説明

超音波センサ

【課題】 送波と受波を行う超音波センサであって、超音波の良好な放射強度及び受波感度を有しながら、位置決めなどの取り扱いや設置が容易な超音波センサを提供する。
【解決手段】 超音波の送受波を行う超音波センサ10は、厚みTaの薄肉部12、及び、薄肉部12と一体とされ、これよりも厚い厚みTbの厚肉部13を有する圧電素子11と、薄肉部12を挟む薄肉部電極17と、厚肉部13を挟む厚肉部電極18と、を備える。圧電素子11は、薄肉部12の厚みTaと厚肉部13の厚みTbとを、薄肉部12における共振周波数fraと厚肉部13における反共振周波数fabとが等しくなる関係とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中などの気中、水中などの液中、金属体などの固体などの媒体に超音波を放射すると共に、反射した超音波を受波して、測定対象物の有無の検知や距離測定などを行う、超音波プローブ、超音波距離計、魚群探知機、水中探査装置、探傷装置などに用いる超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧電素子を駆動して振動させて超音波を放射(送波)させる、あるいは、受波した超音波により、圧電素子から超音波信号を得る超音波センサが知られている。
このような超音波センサのうち、超音波の放射(送波)と受波の両方を行う送受波共用の超音波センサでは、単一の圧電素子を用い、この素子の共振周波数と反共振周波数の中間の周波数を持つ電気信号でこれを駆動して、この周波数の超音波を発生させ、またこの周波数の超音波を受波するようにして用いる場合が多い。一般に、超音波の放射強度は共振周波数で最大となり、超音波の受波感度は反共振周波数で最大となるため、これらの中間の周波数を用いて、放射強度と受波感度の大きさを両立させるためである。
【0003】
一方、送波用の超音波センサと受波用の超音波センサの二つの超音波センサを使い分ける場合もある(例えば、特許文献1参照)。この場合には、この二者で厚みなどの異なる圧電素子を用いることができる。すなわち、送波用の超音波センサでは、一方の圧電素子の共振周波数で超音波を発生放射させる一方、受波用の超音波センサは、他方の圧電素子の反共振周波数で超音波を受波する。これにより、送波用の超音波センサで、より良好な放射強度を得ることができる上、受波用の超音波センサで良好な受波感度を得ることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−5427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送波用の超音波センサと受波用の超音波センサの二つを用いると、適切に送波と受波とを行うのに、この二者相互の位置決めを行う必要があるため、両者の配置が面倒である。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、送波と受波を行う超音波センサであって、超音波の良好な放射強度及び受波感度を有しながら、位置決めなどの取り扱いや設置が容易な超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そしてその解決手段は、超音波の送受波を行う超音波センサであって、厚みTaの薄肉部、及び、上記薄肉部と一体とされ、上記薄肉部よりも厚い厚みTbの厚肉部を有する圧電素子と、上記薄肉部を挟む薄肉部電極と、上記厚肉部を挟む厚肉部電極と、を備え、上記圧電素子は、上記薄肉部の厚みTaと上記厚肉部の厚みTbとを、上記薄肉部における共振周波数と上記厚肉部における反共振周波数とが等しくなる関係にしてなる超音波センサである。
【0008】
薄肉部の共振周波数をfra、厚肉部の反共振周波数をfabとする。
本発明の超音波センサにおいて、共振周波数fraの電気信号を薄肉部電極に加え、この薄肉部を共振させて超音波(周波数f=fra)を発生させると、薄肉部が共振して、効率よく大きな放射強度で超音波を放射させる(超音波を送波する)ことができる。
その一方、反射等で戻ってきた超音波は、その周波数が厚肉部における反共振周波数である(周波数f=fra=fab)から、この厚肉部で反共振することとなり、厚肉部電極から大きな振幅の電圧(超音波出力)を得る(超音波を受波する)ことが出来る。
かくして、前述した従来の超音波センサのように、所定の厚さの圧電素子を共用して、超音波の送波と受波を行う場合に比して、送波時の放射強度及び受波時の感度の向上を図ることができる。
しかも、この圧電素子は、薄肉部と厚肉部とが一体であるので、1つの超音波センサとして扱うことができ、取り扱いが容易である。また、薄肉部と厚肉部との相対位置決めも不要である点でも、取り扱いが容易である。このため、安価で設置容易な超音波センサとすることができる。
【0009】
なお、薄肉部電極と厚肉部電極とは、互いに独立させ、薄肉部電極を一対と、厚肉部電極を一対とを形成した、四端子の回路形態することができる。あるいは、薄肉部電極及び厚肉部電極の一方を互いに導通して共通電極とした、三端子の回路形態とすることもできる。
また、超音波センサとしては、空中、液中(例えば水中)あるいは固体中に超音波を放射すると共に、空中、液中あるいは固体中からの超音波を受波して超音波出力を得るものが挙げられる。
【0010】
また、上述の超音波センサであって、前記薄肉部と前記厚肉部との間に介在し、上記薄肉部よりも厚みの小さい介在部を備える超音波センサとすると良い。
【0011】
本発明の超音波センサでは、介在部を備えることにより、薄肉部と厚肉部とが縁切りされて、薄肉部と厚肉部との結合がより疎となる。これにより、薄肉部を共振させてこの薄肉部に発生させた超音波振動が厚肉部に伝わり、この厚肉部に反射超音波によらない大きな出力が生じるなどの影響を受けることが少なくなる。また逆に、厚肉部が薄肉部の超音波振動における負荷になって、薄肉部の超音波振動(共振)を抑制することが防止される。このように、薄肉部と厚肉部とが、互いに独立して作動可能となるので、薄肉部から、より効率よく超音波を放射させ、また、厚肉部において、より良好な感度で超音波を検知できる。
【0012】
介在部は、自身の厚み方向一方側または両側に、溝部を設けて厚みを小さくした形態とすると良い。溝部の形態としては、断面が、半円状、U字状、コ字状、V字状などの形態が挙げられる。
【0013】
さらに、上記いずれかに記載の超音波センサであって、前記薄肉部は円板状とされてなり、前記厚肉部は上記薄肉部を囲みこれと同軸の円環板状とされてなる超音波センサとすると良い。
【0014】
本発明の超音波センサでは、円板状の薄肉部と円環板状の厚肉部とを同軸としている。このため、薄肉部から放射され軸線上を進む超音波が、対象物に当たり、これに反射されて超音波(反射超音波)が往きとほぼ同じ経路(軸線上)を戻る場合に、円板状の薄肉部と同軸の円環板状の厚肉部で、これを容易に検出することができる。
【0015】
あるいは、前述のいずれかに記載の超音波センサであって、前記厚肉部は円板状とされてなり、前記薄肉部は上記厚肉部を囲みこれと同軸の円環板状とされてなる超音波センサとすると良い。
【0016】
本発明の超音波センサでは、円板状の厚肉部と円環板状の薄肉部とを同軸としている。このため、円環板状の薄肉部から放射され軸線上を進む超音波が、対象物に当たり、これに反射されて超音波(反射超音波)が往きとほぼ同じ経路(軸線上)を戻る場合に、円環板状の薄肉部と同軸の円板状の厚肉部で、これを容易に検出することができる。
【0017】
そのほか、前述のいずれかに記載の超音波センサであって、前記薄肉部のうち、自身の厚さ方向一方側の面であり、超音波を放射する面を放射面とし、前記厚肉部のうち、自身の厚さ方向一方側の面であり、超音波を受波する面を受波面としたとき、上記薄肉部と上記厚肉部とは、上記放射面に直交し、この放射面から外部に向けて延びる仮想の放射法線と、上記受波面に直交し、この受波面から外部に向けて延びる仮想の受波法線とが、交叉する形態とされてなる超音波センサとすると良い。
【0018】
本発明の超音波センサでは、薄肉部と厚肉部とを上述の形態としている。このため、放射法線と受波法線とが交叉する点(交点)の近傍に対象物が存在する場合、薄肉部の放射面から放射した超音波の反射超音波を、厚肉部の受波面で適切に受波できる。従って、この交点近傍における対象物の有無を、選択的に、かつ、高い感度で検知をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。図1及び図2は、実施形態1にかかる超音波センサ10の形態を示す断面図及び平面図である。超音波センサ10は、PZT系の圧電セラミックスからなる圧電素子11と、この図1中、上下面(厚み方向DTの両面)に形成された電極層17,18とからなる。
【0020】
このうち、圧電素子11は、円板状の薄肉部12と、この薄肉部12の軸線JXと同軸で、薄肉部12の周囲を取り囲む円環板状の厚肉部13とを有している。この厚肉部13は、その厚み方向DTの厚みTb1が、薄肉部12の厚みTa1よりも厚くされている。さらに、薄肉部12と厚肉部13との間には、断面コ字状の溝部16が環状に凹設されて、介在部15が介在している。この介在部15の厚みTc1は、薄肉部12の厚みTa1よりも薄くされている(Tc1<Ta1<Tb1)。この圧電素子11は、薄肉部12、介在部15及び厚肉部13が一体とされた圧電セラミックスからなっている。その一方で、この介在部15の存在により、薄肉部12と厚肉部13との間で、振動が伝わり難くなっている。
【0021】
また、薄肉部12の厚み方向DT(図1中、上下方向)両側に位置する、平坦な薄肉第1面12A及び薄肉第2面12B上には、それぞれ焼き付け銀電極からなる円板状の薄肉部電極17が形成されている。一方、厚肉部13の厚み方向DT(図1中、上下方向)の両側に位置する平坦な厚肉第1面13A及び厚肉第2面13B上にも、それぞれ焼き付け銀電極からなる円環状の厚肉部電極18が形成されている。薄肉部電極17と厚肉部電極18とは、離間し絶縁されている。
【0022】
この超音波センサ10(圧電素子11)のうち、薄肉部12及び厚肉部13は、ぞれぞれ厚み方向に分極されている。
このため、2つの薄肉部電極17の間に、高周波の交流電圧を印加すると、薄肉部12は、それに応じて振動する。特に、この薄肉部12を、その厚みTa1に応じた共振周波数fraで駆動した場合には、共振して厚み方向DTに大きく振動すると共に、インピーダンスが極小となる。従って、この共振周波数fraで、薄肉部12を駆動すれば、振幅の大きい(強度の高い)超音波を放射(送波)させることができる。
また、薄肉部12は、この共振周波数fraよりも高い周波数領域のうち、その厚みTa1に応じた反共振周波数faaで反共振して、そのインピーダンスが極大となる(図3参照)。
【0023】
同様に、2つの厚肉部電極18の間に、高周波の交流電圧を印加すると、厚肉部13は、その厚みTb1に応じた共振周波数frbで共振して、インピーダンスが極小となると共に、厚み方向に大きく振動する。また、厚肉部13は、この共振周波数frbよりも高い周波数領域のうち、その厚みTb1に応じた反共振周波数fabで反共振して、そのインピーダンスが極大となる(図3参照)。従って、この反共振周波数fabの超音波振動を、厚肉部13に加えると、大きな振幅の(電圧の高い)出力電圧を得ること、つまり、感度良く超音波振動を受波することができる。
なお、厚肉部13の共振周波数frb及び反共振周波数fabは、その厚みが相対的に厚いために、それぞれ、薄肉部12の共振周波数fra及び反共振周波数faaに比して低い値となる。
【0024】
本実施形態1の超音波センサ10では、薄肉部12の共振周波数fraと厚肉部13の反共振周波数fabとが一致する(fra=fab)ように、薄肉部12の厚みTa1と厚肉部13の厚みTb1とを調整してある(図3参照)。
【0025】
この超音波センサ10について、例えば、図4に示すように、高周波電源HP、スイッチSW1,SW2等を接続する。具体的には、高周波電源HPの両端子を、スイッチSW1を介して、2つの薄肉部電極17にそれぞれ接続する。一方、2つの厚肉部電極18間の超音波出力UOUTを、スイッチSW2を介して出力させる。なお、スイッチSW1とSW2とは、連動しており、一方がオンのとき他方がオフとなる。
【0026】
ここで、スイッチSW1をオン(スイッチSW2がOFF)とした場合、薄肉部12が、高周波電源HPからの出力(周波数f=fra)によって駆動される。すると、この薄肉部12は共振して、大きく振動するため、薄肉部12の薄肉第1面12Aから、周波数f=fraで、高い強度の(振幅の大きな)放射超音波US1が放射される。
放射された超音波は、検出対象物(図示しない)に当たって反射して、周波数f=fraの受波超音波US2として、超音波センサ10に戻ってくる。
これに対して、スイッチSW2をオン(スイッチSW1をOFF)としておくと、外部からの受波超音波US2が厚肉部13に届いた場合に、厚肉部13が振動させられ、厚肉部13から超音波出力が得られる。しかも、受波超音波US2の周波数fが、厚肉部13の反共振周波数fabとなっている(周波数f=fra=fba)ため、感度が高く、電圧振幅の大きな超音波出力UOUTを得ることができる。
【0027】
かくして、本実施形態1の超音波センサ10によれば、所定の厚さの圧電素子を共用して、超音波の送波と受波を行う従来の形態の超音波センサを用いた場合に比して、送波時の放射強度を増大させ、さらに、受波時の感度も向上させることができる。
【0028】
しかも、この超音波センサ10では、圧電素子11の薄肉部12と厚肉部13とが一体であるので、つまり、超音波センサ10は、薄肉部12と厚肉部13とが一体の1つの超音波センサとして取り扱うことができるので、取り扱いが容易である。しかも、薄肉部12と厚肉部13との相対位置決めが不要である点でも、取り扱いが容易である。このため、安価で設置容易な超音波センサとすることができる。
特に、本実施形態1の超音波センサ10では、薄肉部12と厚肉部13とが同軸とされているので、超音波を放射する放射面である薄肉第1面12A、及び超音波を受波する受波面である厚肉第1面13Aの向き(軸線JXの延びる方向)を容易に決めうる。
【0029】
また、本実施形態1の超音波センサ10では、薄肉第1面12Aと厚肉第1面13Aとを、面一にしている。つまり、放射超音波US1の放射面(薄肉第1面12A)と受波超音波US2の受波面(厚肉第1面13A)とが面一になっている。このため、薄肉第1面12A及び厚肉第1面13Aを露出させつつ、圧電素子11の外周を包囲する場合に、薄肉第1面12A及び厚肉第1面13Aで、水などの超音波の媒体に対するシールを施しやすい。
【0030】
(変形形態1)
次いで、実施形態1の変形形態にかかる駆動手法について、図5を参照して説明する。
本変形形態1は、前述した実施形態1に係る超音波センサ10を用いるが、放射面及び受波面が異なる(図4参照)点で、実施形態1と異なる。
すなわち、実施形態1では、図4に示すように、超音波センサ10を使用するに当たり、薄肉部12の薄肉第1面12Aを、放射超音波US1を放射する放射面とした。また、厚向き部13の厚肉第1面を、受波超音波US2を受波する受波面とした。
【0031】
これに対し、本変形形態1では、図5に示すように、超音波センサ10を使用するに当たり、薄肉部12の薄肉第2面12Bを、放射超音波US1を放射する放射面とした。また、厚肉部13の厚肉第2面13Bを、受波超音波US2を受波する受波面とした。そして、高周波電源HPの両端子を、スイッチSW1を介して、2つの薄肉部電極17にそれぞれ接続している。一方、2つの厚肉部電極18間の超音波出力UOUTを、スイッチSW2を介して出力させている。
【0032】
このようにして超音波センサ10を駆動しても、スイッチSW1がオンの場合には、薄肉第2面12B(放射面)から放射超音波US1が放射される。また、スイッチSW2がオンの場合には、厚肉第2面13B(受波面)に届いた受波超音波US2により、超音波出力UOUTが得られる。
【0033】
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態にかかる超音波センサ20について、図6及び図7を参照して説明する。
前述した実施形態1の超音波センサ10は、薄肉部12が円板状で、これより厚い厚肉部13がこれに同軸で、これを囲む円環板状をなしており、全体として、断面が、凹字形状とされていた。
これに対し、本実施形態2の超音波センサ20は、厚みの厚い厚肉部23が円板状で、薄肉部22がこれに同軸で、これを囲む円環板状をなしており、全体として、断面が、凸字形状とされている点で異なる。
【0034】
超音波センサ20について、詳細に説明する。超音波センサ20も、PZT系の圧電セラミックスからなる圧電素子21と、この図6中、上下面(厚み方向DTの両面)に形成された電極層27,28とからなる。
【0035】
このうち、圧電素子21は、円板状の厚肉部23と、この厚肉部23の軸線JXと同軸で、厚肉部23の周囲を取り囲む円環板状の薄肉部22とを有している。この薄肉部22は、その厚み方向DTの厚みTa2が、厚肉部23の厚みTb2よりも薄くされている。さらに、薄肉部22と厚肉部23との間にも、断面コ字状の溝部26が環状に凹設されて、介在部25が介在している。この介在部25の厚みTc2は、薄肉部22の厚みTa2よりも薄くされている(Tc2<Ta2<Tb2)。この圧電素子21も、薄肉部22、介在部25及び厚肉部23が一体とされた圧電セラミックスからなっている。その一方で、この介在部25の存在により、薄肉部22と厚肉部23との間で、振動が伝わり難くなっている。
【0036】
また、薄肉部22の厚み方向DT(図1中、上下方向)両側の、平坦な薄肉第1面22A及び薄肉第2面22B上には、それぞれ焼き付け銀電極からなる円環状の薄肉部電極27が形成されている。一方、厚肉部23の厚み方向DT(図1中、上下方向)の両側の、平坦な厚肉第1面23A及び厚肉第2面23B上にも、それぞれ焼き付け銀電極からなる円板状の厚肉部電極28が形成されている。
【0037】
この超音波センサ20(圧電素子21)のうち、薄肉部22及び厚肉部23は、ぞれぞれ厚み方向に分極されている。
このため、実施形態1と同じく、2つの薄肉部電極27の間に、高周波の交流電圧を印加すると、薄肉部22は、それに応じて振動する。薄肉部22は、共振周波数fraで共振し、反共振周波数faaで反共振する。従って、この薄肉部22を、共振周波数fraで駆動した場合には、インピーダンスが極小となると共に、振幅の大きい(強度の高い)超音波を放射させることができる。
【0038】
また、厚肉部23は、その厚みTb2が薄肉部22の厚みTa2よりも厚いため、薄肉部22の共振周波数fra及び反共振周波数faaよりもそれぞれ低い周波数が、共振周波数frb及び反共振周波数fabとなる。この厚肉部23でも、反共振周波数fabの超音波を加えた場合には、そのインピーダンスが極大となる(図3参照)と共に、大きな振幅の(電圧の高い)出力電圧を得ること、つまり、感度良く超音波振動を受波することができる。
【0039】
そして、本実施形態2の超音波センサ20でも、薄肉部22の共振周波数fraと厚肉部23の反共振周波数fabとが一致する(fra=fab)ように、薄肉部22の厚みTa2と厚肉部23の厚みTb2とを調整してある(図3参照)。
【0040】
この超音波センサ20について、例えば、図8に示すように、高周波電源HPの両端子を、スイッチSW1を介して、2つの薄肉部電極27にそれぞれ接続する。一方、2つの厚肉部電極28間の超音波出力UOUTを、スイッチSW2を介して出力させる。なお、スイッチSW1とSW2とは、連動しており、一方がオンのとき他方がオフとなる。
【0041】
ここで、スイッチSW1をオン(スイッチSW2がOFF)すると、薄肉部22が、高周波電源HPからの出力(周波数f=fra)によって駆動されて共振し、大きく振動する。このため、薄肉部22の薄肉第1面22Aから、周波数f=fraで、高い強度の(振幅の大きな)放射超音波US1が放射される。
放射された超音波は、検出対象物(図示しない)に当たって反射して、周波数f=fraの受波超音波US2として、超音波センサ20に戻ってくる。
これに対して、スイッチSW2をオン(スイッチSW1をOFF)としておくと、外部からの受波超音波US2が厚肉部23に届いた場合に、厚肉部23が振動して、超音波出力が得られる。しかも、受波超音波US2の周波数fが、厚肉部23の反共振周波数fabとなっている(周波数f=fra=fba)ため、感度が高く、電圧振幅の大きな超音波出力UOUTを得ることができる。
【0042】
かくして、本実施形態2の超音波センサ20によっても、所定の厚さの圧電素子を共用して、超音波の送波と受波を行う従来の形態の超音波センサを用いた場合に比して、送波時の放射強度を増大させ、さらに、受波時の感度も向上させることができる。
【0043】
しかも、この超音波センサ20でも、圧電素子21の薄肉部22と厚肉部23とが一体であり、薄肉部22と厚肉部23とが一体の1つの超音波センサとして取り扱うことができるので、取り扱いが容易である。しかも、薄肉部22と厚肉部23との相対位置決めが不要である点でも、取り扱いが容易であり、安価で設置容易な超音波センサとなる。
特に、本実施形態2の超音波センサ20では、薄肉部22と厚肉部23とが同軸とされているので、超音波の放射面である薄肉第1面22A、及び超音波の受波面である厚肉第1面23Aの向き(軸線JXの延びる方向)を容易に決めうる。
【0044】
また、本実施形態2の超音波センサ20でも、薄肉第1面22Aと厚肉第1面23Aとを面一にして、放射超音波US1の放射面(薄肉第1面22A)と受波超音波US2の受波面(厚肉第1面23A)とが面一としている。このため、薄肉第1面22A及び厚肉第1面23Aを露出させつつ、圧電素子21の外周を包囲する場合に、薄肉第1面22A及び厚肉第1面23Aで、水などの超音波の媒体に対するシールを施しやすい。
【0045】
なお、図示しないが、変形形態1と同様、超音波センサ20を使用するに当たり、薄肉部22の薄肉第2面22Bを、放射超音波US1を放射する放射面とし、厚肉部23の厚肉第2面23Bを、受波超音波US2を受波する受波面として、この超音波センサ20を使用しても良い。
【0046】
(実施形態3)
次いで、第3の実施形態にかかる超音波センサ30について、図9及び図10を参照して説明する。
前述した実施形態1の超音波センサ10は、薄肉部12が円板状で、これより厚い厚肉部13がこれを囲む円環板状をなして、全体として、断面が、凹字形状とされていた。また、本実施形態2の超音波センサ20は、厚肉部23が円板状で、厚みの薄い薄肉部22がこれを囲む円環板状をなして、全体として、断面が、凸字形状とされていた。
【0047】
これに対し、本実施形態3の超音波センサ30は、矩形板状の薄肉部32と同じく矩形板状の厚肉部33とが、互いに斜めに結合しており、全体として、断面がV字形状とされている点で異なる。
【0048】
超音波センサ30について、詳細に説明する。超音波センサ30も、PZT系の圧電セラミックスからなる圧電素子31と、この図9中、薄肉部32及び厚肉部33の上下面に形成された電極層37,38とからなる。
【0049】
このうち、圧電素子31は、矩形板状の薄肉部32と、この薄肉部32と斜めに結合する矩形板状の厚肉部33とを有している。この厚肉部32は、自身の厚みTb3が、薄肉部32の厚みTa2よりも厚くされている。さらに、薄肉部32と厚肉部33との間、ちょうど、V字の底部分に、断面がコ字状の溝部36が直線状に凹設されて、介在部35が介在している。この介在部35の厚みTc3は、薄肉部32の厚みTa3よりも薄くされている(Tc3<Ta3<Tb3)。この圧電素子31も、薄肉部32、介在部35及び厚肉部33が一体とされた圧電セラミックスからなっている。その一方で、この介在部35の存在により、薄肉部32と厚肉部33との間で、振動が伝わり難くなっている。
【0050】
また、薄肉部32の厚み方向DT2の両側に位置する、平坦な薄肉第1面32A及び薄肉第2面32B上にも、それぞれ焼き付け銀電極からなる矩形状の薄肉部電極37が形成されている。一方、厚肉部33の厚み方向DT3の両側に位置する平坦な厚肉第1面33A及び厚肉第2面33B上にも、それぞれ焼き付け銀電極からなる矩形状の厚肉部電極38が形成されている。
【0051】
この超音波センサ30(圧電素子31)のうち、薄肉部32及び厚肉部33は、ぞれぞれ厚み方向に分極されている。
従って、この実施形態3の超音波センサ30でも、実施形態1,2と同じく、2つの薄肉部電極37の間に、共振周波数fraの交流電圧を印加すると、薄肉部22が共振する。従って、この薄肉部22を、共振周波数fraで駆動した場合には、インピーダンスが極小となると共に、振幅の大きい(強度の高い)超音波を放射させることができる。
また、厚肉部33は、反共振周波数fabの超音波を加えた場合に、そのインピーダンスが極大となる(図3参照)と共に、大きな振幅の(電圧の高い)出力電圧を得ること、つまり、感度良く超音波振動を受波することができる。
【0052】
そして、本実施形態3の超音波センサ30でも、薄肉部32の共振周波数fraと厚肉部33の反共振周波数fabとが一致する(fra=fab)ように、薄肉部32の厚みTa3と厚肉部33の厚みTb3とを調整してある(図3参照)。
【0053】
かくして、本実施形態3の超音波センサ30によっても、所定の厚さの圧電素子を共用して、超音波の送波と受波を行う従来の形態の超音波センサを用いた場合に比して、送波時の放射強度を増大させ、さらに、受波時の感度も向上させることができる。
しかも、この超音波センサ30でも、薄肉部32と厚肉部33とが一体の1つの超音波センサとして取り扱うことができるので、取り扱いが容易である。しかも、薄肉部32と厚肉部33との相対位置決めが不要である点でも、取り扱いが容易であり、安価で設置容易な超音波センサとなる。
【0054】
特に、本実施形態3の超音波センサ30では、薄肉部32と厚肉部33とが互いに斜めに結合され、V字状に配置されている。ここで、薄肉部32の一方側の薄肉第1面32Aを、超音波を放射する面を放射面SOとし、厚肉部33の一方側の厚肉第1面33Aを、超音波を受波する面を受波面SIとする。すると、薄肉部32と厚肉部33とは、放射面SO(薄肉第1面32A)の中央において、これに直交し、この放射面SOから外部に向けて延びる仮想の放射法線Nhと、受波面SI(厚肉第1面33A)の中央において、これに直交し、この受波面SIから外部に向けて延びる仮想の受波法線Njとが、交点Kで交叉する形態とされてなる。
【0055】
この超音波センサ30では、放射法線Nhと受波法線Njとが交叉する交点Kの近傍に対象物が存在する場合、薄肉部32の放射面SO(薄肉第1面32A)から放射した放射超音波US1の反射超音波(受波超音波)US2を、厚肉部33の受波面SI(厚肉第1面33A)で適切に受波できる。従って、この交点近傍における対象物の有無を、選択的に、かつ、高い感度で検知をすることができる。
【0056】
(変形形態2)
次いで、実施形態3の変形形態にかかる超音波センサについて、図11、図12を参照して説明する。
上述の実施形態3の超音波センサ30では、圧電素子31を、薄肉部32と厚肉部33とが、互いに斜めに結合され、V字状に配置される形態とした。そして、薄肉第1面32Aと厚肉第1面33Aとが、図9において、中心面KXに対して左右非対称となる形態とした。
【0057】
これに対し、本変形形態2の超音波センサ40では、薄肉部42と厚肉部43とが、互いに斜めに結合され、V字状に配置されている点で、実施形態3と同様である。しかし、薄肉第1面42Aと厚肉第1面43Aとが、図11において、中心面KXに対して左右対称でV字形をなす形態とした点で実施形態3と異なる。
このようにすることにより、超音波放射面SOである薄肉第1面42Aと、超音波受波面SIである厚肉第1面43Aの間に段差が生じないため、薄肉第1面42A及び厚肉第1面43Aを露出させつつ、圧電素子41の外周を包囲する場合に、薄肉第1面42A及び厚肉第1面43Aで、水などの超音波の媒体に対するシールを施しやすい。
【0058】
(実施形態4)
次いで、実施形態4にかかる超音波センサ50について、図13を参照して説明する。
前述した実施形態1の超音波センサ10では、薄肉第1面12A上に形成した薄肉部電極17と、厚肉第1面13A上に形成した厚肉部電極18とは、互いに離間し、絶縁されている。また、介在部15をなす溝部16も介在している。
【0059】
これに対し、本実施形態の超音波センサ50では、薄肉部52及び厚肉部53の形態は、実施形態1の薄肉部12及び厚肉部13と同様としながら、薄肉第1面52A及び厚肉第1面53Aにまたがって共通電極59を形成している。また、介在部55をなす溝部56を、薄肉第1面52Aと厚肉第1面53Aとの間には形成しない形態としている。このため、実施形態1の超音波センサ10とは、薄肉部52の厚みTa1及び厚肉部53の厚みTb1は同じであるが、介在部55の厚みは、Tc1より若干厚いTc5とされている。
【0060】
このようにしても、例えば、図14の回路を用いて、超音波センサ10と同様、薄肉部52を共振させて、この薄肉部52から高い強度の放射超音波US1を放射(送波)し、厚肉部53を反共振させて、この厚肉部53で受波超音波US2を高い感度で受波することができる。
【0061】
以上において、本発明を実施形態1〜5及び変形形態1,2に即して説明した。しかし、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、前述の実施形態1等では、薄肉部と厚肉部との間に、溝部を設けることで、これらの間に介在する介在部が存在する形態を示した。しかし、薄肉部と厚肉部との間に、介在部(溝部)を設けない形態としても良い。但し、介在部(溝部)の存在により、薄肉部と厚肉部との間の縁切りがなされて、一方の振動が他方に伝わりにくいなど、一方の挙動が他方に影響しにくいようにできるので、介在部を設ける方が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態1にかかる超音波センサの断面図である。
【図2】実施形態1にかかる超音波センサの平面図である。
【図3】超音波センサの薄肉部と厚肉部との、周波数−インピーダンス特性の関係を示すグラフである。
【図4】実施形態1にかかる超音波センサの駆動手法を示す回路図である。
【図5】変形形態1にかかり、上述の実施形態1にかかる超音波センサの放射面および受波面を変えて駆動する駆動手法を示す回路図である。
【図6】実施形態2にかかる超音波センサの断面図である。
【図7】実施形態2にかかる超音波センサの平面図である。
【図8】実施形態2にかかる超音波センサの駆動手法を示す回路図である。
【図9】実施形態3にかかる超音波センサの断面図である。
【図10】実施形態3にかかる超音波センサの平面図である。
【図11】変形形態2にかかる超音波センサの断面図である。
【図12】変形形態2にかかる超音波センサの平面図である。
【図13】実施形態4にかかる超音波センサの断面図である。
【図14】実施形態4にかかる超音波センサの駆動手法を示す回路図である。
【符号の説明】
【0063】
10,20,30,40,50 超音波センサ
11,21,31,41,51 圧電素子
12,22,32,42,52 (圧電素子の)薄肉部
12A,22A,32A,42A,52A (薄肉部の)薄肉第1面
12B,22B,32B,42B,52B (薄肉部の)薄肉第2面
13,23,33,43,53 (圧電素子の)厚肉部
13A,23A,33A,43A,53A (厚肉部の)厚肉第1面
13B,23B,33B,43B,53B (厚肉部の)厚肉第2面
15,25,35,45,55 介在部
16,26,36,46,56 溝部
17,27,37,47,57 薄肉部電極
18,28,38,48,58 厚肉部電極
59 共通電極
Ta1,Ta2,Ta3,Ta4 薄肉部の厚み
Tb1,Tb2,Tb3,Tb4 厚肉部の厚み
Tc1,Tc2,Tc3,Tc4,Tc5 介在部の厚み
fra (薄肉部の厚み方向の)共振周波数
faa (薄肉部の厚み方向の)反共振周波数
frb (厚肉部の厚み方向の)共振周波数
fab (厚肉部の厚み方向の)反共振周波数
SO 放射面
SI 受波面
Nh 放射法線
Nj 受波法線
K 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受波を行う超音波センサであって、
厚みTaの薄肉部、及び、
上記薄肉部と一体とされ、上記薄肉部よりも厚い厚みTbの厚肉部を有する
圧電素子と、
上記薄肉部を挟む薄肉部電極と、
上記厚肉部を挟む厚肉部電極と、を備え、
上記圧電素子は、
上記薄肉部の厚みTaと上記厚肉部の厚みTbとを、上記薄肉部における共振周波数と上記厚肉部における反共振周波数とが等しくなる関係にしてなる
超音波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサであって、
前記薄肉部と前記厚肉部との間に介在し、上記薄肉部よりも厚みの小さい介在部1を備える
超音波センサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超音波センサであって、
前記薄肉部は円板状とされてなり、
前記厚肉部は上記薄肉部を囲みこれと同軸の円環板状とされてなる
超音波センサ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の超音波センサであって、
前記厚肉部円板状とされてなり、
前記薄肉部上記厚肉部を囲みこれと同軸の円環板状とされてなる
超音波センサ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の超音波センサであって、
前記薄肉部のうち、自身の厚さ方向一方側の面であり、超音波を放射する面を放射面とし、
前記厚肉部のうち、自身の厚さ方向一方側の面であり、超音波を受波する面を受波面としたとき、
上記薄肉部と上記厚肉部とは、
上記放射面に直交し、この放射面から外部に向けて延びる仮想の放射法線と、
上記受波面に直交し、この受波面から外部に向けて延びる仮想の受波法線とが、交叉する形態とされてなる
超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−154371(P2010−154371A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331625(P2008−331625)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】