説明

超大口径円環コンクリートブロック

【課題】 組立が容易で、その施工作業性に優れ、しかも合体後の強度、水理特性の良い2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックとその組立工法を提供する。
【解決手段】 一方の分割体1の接合面1bに適宜間隔に、あと施工アンカー4を拡張子5を付した拡張部4aを外に出して基部を埋設し、他方の分割体2の接合面2bには外周側に突き抜ける前記あと施工アンカー嵌挿用透孔6を設け、該透孔6に前記あと施工アンカー4を嵌挿して合体し、前記拡張子5を打ち込んで、拡張部4aを拡張すると共に、両分割体1,2の接合面及び、前記透孔6内に接着剤10,13を塗布又は注入して接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進管や沈設式立坑に用いられる2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックとその組立工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように下水道構築に用いられる推進管や沈設式立坑に用いられる円環コンクリートブロックの呼び径は、道路交通法の制約(輸送時の高さの制限)により3000mmまでであった。
【0003】
又、それらの円環コンクリートブロックは、通常遠心成形法により製造され、内面は鏝仕上げにより平滑にされるが、両端面は、型枠面となり平滑に仕上がる。しかし、推進時あるいは、沈設圧入時、ジャッキの圧力を分散する為、円環コンクリートブロックを継ぐ時、間にクッション材としてベニヤ板を挟むという作業を必要としていた。
【0004】
近年、前記道路交通法の問題を解決するため、例えば非特許文献1に示すように、2分割体を合体する形式の円環コンクリートブロックが提案され、呼び径3500mmの超大口径推進管による雨水幹線工事が検討されている。
【0005】
ところが2分割体を結合するために、非特許文献1の写真3に示すようにH型金具付の異形鉄筋を埋設し、前記H型金具にくさび型継ぎ手を専用ジャッキで打ち込む方法や、2分割体にそれぞれシース環を予め埋設しておき、その中にワイヤーを通して結び付ける方法が取られているが、製作が面倒でコスト高となっている。
【非特許文献1】野村宣彦,「西部処理区瀬谷飯田雨水幹線(その10)工事計画の概要と超大口径管推進工法の普及への期待」,月刊推進技術,社団法人 日本下水道管渠推進協会,平成16年12月10日, vol.18 No.12,12頁〜17頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、組立が容易で、その施工作業性に優れ、しかも合体後の強度、水理特性の良い2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックとその組立工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、第1の発明は、一方の分割体の接合面に適宜間隔に、あと施工アンカーを拡張子付拡張部を外に出して基部を埋設し、他方の分割体の接合面には外周側に突き抜ける前記あと施工アンカー嵌挿用透孔を設け、該透孔に前記あと施工アンカーを嵌挿して合体し、前記拡張子を打ち込んで、拡張部を拡張すると共に、両分割体の接合面及び、前記透孔内に接着剤を塗布又は注入して接着することを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明における各あと施工アンカーを、接合面に対して垂直に植設したことを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、各あと施工アンカーを接合面に対して傾斜させて植設したことを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【0010】
第4の発明は、第1の発明における各2分割体は、一方の端面を下にする型枠を用いて製造し、他方の端面をセルフレベリング性を有する高靭性モルタルで仕上げたものであることを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、2分割体の接合部の内外縁に沿って、スポンジシールを施したことを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【0012】
第6の発明は、一方の分割体の接合面に適宜間隔に、アンカーを植設し、他方の分割体の接合面には前記アンカー嵌挿用穴と、この穴内に接着材を注入するためのホースを設け、該六に前記アンカーを嵌挿して合体させ、且つ接合面間の内外縁に沿って、スポンジシールを配し、前記ホースを介して、前記穴内及び両分割体の接合面間に接着剤を注入して接着することを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【0013】
第7の発明は、一方の分割体の接合面に適宜間隔に、アンカー嵌挿用穴を設け、且つ接合面の内外縁に沿って、スポンジシールを設け、他方の分割体の接合面には前記穴に嵌入させるアンカーを植設し、前記穴に接着材を注入後、前記アンカーを穴に嵌挿して合体して接着することを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【0014】
第8の発明は、第1ないし第7の発明において接合部の接着面積を大とするため接着面の巾を大に、又は接着面を噛み合わせ型としたことを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロックである。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明の第1の効果は、2分割体合体タイプであるから、現場までは分割体を個別に輸送することにより道路交通法の制約を受けない呼び径が3000mm〜5000mmという大口径の推進管や沈設式立坑に用いられる円環コンクリートブロックを実現することができ、他の効果は、現場での組立作業を能率よく行うことができると共に、強度および水理特性の良い円環コンクリートブロックを提供することができることである。
【0016】
第2の発明は、現場で推進管を構成する場合、あと施工アンカーと合体させようとする分割体の透孔との嵌合作業を容易にする効果がある。
【0017】
第3の発明は、沈設式立坑用円環コンクリートブロックを構成する場合、あと施工アンカーと合体させようとする分割体の透孔との嵌合作業を容易にする効果がある。
【0018】
第4の発明は、2分割体を合体させて構成した円環コンクリートブロックの両端面がセルフレベリング性を有する高靭性モルタルで平滑に構成されるので、円環コンクリートブロックを継ぐ場合、ジャッキ圧力を分散するために必要とされていたクッション材としてのベニヤ材が不要となり、施工が簡単になると共にコスト削減に効果がある。
【0019】
第5の発明は、2分割体の接合面に塗布する接着剤が固化するまで内外に漏れ、接着剤による防水性が不充分となることを防止する効果がある。
【0020】
第6及び第7の発明は、現場に空地があり、使用時まで十分時間が取れる場合に好適な発明で、これらの発明によると、アンカーは構造簡単な、安価なもので済み、しかも分割体を合体させ作業が簡単になるという効果がある。
【0021】
第8の発明は、接合部の強度を高める効果がある。
【実施例1】
【0022】
図1〜図4は本発明を推進管に適用した場合の実施例を示すもので、図1は合体前の分割体の斜視図、図2はあと施工アンカーの植設状態と、あと施工アンカー嵌合用透孔の設け方と、現場での組立作業の手順を示す説明図、図3は本発明による推進管の接続直前の側面図、図4は同縦断側面図である。
【0023】
図1において、1,2は型枠成形した樋状の鉄筋コンクリート製分割体で、いずれも右側端面1a,2a側が下になるようにして型枠成形し、左側端面は高靭性モルタル3で平滑に仕上げ、分割体1の接合面1bには、図2に示すようにあと施工アンカー4を拡張子5を挿入した拡張部4aを上にして適宜間隔に垂直に植設されている。
【0024】
また、分割体2の接合面2bには前記あと施工アンカー4を挿入する外周側に突き抜ける透孔6が設けられている。
【0025】
そして、分割体1,2の左側端には接続用金属カラー7,7が設けられ、また胴部には吊インサート8,8が埋設されている。
【0026】
次に分割体1,2の組立手順(合体手順)について説明すれば次の通りである。
【0027】
工場又は保管場所から、分割体1,2を使用現場に輸送し、先ず、分割体1を立坑内又は立杭付近に降下させ、分割体1の接合面1bの内外縁上に紐状の含浸エポキシスポンジシール9,9を配置し、且つ接合面1bの全面に接着材10,10を塗布した後、分割体1のあと施工アンカー4を分割体2の透孔6に挿入させながら分割体2を吊り下げる。
【0028】
次に、図2の(b)に示すように打撃棒11を介してハンマー12によって拡張子5を叩き、あと施工アンカー4の拡張部4aを拡張させて透孔6の内面に係止させた後、透孔6内に接着材13を注入する。
【0029】
接着材13としては、ポリエステル系、エポキシアクリレート系、エポキシ系等の接着材が用いられる。
【0030】
分割体1,2はあと施工アンカー4と接着材10,13により、強固に合体する。
【0031】
分割体1,2の各端部に設けた接続用鋼製カラー7,7は合体後、熔接してリング状に一体化させる。
【0032】
以上のようにして組立構成した推進管Aを推進管Bに接続する場合、図3及び図4に示すように、接続用鋼製カラー7,7の内面に前記接続用鋼製カラーの熔接部の防水性をカバーするための水膨張性のシート状部材14を配置して先行する推進管Bと嵌合させる。この場合、本発明にかかる推進管A,Bは、右端、即ち、右端面1a,2aは、型枠成形時に平滑な定盤または型枠に接しているので、平滑になっており、また左端は高靭性モルタル3により平滑平面となっているので、従来のように防水用ベニヤ板を挟まなくとも接続部の防水性が得られる。
【実施例2】
【0033】
図5は推進管の異なる実施例を示すもので、この場合は透孔6’の深さを浅くして拡張部4aの拡張作業を容易にしたものである。
【実施例3】
【0034】
図6は本発明を沈設式立杭用円環コンクリートブロックに適用した場合の実施例を示すもので、(a)は合体前の斜視図、(b)はその側面図である。
【0035】
2分割分割体21,22の製造は、前に推進管の場合と同様に、鉄筋コンクリートで樋状に型枠成形し、上部端面21a,22aを高靭性モルタル23で平滑に仕上げ、一方の分割体21の接合面21bには、あと施工アンカー24を拡張子を挿入した拡張部を上にして適宜間隔に植設し、他方の分割体22の接合面22bには前記あと施工アンカー24を挿入する外囲側に突き抜ける透孔25を設ける。
【0036】
沈設式立杭用の場合、あと施工アンカー24の取付角度αと透孔25を設ける角度は、90°≧α>30°の範囲内が好ましく、分割体22を吊り下げ乍ら分割体21を合体させる場合、鋭角としておけば、(b)図からわかるように、作業性に勝れている。
【0037】
以上例示した実施例から明らかなように、本発明によれば、運搬可能な超大口径の推進管や沈設式立杭用円環コンクリートブロックを提供することができ、しかも加工及び現場組立がシンプルで確実な接合部構造が得られると共に、ジャッキ圧力の分散に貢献する端面の平面度が得られる製品を安価に提供することができる。また、水膨張性のシート状部材14を使用することにより鋼製カラー継手部の水密性を充分確保出来る等の効果があり大口径円環コンクリートブロックの構成として優れたものである。
【実施例4】
【0038】
図7は所謂ケミカルアンカー式施工法の様式を採った実施例を示すもので、一方の分割体31の接合面31aに前記実施例と同様に適宜間隔にアンカー33を植設し、他方の分割体32の接合面32aには、前記アンカー33の嵌挿用穴34と、この穴34に接着材35を注入するためのホース36を設けると共に、一方の分割体31の接合面31a上の内外縁に沿って含浸エポキシスポンジシール37,37を配し、前記アンカー33を穴34に嵌挿して、分割体31と32を合体させた後、ポンプ37により接着材35を前記穴34内及び両分割体の接合面間に注入して接着するものである。
【0039】
この実施例4の構成及び組立方法は、アンカー33は外面に凹凸を設けた簡単な構造のもので済み、また組立作業は容易である。
【0040】
しかし、接着材35が固化する迄時間を要するので、組立てられた円環コンクリートブロックが使用可能となるまで時間を必要とし、従って、現場に空地が無い場合には、不向きであるが、相当の空地がある場合は好ましい発明である。
【実施例5】
【0041】
図8は、前記実施例と同様ケミカルアンカー式施工法の様式を採った実施例を示すもので、一方の分割体41の接合面に41aに適宜間隔にアンカー嵌挿用穴43を設け、且つ接合面41aの内外縁に沿って、含浸エポキンスポンジシール44,44を設け、他方の分割体42の接合面42aには前記穴43に嵌入させるアンカー45を植設し、前記穴43に接着材46を注入後、前記アンカー45を穴43に嵌挿して合体し、接着するものである。
【0042】
この実施例5の構成及び組立方法は、前記実施例4より更に簡単且つ容易化され、実施例4と同様、現場組立において、使用時まで十分時間が取れる環境にある場合は、好ましいものである。
【0043】
なお、接合面の内外縁に沿って設ける含浸エポキンスポンジシールは、接着材が接着すべき部分より漏れることを防止する効果がある。
【実施例6】
【0044】
以上説明した実施例1〜5では、外径及び内径が円のものを例示したが、接合部の強度を高めるため、接合部の壁厚を厚くして楕円となるもの、また、水理特性、施工作業等を勘案して、内径を楕円、方形、馬蹄形あるいは特殊形状とすることは勿論である。
【0045】
即ち図9は、接合部の接合面積を大きくして、強度を高めるための、種々の実施例を示すもので、(a)は接合部の巾を他の部分より大きくしたものであり、(b)及び(c)は接合部を噛み合わせ構造として接合部面積を大きくしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の発明を推進管に適用した実施例1の場合の分割体を合体させる前の状態を示す斜視図。
【図2】実施例1の場合のあと施工アンカーの植設状態と、あと施工アンカー嵌合用透孔の設け方と、組立作業の手順を示す説明図。
【図3】実施例1における推進管の接続直前の側面図。
【図4】図3の縦断側面図。
【図5】実施例2における分割体を合体させる前の状態を示す斜視図。
【図6】第1の本発明を沈設式立杭用円環コンクリートブロックに適用した場合の実施例3を示す斜視図と側面図。
【図7】第6の発明にかかる実施例の構成及び組立方法を示す縦断面図。
【図8】第7の発明にかかる実施例の構成及び組立方法を示す縦断面図。
【図9】他の異なる実施例の縦断面図。
【符号の説明】
【0047】
1,2 分割体
3 高靭性モルタル
4 あと施工アンカー
5 拡張子
6 透孔
7 接続用鋼製カラー
8 吊インサート
9 含浸エポキシスポンジシール
10,13 接着材
11 打撃棒
12 ハンマー
14 水膨張性シート状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の分割体の接合面に適宜間隔に、あと施工アンカーを拡張子付拡張部を外に出して基部を埋設し、他方の分割体の接合面には外周側に突き抜ける前記あと施工アンカー嵌挿用透孔を設け、該透孔に前記あと施工アンカーを嵌挿して合体し、前記拡張子を打ち込んで、拡張部を拡張すると共に、両分割体の接合面及び、前記透孔内に接着剤を塗布又は注入して接着することを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。
【請求項2】
各あと施工アンカーを接合面に対して垂直に植設したことを特徴とする請求項1記載の2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。
【請求項3】
各あと施工アンカーを接合面に対して傾斜させて植設したことを特徴とする請求項1記載の2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。
【請求項4】
各2分割体は、一方の端面を下にする型枠を用いて製造し、他方の端面をセルフレベリング性を有する高靭性モルタルで仕上げたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。
【請求項5】
2分割体の接合部の内外縁に沿って、スポンジシールを施したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。
【請求項6】
一方の分割体の接合面に適宜間隔に、アンカーを植設し、他方の分割体の接合面には前記アンカー嵌挿用穴と、この穴内に接着材を注入するためのホースを設け、該六に前記アンカーを嵌挿して合体させ、且つ接合面間の内外縁に沿って、スポンジシールを配し、前記ホースを介して、前記穴内及び両分割体の接合面間に接着剤を注入して接着することを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。
【請求項7】
一方の分割体の接合面に適宜間隔に、アンカー嵌挿用穴を設け、且つ接合面の内外縁に沿って、スポンジシールを設け、他方の分割体の接合面には前記穴に嵌入させるアンカーを植設し、前記穴に接着材を注入後、前記アンカーを穴に嵌挿して合体し接着することを特徴とする2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。
【請求項8】
接合部の接着面積を大とするため接着面の巾を大に、又は接着面を噛み合わせ型としたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の2分割体合体タイプの超大口径円環コンクリートブロック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−265928(P2006−265928A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85270(P2005−85270)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000210687)秩父コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】