説明

赤外線検出装置並びに加熱調理器

【課題】赤外線センサーを加熱調理器本体へ取付ける際の歩留まりの改善と組み立て作業性の向上を図る加熱調理器を得る。
【解決手段】加熱調理器は、加熱器本体11と、この加熱器本体11の上部に設けられ被加熱物を載置する天板12と、を備え、加熱器本体11は、被加熱物14を天板12を介して加熱する加熱部16と、加熱部14を載置する固定板と、を備え、赤外線検出装置19は、赤外線を検出し、検出量に比例した信号を出力する赤外線センサーと、この赤外線センサー41を取付け角度を固定した状態で収納するセンサーケースと、赤外線センサー41の視野領域を修正可能なセンサー角度修正部材と、を備えた。センサー角度修正部材は固定板43と弾性体44と角度調整ネジとから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天板に載置された被加熱物から放射される赤外線量に基づいて被加熱物の温度を検出する赤外線検出装置並びにこの赤外線検出装置を備えた加熱調理を行う加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器では、天板下から上方へ予圧配置された接触式温度検知手段(サーミスタなど)が多く用いられている。しかし、天板下に配置された接触式温度検知手段を用いると、天板上に載置された被加熱物の容器形状が反っていたり、あるいは天板が加熱初期より予熱されていたりする場合には信頼性が著しく落ちてしまう。さらに天板(ガラス等)の熱容量もあるため温度検知には時間遅れが生じてしまうという問題がある。
この問題を解決するため、天板下に設置され、天板を透過した上で被加熱物から放射された赤外線量を検知して温度検知を行う非接触型温度センサーが知られている。しかし、この場合には150℃以下の波長帯は、天板を透過しないため検知できないという問題があった。
この問題を解決するため、天板の上方且つ側方より赤外線センサーを用いて天板上に載置された鍋やフライパンなどの調理容器(以下被加熱物という)の温度を直接検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3924720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来例では、被加熱物の温度を高い精度で検知するためには視野角を絞る必要があり、赤外線センサー(本発明では、以下、赤外線検出装置と呼ぶ)を製造する際に生じる寸法公差、組立て公差の管理を行う必要がある。即ち、取り付け時や使用時に、赤外線検出装置の設置角度がずれてしまう可能性が高い。また、赤外線検出装置1素子の赤外線検知領域は1°であるため、設置位置のわずかなズレが赤外線検知領域に大きく影響してくるため、角度管理が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するために為されたものであり、その目的は赤外線検出装置の加熱調理器本体への取付け調整の容易性を高めると共に、使用中に衝撃などによるズレが生じた場合でも位置補正が可能な構造とすることで赤外線検出装置を加熱調理器本体へ取付ける際の歩留まりの改善と組立て作業性の向上を図れる赤外線検出装置並びにこの赤外線検出装置を備えた加熱調理器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る赤外線検出装置は、測定対象物の赤外線を検出し、検出量に比例した信号を出力する赤外線センサーと、この赤外線センサーの取付け角度を固定した状態で収納するセンサーケースと、赤外線センサーの視野領域を修正可能なセンサー角度修正部材と、を備え、測定対象物から放射される赤外線量に基づいて測定対象物の温度を検出するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、赤外線検出装置の組み付け時にセンサー角度修正部材により視野領域を容易に修正できるため、センサーケースやセンサーケースを固定する固定板に取り付けの公差が生じても視野領域を調整できるため、歩留まりを改善でき温度検知性能が向上する。また、組立て作業性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の外観を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の加熱調理器の正面断面図である。
【図3】図1の加熱調理器の側面断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す平面図と斜視図である。
【図5】図4(b)の側面断面図である。
【図6】赤外線検出装置19を構成する温度検知素子の配列構成を示す図である。
【図7】図6(a)に示す各温度検知素子の赤外線検知領域を示す説明図である。
【図8】8眼赤外線検知部の各素子出力(赤外線LED点灯時)の図である。
【図9】本発明の実施の形態2における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。
【図10】図9の赤外線検出装置19を加熱調理器に適用した場合の要部拡大図である。
【図11】本発明の実施の形態3における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。
【図13】本発明の実施の形態5における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。
【図14】本実施の形態6における制御部22の処理フローを示すフローチャートである。
【図15】接触式温度検知部(サーミスタ)17を追加したときの加熱調理器の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の外観を模式的に示す斜視図であり、図2は図1の加熱調理器の正面断面図であり、図3は図1の加熱調理器の側面断面図である。
図1〜図3に示すように加熱調理器の本体11は、本体11の上面に配置され調理容器(以下、被加熱物という)14を載置するための例えばガラスやセラミクスなどの耐熱性材料から成る天板12と、本体11の上面の一側に配置されて機器のオン/オフや天板12上に載置される被加熱物14の加熱温度を設定する各操作スイッチ(図示せず)が設けられた操作部13と、機器のオン/オフや設定温度を表示する表示部15とを備えている。また、天板12の直下には天板12上に載置された被加熱物14を加熱するための加熱コイルで構成された加熱部16と、交流電源(図示せず)から供給される商用電力を高周波電力に変換して加熱部16に供給する駆動部(図示せず)とを備えている。
【0010】
赤外線検出装置19は、調理の邪魔とならずかつ他の被加熱物14によって邪魔されず、検知対象の被加熱物14の側面から発せられる赤外線を直接検知できるような天板の縁18、例えば、天板12の上面を臨むように天板12の上方に配置されており、図1〜図3に示すように加熱調理器の背面側の両隅の吸気口にそれぞれ1つずつ合計2個取り付けられる。この場合、正面から見て背面の左隅に設けられた赤外線検出装置19は、左の加熱口に載置された被加熱物14の側面(以下、鍋肌と呼ぶこともある)から発せられる赤外線を検知し、背面の右隅に設けられた赤外線検出装置19は、右の加熱口に載置された被加熱物14の側面から発せられる赤外線を検知する。これにより、赤外線検出装置19を片隅に設けるよりも被加熱物14によって赤外線検知領域423が遮られることなく高精度に温度検知が可能になる。
【0011】
演算部20は赤外線検出装置19で検出した赤外線量に比例した信号に増幅し、これをA/D変換して温度データに換算し、この温度データを後述の制御部22に出力する。また、本体11内には、操作部13から入力設定された信号を入力データに変換する入力部21と、制御部22とを備えている。制御部22は、操作部13から入力部21を介して入力設定された運転条件と、演算部20の検出温度とに基づいて駆動部を制御し、加熱部16の加熱動作を制御する。
なお、赤外線検出装置19は1個のみ設けて指向角度を可変にし、あるいは赤外線検出装置19自体を左右方向に移動可能にして移動しながら検知するように構成してもよい。
【0012】
次に、赤外線検出装置19の構成及び本体11への取り付けについて説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における赤外線検出装置19の構成を示す平面図と斜視図である。
図5は、図4(b)の側面断面図である。また、図5に示すように、赤外線検出装置19は、赤外線センサー41と、赤外線センサー41を収容するセンサーケース42とから構成されている。この場合、赤外線センサー41はセンサーケース42の底部に固定される。弾性体44はウレタンなどの弾性素材を平板状に成形し、この弾性素材を金属または非金属の平板で上下を挟んでサンドイッチ型に構成したものであり、この弾性体44の中心から点対称な4個所に孔が形成されている。
【0013】
また、センサーケース42の底部は外方にフランジ部421が延設されており、このフランジ部421には弾性体44のネジ孔に対応する4個所に孔が形成されている。
赤外線検出装置19は、加熱コイルなどの加熱部16を載置する固定板43の天板12と対向しない部位、例えば加熱調理器の吸気口に対応する部位に弾性体44を載置し、この弾性体44を固定板43とセンサーケース42の底部で挟み込んだ状態で4個の角度調整ネジ45であるボルトをセンサーケース42の底部のフランジ部421、弾性体44及び固定板43の孔に挿通し、ナットによって締め付けることで取り付けられ固定される。
なお、固定板43と弾性体44と角度調整ネジを併せてセンサー角度修正部材と呼ぶ。
【0014】
また、赤外線センサー41は立設部411と、この立設部411の上部に長手方向が垂直になるように取り付けられ、立設部411とは反対側の端部に少なくとも1つの検知素子を収容するセンサー本体412とから構成されている。また、センサーケース42のセンサー本体と対向する位置には透過窓422が形成されており、赤外線センサー41からこの透過窓422を通して赤外線検知領域423が形成される。
上記の角度調整ネジ45とナットによって締め付け度合いを調整することにより、赤外線センサー41の取り付け角度を調整することができ、これにより、赤外線センサー41の赤外線検知領域423が上下方向に変化する。
【0015】
図6は、赤外線検出装置19を構成する温度検知素子(以下、単に素子と呼ぶ場合もある)の配列構成を示す図であり、図6(a)は温度検知素子を上下方向に1列に配置した例を示す図であり、図6(b)は、温度検知素子を上下方向に千鳥状に2列に配置した例を示す図である。また、図7は、図6(a)に示す各温度検知素子の赤外線検知領域を示す説明図であり、図7(a)は各温度検知素子の赤外線検知領域を斜め上方から見た図であり、図7(b)は図7(a)における各温度検知素子の赤外線検知領域を側方から見た図である。左右逆になっているが、見る位置を変えただけであり、同じである。図6(a)に示すように、赤外線検出装置19は、例えば縦方向に配列された複数の温度検知素子191(191a〜191h)を備えており、ここでは8個配列して所謂8眼サ―モパイル(以下、8眼赤外線検出装置と呼ぶ)を構成している。また、図7には、8個同時に特定の温度検知素子(この例では温度検知素子191h)が赤外線検出装置19の配置位置の説明図である。各温度検知素子191(191a〜191h)は、被加熱物14から放射される赤外線を受光する。各素子1それぞれの赤外線検知領域の角度は例えば5度以内に設定され、天板12上の定位置に被加熱物14を載置した状態で、図5に示すように全素子191で被加熱物14の側面(鍋肌部)から鍋底部、更に天板部を赤外線検知領域423内に収めることができるように配置されている。
【0016】
図7の例では、センサー高さ/角度を特定条件で設置した場合には、センサー視野角は素子の配列に対して縦、横に幅を持つ。例えば横方向(X方向)に−1.5°〜+1.5°、縦方向(Y方向)に1°の視野角を有する場合には天板上には楕円状の赤外線検知領域を形成する。
図7(a)の波線で示された楕円状の赤外線検知領域が被加熱物14の載置位置を示す領域であり、この楕円状の赤外線検知領域の内部に素子191a〜191cによる赤外線検知領域a〜cが位置しており、素子191dによる赤外線検知領域dがサークルの波線に跨っており、素子191e〜191hによる赤外線検知領域e〜hがサークルの外部に位置している。
従って、素子191a〜191cは被加熱物14の鍋肌部から放射される赤外線を受光し、素子191dによる赤外線検知領域dで鍋底部から放射される赤外線を受光し、素子191e〜191hによる赤外線検知領域e〜hで天板12から放射される赤外線を受光することが分かる。
また、図7(a)及び図7(b)に示すように特定の赤外線検知領域(この例では、赤外線検知領域h)に赤外線LED71を配置しているが、これは位置決め用として用いられる。
【0017】
図8は8眼赤外線検出装置19の各素子出力(赤外線LED点灯時)の図である。
位置決め用の赤外線LED71を点灯し、赤外線検出装置19の出力値を計測した場合、特定の素子で検知するよう赤外線LED71を設置した場合、例えば素子191hを特定の素子として位置決めする場合、加熱初期で素子8の出力値が突出したデータとなるように角度調整する。特定の素子が任意の出力を返すよう角度調整するだけで角度管理が可能となるため,センサー設置角度管理が容易となる。
また,パルス状に赤外線LED71を出力すると,赤外線LED71のみの出力成分を分析でき,かつ,ユーザーに位置決め検知中ということを報知することができる。
また、赤外線LED駆動手段(図示せず)は、運転中に前記赤外線LED71を点滅させ、制御部22は、特定の検知素子191hによって検出された、赤外線LED71の点灯時の放射線量を取得し、赤外線LED71の滅灯時の放射線量を取得し、さらに双方の差分を算出して、赤外線LED71の放射線量を算出する。これを繰り返して、複数のデータを取得し、これらの平均を算出する。
このように差分をとり、さらに平均をとることにより、ノイズなどの外乱がある場合でも赤外線LED71の赤外線放射量を安定して検知することができる。
【0018】
また、加熱開始時に赤外線LED71の放射分を特定の素子で検知させ、この特定素子で所定以上の放射線量を検知できていれば運転を続行し、この特定素子が検知する放射線量が所定値よりも少なければ、赤外線センサーにズレが生じていることが判定されるので、制御部22は特願2008−284081号に記載された方法により赤外線検出装置のズレを補正する。これにより、センサー設置角度管理が自動で行われるので、手動による調整は不要であり、またより正確な角度管理が可能となる。
【0019】
本実施の形態1によれば、加熱部を載置する固定板の、天板と対向しない位置に赤外線検出装置に赤外線センサーをその取り付け角度が調整できるように取り付け可能な角度修正構造体を取り付けたので、赤外線センサーの取り付け角度を自由に調整できる。
なお、図6(b)に示すように温度検知素子を上下方向に千鳥状に2列に配置した場合には温度検知領域がさらに広がり、2つの温度検知領域を重ならせながら検知も可能となる。
【0020】
実施の形態2.
図9は本発明の実施の形態2における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。また図10は、図9の赤外線検出装置19を加熱調理器に適用した場合の要部拡大図であり、同時に赤外線検知領域も示している。
図9において、図5と同符号は同一または相当の手段である。
本実施の形態2では、角度調整ネジ45の取付け個所が2個所のみであることと、弾性体44は平板状の弾性素材を2枚の剛性を持つ平板で上下を挟むのでなく、平板状の弾性素材をコの字状の剛性を持つ板上下を挟むようにしたこと以外は図5と同様の構成であり、得られる効果も実施の形態1に加え、調整個所が実施の形態よりも少ないので調整が容易である。
【0021】
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。
図11において、図9と同符号は同一または相当の手段である。
本実施の形態3では、角度調整ネジ45を廃止し、代わりに弾性体44のコの字状の板オープン側の上部に直線状の歯を持つラック1101を取付け、一端が固定板43に固定され、他端がこのラック1101の所定の歯に係止させる棒状体1102をラックの複数の歯の長さに対応した長さを持つものを複数個具備するか、あるいは複数段階に伸縮可能な棒状体を具備する。これにより、弾性体44のコの字状の板オープン側の上部を上下に複数段階に微少移動させるセンサー角度修正部材を構成することができる。これにより実施の形態2とほぼ同様の効果を奏することができる。
なお、上記の例では、ラックとピニオンによる赤外線センサーの角度を調整であるがこれに限る必要はない。例えば、オープン側の上部に直線状の歯を持つラックを取付け、このラックに固定板43に固定された歯車(ピニオン)の歯を噛ませることで上下に微少移動させるセンサー角度修正部材を構成した。これにより、歯車にハンドルを取り付ければ、手動で赤外線センサーの角度を修正することができる。即ち、ハンドル操作のみで赤外線センサーの角度を調整できるので、操作が実施の形態1〜2よりも容易である。
【0022】
実施の形態4.
図12は本発明の実施の形態4における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。
図12において、図9と同符号は同一または相当の手段である。
本実施の形態4では、弾性体44を使用せず、代わりに、平板の一端を固定板43に取り付けて固定され、センサーケース42の赤外線検知素子側とは反対側に形成されたネジ溝が形成された立設部1201と、この立設部1201のネジ溝に長手方向が垂直になるように螺合するとともに、赤外線センサー41の立設部411の上部に当接するネジ1202と、を備えた点が異なる。
ここでは、ネジ1202を回転させることでネジの先端を赤外線センサー41の立設部411に当接させ、さらにネジを回転させることで、さらに赤外線センサー41の立設部411を押し込む。立設部411の下部は固定されているため、この操作により立設部411を倒すことができ、これにより、赤外線センサー41の角度を修正できる。
以上のように本実施の形態4によれば、実施の形態1〜3よりも簡単な構成でさらに操作性の簡易化とコスト低減を図ることができる。
【0023】
実施の形態5.
図13は本発明の実施の形態5における赤外線検出装置19の本体11への取り付け状況を示す側面断面図である。
図13において、図10と同符号は同一または相当の手段である。
本実施の形態5では、センサー角度修正部材は、弾性体をもたず、代わりに周囲に複数の歯を等間隔に形成した半円状の第1の歯車1301と、一端が固定板43に取付け固定され、第1の歯車1301と噛み合うように構成された第2の歯車1302を有する部材とから構成されている。
第1の歯車1301の半円形状の平面部はセンサー本体412の背面に例えば接着剤などで取付け固定される。また第2の歯車1302は、手動操作可能なハンドルを備えており、このハンドルを手動で回転させることにより、センサー本体を上下に首振りさせることができる。これにより、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0024】
実施の形態6.
本実施の形態では、経年変化対策として、赤外線LED71の寿命が到来した場合、あるいは赤外線LED71上に障害物が有る場合など赤外線LED71の出力が得られなかった場合には位置判定が不可能であるとしてその旨をユーザーに報知する場合について説明する。
【0025】
図1は本実施の形態6でも用いられる。
特定素子191hが赤外線LED71を検知しない、もしくは検知する個所に所定値を超えてズレが生じている場合には、補正もできないため、この場合には、制御部22は赤外線センサー設置角度にズレが生じていると判定して、ユーザーに異常の旨を報知する。
これにより、経年変化対策として、センサー特定の素子に規定(赤外線LED71の)出力値が得られなければ赤外線センサーに異常が発生したとして表示部5に異常の旨の報知を行う。
【0026】
また、図14は本実施の形態6における制御部22の処理フローを示すフローチャートであり、特定素子191hが赤外線LED71を検知しない場合の処理フローを示している。次に、本実施の形態6における制御部22の処理を図14を用いて説明する。
制御部22は図示しない初期処理によって実行回数を示すカウント値などをクリヤした後、赤外線LED71を点滅させてその差分を算出するため、まず、赤外線LED71を点灯させて、特定赤外線検知素子191hの出力(以下、この赤外線検知量をAとする)を取得する(ステップS1401〜S1402)。次に、制御部は赤外線LED71を消灯させて、特定赤外線検知素子191hの出力(以下、この赤外線検知量をBとする)を取得する(ステップS1403〜S1404)。次に、制御部22は、上記S1401〜S1404の実行回数を示すカウント値を所定回数と比較して所定回数繰り返し実行したか否かを判定する(ステップS1405)。まだ所定回数実行していない場合には、カウント値を1つ増やして(ステップS1406)、ステップS1401へ戻り、再び、同様の処理を行う。ステップS1405の判定において、実行回数が所定回数に到達したとき、制御部22は赤外線LED71を点灯した時の特定赤外線検知素子191hの出力の平均(特定赤外線検知素子191hの出力Aの総和を実行回数で除算したもの)を算出する(ステップS1407)。次に、制御部22は、このAの平均値が予め設定された下限値よりも小さいか否かを判定する(ステップS1408)。Aの平均値が予め設定された下限値よりも小さければ、赤外線LED71の寿命が到来したかあるいは赤外線LED71上に障害物が有ると判断して、表示部5に異常の旨を示す警報を例えば点滅で表示させて、ユーザーの注意を喚起させる(ステップS1414)。ステップS1408の判定において、Aの平均値が予め設定された下限値よりも小さくなければ、制御部22は正常であると判定して、赤外線LED71を点灯した時の特定赤外線検知素子191hの出力の平均(特定赤外線検知素子191hの出力Bの総和を実行回数で除算したもの)を算出する(ステップS1409)。次に、制御部22は、このBの平均値が予め設定された下限値よりも小さいか否かを判定する(ステップS1410)。Bの平均値が予め設定された下限値よりも小さければ、赤外線LED71の寿命が到来したかあるいは赤外線LED71上に障害物が有ると判断して、表示部5に異常の旨を示す警報を例えば点滅で表示させて、ユーザーの注意を喚起させる(ステップS1414)。ステップS1410の判定において、Bの平均値が予め設定された下限値よりも小さくなければ、制御部22は正常であると判定して、Aの平均値とBの平均値との差分(以下、この差分をCとする)を算出し(ステップS1411)、この差分Cが所定値よりも大きいか否かを判定する。差分Cが所定値よりも大きければ、制御部22は、赤外線検出装置19の位置が何らかの条件でズレが生じたと判定し、特願2008−284081号に記載された方法で赤外線検出装置19の位置を補正して(ステップS1413)、ステップS1401へ戻る。ステップS1412の判定において、差分Cが所定値よりも大きくなければ、ズレは生じなかったものと判定して、ステップS1401へ戻り、引き続き点滅動作を続行する。
【0027】
本実施の形態6によれば、特定素子191hが赤外線LED71を検知しない場合には、制御部は経年劣化などの異常、あるいは障害物に遮蔽されていると判定し、その旨を報知してユーザーの注意を喚起するので、ユーザーは対応処置を迅速に行うことができる。
【0028】
なお、上記の例では、表示部へ報知出力するように構成したが、表示部以外にもスピーカなどの音声出力手段を備えることで音声出力手段に出力して報知してもよい。
また、上記の例では、特定素子191hが赤外線LED71を検知しない場合には、報知出力を行ったがこれに限る必要はない。たとえば、図15に示すように天板12の下に接触式温度検知部(サーミスタ)17を追加して設置しておき、特定素子191hが赤外線LED71を検知しない場合には、報知出力を行う代わりに、この接触式温度センサーに切り替えるように構成してもよい。これにより、引き続き、検出することができるので、調理を継続する必要のある調理メニューでは有効である。処理フローとしては、図14のステップS1414を「接触式温度センサーに切り替える」とおきかえればよい。
【符号の説明】
【0029】
11 本体、12 天板、13 操作部、14 被加熱物、15 表示部、16 加熱部、17 接触式温度検知部、18 天板の縁、19 赤外線検出装置、20 演算部、21 入力部、22 制御部、41 赤外線センサー、42 センサーケース、43 固定板、44 弾性体、45 角度調整ネジ、71 赤外線LED、191(191a〜191c) 温度検知素子、411 立設部、412 センサー本体、421 フランジ部、422 透過窓、423 赤外線検知領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の赤外線を検出し、検出量に比例した信号を出力する赤外線センサーと、
この赤外線センサーの取付け角度を固定した状態で収納するセンサーケースと、
前記赤外線センサーの視野領域を修正可能なセンサー角度修正部材と、を備え、
前記被加熱物から放射される赤外線量に基づいて前記被加熱物の温度を検出することを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項2】
前記センサー角度修正部材は、弾性体と、
この弾性体を介して前記センサーケースを固定する外部の固定板に締め付け固定可能な締め付け部材と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置。
【請求項3】
前記センサーケースは前記センサーの視野角方向と垂直な方向に少なくとも2つの穴を形成したフランジ部を有し、前記弾性体及び前記固定板は前記フランジ部の穴に対応する位置に形成された穴を有し、
前記締め付け部材は、前記固定板と前記固定板の穴とを前記弾性体を介して挿通する少なくとも2つの挿通部材で構成されることを特徴とする請求項2に記載の赤外線検出装置。
【請求項4】
前記センサー角度修正部材は、前記センサーの視野角方向の少なくとも一端部に上下方向に等間隔に歯が付けられたラックを有する板状の弾性体と、
前記固定板に取り付けられ、このラックの歯に噛み合うように構成されたピニオンと、を備え、
前記ピニオンは、手動操作可能なハンドルを有することを特徴とする請求項2に記載の赤外線検出装置。
【請求項5】
前記赤外線センサーは平板の一端を固定板に取り付けて構成された立設部と、長手方向が前記立設部に垂直になるように回転可能に取り付けられ、一方の端部側に少なくとも1つの赤外線検知素子を収納するセンサー本体とを備え、
前記センサー角度修正部材は、前記センサー本体の赤外線検知素子側とは反対側の端部に形成された第1の歯車の一部と
前記固定板に取り付けられ、前記第1の歯車の一部と噛み合うように構成された第2の歯車とを備え、
前記第2の歯車は、手動操作可能なハンドルを有することを特徴とする請求項2に記載の赤外線検出装置。
【請求項6】
前記赤外線センサーは平板の一端を前記固定板に取り付けて構成された第1の立設部と、長手方向が前記第1の立設部に垂直になるように回転可能に取り付けられ、一方の端部側に少なくとも1つの赤外線検知素子を収納するセンサー本体とを備え、
前記センサーケースには孔が形成され、
前記センサー角度修正部材は、平板の一端を前記固定板に取り付けて構成され、ネジ孔を有する第2の立設部と、
前記ネジ孔のネジ溝に噛み合うように挿通され、前記立設部の上部に当接するネジと、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の赤外線検出装置。
【請求項7】
加熱器本体と、
この加熱器本体の上部に設けられ被加熱物を載置する天板と、を備え、
前記加熱器本体は、
前記被加熱物を前記天板を介して加熱する加熱部と、
前記被加熱物から放射される赤外線量に基づいて前記被加熱物の温度を検出する赤外線検出装置と、
前記加熱部を載置する固定板と、
請求項1〜6のいずれかに記載の赤外線検出装置を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項8】
前記赤外線検出装置の赤外線検知領域内の少なくとも1領域に赤外線波長帯の赤外線を放射する赤外線LEDを前記天板と前記固定板の下に配置したことを特徴とする請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記赤外線LEDは、この赤外線LEDから放射された赤外線が前記天板を介して前記赤外線検出装置へ最大の放射量が受光されるような向きに配置されることを特徴とする請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記赤外線検出装置は、運転中は、前記少なくとも1つの温度検知素子の内、特定の検知素子が前記赤外線LEDから受光する赤外線量が他の素子より多く受光できるように設置されることを特徴とする請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記赤外線LEDを駆動する赤外線LED駆動手段を備え、
この赤外線LED駆動手段は、運転中に前記赤外線LEDを点滅させ、
前記特定の検知素子によって検出された、前記赤外線LEDの点灯時の放射線量と前記赤外線LEDの滅灯時の放射線量との差分を算出して、前記赤外線LEDの放射線量を算出する制御部を備えたことを特徴とする請求項9に記載の加熱調理器。
【請求項12】
表示手段と、
運転中に前記特定の検知素子が、前記赤外線LEDからの放射線量を所定の時間以上検知しなかったと判定したら、赤外線LEDが異常あるいは、異物により受光を妨げられている旨を示すメッセージを前記表示手段に出力してユーザーに報知する制御部とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の加熱調理器。
【請求項13】
音声出力手段と、
運転中に前記特定の検知素子が、前記赤外線LEDからの放射線量を所定の時間以上検知しなかったと判定したら、赤外線LEDが異常あるいは、異物により受光を妨げられている旨を示すメッセージを前記音声出力手段に出力してユーザーに報知する制御部とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記天板の下部に接触式温度検知手段を備えたことを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−271290(P2010−271290A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125717(P2009−125717)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】