説明

質量分析計

本発明は、電子(21)を放出するための陰極装置(6)と、中性粒子(20)の供給用の入口(14)と接続しており、中性粒子(20)のイオン化のために陰極装置(6)と作動接続している反応帯(3)と、反応帯(3)の作動領域と連通するように配置されているイオン抽出構造(4)と、検出システム(12)へイオン(22)を案内するための手段と、質量分析装置を真空にするための手段とを含む質量分析装置に関する。ここでは陰極装置(6)はエミッタ面(7)を有する電解放出陰極を含み、このエミッタ面(7)とわずかに間隔をあけて電子の抽出のための抽出グリッド(9)が配置されており、これはエミッタ面(7)を実質的に覆っている。エミッタ面(7)は、管状の構造が構成されるように、少なくとも部分的に中空部(13)を取り囲んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析による測定方法は今日では様々な形で、工程技術、技術開発および製品開発、医学ならびに学術的研究の分野において使用されている。典型的な利用分野としては、さまざまな産業分野での部材の気密性検査、プロセスガスの組成および純度の定量的測定(ガス分圧測定)、表面反応に関する複合的分析、化学および生化学工程および過程の工程追跡、たとえば半導体技術におけるプラズマ加工での真空技術の分野における分析等が挙げられる。
【0003】
この目的のために、粒子の物理的質量分離のための多様な方法が開発され、実用化のため対応する測定機器が作られた。これらの測定機器のすべてに共通することは、作動時に真空を要することである。分析対象の中性粒子はシステムにおいて真空に入れられ、反応帯でイオン化される。この部分は通常、イオン源と呼ばれる。イオン化された粒子は続いて、この領域からイオン光学装置により導出され、質量分離用のシステムへもたらされる。質量分離に関しては様々な方法が存在する。たとえば1つの方法では、イオンが磁界により進行方向を曲げられ、その際粒子の質量に応じて異なる大きさの径で曲がり検出可能である。このようなシステムは、磁場型質量分析計として知られている。また、これとは別の広く知られるシステムでは、質量フィルタはイオンが入れられる4つの電極ロッドを備える静電気系からなる。電極システムには高周波交流電場があり、これによりイオンが異なる振幅および軌道の振動を行い、これが検出および分離されることが可能である。専門家の間では、このシステムは四重極質量分析計として公知である。この質量分析計は、特に高感度であること、測定領域の広さ、測定の反復率の高さ、小型さ、任意の位置に取り付け可能であること、主要な真空技術における応用時の互換性や、操作性の良さ等の様々な長所を有する。
【0004】
これらの公知の質量分析計のイオン源は通常、中性粒子をイオン化する電子の生成のために、加熱されたフィラメント、すなわち熱陰極を使用している。たとえば四重極質量分析計の質は、その構想からしてすでに良好なものである。しかし、使用される熱陰極は様々な短所を有し、これが質量分析計自体に悪影響を与えてしまう。1つの問題は、熱陰極によって常にフィラメントの材料も蒸発してしまい、これにより測定対象の粒子に望ましくない粒子が重なり、いわゆる信号ノイズが高まることによって測定精度に影響が及んでしまう、あるいは測定信号が歪められてしまうことになることである。
【0005】
別の問題としては、高温のフィラメントの領域内またはその付近で、測定されるべき粒子との化学反応が起こり、これにより測定に誤差が生じ、また分解能の低下の可能性があることである。相互作用する光、すなわち光子の放射もここでは短所となる。さらに、高温の構造によって温度の変動が増加し、これによってドリフト挙動が増加し、測定結果の再現性が低下してしまう。また、フィラメントは振動に弱く、好ましくない信号変化(マイクロフォン効果)が発生してしまう可能性、または衝撃によって破損してしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術の短所を是正する、ないしは低減することである。特に、信号対ノイズ比を向上させて、測定するガスの妨げのないスペクトルを設けて分解能および
感度の向上を可能にする質量分析装置を、特に四重極質量分析計に関して提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴に係る質量分析計により解決される。従属請求項は本発明の好適な実施形態に関する。
【0008】
本発明に係り、質量分析計は、電子の放出のための陰極装置と、中性粒子のイオン化のために陰極装置と作動接続している中性粒子の導入のための入口と接続する反応帯と、反応帯の作動領域と連通して配置されているイオン抽出構造と、質量分析装置内の検出システムへイオンを案内するための手段と、質量分析装置の排気のための手段とを有する。その際、陰極装置は、エミッタ面を有する電界放出陰極を含み、このエミッタ面とわずかな間隔をあけて、電子の抽出用の抽出グリッドがエミッタ面を実質的に覆うように配置されている。エミッタ面はこの時、少なくとも部分的に中空部を包囲し、筒状の構造が構成されるようになっている。
【0009】
質量分析装置内における電界放出陰極装置の本発明に係る構成は、上述の問題を回避しつつ、イオン源における光子の放出を行わず低温作動を可能にし、これにより質量分析計の特性の大幅な向上につながる。また、このような陰極およびイオン源は組立が容易であり、その他の部分にも、また誤差補償のための評価電子装置においても必要な措置が少なくすむ。これによって、測定システム全体の製造がより経済的になり、測定結果ならびにスペクトルの評価可能性が向上する。
【0010】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて概略的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】中性粒子を側方から径方向にイオン源へ供給する、本発明に係る質量分析装置の長手方向軸に沿った断面の概略図である。
【図2】中性粒子を軸方向にイオン源へ供給する、本発明に係る別の好適な質量分析装置の長手方向軸に沿った断面図である。
【図3】図2の本発明に係る質量分析装置の長手方向軸に沿った断面における、陰極装置の詳細図である。
【図4】電子を径方向にイオン源に供給するための垂直に配置される陰極装置を備える、本発明に係る別の好適な質量分析装置の長手方向軸に沿った断面図である。
【図5】電子を径方向にイオン源に供給するためのイオン源と同軸に配置される陰極装置を備える、本発明に係る別の好適の質量分析装置の長手方向軸に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る質量分析装置は実質的に、イオン源6、4、5と、イオンの抽出および案内のためのイオン光学装置4、1、10、11と、イオン22と、分析システム12とを含み、これは図1のロッドシステム12を分析システムとして備える四重極質量分析計の好適な実施例の断面図において示されている。
【0013】
イオン源は、電界エミッタとして平面状の電界放出陰極として構成されているエミッタ面7を含む陰極装置6を含み、この平面7からわずかに間隔をあけて抽出グリッド9が配置されている。これは電子21の生成および抽出のために電源24によりエミッタ面7に対して電圧Vに設定されており、これは図3で詳細に示されている。抽出グリッド9における抽出電圧Vは、電子21の抽出のため70Vから2000Vの間の範囲の正値に設定される。全体の寸法に関して特に有利であるのは、70Vから200Vの間の範囲の
電圧である。抽出グリッド9は開口部を有する金属板、開口部を有するエッチング構造、または好適には可能な限り電子の透過係数が大きいワイヤメッシュからなることが可能である。抽出グリッド9は可能な限り均等な間隔でエミッタ面7の上方に配置されるべきである。このためには、たとえば不伝導性のエッチングされた支持部材が設けられることが可能であるが、好適には所望の所定間隔が安定的に維持可能であるように、面全体にわたって適切に分散して配置されている不伝導性の間隔保持部材8が設けられる。
【0014】
抽出グリッド9とエミッタ面7との間の距離は、1.0μmから2.0mmの範囲の値に設定されるべきであり、好適には5.0μmから200μmの範囲の値であり、これにより構成を簡単にすることができる。選択された値は、エミッタ面全体にわたって実質的に同一に設定されなくてはならない。
【0015】
エミッタ面7は、湾曲した面として構成されており、管状の構造が生じるように少なくとも部分的に中空部13を包囲する。これは領域別の部材に分割される、つまり分断されていることも可能である。その場合はエミッタ面7のみが層として分割されキャリア部は分割されていない、あるいはキャリア部も分割されていることも可能である。しかし好適には実質的に分割されていない一貫した面であり、管構造の少なくとも壁部では中空部13が閉じられていることが好ましい。管構造は好適には実質的に円筒状に構成されている。これにより構造が簡易になり、より好ましい信号最適化が可能になる。
【0016】
エミッタ面7の大きさは、0.5cmから80cmの範囲内にあるものとし、1.0cmから50cmの範囲が望ましい。設けられた中空部13の直径は0.5cmから8.0cmの範囲内にあり、0.5cmから6.0cmの範囲が望ましい。中空部13の軸方向長さは、2.0から8.0cmの範囲にある。
【0017】
エミッタ面7はエミッタ材料からなるか、またはこの材料のコーティングからなり、その際この材料は、炭素、金属または金属混合物、半導体、炭化物またはこれらの材料の混合物のいずれか1つを少なくとも含む。好適には金属、特にモリブデンおよび/またはタンタルが望ましい。特に望ましいのは、耐食性を有する鋼材である。これらの金属の混合物を使用することも可能である。エミッタ面7が薄い層としてキャリアの壁部2に堆積される場合は、化学気相堆積(CVD)および物理気相成長法(PVD)のような真空プロセスが使用されることが好ましい。
【0018】
エミッタ面7の特に有利な構成は、これがキャリアの壁部2の材料からなり、このようにして構成されたハウジング壁部2の表面を少なくとも部分的に被覆する、しかし好適には可能な限り中空部13の囲む壁部2の面全体に渡っているような構成である。この時ハウジング壁部2は上述の金属類の1つから、または金属合金、好適には耐食性の鋼材からなる。壁部2は、放出材料からなるスリーブ状の部材により覆われることも可能である。ハウジング壁部2およびエミッタ面7が同じ材料からなる場合は、構造が容易であるとともに実現性が向上する。その際ハウジング壁部は直接、真空ハウジングとして構成されていることが可能であり、これによりさらなる簡易化が達成される。また、ハウジング壁部2、またこれによりエミッタ面7が、図3に示されるように、地電位に置かれる。電子エミッタないしはエミッタ面7は管壁エミッタとして構成されている。
【0019】
上述のコーティングまたはハウジング壁部2の材料には、小さいグリッド抽出電圧Vで十分に電子21を放出することが可能であるような電界放出特性を有する適切なエミッタ面7が構成されるように表面粗化が行われなくてはならない。この粗化加工は、好適にはプラズマエッチングのようなエッチングのように機械的に、または化学エッチングによって行うことが可能である。これによって、簡単な方法で不規則に分散される凸部が多数設けられ、これらは縁の鋭い、および/または尖った状態に構成されており、ナノ領域の
寸法を有することにより電界強度が低い場合にも電子の電界放出が可能である。これらの凸部は、中央の基本面に対して10nmから1000nmの間の範囲の高さ、好適には10nmから100nmの範囲の高さを有する。
【0020】
スピントマイクロチップのような公知の電界エミッタが、たとえばアレー状の均等に分配された構造に構成される。これは、数回にわたる複雑な材料の除去および塗布作業により行われ、これには時間のかかる何段階にも渡る構造化プロセスが必要である。こうしたプロセスは、たとえば小型の管状の部品の内面では不可能なように、あらゆる任意の表面に行うことは不可能である。
【0021】
これに対して本発明では、対象の表面は簡単に粗化される。本発明では1つのステップで、所望の電界放出を可能にする縁の鋭い、または尖った部分が所望の通り構成される。表面を機械加工する場合には、これはたとえば研削工程により行われる。好適な加工であるエッチングの場合には、これは基材に内在する粒状構造により設けられる。これにより放出端部は確率的に分布している。
【0022】
このようにして陰極装置6により生成され加速される電子21は、反応帯3内で中性粒子20と衝突し、ここでイオン化される。したがって反応帯3は中性粒子20の供給用の入口14と接続している。
【0023】
図1に示される本発明の一実施形態では、陰極装置6の中空部13に電子抽出レンズ5が接続しており、これが電子21を質量分析装置の軸方向でこの中空部13から抽出し、反応帯3へ案内し、そこで電子との衝突により中性粒子21がイオン化される。電子抽出レンズ5に対向するように軸方向に離間してイオン抽出レンズ4が配置されている。これらの両レンズ4、5は、反応室3を包囲する。ここで図示される構造では、両抽出レンズは同じ電位にあることが可能であり、したがって反応帯3を取り囲む壁部と共に一種のハウジングを形成し、その壁部には測定対照の中性粒子20が通るための開口部14が設けられている。イオン抽出レンズ4はレンズ開口部を含み、これによりこの後に接続する電気光学要素により電界への侵入が行われて、イオンが反応帯3のイオン化領域から軸方向へ抽出される。
【0024】
この構成では、中性粒子20は軸に対して径方向へ、反応室3に対して側方に入口14を通りこの反応室3へ導入される。抽出されたイオン22はイオン光学装置4、1により集束装置10、11へ案内され、続いて分析システム12へ案内される。好適な四重極質量分析計では、たとえばイオン光学装置は抽出レンズ4と、ここでは地電位のベースプレートとして示されるさらにもう1つのレンズ1を含み、これに続く集束装置は集束レンズ10と入射開口部11とを含み、検出システムは4重のロッド構造として備えられている。図1には、陰極装置6の中空部13から隔離された反応室3および中性粒子20の側方の供給部が示されている。
【0025】
さらに構造全体は、ポンプによる真空システムへの取り付けおよび/または独自のポンプを設置する等によって作動時に真空にされることか可能であるように構成されている。
【0026】
本発明の別の好適な実施形態が図2に、またその詳細が図3に示される。ここでも同様に、図面は四重極質量分析計における好適な構成を概略的に示している。電界エミッタのエミッタ面7は、反応帯3が中空部13内にあり、そこでイオン化が行われるように管壁部に配置されている。したがってイオン化室は電子源ないしは陰極装置6内部にある。集束装置5を省く以外にも、個別のイオン化室が必要でなくなるため、より一層簡単な構造となる。それでもなお、抽出グリッド9はエミッタ面7ないしは壁部2に対して正電位を有し、エミッタ面7は地電位Mに好適に設定されているため必要な電位比は実質的に維持
される。エミッタ面7はこれにより、グリッド9と共に電子源を形成する。抽出グリッド9における電圧Vは、70Vから2000Vの範囲の値を有し、これはエミッタ面7に選択された材料および抽出グリッド9のエミッタ面7からの距離に応じて異なる。陰極装置のこの構成では十分な電子21が生成可能であるため、70Vから200Vの範囲の値が特に適している。これによりシステムをさらに簡易化することが可能になる。イオン抽出レンズ4は端面が中空部13ないしは反応帯3へ向けられており、最も簡単な場合にはレンズの開口部1つのみが設けられる。エミッタ面7ないしは壁部2に対向する電源25により負電圧Vをかけることにより、イオンは軸方向に中空部13から抽出され、検出システム12へ、そしてこれにより質量分析装置におけるイオン検出用の質量フィルタ構造へ移動する。抽出電圧Vの値が大きい場合はわずかな正電圧Vも可能であるが、これはこの値がVより明らかに小さい場合に限る。
【0027】
測定対象の中性粒子20は、入口14を介して管形状の陰極装置の中空部13へ入れられる。この開口部は、管状の中空部13に対して端面に、イオン抽出レンズ4に対向して配置されている。イオン抽出レンズ4を有する管状の陰極装置6は、好適には軸方向、つまり四重極質量計装置の長手方向軸に沿って配置されている。抽出されたイオン22の移動方向25は、ここでは長手方向軸に沿って分析システム12の方向へ向かう。
【0028】
図3ではたとえば薄板状のイオン抽出レンズ4を備える好適な構造の詳細が示されており、これはイオン抽出のために中央にレンズ開口部として穴を有し、壁部2と真空密封状に接続されていない。質量分析装置のその他の部分はここでは電子源またはイオン源により真空にされ、これにより構成が真空技術的な面で簡易化される。
【0029】
本発明に係る別の好適な構造の長手方向軸に沿った断面が図4に示される。ここでは陰極装置6は質量分析計の長手方向軸に対して垂直に、すなわち図3に示されるのと同様に閉じられた室5を形成するイオン源の側方に配置されており、その際側方の室壁部は陰極装置6へ開口部を有し、電子抽出レンズ5を形成する。上述のように、電子抽出レンズ5自体は室状に構成されており、これにより中性粒子20のイオン化用の反応帯3を包囲している。さらに、この室の壁部には分析対象の中性粒子20を取り込むための1つまたは複数の開口部14がある。この室3は軸方向には、生成されたイオンを質量分析計の分析システムへ抽出するためのイオン抽出レンズ4で終端している。
【0030】
図5には別の好適な実施形態が示されており、ここでは管状の陰極装置6が質量分析計および図4に関して先に述べたように室状に構成される電子抽出レンズ5の長手方向軸と同軸に配置されている。この時、陰極装置6は少なくとも部分的に反応帯3を備える室を取り囲み、これにより室の壁部、すなわち抽出レンズ5の周辺で選択的に1つの、または好適には2つまたはそれ以上の抽出開口部を電子21用に設けることが可能である。中性粒子20は図4に示される構造と同様に、少なくとも1つの開口部14により室壁部へ導入される。
【0031】
図4および5に基づく電子21を反応帯3へ径方向に入射する構造によって、測定すべきイオンと、同様に分析システムに達してしまい測定の質を低下させてしまう恐れのあるそれ以外の望ましくない粒子との間の分離が、軸方向の構造の場合に比べて容易になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子(21)を放出するための陰極装置(6)と、
中性粒子(20)の供給用の入口(14)と接続しているとともに、中性粒子(20)のイオン化のために前記陰極装置(6)と作動可能に接続している反応帯(3)と、
前記反応帯(3)の作動領域と連通するよう配置されているイオン抽出装置(4)と、
質量分析装置内の検出システム(12)へイオン(22)を案内するための手段(1、10、11)と、
前記質量分析装置を真空にするための手段と、
を備える質量分析装置において、
前記陰極装置(6)がエミッタ面(7)を備える電界放出陰極として構成されており、このエミッタ面(7)とわずかに間隔をあけて電子(21)の抽出のための抽出グリッド(9)が配置されており、これは実質的に前記エミッタ面(7)を実質的に覆っており、前記エミッタ面(7)が少なくとも部分的に中空部(13)を取り囲み、これにより管状の構造が形成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記陰極装置(6)の前記中空部(13)に電子抽出レンズ(5)が接続し、前記質量分析装置の軸方向にイオン抽出レンズ(4)が接続し、室を形成するこれら両レンズの間に前記反応帯(3)があり、中性粒子(20)用の前記入口(14)が前記反応帯(3)の空間の周囲に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記反応帯(3)が、前記中空部(13)の一方の側はイオン抽出レンズ(4)により境界が設けられており他方の側には中性粒子用の前記入口(14)が配置されているように前記陰極装置(6)の前記中空部(13)内に構成されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記反応帯(3)が、前記質量分析装置の長手方向軸線にあり、軸線に対して径方向に開口部を有し前記抽出レンズ(5)を形成する壁部により包囲され、前記陰極装置(6)の前記中空部(13)と連通しており、前記陰極装置(6)が、電子を反応帯(3)へ径方向に供給するために反応帯(3)の軸線に対して垂直に配置されており、中性粒子(20)を取り込むために前記壁部内に少なくとも1つの入口(14)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記反応帯(3)が、前記質量分析装置の長手方向軸線にあり、軸線に対して径方向に少なくとも1つの開口部を有し前記抽出レンズ(5)を形成する壁部により包囲されており、これが室状に構成されて前記反応帯(3)を取り囲み、前記陰極装置(6)の前記中空部(13)と連通し、室状に構成された前記電子抽出レンズ(5)の前記壁部が少なくとも部分的に前記陰極装置(6)により同軸に離間して包囲されて、これによりこの間に前記中空部(13)が構成され、中性粒子(20)を取り込むために前記壁部に少なくとも1つの入口(14)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項6】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記エミッタ面(7)の大きさが0.5cmから80cmの間の範囲、好適には1.0cmから50cmの間の範囲内にあることを特徴とする装置。
【請求項7】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記エミッタ面(7)が、少なくとも湾曲した部分要素を形成し、好適には実質的に分割されていない閉じられた管状のエミッタ面(7)を形成することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、前記エミッタ面(7)が実質的に円筒形に構成されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記中空部(13)の直径が0.5cmから8.0cmの間の範囲、好適には0.5cmから6.0cmの間の範囲にあり、その長さが軸方向で2.0cmから8.0cmの間であることを特徴とする装置。
【請求項10】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記エミッタ面(7)が少なくとも表面に、炭素、金属または金属混合物、半導体、炭化物またはこれらの材料の混合物の少なくともいずれか1つを含む層を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記エミッタ面(7)が実質的にモリブデンおよび/またはタンタルから、好適には耐食性を有する鋼材からなることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の装置において、前記エミッタ面(7)が、CVDまたはPVDにより形成される、ハウジング壁部(2)に析出される薄い層であることを特徴とする装置。
【請求項13】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記エミッタ面(7)が、ハウジング壁部(2)自体の表面の少なくとも一部からなり、前記ハウジング壁部(2)が金属または金属合金、好適には耐食性を有する鋼材からなることを特徴とする装置。
【請求項14】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記エミッタ面(7)が、機械的に、好適にはプラズマエッチングによるエッチングまたは化学的エッチングにより粗くされた面であることを特徴とする装置。
【請求項15】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記抽出グリッド(9)と前記エミッタ面(7)との間の距離が1.0μmと2mmの間の範囲、特に5.0μmから200μmの間の範囲にあることを特徴とする装置。
【請求項16】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記抽出グリッド(9)が、透過係数の高いグリッド構造を有し、好適にはワイヤメッシュから構成されていることを特徴とする装置。
【請求項17】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記抽出グリッド(9)が、前記エミッタ面(7)に対して、不伝導性の間隔保持部材(8)により所定の間隔に規定されて面の上方に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記抽出グリッド(9)が前記エミッタ面(7)に対して正電圧(V)でバイアスが印加されており、この電圧が70Vから2000Vの間の範囲、好適には70Vから200Vの間の範囲にあることを特徴とする装置。
【請求項19】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記反応帯(3)が前記陰極装置(6)の前記中空部(13)内にあることを特徴とする装置。
【請求項20】
先の請求項のいずれか一項に記載の装置において、前記分析システム(12)が、四重極質量分析計の一部であるロッドシステムを含むことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−501986(P2010−501986A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525884(P2009−525884)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000371
【国際公開番号】WO2008/025174
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(502079409)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】