説明

超電導電流リード及び該超電導電流リードを用いた超電導マグネット装置

【課題】超電導体の破損を防止して信頼性を高めると共に、効率よく低コストで製造することが可能な超電導電流リード及び該超電導電流リードを用いた超電導マグネット装置を提供することを目的とする。
【解決手段】荷重支持体、及び、前記荷重支持体の両端にそれぞれ電極を有し、前記電極間を接続するように超電導体が設けられた超電導電流リードであって、前記荷重支持体は金属からなり、前記電極と前記荷重支持体とは接合されており、前記電極によって前記超電導体が支持されていることを特徴とする超電導電流リード及び該超電導電流リードを用いた超電導マグネット装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導電流リード及び該超電導電流リードを用いた超電導マグネット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電流リード支持体と、その両端にそれぞれ電流端子が接合されており、各電流端子間に接続された複数のテープ状の酸化物超電導体線材から構成された超電導電流リードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−230913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、電流リード支持体表面に複数の超電導体線材を接触させて、これを支持、固定するものである。このため、超電導体線材の破損を防止し、電流リード支持体との接着性を良くするため、電流リード支持体の表面を平滑化する必要があり、製造工程の増加、コスト高の原因となっていた。
【0005】
本発明は上記従来技術が有する問題に鑑み、超電導体の破損を防止して信頼性を高めると共に、効率よく低コストで製造することが可能な超電導電流リードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、荷重支持体、及び、前記荷重支持体の両端にそれぞれ電極を有し、前記電極間を接続するように超電導体が設けられた超電導電流リードであって、前記荷重支持体は金属からなり、前記電極と前記荷重支持体とは接合されており、前記電極によって前記超電導体が支持されていることを特徴とする超電導電流リードを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、超電導体が電極部分で支持されているため、荷重支持体表面に平滑化等の加工を行うことや、絶縁膜や接着剤等の部材を設ける必要がないのでコストを低減できる。さらには、荷重支持体として金属を用いているため、超電導体と荷重支持体との熱収縮率の差が小さくなっている。このため、特殊な部材や加工を要せずに、冷却時の超電導体の破損防止を図ることが可能となる。
【0008】
また、荷重支持体と電極とは接合により固定されているため、別途固定器具等を用いる必要がなくコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】冷凍機冷却型超電導マグネットの例示図
【図2】本発明に係る超電導電流リードの斜視図
【図3】本発明に係る超電導電流リードの側面図
【図4】本発明に係る超電導電流リードの側面図
【図5】本発明に係る超電導電流リードの断面図
【図6】本発明に係る超電導電流リードの電極と超電導体の接続部分の構成例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0011】
図1は、超電導マグネット装置1の構成例を示す断面図である。本実施の形態に係る超電導マグネット装置1は、図2を用いて後述する超電導電流リード8を冷凍機冷却型超電導マグネット装置に適用した例を示すものである。冷凍機として、例えば1段式又は2段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon:GM)冷凍機を用いることができる。
【0012】
超電導マグネット装置1は、真空容器2、超電導コイル3、伝熱部材4、GM冷凍機5、熱シールド板6、1段電流ライン7、超電導電流リード8、及び2段電流ライン9を有する。真空容器2は略円筒状の形状を有している。真空容器2の上面には、GM冷凍機5が固定されている。超電導コイル3は、超電導線材により形成されている。超電導コイル3は、熱シールド板6で囲まれた空間に設けられている。超電導コイル3は、伝熱部材4を介して後述する低温側冷却ステージ5dに接続されており、GM冷凍機5により冷却されて超電導状態となる。超電導コイル3は、後述する超電導電流リード8の低温側に接続されている。そして、超電導コイル3は、真空容器2の外部に設けられた図示しない電源から、後述する1段電流ライン7、超電導電流リード8、及び2段電流ライン9を介して電力が供給される。
【0013】
真空容器2は、荷重支持体を介して、伝熱部材4と伝熱部材4に取り付けられた超電導コイル3の荷重を支持している。
【0014】
熱シールド板6は、真空容器2の内部に設けられている。熱シールド板6は、超電導コイル3へ侵入する輻射熱を抑制するためのものである。熱シールド板6は、銅、アルミニウム等の電気伝導率の大きい材料により形成されており、例えば略円筒状の形状を有している。
【0015】
GM冷凍機5は、1段目冷却シリンダ5a及び2段目冷却シリンダ5bよりなる多段冷却シリンダ構造を有している。1段目冷却シリンダ5aは、真空容器2の内部に挿入されており、2段目冷却シリンダ5bは、熱シールド板6で囲まれた空間に挿入されている。
【0016】
熱シールド板6の天板の上部には、高温側冷却ステージ5cが固定されており、高温側冷却ステージ5cには、1段目冷却シリンダ5aが接続されている。高温側冷却ステージ5cは、1段目冷却シリンダ5aにより冷却される。熱シールド板6の天板の下部には、高温側冷却ステージ5cと接続するように2段目冷却シリンダ5bが設けられている。2段目冷却シリンダ5bの下側先端には、低温側冷却ステージ5dが接続されている。低温側冷却ステージ5dは、2段目冷却シリンダ5bにより冷却される。高温側冷却ステージ5c及び低温側冷却ステージ5dは、銅、アルミニウム等の高熱伝導率部材で形成されている。
【0017】
1段電流ライン7、超電導電流リード8、及び2段電流ライン9は、図示しない電源から超電導コイル3に電流を流すためのものである。電源は、1段電流ライン7を通り、熱シールド板6に接触させて冷却した後、超電導電流リード8の高温側と接続される。そして、超電導電流リード8の低温側は、伝熱部材4を介し、超電導コイル3の図示しないコイル電極と接続される。
【0018】
1段電流ライン7として、銅、アルミニウム等の電気伝導率の大きい材料を用いることができる。2段電流ライン9として、銅、アルミニウム等の電気伝導率の大きい材料を用いることができ、あるいは、これらの電気伝導率の大きい材料と併せてBi2223、Bi2212、Y123、MgB等の高温超電導材料を用いることができる。
【0019】
本実施の形態では、冷凍機冷却型超電導マグネット装置について説明した。しかし、冷凍機冷却型超電導マグネット装置に変えて、例えば液体ヘリウムを冷媒とする液体冷却型超電導マグネット装置でもよく、あるいは、例えば液体ヘリウムの蒸発ガスを冷媒とするガス冷却型超電導マグネット装置でもよい。
【0020】
次に、本発明に係る超電導電流リードについて、図2〜図6を用いて説明を行う。
【0021】
図2は、本発明に係る超電導電流リードの斜視図であり、図3は、図2においてA方向(超電導体設置面側)から見た超電導電流リードの側面図であり、図4は、B方向から見た側面図である。さらに、図4におけるC−C´線での断面図を図5に示している。また、図6には、電極と超電導体との接続部分の構成例を示している。
【0022】
図2〜図4に示すように、本発明の超電導電流リード8は、荷重支持体20の両端にそれぞれ電極21(21a、21b)が設けられ、さらに、電極21間を接続するように超電導体22が設けられた構造を有している。
【0023】
高温側電極21aは、超電導電流リード8の一端に設けられた電極端子である。高温側電極21aの低温側には、超電導体22の高温側端部22aが接続されており、高温側電極21aの高温側には、図に示すように高温側外部荷重吸収部23aを接続することができる。
【0024】
この場合、高温側外部荷重吸収部23aは、高温側電極21aを介して超電導体22の高温側端部22aを支持する。
【0025】
高温側外部荷重吸収部23aは、超電導マグネット冷却時に各部材の収縮によって生じる変位の影響や、超電導マグネット運転時に、超電導マグネット由来のローレンツ力による影響等によって超電導電流リードが破損することを防止するものである。高温側外部荷重吸収部23aには、弾性部材を用いることが好ましく、具体的には、コイルばね、板ばね等が例示できる。実施形態では、これらの弾性部材として金属等の導電体を用いており、配線部材として機能させているが、配線とは別体の絶縁体の弾性部材を用いてもよい。
【0026】
高温側電極21aは、電気の良導体である銅、アルミニウム、真鍮等の金属により構成されている。また、高温側電極21aと超電導体22の高温側端部22aとの間は、例えば半田、インジウム、導電性樹脂等の導電性材料により接合されている。
【0027】
低温側電極21bは、超電導電流リード8の他端に設けられた電極端子である。低温側電極21bの高温側は、超電導体22の低温側端部22bに接続されており、低温側電極21bの低温側についても、低温側外部荷重吸収部23bに接続することができる。すなわちこの場合、低温側外部荷重吸収部23bは、低温側電極21bを介して超電導体22の低温側端部22bを支持する。
【0028】
低温側外部荷重吸収部23bも高温側外部荷重吸収部23aと同様に、超電導マグネット冷却時に各部材の収縮によって生じる変位の影響や、超電導マグネット運転時に、超電導マグネット由来のローレンツ力による影響等によって超電導電流リードが破損することを防止するものである。低温側外部荷重吸収部23bには、弾性部材を用いることが好ましく、具体的には、コイルばね、板ばね等が例示できる。実施形態では、これらの弾性部材として金属等の導電体を用いており、配線部材として機能させているが、配線とは別体の絶縁体の弾性部材を用いてもよい。このように、高温側電極、低温側電極それぞれに独立に外部荷重吸収部を設けることができるが、両方に外部荷重吸収部を有することがより好ましい。すなわち、超電導電流リードの両端部に弾性部材を備えていることが好ましい。
【0029】
低温側電極21bは、電気の良導体である銅、アルミニウム、真鍮等の金属により構成されている。また、低温側電極21bと超電導体22の低温側端部22bとの間は、例えば半田、インジウム、導電性樹脂等の導電性材料により接合されている。
【0030】
超電導体22は、高温側電極21aと低温側電極21bとを接続するように設けられている。また、超電導体22は、高温側電極21aから低温側電極21bに向かって延在するように設けられている。
【0031】
超電導体22として、例えばBi2223、Bi2212、Y123、MgB等の高温超電導材料を用いることができる。また、超電導体12が超電導テープ線材であるときは、例えば、銀等の金属を母材としてBi2223、Bi2212等の多芯線が被覆されてなる高温超電導線材、あるいは、ハステロイ等の金属テープ基材上にY123等の薄膜を堆積してなる高温超電導線材、等の各種の超電導テープ線材を用いることができる。
荷重支持体20は、高温側電極21aと低温側電極21bとに接続された部材である。荷重支持体20は金属からなり、形状については特に限定されるものではなく、例えば、円柱(円筒)形状、四角柱形状など各種形状を取りうる。そして、荷重支持体を介した熱侵入を防ぐ観点から、その内部に空間(内部空間25)を有することが好ましく、中空円筒部材であることがより好ましい。
【0032】
ここでいう金属は単体金属に限定されるものではなく、合金も含み、金属であれば特に限定されず使用することができる。具体的には、例えばステンレス鋼、真鍮、銅、アルミなどが好ましく使用できる。中でも熱伝導率が小さいステンレス鋼が好ましく使用でき、オーステナイト系ステンレス鋼が特に好ましく使用できる。このように、荷重支持体として金属を用いた場合、超電導体との熱収縮率の差が小さいため、冷却時に荷重支持体と略平行に設けている超電導体にかかる歪みが小さくなるため破損しにくくなる。
【0033】
ここで、荷重支持体がその内部に空間を有する場合、内部空間25にガスが溜まっていると、溜まっているガスを介して高温側電極21aから低温側電極21bへの熱侵入が発生する可能性がある。また、超電導マグネット装置の運転中に、内部空間25内のガスが真空容器2内に流出することにより、真空容器2の真空度を悪化させる可能性がある。
【0034】
そのため、真空容器2内の空間と荷重支持体20の内部空間25とを連通する連通孔24を設けることが好ましく、例えば図2に示すように、電極(高温側電極21a)に連通孔24を設けることができる。これにより、連通孔24を介して、内部空間内のガスが真空容器内に容易に排出されるため、内部空間25を真空容器2と同程度の真空度に保つことができる。
【0035】
実施の形態では、高温側電極21aに連通孔24を設ける例について説明したが、連通孔24の位置は特に限定されるものではなく、例えば、荷重支持体20に設けてもよく、低温側電極21bに設けてもよい。また、連通孔24を複数設けてもよい。
【0036】
本発明に係る超電導電流リード8は、まず、荷重支持体20と高温側電極21a、低温側電極21bとを接続し、荷重支持体20、高温側電極21a、低温側電極21bからなる一体物を製造し、次に、高温側電極21aの低温側と超電導体22の高温側端部22a、低温側電極21bの高温側と超電導体22の低温側端部22b、をそれぞれ半田などの導電性材料により接続し、超電導リード8を製造することが好ましい。このように製造することで、超電導体22と電極との接続を容易に行うことができる。
【0037】
荷重支持体20と電極(高温側電極21a、低温側電極21b)との接続(接合)には、接続強度、接続の容易性等の観点から溶接(融接、圧接)、ろう付け、はんだ付けなどの接続材料を用いて接続する方法を用いることが好ましい。具体的には、高温側電極21a、低温側電極21bに予め設けられた穴に荷重支持体20を挿入し、荷重支持体と穴との間に溶解した接続材料を流し込むことで接続することができる。ここで、接続材料が多量に流れ込み、荷重支持体の表面に付着すると、付着した接続材料を介して低温側に侵入する熱が増える虞がある。そのため、接続材料を流し込む際には、荷重支持体20の表面に接続材料の付着を防止するテープや接続材料の過度の流れ込みを防止する堰などを設置し、接続後には、これらの堰やテープを取り外すことが好ましい。
【0038】
また、荷重支持体20と高温側電極21a、低温側電極21bとの接続に用いる接続材料には、超電導体22と電極との接続に用いる導電性材料よりも高い融点をもつ材料を用いると、導電材料の接続時の熱影響を小さくすることができるため好ましい。
【0039】
さらに、荷重支持体20と高温側電極21a、低温側電極21bとの間に隙間を設けて接続し、接続部分の熱抵抗を大きくすると、高温側電極23aから低温側電極23bへの熱侵入を減少させることができるため好ましい。
【0040】
また、高温側電極21a、低温側電極21bと超電導体22との接続は、図2に示すように、高温側電極21a及び低温側電極21bに形成された溝部に、半田めっきを施すことによって、溝部の表面を半田により薄く被覆し、この状態の溝部に超電導体22を装填し、超電導体8が装填された状態の溝部に溶融された半田を充填し、半田を固化することによって、超電導体8を確実に半田接合することができる。
【0041】
電極と超電導体22とを接続するための他の構成として、電極は電極ブロックと超電導体固定部材とを有しており、超電導固定部材を移動させ、超伝導固定部材と電極ブロックとの間に超電導体を挟みこむことにより、超電導体を固定する構成とすることもできる。
【0042】
図6を用いて上記構成を説明する。図6(a)は、図2において、A方向から見た超電導電流リード8の高温側電極21aの側面図を示している。図6(b)は、図6(a)におけるD−D´線での断面図を示している。
【0043】
図6において、高温側電極21aは電極ブロック61と超電導体固定部材62とを有している。そして、超電導体固定部材62は、電極ブロック61上で図中左右の方向、すなわち、Eの矢印の方向に移動可能に構成されている。このため、超電導固定部材を移動させることにより、超電導体22を電極ブロック61と超電導体固定部材62との間に挟み込むことにより固定し、高温側電極21aと超電導体22とを電気的に接続することができる。
【0044】
電極と超電導体との接続部分について上記構成することによって、超電導体22を電極に容易に着脱することが可能になり、メンテナンス時等の作業性を向上させることができる。また、超電導体22の交換を行うことも可能になる。
【0045】
なお、図6では、高温側電極21aを例に説明しているが、高温側電極21aに限定されるものではなく、高温側電極21a、低温側電極21のいずれか一方について係る構成とすることもでき、両方について係る構成とすることもできる。このため、以下では、単に電極とも記載する。
【0046】
電極ブロック61の材質としては、上記した高温側電極21a、低温側電極21bと同様に、電気の良導体である、銅、アルミニウム、真鍮等の金属により構成されていることが好ましい。
【0047】
超電導体固定部材62は、超電導体を電極ブロック61とで挟み込めるものであればよく、材質等は限定されるものではないが、導電性の材料からなることが好ましい。
【0048】
これは、超電導体固定部材62が導電性の材料からなる場合、超電導体固定部材62と、超電導体22および電極ブロック61との間を電気的に接続でき、超電導体22と電極との間の電気的な接続面積を増加させることができるためである。このため、電極と超電導体22との間の電気的な接続信頼性を高めることができ、好ましい。
【0049】
特に、電極全体として電気伝導率が等しいことが好ましいことから、超電導体固定部材62は電極ブロック61と同じ材料でできていることがより好ましい。
【0050】
超電導固定部材62は、超電導体22を確実に固定できるように、その位置決めが完了した後、固定できる構成を有することが好ましい。図6においては、固定用のねじ63を設け、ねじ63を締め付けることにより電極ブロック61に固定する構成を挙げているが、係る形態に限定されるものではなく、例えば弾性体等により超電導体固定部材62を電極ブロック61に押し当てて固定するなど、各種固定手段を用いることができる。
【0051】
電極ブロック61と超電導体固定部材62との間に超電導体22を挟み込んで固定する際に、超電導体22と電極ブロック61の間、および/または、超電導体22と超電導体固定部材62との間に半田、インジウム、導電性樹脂等の導電性材料を充填、固化することもできる。
【0052】
この場合、超電導体22と電極とが接触する部分の少なくとも一部にこれらの導電性材料が配置されるため、両者の電気的な接続信頼性をより高めることができる。
【0053】
ただし、上記した導電性材料は超電導電流リードを構成する電極や、超電導体と比較すると電気伝導率が低いため、上記のように超電導体22の周囲に導電性材料を配置する場合には、その厚さを調整することが好ましい。
【0054】
これまで説明した、電極が電極ブロック61と超電導体固定部材62とを有する構成の場合、超電導体固定部材62を移動させ、電極ブロック61および超電導体22に押し当てながら、その隙間に導電性材料を充填することができるため、導電性材料の厚さを調整することができる。これにより、例えば、導電性材料の厚さを薄くすることもできるため、電極と超電導体22との電気的な接続信頼性を高めつつ、電気伝導率の低下を抑制することが可能になる。さらに、導電性材料の厚さを調整することができるため、超電導電流リードとした際の製品間の電気伝導率のばらつきを抑制することができる。
【0055】
また、導電性材料中に気泡が混入すると接続の信頼性が低下する原因となるが、上記のように超電導体固定部62を超電導体22、電極ブロック61に押しつけながら導電性材料を充填できるため、導電性材料を充填する際に気泡が混入することを抑制することができる。
【0056】
なお、後述するように超電導体を1つの超電導体電流リードについて複数に分けて配置する場合には、それぞれの超電導体に対応して、1つの電極に複数の超電導体固定部材を設けた構成とすることもできる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0058】
例えば、実施の形態では、超電導体電流リードは1本の超電導体から構成されているが、必要とする電流量によって、その本数、太さを選択することができる。複数の超電導体を設ける場合、電極上の複数個所に分けて設けることも可能である。
【0059】
そして、荷重支持体20と、超電導体22との間には絶縁膜や、接着剤は設けられておらず、超電導体22は、荷重支持体20によって支持されるものではない。しかし、荷重支持体20と、超電導体22との設置間隔については特に限定されるものではなく、その一部が接触していても構わない。ただし、荷重支持体20と超電導体22とが接触している場合、冷却時や運転停止時に、荷重支持体の変位によって超電導体に荷重がかかり損傷する恐れがあることから、図2、図4に示すように、荷重支持体20と超電導体22とは離間して設けられていることがより好ましい。
【0060】
以上に説明した本発明の超電導電流リードによれば、超電導体の破損を防止して信頼性を高めると共に、効率よく低コストで製造することが可能となる。
【0061】
このため、例えば図1に示すような、本発明の超電導電流リードと、超電導電流リードの低温側に接続される超電導コイルとを有する超電導マグネット装置とした場合、信頼性が高く、低コストである超電導マグネット装置を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
3 超電導コイル
8 超電導電流リード
20 荷重支持体
21a、21b 電極
22 超電導体
23a、23b 外部荷重吸収部(弾性部材)
24 連通孔
61 電極ブロック
62 超電導体固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重支持体、及び、前記荷重支持体の両端にそれぞれ電極を有し、前記電極間を接続するように超電導体が設けられた超電導電流リードであって、
前記荷重支持体は金属からなり、
前記電極と前記荷重支持体とは接合されており、
前記電極によって前記超電導体が支持されていることを特徴とする超電導電流リード。
【請求項2】
前記荷重支持体と前記超電導体とは離間して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の超電導電流リード。
【請求項3】
前記荷重支持体と前記電極とが、溶接、ろう付け、はんだ付けのいずれかの方法によって接合されていることを特徴とする請求項1または2記載の超電導電流リード。
【請求項4】
前記荷重支持体はステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の超電導電流リード。
【請求項5】
前記荷重支持体は、内部に空間を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超電導電流リード。
【請求項6】
前記荷重支持体の内部空間に連通する連通孔をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の超電導電流リード。
【請求項7】
前記連通孔は、前記電極に設けられることを特徴とする請求項6に記載の超電導電流リード。
【請求項8】
前記電極は電極ブロックと超電導体固定部材とを有しており、
前記超電導固定部材を移動させ、前記超電導固定部材と前記電極ブロックとの間に前記超電導体を挟みこむことにより前記超電導体を固定することを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項に記載の超電導電流リード。
【請求項9】
前記超電導体固定部材は導電性の材料からなることを特徴とする請求項8に記載の超電導電流リード
【請求項10】
前記超電導電流リードにおいて、その両端部に弾性部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至9いずれか一項に記載の超電導電流リード。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の超電導電流リードと、
前記超電導電流リードの低温側に接続されている超電導コイルとを有する、超電導マグネット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69664(P2013−69664A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−70440(P2012−70440)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】