説明

超音波センサ

【課題】部品点数を増やすことなく防水性を確保することができ、また、重量及びコストの増加を抑制し、且つ回路基板の歪みの発生を防止することのできる超音波センサを提供する。
【解決手段】超音波の送受波を行う送受波素子を収納する送受波ブロック1と、送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板3と、開口41Aを具備するとともに送受波ブロック1が取り付けられるハウジング4と、ハウジング4に設けられた挿通口42を通して送受波素子と回路基板3の電子回路とを電気的に接続する導通手段と、挿通口42を封止する封止板6とを備え、ハウジング4の開口41Aは、回路基板3によって閉塞される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されて障害物検知等に用いられる超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図5に示すように、一面に開口を具備する中空状のハウジング101と、超音波の送受波が行われる送受波面がハウジング101の他面に露出する送受波素子(送受波ブロック)102とを備えた超音波センサが提供されている。この超音波センサは、ハウジング101内に収納されて送受波素子102を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装される回路基板103と、送受波素子102と回路基板103とを電気的に接続する配線104とを備える。また、この超音波センサは、ハウジング101の開口を覆うように設けられる蓋部材105と、一端が回路基板103に溶接等により接続されて他端が図示しない給電端子に接続される端子106とを備える。
【0003】
そして、上記超音波センサが車両用として用いられる場合、当該超音波センサは、バンパーやフロントグリル等、水を被る可能性が高く且つ振動の激しい箇所に設置される。このため、従来多くの超音波センサでは、その回路基板103が収納されるハウジング101内に、疎水性及び弾力性を有するシリコンやウレタン等の充填材107が充填されている。このように充填材107をハウジング101内に充填することで、要求される高い防水性及び耐振性を確保する構成が一般的となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−24351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、充填材107をハウジング101内に充填することにより、その分重量及びコストが増加するのみならず、充填材107の存在によってハウジング101内に収納された回路基板103に歪みが生じる可能性がある。回路基板103に歪みが生じると、当該回路基板103上に実装された電子部品との間のはんだ付け部分に応力がかかり、亀裂が生じる虞がある。或いは、充填材107の充填の前後においてセンサの検知エリア特性が変化してしまうという虞もある。なお、回路基板103に歪みを生じさせる要因としては、例えば、充填材107の熱膨張及び収縮に伴う外部負荷がある。また、充填前後における検知エリア特性の変化としては、その検知エリアの狭小化等が挙げられる。
【0006】
そこで、図6に示すように、ハウジング101内の回路基板103が収納される基板収納部101Aと、送受波素子102が収納される素子収納部101Bとを連通する連通孔101Cを封止板108で封止することが考えられる。この構成であれば、ハウジング101の開口を蓋部材105で閉塞することで基板収納部101Aが密閉されるので、充填材107を用いることなく防水性を確保することができる。
【0007】
しかしながら、前述の従来例や図6に示す上記構成の場合、ハウジング101の開口を閉塞するために蓋部材105を必要とするため、部品点数が増えるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、部品点数を増やすことなく防水性を確保することができ、また、重量及びコストの増加を抑制し、且つ回路基板の歪みの発生を防止することのできる超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超音波センサは、超音波の送受波を行う送受波素子を収納する送受波ブロックと、前記送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板と、開口を具備するとともに前記送受波ブロックが取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられた挿通口を通して前記送受波素子と前記回路基板の電子回路とを電気的に接続する導通手段と、前記挿通口を封止する封止手段とを備え、前記ハウジングの開口は、前記回路基板によって閉塞されることを特徴とする。
【0010】
この超音波センサにおいて、前記回路基板は、前記ハウジングの内部に対向する面に前記電子回路が実装されることが好ましい。
【0011】
この超音波センサにおいて、前記回路基板は、前記ハウジングの内側に配置され、前記回路基板と前記ハウジングの開口との間の空間には、封止材が充填されることが好ましい。
【0012】
この超音波センサにおいて、前記導通手段は前記送受波ブロックから突出する端子を含み、前記回路基板には、外部電源からの電力供給を受けるための外部接続端子の一端が接続され、前記端子及び前記外部接続端子は、前記回路基板に設けられた前記電子回路と電気的に接続されることが好ましい。
【0013】
この超音波センサにおいて、前記端子及び前記外部接続端子は、その一端部を前記回路基板に設けられた挿入孔に圧入して嵌め合わせることで前記電子回路と電気的に接続されることが好ましい。
【0014】
この超音波センサにおいて、前記ハウジングには、その底部から前記ハウジングの開口に向けて突出する支持リブが設けられ、前記回路基板は、前記支持リブの端部と当接することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、回路基板によってハウジングの開口を閉塞するので、部品点数を増やすことなく防水性を確保することができ、また、重量及びコストの増加を抑制し、且つ回路基板の歪みの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る超音波センサの実施形態を示す断面図である。
【図2】同上の他の構成を示す断面図である。
【図3】同上のピン端子及び外部接続端子の他の接合方法を示す図で、(a)は端子の挿入前の断面図で、(b)は端子の挿入後の断面図である。
【図4】(a),(b)は同上の更に他の構成を示す断面図である。
【図5】従来の超音波センサを示す断面図である。
【図6】従来の超音波センサの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る超音波センサの実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、図1における上下左右を上下左右方向と定めるものとする。本実施形態は、図1に示すように、超音波の送受波を行う送受波ブロック1と、送受波ブロック1の送受波面以外の外周面を覆うカバー2と、送受波ブロック1を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板3とを備える。また、本実施形態は、送受波ブロック1が収納される素子収納部40、及び開口41Aを具備して回路基板3に実装された電子回路の少なくとも一部が収納される回路収納部41が設けられるハウジング4を備える。このハウジング4には、素子収納部40と回路収納部41とを連通する挿通口42が形成される。更に、本実施形態は、一端が回路基板3に接続されて他端が図示しない外部端子に接続される外部接続端子5と、挿通口42を封止する封止板6(封止手段)とを備える。
【0018】
送受波ブロック1は、図1に示すように、圧電素子から成る送受波素子(図示せず)と、内部に送受波素子を収納するケース10とから構成される。ケース10は、例えば黒色に着色されたポリブチレンテレフタレートから円筒状に形成され、その内底部に送受波素子が収納される。また、ケース10の下面は、超音波の送受波面として用いられる。
【0019】
また、送受波ブロック1は、一端が送受波素子と電気的に接続されるリード線(図示せず)と、一端がリード線の他端にはんだ付けされて他端がケース10外に突出する棒状のピン端子11とを備える。ピン端子11の他端は、回路基板3に設けられた挿入孔(図示せず)に挿入した状態ではんだ付けされることで、回路基板3に実装された電子回路と電気的に接続される。即ち、リード線とピン端子11とで、送受波素子と回路基板3の電子回路とを電気的に接続する導通手段を構成している。
【0020】
カバー2は、図1に示すように、弾性材料から下面を開口した有底円筒状に形成され、送受波ブロック1を覆うようにケース10の外周に組み付けられる。カバー2の上面には、送受波ブロック1のピン端子11を通すための通孔20が設けられている。
【0021】
回路基板3は、図1に示すように、通孔20及び挿通口42を介したピン端子11が前述のようにはんだ付けによって接続される。また、回路基板3の下面には、電子回路を構成する電子部品30が実装される。勿論、電子部品30は図1において図示されているものだけではなく、大小様々な部品が回路基板3の下面に実装されている。回路基板3は、電子部品30が回路収納部41内に収納されるように回路収納部41の開口41Aの周縁に載置され、接着剤を用いた接着等の方法により接合される。このように回路基板3によって回路収納部41の開口41Aが閉塞されるので、回路収納部41の開口41Aを介して外部から回路収納部41内へ水が浸入するのを防止することができる。
【0022】
ハウジング4は、図1に示すように、上面に開口41Aを具備する中空箱形の回路収納部41と、回路収納部41の内底部の隔壁43を挟んで回路収納部41に隣接する有底円筒状の素子収納部40とから構成される。なお、素子収納部40は、その下面に開口40Aを具備している。また、ハウジング4の隔壁43には、回路収納部41の下部と素子収納部40の上部とを連通させる挿通口42が設けられている。
【0023】
素子収納部40には、図1に示すように、カバー2が組み付けられた送受波ブロック1が隔壁43に当接する位置まで挿入されて、送受波ブロック1の送受波面を開口40Aを介して外部に臨ませる状態で収納される。
【0024】
回路収納部41の底面には、図1に示すように、1対の支持リブ41Bがそれぞれ上向きに突出する形で形成されている。支持リブ41Bは、回路収納部41の底面の左右両端部にそれぞれ設けられており、当該支持リブ41Bの上に回路基板3の左右両端部が載置される。即ち、回路基板3は1対の支持リブ41Bの上端部と当接する。
【0025】
回路収納部41の底部において、素子収納部40と対向する位置には、図1に示すように凹部41Cが設けられており、この凹部41Cの底面に挿通口42の一端が開口している。
【0026】
外部接続端子5は、図1に示すように、インサート成型によってハウジング4の外壁を貫通する形でハウジング4に一体に成型されている。外部接続端子5は、その一端がハウジング4の外面に突設される円筒状のコネクタ部44内に突出し、他端が回路収納部41内に突出する。ここで、外部接続端子5の一端は、図示しない外部端子に接続され、他端は、回路収納部41の底面から突出して回路基板3にはんだ付け等により電気的に接続される。
【0027】
そして、回路基板3の電子回路が外部接続端子5を介して外部電源(図示せず)からの電力の供給を受けて送受波素子へ駆動パルス信号を出力し、駆動パルス信号を受信した送受波素子が超音波を外部に送波する。次に、送受波素子は、送波した超音波の障害物からの反射波を受波すると受波信号を回路基板3の電子回路に出力する。回路基板3の電子回路は、駆動パルス信号を出力してから受波信号が入力されるまでの時間から障害物までの距離を演算し、演算結果を含む信号を外部接続端子5を介して外部の制御回路(図示せず)等へ出力する。
【0028】
封止板6は、例えば透光性を有する白色のポリブチレンテレフタレートから矩形板状に形成され、図1に示すように、その中央部には下向きに窪んだ凹部60が形成されている。即ち、封止板6は、凹部60と、当該凹部60の周縁に形成される鍔部61とから構成される。この封止板6は、その凹部60を挿通口42に嵌め込んだ状態で回路収納部41の凹部41C内に設けられる。また、封止板6における凹部60の底面には通孔(図示せず)が形成され、当該通孔には、送受波ブロック1のピン端子11が通される。
【0029】
封止板6は、その鍔部61が回路収納部41の凹部41Cの底面に超音波溶着又はレーザ溶着によって接合される。なお、溶着の方法としては上記の方法に限定される必要はなく、振動溶着等であってもよい。また、溶着を行う代わりに、接着剤を用いて接着してもよい。これにより、封止板6とハウジング4との隙間が閉塞される。
【0030】
更に、封止板6は、凹部60の底面が挿通口42及びカバー2の通孔20を通して送受波ブロック1のケース11の上面に当接し、当該上面と凹部60の底面とが超音波溶着や振動溶着、又は接着剤を用いた接着により接合される。これにより、封止板6と送受波ブロック1との隙間が閉塞される。このように、封止板6により挿通口42を封止することで、素子収納部40及び挿通口42を介して外部から回路収納部41内へ水が浸入するのを防止することができる。なお、本実施形態では、封止板6によって挿通口42を封止しているが、これに限定される必要は無く、例えば充填材を挿通口42に充填することで挿通口42を封止する構成であってもよい。
【0031】
上述のように、本実施形態では、回路基板3によってハウジング4の開口41Aを閉塞するので、ハウジング4に充填材を充填することなくハウジング4を密閉することができる。このため、回路基板3の周囲に回路基板3に応力をかける虞のある充填材が存在しないので、防水性を確保しつつ重量及びコストの増加を抑制し、且つ回路基板3の歪みの発生を防止することができる。また、ハウジング4の開口41Aを閉塞するための蓋部材を別途用意する必要がないので、部品点数を削減することができる。更に、回路基板3を蓋部材の代わりに用いることで、回路基板3の厚み寸法の分だけハウジング4の厚み寸法を小さくすることができ、したがってセンサの低背化を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態では、ハウジング4の開口41Aを回路基板3で閉塞する際に、接着剤を用いた接着等の溶着以外の方法で回路基板3と開口41Aの周縁とを接合している。このため、溶着に必要な設備が不要となるために設備投資等の初期投資をせずに済むので、償却費などの固定費の削減を図ることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、図1に示すように、回路基板3の下面に支持リブ41Bの上端部が当接している。このため、熱や外部からの振動等によって回路基板3にかかる応力を低減することができる。また、本実施形態では、図1に示すように、回路基板3の片面(下面)のみに電子部品30を実装、即ち、電子回路を実装している。このため、回路基板3の上下両面に電子回路を実装する場合と比較して実装に必要な費用を削減することができる。
【0034】
ところで、本実施形態では、回路基板3のみでハウジング4の開口41Aを閉塞しているが、図2に示すように、回路基板3の上側の空間に封止材7を充填して開口41Aを閉塞する構成であってもよい。この場合、1対の支持リブ41Bが開口41Aの周縁よりも下方に位置し、回路基板3の左右両端部が各支持リブ41Bの上面に載置される。そして、回路基板3と開口41Aとの間の空間を封止材7で充填する。なお、封止材7としては、例えば疎水性及び弾力性を有するシリコーンが用いられる。
【0035】
このように構成することで、ハウジング4の開口41Aをより確実に密閉することができるので、防水性を更に高めることができる。また、仮に回路基板3の上下両面に電子回路を実装したとしても、封止材7によって電子部品30やピン端子11及び外部接続端子5の接合箇所を保護することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、ピン端子11及び外部接続端子5の一端部を回路基板3にはんだ付けにより電気的に接続しているが、他の接続方法であってもよい。例えば、図3(a),(b)に示すように、ピン端子11及び外部接続端子5の一端部をバネ性を有する形状に形成し、回路基板3に設けられた挿入孔31に圧入して嵌め合わせることで、電子回路と電気的に接続する方法であってもよい。この場合、ピン端子11及び外部接続端子5を電子回路に接続する際にはんだ付けが不要となるため、施工性を向上させることができる。また、回路基板3上に予めコネクタ(図示せず)を実装しておき、ピン端子11及び外部接続端子5をコネクタに挿入することで、電子回路と電気的に接続する方法であってもよい。
【0037】
ところで、本実施形態の図1,2の構成では、素子収納部40に送受波ブロック1を収納しているが、図4(a),(b)に示すように、素子収納部40を除いたハウジング4に送受波ブロック1を取り付ける構成でもよい。この構成では、送受波ブロック1を組み付けたカバー2を、ハウジング4下面の挿通口42の周縁に取り付けている。
【符号の説明】
【0038】
1 送受波ブロック
11 ピン端子(導通手段)
3 回路基板
31 挿入孔
4 ハウジング
41A 開口
41B 支持リブ
42 挿通口
5 外部接続端子
6 封止板(封止手段)
7 封止材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受波を行う送受波素子を収納する送受波ブロックと、前記送受波素子を介して送受波される超音波信号を処理するための電子回路が実装された回路基板と、開口を具備するとともに前記送受波ブロックが取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられた挿通口を通して前記送受波素子と前記回路基板の電子回路とを電気的に接続する導通手段と、前記挿通口を封止する封止手段とを備え、前記ハウジングの開口は、前記回路基板によって閉塞されることを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記回路基板は、前記ハウジングの内部に対向する面に前記電子回路が実装されることを特徴とする請求項1記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記回路基板は、前記ハウジングの内側に配置され、前記回路基板と前記ハウジングの開口との間の空間には、封止材が充填されることを特徴とする請求項1又は2記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記導通手段は前記送受波ブロックから突出する端子を含み、前記回路基板には、外部電源からの電力供給を受けるための外部接続端子の一端が接続され、前記端子及び前記外部接続端子は、前記回路基板に設けられた前記電子回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記端子及び前記外部接続端子は、その一端部を前記回路基板に設けられた挿入孔に圧入して嵌め合わせることで前記電子回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項4記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記ハウジングには、その底部から前記ハウジングの開口に向けて突出する支持リブが設けられ、前記回路基板は、前記支持リブの端部と当接することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−198108(P2012−198108A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62606(P2011−62606)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】