説明

走査光学装置及び画像形成装置

【課題】組立工程中に外力が加わったときの走査線位置ズレを抑制すること。
【解決手段】光源1と、光源1から出射した光束を偏向走査する光偏向器5と、光偏向器5によって走査された光束を感光体ドラム121に結像させる結像光学系6と、前記光源、偏向手段及び結像光学系を位置決め保持する装置筐体と、を有し、前記光源及び偏向手段を駆動制御する制御基板との電気的接続を行う束線のコネクタを有する走査光学装置において、前記コネクタは、弾性変形をする保持部又は弾性変形をする保持部材に保持されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを走査して静電潜像を形成する走査光学装置、及び該走査光学装置を用いて画像を形成するLBPやデジタル複写機、デジタルFAX等の電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、単一の走査光学装置を用いて各色を被走査面上に重ねる場合は、走査線曲がりは各色同じになる。このため、その影響による色ずれはある程度低減することができる。しかし、カラー画像を形成する場合には、複数の走査光学装置と複数の像担持体を組み合わせカラー画像の形成を行う。このため、高速対応の画像形成装置の場合、各色を構成する各走査装置の走査線曲がりが異なると、副走査方向のレジストレーションを合わせても各色間での走査線のずれが生じる。すると高精彩なカラー画像を形成することは困難となる。
【0003】
この問題に対して、結像レンズと像担持体の間に透明な平行平板を配置し、平行平板の長手方向の軸線周りに回動させることで走査線曲がりの補正を行っている(例えば、特許文献1参照)。このレジストレーションの合わせは数十μm以内で行われ、結像レンズを用いて補正する補正量に関しても同等の高精度なレベルが要求される。
【0004】
【特許文献1】特開平9−159944
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以下のような問題がある。
【0006】
走査光学装置の組立工程においては、光源や偏向器を駆動させるために、光源や偏向器に工具が接触している(例えば、特開2001−091886)。工具が接触している場合の変形の具体的な説明図を図7に示す。
【0007】
偏向器に工具が接触する時に発生する外力F1と、光源に工具が接触する時に発生する外力F2とで光学箱200や光源201が、202や203のように歪む。すると、工具により発生する外力が光源や偏向器を介して光学箱に伝わり、光学箱が歪む。光学箱が歪んだ状態で、走査線を調整すると、走査線204が走査線205のように傾いてしまう。このため、走査線を調整したのちに外力を除去すると、走査線が調整した値からずれ、各走査線のレジストレーションが悪化するおそれがある。
【0008】
このように、組立工程中、工具により発生する外力で走査光学装置の光学箱を歪ませてしまうと、走査線の調整を行う場合に位置ズレが生じるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、組立工程中に外力が加わったときの走査線位置ズレを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明に係る代表的な構成は、光源と、前記光源から出射した光束を偏向走査する偏向手段と、該偏向手段によって走査された光束を像担持体に結像させる結像光学系と、前記光源、偏向手段及び結像光学系を位置決め保持する装置筐体と、を有し、前記光源及び偏向手段を駆動制御する制御基板との電気的接続を行う信号線の接続部を有する走査光学装置において、前記接続部は、弾性変形をする保持部又は弾性変形をする保持部材に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成のように、前記保持部又は保持部材は弾性変形をする。このため、信号線のコネクタと制御基板との電気的接続をとる際、コネクタを保持部又は保持部材に接続する時に外力が加わった時、前記保持部又は保持部材が弾性変形をすることにより、前記外力を吸収することができる。このため、装置筐体には外力が加わらず、走査線を歪ませることを抑制することができる。従って、走査線位置ズレを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
図を用いて第1実施形態を具体的に説明する。説明において、画像形成装置、走査光学装置の説明をしたのち、本実施形態の特徴部分である束線のコネクタ周りの構成について説明する。図1は走査光学装置の斜視図であり、図2は第1実施形態における束線のコネクタ周りの側面図であり、図3は第1実施形態の変形例における束線のコネクタ周りの側面図であり、図4は画像形成装置の概略説明図である。
【0013】
(画像形成装置)
図4を用いて画像形成装置の概略説明を行う。図4に示すように、画像形成装置300は、複数個の感光体ドラム(像担持体)121、122、123、124を有する。また、1つの感光体ドラムに対して1つの走査光学装置100が配設される。また感光体ドラム121、122、123、124に対向する部分には、それぞれ、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、B(ブラック)の各色のトナーを供給する現像装置131、132、133、134を有する。また、感光体ドラムに対向する部分には、搬送ベルト141が配設される。更に、転写材Sの搬送方向上流側には給送カセット111や給送トレイ112等の給送手段が配設され、転写材Sの搬送方向下流側には定着手段151や排出手段161が配設される。
【0014】
この構成により、走査光学装置100によって走査線が出射されて感光体ドラム121〜124上に形成された静電潜像は、現像装置131〜134によって各色のトナーが供給されてトナー像となる。このトナー像は給送手段111、112から搬送ベルト141に給送される転写材Sに対して順次重なるように転写される。
【0015】
その後、転写材Sは定着手段151に搬送される。定着手段151では転写されたトナー像が転写材Sに対して定着される。その後、転写材Sは排出手段161に排出される。
【0016】
(走査光学装置)
図1を用いて走査光学装置の概略説明を行う。図1に示すように、走査光学装置100は、光源を出射する手段として、半導体レーザー等の光源1と、光源1から出射される発散光束を平行光束に変換する集光レンズ2と、集光レンズ2から出射される光束の光量を制限する絞り3と、光軸を含み主走査方向(矢印B方向)に直交する副走査方向のみ所定の屈折力を有するシリンドリカルレンズ(シリンダー)4と、を有する。
【0017】
また、モーター等の駆動手段により矢印方向に回転する回転多面鏡55を有する光偏向器(偏向手段)5と、fθ特性を有する結像光学系(fθレンズ)と、が配設される。結像光学系6は、主走査方向と副走査方向とで互いに異なる曲率を持つレンズにより構成している。このレンズは光学用プラスッチック材料により成型されている。また、結像光学系6の主走査方向上流側にはBDセンサー7が配置される。
【0018】
光源1と、光偏向器5と、BDセンサー7は、一本化される束線(信号線)8を介して光源1及び光偏向器5を駆動制御する制御基板(不図示)に接続され、該制御基板からの制御に基づいて駆動される。上記要素部品は、走査光学装置の筐体である光学箱(装置筐体)9に収納される。光学箱9は樹脂部材であり、図示しない蓋部材を組付けることで光学箱9内を密閉する。
【0019】
ここで、限定する必要はないが、本実施形態においては、光源1と、光偏向器5と、BDセンサー7を接続する束線8が、制御基板に接続されるコネクタ(接続部)10で一体化している。コネクタ10は、光学箱9に設けられた保持部11によって保持されている。また、束線8は前記制御基板との電気的接続を行う。
【0020】
上記構成により、光源1から出射される光束は、集光レンズ2、絞り3、シリンドリカルレンズ4を通り、光偏向器5の回転多面鏡55に偏向走査される。偏向走査される光束はまず、BDセンサー7に入射して、制御基板は走査線の書き出し位置を決定する。その後、光束が結像光学系6内を通過して、感光体ドラム121〜124上で光束が結像し、感光体ドラム121〜124上で静電潜像を形成する。
【0021】
(コネクタ10周りの構成及び作用について)
次に本発明の特徴部分について説明する。走査光学装置の組立時には、コネクタ10に工具のコンタクトプローブが矢印A方向から接続される。コネクタ10に工具のコンタクトプローブが接続される例を図2に示す。
【0022】
コネクタ10の保持部11は、弾性的に挟持して保持する形状を有するように構成されている。弾性変形をするためには、例えば、弾性部材で構成することや、弾性を有するように樹脂の肉厚を薄くする。
【0023】
この構成により、組立工程時において、コンタクトプローブ12が矢印C方向から接続されると、矢印C方向の外力が発生する。このとき、コネクタ10の保持部11は弾性を有するため、保持部11は一点鎖線14のように変形する。これにより、保持部11が矢印C方向の外力を吸収し、光学箱9に力が伝わることを抑制する。このため、光学箱9が変形して要素部品が収納されている部位が変形し、走査線にズレが生じる現象を抑制する。
【0024】
また、上記保持部11を、光学箱9と別部材としても同じ効果がある。図3は第1実施形態の変形例における束線のコネクタ周りの側面図である。図3に示すように、保持部材15は、光学箱9と別体に構成されたコネクタ10を保持する部材である。
【0025】
保持部材15は、光学箱9の材質より曲げ弾性率が低い材質で構成されている。ここで、曲げ弾性率とは、物体に曲げ荷重を加えた場合の荷重と撓みとの比をいい、曲げ弾性率が高いと撓みにくい。このため、光学箱9よりも保持部材15が撓みやすい構成となる。
【0026】
この構成により、コンタクトプローブ12を矢印D方向からコネクタ10に接続すると、矢印D方向に外力が生ずる。すると、保持部材15は、一点鎖線16のように撓む。これにより、保持部材15が矢印D方向の外力を吸収し、光学箱9に力が伝わることを抑制する。このため、光学箱9が変形して要素部品が収納されている部位が変形し、走査線にズレが生じる現象を抑制する。
【0027】
これにより、組立工程中に発生する外力を除去することが出来、光学箱9を歪ませることなく、走査線の調整や測定を行うことが出来る。
【0028】
〔第2実施形態〕
図を用いて第2実施形態を具体的に説明する。説明において、前述と同様の構成については説明を省略する。図5は第2実施形態における束線のコネクタ周りの側面図である。
【0029】
図5に示すように、走査光学装置100には保持部11を有する。ここで、保持部11は前述と同様、弾性を有する。
【0030】
走査光学装置100を画像形成装置のフレーム60に組付ける時には、コネクタ10が保持部11に保持された状態でフレーム60に組みつけられる。走査光学装置100をフレーム60に組付けた後、コネクタ10は保持部11から抜かれ、矢印E方向に移動され、図示しない制御基板に接続される。
【0031】
これにより、走査光学装置100を画像形成装置のフレーム60に組み付ける時には、コネクタ10及び束線8を保持することができる。このため、組付け作業時の束線挟みや、束線の取り回しを向上することが出来る。
【0032】
〔第3実施形態〕
図を用いて第3実施形態を具体的に説明する。説明において、前述と同様の構成については説明を省略する。図6(a)は第3実施形態における束線のコネクタ周りの側面図であり、図6(b)は保持部材とフレームの関係を示す拡大図である。
【0033】
図6に示すように、走査光学装置100には、光学箱9と別体の保持部材15が配設される。保持部材15の材質は、曲げ弾性率が光学箱9の材質のそれより低い。また、コネクタ10は保持部材15から走査光学装置100と反対側に引き抜くことができる。
【0034】
画像形成装置の板金等のフレーム61、62、63で、走査光学装置100を覆う場合、コネクタ10は、保持部材15で保持されたのち、フレームの開口部64から突出させた状態で取り付けられる。そして、走査光学装置100をフレーム61、62、63で覆った後、コネクタ10を図示しない制御基板に接続する。この際、保持部材15からコネクタ10を図6(a)に示す方向に引き抜いて接続する。
【0035】
通常、走査光学装置100を覆う場合等に、コネクタを保持するためには、フレーム61に端面を折り返すなどのエッジ処理をすることが必要となる。ここで、本実施形態によれば、フレーム61にエッジ処理をしなくとも、走査光学装置100の保持部材15によりコネクタ10を保持することができる。このため、フレーム61のエッジ処理を廃止することでコスト削減を実施することができる。また、制御基板にコネクタ10を接続する際の作業性も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】走査光学装置の斜視図。
【図2】第1実施形態における束線のコネクタ周りの側面図。
【図3】第1実施形態の変形例における束線のコネクタ周りの側面図。
【図4】画像形成装置の概略説明図。
【図5】第2実施形態における束線のコネクタ周りの側面図。
【図6】第3実施形態における束線のコネクタ周りの側面図。
【図7】従来における、工具が接触している場合の変形の具体的な説明図。
【符号の説明】
【0037】
S …転写材
1 …光源
5 …光偏向器(偏向手段)
6 …結像光学系
8 …束線(信号線)
9 …光学箱(装置筐体)
10 …コネクタ(接続部)
11 …保持部
15 …保持部材
100 …走査光学装置
121 …感光体ドラム(像担持体)
300 …画像形成装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射した光束を偏向走査する偏向手段と、該偏向手段によって走査された光束を像担持体に結像させる結像光学系と、前記光源、偏向手段及び結像光学系を位置決め保持する装置筐体と、を有し、前記光源及び偏向手段を駆動制御する制御基板との電気的接続を行う信号線の接続部を有する走査光学装置において、
前記接続部は、弾性変形をする保持部又は弾性変形をする保持部材に保持されることを特徴とする走査光学装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記信号線を前記制御基板に接続する接続部を弾性的に挟持して保持する形状を有することを特徴とする請求項1記載の走査光学装置。
【請求項3】
像担持体と、像担持体に走査線を出射することにより静電潜像を形成する走査光学装置と、を有する画像形成装置において、
前記走査光学装置は、請求項1又は2に記載の走査光学装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−181749(P2006−181749A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375356(P2004−375356)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】