説明

貼付用部材および記録物

【課題】壁、窓、布地、合成樹脂シート、ガラス板あるいは金属等の被着体に貼り合わせることが可能である、興趣性の高い新規な貼付用部材および該貼付用部材を貼り付けた記録物を提供すること。
【解決手段】基材と、前記基材上に記録された画像記録層とからなる貼付用部材であって、
前記画像記録層は、中空樹脂粒子を白色色材として含む白色インク組成物により記録された白色色材層と、プロセスカラーインク組成物により記録されたカラー色材層とを含んで構成されており、
前記白色色材層は、加熱されることにより、または、溶剤を浸透させることにより、透明化されることを特徴とする貼付用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、窓、布地、合成樹脂シート、ガラス板あるいは金属等の被着体に貼り合わせ可能な貼付用部材および該貼付用部材を貼り付けた記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙、フィルムあるいはシート等の記録媒体に付着させ、画像記録を行うものである。該インクジェット記録方式は、低騒音であること、フルカラー画像等の多色化が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置よりも記録コストが低いことなどの理由により、端末プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、帳票印刷等で広く利用されている。
そして、これらのインクジェット記録方式により形成される画像は、高解像度化及び色再現性範囲の拡大によって、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して遜色のない記録を得ることが可能であるため、近年ではポスター、チラシ、パッケージプルーフ、ワッペン等の高発色性や色再現性が要求される意匠性用途においてその需要が急速に高まってきている。
【0003】
さらにインクジェット記録の需要の高まりに応じて、シール、ラベル、熱転写プリント用途等の、被着体に貼着させて使用されるような記録シートが普及している(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ところで、従来から、中空樹脂粒子を含有させた白色インク組成物が知られている(例えば、特許文献3〜6参照)。この中空樹脂粒子は、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性の樹脂から形成されている。この様な構造により、インク組成物中では、中空樹脂粒子の内部空洞は溶媒によって満たされて中空樹脂粒子の比重とインク組成物の比重とが実質的に同一になるため、中空樹脂粒子はインク組成物中に安定に分散することができる。そして、このインク組成物を用いて記録媒体上に画像を形成すると、乾燥時に中空樹脂粒子の内部空間が空気で置換されるため、中空樹脂粒子は、その外殻と空洞の間における光の屈折率の差により生じる光散乱によって隠蔽効果を発揮する。一般的に、中空樹脂粒子自体はアクリル等の透明樹脂により形成されており、隠蔽効果を発揮した透明な中空樹脂粒子は白色を呈する。
【0005】
かかる中空樹脂粒子は種々の改良が成されており、例えば、特許文献7では、120℃以上の高温に晒すと中空樹脂粒子(中空微小球)が軟化することで白色印字が脱色(白色度が低下)するとして、中空樹脂粒子の耐熱性を向上させための方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−63157号公報
【特許文献2】特開2006−231660号公報
【特許文献3】米国特許第4,880,465号明細書
【特許文献4】特開2000−103995号公報
【特許文献5】特開2000−239585号公報
【特許文献6】特開2005−154568号公報
【特許文献7】特許第3639479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、壁、窓、布地、合成樹脂シート、ガラス板あるいは金属等の被着体に貼り合わせることが可能である、興趣性やカラー画像鑑賞性の高い新規な貼付用部材および該貼付用部材を貼り付けた記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、中空樹脂粒子が、外殻樹脂の軟化点以上の加熱によってあるいは溶剤の浸透によって光散乱効果が発揮されずに透明化することに着目し、本発明を成すに至った。
本発明は下記の通りである。
【0009】
(1) 基材と、前記基材上に記録された画像記録層とからなる貼付用部材であって、
前記画像記録層は、中空樹脂粒子を白色色材として含む白色インク組成物により記録された白色色材層と、プロセスカラーインク組成物により記録されたカラー色材層とを含んで構成されており、
前記白色色材層は、加熱されることにより、または、溶剤を浸透させることにより、透明化されることを特徴とする貼付用部材。
(2) 前記溶剤を含有する糊層を片側の面に備えたラミネートフィルムが前記画像記録層側から接着されると、
前記溶剤が前記白色色材層に含まれる中空樹脂粒子の内部空洞に浸透することで、前記白色色材層が透明化することを特徴とする、上記(1)に記載の貼付用部材。
(3) 前記白色色材層は、前記カラー色材層を挟むように両側に設けられることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の貼付用部材。
(4) 前記基材は前記画像記録層が設けられる画像形成面にインク受容層を有することを特徴とする、上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の貼付用部材。
(5) 前記基材における画像形成面および前記基材における画像形成面とは反対側面のいずれか一方が被着体との接着面であり、前記接着面は被着体と接着される際に接着剤が付着されることを特徴とする、上記(1)〜(4)の何れか一項に記載の貼付用部材。
(6) 前記基材における画像形成面とは反対側面が被着体との接着面であり、前記接着面には被着体と接着させるための接着層が設けられることを特徴とする、上記(1)〜(4)の何れか一項に記載の貼付用部材。
(7) 前記ラミネートフィルムの前記糊層が設けられた面と反対側の面には、被着体と接着させるための接着層が設けられることを特徴とする、上記(2)〜(4)の何れか一項に記載の貼付用部材。
(8) 上記(1)〜(7)の何れか一項に記載の貼付用部材と、
前記貼付用部材が貼り付けられる被着体と、
を備える記録物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、白色色材層を加熱あるいはラミネートにより透明化できる興趣性に優れた貼付用部材を提供することができる。例えば、該貼付用部材の画像記録層を模様や絵柄からなるカラー色材層とその両側を挟み込む白色色材層とで構成とすれば、ユーザーは白色色材層を加熱あるいはラミネートによって透明化するまで描かれたカラー画像を観測することができず、興趣性を煽られることとなる。また、カラー画像の周囲に白色色材層がはみ出して形成されている場合に、被着体の色と白色色材層の色が異なっていた場合、貼り付け後に、カラー画像の周囲に白色色材層が目立ってしまう。そこで、白色色材層を加熱あるいはラミネートによって透明化することで白色色材層を見えなくすることで、貼り付け後、カラー画像の周囲に白色色材層が見えなくなり、カラー画像鑑賞性が向上する。
本発明の貼付用部材は、インクジェット記録方法による簡便な手段で作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の貼付用部材の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の貼付用部材の白色色材層を溶剤により透明化する手段の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の貼付用部材を被着体に貼り付ける工程の一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明の貼付用部材を被着体に貼り付ける工程の他の一例を示す断面模式図である。
【図5】本発明の貼付用部材を被着体に貼り付ける工程の他の一例を示す断面模式図である。
【図6】本発明の貼付用部材を被着体に貼り付ける工程の他の一例を示す断面模式図である。
【図7】本発明の貼付用部材を被着体に貼り付ける工程の他の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔貼付用部材〕
(貼付用部材の構成)
以下、本発明の貼付用部材の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の貼付用部材の実施形態の一例を示す断面模式図である。
貼付用部材1は、基材2と、基材2上にカラー色材層3と白色色材層4とからなる画像記録層5を有する。画像記録層5は、基材2側からカラー色材層3と白色色材層4とがこの順に積層されてなる。即ち、カラー色材層3は白色色材層4に隠蔽されており、貼付用部材1の画像形成面側からはカラー色材層3を観測することができない。この白色色材層4は中空樹脂粒子を色材として含有しており、該白色色材層4は、加熱されることにより、または、溶剤を浸透させることにより透明化し、カラー色材層3を可視化する。
【0013】
白色色材層4を溶剤によって透明化する手段は、一例として、図2に示すように、溶剤を含む糊層11と支持部材12とから構成されるラミネートフィルム13を、糊層11側から貼付用部材1の画像記録層5に貼り合わせる態様が挙げられる。糊層11に含まれる溶剤は、ラミネート後に画像記録層5側に浸透し、中空樹脂粒子の内部空洞にまで達する。これにより中空樹脂粒子は光散乱が抑制されるため樹脂本来の透明性を発揮することとなり、白色色材層4は透明化される。また、画像記録層5の表面が支持部材12でラミネートされているため、溶剤は画像記録層5に一旦浸透すると蒸発せずに画像記録層5中に留まり、長期に亘って白色色材層4を透明な状態で維持することが可能である。
一方、中空樹脂粒子はアイロン等の加熱によっても透明化することができる。加熱によって中空樹脂粒子が軟化して内部空洞がつぶれ、光散乱が抑制されるためである。
【0014】
画像記録層5中の白色色材層4とカラー色材層3の配置は特に限定されることはなく、図1のように基材2−カラー色材層3−白色色材層4と配置しても良いし、また、白色色材層4でカラー色材層を挟み込むように、基材2−白色色材層4−カラー色材層3−白色色材層4と構成してもよい。特に後者の場合には、カラー色材層3は白色色材層4に挟まれることで両面から完全に隠蔽されている構造であるため、白色色材層4を透明化して初めてカラー画像を観測することができ、より興趣性に優れている。あるいは、画像記録層5中の白色色材層4とカラー色材層3を、基材2−白色色材層4−カラー色材層3と配置しても良い。基材2が透明である場合には、白色色材層4をカラー色材層3の背景面として有することで、貼り付け前のカラー色材層3の色確認を行い易いという利点がある。
【0015】
図1に示す貼付用部材1は、壁、窓、布地、合成樹脂シート、ガラス板あるいは金属等の被着体(不図示)に貼り付けられる際、基材2における画像記録層5が形成された画像形成面(接着面6)および基材2における画像形成面とは反対側面(接着面6’)の何れか一方を被着体との接着面とすることができる。また、図2に示すように貼付用部材1の白色色材層4をラミネートフィルム13で透明化している場合には、ラミネートフィルム13の糊層11が設けられた面と反対側の面(支持部材12側面;接着面7)、および基材2における画像形成面とは反対側面(接着面7’)の何れか一方を被着体との接着面とすることができる。但し、接着面6または7を接着面とする場合には、基材2は透過性である必要がある。また、図1において基材2がPET、PPのような高透過性の透明フィルムである場合には、接着面6で被着体と接着されることが好ましい。観測面に設けられた透明フィルムの光散乱効果によって、画像記録層5(可視化されたカラー色材層3)の画像美観・質感がより向上するためである。
【0016】
図1および図2に示す貼付用部材1の前記接着面には、被着体と接着される際に後述の接着剤が付着される。接着剤の付着は、接着剤を直接接着面に塗設する態様、あるいは被着体側に予め接着剤を塗設しておく態様のいずれであっても良い。
貼付用部材1を接着面6’、7、7’で被着体に貼り付ける場合には、予め基材2あるいはラミネートフィルム13の支持部材12に接着層が設けられていることが好ましい。
【0017】
図1および図2に示す貼付用部材1を被着体に接着させる時期は、白色色材層4を透明化する前、透明化と同時あるいは透明化した後、の何れの段階であってもよい。
【0018】
以下、本発明の貼付用部材1を構成する各成分について詳細に説明する。
【0019】
(白色インク組成物)
以下、白色色材層を形成するための白色インク組成物について説明する。
本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。かかる構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、白色インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0020】
また、本発明における白色インク組成物を、基材上に吐出させると、粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。粒子が内部に空気を含有することにより、粒子は屈折率の異なる樹脂層および空気層を形成し、入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができる。
【0021】
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
【0022】
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2〜1.0μmであり、より好ましくは0.4〜0.8μmである。外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度が不足する傾向にある。また、内径は、0.1〜0.8μm程度が適当である。
【0023】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0024】
上記中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5質量%未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0025】
上記中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0026】
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
【0028】
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0029】
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0030】
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0031】
本発明における白インク組成物は、中空樹脂粒子を定着させる樹脂を含むことが好ましい。係る樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))が挙げられる。
これらの定着樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0032】
本発明おける白インク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0033】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0034】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0035】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0036】
また、本発明における白インク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0037】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0038】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0039】
さらに、本発明における白インク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0040】
上記界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0041】
本発明おける白インク組成物は、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本発明おける白インク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0042】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0043】
上記多価アルコールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
【0044】
本発明における白インク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、インク組成物のpHを容易に調整することができる。
【0045】
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0046】
上記第三級アミンの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0047】
本発明における白インク組成物は、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0048】
さらに、本発明おける白インク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0049】
本発明おける白インク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0050】
(プロセスカラーインク組成物)
次に、カラー色材層を形成するためのプロセスカラーインク組成物について説明する。
本発明におけるプロセスカラーインク組成物は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)またはK(ブラック)の色材を含むものであればよく、白色以外を呈するカラーインク組成物である。本発明におけるプロセスカラーインク組成物は特に限定されることなく、市販のプロセスカラーインク組成物を使用することができる。
カラー色材としては、顔料系および染料系のいずれでも良く、例えば、特開2003−192963号、特開2005−23253号公報、特開平9−3380号公報、特開2004−51776号公報に記載されたカラーインク組成物を好適に使用することができる。
また、本発明における“カラー”とは特定の色領域ではなく一般的に色があると言われている領域全てを指す。つまり、“L座標上でL=100、a=0、b=0(理想的な白)以外の座標に位置する色”を示す。
本発明で用いられるプロセスカラーインク組成物は主溶媒として水を含むものであることが望ましい。
【0051】
(基材)
本発明における基材は、適度な可撓性を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば、塩ビあるいはPET等の透明なプラスチックフィルムを用いることができ、特にインク受容層をコーティングしたフィルムが好ましい。溶剤を含む糊層を備えたラミネートフィルムを貼着することで白色色材層の透明化を行なう場合には、中空樹脂粒子に浸透した溶剤の揮発を防止する観点から、PET(ポリエチレンテレフタレート)であることが望ましい。
【0052】
(画像記録方法)
基材に白色画像あるいはカラー画像を形成する画像形成手段は、下記で説明するインクジェット記録方式であることが好ましい。また、インクジェット記録方式以外にも種々のアナログ印刷、たとえばオフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などに適用することが可能である。
【0053】
本発明におけるインクジェット記録方式は、インクジェットヘッドを駆動させてインク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、上述の各種インク組成物を用いて画像を形成するものである。
【0054】
インク組成物を吐出する方法としては、以下に説明する方法が挙げられる。
第一の方法としては、静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式である。
【0055】
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
【0056】
第三の方法は圧電素子(ピエゾ素子)を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0057】
第四の方法は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱起泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0058】
以上のいずれの方法も本実施形態のインクジェット記録方式に使用することができるが、高速印刷対応の観点からは、インク組成物を吐出する方法が、非加熱方式であることが好ましい。即ち、上記第一の方法、第二の方法又は第三の方法を採用することが好ましい。
【0059】
(ラミネートフィルムによる白色色材層の透明化)
ラミネートフィルムは貼付用部材の画像記録層と貼り付けられる糊層部分に溶剤を含むものであれば特に限定される必要はなく、熱ラミネート用およびコールドラミネート用のいずれであっても良い。
一般的に熱ラミネート用のラミネートフィルムは、該糊層が熱可塑性樹脂で構成されており、加熱によって熱可塑性樹脂を軟化・溶融させて糊状にし、被着物に圧着させるものである。かかる熱可塑性樹脂としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、IO(アイオノマー)、EVA(エチレン酢酸ビニール共重合体)などが挙げられ、耐候性の観点からLDPE(低密度ポリエチレン)が好ましい。ラミネート温度は、80〜130℃が好ましく、100〜110℃の範囲がより好ましい。
一方、コールドラミネート用のラミネートフィルムは、該糊層がアクリレート等の加熱を要さずに常温で被着物に圧着可能な樹脂から形成されている。
【0060】
糊層に含まれる溶剤としては、酢酸エチルやトルエンが挙げられる。
【0061】
ラミネートフィルムを構成する支持部材は、適度な可撓性を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば、PP(ポリプロピレン)あるいはPET等の透明なプラスチックフィルムを用いることができる。支持部材は、中空樹脂粒子に浸透した溶剤の揮発を防止する観点から、PETであることが望ましい。
【0062】
貼付用部材にラミネートフィルムを貼着する手段としては、市販のラミネーターや、アイロン等が挙げられる。
本発明においては、熱ラミネート用のラミネートフィルムを用いることが好ましい。熱ラミネート用のラミネートフィルムの貼付用部材への貼着の際の加熱は、熱可塑性樹脂に含まれる溶剤を画像記録層へ拡散させる効果があり、白色色材層を優れた程度で透明化することができる。
【0063】
(加熱による白色色材層の透明化)
加熱によって白色色材層を透明化する場合には、画像記録層を中空樹脂粒子の軟化点以上で加熱することが好ましく、100〜200℃がより好ましく、120〜180℃がより好ましい。加熱温度が低すぎると中空樹脂粒子が軟化せずに透明化されず、加熱温度が高すぎると基材部分が劣化し、望ましくない。
白色色材層の透明化の際には加熱と同時に加圧することが好ましく、例えば、印刷物をホットプレス機にはめ込んで圧力と加熱を同時に行なう手段が挙げられる。また、アイロン等も使用可能である。
【0064】
(接着剤)
貼付用部材と被着体との接着は、接着の際に貼付用部材側あるいは被着体側の接着面に接着剤を付着させる態様、あるいは予め基材あるいはラミネートフィルムの被着体との接着面に接着層を設けておく態様のいずれであっても良い。
両態様においても接着剤あるいは接着層の種類は特に限定されることはないが、白色色材層を加熱により透明化する場合には、工程を簡略化する観点から、貼付用部材と被着体との接着は熱可塑性樹脂からなる接着剤あるいは接着層を選択し、白色色材層の透明化と被着体の接着とを同時に行なうことが好ましい。また、画像記録面を被着体に接着させる場合には、溶剤を含む熱可塑性樹脂を接着剤として使用することが好ましい。かかる構成とすることで、加熱圧着の際に、熱可塑性樹脂に含まれる溶剤が画像記録層へ拡散する効果があり、白色色材層を優れた程度で透明化することができる。
【0065】
〔記録物〕
本発明の記録物は、上記貼付用部材を、壁、窓、布地、合成樹脂シート、ガラス板あるいは金属等の被着体に接着させることによりなる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0067】
〔実施例1〕
(1)白色インク組成物の調製
まず、下記に示す組成に従って、白色中空樹脂粒子または金属化合物を色材として含む白色インク組成物を調製した。
(2)白色インク組成物の組成
・中空樹脂粒子・・・・・・・・・・・・・・・10質量%
(市販品「SX8782(D)」(JSR株式会社製)を使用。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。)
・ウレタン樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・5質量%
(「WBR−022U」(大成ファインケミカル社(製))を使用。)
・グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・・10質量%
・1,2−ヘキサンジオール・・・・・・・・・・3質量%
・トリエタノールアミン・・・・・・・・・・0.5質量%
・界面活性剤・・・・・・・・・・・・・・・0.5質量%
(「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を使用。BYK−348はポリシロキサン系界面活性剤である。)
・イオン交換水・・・・・・・・・・・・・・・・・・残量
【0068】
(インクジェット画像記録)
カラー画像および白色画像の形成は、市販のインクジェットプリンタ(「PX−5500」セイコーエプソン株式会社製)を用いて行なった。
カラーインク組成物にはインクセット(EPSON IC9CL3337 フォトブラック、マットブラック、グレー、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ)を用いた。白色インク組成物には上記構成の白色インク組成物を用い、インクジェットプリンタ(「PX−5500」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのライトグレーインク室に充填した。次いで、作製されたインクカートリッジをプリンタに装着し、記録ヘッドと記録媒体との相対的な同一の走査により記録媒体の同一領域へカラーインク組成物と白色インク組成物を付着させて印刷することにより画像の形成を行った。
【0069】
実施例1では、表面に膨潤式インクジェット受容層(受容層厚み:10μm)が形成されたPETフィルム(PET厚み:38μm)である基材22を記録媒体として使用した。基材22には、画像記録面とは反対側の面に、被着体28と貼り合せるためのアクリル系粘着剤で形成された接着層26(接着層厚み:22μm、常温接着可能)が設けられており、該接着層26は、使用時に剥離されるセパレータ27(PETフィルム:75μm)によって印刷時は保護されている。
【0070】
実施例1では、上記の印刷方法で白色インク組成物およびカラーインク組成物それぞれduty100%でベタ印刷することによって、基材22のインクジェット受容層にカラー色材層23と白色色材層24とをこの順に記録し、図3に示す貼付用部材20を作成した。
尚、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
【0071】
そして、この貼付用部材20を、糊層11aを備えたラミネートフィルム13aを加熱貼着することによって透明化した後、被着体28に接着した(図3(a)参照)。実施例1で使用するラミネートフィルム13aは、PETフィルム(厚さ:20μm)を支持部材12とし、貼付用部材20と貼り合せるためのLDPE(低密度ポリエチレン(熱可塑性樹脂))からなる糊層11a(糊層厚さ:30μm)を備えた熱ラミネート用フィルムである。支持部材12と糊層11aとの間には支持部材12への形状転写を防止するアンカーコート層14(厚さ:10μm)が設けられている。
【0072】
実施例1では、まずアイロン(100℃)を用いてラミネートフィルム13aを貼付用部材20に熱圧着させて接着し、その後、セパレータ27を剥離して被着体28である市販のT−シャツに圧着した。
この結果、貼付用部材20は白色色材層24が透明化され、カラー色材層23による画像を有するT−シャツを形成することができた。実施例1の方法によれば、加熱によって中空樹脂粒子が軟化することによって透明化されるのと同時に、糊層11aに含まれる溶剤が加熱によってインク受容層中に効率よく拡散されるため、透明化がより促進され、白色色材層を優れた程度で透明化することができた。
【0073】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で作製した貼付用部材20を、ラミネートフィルム13bによって貼り付けて透明化した後、被着体28に接着した(図3(b)参照)。実施例2で使用するラミネートフィルム13bは、加熱せずに常温で貼付用部材20に貼り付けることができるコールドラミネート用フィルムである。ラミネートフィルム13bは、PETフィルム(厚さ:30μm)を支持部材12とし、貼付用部材20と貼り合せるためのアクリル系粘着剤からなる糊層11b(糊層厚さ:40μm)と、接着時に剥離されるまで糊層11bを保護するセーパレータ15(厚み:150μm)とを備えた構成である。市販のラミネーターを用いてラミネートフィルム13bを貼り付け用部材20に圧着させ、その後、該貼付用部材20を被着体28であるT−シャツに圧着した。
この結果、貼付用部材20は白色色材層24が透明化され、カラー色材層23による画像を有するT−シャツを形成することができた。また、溶剤を含有する糊層11bが、PETからなる基材22と支持部材12との間に挟まれる構成であるため、長期に亘って溶剤が揮発されずに透明化された状態を維持することができた。
【0074】
(実施例3)
実施例3では、表面に膨潤式インクジェット受容層(受容層厚み:10μm)が形成されたPETフィルム(PET厚み:38μm)である基材32を記録媒体として使用した。基材32には、画像記録面とは反対側の面に、被着体38と貼り合せるためのLDPE(低密度ポリエチレン(熱可塑性樹脂))からなる接着層36(接着層厚み:30μm)が設けられている。また、基材32と接着層36との間には、該基材32への形状転写を防止するアンカーコート層37(厚さ:10μm)が設けられている。
実施例1と同様の印刷方法により、上記基材32のインクジェット受容層にカラー色材層33と白色色材層34をこの順に記録し、図4に示す貼付用部材30を作成した。
実施例3では、被着体38である市販のT−シャツに上記貼付用部材30を当接させ、この上からアイロン(100℃)を押し当てて熱圧着することにより、中空樹脂粒子の透明化と被着体38への接着を同時に行なった。
この結果、貼付用部材30は白色色材層34が透明化され、カラー色材層33による画像を有するT−シャツを形成することができた。
【0075】
(実施例4)
実施例3で作製した貼付用部材30と、実施例2で作製したコールドラミネート用のラミネートフィルム13bとを用い、被着体48にカラー色材層33による画像を形成した(図5参照)。
まず、上記貼付用部材30に、セパレータ15を剥離したラミネートフィルム13bを市販のラミネーターを用いて圧着し、次いで、被着体48である市販のT−シャツに上記貼付用部材30を当接させ、この上からアイロン(100℃)を押し当てて熱圧着することにより熱可塑性樹脂からなる接着層36と被着体48とを接着させた。
この結果、貼付用部材30は白色色材層34が透明化され、カラー色材層33による画像を有するT−シャツを形成することができた。実施例4の方法によれば、加熱によって中空樹脂粒子が軟化することによって透明化されるのと同時に、糊層11bに含まれる溶剤が加熱によってインク受容層中に効率よく拡散されるため、透明化がより促進され、白色色材層を優れた程度で透明化することができた。
【0076】
(実施例5)
実施例5では、表面に膨潤式インクジェット受容層(受容層厚み:10μm)が形成されたPETフィルム(PET厚み:38μm)である基材52を記録媒体として使用した。
実施例1と同様の印刷方法により、上記基材52のインクジェット受容層に白色色材層54とカラー色材層53をこの順に記録し、図6に示す貼付用部材50を作成した。
実施例5では、カラー色材層53の表面に低密度ポリエチレン(熱可塑性樹脂)からなる接着剤56(接着層厚み:30μm)を塗設し、被着体58である市販のT−シャツがこの接着剤56の塗設面と当接するように上記貼付用部材50をあて、この上からアイロン(100℃)を押し当てて熱圧着することにより、中空樹脂粒子の透明化と被着体58への接着を同時に行なった。
この結果、貼付用部材50は白色色材層54が透明化され、カラー色材層53による画像を有するT−シャツを形成することができた。また、熱可塑性樹脂に含まれる溶剤が白色画像層へ拡散することで、透明化がより促進され、白色色材層を優れた程度で透明化することができた。
【0077】
(実施例6)
実施例6では、表面に膨潤式インクジェット受容層(受容層厚み:10μm)が形成されたPETフィルム(PET厚み:38μm)である基材62を記録媒体として使用した。実施例1と同様の印刷方法により、上記基材62のインクジェット受容層にカラー色材層63と白色色材層64をこの順に記録し、図7に示す貼付用部材60を作成した。
実施例6では、コールドラミネート用フィルム13b’を使用し、かかるフィルム13b’によって、加熱せずに常温で中空樹脂粒子の透明化と被着体68への圧着を同時に行なった(図7参照)。
コールドラミネート用フィルム13b’は、PETフィルム(厚さ:30μm)を支持部材12とし、その両面に、貼付用部材60と貼り合せるためのアクリル系粘着剤からなる糊層11b(糊層厚さ:40μm)と、被着体68である市販のT−シャツと貼り合せるためのアクリル系粘着剤からなる糊層11b’(糊層厚さ:40μm)とを有する。さらに糊層11b、11b’は、その表面に、接着時に剥離されるまで該糊層を保護するセパレータ15、15’(厚み:150μm)をそれぞれ備える。
この結果、貼付用部材60は白色色材層64が透明化され、カラー色材層63による画像を有するT−シャツを形成することができた。また、PETからなる基材62と支持部材12との間に溶剤を含有する糊層11bが挟まれる構成となるため、長期に亘って溶剤が揮発されずに透明化された状態を維持することができた。
【符号の説明】
【0078】
1、20,30,50,60…貼付用部材、 2,22,32,52,62…基材、 3,23,33,53,63…カラー色材層、 4,24,34,54,64…白色色材層、 5,25,35,55,65…画像記録層、 11,11a,11b,11b’…糊層、 12…支持部材、 13,13a,13b,13b’…ラミネートフィルム、 6,6’,7,7’…接着面、 26,36…接着層、 15,15’27…セパレータ、 28,38,48,58,68…被着体、 14,37…アンカーコート層、 56…接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に記録された画像記録層とからなる貼付用部材であって、
前記画像記録層は、中空樹脂粒子を白色色材として含む白色インク組成物により記録された白色色材層と、プロセスカラーインク組成物により記録されたカラー色材層とを含んで構成されており、
前記白色色材層は、加熱されることにより、または、溶剤を浸透させることにより、透明化されることを特徴とする貼付用部材。
【請求項2】
前記溶剤を含有する糊層を片側の面に備えたラミネートフィルムが前記画像記録層側から接着されると、
前記溶剤が前記白色色材層に含まれる中空樹脂粒子の内部空洞に浸透することで、前記白色色材層が透明化することを特徴とする、請求項1に記載の貼付用部材。
【請求項3】
前記白色色材層は、前記カラー色材層を挟むように両側に設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の貼付用部材。
【請求項4】
前記基材は前記画像記録層が設けられる画像形成面にインク受容層を有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の貼付用部材。
【請求項5】
前記基材における画像形成面および前記基材における画像形成面とは反対側面のいずれか一方が被着体との接着面であり、前記接着面は被着体と接着される際に接着剤が付着されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の貼付用部材。
【請求項6】
前記基材における画像形成面とは反対側面が被着体との接着面であり、前記接着面には被着体と接着させるための接着層が設けられることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の貼付用部材。
【請求項7】
前記ラミネートフィルムの前記糊層が設けられた面と反対側の面には、被着体と接着させるための接着層が設けられることを特徴とする、請求項2〜4の何れか一項に記載の貼付用部材。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の貼付用部材と、
前記貼付用部材が貼り付けられる被着体と、
を備える記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−170064(P2011−170064A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33240(P2010−33240)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】