップを備える。
【0012】
特定の態様では、銅抽出ステップが、
―硫酸、硫酸鉄及び酸素の存在下で、廃棄物を選択的に溶解し、
―得られた溶液を、濾過及び/又は電解及び/又は沈殿により処理し、
―一方で銅を、他方で他の金属の不純物を回収する、
サブステップを備える。
【0013】
特定の態様では、銅抽出ステップの前に、前記方法が、
―熱分解により廃棄物を燃焼させ、炭素質ガスを生成させ、かつ必要に応じて、
―前記炭素質ガスのポスト燃焼を行う、
ステップを備える。
【0014】
特定の態様では、前記方法は更に、廃棄物の粉砕及び/又は粉砕した廃棄物の分析を行う予備ステップを備える。
【0015】
特定の態様では、貴金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、及びこれらの混合物から選択される金属を含んで成る。
【0016】
特定の態様では、廃棄物が、触媒排気マフラ及び電子カードのような電子的廃棄物から選択される。
【0017】
特定の態様では、廃棄物に含まれる貴金属の90質量%以上、好ましくは99質量%以上が回収される。
【0018】
特定の態様では、上澄み物質が、セラミックス、ガラス繊維及び/又はフェライトを含む。
【0019】
本発明の他の目的は、貴金属を含む廃棄物処理設備であって、
―少なくとも1個の鉛被覆コンテナ(15)、
―該鉛被覆コンテナ(15)の入力に接続された溶融鉛系組成物供給ライン(24)、
―前記鉛被覆コンテナ(15)の入力に接続された前処理物質供給ライン(14)、
―前記鉛被覆コンテナ(15)と連携する上澄み取得手段(16)、
―前記鉛被覆コンテナ(15)の出力に接続された上澄み混合物取り出しライン(21)、
―該上澄み混合物取り出しライン(21)に接続された上澄み混合物精製手段(36)、及び
―該上澄み混合物精製手段(36)の出力に接続された貴金属取り出しライン(38)を備える廃棄物処理設備を提供することである。
【0020】
特定の態様では、更に
―上澄み取得手段(16)の出力に接続された上澄み残渣取り出しライン(17)、
―一方では前記上澄み残渣取り出しライン(17)に接続され、他方では追加の溶融鉛系組成物供給ライン(31)に接続された少なくとも1個の追加の鉛被覆コンテナ(18)、
―該追加の鉛被覆コンテナ(18)と連携する追加の上澄み取得手段(19)、及び
―前記追加の鉛被覆コンテナ(18)の出力に接続され、かつ溶融鉛系組成物供給ライン(24)に接続された上澄み混合物取り出しライン(22)を備える。
【0021】
特定の態様では、電解による上澄み混合物精製手段(36)が、
―アノード成型手段(25)、
―ベッツ電解手段(27)、及び
―アノード性スラッジ回収手段(28)を備える。
【0022】
特定の態様では、電解による上澄み混合物精製手段(36)が、
―追加の溶融鉛系組成物供給ライン(31)に接続された鉛−スズ回収手段(29)を備える。
【0023】
特定の態様では、更に、
―その一方の出力が前処理物質供給ライン(14)の接続された銅抽出手段(37)、及び
―該銅抽出手段(37)の入力に接続された主要物質供給ライン(6)を備える。
【0024】
特定の態様では、銅抽出手段(37)が、
―主要物質供給ライン(6)に接続された少なくとも1個の選択溶解コンテナ(7)、
―電解手段(9)、
―前記選択溶解コンテナ(7)を、前記電解手段(9)に接続する富化電解液移送手段(8)、
―カソード剥ぎ取り手段(13)、及び
―電解手段(9)の出力に接続された消耗電解液循環ライン(10)を備える。
【0025】
特定の態様では、更に、
―前記主要物質供給ライン(6)に接続された廃棄物熱分解手段(2)、
―該熱分解手段(2)に接続された廃棄物供給ライン(1)、及び
―更に必要に応じて、該熱分解手段(2)の出力に設けられ、ポスト燃焼手段(5)に接続されたガス排出ライン(4)を備える。
【0026】
特定の態様では、更に、
―原料廃棄物供給ライン(1bis)に接続され、更に前記廃棄物供給ライン(1)に接続された粉砕及び分析手段(1ter)を備える。
【0027】
特定の態様では、前述の方法が前述の設備の適用できる。
【0028】
特定の態様では、前述の設備が、前述の方法を実施するために使用することを意図している。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、従来技術の欠点を解決することを可能にしている。 より詳細には、貴金属を含む廃棄物を処理し回収する特定の方法を提供し、該方法は、冶金的な手法を協調的に結合し、主要な金属の生産フロー中に含まれる金属の希釈を回避する。本発明は、更に廃棄物から成分を分離、特に貴金属を回収する単一の設備を提供する。
【0030】
特定の態様では、本発明は下記に列挙する特徴を有する。
―本発明方法は非常に対応性があり、電子カードの組成物中の予測できる変化に対応できる。
―本発明方法は、鉛酸化により貴金属を抽出する慣習的な技術、いわゆる灰吹法操作とそれに続く酸化鉛還元を使用するという欠点を有さない。
―本発明では、金属を可能な限り金属形態に維持でき、本方法を通して貴金属を金属形態に保持する。鉛及びスズをステップ(d)まで金属形態に保持する。これにより、金属酸化物により貴金属が運び去られることを最小にできる。
―本発明では、貴金属を単一の出力に集められる。
―本発明は、制御された環境への影響を考慮して適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による廃棄物処理用の設備を例示する概略図である。
【図2】本発明による廃棄物処理用の設備の枠組みで使用される粉砕及び分析手段を例示する該略図。点線の矢印はガス流を示す。二重線の矢印は固体の流れを示す。
【図3】本発明による廃棄物処理用の設備の枠組みで使用される熱分解及びポスト燃焼手段を例示する該略図。点線の矢印はガス流を示す。単純な黒線の矢印は液体流を示す。二重線の矢印は固体の流れを示す。
【図4】本発明による廃棄物処理用の設備の枠組みで使用される銅抽出手段を例示する該略図。点線の矢印はガス流を示す。単純な黒線の矢印は液体流を示す。二重線の矢印は固体の流れを示す。
【図5】本発明の枠組みで使用される鉛被覆コンテナの特別な例を示す図。
【図6】本発明による廃棄物処理用の設備の枠組みで使用される精製手段を例示する該略図。点線の矢印はガス流を示す。単純な黒線の矢印は液体流を示す。二重線の矢印は固体の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明を詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0033】
[廃棄物処理設備]
図1は、本発明による廃棄物処理設備を概略的に示し、該設備は次の要素を備えている。
【0034】
処理設備の入口には廃棄物供給ライン1が存在する。この廃棄物供給ライン1には、原料廃棄物供給ライン1bisから供給される粉砕及び分析手段1terの出口に接続されていても良い。
【0035】
本明細書で述べる他の供給、移送及び取水ラインと同じように、廃棄物供給ライン1は、単一経路の又は複数の並列の経路(分枝路)を有していても良い。
【0036】
本発明の一変形例では、廃棄物供給ライン1は、熱分解手段2に接続される。該熱分解手段2の出力には、主要物質供給手段6が接続され、該手段6には、銅抽出手段37が接続されている。該銅抽出手段37の出力には、前処理物質供給ライン14が接続され、該ライン14には、鉛被覆コンテナ15が接続されている。この態様は、特に使用済電子カードの処理に適している。
【0037】
他の変形例では、熱分解手段2がなく、廃棄物供給ライン1が直接銅抽出手段37に接続されている(この場合、廃棄物供給ライン1が主要物質供給手段6と一致していると考えられる)。
【0038】
他の変形例では、銅抽出手段37がなく、主要物質供給手段6が直接鉛被覆コンテナ15が接続されている(この場合、主要物質供給手段6が前処理物質供給ライン14と一致していると考えられる)。
【0039】
更に他の変形例では、熱分解手段2と銅抽出手段37の両者がなく、廃棄物供給ライン1が直接鉛被覆コンテナ15に接続されている(この場合、廃棄物供給ライン1と前処理物質供給ライン14が一致していると考えられる)。この変形例は特に使用済の排気マフラの処理に適し、これは該マフラが実質的に銅を含まないからである。
【0040】
熱分解手段が存在する場合、その出力は、ガス排出ライン4に接続され、該ライン4はポスト燃焼手段5に接続されている。
【0041】
銅抽出手段37が存在する場合、該手段37は、その一方の入力が、主要物質供給手段6に、他の入力が消耗電解液供給ライン11に接続された選択溶解コンテナ7を含んでいても良い。次いで選択分解コンテナ7の出力には、前処理物質供給ライン14が接続され、富化電解液移送ライン8は電解手段9に接続されている。カソード剥ぎ取り手段13が前記電解手段9に関連して設置され、消耗電解液循環ライン10が、電解手段9の出力に接続されている。この消耗電解液循環ライン10は、消耗電解液供給ライン11及び/又は消耗電解液処理ライン12に接続されている。
【0042】
前処理物質供給ライン14に接続された鉛被覆コンテナ15は、溶融鉛系組成物供給ライン24にも接続されている。上澄み取得手段16は鉛被覆コンテナ15と連携している。鉛被覆コンテナ15の出力には、上澄み混合物取り出しライン21が接続され、該ライン21には、上澄み混合物精製手段36が接続されている。貴金属取り出しライン38が、上澄み混合物精製手段36の出力に設置されている。
【0043】
上澄み残渣取り出しライン17が上澄み取得手段16の出力に設置され、該ライン17は、追加の鉛被覆コンテナ18に接続されている。この追加の鉛被覆コンテナ18は、次いで追加の溶融鉛系組成物供給ライン31に接続されている。追加の上澄み取得手段19が前記追加の鉛被覆コンテナ18に連携して設置され、追加の上澄み混合物取り出しライン22が前記追加の鉛被覆コンテナ18の出力に接続されている。この追加の上澄み混合物取り出しライン22は、上澄み混合物取り出しライン21と同じように、上澄み混合物精製手段36に接続されている。しかし好ましい変形例では、追加の上澄み混合物取り出しライン22は、溶融鉛系組成物供給ライン24に接続される。溶融鉛系組成物23の補充源を設置して、その供給を完全なものとしても良い。追加の上澄み混合物取り出しライン20を追加の上澄み取得手段19の出力を設置しても良い。
【0044】
より具体的には、上澄み混合物精製手段36は、アノード成型手段25、アノード移送システム26、ベッツ(Betts)電解手段27を含む。ベッツ電解手段27には、鉛―スズ回収手段29及びアノード性スラッジ回収手段28が設けられている。鉛―スズ回収手段29は(オプションとしてフレッシュな鉛供給ライン30とともに)、追加の溶融鉛系組成物供給ライン31に接続されている。
【0045】
アノード性スラッジ回収手段28は、溶融手段33に接続され、該手段33には、酸素供給部32が設けられている。最後の上澄み取得手段34は溶融手段33と連携している。貴金属取り出しライン38は、溶融手段33の出力に接続され、該手段33は残渣ライン35を含む。
【0046】
次いで図2を参照しながら、入って来る廃棄物を受け取り、粉砕しかつ分析する廃棄物処理設備の第1段階(図1の参照番号1bis、1ter)を詳細に説明する。
【0047】
この例では、設備は、廃棄物受け入れ手段101を備え、該手段101は、例えばトラックを受け入れるのに適した荷下ろし用ホールを備える。この廃棄物受け入れ手段101には、貯蔵手段103に加えて、計量手段102が設置されている。貯蔵手段103の出力には、主コンベア105(ベルト等)上に廃棄物を放出するための投与手段104が設けられている。主コンベア105は第1の二次コンベア106、第2の二次コンベア107及び第3の二次コンベア108に接続されている。
【0048】
第1の二次コンベア106は粗挽ミル109に接続されている。細挽ミル111は、一方では第2の二次コンベア107に接続され、他方では粗挽ミル109の出力から始まる移送ライン110に接続されている。ミル109,111はそれぞれ5〜10t/時の容量を有していても良い。コレクタコンベア112は、細挽ミル111の出力に設置され、第3の二次コンベア108に接続されている。第3の二次コンベア108の経路には、サンプル手段(例えば柄杓)113が設置され、それには分析手段114が接続されている。
【0049】
更に第3の二次コンベア108は、第1の三次コンベア115及び第2の三次コンベア117に接続されている。第1の三次コンベア115は、廃棄物を貯蔵する貯蔵庫116に接続されている。第2の三次コンベア117はコンテナ118に接続され、更にリターンコンベア119がその出力で貯蔵手段103に接続されている。空気汚染除去システム120が粗挽ミル109と細挽ミル111に設置され、スリーブフィルタ121に接続され、該フィルタの典型的な容量は5000Nm3/時である。スリーブフィルタ121は煙突123と微細物回収ライン122に接続され、該ライン122は廃棄物を貯蔵する貯蔵庫116に接続されている。
【0050】
当業者は、これまで述べた手段を設備の要求に沿うように、例えばミルの数やタイプを変化させたり、使用する異なったミルの容量を変化させるなどして、適用することができることは明らかである。
【0051】
図3を参照して、廃棄物供給ライン1(以下201)及び主要物質供給手段6(以下205a及び205b)間の処理設備の部分の実施可能な例を詳細に説明する。
【0052】
この例では、廃棄物供給ライン201は、前述の廃棄物を貯蔵する貯蔵庫116の出力側に設けられ、ホッパを介して、並列に配置された熱分解用オーブン202a、202b、202cに接続されている。熱分解用オーブン202a、202b、202cは、外部から電気的に加熱される管状のスクリューオーブンであっても良い。例えば、長さ5m、直径40cm、電力100kW、可変スクリュー速度を有するオーブンを使用できる。オーブンの数は、各設備の必要性に応じて変化する。
【0053】
焼成廃棄物回収ライン203は、熱分解用オーブン202a、202b、202cの出力側に設けられ、2個の焼成廃棄物貯蔵庫204a、204bに接続されている。これらの貯蔵庫の数は各設備の必要性に応じて変化する。焼成廃棄物回収ライン203は、水冷手段が装着されたジャケットを有するコンベアであっても良い。各焼成廃棄物貯蔵庫204a、204bの出力には、主要物質供給管205a、205bが設けられている(これらの両管は主要物質供給ライン6を形成している)。
【0054】
更に各熱分解用オーブン202a、202b、202cの出力には、ガス排出管206a、206b、206c(これらの管すべては、前述のガス排出管4に対応する)が設けられている。各ガス排出管206a、206b、206cは、それぞれポスト燃焼室207a、207b、207cに接続されている。ポスト燃焼室207a、207b、207cの典型的な容量の例は15m3である。各ポスト燃焼室207a、207b、207cには、それぞれ空気導入管208a、208b、208cが接続されている。
【0055】
燃焼済ガス収集管209は、各ポスト燃焼室207a、207b、207cの出力を、縦型冷却室210の入力に接続している。水冷却剤供給ライン211も前記冷却室210の入力に接続されている。例えば前記冷却室内の高所に、噴霧用傾斜路を設けても良い。予備冷却ガス回収管212が前記冷却室210の出力側に設けられ、スリーブフィルタ214に接続されている。空気導入管213が予備冷却ガス回収管212に接続されている。前記スリーブフィルタ214は例えば4000Nm3/時の容量を有している。微細物回収ライン215及び除去されたガスの回収管216がスリーブフィルタ214の出力に接続されている。除去されたガスの回収管216は、煙突217に接続されている。
【0056】
図4を参照して、銅抽出手段37を備える処理設備の一部の実施可能な例を、以下に詳細に説明する。
【0057】
各主要物質供給管205a、205bは、それぞれ選択溶解コンテナ301a、301bに接続され、各コンテナは、例えば蓋と可変速度の攪拌器を備えた、肉厚のエポキシ樹脂/ガラス繊維製の20m3の閉塞した反応器であっても良い。このように単一のコンテナを設置しても良いが、生産上の必要性に応じて複数のコンテナを設置しても良い。各選択溶解コンテナ301a、301bには、消耗電解液供給ライン303も接続されている。更に、各選択溶解コンテナ301a、301bの底部には、酸素供給部304が接続されている。
【0058】
選択的ポスト溶解物取出しライン305a、305bが、前記選択溶解コンテナ301a、301bの出力に接続され、かつプレスフィルタ306a、306bに接続されている。固体収集システム307が、前記プレスフィルタ306a、306bの出力側に位置し、かつ乾燥オーブン308に接続され、該オーブン308の出力には、前処理された物質の管309(図1の符号14に対応)が接続されている。前記乾燥オーブン308は熱分解に使用されるようなのスクリューオーブンであっても良い。
【0059】
更に各プレスフィルタ306a、306bの出力には、それぞれ濾過液取出し管310a、310bが設けられ、各管は、単一のバット302に接続されている。次いで該バット302は、移送ライン311を介して、例えば60m3の容量を有する富化電解液を貯蔵するタンク312に接続されている。
【0060】
前記設備のこの部分の他の主要な要素は、電着ユニット314である。 該電着ユニット314は一定数の電解タンク315a、315b、315c、315d、315eを備え、タンクの数(この例では5個)は、生産上の必要性に応じて決定できる。各電解タンク315a、315b、315c、315d、315eは、生産上の必要性に応じた一定数(例えば本例では8個)の電解槽を備えている。例えば各電解槽は、4m3の有効容積を有し、各面の有効表面積が1m2であるステンレススチール製の31個のカソードと鉛/カルシウム製のアノードを備えている。電解タンク315a、315b、315c、315d、315eは、富化電解液を貯蔵するタンク312の出力に接続された富化電解液移送管313に並列接続されている。最後に、電着ユニット314には、カソード剥離システム316が設置されている。
【0061】
電着ユニット314の出力には、消耗電解液再循環ライン317が設けられ、該ライン317は、消耗電解液を貯蔵する第1のタンク318(例えば60m3の容量を有する)と消耗電解液を貯蔵する第2のタンク319(例えば25m3の容量を有する)に接続されている。第1のタンクは、消耗電解液供給ライン303へ供給するためのソースとなる。第2のライン319は、第1の剥ぎ取り反応器320(例えば15m3の容量を有する)に接続されている。この第1の剥ぎ取り反応器320に、石灰供給ライン321が接続している。前記第1の剥ぎ取り反応器320には、第1のパルプ取り出しライン323が接続され、該ライン323は、追加のプレスフィルタ324に接続されている。
【0062】
更に、図3で述べた微細物回収ライン215は、水及び石灰供給部(図示せず)を装着した第2の剥ぎ取り反応器325(例えば5m3の容量を有する)に接続されている。該反応器325の出力には、第2のパルプ取り出しライン326が接続され、該ライン326には、追加のプレスフィルタ324が接続されている。該追加のプレスフィルタ324の出力には、洗浄された微細物取り出しライン327、硫酸石灰取り出しライン328及び酸性ジュース取り出しライン329が接続されている。洗浄された微細物取り出しライン327は、選択溶解コンテナ301a、301bの一方又は両方に接続していても良い。酸性ジュース取り出しライン329は、ハロゲン化物を処理するための下流側の追加機器とともに、図示しないタンク本体に接続されていても良い。
【0063】
ガス除去システム330は、貯蔵タンク312、318、319、選択溶解コンテナ301a、301b及び剥ぎ取り反応器320、325の全部を通り、洗浄タワー331に接続される。貯蔵タンク312、318、319、選択溶解コンテナ301a、301b及び剥ぎ取り反応器320、325は、標準的な厚さのエポキシ樹脂/ガラス繊維中にあっても良い。洗浄タワー331はその出力に酸性ジュース取り出しライン332が接続され、該ラインは、消耗電解液貯蔵タンク318に循環接続されていても良い。洗浄タワー331は、5m3の容量と標準的なライニングをを有し、水で作動するようにしても良い。
【0064】
図1を再度参照すると、鉛被覆コンテナ15及び追加の鉛被覆コンテナ18は、図5に例示したものであっても良い。
【0065】
各コンテナは、バーナー403が装着された加熱室402に囲まれたケトル401(例えば50トンの容積を有する)を備える。攪拌機404(例えば縦軸プロペラを有する)をケトル401中に浸漬させる。ケトル401には、供給器407が接続され、該供給器407には必要に応じて前処理物質供給ライン14の出力又は上澄み残渣取り出しライン17に接続されている。ケトル401の側部には、上澄み取り機405が設置され、該上澄み取り機405は、傾斜面に取り付けられたステンレススチール製のジョイントアームを有するスクレーパから成る。包囲カバー406は、ケトルの内容物の表面が分離されることを可能にし、窒素での不活性化に適用される。化粧品の上方に吸引手段408が設置され、図示しないスリーブフィルタに接続されている。バーナーから放出されたガス収集に適用される燃焼ガス排出手段409が加熱室402に接続されている。攪拌機404は分解してケトル401の内容物を移送可能にする。
【0066】
鉛被覆コンテナ15、18の下流には、アノード成型手段25が設けられ、これは図5に示したタイプのケトルを備えるが、上澄み取り出し及び攪拌手段はなくても良い。このケトルは包囲カバー及び吸引器を備えていても良い。
【0067】
本設備の最後の主要部は精製に関連し、図1の符号27、33、34に関連する。符号27、33、34を図6を参照して説明する。
【0068】
この設備部分は、ベッツ電解ユニット501を備え、該ユニットは、複数の(この例では2個)ベッツ電解槽列502a、502bを含む。各電解槽列502a、502bは例えば、5個の電解槽を備え、各電解槽は、30個のアノードと31個のカソードを含み、面当たりの有効表面積は1m2、槽容積は4m3である。各電解槽列502a、502bには、ベッツ反応器503から並列に電解液が供給される。電解液の循環を容易にするために、戻りポンプシステムを設けても良い。ベッツ反応器503の一端にはフルオロケイ酸供給ライン504が、他端には一酸化鉛供給ライン505が接続されている。ベッツ電解ユニット501の出力には、使用済ベッツ電解液収集ライン506が設けられ、図4の消耗電解液貯蔵用の第2のタンク319に戻される。
【0069】
電解除去システム507は、ベッツ電解ユニット501及びベッツ反応器503でのガス収集と洗浄タワー508へ向けた移送を行い、5m3の典型容量を有する。洗浄ジュース収集ライン509は、図4の消耗電解液貯蔵用の第2のタンク319に向けて戻す。
【0070】
ベッツ電解ユニット501には、カソード剥離手段510も設けられている。該カソード剥離手段510は、それ自身でカソードをケトル512に供給してカソードを溶融させるためのカソード供給ライン511を有している。ケトル512は図5で述べたタイプであるが、上澄み取り出し及び攪拌手段はなくても良い。このケトルは包囲カバー及び吸引器を備えていても良い。カソード溶融物は、鉛−スズ供給ライン513、そして可能であればフレッシュな鉛供給ライン30、追加の溶融鉛系組成物供給ライン31(図1参照)とともに、供給される。参照番号510〜513の全体は、鉛―スズ回収手段29に対応する。
【0071】
ベッツ電解ユニット501には更に、アノードスタブ収集手段514が設けられ、該手段514はアノードスラッジ収集手段516に接続されている(全体が、アノード性スラッジ回収手段28の例を構成する)。このアノード性スラッジ回収手段516は、アノード性スラッジ処理ユニット517に接続され、該ユニット517は、洗浄手段、計量手段及び/又は安全貯蔵手段を備えている。洗浄済スラッジ移送ライン518は、アノード性スラッジ処理ユニット517を、酸化オーブン520(例えば800kWの電力、1トンの容量)に接続し、該オーブンは、その入力に、空気又は酸素取り入れライン519を有する。酸化オーブン520の出力には、インゴット収集ライン521が接続され、アノードスラッジ収集手段516の安全貯蔵手段へ戻ることを保証している。リサージ供給ライン505も酸化オーブン520の出力に接続されている。フューム収集ライン522も酸化オーブン520に設けられ、該ライン522は、鉛被覆コンテナに設けられたものと同じ濾過システムに向けて接続されていても良い。
【0072】
[廃棄物処理方法]
貴金属を含有する、使用済電子カードである廃棄物を処理する方法を以下に例示する。この場合、前記方法は、5種類の主工程を備える。
―粉砕し、
―熱分解し、
―選択的溶解(浸出)により銅抽出し、
―鉛被覆を行い、及び
―精製する。
【0073】
この例は、図1〜6に関連して上述した処理設備の使用に対応する。生産能力は、1年当たり廃棄物25000トン、あるいは1日当たり72トンである。廃棄物が触媒マフラの場合、熱分解及び銅抽出工程なしで済ますことも可能である。
【0074】
廃棄物受け入れ手段101が電子カードを受け入れる。電子カードは設備の入口にバッチで(コンテナ、大きなバッグ、樽)到達し、計量手段102で計量され、ラベルされ、記録され、貯蔵手段103に貯蔵される。
【0075】
前記カードは、3種類の主要形態で受け入れられる。
1)全カードが処理前に、2度の粉砕を必要とする。
2)粉砕前のカードが処理前に、単純な粉砕を必要とする。
3)適切に粉砕されたカードが5mm未満のサイズであり、処理前に追加の粉砕を必要としない。
【0076】
これが前述の輸送システムでカードの性状に応じて、カードが粗挽ミル109及び細挽ミル111に順次送られる(前記ケース1)、あるいは直接細挽ミル111に送られる(前記ケース2)、あるいは直接貯蔵庫116に送られる(前記ケース3)かの理由である。粗挽ミル109は、廃棄物を粉砕又は潰して25mm未満のサイズに減少させ、一方細挽ミル111は、廃棄物を粉砕又は潰して5mm未満のサイズに減少させる。更に適切に粉砕されたカードを貯蔵庫116に入れる前に、貯蔵庫116はサンプル手段でカードの自動サンプリングを行い、カードの流れを定期的に遮断する。例えば24tバッチごとに300kgのサンプルがサンプリングされる。次いでサンプルは最終的なサンプル量4〜5kgにするように実験室で割り当てられた後に、分析手段114で分析される。処理パラメータを適用するために、分析結果が判明した際には、所定の廃棄物のバッチのみを処理することが好ましい。これが、サンプル分析を行う前に、カードがリターンコンベア119を通って貯蔵手段103に戻る理由である。
【0077】
ミル109,111の敷地の汚染除去が行われ、空気に浮遊する微細物が回収されて廃棄物貯蔵庫に再度導入される。
【0078】
次に粉砕された電子カードは、貯蔵庫116で抽出され、3個の熱分解用オーブン202a、202b、202cのそれぞれの入口の上に位置するホッパに供給される。オーブンの入口での製品の嵩密度は0.7である。カード内に含まれる有機物を劣化させ除去するために、熱分解は有用である。これが、炭素鎖の制御燃焼であり、廃棄物中の金属を金属状態に維持したまま行われる。
【0079】
前記オーブン内の滞留時間は、20から90分で、30分が好ましい。操作温度は、350から550℃で、400℃以上であることが好ましい。温度、負圧及びスクリュー速度を制御することにより、操作を制御下に置くことができる。各オーブンは1t/時の処理能力を有する。フェノール性化合物が豊富な熱分解ガスが、各オーブンから400℃で発生する。
【0080】
各オーブンから取り出される焼成されたカードは、焼成廃棄物回収ライン203(ジャケットを有するコンベア)上で冷却され、貯蔵庫116に貯蔵される。プラスチックの熱分解からの残炭素に起因して、製品は黒い外観を有する。その密度は約0.5である。
【0081】
各オーブンからの熱分解ガスは、ポスト燃焼室207a、207b、207c(滞留時間は2秒)で高温燃焼され、全ての炭素質分子と存在し得るダイオキシン類とフラン類を分解する。これにより外見上、全ての炭素鎖がエネルギーの形で回収され、実際の工程で使用できる。酸化用空気を400℃に予熱し、ガスに適切な点火性を与える。燃焼室出口温度を1100℃に制御してNOx生成を回避するためには、空気供給を制御することが要求される。追加の800kWのバーナーを使用すると、特に遷移状態における、燃焼に必要な温度が確保される。入口及び出口のポスト燃焼温度を連続して制御し、入ってくる希釈空気を制御する。
【0082】
1100℃のガスは冷却室210に到達し、そこで水で冷却される。冷却水は10m3/時の流速で供給される。ガスのエネルギーの相当部分を吸収して水は完全に蒸気に変換される。冷却されたガスは、約200℃の温度で燃焼室から導出される。出口温度を制御することにより、注入される水の流速を制御できる。
【0083】
次いで該ガスは、空気で約150℃に冷却され、スリーブフィルター214に入る。スリーブは、細かい固体粒子、特にハロゲン化物を含む粒子を保持する。その除去は、次の銅浸出の個所で行われる。全て除去されたガスは煙突217に拒絶される。連続的な追跡(ガスの分析、粉塵レベル)を行う。
【0084】
銅抽出は、一連の湿式操作、つまり酸化性の酸媒体中の浸出、残渣の濾過、数個の反応器と貯蔵タンクと濾過器とポンプ、及び電解槽のセット及び電流発生器の使用を必要とする銅の電着により行われる。
【0085】
12tの銅を有する貯蔵庫204a、204bからの焼成されたカードの日々の処理は、それぞれが4時間続く11回の浸出を行う選択的溶解コンテナ301a、301b(閉塞した反応器)で行う。処理は次の通りでる。消耗電解液貯蔵タンク318から、銅が消耗し酸が富化した電解液(約85℃)を15m3のポンプに移送する。次いで、4.8tの焼成されたカードを、反応器の底部に細かい酸素バブリングを行いながら導入する。消耗した電解液は、硫酸(50〜200g/L、好ましくは約100g/L)と硫酸鉄として可溶性鉄(5〜20g/L、好ましくは約10g/L)を含む溶液であり、これらは銅のエッチングを効果的に行うために、Fe3+(酸素を含む)の形態に維持されなければならない。
【0086】
温度維持は、新鮮な蒸気の注入により行う。最後に、反応器の内容物を、プレスフィルタ306a、306bの両方又は一方で濾過する。銅富化ジュースを、電解槽に接続された富化電解液貯蔵タンク312に移送する。
【0087】
電解液は銅と同時に溶解した鉄とニッケルで富化している。電解槽から出てくる消耗電解液への日々の浄化が必要である。消耗電解液は、第2の消耗電解液貯蔵タンク319に送られ、その処理が第1の剥ぎ取り反応器320で一日に2回行われる。これらの非常に酸性である、鉄、ニッケル及び少量の銅を含有するジュースを、pHが8.5になるまで石灰で処理する。硫酸カルシウムが金属水酸化物とともに沈殿する。このドロドロのものを追加のプレスフィルタ324で濾過する。得られた残渣(10〜15t/日)を埋め立てサイトに位置させる。ジュースは、第1の消耗電解液貯蔵タンク318に再循環する。
【0088】
熱分解のフィルタの微細物は、水とpH9の石灰の存在下で、1日に2回、第2の第2の剥ぎ取り反応器325中で処理する。ハロゲン化物(主として塩化物及び臭化物)は溶液中に溶解する。ドロドロしたものは、追加のプレスフィルタ324で濾過する。残渣(500kg)は、選択的溶解コンテナ301a、301bに再循環し、ハロゲン化物で富化したジュース(3m3)は、次の処理用のタンクに貯蔵される。
【0089】
反応器、貯蔵タンク、フィルタの全ては、汚染除去され、水蒸気や液適は、洗浄塔331に吸収される。得られた酸性ジュースは、定期的に浄化され、消耗電解液貯蔵タンク318に再循環する。
【0090】
プロセス中、消耗した電解液は、85℃に昇温され、スチームが供給されたコイルでこの温度に維持される。富化された電解液は、冷水を供給されたコイルで50℃に冷却される。次いでこの冷水は、熱分解のポスト燃焼からの熱ガスを消すための室で使用される。
【0091】
プレスフィルタ306a、306bからの湿潤固体残渣(40t/日)は貴金属を多く含む。残渣は乾燥オーブン308で乾燥される。残渣は粉状かつ黒色であり、その主成分であるガラス繊維は、エッチングタンク中で攪拌されることにより分解する。固体及び液体の流れは、定期的にサンプリングされ、分析される。
【0092】
電着ステップでは、整流器からの流れは電解槽から電解槽へ直列に流れ、各槽の電極に対して並列に流れる。電流密度は50から400A/m2、好ましくは約200A/m2で、電解液の温度は、20から80℃、好ましくは45から50℃である。鉄イオン濃度は可能な限り低く抑え、どんな場合でも、10g/L未満のレベルである。全鉄濃度が10〜30g/Lのレベルニッケル達した際には、鉄を沈殿させ、沈殿を濾過して、電解液の一部を精製する。
【0093】
富化電解液貯蔵タンク312から来る富化電解液を、8個の電解槽の第1列に送りいれる。電解槽はカスケード状に配置され、電解液の循環を可能にしている。ポンプは、最後の電解槽からのジュースを最初の電解槽に送液する。循環流速は15m3のオーダーである。電解液は、カソードに析出した銅中において、24時間で消耗する。界面活性剤を添加すると、細かく制御された銅析出物が得られる。消耗した電解液は、消耗電解液貯蔵タンク318に向けてポンピングされる。次いで電解槽は富化電解液で再充填される。各列は、4.5〜5時間ごとに、電解液が空にされかつ充填される。
【0094】
5日ごとに、電解液列は分解される。回収された銅カソード(12t)は水で洗浄し、適切な機械器具で銅をそのステンレススチール製の支持体から分離する。得られた銅はサンプリングし、貯蔵する。
【0095】
固体及び液体流の全てを定期的にサンプリングし、分析することが好ましいことを注目すべきである。
【0096】
出発物質が、大量の銅を含む場合には、選択的銅抽出ステップが重要である。確かに銅は、液体鉛に不溶な安定な化合物を形成でき、該化合物は、しばしば貴金属を含む。これが引き続く鉛被覆及び精製ステップの開始前に、最大量の銅を除去しなければならない理由であり、さもなければ大量の貴金属が前記安定な化合物中に失われてしまう。
【0097】
更に選択的銅抽出ステップは、外見上全ての銅を販売できる製品(純粋な銅カソード)として選択的に抽出することを可能にし、これはインゴットに再溶融される。
【0098】
電解液に溶解した金属(鉄、アルミニウム、ニッケル)は、電解液再生のための定期的な操作で除去される。
【0099】
銅の電着は、市販製品である硫酸銅の結晶化の操作で置き換えても良いことは注目すべきである。
【0100】
廃棄物のタイプによっては、熱分解及び選択的溶解による銅抽出の一方又は両方を省略できる。これは廃棄物が触媒マフラから成る場合の例である。この場合、炭素鎖と銅含有量はこれらのステップを存在させる理由にならず、粉砕された使用済触媒マフラは直接鉛被覆ステップに導かれる。
【0101】
鉛被覆ステップは、前処理物質(つまり粉砕、選択的熱分解、選択的銅抽出後)を、鉛被覆コンテナ15中の溶融鉛系組成物と接触させることを含む。溶融鉛系組成物は、主要物質として鉛を含み、0から50%のスズ、好ましくは20%未満のスズを含む。この組成物は、液状である。これは貴金属を集めかつ抽出するために使用され、非酸化形態で溶解する。この組成物中の鉛及び選択的に含まれても良いスズは、一部は電子カードに含まれる添加された金属に起因し、他は引き続き回収された金属に起因する。
【0102】
溶解は次の方法で行われる。攪拌を開始すると、ケトル内に溶融鉛の渦が生成する。供給器407が、鉛とともに回収される物質を渦の中心に注入する。この操作は約15分続く。次いで温度を350から550℃、好ましくは約500℃にする。
【0103】
上澄み取得フェーズ又は鉛への親和力なしに要素を分離するフェースが続いて開始される。このフェースでは、攪拌は停止し、貴金属と不活性な洗浄された部分(セラミックス、ガラス繊維、フェライト等)が表面に上がって来て浮遊する。次いで上澄み取り機405が始動し、上澄み物質が回収される。この上澄み物質は鉛浴から除去され、操作は繰り返される。30重量%のスズを有する鉛−スズ合金に関する上澄み取りは、250から450℃、例えば約270℃の温度で行われる。
【0104】
上澄み物質は、追加の鉛被覆コンテナ18中で、同じ方法で再度処理される。確かに、少量の鉛(及び貴金属)が上澄み取りの間に上澄み物質とともに運び去られるので、貴金属の損失を回避するため、第2のケトルで操作を繰り返すのは有用である。追加の鉛被覆コンテナ18での上澄み取りで集められた不活性物質は、必要に応じてサンプリング及び分析が行われた後の最終的な廃棄物として、埋立地に送られる。追加の鉛被覆コンテナ18に含まれる溶融鉛系組成物は、低濃度(トン当たり100g未満)の貴金属を有し、鉛被覆コンテナ15に向けてポンプで送り返される。
【0105】
鉛被覆フェースは、数日間続けられる。溶融鉛系組成物中の貴金属含有量が閾値、例えば鉛1トン当たり2から4kgに達すると、完了と考える。
【0106】
次いで、鉛系組成物の渦に硫黄を加えることから成る、選択できる脱銅操作を行って、銅マットを形成し、これは選択溶解コンテナ301a、301bに送り返されて、銅抽出が行われる。
【0107】
次に、溶解した貴金属を有する溶融鉛系組成物を貯蔵ケトルに送り、そこでこの組成物をアノードに成型する(これはアノード成型手段25を構成する)。
【0108】
次のベッツ精製ステップで、このように成型されたアノードに含まれる貴金属が、リリースされる。このステップでは、ベッツ電解ユニット501で、ベッツプロセスとして知られるフルオロケイ酸媒体中の電解によりアノードから鉛及びスズを除去する。電解槽には、例えば約90g/Lの鉛と80g/Lの遊離酸を含む電解液を供給する。この電解液は、ベッツ反応器503で、フルオロケイ酸中でリサージ(PbO)を安定化させることにより調製する。電解は、例えば電流密度350A/m2及び電解液温度40℃で行われる。電解の間、固体の鉛及びスズは電解液に溶解し、一方鉛及びスズの析出物がカソード上に形成される。電解液に界面活性剤を添加すると、この析出物を細かくかつスムースにできる。貴金属自体はアノードに残る。
【0109】
この構成では、電解液は不純物を濃縮しないか、してもごく僅かである。全体の浄化は、1年に1回又は2回行えば良い。この場合、電解液は、第1の剥ぎ取り反応器320での石灰処理のために、消耗電解液を貯蔵する第2のタンク319のレベルに送られ、新しい電解液が調製される。ベッツ反応器503では、硫酸を使用して鉛含有量を減らすために、部分的な浄化が要求される。反応器503及び電解槽は浄化され、ガス流出物は洗浄塔508に送られる。洗浄ジュースは、消耗電解液を貯蔵する第2のタンク319を通って、第1の剥ぎ取り反応器320で処理される。
【0110】
本例では、2列の各5個の電解槽が60×5=300個のそれぞれ450kgのアノードを有する。アノードの80%を消費するために6日を要し、その貴金属(432kg)をアノード性スラッジ、つまり溶解したアノード残渣として放出する。アノード性スラッジは、条件によって、バスケット中に粉末として落ちたり、電解槽の構造に付着する。好ましくは、アノードが完全に溶解する前に電解を遮断する。これによりアノード性スラッジを削り取って回収できる。
【0111】
6日間に生産されたPb/Snカソードは108tである。
【0112】
2個のカソードの剥離は3日ごとに行うことが有利で、2個のアノードの削り取りも同時に行う。カソードはケトルに再循環して販売できるインゴット用鉛−スズを製造し、及び/又は追加の鉛被覆コンテナ18に溶融鉛系組成物とともに供給する。
【0113】
アノード性スラッジは洗浄し、計量し、貯蔵庫に貯蔵する。アノード性スラッジは、1000℃の酸化オーブン520で1週間に1回か2回溶かすことが好ましい。このアノード性スラッジ溶融ステップを酸素ガス(又は空気)の存在下で行うと、依然としてアノード性スラッジ中に含まれる鉛及びスズの少なくとも一部の酸化を可能にする。リサージ(PbO)は表面に形成され、プレート状に成型され、必要ならば鉛で電解液をドープする。オーブンからのフュームは、鉛被覆フィルタに向けて送られる。液はインゴットに成型され(25kg)、貯蔵庫にバッチごとに貯蔵される。全てのインゴットは市販前に、サンプリングと計量が行われる。
【0114】
前記方法は、方法の全ての段階で、貴金属の損失を可能な限り減少させるよう設計されている。
つまり、
―微細物回収ライン122では、粉砕時に大気を通る粉砕された廃棄物の細かい断片が再度システムに導入される。
―微細物回収ライン215では、熱分解の間に、炭素質ガスとともに運び去られた金属部分を回収する。
―洗浄された微細物取り出しライン327では、電解で運び去られた、処理すべき物質の部分を、主回路に再注入することが可能である。
―鉛被覆コンテナ15に加えて、追加の鉛被覆コンテナ18を使用することにより、不注意にも主鉛被覆ステップの間に不活性物質により運び去られた貴金属を回収できる。
―更に、溶解により、選択的溶解ステップで抽出されなかった銅を、鉛被覆コンテナ15で銅マットとして回収し、主回路に再注入する。
【0115】
従って、本方法によると、廃棄物中に当初から含有されている貴金属の90又は95重量%の、好ましくは99重量%以上の、更に好ましくは99.0重量%以上が細かい状態で回収できる。
【0116】
下記表1及び2は、廃棄物が典型的な使用済電子カードである場合の、本処理方法の異なったステップ間の生成物の化学組成の概算を示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【符号の説明】
【0119】
101……廃棄物受け入れ手段 102……計量手段
103……貯蔵手段 104……投与手段
105……主コンベア 106……第1の二次コンベア
107……第2の二次コンベア 108……第3の二次コンベア
109……粗挽ミル 110……移送ライン
111……細挽ミル 112……コレクタコンベア
114……分析手段 115……第1の三次コンベア
116……貯蔵庫 117……第2の三次コンベア
118……コンテナ 119……リターンコンベア
120……空気汚染除去システム 121……スリーブフィルタ
122……微細物回収ライン 123……煙突
201……廃棄物供給ライン
205a、205b……主要物質供給手段
202a、202b、202c……熱分解用オーブン
203……焼成廃棄物回収ライン
204a、204b……焼成廃棄物貯蔵庫
205a、205b……主要物質供給管
206a、206b、206c……ガス排出管
207a、207b、207c……ポスト燃焼室
208a、208b、208c……空気導入管
209……燃焼済ガス収集管 210……縦型冷却室
211……水冷却剤供給ライン 212……予備冷却ガス回収管
213……空気導入管 214……スリーブフィルタ
215……微細物回収ライン 216……ガスの回収管
217……煙突 301a、301b……選択溶解コンテナ
302……バット 303……消耗電解液供給ライン
304……酸素供給部
305a、305b……選択的ポスト溶解物取出しライン
306a、306b……選択溶解コンテナ
307……固体収集システム 308……乾燥オーブン
309……前処理された物質の管
310a、310b……濾過液取出し管 311……移送ライン
312……富化電解液貯蔵タンク 313……富化電解液移送管
314……電着ユニット
315a、315b、315c、315d、315e……電解タンク
316……カソード剥離システム
317……消耗電解液再循環ライン 318……第1のタンク
319……第2のタンク 320……第1の剥ぎ取り反応器
321……石灰供給ライン 323……第1のパルプ取り出しライン
324……追加のプレスフィルタ 325……第2の剥ぎ取り反応器
326……第2のパルプ取り出しライン
327……微細物取り出しライン
328……硫酸石灰取り出しライン
329……酸性ジュース取り出しライン
330……ガス除去システム 331……洗浄タワー
332……酸性ジュース取り出しライン 401……ケトル
402……加熱室 403……バーナー 404……攪拌機
405……上澄み取り機 406……包囲カバー
407……供給器 408……吸引手段
409……燃焼ガス排出手段 501……ベッツ電解ユニット
502a、502b……ベッツ電解槽列 503……ベッツ反応器
504……フルオロケイ酸供給ライン
505……一酸化鉛供給ライン
506……使用済ベッツ電解液収集ライン
507……電解除去システム 508……洗浄タワー
509……洗浄ジュース収集ライン 510……カソード剥離手段
511……カソード供給ライン 512……ケトル
513……鉛−スズ供給ライン 514……アノードスタブ収集手段
516……アノードスラッジ収集手段
517……アノード性スラッジ処理ユニット
518……洗浄済スラッジ移送ライン
519……空気又は酸素取り入れライン 520……酸化オーブン
521……インゴット収集ライン 522……フューム収集ライン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
―貴金属を含む廃棄物を、溶融した銅系の組成物と接触させる工程、
―得られた混合物の上澄みを取って浮遊物質を回収する工程、及び
―当該上澄み混合物を電解により精製して前記貴金属を回収する工程、
の連続ステップを含んで成る廃棄物の処理方法。
【請求項2】
上澄み回収工程において、
―残渣を第2の溶融した銅系の組成物と接触させ、
―得られた混合物の上澄みを取り、及び
―上澄み混合物を回収し、前記溶融した銅系の組成物の少なくとも一部を供給するようにして処理することにより、残渣を回収するようにした請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上澄み混合物精製工程が、
―前記上澄み混合物をアノード中に成型し、
―該アノードを使用してフルオロケイ酸溶液を電解し、
―貴金属を含むアノード性スラッジを回収する、
サブ工程を備える請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
アノード性スラッジを回収する工程の前後に又は同時に、
―鉛及び必要に応じてスズのカソード析出物を回収して、溶融鉛系組成物の少なくとも一部及び/又は第2の溶融鉛系組成物を与える請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アノード性スラッジ回収のサブステップ後に、上澄み混合物精製ステップが、次のサブステップ、
―酸素の存在下で、回収したアノード性スラッジを溶融する、
―溶融アノード性スラッジの上澄みを取り、かつ
―溶融しかつ上澄みを取ったアノード性スラッジをインゴットに成型する、
を備える請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
各溶融鉛系組成物が、0から50%のスズを含んでいる請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
廃棄物を溶融鉛系組成物と接触させるステップの前に、
―選択的溶解により、廃棄物から銅を抽出するステップを備える請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
銅抽出ステップが、
―硫酸、硫酸鉄及び酸素の存在下で、廃棄物を選択的に溶解し、
―得られた溶液を、濾過及び/又は電解及び/又は沈殿により処理し、
―一方で銅を、他方で他の金属の不純物を回収する、
サブステップを備える請求項7に記載の方法。
【請求項9】
銅抽出ステップの前に、
―熱分解により廃棄物を燃焼させ、炭素質ガスを生成させ、かつ必要に応じて、
―前記炭素質ガスのポスト燃焼を行う、
ステップを備える請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
更に、廃棄物の粉砕及び/又は粉砕した廃棄物の分析を行う予備ステップを備える請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
貴金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、及びこれらの混合物から選択される金属を含んで成る請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
廃棄物が、触媒排気マフラ及び電子カードのような電子的廃棄物から選択される請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
廃棄物に含まれる貴金属の90質量%以上、好ましくは99質量%以上が回収される請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
上澄み物質が、セラミックス、ガラス繊維及び/又はフェライトを含む請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
貴金属を含む廃棄物処理設備であって、
―少なくとも1個の鉛被覆コンテナ(15)、
―該鉛被覆コンテナ(15)の入力に接続された溶融鉛系組成物供給ライン(24)、
―前記鉛被覆コンテナ(15)の入力に接続された前処理物質供給ライン(14)、
―前記鉛被覆コンテナ(15)と連携する上澄み取得手段(16)、
―前記鉛被覆コンテナ(15)の出力に接続された上澄み混合物取り出しライン(21)、
―該上澄み混合物取り出しライン(21)に接続された上澄み混合物精製手段(36)、及び
―該上澄み混合物精製手段(36)の出力に接続された貴金属取り出しライン(38)を備える廃棄物処理設備。
【請求項16】
更に、
―上澄み取得手段(16)の出力に接続された上澄み残渣取り出しライン(17)、
―一方では前記上澄み残渣取り出しライン(17)に接続され、他方では追加の溶融鉛系組成物供給ライン(31)に接続された少なくとも1個の追加の鉛被覆コンテナ(18)、
―該追加の鉛被覆コンテナ(18)と連携する追加の上澄み取得手段(19)、及び
―前記追加の鉛被覆コンテナ(18)の出力に接続され、かつ溶融鉛系組成物供給ライン(24)に接続された上澄み混合物取り出しライン(22)を備える請求項15に記載の廃棄物処理設備。
【請求項17】
電解による上澄み混合物精製手段(36)が、
―アノード成型手段(25)、
―ベッツ電解手段(27)、及び
―アノード性スラッジ回収手段(28)を備える請求項15又は16に記載の廃棄物処理設備。
【請求項18】
電解による上澄み混合物精製手段(36)が、
―追加の溶融鉛系組成物供給ライン(31)に接続された鉛−スズ回収手段(29)を備える請求項17に記載の廃棄物処理設備。
【請求項19】
更に、
―その一方の出力が前処理物質供給ライン(14)の接続された銅抽出手段(37)、及び
―該銅抽出手段(37)の入力に接続された主要物質供給ライン(6)を備える請求項15から18までのいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。
【請求項20】
銅抽出手段(37)が、
―主要物質供給ライン(6)に接続された少なくとも1個の選択溶解コンテナ(7)、
―電解手段(9)、
―前記選択溶解コンテナ(7)を、前記電解手段(9)に接続する富化電解液移送手段(8)、
―カソード剥ぎ取り手段(13)、及び
―電解手段(9)の出力に接続された消耗電解液循環ライン(10)を備える請求項19に記載の廃棄物処理設備。
【請求項21】
更に、
―前記主要物質供給ライン(6)に接続された廃棄物熱分解手段(2)、
―該熱分解手段(2)に接続された廃棄物供給ライン(1)、及び
―更に必要に応じて、該熱分解手段(2)の出力に設けられ、ポスト燃焼手段(5)に接続されたガス排出ライン(4)を備える請求項19に記載の廃棄物処理設備。
【請求項22】
更に、
―原料廃棄物供給ライン(1bis)に接続され、更に前記廃棄物供給ライン(1)に接続された粉砕及び分析手段(1ter)を備える請求項15から21までのいずれか1項に記載の廃棄物処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−506714(P2010−506714A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532850(P2009−532850)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001728
【国際公開番号】WO2008/047010
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509112626)
【Fターム(参考)】