超音波モータ
【課題】温度変化及び負荷変化等が生じた場合であっても最適な駆動周波数で駆動可能であり、且つ単純な構造でコストダウン及び小型化可能な超音波モータを提供すること。
【解決手段】棒状弾性体11の側面において対向して配置された2個の積層型圧電素子13の伸縮振動を利用して棒状弾性体11に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起して棒状弾性体11の端面に設けられた摩擦子15に楕円運動を励起させてロータを回転させる超音波モータ1における前記積層型圧電素子13を、第1圧電板31と第2圧電板32とを交互に積層して構成する。ここで、前記第1圧電板31は、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電板31の周縁部へ露出している第1内部電極A+,B+を備え、前記第2圧電板32は、前記第1内部電極A+,B+とは逆の極性の内部電極であって複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電板の周縁部へ露出している内部電極A-,B-を備える。
【解決手段】棒状弾性体11の側面において対向して配置された2個の積層型圧電素子13の伸縮振動を利用して棒状弾性体11に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起して棒状弾性体11の端面に設けられた摩擦子15に楕円運動を励起させてロータを回転させる超音波モータ1における前記積層型圧電素子13を、第1圧電板31と第2圧電板32とを交互に積層して構成する。ここで、前記第1圧電板31は、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電板31の周縁部へ露出している第1内部電極A+,B+を備え、前記第2圧電板32は、前記第1内部電極A+,B+とは逆の極性の内部電極であって複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電板の周縁部へ露出している内部電極A-,B-を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子を駆動源とする超音波振動子を用いた超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして超音波モータが注目されている。超音波モータは、従来の電磁型モータに比べ以下のような利点を有している。
【0003】
(利点1)ギヤなしで高トルクが得られる。
【0004】
(利点2)電気OFF時に保持力がある。
【0005】
(利点3)高分解能である。
【0006】
(利点4)静粛性に富んでいる。
【0007】
(利点5)磁気的ノイズを発生せず、また、ノイズの影響も受けない。
【0008】
ところで、このような超音波モータに関連する技術として、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。
【0009】
すなわち、特許文献1には、棒状弾性体と、該棒状弾性体の側面に設けられ、該棒状弾性体に対して一体的に設けられた複数の保持用弾性体と、該複数の保持用弾性体により両端を保持された一対の積層型圧電素子であって、その変位方向と前記棒状弾性体の長手方向とが一定の鋭角を有し、かつ、該積層型圧電素子の一対同士は互いに反対方向に傾斜して配置した一対の積層型圧電素子と、積層型圧電素子と前記保持用弾性体との間に設けられた複数の振動検出用の圧電素子と、前記棒状弾性体の端面に設けた摩擦子とを有し、前記一対の積層型圧電素子に対して、前記振動検出用の圧電素子から出力され信号の位相若しくは振幅に応じた所定の周波数、大きさの交番電圧であり互いに位相差を有する交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起して前記棒状弾性体の端面に設けた摩擦子に超音波楕円振動を励起させる超音波振動子が開示されている。
【0010】
この特許文献1に開示された超音波振動子によれば、環境温度等が変化しても、振動検出用の圧電素子からの信号を利用して最適な周波数に追尾することが可能となり、縦振動モード及び屈曲振動モードの双方の振動モードをそれぞれ独立した形で、容易に検出することが可能になる。
【特許文献1】特開平9−85172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術によれば、駆動用の圧電素子である前記積層型圧電素子と前記振動検出用の圧電素子との間に、絶縁用のセラミクスである絶縁板を介在させる必要がある。このことが、当該超音波振動子の構造の複雑化を招いている。
【0012】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、温度変化及び負荷変化等が生じた場合であっても最適な駆動周波数で駆動可能であり、且つ単純な構造でコストダウン及び小型化可能な超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による超音波モータは、棒状弾性体の側面において互いに対向して配置された2個の積層型圧電素子の伸縮振動を利用して、前記棒状弾性体に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起し、前記棒状弾性体の端面に設けられた摩擦子に楕円運動を励起させて、前記摩擦子によりロータを回転させる超音波モータであって、前記積層型圧電素子は、第1の圧電シートと第2の圧電シートとが交互に積層されて構成され、前記第1の圧電シートは、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している第1の内部電極を備え、前記第2の圧電シートは、前記第1の内部電極とは逆の極性の内部電極であって、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している内部電極を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温度変化及び負荷変化等が生じた場合であっても最適な駆動周波数で駆動可能であり、且つ単純な構造でコストダウン及び小型化可能な超音波モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る超音波モータについて図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本第1実施形態に係る超音波モータを構成する超音波振動子10の上面図である。図2は、超音波振動子10を、図1に示すα方向から視た図(正面図)である。図3は、超音波振動子10を図1に示すβ方向から視た図(背面図)である。図4は、超音波振動子10を図1に示すγ方向から視た図(右側面図)である。図5は、超音波振動子10を図1に示すδ方向から視た図(左側面図)である。図6は、超音波振動子10を図1に示すα方向から視た場合の超音波振動子10の分解図である。
【0017】
前記超音波振動子10は、黄銅材(C2801PのO材)から成る角柱形状の角柱棒状弾性体11を有している。この角柱棒状弾性体11は、例えば9mm×9mm×40mmの寸法を持ち、その下端から16mmの位置に例えば深さ2mmの溝14が全周に渡り設けられている。
【0018】
前記角柱棒状弾性体11の正面及び裏面には、電気機械変換素子たる一対の積層型圧電素子13が角柱棒状弾性体11の長さ方向に対して15°の傾斜角度を持って保持されている。これら積層型圧電素子13は、寸法が2mm×3.1mm×9mmのものである。
【0019】
前記角柱棒状弾性体11の先端部には、円環状のフェノール樹脂にアルミナセラミックの砥粒を分散させた砥石からなる摩擦子15が接合されている。また、前記角柱棒状弾性体11の中央部には図6に示すように長さ方向に沿った貫通穴16が設けられ、この穴の一部(正確には縦振動の節位置)にはネジ部20が設けられている。
【0020】
ここで、前記積層型圧電素子13について詳細に説明する。図7は、前記積層型圧電素子13の分解図である。
【0021】
図7に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板31と圧電板32とが同図に示すように交互に積層されて構成されている。このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0022】
詳細には、前記圧電板31は、図7に示すように2分割された内部電極A+,B+を有している。同様に、前記圧電板32は、図7に示すように2分割された内部電極A−,B−を有している。
【0023】
ここで、内部電極(A+,A−)は駆動用の内部電極である。他方、内部電極(B+,B−)は振動検出用の内部電極である。なお、このようにして各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0024】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図8に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極33が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極34が設けられている。また、直接的には図示していないが、内部電極A−が露出した面には外部電極33´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極34´が設けられている。
【0025】
ここで、超音波振動子10の組立方法について、図6を参照して説明する。前記積層型圧電素子13は、角柱棒状弾性体11の積層体挿入凹部18に挿入される。また、保持用弾性体12は、角柱棒状弾性体11に設けた一対のガイド突起部17に沿って挿入され、積層型圧電素子13に付き当てられた後、積層型圧電素子13に圧縮応力100Nの力を印加された状態で、ビス19により固定される。また、積層型圧電素子13と角柱棒状弾性体11と保持用弾性体12の当接面とは、すべてはエポキシ系接着剤を用いて固定される。この後、角柱棒状弾性体11の端面には、摩擦子15が接着剤を用いて接着される。
【0026】
なお、図2及び図3に示すように、前記積層型圧電素子13は、互いに対向する面に前記角柱棒状弾性体11の軸に対して所定の角度を持って2個配置される。以降、上述した内部電極の接続関係を説明する際に、対向する(互いに逆側に配置された)積層型圧電素子13における内部電極同士を接続する場合には、一方の内部電極の名称に´を付して表現する(例えば、A´+,B´−)。
【0027】
ここで、内部電極B+と内部電極B´−とを接続してF+端子とする。同様に、内部電極B−と内部電極B´+とを接続してF−端子とする。以降、このような接続方式を逆接続と称する。これらの端子F+,F−は振動検出用の端子である。つまり、端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、後述する積層型圧電素子13の捻じれ振動に比例する振動検出信号を得る。
【0028】
なお、内部電極B+と内部電極B´+とを接続してF+端子とし、内部電極B−と内部電極B´−とを接続してF−端子とする接続方式を順接続と称する。この順接続によれば、端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、積層型圧電素子13の縦振動に比例する振動検出信号を得ることができる。
【0029】
本第1実施形態においては、上述した逆接続により端子F+,F−を構成し、これら端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、積層型圧電素子13の捻じれ振動に比例する振動検出信号を得るとする。
【0030】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータ1の制御装置について図9を参照して説明する。
【0031】
図9に示すように、制御装置130は、駆動パルス発生回路(信号発生器)131と、ドライブIC(駆動回路)132と、振動検出回路133と、位相比較回路134と、周波数制御回路135と、周波数設定回路136と、方向指示回路137と、を有する。
【0032】
前記駆動パルス発生回路131は、所定の駆動周波数、及び、所定の位相差θの2相の駆動制御信号を生成し、ドライブIC132に出力する。所定の位相差θは、例えば、約90°とされている。
【0033】
前記ドライブIC132は、駆動パルス発生回路131から入力される2相の駆動制御信号に基づいて、所定の位相差、及び、所定の駆動周波数の2相の駆動交番電圧を生成し、各駆動交番信号を上述したA相(上述した内部電極A+,A−)、A´相(上述した内部電極A´+,A´−)に対応する外部電極33,33´に印加する。
【0034】
前記振動検出回路133は、振動検出相の端子(F+,F−)と配線を介して接続されており、振動検出相の端子(F+,F−)からのアナログ電気信号(以下、「振動検出相電気信号」という。)に基づいて、超音波振動子10に生じている捻じれ振動に対応する振動検出信号を生成する。具体的には、配線を介して入力された振動検出相電気信号に対して、レベル調整、ノイズ除去、2値化等の各種信号処理を施してデジタル信号に変換し、処理後のデジタル信号を振動検出信号として出力する。
【0035】
前記位相比較回路134は、振動検出回路133から出力された振動検出信号とドライブIC132に入力されるA相の駆動制御信号とが入力されるようになっている。位相比較回路134は、振動検出信号とA相の駆動制御信号との位相差φを求め、更に、この位相差φと予め記憶している基準位相差φrefとの差分Δφ(=φ−φref)を求め、この差分Δφに応じた信号を出力する。
【0036】
ここで、超音波モータ1は、共振周波数において駆動すると効率が良いことが知られている。ところが、共振周波数は環境温度によって変化する。具体的には、環境温度が増加すると、共振周波数は減少するという特性を有している。したがって、最大のモータ速度が得られるように超音波モータ1を制御しようとする場合には、温度変化に追従して、共振周波数を変化させる必要がある。
【0037】
これに対し、振動検出信号とA相の駆動制御信号との位相差φと共振周波数との間には、温度が増加して共振周波数が変化したとしても位相差φは常に一定の値に維持されるという関係がある。これは、振動検出信号とA相の駆動制御信号との位相差φが常に一定の値となるように、共振周波数を制御すれば、常に一定のモータ速度が得られることを示している。そこで、本第1実施形態においては、上述のように、A相の駆動制御信号と振動検出信号との位相差φが、常に一定の値となるように、共振周波数を制御することとしている。
【0038】
本第1実施形態では、基準位相差φrefを3π/4に設定し、A相の駆動制御信号と振動検出信号との位相差φが常に基準位相差3π/4となるように共振周波数を制御することとしている。これは、3π/4のときに、共振周波数を取ることなり、超音波モータを最も効率の良い領域で駆動することができるからである。なお、基準位相差φrefの値については、特に限定されることなく、超音波モータ1の駆動効率、換言すると、所望のモータ速度に応じて設計事項により任意に決定できる。
【0039】
前記周波数制御回路135は、位相比較回路134からの差分Δφが入力されるようになっている。周波数制御回路135は、差分Δφに基づいて、差分Δφをゼロにするための周波数の変化量Δfを求め、この周波数の変化量Δfを出力する。具体的には、差分Δφがプラスの値を示していた場合には、周波数を所定数増加させるための変化量+Δfを出力し、差分Δφがマイナスの値を示していた場合には、周波数を所定量減少させるための変化量−Δfを出力する。このように、本実施形態では、差分Δφに基づく逐次制御を実施する。
【0040】
前記周波数設定回路136は、周波数制御回路135からの周波数の変化量Δfが入力されるようになっている。周波数設定回路136は、例えば、発振器、分周回路等を備えて構成されている。周波数設定回路136は、周波数を周波数制御回路135からの変化量Δfに応じて増減させたクロック信号を生成し、これを上述の駆動パルス発生回路131に出力する。
【0041】
なお、駆動パルス発生回路131には、方向指示回路137から方向指示信号が入力されるようになっている。駆動パルス発生回路131は、方向指示信号に応じてドライブIC132に出力する2相の駆動制御信号の位相差θを変更する。これにより、超音波振動子10の摩擦子15に発生する略楕円振動の向きを正転、または負転に切り替えることができる。
【0042】
次に、上記制御装置130の作用について説明する。
【0043】
まず、駆動パルス発生回路131から所定の駆動周波数、及び、所定の位相差θ(=90°)の2相の駆動制御信号がドライブIC132に入力され、これに基づいて、所定の位相差、及び、所定の駆動周波数の2相の駆動交番電圧が超音波振動子10の上述したA相の外部電極33(内部電極A+,A−)、及びA´相の外部電極33´(内部電極A´+,A´−)にそれぞれ印加される。これにより、超音波振動子10には、縦振動と捻じれ振動とが同時に励起され、前記摩擦子15の位置において楕円振動が励起される。
【0044】
一方、超音波振動子10の縦振動モードに応じた振動検出相電気信号が振動検出相の端子(F+,F−)及び配線を介して振動検出回路133に入力される。この振動検出相電気信号は、振動検出回路133において、デジタル信号に変換され、振動検出信号として位相比較回路134に入力される。位相比較回路134に入力された振動検出信号は、A相の駆動制御信号と比較されることによって位相差φが求められ、更に、この位相差φと基準位相差φrefとの差分Δφが求められることにより、差分Δφに応じた信号が周波数制御回路135に出力される。周波数制御回路135において、差分Δφの符号(プラス、または、マイナス)に基づいて周波数の変化量Δfの符号(プラス、または、マイナス)が決められ、この変化量Δfが周波数設定回路136に出力される。周波数設定回路136は、変化量Δfに応じて周波数を変化させたクロック信号を生成し、これを駆動パルス発生回路131に出力する。これにより、A相の駆動制御信号と振動検出信号との位相差φが基準位相差φrefとなるようなフィードバック制御が行われることとなり、温度変化に応じた所望の共振周波数で超音波モータ1を駆動することが可能となる。これにより、温度変化にかかわらずに常に安定したモータ駆動を実現させることができる。
【0045】
以上説明した制御により、振動検出相の捻じれ振動の振動検出信号と、A相の駆動制御信号との位相差が、常に所定の値になるように駆動周波数を変化させる。
【0046】
ここで、超音波振動子10の動作について説明する。
【0047】
上記超音波振動子10はその寸法が、1箇所に節部を有する共振縦振動(図10に共振縦振動のモード変位の状態を実線で示す。)及び2箇所に節部を有する共振捻れ振動(図11に共振捻れ振動のモード変位の状態を実線で示す。)がほぼ同一周波数Fr(36kHz)で励起できるようなものとなっている。
【0048】
ねじれ共振振動の場合には、長手方向中心軸上は変位0、つまり節である。従って、図6に示したネジ部20の位置は縦振動と捻れ振動の共通の節であるといえる。
【0049】
外部電極33(内部電極A+,A−)に周波数36kHzで振幅20Vp−pの交番圧電を印加し、外部電極33´(内部電極A´+,A´−)に同一周波数、同振幅で同位相の交番電圧を印加すると、共振縦振動が励起できる。
【0050】
外部電極33(内部電極A+,A−)に周波数36kHzで振幅20Vp−pの交番電圧を印加し、外部電極33´(内部電極A´+,A´−)に同一周波数、同振幅で逆位相の交番電圧を印加すると、共振捻れ振動が励起できる。
【0051】
外部電極33(内部電極A+,A−)に周波数36kHzで振幅20Vp−pの交番電圧を印加し、外部電極33´(内部電極A´+,A´−)に同一周波数、同振幅で位相が90度異なった交番電圧を印加すると、共振縦振動と共振捻れ振動とが合成されて、前記摩擦子15の位置において楕円振動が励起できる。
【0052】
このとき、上述した振動検出用の端子(F+,F−)からは、捻れ振動に比例した検出信号が出力される。
【0053】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータ1の構成及び動作を、図12及び図13を参照して説明する。
【0054】
図12は、前記超音波振動子10を用いた超音波モータ1の側面図であり、図13は同分解図である。
【0055】
前記超音波振動子10の貫通穴16には軸51が挿入される。軸51には、図13に示すように中央部及び両端部にネジ部58が設けられており、中央部のネジ部58は前記超音波振動子10のネジ部20と螺合され接着固定される。
【0056】
前記超音波振動子10の上端部にロータ53がスラストベアリング54及びばね保持体55を介してバネ56により押圧固定される。押圧力はナット57により調節される。円環状のロータ53の下面には、円環状のジルコニアセラミックスからなる摺動板52が接着されている。超音波モータ1を固定する場合には、その下部に突き出た軸51を図示しない基台にねじ込み固定する。
【0057】
上述したように、超音波振動子10のA相(内部電極A+,A−)及びA´相(内部電極A´+,A´−)に周波数36kHz、振幅20Vp−p、位相差+90度又は−90度の交番電圧を印加する。これにより、ロータ53が時計廻り又は反時計廻りに回転する。
【0058】
ところで、温度変動や負荷変動に対して縦共振周波数、捻れ共振周波数は変化する。よって、この変動に対し、駆動周波数を追尾させる必要がある。本第1実施形態に係る超音波モータでは、上述したように振動検出用の端子(F+,F−)からは捻れ振動に比例した振動検出信号が出力される。よって、この振動検出信号を参照することにより共振周波数を追尾させることができる。
【0059】
つまり、振動検出相の端子(F+,F−)により検出される捻じれ振動の振動検出信号と、A相(内部電極A+,A−)の駆動制御信号との位相差が、常に所定の値になるように、上述した制御により駆動周波数を変化させる。
【0060】
なお、本第1実施形態においては、前記振動検出用の端子(F+,F−)の位相により共振周波数を追尾しても、振幅が極大になるようにして追尾をかけてもどちらの方式を採っても良い。また、積層型圧電素子13を対向する2側面に設けたが、駆動原理に従う範囲で、4側面に設けても良い。このようにすると超音波モータ1の出力を増大させることができる。
【0061】
以上説明しように、本第1実施形態によれば、温度変化及び負荷変化等が生じた場合であっても最適な駆動周波数で駆動可能であり、且つ単純な構造でコストダウン及び小型化可能な超音波モータを提供することができる。
【0062】
[第2実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第2実施形態に係る超音波モータについて説明する。なお、説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0063】
図14は、本第2実施形態の主な特徴部の一つである積層型圧電素子13の構成を示す分解図である。
【0064】
図14に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板81と圧電板82とが同図に示すように交互に積層されて構成されている。このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0065】
詳細には、前記圧電板81は、図14に示すように3分割された内部電極A+,B+,C+を有している。同様に、前記圧電板82は、図14に示すように3分割された内部電極A−,B−,C−を有している。
【0066】
ここで、内部電極A+,A−は駆動用の内部電極である。他方、内部電極B+,B−及び内部電極C+,C−は振動検出用の内部電極である。なお、このように各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0067】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図15に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極83が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極84が設けられている。そして、内部電極C+が露出した面には外部電極85が設けられている。また、直接的には図示していないが、内部電極A−が露出した面には外部電極33´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極34´が設けられ、内部電極C−が露出した面には外部電極35´が設けられ
ている。
【0068】
ここで、内部電極B+,B−については、上述した順接続を行う。すなわち、内部電極B+と内部電極B´+とを接続してF1+端子とし、内部電極B−と内部電極B´−とを接続してF1−端子とする。他方、内部電極C+,C−については、上述した逆接続を行う。すなわち、内部電極C+と内部電極C´−とを接続してF2+端子とする。同様に、内部電極C−と内部電極C´+とを接続してF2−端子とする
以上説明した構成により、振動検出相の端子F1+,F1−からは縦振動に比例する振動検出信号を得ることができる。他方、振動検出相の端子F2+,F2−からは捻じれ振動に比例する振動検出信号を得ることができる。そして、捻じれ振動に比例する振動検出信号及び縦振動信号と、印加電圧信号との位相差が常に所定の値になるように駆動周波数を変化させる。
【0069】
ところで、温度変動や負荷変動に対して縦共振周波数、捻れ共振周波数が変化する。よって、この変動に対し、駆動周波数を追尾させる必要がある。本第2実施形態においては、上述したように端子F1+,F1−からは縦振動に比例する振動検出信号が出力され、端子F2+,F2−からは捻じれ振動に比例する振動検出信号が出力される。よって、これらの信号の振幅、若しくは位相を参照することにより共振周波数を追尾することができる。
【0070】
なお、振動検出相の端子F1+,F1−から縦振動に比例する振動検出信号を得る為の制御は、当然ながら第1実施形態において説明した端子F+,F−から捻じれ振動に比例する振動検出信号を得る為の制御と同様である。
【0071】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、前記第1実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する上に、次のような効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0072】
すなわち、本第2実施形態に係る超音波モータによれば、上述した超音波振動子10における共振縦振動と共振捻れ振動との合成による前記摩擦子15の位置における楕円振動の形状を制御することが可能となる。このような制御が可能となることで、当該超音波モータの制御をより効率良く行うことができ、且つ各々の超音波振動子10間における個体差を吸収することができる。
【0073】
[第3実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第3実施形態に係る超音波モータについて説明する。なお、説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点を中心に説明する。
【0074】
図16は、本第3実施形態の主な特徴部の一つである積層型圧電素子13の構成を示す分解図である。
【0075】
図16に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板31と圧電板32とが同図に示すように交互に、積層型圧電素子13の伸縮方向とは直交する方向に積層されて構成されている。つまり、前記第1実施形態との主な相違点は、この圧電板31及び圧電板32の積層方向である。なお、このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0076】
詳細には、前記圧電板31は、図16に示すように2分割された内部電極A+,B+を有している。同様に、前記圧電板32は、図16に示すように2分割された内部電極A−,B−を有している。
【0077】
ここで、内部電極(A+,A−)は駆動用の内部電極である。他方、内部電極(B+,B−)は振動検出用の内部電極である。なお、このように各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0078】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図17に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極33が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極34が設けられている。また、内部電極A−が露出した面には外部電極33´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極34´が設けられている。
【0079】
ここで、内部電極B+と内部電極B´−とを接続してF+端子とする。同様に、内部電極B−と内部電極B´+とを接続してF−端子とする。つまり、本第3実施形態においては、上述した逆接続により端子F+,F−を構成し、これら端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、積層型圧電素子13の捻じれ振動に比例する振動検出信号を得る。
【0080】
以上説明したように、本第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏する上に、次のような効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0081】
すなわち、本第3実施形態によれば、圧電板31と圧電板32とを交互に積層型圧電素子13の伸縮方向とは直交する方向に積層して積層型圧電素子13を構成することで、より薄型の積層型圧電素子13を実現でき、超音波モータの小型化を実現することができる。
【0082】
[第4実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第4実施形態に係る超音波モータについて説明する。なお、説明の重複を避ける為、前記第2実施形態に係る超音波モータとの相違点を中心に説明する。
【0083】
図18は、本第4実施形態の主な特徴部の一つである積層型圧電素子13の構成を示す分解図である。
【0084】
図18に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板81と圧電板82とが同図に示すように交互に、積層型圧電素子の伸縮方向とは直交する方向に積層されて構成される。つまり、前記第2実施形態との主な相違点は、この圧電板81及び圧電板82の積層方向である。このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0085】
詳細には、前記圧電板81は、図17に示すように3分割された内部電極A+,B+,C+を有している。同様に、前記圧電板82は、図17に示すように3分割された内部電極A−,B−,C−を有している。
【0086】
ここで、内部電極(A+,A−)は駆動用の内部電極である。他方、内部電極(B+,B−)及び内部電極(C+,C−)は振動検出用の内部電極である。なお、このように各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0087】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図19に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極83が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極84が設けられている。そして、内部電極C+が露出した面には外部電極85が設けられている。また、内部電極A−が露出した面には外部電極83´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極84´が設けられ、内部電極C−が露出した面には外部電極85´が設けられ
ている。
【0088】
ここで、内部電極(B+,B−)については、上述した順接続を行う。すなわち、内部電極B+と内部電極B´+とを接続してF1+端子とし、内部電極B−と内部電極B´−とを接続してF1−端子とする。他方、内部電極(C+,C−)については、上述した逆接続を行う。すなわち、内部電極C+と内部電極C´−とを接続してF2+端子とする。同様に、内部電極C−と内部電極C´+とを接続してF2−端子とする
以上説明したように、本第4実施形態によれば、前記第2実施形態と同様の効果を奏する上に、次のような効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0089】
すなわち、本第4実施形態によれば、圧電板81と圧電板82とを交互に積層型圧電素子13の伸縮方向とは直交する方向に積層して積層型圧電素子13を構成することで、より薄型の積層型圧電素子13を実現でき、超音波モータの小型化を実現することができる。
【0090】
以上、第1実施形態乃至第4実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0091】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示する複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波モータを構成する超音波振動子の上面図。
【図2】超音波振動子を図1に示すα方向から視た図(正面図)。
【図3】超音波振動子を図1に示すβ方向から視た図(背面図)。
【図4】超音波振動子を図1に示すγ方向から視た図(右側面図)。
【図5】超音波振動子を図1に示すδ方向から視た図(左側面図)。
【図6】超音波振動子を図1に示すα方向から視た場合の超音波振動子の分解図。
【図7】積層型圧電素子の分解図。
【図8】積層型圧電素子の外観図。
【図9】超音波モータの制御装置のシステム構成例を示す図。
【図10】共振縦振動のモード変位の状態を示す図。
【図11】共振捻れ振動のモード変位の状態を示す図。
【図12】超音波振動子を用いた超音波モータの側面図。
【図13】超音波振動子を用いた超音波モータの分解図。
【図14】本発明の第2実施形態における積層型圧電素子の構成を示す分解図。
【図15】積層型圧電素子の外観図。
【図16】本発明の第3実施形態における積層型圧電素子の構成を示す分解図。
【図17】積層型圧電素子の外観図。
【図18】本発明の第4実施形態における積層型圧電素子の構成を示す分解図。
【図19】積層型圧電素子の外観図。
【符号の説明】
【0093】
1…超音波モータ、 10…超音波振動子、 11…角柱棒状弾性体、 12…保持用弾性体、 13…積層型圧電素子、 14…溝、 15…摩擦子、 16…貫通穴、 17…ガイド突起部、 18…積層体挿入凹部、 19…ビス、 20…ネジ部、 30…制御装置、 31…圧電板、 32…圧電板、 33…外部電極、 34…外部電極、 35…外部電極、 37…方向指示回路、 51…軸、 52…摺動板、 53…ロータ、 54…スラストベアリング、 55…保持体、 56…バネ、 57…ナット、 58…ネジ部、 81…圧電板、 82…圧電板、 83…外部電極、 84…外部電極、 85…外部電極、 131…駆動パルス発生回路、 132…ドライブIC、 133…振動検出回路、 134…位相比較回路、 135…周波数制御回路、 136…周波数設定回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子を駆動源とする超音波振動子を用いた超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして超音波モータが注目されている。超音波モータは、従来の電磁型モータに比べ以下のような利点を有している。
【0003】
(利点1)ギヤなしで高トルクが得られる。
【0004】
(利点2)電気OFF時に保持力がある。
【0005】
(利点3)高分解能である。
【0006】
(利点4)静粛性に富んでいる。
【0007】
(利点5)磁気的ノイズを発生せず、また、ノイズの影響も受けない。
【0008】
ところで、このような超音波モータに関連する技術として、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。
【0009】
すなわち、特許文献1には、棒状弾性体と、該棒状弾性体の側面に設けられ、該棒状弾性体に対して一体的に設けられた複数の保持用弾性体と、該複数の保持用弾性体により両端を保持された一対の積層型圧電素子であって、その変位方向と前記棒状弾性体の長手方向とが一定の鋭角を有し、かつ、該積層型圧電素子の一対同士は互いに反対方向に傾斜して配置した一対の積層型圧電素子と、積層型圧電素子と前記保持用弾性体との間に設けられた複数の振動検出用の圧電素子と、前記棒状弾性体の端面に設けた摩擦子とを有し、前記一対の積層型圧電素子に対して、前記振動検出用の圧電素子から出力され信号の位相若しくは振幅に応じた所定の周波数、大きさの交番電圧であり互いに位相差を有する交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起して前記棒状弾性体の端面に設けた摩擦子に超音波楕円振動を励起させる超音波振動子が開示されている。
【0010】
この特許文献1に開示された超音波振動子によれば、環境温度等が変化しても、振動検出用の圧電素子からの信号を利用して最適な周波数に追尾することが可能となり、縦振動モード及び屈曲振動モードの双方の振動モードをそれぞれ独立した形で、容易に検出することが可能になる。
【特許文献1】特開平9−85172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術によれば、駆動用の圧電素子である前記積層型圧電素子と前記振動検出用の圧電素子との間に、絶縁用のセラミクスである絶縁板を介在させる必要がある。このことが、当該超音波振動子の構造の複雑化を招いている。
【0012】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、温度変化及び負荷変化等が生じた場合であっても最適な駆動周波数で駆動可能であり、且つ単純な構造でコストダウン及び小型化可能な超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による超音波モータは、棒状弾性体の側面において互いに対向して配置された2個の積層型圧電素子の伸縮振動を利用して、前記棒状弾性体に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起し、前記棒状弾性体の端面に設けられた摩擦子に楕円運動を励起させて、前記摩擦子によりロータを回転させる超音波モータであって、前記積層型圧電素子は、第1の圧電シートと第2の圧電シートとが交互に積層されて構成され、前記第1の圧電シートは、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している第1の内部電極を備え、前記第2の圧電シートは、前記第1の内部電極とは逆の極性の内部電極であって、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している内部電極を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温度変化及び負荷変化等が生じた場合であっても最適な駆動周波数で駆動可能であり、且つ単純な構造でコストダウン及び小型化可能な超音波モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る超音波モータについて図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本第1実施形態に係る超音波モータを構成する超音波振動子10の上面図である。図2は、超音波振動子10を、図1に示すα方向から視た図(正面図)である。図3は、超音波振動子10を図1に示すβ方向から視た図(背面図)である。図4は、超音波振動子10を図1に示すγ方向から視た図(右側面図)である。図5は、超音波振動子10を図1に示すδ方向から視た図(左側面図)である。図6は、超音波振動子10を図1に示すα方向から視た場合の超音波振動子10の分解図である。
【0017】
前記超音波振動子10は、黄銅材(C2801PのO材)から成る角柱形状の角柱棒状弾性体11を有している。この角柱棒状弾性体11は、例えば9mm×9mm×40mmの寸法を持ち、その下端から16mmの位置に例えば深さ2mmの溝14が全周に渡り設けられている。
【0018】
前記角柱棒状弾性体11の正面及び裏面には、電気機械変換素子たる一対の積層型圧電素子13が角柱棒状弾性体11の長さ方向に対して15°の傾斜角度を持って保持されている。これら積層型圧電素子13は、寸法が2mm×3.1mm×9mmのものである。
【0019】
前記角柱棒状弾性体11の先端部には、円環状のフェノール樹脂にアルミナセラミックの砥粒を分散させた砥石からなる摩擦子15が接合されている。また、前記角柱棒状弾性体11の中央部には図6に示すように長さ方向に沿った貫通穴16が設けられ、この穴の一部(正確には縦振動の節位置)にはネジ部20が設けられている。
【0020】
ここで、前記積層型圧電素子13について詳細に説明する。図7は、前記積層型圧電素子13の分解図である。
【0021】
図7に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板31と圧電板32とが同図に示すように交互に積層されて構成されている。このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0022】
詳細には、前記圧電板31は、図7に示すように2分割された内部電極A+,B+を有している。同様に、前記圧電板32は、図7に示すように2分割された内部電極A−,B−を有している。
【0023】
ここで、内部電極(A+,A−)は駆動用の内部電極である。他方、内部電極(B+,B−)は振動検出用の内部電極である。なお、このようにして各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0024】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図8に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極33が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極34が設けられている。また、直接的には図示していないが、内部電極A−が露出した面には外部電極33´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極34´が設けられている。
【0025】
ここで、超音波振動子10の組立方法について、図6を参照して説明する。前記積層型圧電素子13は、角柱棒状弾性体11の積層体挿入凹部18に挿入される。また、保持用弾性体12は、角柱棒状弾性体11に設けた一対のガイド突起部17に沿って挿入され、積層型圧電素子13に付き当てられた後、積層型圧電素子13に圧縮応力100Nの力を印加された状態で、ビス19により固定される。また、積層型圧電素子13と角柱棒状弾性体11と保持用弾性体12の当接面とは、すべてはエポキシ系接着剤を用いて固定される。この後、角柱棒状弾性体11の端面には、摩擦子15が接着剤を用いて接着される。
【0026】
なお、図2及び図3に示すように、前記積層型圧電素子13は、互いに対向する面に前記角柱棒状弾性体11の軸に対して所定の角度を持って2個配置される。以降、上述した内部電極の接続関係を説明する際に、対向する(互いに逆側に配置された)積層型圧電素子13における内部電極同士を接続する場合には、一方の内部電極の名称に´を付して表現する(例えば、A´+,B´−)。
【0027】
ここで、内部電極B+と内部電極B´−とを接続してF+端子とする。同様に、内部電極B−と内部電極B´+とを接続してF−端子とする。以降、このような接続方式を逆接続と称する。これらの端子F+,F−は振動検出用の端子である。つまり、端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、後述する積層型圧電素子13の捻じれ振動に比例する振動検出信号を得る。
【0028】
なお、内部電極B+と内部電極B´+とを接続してF+端子とし、内部電極B−と内部電極B´−とを接続してF−端子とする接続方式を順接続と称する。この順接続によれば、端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、積層型圧電素子13の縦振動に比例する振動検出信号を得ることができる。
【0029】
本第1実施形態においては、上述した逆接続により端子F+,F−を構成し、これら端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、積層型圧電素子13の捻じれ振動に比例する振動検出信号を得るとする。
【0030】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータ1の制御装置について図9を参照して説明する。
【0031】
図9に示すように、制御装置130は、駆動パルス発生回路(信号発生器)131と、ドライブIC(駆動回路)132と、振動検出回路133と、位相比較回路134と、周波数制御回路135と、周波数設定回路136と、方向指示回路137と、を有する。
【0032】
前記駆動パルス発生回路131は、所定の駆動周波数、及び、所定の位相差θの2相の駆動制御信号を生成し、ドライブIC132に出力する。所定の位相差θは、例えば、約90°とされている。
【0033】
前記ドライブIC132は、駆動パルス発生回路131から入力される2相の駆動制御信号に基づいて、所定の位相差、及び、所定の駆動周波数の2相の駆動交番電圧を生成し、各駆動交番信号を上述したA相(上述した内部電極A+,A−)、A´相(上述した内部電極A´+,A´−)に対応する外部電極33,33´に印加する。
【0034】
前記振動検出回路133は、振動検出相の端子(F+,F−)と配線を介して接続されており、振動検出相の端子(F+,F−)からのアナログ電気信号(以下、「振動検出相電気信号」という。)に基づいて、超音波振動子10に生じている捻じれ振動に対応する振動検出信号を生成する。具体的には、配線を介して入力された振動検出相電気信号に対して、レベル調整、ノイズ除去、2値化等の各種信号処理を施してデジタル信号に変換し、処理後のデジタル信号を振動検出信号として出力する。
【0035】
前記位相比較回路134は、振動検出回路133から出力された振動検出信号とドライブIC132に入力されるA相の駆動制御信号とが入力されるようになっている。位相比較回路134は、振動検出信号とA相の駆動制御信号との位相差φを求め、更に、この位相差φと予め記憶している基準位相差φrefとの差分Δφ(=φ−φref)を求め、この差分Δφに応じた信号を出力する。
【0036】
ここで、超音波モータ1は、共振周波数において駆動すると効率が良いことが知られている。ところが、共振周波数は環境温度によって変化する。具体的には、環境温度が増加すると、共振周波数は減少するという特性を有している。したがって、最大のモータ速度が得られるように超音波モータ1を制御しようとする場合には、温度変化に追従して、共振周波数を変化させる必要がある。
【0037】
これに対し、振動検出信号とA相の駆動制御信号との位相差φと共振周波数との間には、温度が増加して共振周波数が変化したとしても位相差φは常に一定の値に維持されるという関係がある。これは、振動検出信号とA相の駆動制御信号との位相差φが常に一定の値となるように、共振周波数を制御すれば、常に一定のモータ速度が得られることを示している。そこで、本第1実施形態においては、上述のように、A相の駆動制御信号と振動検出信号との位相差φが、常に一定の値となるように、共振周波数を制御することとしている。
【0038】
本第1実施形態では、基準位相差φrefを3π/4に設定し、A相の駆動制御信号と振動検出信号との位相差φが常に基準位相差3π/4となるように共振周波数を制御することとしている。これは、3π/4のときに、共振周波数を取ることなり、超音波モータを最も効率の良い領域で駆動することができるからである。なお、基準位相差φrefの値については、特に限定されることなく、超音波モータ1の駆動効率、換言すると、所望のモータ速度に応じて設計事項により任意に決定できる。
【0039】
前記周波数制御回路135は、位相比較回路134からの差分Δφが入力されるようになっている。周波数制御回路135は、差分Δφに基づいて、差分Δφをゼロにするための周波数の変化量Δfを求め、この周波数の変化量Δfを出力する。具体的には、差分Δφがプラスの値を示していた場合には、周波数を所定数増加させるための変化量+Δfを出力し、差分Δφがマイナスの値を示していた場合には、周波数を所定量減少させるための変化量−Δfを出力する。このように、本実施形態では、差分Δφに基づく逐次制御を実施する。
【0040】
前記周波数設定回路136は、周波数制御回路135からの周波数の変化量Δfが入力されるようになっている。周波数設定回路136は、例えば、発振器、分周回路等を備えて構成されている。周波数設定回路136は、周波数を周波数制御回路135からの変化量Δfに応じて増減させたクロック信号を生成し、これを上述の駆動パルス発生回路131に出力する。
【0041】
なお、駆動パルス発生回路131には、方向指示回路137から方向指示信号が入力されるようになっている。駆動パルス発生回路131は、方向指示信号に応じてドライブIC132に出力する2相の駆動制御信号の位相差θを変更する。これにより、超音波振動子10の摩擦子15に発生する略楕円振動の向きを正転、または負転に切り替えることができる。
【0042】
次に、上記制御装置130の作用について説明する。
【0043】
まず、駆動パルス発生回路131から所定の駆動周波数、及び、所定の位相差θ(=90°)の2相の駆動制御信号がドライブIC132に入力され、これに基づいて、所定の位相差、及び、所定の駆動周波数の2相の駆動交番電圧が超音波振動子10の上述したA相の外部電極33(内部電極A+,A−)、及びA´相の外部電極33´(内部電極A´+,A´−)にそれぞれ印加される。これにより、超音波振動子10には、縦振動と捻じれ振動とが同時に励起され、前記摩擦子15の位置において楕円振動が励起される。
【0044】
一方、超音波振動子10の縦振動モードに応じた振動検出相電気信号が振動検出相の端子(F+,F−)及び配線を介して振動検出回路133に入力される。この振動検出相電気信号は、振動検出回路133において、デジタル信号に変換され、振動検出信号として位相比較回路134に入力される。位相比較回路134に入力された振動検出信号は、A相の駆動制御信号と比較されることによって位相差φが求められ、更に、この位相差φと基準位相差φrefとの差分Δφが求められることにより、差分Δφに応じた信号が周波数制御回路135に出力される。周波数制御回路135において、差分Δφの符号(プラス、または、マイナス)に基づいて周波数の変化量Δfの符号(プラス、または、マイナス)が決められ、この変化量Δfが周波数設定回路136に出力される。周波数設定回路136は、変化量Δfに応じて周波数を変化させたクロック信号を生成し、これを駆動パルス発生回路131に出力する。これにより、A相の駆動制御信号と振動検出信号との位相差φが基準位相差φrefとなるようなフィードバック制御が行われることとなり、温度変化に応じた所望の共振周波数で超音波モータ1を駆動することが可能となる。これにより、温度変化にかかわらずに常に安定したモータ駆動を実現させることができる。
【0045】
以上説明した制御により、振動検出相の捻じれ振動の振動検出信号と、A相の駆動制御信号との位相差が、常に所定の値になるように駆動周波数を変化させる。
【0046】
ここで、超音波振動子10の動作について説明する。
【0047】
上記超音波振動子10はその寸法が、1箇所に節部を有する共振縦振動(図10に共振縦振動のモード変位の状態を実線で示す。)及び2箇所に節部を有する共振捻れ振動(図11に共振捻れ振動のモード変位の状態を実線で示す。)がほぼ同一周波数Fr(36kHz)で励起できるようなものとなっている。
【0048】
ねじれ共振振動の場合には、長手方向中心軸上は変位0、つまり節である。従って、図6に示したネジ部20の位置は縦振動と捻れ振動の共通の節であるといえる。
【0049】
外部電極33(内部電極A+,A−)に周波数36kHzで振幅20Vp−pの交番圧電を印加し、外部電極33´(内部電極A´+,A´−)に同一周波数、同振幅で同位相の交番電圧を印加すると、共振縦振動が励起できる。
【0050】
外部電極33(内部電極A+,A−)に周波数36kHzで振幅20Vp−pの交番電圧を印加し、外部電極33´(内部電極A´+,A´−)に同一周波数、同振幅で逆位相の交番電圧を印加すると、共振捻れ振動が励起できる。
【0051】
外部電極33(内部電極A+,A−)に周波数36kHzで振幅20Vp−pの交番電圧を印加し、外部電極33´(内部電極A´+,A´−)に同一周波数、同振幅で位相が90度異なった交番電圧を印加すると、共振縦振動と共振捻れ振動とが合成されて、前記摩擦子15の位置において楕円振動が励起できる。
【0052】
このとき、上述した振動検出用の端子(F+,F−)からは、捻れ振動に比例した検出信号が出力される。
【0053】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータ1の構成及び動作を、図12及び図13を参照して説明する。
【0054】
図12は、前記超音波振動子10を用いた超音波モータ1の側面図であり、図13は同分解図である。
【0055】
前記超音波振動子10の貫通穴16には軸51が挿入される。軸51には、図13に示すように中央部及び両端部にネジ部58が設けられており、中央部のネジ部58は前記超音波振動子10のネジ部20と螺合され接着固定される。
【0056】
前記超音波振動子10の上端部にロータ53がスラストベアリング54及びばね保持体55を介してバネ56により押圧固定される。押圧力はナット57により調節される。円環状のロータ53の下面には、円環状のジルコニアセラミックスからなる摺動板52が接着されている。超音波モータ1を固定する場合には、その下部に突き出た軸51を図示しない基台にねじ込み固定する。
【0057】
上述したように、超音波振動子10のA相(内部電極A+,A−)及びA´相(内部電極A´+,A´−)に周波数36kHz、振幅20Vp−p、位相差+90度又は−90度の交番電圧を印加する。これにより、ロータ53が時計廻り又は反時計廻りに回転する。
【0058】
ところで、温度変動や負荷変動に対して縦共振周波数、捻れ共振周波数は変化する。よって、この変動に対し、駆動周波数を追尾させる必要がある。本第1実施形態に係る超音波モータでは、上述したように振動検出用の端子(F+,F−)からは捻れ振動に比例した振動検出信号が出力される。よって、この振動検出信号を参照することにより共振周波数を追尾させることができる。
【0059】
つまり、振動検出相の端子(F+,F−)により検出される捻じれ振動の振動検出信号と、A相(内部電極A+,A−)の駆動制御信号との位相差が、常に所定の値になるように、上述した制御により駆動周波数を変化させる。
【0060】
なお、本第1実施形態においては、前記振動検出用の端子(F+,F−)の位相により共振周波数を追尾しても、振幅が極大になるようにして追尾をかけてもどちらの方式を採っても良い。また、積層型圧電素子13を対向する2側面に設けたが、駆動原理に従う範囲で、4側面に設けても良い。このようにすると超音波モータ1の出力を増大させることができる。
【0061】
以上説明しように、本第1実施形態によれば、温度変化及び負荷変化等が生じた場合であっても最適な駆動周波数で駆動可能であり、且つ単純な構造でコストダウン及び小型化可能な超音波モータを提供することができる。
【0062】
[第2実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第2実施形態に係る超音波モータについて説明する。なお、説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0063】
図14は、本第2実施形態の主な特徴部の一つである積層型圧電素子13の構成を示す分解図である。
【0064】
図14に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板81と圧電板82とが同図に示すように交互に積層されて構成されている。このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0065】
詳細には、前記圧電板81は、図14に示すように3分割された内部電極A+,B+,C+を有している。同様に、前記圧電板82は、図14に示すように3分割された内部電極A−,B−,C−を有している。
【0066】
ここで、内部電極A+,A−は駆動用の内部電極である。他方、内部電極B+,B−及び内部電極C+,C−は振動検出用の内部電極である。なお、このように各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0067】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図15に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極83が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極84が設けられている。そして、内部電極C+が露出した面には外部電極85が設けられている。また、直接的には図示していないが、内部電極A−が露出した面には外部電極33´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極34´が設けられ、内部電極C−が露出した面には外部電極35´が設けられ
ている。
【0068】
ここで、内部電極B+,B−については、上述した順接続を行う。すなわち、内部電極B+と内部電極B´+とを接続してF1+端子とし、内部電極B−と内部電極B´−とを接続してF1−端子とする。他方、内部電極C+,C−については、上述した逆接続を行う。すなわち、内部電極C+と内部電極C´−とを接続してF2+端子とする。同様に、内部電極C−と内部電極C´+とを接続してF2−端子とする
以上説明した構成により、振動検出相の端子F1+,F1−からは縦振動に比例する振動検出信号を得ることができる。他方、振動検出相の端子F2+,F2−からは捻じれ振動に比例する振動検出信号を得ることができる。そして、捻じれ振動に比例する振動検出信号及び縦振動信号と、印加電圧信号との位相差が常に所定の値になるように駆動周波数を変化させる。
【0069】
ところで、温度変動や負荷変動に対して縦共振周波数、捻れ共振周波数が変化する。よって、この変動に対し、駆動周波数を追尾させる必要がある。本第2実施形態においては、上述したように端子F1+,F1−からは縦振動に比例する振動検出信号が出力され、端子F2+,F2−からは捻じれ振動に比例する振動検出信号が出力される。よって、これらの信号の振幅、若しくは位相を参照することにより共振周波数を追尾することができる。
【0070】
なお、振動検出相の端子F1+,F1−から縦振動に比例する振動検出信号を得る為の制御は、当然ながら第1実施形態において説明した端子F+,F−から捻じれ振動に比例する振動検出信号を得る為の制御と同様である。
【0071】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、前記第1実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する上に、次のような効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0072】
すなわち、本第2実施形態に係る超音波モータによれば、上述した超音波振動子10における共振縦振動と共振捻れ振動との合成による前記摩擦子15の位置における楕円振動の形状を制御することが可能となる。このような制御が可能となることで、当該超音波モータの制御をより効率良く行うことができ、且つ各々の超音波振動子10間における個体差を吸収することができる。
【0073】
[第3実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第3実施形態に係る超音波モータについて説明する。なお、説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点を中心に説明する。
【0074】
図16は、本第3実施形態の主な特徴部の一つである積層型圧電素子13の構成を示す分解図である。
【0075】
図16に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板31と圧電板32とが同図に示すように交互に、積層型圧電素子13の伸縮方向とは直交する方向に積層されて構成されている。つまり、前記第1実施形態との主な相違点は、この圧電板31及び圧電板32の積層方向である。なお、このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0076】
詳細には、前記圧電板31は、図16に示すように2分割された内部電極A+,B+を有している。同様に、前記圧電板32は、図16に示すように2分割された内部電極A−,B−を有している。
【0077】
ここで、内部電極(A+,A−)は駆動用の内部電極である。他方、内部電極(B+,B−)は振動検出用の内部電極である。なお、このように各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0078】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図17に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極33が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極34が設けられている。また、内部電極A−が露出した面には外部電極33´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極34´が設けられている。
【0079】
ここで、内部電極B+と内部電極B´−とを接続してF+端子とする。同様に、内部電極B−と内部電極B´+とを接続してF−端子とする。つまり、本第3実施形態においては、上述した逆接続により端子F+,F−を構成し、これら端子F+,F−によって検出した振動検出信号に基づいて、積層型圧電素子13の捻じれ振動に比例する振動検出信号を得る。
【0080】
以上説明したように、本第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏する上に、次のような効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0081】
すなわち、本第3実施形態によれば、圧電板31と圧電板32とを交互に積層型圧電素子13の伸縮方向とは直交する方向に積層して積層型圧電素子13を構成することで、より薄型の積層型圧電素子13を実現でき、超音波モータの小型化を実現することができる。
【0082】
[第4実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第4実施形態に係る超音波モータについて説明する。なお、説明の重複を避ける為、前記第2実施形態に係る超音波モータとの相違点を中心に説明する。
【0083】
図18は、本第4実施形態の主な特徴部の一つである積層型圧電素子13の構成を示す分解図である。
【0084】
図18に示すように、積層型圧電素子13は、圧電板81と圧電板82とが同図に示すように交互に、積層型圧電素子の伸縮方向とは直交する方向に積層されて構成される。つまり、前記第2実施形態との主な相違点は、この圧電板81及び圧電板82の積層方向である。このような積層化には接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0085】
詳細には、前記圧電板81は、図17に示すように3分割された内部電極A+,B+,C+を有している。同様に、前記圧電板82は、図17に示すように3分割された内部電極A−,B−,C−を有している。
【0086】
ここで、内部電極(A+,A−)は駆動用の内部電極である。他方、内部電極(B+,B−)及び内部電極(C+,C−)は振動検出用の内部電極である。なお、このように各々の内部電極に割り振った駆動用/振動検出用の役割は、異なる割り振りかたをしても勿論よい。
【0087】
そして、各々の内部電極が露出した面には外部電極が設けられている。詳細には、図19に示すように、内部電極A+が露出した面には外部電極83が設けられている。同様に、内部電極B+が露出した面には外部電極84が設けられている。そして、内部電極C+が露出した面には外部電極85が設けられている。また、内部電極A−が露出した面には外部電極83´が設けられ、内部電極B−が露出した面には外部電極84´が設けられ、内部電極C−が露出した面には外部電極85´が設けられ
ている。
【0088】
ここで、内部電極(B+,B−)については、上述した順接続を行う。すなわち、内部電極B+と内部電極B´+とを接続してF1+端子とし、内部電極B−と内部電極B´−とを接続してF1−端子とする。他方、内部電極(C+,C−)については、上述した逆接続を行う。すなわち、内部電極C+と内部電極C´−とを接続してF2+端子とする。同様に、内部電極C−と内部電極C´+とを接続してF2−端子とする
以上説明したように、本第4実施形態によれば、前記第2実施形態と同様の効果を奏する上に、次のような効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0089】
すなわち、本第4実施形態によれば、圧電板81と圧電板82とを交互に積層型圧電素子13の伸縮方向とは直交する方向に積層して積層型圧電素子13を構成することで、より薄型の積層型圧電素子13を実現でき、超音波モータの小型化を実現することができる。
【0090】
以上、第1実施形態乃至第4実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0091】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示する複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波モータを構成する超音波振動子の上面図。
【図2】超音波振動子を図1に示すα方向から視た図(正面図)。
【図3】超音波振動子を図1に示すβ方向から視た図(背面図)。
【図4】超音波振動子を図1に示すγ方向から視た図(右側面図)。
【図5】超音波振動子を図1に示すδ方向から視た図(左側面図)。
【図6】超音波振動子を図1に示すα方向から視た場合の超音波振動子の分解図。
【図7】積層型圧電素子の分解図。
【図8】積層型圧電素子の外観図。
【図9】超音波モータの制御装置のシステム構成例を示す図。
【図10】共振縦振動のモード変位の状態を示す図。
【図11】共振捻れ振動のモード変位の状態を示す図。
【図12】超音波振動子を用いた超音波モータの側面図。
【図13】超音波振動子を用いた超音波モータの分解図。
【図14】本発明の第2実施形態における積層型圧電素子の構成を示す分解図。
【図15】積層型圧電素子の外観図。
【図16】本発明の第3実施形態における積層型圧電素子の構成を示す分解図。
【図17】積層型圧電素子の外観図。
【図18】本発明の第4実施形態における積層型圧電素子の構成を示す分解図。
【図19】積層型圧電素子の外観図。
【符号の説明】
【0093】
1…超音波モータ、 10…超音波振動子、 11…角柱棒状弾性体、 12…保持用弾性体、 13…積層型圧電素子、 14…溝、 15…摩擦子、 16…貫通穴、 17…ガイド突起部、 18…積層体挿入凹部、 19…ビス、 20…ネジ部、 30…制御装置、 31…圧電板、 32…圧電板、 33…外部電極、 34…外部電極、 35…外部電極、 37…方向指示回路、 51…軸、 52…摺動板、 53…ロータ、 54…スラストベアリング、 55…保持体、 56…バネ、 57…ナット、 58…ネジ部、 81…圧電板、 82…圧電板、 83…外部電極、 84…外部電極、 85…外部電極、 131…駆動パルス発生回路、 132…ドライブIC、 133…振動検出回路、 134…位相比較回路、 135…周波数制御回路、 136…周波数設定回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状弾性体の側面において互いに対向して配置された2個の積層型圧電素子の伸縮振動を利用して、前記棒状弾性体に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起し、前記棒状弾性体の端面に設けられた摩擦子に楕円運動を励起させて、前記摩擦子によりロータを回転させる超音波モータであって、
前記積層型圧電素子は、第1の圧電シートと第2の圧電シートとが交互に積層されて構成され、
前記第1の圧電シートは、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している第1の内部電極を備え、
前記第2の圧電シートは、前記第1の内部電極とは逆の極性の内部電極であって、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している内部電極を備えることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記圧電シートの積層方向は、前記積層型圧電素子の伸縮方向であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記圧電シートの積層方向は、前記積層型圧電素子の伸縮方向に対して直交する方向であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記複数個は2個であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記複数個は3個であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項1】
棒状弾性体の側面において互いに対向して配置された2個の積層型圧電素子の伸縮振動を利用して、前記棒状弾性体に縦振動と捻じれ振動とを同時に励起し、前記棒状弾性体の端面に設けられた摩擦子に楕円運動を励起させて、前記摩擦子によりロータを回転させる超音波モータであって、
前記積層型圧電素子は、第1の圧電シートと第2の圧電シートとが交互に積層されて構成され、
前記第1の圧電シートは、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している第1の内部電極を備え、
前記第2の圧電シートは、前記第1の内部電極とは逆の極性の内部電極であって、複数個に分割され且つ各々の分割領域が当該圧電シートの周縁部へ露出している内部電極を備えることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記圧電シートの積層方向は、前記積層型圧電素子の伸縮方向であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記圧電シートの積層方向は、前記積層型圧電素子の伸縮方向に対して直交する方向であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記複数個は2個であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記複数個は3個であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−254190(P2009−254190A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101759(P2008−101759)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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