説明

超電導線材の損失の測定方法および測定装置

【課題】長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することのできる測定方法および測定装置を提供する。
【解決手段】超電導線材の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。第1区間の超電導線材1に、周波数F1および電流値I1で電流を流し、電圧値V1,1,1を得る。第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の超電導線材1に、周波数F1および電流値I1で電流を流し、電圧値V1,1,nを得る。電流値I1と電圧値V1,1,1とに基づいて、第1区間における電流値I1に対応する損失L1,1,1を計算する。電流値I1と電圧値V1,1,nとに基づいて、第n区間における電流値I1に対応する損失L1,1,nを計算する。上記の電圧値を得る工程の各々において、定電流源6から超電導線材1に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1および電圧値V1,1,nを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超電導線材の損失の測定方法および測定装置に関し、より特定的には、100mを超える長尺の超電導線材の損失の測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材は大容量の電力を低損失で送電することが可能であることから、これをケーブルなどに用いることにより、省エネ・CO2削減に大きく貢献できると期待されている。一方、超電導線材に交流電流を流すと、超電導線材における微小な損失(交流損失)により僅かな熱が発生するため、温度上昇を抑えるための冷却が必要となる。交流損失が大きいと熱の発生も大きくなるため、大型の冷凍機が必要となり、経済性を損なう。このため、超電導線材の損失を正確に評価することが求められている。
【0003】
超電導線材の交流損失の評価方法は、たとえば特開平10−82807号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1においては、始めに、円筒形の芯材と、この芯材に螺旋状に巻き付けられた複数本の超電導線とを備える超電導導体に対して、四角形の回路ABCDを設ける。この回路ABCDのうち、辺ABは超電導導体に通電する際に電場および磁場が0である位置に設けられ、辺DCは辺ABと平行に設けられる。次に、導体を構成する超電導線に交流電流を流し、その際の磁場によって回路ABCDに誘起される電圧を測定する。そして、得られた電圧から超電導導体の交流損失を算出する。
【特許文献1】特開平10−82807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、長尺の超電導線材の損失を正確に測定することができなかった。すなわち、超電導線材を流れる電流やその電流の周波数が変化すると、超電導線材のインダクタンスに起因する誘導起電力が発生する。このため、周波数または電流値の異なる条件で損失を測定しようとすると、超電導線材を流れる電流が不安定となり、測定される損失の精度が低かった。
【0005】
加えて、特許文献1の方法では、回路ABCDが設けられた区間以外の部分の損失を測定することができないため、長尺の超電導線材の損失を測定することができなかった。また回路ABCDの大きさを大きくすることによって測定する区間を長くしようとすると、測定される損失の精度が低下していた。
【0006】
したがって、本発明の目的は、長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することのできる測定方法および測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に従う超電導線材の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する。第1区間の超電導線材に、一の周波数F1および一の電流値I1で電流を流し、電圧値V1,1,1を得る。第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の超電導線材に、一の周波数F1および一の電流値I1で電流を流し、電圧値V1,1,nを得る。一の電流値I1と電圧値V1,1,1とに基づいて、第1区間における一の電流値I1に対応する損失L1,1,1を計算する。一の電流値I1と電圧値V1,1,nとに基づいて、第n区間における一の電流値I1に対応する損失L1,1,nを計算する。上記の電圧値V1,1,1を得る工程および電圧値V1,1,nを得る工程の各々において、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1および電圧値V1,1,nを得る。
【0008】
本発明の一の局面に従う超電導線材の損失の測定方法によれば、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持することにより、超電導線材のインダクタンスに起因する誘導起電力が小さくなり、超電導線材を流れる電流が安定する。この状態で電圧値を得るので、正確な電圧値を得ることができる。その結果、超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間に区分し、区間ごとに損失が得られるので、長尺の超電導線材についてもその損失を精度よく測定することができる。
【0009】
本発明の一の局面に従う超電導線材の損失の測定方法において好ましくは、第1区間〜第N区間までの一の電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程をさらに備えている。
【0010】
これにより、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたる損失L1,1が、区間ごとの損失に基づいて得られる。その結果、長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することができる。
【0011】
本発明の他の局面に従う超電導線材の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する。第1区間の超電導線材に、一の周波数F1で電流値I1〜IM(I1≦Im-1≦Im≦IM、Mは2≦Mを満たす整数、mは2≦m≦Mを満たすすべての整数)の各々の電流を流し、電流値I1〜IMの各々に対応する電圧値V1,1,1〜VM,1,1を得る。第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の超電導線材に、一の周波数F1で電流値I1〜IMの各々の電流を流し、電流値I1〜IMの各々に対応する電圧値V1,1,n〜VM,1,nを得る。電流値I1〜IMと電圧値V1,1,1〜VM,1,1とに基づいて、第1区間における電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,1〜LM,1,1の各々を計算する。電流値I1〜IMと電圧値V1,1,n〜VM,1,nとに基づいて、第n区間における電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,n〜LM,1,nの各々を計算する。上記の電圧値V1,1,1〜VM,1,1を得る工程および電圧値V1,1,n〜VM,1,nを得る工程の各々において、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1〜VM,1,1および電圧値V1,1,n〜VM,1,nの各々を得る。
【0012】
本発明の他の局面に従う超電導線材の損失の測定方法によれば、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持することにより、超電導線材のインダクタンスに起因する誘導起電力が小さくなり、超電導線材を流れる電流が安定する。この状態で電圧値を得るので、正確な電圧値を得ることができる。その結果、超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間に区分し、区間ごとに損失が得られるので、長尺の超電導線材についてもその損失を精度よく測定することができる。さらに、区間ごとに電流値を変えながら電圧値を得るので、電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,n〜LM,1,nの各々を区間ごとに測定することができる。
【0013】
本発明の他の局面に従う超電導線材の損失の測定方法において好ましくは、第1区間〜第N区間までの電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程と、第1区間〜第N区間までの電流値Imに対応する損失Lm,1,1〜Lm,1,Nの各々の和Lm,1を計算する工程とをさらに備えている。
【0014】
これにより、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたる損失が、区間ごとの損失に基づいて得られる。その結果、長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたって、電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1〜LM,1の各々を測定することができる。
【0015】
本発明のさらに他の局面に従う超電導線材の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する。第1区間の超電導線材に、周波数F1〜FJ(F1≦Fj-1≦Fj≦FJ、Jは2≦Jを満たす整数、jは2≦j≦Jを満たすすべての整数)の各々で一の電流値I1の電流を流し、周波数F1〜FJの各々に対応する電圧値V1,1,1〜V1,J,1を得る。第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の超電導線材に、周波数F1〜FJの各々で一の電流値I1の電流を流し、周波数F1〜FJの各々に対応する電圧値V1,1,n〜V1,J,nを得る。一の電流値I1と電圧値V1,1,1〜V1,J,1とに基づいて、第1区間における周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,1〜L1,J,1の各々を計算する。一の電流値I1と電圧値V1,1,n〜V1,J,nとに基づいて、第n区間における周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,n〜L1,J,nの各々を計算する。上記の電圧値V1,1,1〜V1,J,1を得る工程および電圧値V1,1,n〜V1,J,n電圧値を得る工程の各々において、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1〜V1,J,1および電圧値V1,1,n〜V1,J,nの各々を得る。
【0016】
本発明のさらに他の局面に従う超電導線材の損失の測定方法によれば、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持することにより、超電導線材のインダクタンスに起因する誘導起電力が小さくなり、超電導線材を流れる電流が安定する。この状態で電圧値を得るので、正確な電圧値を得ることができる。その結果、超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間に区分し、区間ごとに損失が得られるので、長尺の超電導線材についてもその損失を精度よく測定することができる。さらに、区間ごとに周波数を変えながら電圧値を得るので、周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,n〜L1,J,nの各々を区間ごとに測定することができる。
【0017】
本発明のさらに他の局面に従う超電導線材の損失の測定方法において好ましくは、第1区間〜第N区間までの周波数F1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程と、第1区間〜第N区間までの周波数Fjに対応する損失L1,j,1〜L1,j,Nの各々の和L1,jを計算する工程とを備えている。
【0018】
これにより、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたる損失が、区間ごとの損失に基づいて得られる。その結果、長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたって、周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1〜L1,Jの各々を測定することができる。
【0019】
本発明の別の局面に従う超電導線材の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する。第1区間の超電導線材に、J個の周波数F1〜FJ(F1≦Fj-1≦Fj≦FJ、Jは2≦Jを満たす整数、jは2≦j≦Jを満たすすべての整数)の各々で、M個の電流値I1〜IM(I1≦Im-1≦Im≦IM、Mは2≦Mを満たす整数、mは2≦m≦Mを満たすすべての整数)の各々の電流を流し、周波数F1〜FJおよび電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る。第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の超電導線材に、J個の周波数F1〜FJの各々で、M個の電流値I1〜IMの各々の電流を流し、周波数F1〜FJおよび電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nを得る。電流値I1〜IMと第1区間の前記(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1とに基づいて、第1区間における周波数F1〜FJの各々および電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,1〜LM,1,1、L1,2,1〜LM,2,1、L1,3,1〜LM,3,1、…、L1,J,1〜LM,J,1の各々を計算する。電流値I1〜IMと第n区間の(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nとに基づいて、第n区間における周波数F1〜FJの各々および電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,n〜LM,1,n、L1,2,n〜LM,2,n、L1,3,n〜LM,3,n、…、L1,J,n〜LM,J,nの各々を計算する。上記の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る工程および電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nを得る工程の各々において、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1および電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nの各々を得る。
【0020】
本発明の別の局面に従う超電導線材の損失の測定方法によれば、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持することにより、超電導線材のインダクタンスに起因する誘導起電力が小さくなり、超電導線材を流れる電流が安定する。この状態で電圧値を得るので、正確な電圧値を得ることができる。その結果、超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間に区分し、区間ごとに損失が得られるので、長尺の超電導線材についてもその損失を精度よく測定することができる。さらに、区間ごとに周波数および電流値を変えながら電圧値を得るので、電流値I1〜IMの各々および周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,1〜LM,J,Nの各々を区間ごとに測定することができる。
【0021】
本発明の別の局面に従う超電導線材の損失の測定方法において好ましくは、第1区間〜第N区間までの周波数F1および電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程と、第1区間〜第N区間までの周波数F1および電流値Imの各々に対応する損失L2,1,1〜L2,1,Nの和L2,1と、L3,1,n〜L3,1,Nの和L3,1と、…、LM,1,1〜LM,1,Nの和LM,1との各々を計算する工程と、第1区間〜第N区間までの周波数Fjの各々および電流値I1に対応する、損失L1,2,1〜L1,2,Nの和L1,2と、損失L1,3,1〜L1,3,Nの和L1,3と、…、損失L1,J,1〜L1,J,Nの和L1,Jとの各々を計算する工程と、第1区間〜第N区間までの周波数Fjの各々および電流値Imの各々に対応する、損失L2,2,1〜L2,2,Nの和L2,2と、損失L2,3,1〜L2,3,Nの和L2,3と、…、損失L2,J,1〜L2,J,Nの和L2,Jと、…、損失L3,2,1〜V3,2,Nの和L3,2と、損失L3,3,1〜V3,3,Nの和L3,3と、…、損失L3,J,1〜L3,J,Nの和L3,Jと、…、損失LM,J,1〜LM,J,Nの和LM,Jとの各々を計算する工程とをさらに備えている。
【0022】
これにより、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたる損失が、区間ごとの損失に基づいて得られる。その結果、長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたって、電流値I1〜IMの各々および周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1〜LM,Jの各々を測定することができる。
【0023】
本発明の超電導線材の測定装置は、冷却装置と、定電流源と、電流測定装置と、電圧測定装置と、移動装置と、演算装置とを備えている。冷却装置は、第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割された超電導線材において、測定対象となる1つの区間を冷却する。定電流源は、第1区間〜第N区間の各々の区間において、冷却された超電導線材に一定の周波数および一定の電流値の電流を流す。電流測定装置は、第1区間〜第N区間の各々の区間において、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、超電導線材を流れる電流の電流値I1を測定する。電圧測定装置は、第1区間〜第N区間の各々の区間において、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、超電導線材を流れる電流の電圧値V1,1,1〜V1,1,Nを測定する。移動装置は、第1区間〜第N区間のそれぞれの区間を順次測定対象とするために、超電導線材を移動させる。演算装置は、電流値I1,と電圧値V1,1,1〜V1,1,Nとに基づいて、第1区間〜第N区間の各々の区間における損失L1,1,1〜L1,1,Nを計算する。
【0024】
本発明の超電導線材の損失の測定装置によれば、定電流源から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持することにより、超電導線材のインダクタンスに起因する誘導起電力が小さくなり、超電導線材を流れる電流が安定する。この状態で電圧値を得るので、正確な電圧値を得ることができる。その結果、超電導線材の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間に区分し、区間ごとに損失が得られるので、長尺の超電導線材についてもその損失を精度よく測定することができる。
【0025】
上記測定装置において好ましくは、計算装置は、第1区間〜第N区間までの損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1をさらに計算する。
【0026】
これにより、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたる損失L1,1が、区間ごとの損失に基づいて得られる。その結果、長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の超電導線材の損失の測定方法および測定装置によれば、長尺の超電導線材の損失を精度よく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における超電導線材の損失の測定装置を示す模式図である。図2は図1中のIIで囲んだ部分を拡大して示す模式図である。図3は超電導線材と電極が接触した状態を示す図である。図1〜図3を参照して、測定装置10は、冷却装置としての冷却槽7と、移動装置としての送りローラ11および受けローラ12と、演算装置としての演算・制御用コンピュータ17と、電極部30と、測定器18とを備えている。
【0029】
送りローラ11と受けローラ12とが移動装置を構成する。送りローラ11および受けローラ12は円筒形状である。送りローラ11および受けローラ12には超電導線材1が巻付けられている。測定を開始する前には、送りローラ11にのみ超電導線材1が巻付けられており、受けローラ12には超電導線材1の端部が固定されているのみである。超電導線材1は銀シース材に収められた酸化物超電導材からなる。この酸化物超電導材の材質は特に限定されるものではないが、たとえば(Bi2-x−PbX)Sr2Ca2Cu310を用いることができる。また、超電導線材1の長さは100m以上であることが好ましいが、100m未満であってもよい。また、超電導線材1の形状は特に限定されるものではないが、好ましくは、テープ状であり、幅が3mm程度、厚さが0.2mm程度であればよい。測定が開始されると、超電導線材1は、送りローラ11から受けローラ12へ順次巻取られる。また、送りローラ11、受けローラ12、および補助ローラ15はともに回転可能である。演算・制御用コンピュータ17が送りローラ11と受けローラ12と測定器18とに接続されている。演算・制御用コンピュータ17は送りローラ11および受けローラ12に信号を与え、送りローラ11および受けローラ12を回転させる。このとき、演算・制御用コンピュータ17は、送りローラ11のみを回転させることが可能であり、また、演算・制御用コンピュータ17は、受けローラ12のみを回転させることも可能である。そのため、演算・制御用コンピュータ17は、送りローラ11および受けローラ12に信号を与えることにより、超電導線材1に加わる張力を適宜調整することができる。また、演算・制御用コンピュータ17は測定器18と接続されているため、測定器18で得られたデータから、さまざまな演算を行なうことができる。
【0030】
電極部30は、上部電流電極14a、14cと、下部電流電極14b、14dと、上部電圧電極13a、13cと、下部電圧電極13b、13dと、電極支持部32と、電極駆動部31とを備えている。これらの電極14a〜14dおよび13a〜13dは銀または銀合金からなり、一辺が3cmであり、ほぼ直方体形状である。下部電流電極14b、14dと下部電圧電極13b、13dとは冷却槽7に固定されており、冷却槽7から電気的に絶縁されている。上部電流電極14a、14cと上部電圧電極13a、13cとはともに電極支持部32に固定されている。電極支持部32は電極駆動部31により図2中の上下方向に移動可能である。そのため、電極駆動部31が下方向へ移動すれば、上部電流電極14a、14cと上部電圧電極13a、13cとは超電導線材1に接し、さらに、超電導線材1を下方向へ押し下げる。そのため、図3に示すように上部電流電極14a、14cと下部電流電極14b、14dとが超電導線材1を挟み込むような形になる。また、上部電圧電極13a、13cと下部電圧電極13b、13dとが超電導線材1を挟み込むような形となる。
【0031】
冷却槽7にはたとえば液体窒素8などが満たされている。液体窒素8は超電導線材1を冷却するためのものである。
【0032】
測定器18は、定電流源6と、電圧測定装置としての電圧計3と、電流測定装置としての電圧計4とを備えている。定電流源6は、一方の電極がシャント抵抗5を介して上部電流電極14aおよび下部電流電極14bに接続されており、他方の電極が上部電流電極14cおよび下部電流電極14dに接続されている。これにより、定電流源6は超電導線材1に一定値の電流を流すことができる。電圧計3は、一方の電極が上部電圧電極13aおよび下部電圧電極13bに接続されており、他方の電極が上部電圧電極13cおよび下部電圧電極13dに接続されている。これにより、電圧計3は、上部電圧電極13aおよび下部電圧電極13bと、上部電圧電極13cおよび下部電圧電極13dとの間、つまり測定区間100の電位差を計測することができる。また、電圧計4はシャント抵抗5の両端に接続されており、シャント抵抗5の両端の電位差を計測することができる。定電流源6と、電圧計3および4とで得られたデータは、演算・制御用コンピュータ17に渡される。
【0033】
次に、本実施の形態における超電導線材の損失の測定方法について説明する。
まず、一定長さの超電導線材1を用意し、超電導線材1を図1で示されるように配置する。ここで、80mの超電導線材1の全長が測定対象である場合であって、測定区間100の距離が4mである場合を想定する。この場合には、超電導線材1の一方の端から4mの部分を第1区間として、超電導線材1の一方の端から他方の端まで超電導線材1を4mずつの長さに区分し、超電導線材1を第1区間から第20区間の20個の長さに仮想的に分割する。そして、第1区間(超電導線材1の一方の端から5mまでの部分)が測定区間100の部分に位置するように、演算・制御用コンピュータ17は送りローラ11および受けローラ12に信号を送る。
【0034】
次に、演算・制御用コンピュータ17が電極支持部32を下へ動かすように電極駆動部31へ信号を送る。この信号を受けた電極駆動部31は電極支持部32を降下させる。これにより、図3に示すように、超電導線材1は、上部電圧電極13aと下部電圧電極13bとに挟まれる。また、超電導線材1は、上部電流電極14aと下部電流電極14bとに挟まれる。また、図1中の左側に位置する電極部30でも超電導線材1が上部電圧電極13cと下部電圧電極13dとに挟まれ、かつ上部電流電極14cと下部電流電極14dとに挟まれる。
【0035】
このような状態で、定電流源6を用いて一定の周波数F1で電流値I1〜IM(I1≦Im-1≦Im≦IM、Mは2≦Mを満たす整数、mは2≦m≦Mを満たすすべての整数)の各々の電流を超電導線材1に流し、電流値I1〜IMの各々に対応する、測定区間100の電圧値V1,1,1〜VM,1,1の各々を測定する。
【0036】
図4(a)は、本発明の実施の形態1における定電流源の設定値の制御方法を模式的に示す図であり、図4(b)は、本発明の実施の形態1において超電導線材を流れる電流および電圧の時間変化を模式的に示す図である。図4(c)は、本発明の実施の形態1において超電導線材を流れる電流および電圧の時間変化の他の例を模式的に示す図であり、図4(d)は、本発明の実施の形態1において超電導線材を流れる電流および電圧の時間変化のさらに他の例を模式的に示す図である。図4(a)〜(d)では、電流値および電圧値をそれぞれピーク電流値およびピーク電圧値で示している。図1および図4(a)〜(d)を参照して、時刻t1において定電流源6の電流を一定の周波数F1および一定の設定値I1aに設定する。超電導線材1に流す電流は交流電流であっても直流電流であってもよい。そして、設定値I1aに設定した状態で時間t0(たとえば0.1秒程度)だけ保持し、時間t0経過後の時刻t2において、電圧計4の値によってシャント抵抗5の両端の電位差を測定する。そして、この電位差とシャント抵抗5の抵抗値に基づいてシャント抵抗5を流れる電流を計算する。このシャント抵抗5を流れる電流が測定区間100の超電導線材1を流れる電流値I1となる。また、電圧計3を用いて測定区間100の電圧値V1,1,1を測定する。
【0037】
ここで、時刻t1において定電流源6の設定値をI1aに設定(増加)すると、超電導線材1のインダクタンスに起因する誘導起電力が測定区間100に発生し、実際に超電導線材1に発生する電圧値にはノイズ(図4(b)中矢印A)が生じる。ノイズの形状は電源の回路構成によって変化し、図4(c)や図4(d)のようになることもある。この誘導起電力は超電導線材1に流れる電流の時間変化率に比例する大きさで生じ、一般的に電流の上げ幅が大きいほどノイズは大きくなる。また誘導起電力の大きさは超電導線材1の長さにも依存し、メートル級の長さの超電導線材1の測定ではノイズが大きくなる。しかし、このノイズは時間経過とともに減少していくので、時間t0経過後の時刻t2においては、測定区間100の超電導線材1を流れる電流値I1は設定値I1aとほぼ同じ値になる。
【0038】
次に、時刻t3において定電流源6の設定値を設定値I1aから設定値I2aに不連続的に増加させる。そして、設定値I2aに設定した状態で時間t0だけ保持した後で、電流値I2および電圧値V2,1,1を測定する。その後、電流値I1および電圧値V1,1,1と同様の方法で、一定の周波数F1を保ったまま電流値を電流値I3〜IMまで順に増加させながら電圧値の測定を繰り返す。その結果、表1に示すような、第1区間における電流値I1〜IMおよび電圧値V1,1,1〜VM,1,1の組が得られる。
【0039】
【表1】

【0040】
一方、図5(a)は、定電流源の設定値を時間に比例して増加させた場合における、定電流源の設定値の時間変化を示す図であり、図5(b)は、定電流源の設定値を時間に比例して増加させた場合における、超電導線材に発生する電圧の時間変化を示す図である。図5(a)、(b)を参照して、本実施の形態の測定方法ではなく、定電流源の設定値を時間に比例して増加させながらI1aとする測定方法の場合には、定電流源の設定値が一定時間保持されない。このため、超電導線材のインダクタンスに起因する誘導起電力が大きいときに電圧値が測定される。このため、実際よりも小さい値の電圧値が得られ、正確な電流値と電圧値との組を得ることができない。
【0041】
図6(a)および(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1において測定区間100を流れる電流および測定区間100の電圧の時間変化を模式的に示す図である。図6(a)および(b)を参照して、定電流源6の交流電流を一定の周波数F1および一定の設定値I1aに設定して一定時間経過した後(図4(a)における時刻t2)においては、一定の周波数F1および一定の電流値(ピーク電流値)I1の交流電流が測定区間100の超電導線材1に流れ、この交流電流に対応する電圧値(ピーク電圧値)V1,1,1の交流電圧が測定区間100に発生する。同様に、定電流源6の電流を一定の周波数F1および一定の設定値I2aに設定して一定時間経過した後においては、一定の周波数F1および一定の電流値(ピーク電流値)I2の交流電流が測定区間100の超電導線材1に流れ、この交流電流に対応する電圧値(ピーク電圧値)V2,1,1の交流電圧が測定区間100に発生する。
【0042】
次に、図1〜図3を参照して、電極駆動部31を上方向へ移動させ、上部電流電極14a、14cと上部電圧電極13a、13cとを超電導線材1から離す。そして、第2区間(超電導線材1の一方の端から4mの位置から8mの位置までの部分)が測定区間100の部分に位置するように超電導線材1を受けローラ12に巻き取らせる。その後、第1区間と同様の測定を第2区間についても行なう。このようにして、超電導線材1における他の区間(第2区間〜第20区間)についても同様の測定を繰り返す。その結果、第n区間(nは2≦n≦20を満たすすべての整数)において、電流値I1〜IMおよび電圧値V1,1,n〜VM,1,nの組を得る。第2区間における電圧値V1,1,2〜VM,1,2を表2に示し、第n区間における電圧値V1,1,n〜VM,1,nを表3に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
得られた電流値I1〜IMと電圧値V1,1,1〜VM,1,1とは演算・制御用コンピュータ17に送られる。演算・制御用コンピュータ17は、得られた電流値I1〜IMと電圧値V1,1,1〜VM,1,1とに基づいて、第1区間における電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,1〜LM,1,1の各々を計算する。損失は以下の式(1)を用いて計算される。
【0046】
損失L(W/m)=電流値I(A)×電圧値V(V/m)・・・(1)
この計算の結果、表4に示すように、第1区間における損失L1,1,1〜LM,1,1が得られる。
【0047】
【表4】

【0048】
次に、第1区間と同様の計算を超電導線材1における他の区間(第2区間〜第20区間)について繰り返す。すなわち、電流値I1〜IMと電圧値V1,1,2〜VM,1,20との各々に基づいて、第2区間〜第20区間における電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,2〜LM,1,20の各々を計算する。その結果、第2区間〜第20区間における損失L1,1,2〜LM,1,20が得られる。第2区間における損失L1,1,2〜LM,1,2を表5に示し、第n区間における損失L1,1,n〜LM,1,nを表6に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
以上の工程により、周波数F1で電流値I1〜IMの各々の電流を超電導線材1に流した場合の、第1区間〜第20区間の各々の損失L1,1,1〜LM,1,20が得られる。この結果を用いて、たとえば損失の値が局所的に大きくなっている区間があれば、その区間に欠陥があることを検出することができる。
【0052】
その後、第1区間〜第20区間全長の損失を求める場合には、演算・制御用コンピュータ17において第1区間〜第20区間までの電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,20の各々の和L1,1を計算する。同様に、第1区間〜第20区間までの電流値Imの各々に対応する損失Lm,1,1〜Lm,1,20の各々の和Lm,1を計算する。その結果、表7に示すように、電流値I1〜IMの各々の電流を超電導線材1に流した場合の第1区間〜第20区間全長の損失L1,1〜LM,1が得られる。
【0053】
【表7】

【0054】
本実施の形態における超電導線材1の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。超電導線材1の測定対象となる領域を第1区間〜第20区間の20個の長さに仮想的に分割する。第1区間の超電導線材1に、周波数F1で電流値I1〜IMの各々の電流を流し、電流値I1〜IMの各々に対応する電圧値V1,1,1〜VM,1,1を得る。第n区間の超電導線材1に、周波数F1で電流値I1〜IMの各々の電流を流し、電流値I1〜IMの各々に対応する電圧値V1,1,n〜VM,1,nを得る。電流値I1〜IMと電圧値V1,1,1〜VM,1,1とに基づいて、第1区間における電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,1〜LM,1,1の各々を計算する。電流値I1〜IMと電圧値V1,1,n〜VM,1,nとに基づいて、第n区間における電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,n〜LM,1,nの各々を計算する。上記の電圧値V1,1,1〜VM,1,1を得る工程および電圧値V1,1,n〜VM,1,nを得る工程の各々において、定電流源6から超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1〜VM,1,1および電圧値V1,1,n〜VM,1,nの各々を得る。
【0055】
本実施の形態における超電導線材1の損失の測定方法によれば、定電流源6から超電導線材1に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持することにより、超電導線材1のインダクタンスに起因する誘導起電力が小さくなり、超電導線材1を流れる電流が安定する。この状態で電圧値を得るので、正確な電圧値を得ることができる。その結果、超電導線材1の損失を精度よく測定することができる。加えて、本実施の形態における超電導線材1の損失の測定方法によれば、超電導線材1の測定対象となる領域を第1区間〜第20区間に区分し、区間ごとに損失が得られるので、長尺の超電導線材についてもその損失を精度よく測定することができる。さらに、電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,n〜LM,1,nの各々を区間ごとに測定することができる。
【0056】
特に、冷凍器を冷却するのに用いられる高温超電導マグネットでは、通常、超電導線材に流す電流(運転電流)が臨界電流値IC以下に設定される。しかし、実際には微小な電圧が発生するので、損失は完全にゼロではない。運転電流を流したときの超電導線材の損失は、超電導機器の設計において重要なパラメータである。しかし、従来、超電導線材の全長にわたって損失を測定することは難しく、超電導線材の性能を全長にわたって保証することはできなかった。本実施の形態における測定方法によれば、超電導線材の全長にわたって損失を測定することができ、超電導線材の性能を全長にわたって保証することができる。
【0057】
また、第1区間〜第20区間までの電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,20の各々の和L1,1を計算し、第1区間〜第20区間までの電流値Imに対応する損失Lm,1,1〜Lm,1,20の各々の和Lm,1を計算することにより、超電導線材1の測定対象となる領域全体にわたる損失L1,1が、区間ごとの損失に基づいて得られる。その結果、長尺の超電導線材1の損失を精度よく測定することができる。加えて、超電導線材1の測定対象となる領域全体にわたって、電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1〜LM,1の各々を測定することができる。
【0058】
なお、本実施の形態においては超電導線材1に交流電流を流した場合の損失(交流損失)を測定する場合について示したが、超電導線材1に直流電流(周波数F1=0)を流した場合の損失(直流損失)を測定してもよい。この場合には、図7(a)および(b)に示すように、測定区間100の超電導線材1を流れる電流値I1および測定区間100の電圧値V1,1,1が時間経過に対して一定になる。
【0059】
また、本実施の形態においては1つの測定区間100(たとえば第1区間)において複数の電流値I1〜IMと、それらに対応する電圧値V1,1,1〜VM,1,1とを得る場合について示したが、本発明においては、1つの測定区間100において一の電流値I1と、それに対応する1つの電圧値V1,1,1のみを得てもよい。この場合には、各区間の超電導線材1に一の電流値I1の電流を流した場合の損失L1,1,1〜L1,1,20の各々が得られる。
【0060】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、一定の電流値で周波数の異なる電流を超電導線材1に流した場合の、損失の測定方法について説明する。
【0061】
始めに図1を参照して、実施の形態1と同様の方法で、超電導線材1の第1区間を測定区間100に配置する。このような状態で、定電流源6を用いて周波数F1〜FJ(F1≦Fj-1≦Fj≦FJ、Jは2≦Jを満たす整数、jは2≦j≦Jを満たすすべての整数)の各々で電流値I1の電流を超電導線材1に順に流し、周波数F1〜FJの各々に対応する、測定区間100の電圧値V1,1,1〜V1,J,1の各々を測定する。
【0062】
具体的には、電圧値V1,1,1〜V1,J,1の測定は実施の形態1と類似した方法で行なわれる。すなわち、時刻t1において定電流源6の電流を一定の周波数F1および一定の設定値I1aに設定する。そして、設定値I1aに設定した状態で時間t0(たとえば0.1秒程度)だけ保持し、時間t0経過後の時刻t2において、電流値I1および電圧値V1,1,1を測定する。次に、時刻t3において定電流源6の周波数を周波数F1から周波数F2に不連続的に増加させる。そして、周波数F2に設定した状態で時間t0だけ保持した後で、電圧値V1,2,1を測定する。
【0063】
このとき、時刻t3において定電流源6の周波数を周波数F1から周波数F2に設定(増加)すると、超電導線材1のインダクタンスに起因する誘導起電力が測定区間100に発生し、実際に超電導線材1に発生する電圧値にはノイズが生じる。しかし、このノイズは時間経過とともに減少していくので、時間t0経過後においては、測定区間100の超電導線材1を流れる電流値I1は設定値I1aとほぼ同じ値になる。
【0064】
その後、周波数F2および電圧値V1,2,1と同様の方法で、一定の電流値I1で周波数をF3〜FJまで順に増加させながら電圧値の測定を繰り返す。その結果、表7に示すような、第1区間における周波数F1〜FJおよび電圧値V1,1,1〜V1,J,1の組が得られる。
【0065】
【表8】

【0066】
図8(a)および(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態2における測定区間100を流れる電流および測定区間100の電圧の時間変化を模式的に示す図である。図6(a)および(b)を参照して、定電流源6の交流電流を一定の周波数F1および一定の設定値I1aに設定して一定時間経過した後においては、一定の周波数F1および一定の電流値(ピーク電流値)I1の交流電流が測定区間100の超電導線材1に流れ、この交流電流に対応する電圧値(ピーク電圧値)V1,1,1の交流電圧が測定区間100に発生する。同様に、定電流源6の電流を一定の周波数F2および一定の設定値I1aに設定して一定時間経過した後においては、一定の周波数F2および一定の電流値(ピーク電流値)I1の交流電流が測定区間100の超電導線材1に流れ、この交流電流に対応する電圧値(ピーク電圧値)V1,2,1の交流電圧が測定区間100に発生する。
【0067】
その後、第1区間と同様の測定を超電導線材1における他の区間(第2区間〜第20区間)について繰り返す。その結果、第n区間(nは2≦n≦20を満たすすべての整数)の各々において周波数F1〜FJおよび電圧値V1,1,n〜V1,J,nの組を得る。第2区間における電圧値V1,1,2〜V1,J,2を表9に示し、第n区間における電圧値V1,1,n〜V1,J,nを表10に示す。
【0068】
【表9】

【0069】
【表10】

【0070】
続いて、得られた電流値I1と電圧値V1,1,1〜V1,J,1とに基づいて、演算・制御用コンピュータ17において第1区間における周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,1〜L1,J,1の各々を計算する。この計算の結果、表11に示すように、第1区間における損失L1,1,1〜L1,J,1が得られる。
【0071】
【表11】

【0072】
次に、第1区間と同様の計算を超電導線材1における他の区間(第2区間〜第20区間)について繰り返す。すなわち、電流値I1と電圧値V1,1,2〜V1,J,20とに基づいて、第2区間〜第20区間における周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,2〜L1,J,20の各々を計算する。その結果、第2区間〜第20区間における損失L1,1,2〜L1,J,20が得られる。第2区間における損失L1,1,2〜L1,J,2を表12に示し、第n区間における損失L1,1,n〜L1,J,nを表13に示す。
【0073】
【表12】

【0074】
【表13】

【0075】
以上の工程により、電流値I1で周波数F1〜FJの各々の電流を超電導線材1に流した場合の、第1区間〜第20区間の各々の損失L1,1,1〜L1,J,20が得られる。
【0076】
その後、第1区間〜第20区間全長の損失を求める場合には、演算・制御用コンピュータ17において第1区間〜第20区間までの周波数F1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,20の各々の和L1,1を計算する。同様に、第1区間〜第20区間までの周波数Fの各々に対応する損失L1,j,1〜L1,j,20の各々の和L1,jを計算する。その結果、表14に示すように、周波数F1〜FJの各々の電流を超電導線材1に流した場合の第1区間〜第20区間全長の損失L1,1〜L1,Jが得られる。
【0077】
【表14】

【0078】
本実施の形態における超電導線材1の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。超電導線材1の測定対象となる領域を第1区間〜第20区間の20個の長さに仮想的に分割する。第1区間の超電導線材1に、周波数F1〜FJの各々で電流値I1の電流を流し、周波数F1〜FJの各々に対応する電圧値V1,1,1〜V1,J,1を得る。第n区間の超電導線材に、周波数F1〜FJの各々で電流値I1の電流を流し、周波数F1〜FJの各々に対応する電圧値V1,1,n〜V1,J,nを得る。電流値I1と電圧値V1,1,1〜V1,J,1とに基づいて、第1区間における周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,1〜L1,J,1の各々を計算する。電流値I1と電圧値V1,1,n〜V1,J,nとに基づいて、第n区間における周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,n〜L1,J,nの各々を計算する。上記の電圧値V1,1,1〜V1,J,1を得る工程および電圧値V1,1,n〜V1,J,n電圧値を得る工程の各々において、定電流源6から超電導線材1に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1〜V1,J,1および電圧値V1,1,n〜V1,J,nの各々を得る。
【0079】
本実施の形態における超電導線材1の損失の測定方法によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。加えて、周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,n〜L1,J,nの各々を区間ごとに測定することができる。
【0080】
また、第1区間〜第20区間までの周波数F1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,20の各々の和L1,1を計算し、第1区間〜第20区間までの周波数Fjに対応する損失L1,j,1〜L1,j,20の各々の和Lj,1を計算することにより、超電導線材1の測定対象となる領域全体にわたって、周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1〜L1,Jの各々を測定することができる。
【0081】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、電流値および周波数の両方が異なる電流を超電導線材1に流した場合の、損失の測定方法について説明する。
【0082】
始めに図1を参照して、実施の形態1と同様の方法で、超電導線材1の第1区間を測定区間100に配置する。このような状態で、定電流源6を用いて周波数F1〜FJ(F1≦Fj-1≦Fj≦FJ、Jは2≦Jを満たす整数、jは2≦j≦Jを満たすすべての整数)の各々で電流値I1〜IM(I1≦Im-1≦Im≦IM、Mは2≦Mを満たす整数、mは2≦m≦Mを満たすすべての整数)の各々の電流を超電導線材1に流し、周波数F1〜FJの各々および電流値I1〜IMの各々に対応する、測定区間100の電圧値V1,1,1〜VM,J,1の各々を測定する。本実施の形態における電圧の測定順序を表15に示す。
【0083】
【表15】

【0084】
具体的には、定電流源6を用いて一定の周波数F1で電流値I1〜IMの各々の電流を超電導線材1に順に流し、電流値I1〜IMの各々に対応する、測定区間100の電圧値V1,1,1〜VM,1,1の各々を測定する。電圧値V1,1,1〜VM,1,1の測定は実施の形態1と同様の方法で行なわれる。すなわち、時刻t1において定電流源6の電流を一定の周波数F1および一定の設定値I1aに設定する。そして、設定値I1aに設定した状態で時間t0(たとえば0.1秒程度)だけ保持し、時間t0経過後の時刻t2において、電流値I1および電圧値V1,1,1を測定する。次に、時刻t3において定電流源6の設定値をI1aからI2aに不連続的に増加させる。そして、設定値I2aに設定した状態で時間t0だけ保持した後で、電流値I2および電圧値V1,2,1を測定する。これを繰り返すことにより電圧値V1,1,1〜VM,1,1の各々が測定される。
【0085】
次に、定電流源6の周波数を周波数F1から周波数F2に変更し、超電導線材1に流す電流を電流値I1に戻す。そして、周波数F1の場合と同様の方法で、定電流源6を用いて一定の周波数F2で電流値I1〜IMの各々の電流を超電導線材1に順に流し、電流値I1〜IMの各々に対応する、測定区間100の電圧値V1,2,1〜VM,2,1の各々を測定する。
【0086】
その後、定電流源6の周波数を周波数F3から周波数FJまで順に変更し、それぞれの周波数において、電流値I1〜IMの各々に対応する、測定区間100の電圧値V1,j,1〜VM,j,1の各々を同様に測定する。その結果、表16に示すような、第1区間における(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る。
【0087】
【表16】

【0088】
なお、本実施の形態においては、表15に示すような測定順序で電圧値を測定する場合の他、表17に示すような測定順序で電圧値を測定してもよい。
【0089】
【表17】

【0090】
表17の測定方法においては、始めに、一定の電流値I1で周波数F1〜FJの各々の電流を超電導線材1に順に流し、周波数F1〜FJの各々に対応する、測定区間100の電圧値V1,1,1〜V1,J,1の各々を測定する。次に、超電導線材1の電流を電流値I1から電流値I2に変更し、電流の周波数を周波数F1に戻す。そして、電流値I1の場合と同様の方法で、一定の電流値I2で周波数F1〜FJの各々の電流を超電導線材1に順に流し、周波数F1〜FJの各々に対応する、測定区間100の電圧値V2,1,1〜V2,J,1の各々を測定する。その後、超電導線材1の電流を電流値I3から電流値IMまで順に変更し、それぞれの電流値において、周波数F1〜FJの各々に対応する、測定区間100の電圧値Vm,1,1〜Vm,J,1の各々を測定する。その結果、表16に示すような、第1区間における(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る。
【0091】
その後、第1区間と同様の測定を超電導線材1における他の区間(第2区間〜第20区間)について繰り返す。その結果、第n区間(nは2≦n≦20を満たすすべての整数)の各々において周波数F1〜FJおよび電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nを得る。第2区間で得られる電圧値V1,1,2〜VM,J,2を表18に示し、第n区間で得られる電圧値V1,1,n〜VM,J,nを表19に示す。
【0092】
【表18】

【0093】
【表19】

【0094】
続いて、演算・制御用コンピュータ17において、第1区間における電流値I1〜IMと、(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1とに基づいて、第1区間における電流値I1〜IMの各々および周波数F1〜FJの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,1〜LM,1,1、L1,2,1〜LM,2,1、L1,3,1〜LM,3,1、…、L1,J,1〜LM,J,1の各々を計算する。この計算の結果、表20に示すように、第1区間における損失L1,1,1〜LM,J,1が得られる。
【0095】
【表20】

【0096】
次に、第1区間と同様の計算を超電導線材1における他の区間(第2区間〜第20区間)について繰り返す。すなわち、第n区間における電流値I1〜IMと、(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nとに基づいて、第n区間における周波数F1〜FJの各々および前記電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,n〜LM,1,n、L1,2,n〜LM,2,n、L1,3,n〜LM,3,n、…、L1,J,n〜LM,J,nの各々を計算する。その結果、第2区間〜第20区間における損失L1,1,2〜LM,J,20が得られる。第2区間における損失L1,1,2〜LM,J,2を表21に示し、第n区間における損失L1,1,n〜LM,j,nを表22に示す。
【0097】
【表21】

【0098】
【表22】

【0099】
以上の工程により、電流値I1〜IMの各々および周波数F1〜FJの各々の電流を超電導線材1に流した場合の、第1区間〜第20区間の各々の損失L1,1,1〜LM,J,20が得られる。
【0100】
その後、第1区間〜第20区間全長の損失を求める場合には、演算・制御用コンピュータ17において第1区間〜第20区間までの周波数F1および電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,20の各々の和L1,1を計算する。同様に、電流値I2〜IMの各々に対応する損失L2,1,1〜L2,1,20の和L2,1と、L3,1,1〜L3,1,20の和L3,1と、…、LM,1,1〜LM,1,20の和LM,1との各々を計算する。同様に、第1区間〜第20区間までの周波数F2〜FJの各々および電流値I1に対応する、損失L1,2,1〜L1,2,20の和L1,2と、損失L1,3,1〜L1,3,20の和L1,3と、…、損失L1,J,1〜L1,J,20の和L1,Jとの各々を計算する。同様に、第1区間〜第20区間までの周波数F2〜FJの各々および電流値I2〜IMに対応する、損失L2,2,1〜L2,2,20の和L2,2と、損失L2,3,1〜L2,3,20の和L2,3と、…、損失L2,J,1〜L2,J,20の和L2,Jと、…、損失L3,2,1〜V3,2,20の和L3,2と、損失L3,3,1〜V3,3,20の和L3,3と、…、損失L3,J,1〜L3,J,20の和L3,Jと、…、損失LM,J,1〜LM,J,20の和LM,Jとの各々を計算する。その結果、表23に示すように、電流値I1〜IMの各々および周波数F1〜FJの各々の電流を超電導線材1に流した場合の第1区間〜第20区間全長の損失L1,1〜LM,Jが得られる。
【0101】
【表23】

【0102】
図9および図10に、本実施の形態の測定方法によって得られた損失Lと電流Iとの関係および損失Lと周波数Fとの関係の一例を示す。
【0103】
本実施の形態における超電導線材1の損失の測定方法は、以下の工程を備えている。超電導線材1の測定対象となる領域を第1区間〜第20区間の20個の長さに仮想的に分割する。第1区間の超電導線材に、J個の周波数F1〜FJの各々で、M個の電流値I1〜IMの各々の電流を流し、周波数F1〜FJおよび電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る。第n区間の超電導線材1に、J個の周波数F1〜FJの各々で、M個の電流値I1〜IMの各々の電流を流し、周波数F1〜FJおよび電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nを得る。電流値I1〜IMと第1区間の(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1とに基づいて、第1区間における周波数F1〜FJの各々および電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,1〜LM,1,1、L1,2,1〜LM,2,1、L1,3,1〜LM,3,1、…、L1,J,1〜LM,J,1の各々を計算する。電流値I1〜IMと第n区間の(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nとに基づいて、第n区間における周波数F1〜FJの各々および電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,n〜LM,1,n、L1,2,n〜LM,2,n、L1,3,n〜LM,3,n、…、L1,J,n〜LM,J,nの各々を計算する。上記の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る工程および電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nを得る工程の各々において、定電流源6から超電導線材1に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1および電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nの各々を得る。
【0104】
本実施の形態における超電導線材1の損失の測定方法によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。加えて、区間ごとに周波数および電流値を変えながら電圧値を得るので、電流値I1〜IMの各々および周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,1〜LM,J,Nの各々を区間ごとに測定することができる。
【0105】
また、第1区間〜第20区間までの周波数F1〜FJの各々および電流値I1〜IMの各々に対応する損失の和L1,1〜LM,Jを計算することにより、超電導線材の測定対象となる領域全体にわたって、電流値I1〜IMの各々および周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1〜LM,Jの各々を測定することができる。
【0106】
なお、実施の形態1〜3においては、図6に示すように測定区間100を流れる電流のピーク電流値Ipを電流値とし、測定区間100の電圧のピーク電圧値Vpを電圧値とする場合について示したが、測定区間100を流れる電流の実効値Ieを電流値とし、測定区間100の電圧の実効値Veを電圧値としてもよい。ピーク電流値Ipと電流の実効値Ieとの間、およびピーク電圧値Vpと電圧の実効値Veとの間には以下の式(2)および式(3)で示す関係がある。
【0107】
電流の実効値Ie(A)=ピーク電流値Ip(A)/√2・・・(2)
電圧の実効値Ve(A)=ピーク電圧値Vp(A)/√2・・・(3)
式(1)〜(3)より、損失Lは以下の式(4)のようにも表わすことができる。
【0108】
損失L(W/m)=ピーク電流値Ip(A)×ピーク電圧値Vp(V/m)/2・・・(4)
また、実施の形態1〜3においては、超電導線材1を第1区間〜第20区間に仮想的に分割する場合について示したが、分割する区間の数はN(Nは2≦Nの整数)個であればよく、一区間の長さは任意に設定可能である。
【0109】
さらに、磁場を超電導線材に印加した状態で損失を測定してもよい。この場合には、図1を参照して、測定区間100にある超電導線材1の上部と下部とにそれぞれコイル(レーストラックコイル)19aおよび19bの各々を配置する。そして、コイル19aおよび19bに電流を流すことにより、超電導線材1の周囲に磁場を発生させる。
【実施例】
【0110】
本実施例においては、全長が80mであり、臨界電流密度が150Aの超電導線材の損失を測定した。始めに、超電導線材1を第1区間〜第20区間の20個の長さ(1m当たり4m)に仮想的に分割する。そして、図1の測定装置に超電導線材を設置し、第1区間を測定区間100の部分に配置した。続いて、実施の形態3に記載の測定方法を用いて、第1区間における周波数F1〜F6および電流値I1〜I8の各々に対応する48個の電圧値V1,1,1〜V8,1,1、V1,2,1〜V8,2,1、V1,3,1〜V8,3,1、…、V1,6,1〜V8,6,1を測定した。
【0111】
これらの測定においては、周波数を0Hz〜100Hzまでの6個の周波数F1〜F6に設定し、電流値を10A〜140Aまでの8個の電流値I1〜I8に設定した。電流値および電圧値としては、それぞれピーク電流値Ipおよびピーク電圧値Vpを測定した。続いて、超電導線材1における第2区間〜第20区間についても第1区間と同様の測定を繰り返した。その結果、第n区間(nは2≦n≦20を満たすすべての整数)の各々において周波数F1〜F6および電流値I1〜I8の各々に対応する48個の電圧値V1,1,n〜V8,1,n、V1,2,n〜V8,2,n、V1,3,n〜V8,3,n、…、V1,6,n〜V8,6,nを得た。ある区間の電圧値V(A/m)を表24に示す。
【0112】
【表24】

【0113】
表24を参照して、10A〜75Aの電流値の直流電流を流した場合には、電圧値が小さすぎるため、電圧値を測定することができなかった。
【0114】
続いて、第1区間における電流値I1〜I8と、48個の電圧値V1,1,1〜V8,1,1、V1,2,1〜V8,2,1、V1,3,1〜V8,3,1、…、V1,6,1〜V8,6,1とに基づいて、第1区間における電流値I1〜I8の各々および周波数F1〜F6の各々に対応する48個の損失L1,1,1〜L8,1,1、L1,2,1〜L8,2,1、L1,3,1〜L8,3,1、…、L1,6,1〜L8,6,1の各々を計算した。続いて、超電導線材1における第2区間〜第20区間についても第1区間と同様の計算を繰り返した。その結果、第n区間の各々において周波数F1〜F6の各々および前記電流値I1〜I8の各々に対応する48個の損失L1,1,n〜L8,1,n、L1,2,n〜L8,2,n、L1,3,n〜L8,3,n、…、L1,6,n〜L8,6,nの各々を得た。表24に示す区間と同じ区間で得られた損失L(W/m)を表25に示す。
【0115】
【表25】

【0116】
続いて、超電導線材の全長の損失を求めた。すなわち、第1区間〜第20区間までの周波数F1および電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,20の各々の和L1,1を計算した。同様に、電流値I2〜I8の各々に対応する損失L2,1,1〜L2,1,20の和L2,1と、L3,1,1〜L3,1,20の和L3,1と、…、L8,1,1〜L8,1,20の和L8,1との各々を計算した。同様に、第1区間〜第20区間までの周波数F2〜F6の各々および電流値I1に対応する、損失L1,2,1〜L1,2,20の和L1,2と、損失L1,3,1〜L1,3,20の和L1,3と、…、損失L1,6,1〜L1,6,20の和L1,6との各々を計算した。同様に、第1区間〜第20区間までの周波数F2〜F6の各々および電流値I2〜I8に対応する、損失L2,2,1〜L2,2,20の和L2,2と、損失L2,3,1〜L2,3,20の和L2,3と、…、損失L2,6,1〜L2,6,20の和L2,6と、…、損失L3,2,1〜V3,2,20の和L3,2と、損失L3,3,1〜V3,3,20の和L3,3と、…、損失L3,6,1〜L3,6,20の和L3,Jと、…、損失L8,6,1〜L8,6,20の和L8,6とを計算した。次に、損失Lと電流値Iとの関係を周波数ごとにグラフに表わした。この結果を図11に示す。また、損失Lと周波数Fとの関係を電流値ごとにグラフに表わした。この結果を図12に示す。図11および図12を参照して、超電導線材に流す電流の電流値が大きいほど損失は増加し、また電流の周波数が大きい程損失が増加することが分かった。
【0117】
以上に開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、100mを超える長尺の超電導線材の損失の測定方法および測定装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施の形態1における超電導線材の損失の測定装置を示す模式図である。
【図2】図1中のIIで囲んだ部分を拡大して示す模式図である。
【図3】超電導線材と電極が接触した状態を示す図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態1における定電流源の設定値の制御方法を模式的に示す図である。(b)は、本発明の実施の形態1において超電導線材を流れる電流および電圧の時間変化を模式的に示す図である。(c)は、本発明の実施の形態1において超電導線材を流れる電流および電圧の時間変化の他の例を模式的に示す図である。(d)は、本発明の実施の形態1において超電導線材を流れる電流および電圧の時間変化のさらに他の例を模式的に示す図である。
【図5】(a)は、定電流源の設定値を時間に比例して増加させた場合における、定電流源の設定値の時間変化を示す図である。(b)は、定電流源の設定値を時間に比例して増加させた場合における、超電導線材に発生する電圧の時間変化を示す図である。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態1において測定区間100を流れる電流の時間変化を模式的に示す図である。(b)は、本発明の実施の形態1において測定区間100の電圧の時間変化を模式的に示す図である。
【図7】(a)は、本発明の実施の形態1において測定区間100に直流電流(周波数F1=0)を流した場合の電流の時間変化を示す図である。(b)は、本発明の実施の形態1において測定区間100に直流電流(周波数F1=0)を流した場合の電圧の時間変化を示す図である。
【図8】(a)は、本発明の実施の形態2における測定区間100を流れる電流の時間変化を模式的に示す図である。(b)は、本発明の実施の形態2において測定区間100の電圧の時間変化を模式的に示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3の測定方法によって得られた損失Lと電流値Iとの関係を模式的に示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3の測定方法によって得られた損失Lと周波数Fとの関係を模式的に示す図である。
【図11】本発明の実施例において得られた損失Lと電流値Iとの関係を示す図である。
【図12】本発明の実施例において得られた損失Lと周波数Fとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0120】
1 超電導線材、3,4 電圧計、5 シャント抵抗、6 定電流源、7 冷却槽、8 液体窒素、10 測定装置、11 送りローラ、12 受けローラ、13a,13c 上部電圧電極、13b,13d 下部電圧電極、14a,14c 上部電流電極、14b,14d 下部電流電極、15 補助ローラ、17 演算・制御用コンピュータ、18 測定器、19a,19b コイル、30 電極部、31 電極駆動部、32 電極支持部、100 測定区間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する工程と、
前記第1区間の前記超電導線材に、一の周波数F1および一の電流値I1で電流を流し、電圧値V1,1,1を得る工程と、
第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の前記超電導線材に、一の周波数F1および一の電流値I1で電流を流し、電圧値V1,1,nを得る工程と、
前記一の電流値I1と前記電圧値V1,1,1とに基づいて、前記第1区間における前記一の電流値I1に対応する損失L1,1,1を計算する工程と、
前記一の電流値I1と前記電圧値V1,1,nとに基づいて、前記第n区間における前記一の電流値I1に対応する損失L1,1,nを計算する工程とを備え、
前記電圧値V1,1,1を得る工程および前記電圧値V1,1,nを得る工程の各々において、定電流源から前記超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、前記電圧値V1,1,1および前記電圧値V1,1,nを得る、超電導線材の損失の測定方法。
【請求項2】
前記第1区間〜前記第N区間までの前記一の電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程をさらに備える、請求項1に記載の超電導線材の損失の測定方法。
【請求項3】
超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する工程と、
前記第1区間の前記超電導線材に、一の周波数F1で電流値I1〜IM(I1≦Im-1≦Im≦IM、Mは2≦Mを満たす整数、mは2≦m≦Mを満たすすべての整数)の各々の電流を流し、前記電流値I1〜IMの各々に対応する電圧値V1,1,1〜VM,1,1を得る工程と、
第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の前記超電導線材に、一の周波数F1で電流値I1〜IMの各々の電流を流し、前記電流値I1〜IMの各々に対応する電圧値V1,1,n〜VM,1,nを得る工程と、
前記電流値I1〜IMと前記電圧値V1,1,1〜VM,1,1とに基づいて、前記第1区間における前記電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,1〜LM,1,1の各々を計算する工程と、
前記電流値I1〜IMと前記電圧値V1,1,n〜VM,1,nとに基づいて、前記第n区間における前記電流値I1〜IMの各々に対応する損失L1,1,n〜LM,1,nの各々を計算する工程とを備え、
前記電圧値V1,1,1〜VM,1,1を得る工程および前記電圧値V1,1,n〜VM,1,nを得る工程の各々において、定電流源から前記超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、前記電圧値V1,1,1〜VM,1,1および前記電圧値V1,1,n〜VM,1,nの各々を得る、超電導線材の損失の測定方法。
【請求項4】
前記第1区間〜前記第N区間までの前記電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程と、
前記第1区間〜前記第N区間までの前記電流値Imに対応する損失Lm,1,1〜Lm,1,Nの各々の和Lm,1を計算する工程とをさらに備える、請求項3に記載の超電導線材の損失の測定方法。
【請求項5】
超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する工程と、
前記第1区間の前記超電導線材に、周波数F1〜FJ(F1≦Fj-1≦Fj≦FJ、Jは2≦Jを満たす整数、jは2≦j≦Jを満たすすべての整数)の各々で一の電流値I1の電流を流し、前記周波数F1〜FJの各々に対応する電圧値V1,1,1〜V1,J,1を得る工程と、
第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の前記超電導線材に、周波数F1〜FJの各々で一の電流値I1の電流を流し、前記周波数F1〜FJの各々に対応する電圧値V1,1,n〜V1,J,nを得る工程と、
前記一の電流値I1と前記電圧値V1,1,1〜V1,J,1とに基づいて、前記第1区間における前記周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,1〜L1,J,1の各々を計算する工程と、
前記一の電流値I1と前記電圧値V1,1,n〜V1,J,nとに基づいて、前記第n区間における前記周波数F1〜FJの各々に対応する損失L1,1,n〜L1,J,nの各々を計算する工程とをさらに備え、
前記電圧値V1,1,1〜V1,J,1を得る工程および前記電圧値V1,1,n〜V1,J,nを得る工程の各々において、定電流源から前記超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、前記電圧値V1,1,1〜V1,J,1および前記電圧値V1,1,n〜V1,J,nの各々を得る、超電導線材の損失の測定方法。
【請求項6】
前記第1区間〜前記第N区間までの前記周波数F1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程と、
前記第1区間〜前記第N区間までの前記周波数Fjに対応する損失L1,j,1〜L1,j,Nの各々の和L1,jを計算する工程とをさらに備える、請求項5に記載の超電導線材の損失の測定方法。
【請求項7】
超電導線材の測定対象となる領域を第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割する工程と、
前記第1区間の前記超電導線材に、J個の周波数F1〜FJ(F1≦Fj-1≦Fj≦FJ、Jは2≦Jを満たす整数、jは2≦j≦Jを満たすすべての整数)の各々で、M個の電流値I1〜IM(I1≦Im-1≦Im≦IM、Mは2≦Mを満たす整数、mは2≦m≦Mを満たすすべての整数)の各々の電流を流し、前記周波数F1〜FJおよび前記電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る工程と、
第n区間(nは2≦n≦Nを満たすすべての整数)の前記超電導線材に、J個の周波数F1〜FJの各々で、M個の電流値I1〜IMの各々の電流を流し、前記周波数F1〜FJおよび前記電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nを得る工程と、
前記電流値I1〜IMと前記第1区間の前記(J×M)個の電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1とに基づいて、前記第1区間における前記周波数F1〜FJの各々および前記電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,1〜LM,1,1、L1,2,1〜LM,2,1、L1,3,1〜LM,3,1、…、L1,J,1〜LM,J,1の各々を計算する工程と、
前記電流値I1〜IMと前記第n区間の前記(J×M)個の電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nとに基づいて、前記第n区間における前記周波数F1〜FJの各々および前記電流値I1〜IMの各々に対応する(J×M)個の損失L1,1,n〜LM,1,n、L1,2,n〜LM,2,n、L1,3,n〜LM,3,n、…、L1,J,n〜LM,J,nの各々を計算する工程とを備え、
前記電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1を得る工程および前記電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nを得る工程の各々において、定電流源から前記超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、前記電圧値V1,1,1〜VM,1,1、V1,2,1〜VM,2,1、V1,3,1〜VM,3,1、…、V1,J,1〜VM,J,1および前記電圧値V1,1,n〜VM,1,n、V1,2,n〜VM,2,n、V1,3,n〜VM,3,n、…、V1,J,n〜VM,J,nの各々を得る、超電導線材の損失の測定方法。
【請求項8】
前記第1区間〜前記第N区間までの前記周波数F1および前記電流値I1に対応する損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1を計算する工程と、
前記第1区間〜前記第N区間までの前記周波数F1および前記電流値Imの各々に対応する損失L2,1,1〜L2,1,Nの和L2,1と、L3,1,n〜L3,1,Nの和L3,1と、…、LM,1,1〜LM,1,Nの和LM,1との各々を計算する工程と、
前記第1区間〜前記第N区間までの前記周波数Fjの各々および前記電流値I1に対応する、損失L1,2,1〜L1,2,Nの和L1,2と、損失L1,3,1〜L1,3,Nの和L1,3と、…、損失L1,J,1〜L1,J,Nの和L1,Jとの各々を計算する工程と、
前記第1区間〜前記第N区間までの前記周波数Fjの各々および前記電流値Imの各々に対応する、損失L2,2,1〜L2,2,Nの和L2,2と、損失L2,3,1〜L2,3,Nの和L2,3と、…、損失L2,J,1〜L2,J,Nの和L2,Jと、…、損失L3,2,1〜V3,2,Nの和L3,2と、損失L3,3,1〜V3,3,Nの和L3,3と、…、損失L3,J,1〜L3,J,Nの和L3,Jと、…、損失LM,J,1〜LM,J,Nの和LM,Jとの各々を計算する工程とをさらに備える、請求項7に記載の超電導線材の損失の測定方法。
【請求項9】
第1区間〜第N区間(Nは2≦Nの整数)のN個の長さに仮想的に分割された超電導線材において、測定対象となる1つの区間を冷却するための冷却装置と、
第1区間〜第N区間の各々の区間において、冷却された前記超電導線材に一定の周波数および一定の電流値の電流を流すための定電流源と、
第1区間〜第N区間の各々の区間において、前記定電流源から前記超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、前記超電導線材を流れる電流の電流値I1を測定するための電流測定装置と、
第1区間〜第N区間の各々の区間において、前記定電流源から前記超電導線材に流す電流を一定の周波数および一定の電流値に設定した状態で一定時間保持した後で、前記超電導線材を流れる電流の電圧値V1,1,1〜V1,1,Nを測定するための電圧測定装置と、
前記第1区間〜前記第N区間のそれぞれの区間を順次測定対象とするために、前記超電導線材を移動させる移動装置と、
前記電流値I1,と前記電圧値V1,1,1〜V1,1,Nとに基づいて、第1区間〜第N区間の各々の区間における損失L1,1,1〜L1,1,Nを計算するための演算装置とを備える、超電導線材の損失の測定装置。
【請求項10】
前記計算装置は、前記第1区間〜前記第N区間までの損失L1,1,1〜L1,1,Nの各々の和L1,1をさらに計算する、請求項9に記載の超電導線材の損失の測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−2747(P2009−2747A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162888(P2007−162888)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】