説明

超音波モータ

【課題】この発明は、簡便にして容易な加工製作を実現したうえで、接触組立の均一化の促進を実現して、駆動効率の向上を図るようにした超音波モータを提供することにある。
【解決手段】圧電素子10に固着したホルダ部材15に移動方向と直交する方向にそれぞれ係合凸部152を有した湾曲状の摺接突起部151を設け、位置規制部材12に圧電素子10を収容する収容孔121を設けて、この収容部121の内壁面に係合凹部122を有した摺接凹部121を設け、圧電素子10を位置規制部材12の収容孔121に収容すると共に、ホルダ部材15の摺接突起部151及び係合凸部152を収容孔121の摺接凹部122及び係合凹部123に挿入した状態でホルダ部材15を押圧部材16により押圧して、圧電素子10の駆動子11を被駆動体14に圧接するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばデジタルカメラの手振れ補正ユニットやAFレンズ等のアクチュエータとして用いられている超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の超音波モータは、圧電素子に電圧を印加して縦振動と屈曲振動を励起させて楕円振動を発生させ、この楕円振動を、駆動子を介して被駆動体に伝達し、該被駆動体を摩擦駆動するように構成されている。このような超音波モータは、振動体を構成する圧電素子を、被駆動体に対して均一的に接触配置することにより、安定した駆動が実現される。このため、超音波モータにおいては、圧電素子の高精度な組付け配置精度が、駆動特性に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0003】
このような接触配置構成としは、例えば振動体の振動の節部の近傍に複数の凹部を移動方向(ロール方向)と直交する方向(ピッチ方向)に所定の間隔に設け、この複数の凹部に対して支持部材に設けた複数の凸部を係合させる構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この支持部材は、振動体方向に加圧され、振動体の下面に配した駆動子である摩擦部材を、被駆動体である接触部材に所定の圧力で接触させる。これにより、接触部材は、振動体に振動が励起されると、摩擦部材を介して摩擦駆動される。
【0005】
ところで、このような振動体の摩擦駆動は、摩擦部材と接触部材の接触を均一に保てば保つほど、駆動効率を高めることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−96984号公報(図1(a)参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示される構成では、摩擦部材と接触部材の接触のうち、ピッチ方向にのみ自由度があり、同方向のみ、いわゆる「ならう」構成となっているために、構成部品の製作加工誤差や組立誤差があると、その接触精度が悪化される。このため、構成部品の高精度な加工・組立精度が要求され、その加工・組立を含む製作作業が非常に面倒であるという問題を有する。
【0007】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、簡便にして容易な加工製作を実現したうえで、接触組立の均一化の促進を実現して、駆動効率の向上を図り得るようにした超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、縦振動と屈曲振動を同時に励起して楕円振動を発生させ、前記楕円振動により駆動力を得て被駆動体を駆動する超音波モータであって、圧電素子と、前記圧電素子の一方の面に設けられ、該圧電素子の楕円振動により被駆導体を移動させる駆動子と、前記圧電素子を筐体に位置決め保持するもので、該圧電素子の他方の面の前記縦振動の節又はその近傍で、かつ前記屈曲振動の節又はその近傍に対応して配置され、先端部に係合凸部を有し、前記被駆動体の移動方向と直交する二面からそれぞれ突出された対を構成する湾曲状の摺接突起部が設けられたホルダ部材と、前記圧電素子が収容され、前記被駆動体の移動方向と直交する方向の内壁面にそれぞれ前記ホルダ部材の摺接突起部が摺接自在に収容される摺接凹部及び前記摺接突起部の係合凸部が収容される係合凹部を有した収容孔が設けられた位置規制部材と、前記ホルダ部材を押圧して前記圧電素子の駆動子を前記被駆導体に圧接する押圧部材とを備えて構成した。
【0009】
上記構成によれば、圧電素子に設けたホルダ部材は、その摺接突起部及び係合凸部が位置規制部材の収容孔の摺接凹部及び係合凹部に挿入された状態で押圧部材により押圧され、圧電素子の駆動子を被駆動体に圧接している。
【0010】
これにより、位置規制部材の収容孔に収容した圧電素子は、ホルダ部材の摺接突起部と位置規制部材の収容孔の摺接凹部との作用により被駆動体の移動方向と直交する方向回り、及びその係合凸部と収容孔の係合凹部との作用により移動方向回りの2自由度を有し、ホルダ部材が押圧部材により押圧されると、その駆動子が被駆動体に対して2自由度でいわゆる「ならい」相互間が均一的に接触された状態で組付け配置される。従って、加工精度に影響を受けることなく、接触の均一化の促進を図ることができ、簡便にして容易な加工製作を実現したうえで、駆動効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、この発明によれば、簡便にして容易な加工製作を実現したうえで、接触組立の均一化の促進を実現して、駆動効率の向上を図り得るようにした超音波モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、この発明の一実施の形態に係る超音波モータを示すもので、圧電素子10は、例えば複数の電極板を積層して矩形状に形成され、各電極に対して電圧が印加されると、これに応動して縦振動及び屈曲振動を励起して楕円振動を発生する。この圧電素子10には、その下面の例えば屈曲振動の腹に、駆動子11(11)が接着剤を用いて所定の間隔に固着されている。
【0014】
この圧電素子10は、その駆動子11側の下面側から位置規制部材12に設けられた収容孔121に挿入されて後述するように位置決め収容された状態で、筐体13内に配置される。そして、この圧電素子10の駆動子11は、位置規制部材12の収容孔121に挿通された後、被駆動体14上に圧接されて該被駆動体14を摩擦駆動する。この被駆動体14は、上記筐体13内に転動体9を介して移動自在に配置され、圧電素子10の駆動子11により摩擦駆動されると、転動体9を介して移動制御される。
【0015】
また、圧電素子10には、その上面の縦振動の節又はその近傍で、かつ前記屈曲振動の節又はその近傍に対応する位置に取付凹部101が形成され(図2及び図3参照)、この取付凹部101には、ホルダ部材15が、例えば接着剤を用いて固着されて振動体として構成されている。この振動体を構成するホルダ部材15は、その両端部にそれぞれ湾曲状の摺接突起部151(151)が設けられ、この摺接突起部151が、上記圧電素子10の短辺側から突出されて組付けられている。そして、この摺接突起部151の先端部には、例えば外観円柱状の係合凸部152がそれぞれ突設されている。
【0016】
ホルダ部材15には、その上面に被押圧部153が設けられ、この被押圧部153には、押圧部材16が当接されている。この押圧部材16には、軸部161が突設され、この軸部161は、付勢用ばね部材17に挿通された後(図1参照)、筐体13に設けられた挿通孔131に移動自在に挿通されている。これにより、押圧部材16は、ばね部材17のばね力をホルダ部材15の被押圧部153に付与して、上記圧電素子10の駆動子11を被駆動体14に摩擦駆動可能に圧接させる。
【0017】
このホルダ部材15は、例えば樹脂系材料又はゴム系材料で形成される。そして、他方の押圧部材16は、上記ホルダ部材15と異なる材質で、樹脂材料、ゴム系材料又は金属材料のいずれかを用いて形成されている。すなわち、ホルダ部材15を樹脂材料で形成して、押圧部材16をゴム系材料又は金属材料で形成する。また、ホルダ部材16をゴム系材料で形成して、押圧部材15をゴム系材料又は金属材料で形成する。
【0018】
これにより、ホルダ部材15の被押圧部153を押圧部材16で押圧した状態において、これらホルダ部材15の被押圧部153及び押圧部材16との間には、いわゆる「ガタ」の伝播防止が図れて、駆動子11と被駆動体14との安定した高品質な接組立が実現されて、圧電素子10の駆動特性の安定化の促進を図ることができる。また、これにより、圧電素子10により励起された振動が軸部161等を介して筐体13に伝播し、筐体13がもつ固有振動数による筐体13の振動の励起を防止することができて、駆動特性の安定化の促進に寄与することができる。
【0019】
上記筐体内13には、取付部132が上記被駆動体14に対向して設けられ、この取付部132には、上記位置規制部材12が、例えば螺子部材18を用いて固定されている。この位置規制部材12の収容孔121の長手方向の両辺には、例えば湾曲状の摺接凹部122及び角柱状の係合凹部123が設けられている。この摺接凹部122及び係合凹部123には、圧電素子10に配したホルダ部材15の摺接突起部151及び係合凸部152がそれぞれ挿入されている。
【0020】
ここで、ホルダ部材15は、その摺接突起部151が位置規制部材12の収容孔121の摺接凹部122に対して上記被駆動体14の移動方向と直交する方向(ピッチ方向)回りに自由度を有し、且つ、その係合凸部152が収容孔121の係合凹部123に対して移動方向(ロール方向)回りに自由度を有して組付けられる。このようにして、圧電素子10は、ホルダ部材15及び位置規制部材12を介して筐体13内に2自由度を有して組付け配置される。
【0021】
上記構成により、圧電素子10は、その駆動子11側から位置規制部材12の収容孔121に収容されて、その上面に固着したホルダ部材15の摺接突起部151及び係合凸部152が位置規制部材12の収容孔121の摺接凹部122及び係合凹部123に挿入されている。この状態で、ホルダ部材15の被押圧部153には、押圧部材16が当接される。この押圧部材16は、その軸部161がばね部材17に内挿されて、その先端部が筐体13の挿通孔131に挿通されており、該ばね部材17のばね力をホルダ部材15の被押圧部153に付与する。これにより、圧電素子10の駆動子11は、被駆動体14に圧接される。
【0022】
この際、圧電素子10は、ホルダ部材15の摺接突起部151と位置規制部材12の収容孔121の摺接凹部122との作用による被駆動体14の移動方向と直交する方向(ピッチ方向)回りに自由度を有すると共に、その係合凸部123と収容孔121の係合凹部123の作用による移動方向(ロール方向)回りに自由度を有して筐体13内に収容されている。これにより、圧電素子10は、ホルダ部材15の被押圧部153が押圧部材16により押圧されると、位置規制部材12の収容孔121内においてピッチ方向及びロール方向回りの2自由度で、いわゆる「ならい」、その駆動子11が被駆動体14に対して均一的に接触された状態で筐体13内に組付けられる。
【0023】
この結果、圧電素子10は、電圧が印加されて縦振動及び屈曲振動が励起されて楕円振動が発生されると、その駆動子11による被駆動体14の安定した効率的な摩擦駆動が実行される。
【0024】
そして、摩擦駆動時には、上述したように押圧部材16とホルダ部材15の被押圧部153との間における振動の伝播が遮断されることで、圧電素子10以外の部材(筐体13など)が持つ固有振動数の振動の励起が防止される。この点からも、圧電素子10の駆動子11による安定した高品質な摩擦駆動を行うことができる。
【0025】
このように、上記超音波モータは、圧電素子10に固着したホルダ部材15に移動方向と直交する方向にそれぞれ係合凸部152を有した湾曲状の摺接突起部151を設け、位置規制部材12に圧電素子10を収容する収容孔121を設けて、この収容部121の内壁面に係合凹部122を有した摺接凹部121を設け、圧電素子10を位置規制部材12の収容孔121に収容すると共に、ホルダ部材15の摺接突起部151及び係合凸部152を収容孔121の摺接凹部122及び係合凹部123に挿入した状態でホルダ部材15を押圧部材16により押圧して、圧電素子10の駆動子11を被駆動体14に圧接するように構成した。
【0026】
これによれば、位置規制部材12の収容孔121に収容した圧電素子10は、ホルダ部材15の摺接突起部152と収容孔121の摺接凹部122との作用により被駆動体14の移動方向と直交する方向回り、及びその係合凸部153と収容孔121の係合凹部123との作用により移動方向回りの2自由度を有しており、ホルダ部材15の被押圧部153が押圧部材16により押圧されると、その駆動子11が被駆動体14に対して2自由度で「ならい」相互間が均一的に接触された状態で組付け配置される。
【0027】
これにより、振動体の加工精度に影響を受けることなく、接触の均一化の促進を図ることができ、簡便にして容易な加工製作を実現したうえで、駆動効率の向上を図ることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、位置規制部材12の収容孔121の摺接凹部122を湾曲状に形成するように構成した場合について説明したが、これに限ることなく、その他、図4に示すように位置規制部材12の収容孔121に係合凹部123を形成して、この係合凹部123の角部をテーパ状に面取り加工した摺接凹部122aを、ホルダ部材15の摺接突起部151に対応して形成するように構成してもよい。また、位置規制部材12の収容孔121に設ける係合凹部123を含む摺接凹部122aとしては、その他、菱形形状等の各種形状に形成するように構成することが可能で、いずれも同様に有効な効果が期待される。
【0029】
さらに、上記実施の形態では、位置規制部材12の収容孔121の係合凹部123を角形状に形成した場合について説明したが、この形状に限ることなく、その他の形状に形成して構成することも可能である。
【0030】
また、上記実施の形態では、ホルダ部材15の係合凸部152を円柱状に形成した場合について説明したが、これに限ることなく、その他、多角柱形状や筒状等に形成するように構成することも可能で、同様に有効な効果が期待される。
【0031】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0032】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の一実施の形態に係る超音波モータの概略構成を説明するために示した断面図である。
【図2】図1の振動体を取出して示した分解斜視図である。
【図3】図2の組立状態を示した斜視図である。
【図4】この発明の他の実施の形態に係る超音波モータの要部を取出して上面側から見た状態を示した平面図である。
【符号の説明】
【0034】
9…転動体、10…圧電素子、11…駆動子、101…取付凹部、12…位置規制部材、121…収容孔、122…摺接凹部、123…係合凹部、13…筐体、131…挿通孔、132…取付部、14…被駆動体、15…ホルダ部材、151…摺接突起部、152…係合凸部、153…被押圧部、16…押圧部材、161…軸部、17…ばね部材、18…螺子部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦振動と屈曲振動を同時に励起して楕円振動を発生させ、前記楕円振動により駆動力を得て被駆動体を駆動する超音波モータであって、
圧電素子と、
前記圧電素子の一方の面に設けられ、該圧電素子の楕円振動により被駆導体を移動させる駆動子と、
前記圧電素子を筐体に位置決め保持するもので、該圧電素子の他方の面の前記縦振動の節又はその近傍で、かつ前記屈曲振動の節又はその近傍に対応して配置され、先端部に係合凸部を有し、前記被駆動体の移動方向と直交する二面からそれぞれ突出された対を構成する湾曲状の摺接突起部が設けられたホルダ部材と、
前記圧電素子が収容され、前記被駆動体の移動方向と直交する方向の内壁面にそれぞれ前記ホルダ部材の摺接突起部が摺接自在に収容される摺接凹部及び前記摺接突起部の係合凸部が収容される係合凹部を有した収容孔が設けられた位置規制部材と、
前記ホルダ部材を押圧して前記圧電素子の駆動子を前記被駆導体に圧接する押圧部材と、
を具備することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記ホルダ部材の係合凸部は、円柱形状の外観を有し、前記位置規制部材の収容孔の係合凹部は、角柱形状であることを特徴とする請求項1記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記位置規制部材の収容孔の摺接凹部は、面取り形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記ホルダ部材は、樹脂系材料又はゴム系材料で形成され、前記押圧部材は、前記ホルダ部材と異なる材質で、樹脂材料、ゴム系材料又は金属材料のいずれかを用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−142014(P2009−142014A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313880(P2007−313880)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】