説明

超微細エマルジョンで構成される皮膚外用剤

【課題】 経時安定性が良好で、生理活性物質の経皮吸収性をも向上させた、抗酸化、美白、皮膚しわ抑制、皮膚保湿、角質除去、タンパク質合成効果等の効果が優れる皮膚外用剤の提供。
【解決手段】 1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用いて製造する数100ナノ〜数ミクロメータサイズの乳化粒子を、高圧下でショ糖脂肪酸エステルを利用して数〜数10ナノメータサイズの乳化粒子までに微細化、更に、水溶性高分子を併用することにより、安定性を大きく向上させ、皮膚への経皮吸収性を高めた皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用いて製造する数100ナノ〜数ミクロメータサイズの乳化粒子を、高圧下で親水性ショ糖脂肪酸エステルを利用して数〜数10ナノメータサイズの乳化粒子までに微細化、更に、水溶性高分子を併用することにより、安定性を大きく向上させ、皮膚への経皮吸収性を高めた皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の一次防御膜であって、体内の諸器官を温度・湿度変化、紫外線、公害物質など外部環境の刺激から保護する機能を有する。このような機能を有する皮膚の老化現象を防止すると共に、より健康で且つ美しい皮膚を維持するため、従来、各種動物、植物、微生物等から得られた生理活性物質を化粧品に加えて使用することにより、皮膚の固有機能を維持し、皮膚細胞を活性化させて、皮膚老化及びメラニンの沈着を効果的に抑制するための努力がなされてきた。
【0003】
特に、皮膚に有効活性成分を吸収させ、活性成分が直接的に作用するように誘導する経皮吸収技術に対する研究が盛んに進んで来た。このような経皮吸収に利用された方法は、次のように分類することができる。
【0004】
まず、生理活性物質を適当な溶剤に溶解させ、周期的に皮膚に塗布することにより、皮膚内に有効活性成分を伝達する非常に基礎的な方法がある。この場合、多くの生理活性物質に対して適当な溶剤を選定しなければならないが、このような活性成分を溶解させることができる溶剤を選定することが困難である。また、溶剤により皮膚刺激が発生することもあり、化粧料において使用感の調節が不可能なので、製品化が難しくて、この頃非常に制限的に使用されている。
【0005】
次いで、使用感を改善し、有効活性成分の経皮吸収を促進するため、乳化物の形態の経皮吸収剤が開発された。初期には、マイクロメータサイズの乳化粒子内部に有効活性成分を含有させた方式から、次第にナノメータサイズの乳化粒子を製造してその中に有効活性成分を含有させる技術へ発展した。特に、最近、油溶性薬物と脂質、グリセロールと水、リン脂質又は水溶性非イオン性界面活性剤を使用して、ナノメータサイズ〜マイクロメータサイズの乳化粒子を製造する技術が報告されている(米国特許第5,338,761号)。また、電荷を有するリン脂質を乳化剤として使用したナノ粒子を製造する技術が報告されている(米国特許第6,120,751号)。また、乳化剤、オイル及び水よりなる3相が適当な濃度をなす時に形成されるマイクロエマルジョンを用いたナノサイズの乳化粒子の製造に関する技術が報告されている(米国特許第5,152,923号、WO91/006,286、 WO91/006,287)。
【0006】
しかしながら、上記従来の技術において、用いられる乳化剤の種類や配合量によっては、皮膚刺激性や眼粘膜刺激性が認められたり、感作性が認められたりするといった安全性上問題のあるものが存在する。この点、ポリグリセリル脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルは、安全性の高い非イオン性界面活性剤として幅広い分野で使用されてきたが、乳化力が弱く、微細エマルションを調製するにはかなり多量を配合する必要があった。また、油に対してこれら乳化剤の配合量が少ないと、エマルジョンの粒子径が大きくなり、層分離などが起こりやすく、特に低温,高温での温度変化によるエマルジョンの合一が観察され、安定性に問題があった。
【0007】
また、不安定な活性成分を含有させる場合、乳化膜が外相(連続相)の水分子と動的平衡状態に置かれるので、乳化物の内部にある有効活性成分が持続的に水と接し、酸化、分解による変成が生ずるという問題がある。従って、高濃度の有効活性成分を含有するためには、多くの量の乳化剤を使用しなければならないが、この場合、乳化剤によって皮膚刺激などが誘発されるという問題がある。
【特許文献1】米国特許第5,338,761号公報
【特許文献2】米国特許第6,120,751号公報
【特許文献3】米国特許第5,152,923号公報
【特許文献4】WO91/006,286号公報
【特許文献5】WO91/006,287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、安定化したナノ乳化粒子で構成される皮膚外用剤を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の課題は、上記ナノ乳化粒子に含有された生理活性物質が様々な条件において安定化し、皮膚への経皮吸収性を高めた皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用いて製造する数100ナノ〜数ミクロメータサイズの乳化粒子を、高圧下で親水性ショ糖脂肪酸エステルを利用して数〜数10ナノメータサイズの乳化粒子までに微細化、更に、水溶性高分子を併用することにより、ナノ乳化粒子自体の物理化学的な安定度が大きく向上すると共に、粒子内に含有された生理活性物質が様々な条件において、安定性が大きく向上、皮膚への経皮吸収性が高まるという事実を見出し、本発明を完成することに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上説明したように、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用いて製造する数100ナノ〜数ミクロメータサイズの乳化粒子を、高圧下で親水性ショ糖脂肪酸エステルを利用して製造したナノ乳化粒子及び、更に、水溶性高分子を併用して製造した角質層細胞間隔(50nm程度)未満に微細化されたナノエマルジョンを特徴とするため、物理・化学的に極めて安定した状態を長期間維持する特徴があり、既存のエマルジョンに比べて緻密な乳化膜を形成することによる内部の生理活性物質の酸化を防ぐ機能が発現し、皮膚への経皮吸収性が促進する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0013】
本発明は、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として用いて製造する数100ナノ〜数ミクロメータサイズの乳化粒子を、高圧下で親水性ショ糖脂肪酸エステルを利用して数〜数10ナノメータサイズの乳化粒子までに微細化、更に、水溶性高分子を併用することにより、ナノ乳化粒子自体の物理化学的な安定性を向上させると共に、ナノ粒子内に不安定な生理活性物質を安定に含有、保管することができるようにしたものである。また、角質層細胞間隔(50nm程度)未満のナノ乳化粒子を製造することにより、皮膚への経皮吸収性を高めたものである。
【0014】
本発明において高圧下とは、高圧処理ができる乳化機を使用した条件下をいい、特に限定されるものではないが、既存の高圧乳化機としては、例えば、マイクロフルイタイザー(みづほ工業社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、アルティマイザー(タウテクノロジー社製)などがあげられる。処理する圧力は特に限定されるものではないが、20〜275 MPa、好ましくは50〜250 MPaがよい。処理する圧力が250 MPaを超えると、配管としての耐圧性に注意する必要があり、50 MPaより低いと目的とする微粒子化ができない場合もある。また、平均粒子径50nm以下であっても、経時的に沈殿物等が生じ、皮膚外用剤としては好ましくない場合もある。
【0015】
本発明において使用する水溶性高分子の種類は、その種類は特に限定されないが、例えば、アカシアガム、イリシモス, カラヤガム, トラガカントガム,グアヤクガム, キサンタンガム,ロカストビンガム等の天然由来ガム類、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、グロブリン、フィブリン、及びセルロース、デキストリン、ペクチン、澱粉、アガ、マンナン等のセルロース系誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエーテル等のポリビニル化合物、ポリアクリル酸、カボポール等のポリカルボキシ酸、ポリエチレングリコール等のポリエチレン化合物、ポリスクロース、ポリグリコース、ポリラクトース等の多糖類及びこの塩類等がある。
【0016】
本発明のナノ乳化粒子に含有されることができる生理活性成分は、その種類は特に限定されないが、例えば、抗生剤、抗腫瘍剤、抗炎症剤、解熱剤、鎮痛剤、抗浮腫剤、鎮咳裾痰剤、鎮静剤、筋肉弛緩剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗憂鬱剤、抗アレルギー剤、強心剤、抗不整脈剤、血管拡張剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、恒常性剤、ポリペプチド、ホルモンなどの医薬原料、抗酸化剤、美白原料、コラーゲン合成促進剤などのしわ除去・緩和剤、皮膚障壁強化剤及び皮膚保湿力増強剤などが含有されることができる。
【0017】
より具体的には、インドメタシン、グリチルレチン酸ステアリル、副腎皮質ホルモン等の抗炎症・抗浮腫剤;ホルモン医薬品;補酵素Q10、レスベラトロール、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンC誘導体、ビタミンEとその誘導体等の抗酸化剤;ミノキシジル、TGF(transforming growth factor)、EGF(epidermal growth factor)、FGF(fibroblast growth factor)、IGF(insuline-like growth factor)、テストステロン、アンドロゲン等の育毛剤;美白原料;コラーゲン合成促進剤等のしわ除去・緩和剤;セラミド、スフィンゴシン等の皮膚障壁強化剤及び皮膚保湿力増強剤等がナノ乳化粒子に含有されることができ、ナノ乳化粒子の内部に含有された有効活性成分の種類及び含量は、目的及び場合によって調節可能である。
【0018】
本発明において角質層細胞間隔(50nm程度)未満とは、本発明の皮膚外用剤の粒子径を、市販の動的光散乱法による粒子径測定装置である堀場製作所製のLB-550Vまたはこれに準ずる装置により測定したとき、平均粒子径50nm未満のものをいう。また、平均粒子径が100nm以下のものは、経時的な平均粒子径の変化が少なく、外観上もほとんど変化がなく好ましい。一方、平均粒子径が100nmを超えると、経時的な平均粒子径の変化が大きく、沈殿物等の外観上の変化があり好ましくない。
【0019】
本発明の皮膚外用剤としては、例えば、化粧水、乳液、クリーム、洗顔料、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、パック料などとして用いることができる。特に、粘度の低い液状或いはペースト状の製剤に好適である。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、各種成分、例えば、スクワランなどの炭化水素類、油脂、ロウ類、各種エステル油、動物油、植物油、シリコーン油、脂肪酸、高級アルコールなどの油剤、エタノール、多価アルコールなどのアルコール類、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、リン脂質などの両親媒性物質、酸化チタン、マイカ、酸化鉄などの顔料、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウムなどの高分子類、色素、アミノ酸類(グリシン・セリン・ピロリドンカルボン酸ナトリウム)、糖類(グルコース・ショ糖・トレハロース・硫酸化トレハロース・プルラン・マルトース・カルボキシメチルデキストラン)、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、キレート剤などを適宜配合することができる。
【0021】
本発明のナノ乳化粒子を製造する時用いられる1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと親水性ショ糖脂肪酸エステルの使用量は、内部に含有された活性成分の種類、徐放化、物理化学的性質等によって異なるが、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総量は、活性成分の量に対して0.1〜100倍の質量比で、好ましくは、1〜5倍の質量比で使用し、親水性ショ糖脂肪酸エステルは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総量に対して0.001〜20倍の質量比で、好ましくは、0.1〜2倍の質量比で使用する。
【0022】
以下、本発明を実施例及び試験例を例に挙げて詳しく説明するが、本願発明がこれらの例に限定されるものではない。なお、例中の部は、特に断りのない限り重量部を示す。
【0023】
ナノ乳化粒子及びその内部に含有させた活性成分の安定化の程度を確認するため、次のようにレチノール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル及び酢酸トコフェロールを生理活性成分で内部に含有させた化粧用美容液(ナノエマルジョン)<実施例1〜4>と、その比較対照として化粧用美容液(ミクロエマルジョン)<比較例1〜4>を製造し、実施例を表1に、比較例を表2に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
〔実施例の製法〕
前記水相の原料を混合し、加熱して70℃に保ち、水相部とする。一方、前記油相の原料を混合し、加熱溶解して70℃に保ち、油相部とする。この油相部を水相部に加え、ホモジナイザーを使用して10,000rpmで5分間、乳化した直後、高圧乳化機を使用して3回処理し、予備エマルジョンを作製する。次いで、前記高分子相部の原料を混合した高分子相部に、70℃に保った予備エマルジョンを混合、30℃まで冷却して、化粧用美容液(ナノエマルジョン)を得る。
【0026】
【表2】

【0027】
〔比較例の製法〕
前記水相の原料を混合し、加熱して70℃に保ち、水相部とする。一方、前記油相の原料を混合し、加熱溶解して70℃に保ち、油相部とする。この油相部を水相部に加え、ホモジナイザーを使用して10,000rpmで5分間、乳化する。更に、30℃まで冷却して、化粧用美容液(ミクロエマルジョン)を得る。
【0028】
<試験例1>エマルジョンの経時安定性
エマルジョンの経時安定性を確認するため、各々のエマルジョンを温度別に条件を異ならせて保管し、30日が経過した後、ナノ乳化粒子の分散安定性及び乳化安定性を確認した。ナノ乳化
粒子の粒径の増減を測定するため、上記実施例及び比較例で使用した動的レーザー光散乱法(堀場製作所製LB-550V)を使用して測定した。その結果は表3に示した。
【0029】
【表3】

【0030】
上記表3から、親水性ショ糖脂肪酸エステルを除き、ホモジナイザーのみで乳化された場合のミクロエマルジョン<比較例1〜4>は、長期保管による経時安定性が比較的低く、37℃以上の温度条件において層分離などが肉眼で観察される粒子を形成する。その一方、高圧下で親水性ショ糖脂肪酸エステルを併用して、乳化された場合のナノエマルジョン<実施例1〜4>は、1ヶ月が経過した後でも物理的に安定に分散されていることが分かる。
【0031】
<試験例2>生理活性成分の経時安定性の確認実験
ナノ乳化粒子に含有された生理活性成分の経時安定性を定量的に確認するため、高速液体クロマトグラフィーを使用して残存量を測定した。各々の実施例、比較例の生理活性成分の開始前含有量を100%に換算し、その残存量を計算した。保管条件は25℃恒温槽を使用した。その結果は表4に示した。なお、各々の成分に対する分析条件は次の通りである。
〔レチノールの定量分析条件〕
a.カラム:Shim-pack CLC-ODS(6mmφ×150mm, 5μm)
b.移動相:アセトニトリル/メタノール=80/20
c.流速:1.0ml/min
d.検出器:UV254nm
e.カラム温度:25℃
〔テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの定量分析条件〕
a.カラム:Shim-pack CLC-ODS(6mmφ×150mm, 5μm)
b.移動相:メタノール/エタノール/クロロホルム=2/2/1
c.流速:2.0ml/min
d.検出器:UV236nm
e.カラム温度:25℃
〔酢酸トコフェロールの定量分析条件〕
a.カラム:Shim-pack CLC-ODS(4.6mmφ×250mm, 5μm)
b.移動相:メタノール
c.流速:2.0ml/min
d.検出器:UV280nm
e.カラム温度:50℃
【0032】
【表4】

【0033】
上記の実験結果から、親水性ショ糖脂肪酸エステルを除き、ホモジナイザーのみで乳化された場合のミクロエマルジョン<比較例2〜4>に含有された生理活性成分は、25℃保管条件において急激に減少することが分かる。その一方、高圧下で親水性ショ糖脂肪酸エステルを併用して、乳化された場合のナノエマルジョン<実施例2〜4>に含有された生理活性成分は、長期間安定に保管が可能であることを確認することができた。このような結果は、1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと親水性ショ糖脂肪酸エステルが高圧下で非常に緊密な構造を形成し、外相(連続相)の水分子の乳化粒子内部への侵入を抑制することにより、乳化粒子内部の活性成分が水と接触する確率が減少するために現れる現象と予想される。
【0034】
<評価例1>経皮吸収促進効果
ナノ乳化粒子に含有された生理活性成分の経皮吸収促進効果を確認するため、ヒト皮膚再構築モデル(TEST SKIN/東洋紡社製)を用いたin vitro試験により、24時間後に経皮吸収された生理活性成分の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを使用して測定した。各々の実施例、比較例の生理活性成分の開始前含有量を100%に換算し、その経皮吸収量を計算した。なお、装置としては、Franzs型の拡散セルを用い、その上にTEST SKINを接着させて、0.1mLの試料を塗布、レセプターにbufferとして40%PEG400(in PBS)を拡散セル内で撹拌した。その結果は表5に示した。
【0035】
【表5】

【0036】
上記の実験結果から、親水性ショ糖脂肪酸エステルを除き、ホモジナイザーのみで乳化された場合のミクロエマルジョン<比較例2〜4>に比べ、高圧下で親水性ショ糖脂肪酸エステルを併用して、乳化された場合のナノエマルジョン<実施例2〜4>が、含有された生理活性成分の皮膚への経皮吸収性を促進することを確認することができた。このような結果は、皮膚に対し、角質層細胞間隔(50nm程度)未満のナノエマルジョンの物理的な経皮吸収促進効果を示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、角質層細胞間隔(50nm程度)未満に微細化されたナノエマルジョンであり、物理・化学的に安定した状態を長期間維持する特徴があることから、生理活性物質の酸化を防ぐ機能を有し、皮膚への経皮吸収性が促進されるため、広く医薬品や化粧料に応用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ショ糖脂肪酸エステル類を含有する水相に1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する油相を加えて調製された予備エマルジョンを高圧下で微細化し得たナノ乳化粒子と、水溶性高分子を含有してなること特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
上記親水性ショ糖脂肪酸エステルがラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、オレイン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ヤシ脂肪酸スクロースから選択されることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルがモノステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、ジオレイン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、ペンタオレイン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、テトラベヘン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリル、ポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタヒドロキシステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、ヘプタステアリン酸デカグリセリル、ヘプタオレイン酸デカグリセリル、デカステアリン酸デカグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、デカオレイン酸デカグリセリル、デカマカデミアナッツ脂肪酸デカグリセリル、ポリリシノレイン酸デカグリセリルの1種又は2種以上から選択されることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
上記ナノ乳化粒子が角質層細胞間隔(50nm程度)未満であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
上記ナノ乳化粒子の内部に生理活性物質を含有していることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
上記生理活性物質は、抗生剤、抗浮腫剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、鎮咳裾痰剤、筋肉弛緩剤、鎮静剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗憂鬱剤、抗アレルギー剤、強心剤、抗不整脈剤、血管拡張剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、恒常性剤、ポリペプチド、抗酸化剤、ホルモン剤、抗菌剤、育毛剤、養毛剤、美白原料、しわ除去・緩和剤、皮膚障壁強化・皮膚保湿力増強剤及び角質除去酵素よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の皮膚外用剤。


【公開番号】特開2006−273821(P2006−273821A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99962(P2005−99962)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】