説明

超音波利用電子玩具

【課題】使用者が物体をアクティブに操作し、その操作の仕方などを競ったり、工夫したりすることによって、使用者に対して興味を持たせるようにした超音波利用電子玩具を構成する。
【解決手段】物体(43)を収容または載置する物体存在部に隣接して、超音波の反射体で囲まれた空間部(42)を構成する。信号処理部(40)は空間部(42)に設けた超音波センサ(23)を用いて超音波信号の送受信を繰り返し行い、異なる送信周期回における受信信号同士を比較して受信信号の変化の有無によって物体(43)の操作状態を検知し、その結果信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体を収容または載置する部分に隣接する空間部を備えた超音波利用電子玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、監視空間(例えばエレベータのカゴ等)に人が存在するか否かを検出する在否検出装置が特許文献1に示されている。図1は特許文献1の在否検出装置の構成を示すブロック図である。この装置は、監視空間2に対して送信子1が超音波信号を間欠的に送信する。この送信された超音波が監視空間2の内部で反射して生じた反射波を受信子4で受信した後、増幅器5はその受信信号を増幅し、2値化回路6はそれを2値化信号に変換する。記憶装置7には事前に、監視空間2に人が存在しない状態の2値化情報を記憶していて、比較回路8はこの記憶装置7のデータと2値化回路6により2値化された現在の2値化情報とを比較する。演算器9は比較回路8で比較した結果に差があれば監視空間2に人が存在するものと判定する。制御回路10は駆動回路3、記憶装置7、比較回路8、および演算器9の制御を行う。
【0003】
一方、超音波を利用した観賞用超音波水槽が特許文献2に示されている。これは、透明容器に液体が入れられ、その透明容器の底部に超音波振動子を装着しておき、圧電セラミックが装着された模型魚を浮遊させ、圧電セラミックスで生じた電力によって発光ダイオードを点灯させるようにしたものである。
【特許文献1】特開昭56−160673号公報
【特許文献2】特開2005−46197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されている在否検出装置においては、あくまでも監視空間内に人が存在するか否かを検出するものであり、人の代わりに物体を扱おうとしても監視空間内の物体の有無が検出できるだけであり、玩具等への応用ができない。
【0005】
また、特許文献2に示されている観賞用超音波水槽は、超音波を利用した玩具と見なすこともできるが、超音波を単に電力搬送のために用いるだけであり、使用者がアクティブな操作を行って遊んだり、リハビリテーションを行ったりするような装置とはならない。
【0006】
この発明の目的は、使用者が物体をアクティブに操作し、その操作の仕方などを競ったり、工夫したりすることによって、使用者に対して興味を持たせるようにした超音波利用電子玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は次のように構成する。
(1)物体を収容または載置する物体存在部に隣接して設けられた、超音波の反射体で囲まれた空間部と、前記空間部に超音波信号を送信するとともに、前記反射体で反射した超音波信号を受信する超音波信号送受信手段と、送信周期毎に前記超音波信号の送信および受信を繰り返すとともに、異なる送信周期回における受信信号同士を比較して当該受信信号の変化の有無を検出し、変化の有無に応じて結果信号を出力する結果信号出力手段と、を備える。
【0008】
この構成により、超音波の反射体で囲まれた空間部内の物体の有無を検出するのではなく、その空間部に隣接する物体存在部に収容または載置された物体の状態を検出するようにしたので、設計上の自由度が高まり、物体の操作の仕方を工夫する超音波利用電子玩具としての応用が広がる。
【0009】
(2)前記結果信号出力手段は、前記受信信号の変化があったときに第1の検知信号を出力し、前記超音波信号送受信手段による超音波信号の送受信を開始してから前記受信信号の変化が所定回数に達したとき、または前記受信信号の変化頻度が所定値に達したとき、第2の検知信号を出力する。
【0010】
この構成により、第1の検知信号によって使用者に注意を促し、第2の検知信号によっていわゆるゲームオーバーを知らせるといったことが可能となる。
【0011】
(3)前記反射体を複数の平板から構成し、これらの平板のうち、物体存在部に隣接する平板を他の平板より薄くする。
これにより物体の移動やそれに伴う振動等を敏感に検出できる。
【0012】
(4)前記反射体を複数の平板から構成し、これらの平板のうち、物体存在部に隣接する平板に開口を備える。
これにより、反射体に設けた開口部分から物体存在部に超音波信号が侵入し、すなわち超音波が反射する空間部が反射体で囲まれた空間部に止まらず物体存在部にまで部分的に広がることになり、その反射波が再び空間部内へ戻って、物体の変位を直接的に検出でき、検出感度を高めることができる。
【0013】
(5)前記超音波信号送受信手段と結果信号出力手段は前記空間部内に設けてもよい。
これにより、装置全体を小型化できるとともに、単一の装置として容易に扱えるようになる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、超音波の反射体で囲まれた空間部に隣接する、物体存在部に収容または載置された物体の状態を検出するようにしたので、設計上の自由度が高まり、物体の操作の仕方を工夫する超音波利用電子玩具としての応用が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
《第1の実施形態》
図2は2つのタイプの超音波利用電子玩具100,101の構成を示す図である。これらの超音波利用電子玩具100,101は、いずれも空間部42の上部に多数の物品43を乗せておき、空間部にわずかな変形が生じたか否かを超音波センサ23および信号処理部40によって検出し、警報を発するようにしたものである。すなわち、いかにして警報が発せられないようにして上記物体43を拾い上げるか、という遊びやリハビリテーションに供するものである。
【0016】
図2(A)において空間部42は、5mm厚のアクリル板で構成した六面体形状の箱であり、その1つの側面に開口を設け、その開口から内部を臨むように超音波センサ23を取り付けている。
【0017】
空間部42の上面が物体載置部であり、複数の物体43を載置している。信号処理部40は超音波センサ23を用いて、後述する処理を行い、使用者による物体43の操作状態等を検出し、所定状態で出力部41を駆動する。出力部41は例えば圧電ブザーやLED等であり、その音のパターンや発光パターンによって状態を報知する。
【0018】
図2(B)は空間部42の上部に上面を開口した物体収容部44を形成し、その内部に物体43を収容している。その他の構成は図2(A)と同様である。
【0019】
図2(A)において、空間部42は、x=100mm、y=100mm、z=20mmであり、図2(B)ではその上部に、底面が空間部42の底面と同一であり、高さh=50mmの物体収容部44を設けている。
【0020】
空間部42を構成する複数の反射体(六面体形状の箱の各壁面)はそれぞれ平板から構成し、複数の物体43が隣接する平板を他の平板より薄く形成している。そのため、物体43の拾い上げ時の軽い衝撃でも空間部42に生じる歪みを大きくすることができる。
【0021】
図3は図2に示した信号処理回部40の構成をブロック図として表したものである。
前置回路24は超音波センサ23の受信信号を周波数フィルタリングするとともに増幅する。A/D変換器25はその出力電圧をA/D変換する。
【0022】
タイミング管理回路27は送信パルス形成回路21に対して送信パルストリガーを与える。送信パルス形成回路21は、この送信パルストリガーによって超音波のバースト信号を発生して駆動回路22へ出力する。
【0023】
またタイミング管理回路27はA/D値取得回路26に対してA/D値取得トリガー信号を出力する。A/D値取得回路26はA/D値取得トリガーのタイミングでA/D変換器25の制御を行うとともにそのディジタル値を取得する。
【0024】
記憶回路31は受信信号同士を比較する際に過去の波形情報を記憶するためのメモリである。この記憶回路31は、A/D値取得回路26が取得した値を記憶する。また、既に記憶されている内容を差分累積回路32へ出力する。
【0025】
差分累積回路32は記憶回路31に記憶されている波形とA/D値取得回路26から出力される波形とを、サンプリング値ごとに、その差分(絶対値)を累積する演算回路である。
【0026】
判定回路33は、差分累積回路32によって演算された演算結果が、事前に設定したしきい値を上回ったときにカウンタ34をカウントアップする。ゲームオーバー判定回路35はカウンタ34のカウント値が所定値に達したときブザー・LEDなどの出力部41を駆動する。
【0027】
図4は図3に示した信号処理部40の動作および処理のタイミング関係を示す図である。
図4において「送信パルス」は図3に示した送信パルス形成回路21の出力信号、「受信信号」は、図3に示したA/D変換器25の出力値を波形として表したもの、「差分信号」は図3に示した差分累積回路32における差分値を波形として表したものである。
【0028】
この例では、送信周期Tp(=300ms)毎に間欠的に監視エリアに向けて超音波信号を送信する。反射波の受信信号は波形比較時間Tr(=10ms)分だけ記憶回路31に書き込む。
【0029】
差分累積回路32は波形比較時間A1のタイミングで前回の波形比較時間A0の受信信号と今回のA1での受信信号との差分を求め、波形比較時間A2のタイミングでは前回の波形比較時間A1での受信信号と今回のA2での受信信号との差分を求める。したがって、図4に示した例では、この波形比較時間A2で、図に示すような差分信号が生じる。
差分累積回路32は差分信号の強度が所定値以上であればカウンタの値を+1する。
【0030】
図5は図3に示した信号処理部40の処理手順をフローチャートとして表したものである。
まず送信パルスを出力し(S1)、前回の受信信号を読出し、今回の受信信号との差分を演算する(S2→S3)。そして、今回の受信信号を次回の差分演算に備えて記憶する(S4)。今回求めた差分信号が予め定めたしきい値を超えるか否かを判定し、超える場合には、変化ありと見なしてカウンタCをカウントアップする(S5→S6)。そして、カウンタCの値が最大値に達したか否かを判定し、まだ達していなければ警告音のブザーおよび黄色のLEDを点灯する(S7→S8)。
【0031】
以上の処理を繰り返し、カウンタCの値が予め定めた最大値MAX(例えば「3」や「10」等)に達したなら終了出力を行う(S7→S9)。たとえば警告音より継続時間の長いブザー音を報知するとともに赤色LEDを点灯させる。
【0032】
《第2の実施形態》
図6は第2の実施形態に係る超音波利用電子玩具で用いる空間部の上面の平板の平面図である。この平板45には複数の開口Hを配列形成している。ここでx=100mm、y=100mmであり、図2(A)に適用した場合には物体載置部の底板となり、図2(B)に適用した場合には物体収容部44の底板となる。
【0033】
このように底板である平板45に複数の開口を設けることによって、これらの開口部分から物体存在部に超音波信号が侵入し、すなわち超音波が反射する空間部が反射体で囲まれた空間部に止まらず物体存在部にまで部分的に広がる。そのため、反射波が再び空間部内へ戻って、物体の変位を直接的に検出でき、その検出感度を高めることができる。
【0034】
《第3の実施形態》
図7は第3の実施形態に係る超音波利用電子玩具の構成を示す図である。この例では超音波センサ23および信号処理部40を空間部42の内部に配置している。その他の構成は図2(B)に示したものと同様である。このように構成することによって装置全体を小型化できるとともに、単一の装置として容易に扱えるようになる。
【0035】
なお、出力部41も空間部42の内部または空間部42を構成する平板の外面に沿って配置してもよい。ただし、ブザー41を空間部42の外部に配置することによって、ブザーの振動による影響を受けなくて済むという利点がある。
【0036】
《第4の実施形態》
図8は第4の実施形態に係る2つのタイプの超音波利用電子玩具の構成を示す図である。
図8に示した超音波利用電子玩具103,104は、いずれも2つの物体収容部44a,44bの一方から他方へ複数の物体を移し変える作業を行う際、警告音が発せられないように遊ぶものである。したがって物体を拾い上げる際にも、載置する際にも要領良く行う必要があり、よりゲーム性が向上する。
【0037】
図8(A)の例では、空間部42の上部に2つの物体収容部44a,44bを設けている。また図8(B)の例では、2つの空間部42a,42bをそれぞれ設けるとともに、その上部に物体収容部44a,44bをそれぞれ設けている。また、空間部42a,42bには、それぞれ超音波センサ23a,23bを配置している。
【0038】
図8(A)の例では、単一の超音波センサ23を用いて物体の拾い上げと載置の両方について同様に処理することができる。また、図8(B)の例では、物体の拾い上げと載置のそれぞれについて独立して検出できるため、それに応じたゲーム性を付与することも可能となる。
【0039】
なお、以上に示した各実施形態ではいずれも6枚の平板で囲まれた空間部を形成し、その上部に複数の物体を載置または収容するように構成したが、この発明はこれらの構成に限られるものではなく、例えば円筒形の空間部を形成してもよい。また例えば空間部の側面に物体の収容部を配置してもよい。
【0040】
また、図5に示した処理では受信信号の変化(差分信号の発生)が所定回数に達した時に第2の検知信号を出力する(すなわちゲームオーバーとする)ようにしたが、前記受信信号の変化があった時の警告出力(第1の検知信号の発生)の間隔、すなわち受信信号の変化頻度が所定値に達した時に第2の検知信号を出力するようにしてもよい。
【0041】
また、予め定めた時間内に物体の拾い上げまたは移し替えが完了しなければゲームオーバーとなるように、残り時間等をブザーや表示等で知らせるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】特許文献1に示されている在否検出装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る2つの超音波利用電子玩具の構成を示す図である。
【図3】同装置の信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】同信号処理部の処理および動作の手順を示す波形図である。
【図5】同信号処理部の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る超音波利用電子玩具で用いる平板の平面図である。
【図7】第3の実施形態に係る超音波利用電子玩具の構成を示す図である。
【図8】第4の実施形態に係る2つの超音波利用電子玩具の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
23−超音波センサ
40−信号処理部
41−出力部
42−空間部
43−物体
44−物体収容部
45−平板
100〜104−超音波利用電子玩具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を収容または載置する物体存在部に隣接して設けられた、超音波の反射体で囲まれた空間部と、
前記空間部に超音波信号を送信するとともに、前記反射体で反射した超音波信号を受信する超音波信号送受信手段と、
送信周期毎に前記超音波信号の送信および受信を繰り返すとともに、異なる送信周期回における受信信号同士を比較して当該受信信号の変化の有無を検出し、変化の有無に応じて結果信号を出力する結果信号出力手段と、を備えた超音波利用電子玩具。
【請求項2】
前記結果信号出力手段は、前記受信信号の変化があったときに第1の検知信号を出力し、前記超音波信号送受信手段による超音波信号の送受信を開始してから前記受信信号の変化が所定回数に達したとき、または前記受信信号の変化頻度が所定値に達したとき、第2の検知信号を出力する請求項1に記載の超音波利用電子玩具。
【請求項3】
前記反射体は複数の平板からなり、これらの平板のうち前記物体存在部に隣接する平板は他の平板より薄くした請求項1または2に記載の超音波利用電子玩具。
【請求項4】
前記反射体は複数の平板からなり、これらの平板のうち前記物体存在部に隣接する平板は開口を備えた請求項1または2に記載の超音波利用電子玩具。
【請求項5】
前記超音波信号送受信手段と、結果信号出力手段と、を前記空間部内に設けた請求項1〜4のいずれかに記載の超音波利用電子玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−118876(P2009−118876A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292689(P2007−292689)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】