説明

赤外線センサおよびその製造方法

【課題】高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部3がベース基板1の一表面側において断熱部2を介してベース基板1に支持された赤外線センサであって、断熱部2は、温度検知部3を保持した保持部2aと、保持部2aとベース基板1とを連結した2つ脚部2bとを有し、脚部2bは、電気絶縁性を有する多孔質材料(多孔質シリカ)からなる第2の多孔質材料層21bと、第2の多孔質材料層21b上に形成され温度検知部3に電気的に接続された配線層4と、第2の多孔質材料層21b下に形成され第2の多孔質材料層21bの下面を保護する絶縁材料(SiO)からなる第2の保護層22bとで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロマシニング技術などを利用して形成される熱型の赤外線センサおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱型の赤外線センサとして、温度検知部がベース基板の一表面から離間して配置され、温度検知部が当該温度検知部とベース基板とを熱絶縁する断熱部を介してベース基板に支持された赤外線センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、断熱部が、ベース基板の上記一表面から離間して配置されベース基板側とは反対側に温度検知部が積層される保持部と、保持部の側縁から延長された2つの脚部とで構成されており、保持部とベース基板の上記一表面との間に間隙が形成され、各脚部に、温度検知部に電気的に接続された配線層が形成されている。ここにおいて、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、断熱部が、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜をパターニングすることにより形成されている。また、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、赤外線を吸収する赤外線吸収層が温度検知部に積層されている。
【0004】
なお、上記特許文献1には、赤外線吸収層と温度検知部とを備えたセンサ部を2次元アレイ状(マトリクス状)に配列し各センサ部が画素を構成するようにした赤外線センサ(赤外線画像センサ)も開示されている。
【0005】
また、従来から、マイクロマシニング技術を利用して形成されシリコン基板からなるベース基板から分離された断熱部を有するセンサとして、断熱部の脚部を、多孔質シリコンからなる多孔質材料層と、多孔質材料層上のシリコン酸化膜からなる第1の絶縁層と、第1の絶縁層上の配線層と、配線層を覆うシリコン酸化膜からなる第2の絶縁層とで構成してなるセンサが提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−97765号公報
【特許文献2】特表2005−502480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、赤外線吸収による温度検知部の温度変化を大きくすることで高感度化を図るために、断熱部における各脚部の全長を長くして各脚部の熱抵抗を大きくすることや、赤外線吸収層の厚さ寸法を大きくすることで赤外線の吸収効率を高めることが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、温度検知部のサイズを変更することなしに各脚部の全長を長くするように設計すると、センサ全体のサイズが大きくなってしまうとともに脚部の熱容量が大きくなって応答速度が低下してしまい、一方、赤外線吸収層の厚さ寸法を大きくすると赤外線吸収層の熱容量が大きくなって応答速度が低下してしまう。
【0008】
これに対して、上記特許文献2に開示されたセンサのように、脚部の一部を多孔質シリコンからなる多孔質材料層により構成する技術を適用することで脚部の熱抵抗を高めることが考えられる。しかしながら、上記特許文献2に記載の技術では、多孔質シリコンからなる多孔質材料層と配線層との間にシリコン酸化膜からなる第1の絶縁層を介在させる必要があり、当該第1の絶縁層に起因して脚部の熱抵抗が小さくなるとともに熱容量が大きくなってしまう。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部がベース基板の一表面側において断熱部を介してベース基板に支持された赤外線センサであって、断熱部は、温度検知部を保持した保持部と、保持部とベース基板とを連結した脚部とを有し、脚部は、電気絶縁性を有する多孔質材料からなる多孔質材料層と、多孔質材料層上に形成され温度検知部に電気的に接続された配線層と、多孔質材料層と配線層との少なくとも一方を保護する保護層とからなることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、脚部が、電気絶縁性を有する多孔質材料からなる多孔質材料層と、多孔質材料層上に形成され温度検知部に電気的に接続された配線層と、多孔質材料層と配線層との少なくとも一方を保護する保護層とからなるので、配線層と多孔質材料層との間に絶縁層を介在させる必要がなく、脚部の熱抵抗を大きくできるとともに熱容量を小さくすることができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる。また、多孔質材料層と配線層との少なくとも一方を保護する保護層が設けられていることにより、多孔質材料と配線層との少なくとも一方に水分などの異物が吸着するのを抑制でき、特性変化を抑制することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記多孔質材料が、多孔質シリカからなり、前記配線層の材料が、Al、W、WN、WSi、Ta、TaN、Mo、Ti、TiN、TiSiの群から選択される1種類あるいは複数種類からなり、前記保護層が、シリコン酸化膜もしくはシリコン窒化膜からなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記多孔質材料層や前記配線層との前記保護層の密着性が高く、高品質化を図れる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記保護層は、多層膜により構成され、最下層膜がCVD法もしくはスパッタ法により形成されたシリコン酸化膜からなり、最上層膜がシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜からなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、最下層膜のシリコン酸化膜によって下地に対する被覆性を向上でき、また、最上層膜のシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜により水分の透過をより確実に阻止することができる。ここで、最下層膜のシリコン酸化膜がTEOSを原料ガスとして用いたCVD法により形成されるようにすれば、下地表面に段差がある場合の被覆性を向上できる。また、最上層膜をシリコン窒化膜により構成すれば、水分の透過をより確実に阻止することができ、最上層膜をシリコン酸化膜により構成すれば、シリコン窒化膜により構成する場合に比べて、脚部の熱抵抗をより大きくできる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記保護層は、少なくとも、前記多孔質材料層の側面と前記配線層の側面との一方を覆う形で形成されてなることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、前記多孔質材料層の側面や前記配線層の側面への水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、保護絶縁膜形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜を断熱部の所定の平面形状にパターニングする多孔質膜パターニング工程と、多孔質膜パターニング工程の後で保護絶縁膜を断熱部の所定の平面形状にパターニングする保護絶縁膜パターニング工程と、保護絶縁膜パターニング工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くすることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、ベース基板の一表面側に保護絶縁膜を介して多孔質膜を形成しているので、多孔質膜がベース基板の上記一表面側から剥がれるのを防止することができ、また、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くするので、断熱部の応力を制御でき断熱部に反りが発生するのを防止することが可能となり、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、絶縁膜形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で多孔質膜および保護絶縁膜それぞれを断熱部の所定の平面形状にパターニングするパターニング工程と、パターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くすることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、ベース基板の一表面側に保護絶縁膜を介して多孔質膜を形成しているので、多孔質膜がベース基板の上記一表面側から剥がれるのを防止することができ、また、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くするので、断熱部の応力を制御でき断熱部に反りが発生するのを防止することが可能となり、また、多孔質膜および保護絶縁膜それぞれを断熱部の所定の平面形状にパターニングするパターニング工程の前に多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うので、所定の平面形状の配線層および温度検知部を平坦な表面上に精度良く形成することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、保護絶縁膜形成工程の後で保護絶縁膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜および保護絶縁膜それぞれを断熱部の所定の平面形状にパターニングするパターニング工程と、パターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くすることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、ベース基板の一表面側に保護絶縁膜を介して多孔質膜を形成しているので、多孔質膜がベース基板の上記一表面側から剥がれるのを防止することができ、また、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くするので、断熱部の応力を制御でき断熱部に反りが発生するのを防止することが可能となり、また、保護絶縁膜を所定の平面形状にパターニングする前に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うので、所定の平面形状の配線層および温度検知部を平坦な表面上に精度良く形成することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項4記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で多孔質膜を所定の平面形状にパターニングする多孔質膜パターニング工程と、多孔質膜パターニング工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、保護絶縁膜形成工程の後で保護絶縁膜を所定の平面形状にパターニングする保護絶縁膜パターニング工程と、保護絶縁膜パターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、多孔質膜パターニング工程の後でベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成した後で、保護絶縁膜を所定の平面形状にパターニングすることにより、保護層が配線層の表面だけでなく多孔質材料層の側面および配線層の側面を覆う形で形成されるので、水分などの異物が多孔質材料層の側面および配線層の側面に吸着して性能が劣化するのを防止することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。また、保護層のうち、保護絶縁膜パターニング工程において多孔質材料層の側面および配線層の側面に形成される側壁保護膜の膜厚を調整することにより、脚部の側面に交差する方向の応力を制御することができる。
【0026】
請求項9の発明は、請求項4記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる第1の保護絶縁膜を形成する第1の保護絶縁膜形成工程と、第1の保護絶縁膜形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で多孔質膜および第1の保護絶縁膜それぞれを所定の平面形状にパターニングする第1のパターニング工程と、第1のパターニング工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に第1の保護絶縁膜とともに保護層の基礎となる第2の保護絶縁膜を形成する第2の保護絶縁膜形成工程と、第2の保護絶縁膜形成工程の後で第2の保護絶縁膜を所定の平面形状にパターニングする第2のパターニング工程と、第2のパターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、第2のパターニング工程において第2の保護絶縁膜の一部からなり多孔質材料層の側面および配線層の側面を覆う側壁保護膜を形成することを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、保護層が多孔質材料層の下面および配線層の表面だけでなく多孔質材料層の側面および配線層の側面を覆う形で形成されるので、水分などの異物が多孔質材料層および配線層に吸着して性能が劣化するのを防止することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。また、保護層のうち、第2のパターニング工程において多孔質材料層の側面および配線層の側面に形成される側壁保護膜の膜厚を調整することにより、脚部の側面に交差する方向の応力を制御することができる。また、保護層が多孔質材料層の下面を保護しているので、分離工程において多孔質材料層がエッチングダメージを受けるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明は、脚部の熱抵抗を大きくできるとともに熱容量を小さくすることができ、高感度化および応答速度の高速化を図れるという効果がある。
【0029】
請求項5〜9の発明は、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(実施形態1)
本実施形態の赤外線センサは、図1(a),(b)に示すように、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部3がベース基板1の一表面側において断熱部2を介してベース基板1に支持されている。ここにおいて、ベース基板1には、断熱部2を分離して熱絶縁する開孔部11が厚み方向に貫設されている。なお、ベース基板1としては、単結晶のシリコン基板を用いている。
【0031】
断熱部2は、温度検知部3を保持した保持部2aと、保持部2aとベース基板1とを連結した2つの脚部2b,2bとを有している。なお、断熱部2については、後述する。
【0032】
温度検知部3は、温度に応じて電気抵抗値が変化するボロメータ形のセンシングエレメントであり、保持部2a側のTi膜と当該Ti膜上のTiN膜とからなるセンサ層で構成されている。ここで、TiN膜は、Ti膜の酸化防止膜として設けてある。なお、センサ層の材料としては、Tiに限らず、例えば、アモルファスSi、VOなどを採用してもよい。また、温度検知部3は、温度に応じて電気抵抗値が変化するセンシングエレメントに限らず、温度に応じて誘電率が変化するセンシングエレメント、サーモパイル型のセンシングエレメント、焦電型のセンシングエレメントなどを採用してもよく、いずれのセンシングエレメントを採用した場合でも、材料を適宜選択することで一般的な薄膜形成技術を利用して形成することができる。ここにおいて、温度に応じて誘電率の変化するセンシングエレメントの材料としては、例えば、PZT、BSTなどを採用すればよい。
【0033】
温度検知部3は、平面形状が蛇行した形状(ここでは、つづら折れ状の形状)に形成されており、両端部が断熱部2の脚部2b,2bの全長に亘って形成された配線層4,4を介してベース基板1の上記一表面側の互いに異なる導体パターン(図示せず)と電気的に接続されている。ここにおいて、本実施形態では、配線層4,4の材料として、温度検知部3を構成するセンサ層と同じ材料を採用しており(ここでは、Ti膜とTiN膜との積層膜)、配線層4,4と温度検知部3とを同時に形成している。また、本実施形態では、上述の各導体パターンそれぞれの一部がパッドを構成しており、一対のパッドを通して温度検知部3の出力を外部へ取り出すことができる。なお、配線層4の材料は、Tiに限らず、Al、W、WN、WSi、Ta、TaN、Mo、Ti、TiN、TiSiの群から選択される1種類でもよく、配線層4を複数層により構成する場合には、これらの群から選択される複数種類の材料を適宜採用すればよい。
【0034】
断熱部2は、保持部2aの平面形状が矩形状であって、各脚部2b,bが、全ての脚部2b,2bで保持部2aの外周縁の略全周を囲むような形状に形成されている。具体的には、各脚部2b,2bは、平面形状が保持部2aの外周縁の隣り合う2辺に沿ったL字状に形成されており、保持部2aの厚み方向に沿った中心軸に対して回転対称性を有するように配置されている。
【0035】
ここで、本実施形態における断熱部2は、保持部2aが、電気絶縁性を有する多孔質材料(例えば、多孔質シリカなど)からなる第1の多孔質材料層21aと、第1の多孔質材料層21a下に形成され第1の多孔質材料層21aを保護する絶縁材料(例えば、SiOなど)からなる第1の保護層22aとで構成され、各脚部2bが、電気絶縁性を有する多孔質材料(例えば、多孔質シリカなど)からなる第2の多孔質材料層21bと、第2の多孔質材料層21b上に形成され温度検知部3に電気的に接続された配線層4と、第2の多孔質材料層21b下に形成され第2の多孔質材料層21bを保護する絶縁材料(例えば、SiOなど)からなる第2の保護層22bとで構成されている。ここにおいて、第2の多孔質材料層21bの幅寸法と第2の保護層22bの幅寸法とは同じ寸法に設定してあり、配線層4の線幅は、当該配線層4を通した熱伝達を抑制するために第2の多孔質材料層21bおよび第2の保護層22bの幅寸法よりも小さく設定してある。なお、第1の多孔質材料層21aと第2の多孔質材料層21bとは同一の多孔質材料により連続一体に形成されており、第1の保護層22aと第2の保護層22bとは同一の絶縁材料により連続一体に形成されている。
【0036】
以上説明した本実施形態の赤外線センサでは、断熱部2の脚部2bが、電気絶縁性を有する多孔質材料からなる第2の多孔質材料層21bと、第2の多孔質材料層21b上に形成され温度検知部3に電気的に接続された配線層4と、第2の多孔質材料層21b下に形成され第2の多孔質材料層21bを保護する第2の保護層22bとからなるので、配線層4と第2の多孔質材料層21bとの間に絶縁層を介在させる必要がなく、脚部2bの熱抵抗を大きくできるとともに熱容量を小さくすることができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる。また、本実施形態の赤外線センサでは、第2の多孔質材料層21bの多孔質材料が多孔質シリカからなり、第2の多孔質材料層21b直下の第2の保護層22bがシリコン酸化膜からなるので、第2の保護層22bと第2の多孔質材料層21bとの密着性が高く、高品質化を図れる。なお、第2の保護層22bは、シリコン酸化膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0037】
ところで、上述の第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bは、多孔度が60%の多孔質シリカにより構成してあるが、多孔度が小さ過ぎると十分な断熱効果が得られず多孔度が大き過ぎると機械的強度が弱くなって構造形成が困難となるので、多孔質シリカの多孔度は例えば10%〜80%程度の範囲内で適宜設定すればよい。ここにおいて、熱伝導率が148〔W/(m・K)〕の単結晶のシリコン基板の一部を陽極酸化して形成される多孔度が60%の多孔度が60%の多孔質シリコンの熱伝導率は1〔W/(m・K)〕程度であるのに対して、多孔度が60%の多孔質シリカの熱伝導率は0.05〔W/(m・K)〕程度であり、第2の多孔質材料層21bの多孔質材料として、多孔質シリカを採用することにより、多孔質シリコンを採用する場合に比べて熱抵抗を大きくすることができる。なお、本実施形態の赤外線センサでは、各多孔質材料層21a,21bの多孔質材料として、多孔質の酸化シリコンの一種である多孔質シリカ(ポーラスシリカ)を採用しているが、多孔質の酸化シリコン系有機ポリマーの一種であるメチル含有ポリシロキサン、多孔質の酸化シリコン系無機ポリマーの一種であるSi−H含有ポリシロキサン、シリカエアロゲルなどを採用してもよい。
【0038】
以下、本実施形態の赤外線センサの製造方法について図2を参照しながら説明する。
【0039】
まず、単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)からなるベース基板1の一表面側の全面に第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となるシリコン酸化膜からなる保護絶縁膜22を例えば熱酸化法やCVD法などにより形成する保護絶縁膜形成工程を行うことによって、図2(a)に示す構造を得る。
【0040】
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bの基礎となる多孔質膜(例えば、多孔質シリカ膜など)21を形成する多孔質膜形成工程を行うことによって、図2(b)に示す構造を得る。ここにおいて、多孔質膜21の形成にあたっては、多孔質材料が多孔質シリカの場合には、ゾルゲル溶液をベース基板1の上記一表面側に回転塗布してから、熱処理で乾燥させるプロセスを採用することで容易に形成することができ、多孔質材料がシリカエアロゲルの場合には、ゾルゲル溶液をベース基板1の上記一表面側に回転塗布してから、超臨界乾燥処理で乾燥させるプロセスを採用することで容易に形成することができる。
【0041】
上述の多孔質膜形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、多孔質膜21を断熱部2の所定の平面形状にパターニングする多孔質膜パターニング工程、保護絶縁膜22を断熱部の所定の平面形状にパターニングする保護絶縁膜パターニング工程を順次行うことによって、図2(c)に示す構造を得る。
【0042】
その後、パターニングされた多孔質膜21上に配線層4,4および温度検知部3を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うことによって、図2(d)に示す構造を得る。ここにおいて、本実施形態における配線層・温度検知部形成工程では、配線層4,4および温度検知部3の基礎となる導電性層をベース基板1の上記一表面側の全面に例えばスパッタ法などにより成膜した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記導電性層をパターニングすることでそれぞれ上記導電性層の一部からなる配線層4,4および温度検知部3を形成するようにしているが、配線層4,4と温度検知部3との材料が異なる場合には、配線層4,4を形成する工程と温度検知部3を形成する工程とを別々に設ければよい。
【0043】
上述の配線層・温度検知部形成工程の後、ベース基板1に開孔部11を形成することで断熱部2をベース基板1から分離させる分離工程を行うことによって、図2(e)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。ここにおいて、分離工程では、ベース基板1の他表面側に開孔部11形成用のマスク層を形成してから、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いたドライエッチングや、エッチング液(例えば、TMAH水溶液、KOH水溶液、EDP、フッ硝酸など)を用いたウェットエッチングなどによってベース基板1に開孔部11を形成し、その後、マスク層を除去すればよい。また、本実施形態では、分離工程において、開孔部11に臨む保護絶縁膜22の厚みを第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの所望の厚みまで薄くするようにしている。なお、開孔部11をドライエッチングにより形成する場合のエッチングガスとしては、例えば、CFガス、SFガスとCガスとの混合ガス、CClガスなどを採用すればよい。
【0044】
以上説明した本実施形態の赤外線センサの製造方法によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部2b,2bを形成することが可能となり、しかも、ベース基板1の上記一表面側に保護絶縁膜22を介して多孔質膜21を形成しているので、多孔質膜21がベース基板1の上記一表面側から剥がれるのを防止することができ、また、分離工程において保護絶縁膜22の厚みを第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの所望の厚みまで薄くするので、断熱部2の応力を制御でき断熱部2に反りが発生するのを防止することが可能となり、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。
【0045】
(実施形態2)
本実施形態の赤外線センサの構成は実施形態1と同じであり、製造方法が相違するだけなので、製造方法についてのみ図3を参照しながら説明する。なお、実施形態1と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0046】
まず、単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)からなるベース基板1の一表面側の全面に第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となるシリコン酸化膜からなる保護絶縁膜22を例えば熱酸化法やCVD法などにより形成する保護絶縁膜形成工程を行うことによって、図3(a)に示す構造を得る。
【0047】
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bの基礎となる多孔質膜(例えば、多孔質シリカ膜など)21を形成する多孔質膜形成工程を行うことによって、図3(b)に示す構造を得る。
【0048】
上述の多孔質膜形成工程の後、多孔質膜21上に配線層4,4および温度検知部3を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うことによって、図3(c)に示す構造を得る。
【0049】
その後、多孔質膜21および保護絶縁膜22それぞれを断熱部2の所定の平面形状にパターニングするパターニング工程を行うことによって、図3(d)に示す構造を得る。
【0050】
次に、ベース基板1に開孔部11を形成することで断熱部2をベース基板1から分離させる分離工程を行うことによって、図3(e)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。ここにおいて、分離工程では、ベース基板1の他表面側に開孔部11形成用のマスク層を形成してから、ドライエッチングやウェットエッチングなどによってベース基板1に開孔部11を形成し、その後、マスク層を除去すればよい。また、本実施形態では、実施形態1と同様、分離工程において、開孔部11に臨む保護絶縁膜22の厚みを第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの所望の厚みまで薄くするようにしている。
【0051】
以上説明した本実施形態の赤外線センサの製造方法によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部2b,2bを形成することが可能となり、しかも、ベース基板1の上記一表面側に保護絶縁膜22を介して多孔質膜21を形成しているので、多孔質膜21がベース基板1の上記一表面側から剥がれるのを防止することができ、また、分離工程において保護絶縁膜22の厚みを第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの所望の厚みまで薄くするので、断熱部2の応力を制御でき断熱部2に反りが発生するのを防止することが可能となり、また、多孔質膜21および保護絶縁膜22それぞれを所定の断熱部2の平面形状にパターニングするパターニング工程の前に多孔質膜21上に配線層4,4および温度検知部3を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うので、所定の平面形状の配線層4,4および温度検知部3を平坦な表面上に精度良く形成することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。
【0052】
ところで、実施形態1,2の赤外線センサでは、各保護層22a,22bが多孔質材料層21a,21b下のみに形成されているが、図4に示すように、温度検知部3上および配線層4上にも保護層22a’,22b’を形成するようにしてもよい。
【0053】
(実施形態3)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図5に示すように、保持部2aでは、第1の保護層22a上に温度検知部3が形成されて温度検知部3を覆うように第1の多孔質材料層21aが形成され、脚部2bでは、第2の保護層22b上に配線層4が形成されて配線層4を覆うように第2の多孔質材料層21bが形成されている点が相違する。要するに、本実施形態の赤外線センサでは、温度検知部3が第1の保護層22aにより保護され、配線層4が第2の保護層22bにより保護されている。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付してある。
【0054】
以下、本実施形態の赤外線センサの製造方法について図6を参照しながら説明するが、実施形態1と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0055】
まず、単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)からなるベース基板1の一表面側の全面に第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となるシリコン酸化膜からなる保護絶縁膜22を例えば熱酸化法やCVD法などにより形成する保護絶縁膜形成工程を行うことによって、図6(a)に示す構造を得る。
【0056】
その後、保護絶縁膜22上に配線層4,4および温度検知部3を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うことによって、図6(b)に示す構造を得る。
【0057】
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bの基礎となる多孔質膜(例えば、多孔質シリカ膜など)21を形成する多孔質膜形成工程を行い、その後、多孔質膜21および保護絶縁膜22それぞれを断熱部2の所定の平面形状にパターニングするパターニング工程を行うことによって、図6(c)に示す構造を得る。
【0058】
次に、ベース基板1に開孔部11を形成することで断熱部2をベース基板1から分離させる分離工程を行うことによって、図6(d)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。ここにおいて、分離工程では、ベース基板1の他表面側に開孔部11形成用のマスク層を形成してから、ドライエッチングやウェットエッチングなどによってベース基板1に開孔部11を形成し、その後、マスク層を除去すればよい。また、本実施形態では、実施形態1と同様、分離工程において、開孔部11に臨む保護絶縁膜22の厚みを第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの所望の厚みまで薄くするようにしている。
【0059】
以上説明した本実施形態の赤外線センサの製造方法によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、ベース基板1の上記一表面側に保護絶縁膜22を介して多孔質膜21を形成しているので、多孔質膜21がベース基板1の上記一表面側から剥がれるのを防止することができ、また、分離工程において保護絶縁膜22の厚みを第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの所望の厚みまで薄くするので、断熱部2の応力を制御でき断熱部2に反りが発生するのを防止することが可能となり、また、保護絶縁膜22を所定の平面形状にパターニングする前に配線層4,4および温度検知部3を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うので、所定の平面形状の配線層4,4および温度検知部3を平坦な表面上に精度良く形成することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。
【0060】
ところで、上述の赤外線センサでは、各保護層22a,22bが多孔質材料層21a,21b下のみに形成されているが、図7に示すように、温度検知部3上および配線層4上にも保護層22a’,22b’を形成し、保護層22a’,22b’により多孔質材料層21b,22bを保護するようにしてもよい。
【0061】
(実施形態4)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図8に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0062】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aが、第1の多孔質材料層21aにより構成され、温度検知部3上に第1の保護層22aが形成されており、脚部2bが、第2の多孔質材料層21bと、第2の多孔質材料層21b上の配線層4と、配線層4上の第2の保護層22bとで構成されており、配線層4が第2の保護層22bにより保護されている。なお、第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となる保護絶縁膜は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜に限らず、例えば、多層膜により構成するようにし、下層(最下層膜)がCVD法やスパッタ法などにより形成されたシリコン酸化膜からなり、上層(最上層膜)がシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜からなる構成でもよく、下層のシリコン酸化膜によって下地に対する被覆性を向上でき、上層のシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜により水分の透過を阻止することができる。ここで、下層のシリコン酸化膜をTEOS(tetraethylorthosilicate)を原料ガスとして用いたCVD法により形成すれば、下地表面に段差がある場合の被覆性を向上できる。また、上層をシリコン窒化膜により構成すれば、水分の透過をより確実に阻止することができ、上層をシリコン酸化膜により構成すれば、シリコン窒化膜により構成する場合に比べて、脚部2の熱抵抗をより大きくできる。
【0063】
(実施形態5)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図9に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0064】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aが、温度検知部3の上面および側面を覆う第1の多孔質材料層21aと、第1の多孔質材料層21a上の第1の保護層22aとで構成され、脚部2bが、配線層4の上面および側面を覆う第2の多孔質材料層21bと、第2の多孔質材料層21b上の第2の保護層22bとで構成されており、第2の多孔質材料層21bの上面が第2の保護層22bにより保護されている。なお、第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となる保護絶縁膜は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜に限らず、例えば、多層膜により構成するようにし、例えば、下層(最下層膜)がCVD法やスパッタ法などにより形成されたシリコン酸化膜からなり、上層(最上層膜)がシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜からなる構成でもよく、下層のシリコン酸化膜によって下地に対する被覆性を向上でき、上層のシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜により水分の透過を阻止することができる。ここで、下層のシリコン酸化膜をTEOSを原料ガスとして用いたCVD法により形成すれば、下地表面に段差がある場合の被覆性を向上できる。また、上層をシリコン窒化膜により構成すれば、水分の透過をより確実に阻止することができ、上層をシリコン酸化膜により構成すれば、シリコン窒化膜により構成する場合に比べて、脚部2の熱抵抗をより大きくできる。
【0065】
(実施形態6)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図10に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0066】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aの最表面側に温度検知部3の上面および側面を覆う多孔質材料層21a’が形成され、脚部2bの最表面側に配線層4の上面および側面を覆う多孔質材料層21b’が形成されている。ここにおいて、多孔質材料層21a’,21b’は、多孔質材料層21a,21bと同一の材料により形成されている。
【0067】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、配線層4を多孔質材料層21b,21b’により覆っているので、配線層4を保護することができ、しかも、配線層4の上面および側面がシリコン酸化膜やシリコン窒化膜のような非多孔性材料層により覆われている場合に比べて、脚部2の熱抵抗を大きくすることができる。
【0068】
(実施形態7)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態6と略同じであり、図11に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態6と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態における断熱部2では、保護層22a,22bが、下側の多孔質材料層21a,21b下ではなく、上側の多孔質材料層21a’,21b’上に形成さている。
【0070】
(実施形態8)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態6と略同じであり、図12に示すように、多孔質材料層21a’,21b’上に保護層22a’,22b’が形成されている点が相違する。なお、実施形態6と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0071】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、多孔質材料層21a’,21b’が保護層22a’,22b’により保護されているので、多孔質材料層21a’,21b’に水分などの異物が吸着するのを抑制でき、特性変化を抑制することができる。なお、保護層22a’,22b’の基礎となる保護絶縁膜は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜に限らず、例えば、多層膜により構成するようにし、例えば、下層(最下層膜)がCVD法やスパッタ法などにより形成されたシリコン酸化膜からなり、上層(最上層膜)がシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜からなる構成でもよく、下層のシリコン酸化膜によって下地に対する被覆性を向上でき、上層のシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜により水分の透過を阻止することができる。ここで、下層のシリコン酸化膜をTEOSを原料ガスとして用いたCVD法により形成すれば、下地表面に段差がある場合の被覆性を向上できる。また、上層をシリコン窒化膜により構成すれば、水分の透過をより確実に阻止することができ、上層をシリコン酸化膜により構成すれば、シリコン窒化膜により構成する場合に比べて、脚部2の熱抵抗をより大きくできる。また、保護層22a’,22b’と保護層22a,22bとの材料および厚さを同じとし、多孔質材料層21a’,21b’と多孔質材料層21a,21bとの材料および厚さを同じとすれば、断熱部2の応力を低減することができ、断熱部2の反りをより確実に防止することが可能となる。
【0072】
(実施形態9)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図13に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aが、第1の多孔質材料層21aと、第1の多孔質材料層21a上の温度検知部3および第1の多孔質材料層21aの上面において温度検知部3が形成されていない部位および第1の多孔質材料層21aの側面を覆う第1の保護層22aとで構成され、脚部2bが、第2の多孔質材料層21bと、第2の多孔質材料層21b上の配線層4と、配線層4および第2の多孔質材料層21bの上面において配線層4が形成されていない部位および第2の多孔質材料層21bの側面を覆う第2の保護層22bとで構成されている。
【0074】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第2の保護層22bが、第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面を覆う形で形成されているので、第2の多孔質材料層21bの側面や配線層4の側面への水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができる。また、第1の保護層22aが、第1の多孔質材料層21aの側面および温度検知部3の側面を覆う形で形成されているので、第1の多孔質材料層21aの側面や温度検知部3の側面への水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができる。
【0075】
以下、本実施形態の赤外線センサの製造方法について図14〜16を参照しながら説明するが、実施形態1と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0076】
まず、単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)からなるベース基板1の一表面側の全面に第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bの基礎となる多孔質膜(例えば、多孔質シリカ膜など)21を形成する多孔質膜形成工程を行うことによって、図14(a)に示す構造を得る。
【0077】
その後、多孔質膜21上に配線層4,4および温度検知部3を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うことによって、図14(b)に示す構造を得る。
【0078】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して多孔質膜21を所定の平面形状にパターニングする多孔質膜パターニング工程を行うことによって、図14(c)に示す構造を得る。
【0079】
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となる保護絶縁膜22を例えばCVD法やスパッタ法などにより形成する保護絶縁膜形成工程を行うことによって、図14(d)に示す構造を得る。なお、保護絶縁膜22としてシリコン酸化膜を採用する場合には、原料ガスとしてTEOSを用いたCVD法を採用することにより、段差形状を有する下地に対する保護絶縁膜22の被覆性を向上できる。また、保護絶縁膜22は、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法により形成したシリコン酸化膜上に、CVD法などによりシリコン窒化膜を形成してもよい。
【0080】
上述の保護絶縁膜形成工程の後、保護絶縁膜22を所定の平面形状にパターニングする保護絶縁膜パターニング工程を行うことによって、図14(e)に示す構造を得る。
【0081】
次に、ベース基板1に開孔部11を形成することで断熱部2をベース基板1から分離させる分離工程を行うことによって、図14(f)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。ここにおいて、分離工程では、ベース基板1の他表面側に開孔部11形成用のマスク層を形成してから、ドライエッチングやウェットエッチングなどによってベース基板1に開孔部11を形成し、その後、マスク層を除去すればよい。
【0082】
ところで、上述の製造方法では、配線層・温度検知部形成工程において、配線層4,4および温度検知部3の基礎となる導電性層30(図15(a)参照)をベース基板1の上記一表面側の全面に例えばスパッタ法などにより成膜した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して導電性層30をパターニングすることでそれぞれ導電性層30の一部からなる配線層4,4および温度検知部3を形成するようにしており、図15(a)の導電性層30を同図中の矢印の位置を図示しないレジスト層により覆われている部位と覆われていない部位との境界としてエッチングすることでパターニングされた導電性層30(つまり、配線層4,4や温度検知部3)の側面が図15(b)に示すように面粗度の高い状態となり、水分などの異物が吸着しやすい状態となる。しかしながら、保護絶縁膜形成工程および保護絶縁膜パターニング工程を行うことにより、パターニングされた導電性層30の側面に保護絶縁膜22の一部からなる側壁保護膜22s(つまり、第2の保護層22bのうち配線層4の側面に形成された部分、第1の保護層22aのうち温度検知部3の側面に形成された部分)が形成されるので、水分などの異物が配線層4の側面および温度検知部3の側面に吸着して性能が劣化するのを防止することができる。
【0083】
また、上述の製造方法では、多孔質膜パターニング工程において、第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bの基礎となる多孔質膜21(図16(a)参照)をパターニングすることでそれぞれ多孔質膜21の一部からなる第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bを形成しているが、図16(a)の多孔質膜21を同図中の矢印の位置を図示しないレジスト層により覆われている部位と覆われていない部位との境界としてエッチングすることでパターニングされた多孔質膜21(つまり、第2の多孔質材料層21bや第1の多孔質材料層21a)の側面が図16(b)に示すように面粗度の高い状態となり(特に、図16(a)のように多数の微細な空孔21pを有する多孔質膜21をパターニングした場合には、側面の面粗度が大きくなるとともに露出表面積が大きくなり)、水分などの異物が吸着しやすい状態となる。しかしながら、保護絶縁膜形成工程および保護絶縁膜パターニング工程を行うことにより、パターニングされた多孔質膜21の側面に保護絶縁膜22の一部からなる側壁保護膜22s(つまり、第2の保護層22bのうち第2の多孔質材料層21bの側面に形成された部分、第1の保護層22aのうち第1の多孔質材料層21aの側面に形成された部分)が形成されるので、水分などの異物が各多孔質材料層21a,21bの側面に吸着して性能が劣化するのを防止することができる。
【0084】
以上説明した本実施形態の赤外線センサの製造方法によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、多孔質膜パターニング工程の後でベース基板1の上記一表面側の全面に第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となる保護絶縁膜22を形成した後で、保護絶縁膜22を所定の平面形状にパターニングすることにより、第2の保護層22bが配線層4の表面だけでなく第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面を覆う形で形成されるので、水分などの異物が第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面に吸着して性能が劣化するのを防止することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。また、第2の保護層22bのうち、保護絶縁膜パターニング工程において第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面に形成される側壁保護膜の膜厚を調整することにより、脚部2bの側面に交差する方向(図13の左右方向)の応力を制御することができる。
【0085】
(実施形態10)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図17に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aが、第1の保護層22aと、第1の保護層22a上の第1の多孔質材料層21aと、第1の多孔質材料層21a上の温度検知部3および第1の多孔質材料層21aの上面において温度検知部3が形成されていない部位および第1の多孔質材料層21aの側面および第1の保護層22aの側面を覆う第3の保護層22a’とで構成され、脚部2bが、第2の保護層22bと、第2の保護層22b上の第2の多孔質材料層21bと、第2の多孔質材料層21b上の配線層4と、配線層4および第2の多孔質材料層21bの上面において配線層4が形成されていない部位および第2の多孔質材料層21bの側面および第2の保護層22bの側面を覆う第4の保護層22b’とで構成されている。なお、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’は、例えば、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法やスパッタ法を利用して形成したシリコン酸化膜(後述の第2の保護絶縁膜に対応する)をパターニングすることにより形成してもよいし、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法やスパッタ法を利用して形成したシリコン酸化膜と当該シリコン酸化膜に積層したシリコン窒化膜との積層膜(後述の第2の保護絶縁膜に対応する)をパターニングすることにより形成してもよい。
【0087】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第4の保護層22b’が、第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面を覆う形で形成されているので、第2の多孔質材料層21bの側面や配線層4の側面への水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができ、しかも、第2の多孔質材料層21bと配線層4との積層膜が第2の保護層22bと第4の保護層22b’とで囲まれているので、水分などの異物が吸着して性能が劣化するのをより確実に防止することができる。また、第3の保護層22a’が、第1の多孔質材料層21aの側面および温度検知部3の側面を覆う形で形成されているので、第1の多孔質材料層21aの側面や温度検知部3の側面への水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができ、しかも、第1の多孔質材料層21aと温度検知部3との積層膜が第1の保護層22aと第3の保護層22a’とで囲まれているので、水分などの異物が吸着して性能が劣化するのをより確実に防止することができる。
【0088】
以下、本実施形態の赤外線センサの製造方法について図18を参照しながら説明するが、実施形態1と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0089】
まず、単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)からなるベース基板1の一表面側の全面に第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となるシリコン酸化膜からなる保護絶縁膜(以下、第1の保護絶縁膜と称す)22を例えば熱酸化法やCVD法などにより形成する第1の保護絶縁膜形成工程を行うことによって、図18(a)に示す構造を得る。
【0090】
次に、ベース基板1の上記一表面側の全面に第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bの基礎となる多孔質膜(例えば、多孔質シリカ膜など)21を形成する多孔質膜形成工程を行うことによって、図18(b)に示す構造を得る。
【0091】
その後、多孔質膜21上に配線層4,4および温度検知部3を形成する配線層・温度検知部形成工程を行うことによって、図18(c)に示す構造を得る。
【0092】
上述の配線層・温度検知部形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、多孔質膜21および第1の保護絶縁膜22それぞれを所定の平面形状にパターニングする第1のパターニング工程を行うことによって、図18(d)に示す構造を得る。
【0093】
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に第3の保護層22a’および第4の保護層22b’の基礎となる第2の保護絶縁膜22’を例えばCVD法などにより形成する第2の保護絶縁膜形成工程を行うことによって、図18(e)に示す構造を得る。なお、第2の保護絶縁膜22’としてシリコン酸化膜を採用する場合には、原料ガスとしてTEOSを用いることにより、段差形状を有する下地に対する第2の保護絶縁膜22’の被覆性を向上できる。また、第2の保護絶縁膜22’は、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法により形成したシリコン酸化膜上に、CVD法などによりシリコン窒化膜を形成してもよい。
【0094】
上述の第2の保護絶縁膜形成工程の後、第2の保護絶縁膜22を所定の平面形状にパターニングする第2のパターニング工程を行うことによって、図18(f)に示す構造を得る。ここで、第2のパターニング工程においては、第2の保護絶縁膜22’の一部からなり第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面を覆う側壁保護膜、第2の保護絶縁膜22’の一部からなり第1の多孔質材料層21aの側面を覆う側壁保護膜を形成する。
【0095】
上述の第2のパターニング工程の後、ベース基板1に開孔部11を形成することで断熱部2をベース基板1から分離させる分離工程を行うことによって、図18(g)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。ここにおいて、分離工程では、ベース基板1の他表面側に開孔部11形成用のマスク層を形成してから、ドライエッチングやウェットエッチングなどによってベース基板1に開孔部11を形成し、その後、マスク層を除去すればよい。
【0096】
以上説明した本実施形態の赤外線センサの製造方法によれば、従来に比べて熱抵抗が大きく熱容量が小さな脚部を形成することが可能となり、しかも、第2の保護層22bと第4の保護層22b’とで構成される保護層が第2の多孔質材料層21bの下面および配線層4の表面だけでなく第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面を覆う形で形成されるので、水分などの異物が第2の多孔質材料層21bおよび配線層4に吸着して性能が劣化するのを防止することができ、高感度化および応答速度の高速化を図れる赤外線センサを提供できる。また、上記保護層のうち、第2のパターニング工程において第2の多孔質材料層21bの側面および配線層4の側面に形成される側壁保護膜の膜厚を調整することにより、脚部2bの側面に交差する方向の応力を制御することができる。また、上記保護層が第2の多孔質材料層21bの下面を保護しているので、分離工程において第2の多孔質材料層21bがエッチングダメージを受けるのを防止することができる。
【0097】
(実施形態11)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図19に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aが、第1の保護層22aと、第1の保護層22a上の温度検知部3および第1の保護層22aの上面において温度検知部3が形成されていない部位を覆う第1の多孔質材料層21aと、第1の保護層22aの側面および第1の多孔質材料層21aの側面を覆う第3の保護層22a’とで構成され、脚部2bが、第2の保護層22bと、第2の保護層22b上の配線層4と、配線層4および第2の保護層22bの上面において配線層4が形成されていない部位を覆う第2の多孔質材料層21bと、第2の保護層22bの側面および第2の多孔質材料層21bの側面を覆う第4の保護層22b’とで構成されている。要するに、本実施形態では、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’それぞれが側壁保護膜として形成されている。なお、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’は、例えば、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法やスパッタ法を利用して形成したシリコン酸化膜をパターニングすることにより形成してもよいし、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法やスパッタ法を利用して形成したシリコン酸化膜と当該シリコン酸化膜に積層したシリコン窒化膜との積層膜をパターニングすることにより形成してもよい。
【0099】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第2の多孔質材料層21bが配線層4の側面を覆う形で形成され、第4の保護層22b’が、第2の多孔質材料層21bの側面および第2の保護層22bの側面を覆う形で形成されているので、第2の多孔質材料層21bの側面や配線層4の側面への水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができ、しかも、配線層4が第2の保護層22bと第2の多孔質材料層21bとで囲まれているので、配線層4に水分などの異物が吸着して性能が劣化するのをより確実に防止することができる。同様に、温度検知部3が第1の保護層22aと第1の多孔質材料層21aとで囲まれているので、水分などの異物が温度検知部3に吸着して性能が劣化するのをより確実に防止することができる。
【0100】
(実施形態12)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態11と略同じであり、図20に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態11と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0101】
ここにおいて、本実施形態の赤外線センサの断熱部2は、保持部2aにおける第3の保護層22a’が、第1の保護層22aの側面および第1の多孔質材料層21aの側面だけでなく第1の多孔質材料層21aの上面を覆うように形成され、脚部2bにおける第4の保護層22b’が、第2の保護層22bの側面および第2の多孔質材料層21bの側面だけでなく第2の多孔質材料層21bの上面を覆うように形成されている点が実施形態11と相違する。
【0102】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、実施形態11に比べて、第2の多孔質材料層21bおよび配線層4へ水分などの異物が吸着して性能が劣化するのをより確実に防止することができる。同様に、本実施形態の赤外線センサでは、実施形態11に比べて、第1の多孔質材料層21aおよび温度検知部3へ水分などの異物が吸着して性能が劣化するのをより確実に防止することができる。
【0103】
(実施形態13)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は図17に示した実施形態10と略同じであり、図21に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態10と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0104】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aが、第1の多孔質材料層21a上の温度検知部3および第1の多孔質材料層21aの上面において温度検知部3が形成されていない部位を覆う第3の多孔質材料層21a’を有し、第3の保護層22a’が、第1の保護層22aの側面および第1の多孔質材料層21aの側面だけでなく第3の多孔質材料層21a’の側面も覆うように形成されている点が実施形態10と相違する。また、本実施形態における断熱部2では、脚部2bが、第2の多孔質材料層21b上の配線層4および第2の多孔質材料層21bの上面において配線層4が形成されていない部位を覆う第4の多孔質材料層21b’を有し、第4の保護層22b’が、第2の保護層22bの側面および第2の多孔質材料層21bの側面だけでなく第4の多孔質材料層21b’の側面も覆うように形成されている点が実施形態10と相違する。なお、第3の多孔質材料層21a’および第4の多孔質材料層21b’は、第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bと同様に電気絶縁性を有する多孔質材料(例えば、多孔質シリカなど)により形成されている。
【0105】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第2の多孔質材料層21b上の配線層4および第2の多孔質材料層21bの上面において配線層4が形成されていない部位が第4の多孔質材料層21b’により覆われているので、実施形態10のように第4の保護層22b’により覆われている場合に比べて、脚部2bの熱抵抗を大きくすることが可能になるとともに熱容量を小さくすることが可能になる。
【0106】
(実施形態14)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態13と略同じであり、図22に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態13と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0107】
ここで、本実施形態における断熱部2は、第3の保護層22a’が第3の多孔質材料層21a’の上面も覆うように形成され、第4の保護層22b’が第4の多孔質材料層21b’の上面も覆うように形成されている点が実施形態13と相違する。
【0108】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第3の多孔質材料層21a’の上面が第3の保護層22a’の一部により保護され、第4の多孔質材料層21b’の上面が第4の保護層22b’の一部により保護されているので、第3の多孔質材料層21a’、第4の多孔質材料層21b’に水分などの異物が吸着するのを抑制でき、特性変化を抑制することができる。なお、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’の基礎となる保護絶縁膜は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜に限らず、例えば、多層膜により構成するようにし、例えば、下層(最下層膜)がCVD法やスパッタ法などにより形成されたシリコン酸化膜からなり、上層(最上層膜)がシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜からなる構成でもよく、下層のシリコン酸化膜によって下地に対する被覆性を向上でき、上層のシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜により水分の透過を阻止することができる。また、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’と、第1の保護層22aおよび第2の保護層22bとの材料、厚さを同じとし、第3の多孔質材料層21a’および第4の多孔質材料層21b’と、第1の多孔質材料層21aおよび第2の多孔質材料層21bとの材料、厚さを同じとすれば、断熱部2の応力を低減することができ、断熱部2の反りをより確実に防止することが可能となる。
【0109】
(実施形態15)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は図8に示した実施形態4と略同じであり、図23に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0110】
ここで、本実施形態における断熱部2は、第1の保護層22aが温度検知部3の上面だけでなく側面も覆うように第1の多孔質材料層21aの上面側に形成され、第2の保護層22bが配線層4の上面だけでなく側面も覆うように第2の多孔質材料層21bの上面側に形成されている点が実施形態4と相違する。
【0111】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第1の多孔質材料層21aの上面や温度検知部3、第2の多孔質材料層21bの上面や配線層4に水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができる。また、製造時において、第1の保護層22aおよび第2の保護層22bを形成するにあたって、第1の保護層22aおよび第2の保護層22bの基礎となる保護絶縁膜をベース基板の上記一表面側の全面に形成した後、当該保護絶縁膜をパターニングすることで第1の保護層22aおよび第2の保護層22bを形成する前に、ベース基板1の厚み方向における保護絶縁膜の厚みを適宜薄くするようにエッチングすることにより、断熱部2の応力を制御することができ、断熱部2に反りが発生するのを抑制することができる。
【0112】
(実施形態16)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図24に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0113】
本実施形態における断熱部2では、保持部2aが、第1の多孔質材料層21a上の温度検知部3および第1の多孔質材料層21aの上面において温度検知部3が形成されていない部位を覆う第3の保護層22a’を有し、脚部2bが、第2の多孔質材料層21b上の配線層4および第2の多孔質材料層21bの上面において配線層4が形成されていない部位を覆う第4の保護層22b’を有している点が相違する。なお、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’は、例えば、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法やスパ法を利用して形成したシリコン酸化膜をパターニングすることにより形成してもよいし、TEOSを原料ガスとして用いたCVD法やスパ法を利用して形成したシリコン酸化膜と当該シリコン酸化膜に積層したシリコン窒化膜との積層膜をパターニングすることにより形成してもよい。
【0114】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第1の多孔質材料層21aの上面や温度検知部3、第2の多孔質材料層21bの上面や配線層4に水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができる。
【0115】
(実施形態17)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図25に示すように、断熱部2の構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0116】
ここで、本実施形態における断熱部2は、保持部2aが、第1の保護層22aの側面および第1の多孔質材料層21aの側面を覆う側壁保護膜として第3の保護層22a’を有し、脚部2bが、第2の保護層22bの側面および第2の多孔質材料層21bの側面を覆う側壁保護膜として第4の保護層22b’を有している点が実施形態1と相違する。なお、製造時において、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’を形成するにあたっては、第3の保護層22a’および第4の保護層22b’の基礎となる保護絶縁膜をベース基板1の上記一表面側の全面に形成した後、当該保護絶縁膜のうち第3の保護層22a’および第4の保護層22b’に対応する部分のみが残るようにエッチバックを行えばよい。
【0117】
本実施形態の赤外線センサでは、第1の多孔質材料層21aの側面や第2の多孔質材料層21bの側面に水分などの異物が吸着して性能が劣化するのを防止することができる。
【0118】
なお、上記各実施形態1〜17にて説明した赤外線センサは、製造時に断熱部2をベース基板1から分離させる分離工程において、ベース基板1の他表面側(裏面側)からベース基板1をエッチングして開孔部11を形成しているが、ベース基板1の上記一表面側に断熱部2の形成前に犠牲層を形成しておき、断熱部2の形成後にベース基板1の上記一表面側から犠牲層をエッチング除去する犠牲層エッチングを行うことで断熱部2をベース基板1から分離させる分離工程を採用してもよい。また、上記各実施形態1〜17にて説明した赤外線センサは、温度検知部3を1つだけ設けた赤外線検出素子であるが、温度検知部3を2次元アレイ状(マトリクス状)に配列し各温度検知部が画素を構成するようにした赤外線画像センサでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施形態1における赤外線センサを示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図2】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図3】実施形態2における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図4】実施形態1,2における赤外線センサの他の構成例を示す概略断面図である。
【図5】実施形態3における赤外線センサの概略断面図である。
【図6】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図7】同上における赤外線センサの他の構成例を示す概略断面図である。
【図8】実施形態4における赤外線センサの概略断面図である。
【図9】実施形態5における赤外線センサの概略断面図である。
【図10】実施形態6における赤外線センサの概略断面図である。
【図11】実施形態7における赤外線センサの概略断面図である。
【図12】実施形態8における赤外線センサの概略断面図である。
【図13】実施形態9における赤外線センサの概略断面図である。
【図14】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図15】同上における赤外線センサの製造方法の説明図である。
【図16】同上における赤外線センサの製造方法の説明図である。
【図17】実施形態10における赤外線センサの概略断面図である。
【図18】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図19】実施形態11における赤外線センサの概略断面図である。
【図20】実施形態12における赤外線センサの概略断面図である。
【図21】実施形態13における赤外線センサの概略断面図である。
【図22】実施形態14における赤外線センサの概略断面図である。
【図23】実施形態15における赤外線センサの概略断面図である。
【図24】実施形態16における赤外線センサの概略断面図である。
【図25】実施形態17における赤外線センサの概略断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1 ベース基板
2 断熱部
2a 保持部
2b 脚部
3 温度検知部
4 配線層
11 開孔部
21a 第1の多孔質材料層
21b 第2の多孔質材料層
22a 第1の保護層
22b 第2の保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部がベース基板の一表面側において断熱部を介してベース基板に支持された赤外線センサであって、断熱部は、温度検知部を保持した保持部と、保持部とベース基板とを連結した脚部とを有し、脚部は、電気絶縁性を有する多孔質材料からなる多孔質材料層と、多孔質材料層上に形成され温度検知部に電気的に接続された配線層と、多孔質材料層と配線層との少なくとも一方を保護する保護層とからなることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記多孔質材料が、多孔質シリカからなり、前記配線層の材料が、Al、W、WN、WSi、Ta、TaN、Mo、Ti、TiN、TiSiの群から選択される1種類あるいは複数種類からなり、前記保護層が、シリコン酸化膜もしくはシリコン窒化膜からなることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記保護層は、多層膜により構成され、最下層膜がCVD法もしくはスパッタ法により形成されたシリコン酸化膜からなり、最上層膜がシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜からなることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記保護層は、少なくとも、前記多孔質材料層の側面と前記配線層の側面との一方を覆う形で形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、保護絶縁膜形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜を断熱部の所定の平面形状にパターニングする多孔質膜パターニング工程と、多孔質膜パターニング工程の後で保護絶縁膜を断熱部の所定の平面形状にパターニングする保護絶縁膜パターニング工程と、保護絶縁膜パターニング工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くすることを特徴とする赤外線センサの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、保護絶縁膜形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で多孔質膜および保護絶縁膜それぞれを断熱部の所定の平面形状にパターニングするパターニング工程と、パターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くすることを特徴とする赤外線センサの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、保護絶縁膜形成工程の後で保護絶縁膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜および保護絶縁膜それぞれを断熱部の所定の平面形状にパターニングするパターニング工程と、パターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、分離工程において保護絶縁膜の厚みを所望の保護層の厚みまで薄くすることを特徴とする赤外線センサの製造方法。
【請求項8】
請求項4記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で多孔質膜を所定の平面形状にパターニングする多孔質膜パターニング工程と、多孔質膜パターニング工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に保護層の基礎となる保護絶縁膜を形成する保護絶縁膜形成工程と、保護絶縁膜形成工程の後で保護絶縁膜を所定の平面形状にパターニングする保護絶縁膜パターニング工程と、保護絶縁膜パターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備えることを特徴とする赤外線センサの製造方法。
【請求項9】
請求項4記載の赤外線センサの製造方法であって、ベース基板の一表面側の全面に保護層の基礎となる第1の保護絶縁膜を形成する第1の保護絶縁膜形成工程と、第1の保護絶縁膜形成工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に多孔質材料層の基礎となる多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、多孔質膜形成工程の後で多孔質膜上に配線層および温度検知部を形成する配線層・温度検知部形成工程と、配線層・温度検知部形成工程の後で多孔質膜および第1の保護絶縁膜それぞれを所定の平面形状にパターニングする第1のパターニング工程と、第1のパターニング工程の後でベース基板の前記一表面側の全面に第1の保護絶縁膜とともに保護層の基礎となる第2の保護絶縁膜を形成する第2の保護絶縁膜形成工程と、第2の保護絶縁膜形成工程の後で第2の保護絶縁膜を所定の平面形状にパターニングする第2のパターニング工程と、第2のパターニング工程の後で断熱部をベース基板から分離させる分離工程とを備え、第2のパターニング工程において第2の保護絶縁膜の一部からなり多孔質材料層の側面および配線層の側面を覆う側壁保護膜を形成することを特徴とする赤外線センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−209161(P2008−209161A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44555(P2007−44555)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】