説明

超音波探触子、超音波イメージング装置および超音波探触子製造方法

【課題】 超音波探触子の音響特性の劣化が伴わない圧電板とFPC板との接続を行う超音波探触子、超音波イメージング装置および超音波探触子製造方法を実現する。
【解決手段】 FPC板30と圧電板ブロック70とを、圧電板ブロック70の側面のマイクロピン60を介して、FPC板30に接続することとしているので、整合層72あるいはバッキング材71と圧電板ブロック70との間にFPC板30を配設することなく、FPC板30と圧電板10の電気的な接続を行い、超音波探触子101の音響特性の劣化を防止すると共に、超音波イメージング装置の画質を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電素子からなる圧電板にプリント(print)板を接続する超音波探触子、超音波イメージング装置および超音波探触子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波イメージング装置の画質を向上するために、超音波探触子のさらなる改善が行われている。超音波探触子は、アレイ(array)状に複数の圧電板ブロック(block)が配列された圧電板からなり、各圧電板ブロックには、超音波の送受信に伴う電気信号を送受するケーブル(cable)が電気的に接続される(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、圧電板ブロックのアレイは、繰り返しピッチ(pitch)が数十μm〜数百μm程度のもであるので、アレイをなす各圧電板ブロックごとにケーブルを接続することは容易ではなく、また、接続されたとしても多チャネル(channel)化の著しい超音波探触子では、ケーブルの数および容積が大きくなものとなり、実用性が乏しいものとなる。
【0004】
ここで、圧電板ブロックのアレイは、FPC板(Flexible Printed Circuit)を介してケーブルと接続される。FPC板は、エッチング(etching)加工により、ポリイミド(polyimide)膜の上に数百μm程度のピッチの銅パターン(pattern)を容易に形成することができる。そして、FPC板は、圧電板との接続部における銅パターンのピッチを圧電板ブロックのアレイピッチと同一のものとし、この銅パターン上に圧電板ブロックを配置することにより、圧電板とケーブルの電気的な接続を行う。
【非特許文献1】日本電子機械工業会編、「医用超音波機器ハンドブック」コロナ社、昭和60年4月20日、p185―187
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記背景技術によれば、超音波探触子の音響特性が劣化する。すなわち、圧電板あるいは圧電板ブロックの超音波を送受信する面にFPC板が位置し、被検体と接触する整合層側あるいは音響吸収剤が存在する側のいずれの側でも音響インピーダンス(impedance)のマッチング(matching)が低下する。
【0006】
また、圧電板の超音波を送受信する面は、FPC板と接地側電極に挟まれた領域が有効開口面積をなし、FPC板上に圧電板を載置する構成では、この有効開口面積が小さなものとなる。
【0007】
そして、これら音響インピーダンスのマッチングの低下、有効開口面積の狭小化は、被検体に送信される音響パワー(power)の低下、圧電板の被検体とは反対方向の裏側からの不要な音波の反射となって超音波イメージング装置の画質を低下させる。
【0008】
これらのことから、超音波探触子の音響特性の劣化が伴わない圧電板とFPC板との接続を行う超音波探触子、超音波イメージング装置および超音波探触子製造方法をいかに実現するかが重要となる。
【0009】
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、超音波探触子の音響特性の劣化が伴わない圧電板とFPC板との接続を行う超音波探触子、超音波イメージング装置および超音波探触子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる超音波探触子は、超音波を送信または受信する圧電素子からなる圧電板と、前記超音波を送信する前記圧電素子の駆動信号または前記超音波の受信により前記圧電素子に誘起される誘起信号を伝送する導体パターンを含むプリント板と、前記圧電板の前記超音波を送信または受信する板面と直交する側面に、前記圧電素子および前記導体パターンを電気的に接続する金属棒を含むマイクロピンを有する接続部と、を備える。
【0011】
この第1の観点による発明によれば、圧電板の側面のマイクロピンが有する金属棒により、圧電板と導体パターンを電気的に接続する。
また、第2の観点の発明にかかる超音波探触子は、第1の観点の発明において、前記接続部が、前記圧電板が前記側面に沿った走査方向にアレイ状に配列される複数の圧電板ブロックからなる際に、前記圧電板ブロックごとに前記マイクロピンを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第3の観点の発明にかかる超音波探触子は、第2の観点の発明において、前記プリント板に、前記圧電板ブロックと前記金属棒を介して個別に電気接続される前記複数の導体パターンを備えることを特徴とする。
【0013】
また、第4の観点の発明にかかる超音波探触子は、第3の観点の発明において、前記マイクロピンに、前記金属棒が屈曲した構造を備えることを特徴とする。
また、第5の観点の発明にかかる超音波探触子は、第3または4の観点の発明において、前記マイクロピンに、前記金属棒が湾曲した構造を備えることを特徴とする。
【0014】
また、第6の観点の発明にかかる超音波探触子は、第3ないし5の観点のいずれか1つの発明において、前記プリント板が、前記導体パターンの前記金属棒との接続位置で、隣接する圧電板ブロックごとに前記板面方向に異なることを特徴とする。
【0015】
また、第7の観点の発明にかかる超音波探触子は、第1ないし6の観点のいずれか1つの発明において、前記圧電素子が、複合圧電材料からなることを特徴とする。
また、第8の観点の発明にかかる超音波イメージング装置は、被検体と超音波の送受信を行う超音波探触子と、前記超音波探触子と電気信号の送受信を行う送受信部と、前記送受信部の受信超音波エコーから画像情報を生成する画像処理部と、前記画像情報を表示する表示手段と、を備える超音波イメージング装置であって、前記超音波探触子は、前記超音波の送受信を行う圧電素子からなる圧電板、前記電気信号を伝送するプリント板、並びに、前記圧電素子および前記プリント板を電気的に接続する金属棒を含むマイクロピンを有する接続部を有し、前記接続部は、前記圧電板の前記超音波を送受信する板面と直交する側面に、前記マイクロピンを備えることを特徴とする。
【0016】
また、第9の観点の発明にかかる超音波探触子製造方法は、超音波を送受信する圧電素子からなる圧電板の前記超音波を送受信する板面と直交する側面に、金属棒を含むマイクロピンを装着し、前記超音波を送信する前記圧電素子の駆動信号および前記超音波の受信により前記圧電素子に誘起される誘起信号の少なくとも1つを伝送するプリント板上の導体パターンに、前記金属棒を電気的に接続する。
【0017】
また、第10の観点の発明にかかる超音波探触子製造方法は、第9の観点の発明において、前記マイクロピンが、前記側面に接着剤を用いて装着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、圧電板の側面のマイクロピンが有する金属棒により、圧電板と導体パターンを電気的に接続することとしているので、圧電板の超音波を送受信する被検体側あるいは音響吸収材側の板面にFPC板を配設することを無くし、音響特性の劣化を抑えると共に、有効開口面積を大きなものとすることができ、超音波イメージング装置の画質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる超音波探触子、超音波イメージング装置および超音波探触子製造方法を実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、本実施の形態1にかかる超音波イメージング装置の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる超音波イメージング装置の全体構成を表すブロック(block)図である。この超音波イメージング装置は、超音波探触子101、送受信部102、画像処理部103、シネメモリ(cine memory)部104、画像表示制御部105、表示部106、入力部107、制御部108を備えている。
【0020】
超音波探触子101は、超音波を送受信する。すなわち、被検体1の撮像断面の特定位置で超音波を照射し、生体内から反射された超音波エコー(echo)を時系列的な音線として受信する一方、超音波の照射位置を順次切り替えながら電子走査する。
【0021】
送受信部102は、超音波探触子101と同軸ケーブルによって接続され、超音波探触子101の圧電素子を駆動するための電気信号を発生する一方、受信した超音波エコー信号の初段増幅を行う部分である。
【0022】
画像処理部103は、送受信部102で増幅された超音波エコー信号からBモード(mode)画像のリアルタイム(real time)での生成あるいは超音波エコー信号の位相変化情報を抽出し、リアルタイムで、速度、パワー値、分散といった撮像断面の各点に付随する流れの情報を算出する部分である。具体的な処理内容は、例えば受信した超音波エコー信号の遅延加算処理、A/D(analog/digital)変換処理、変換した後のデジタル情報をBモード画像情報として後述のシネメモリ部104に書き込む処理等がある。
【0023】
シネメモリ部104は、画像処理部103で生成されたBモード画像情報および流れの情報を蓄積するための画像メモリ(memory)である。
画像表示制御部105は、画像処理部103で生成されたBモード画像情報および流れの情報の表示フレームレート(frame rate)変換、並びに画像表示の形状や位置制御を行うための部分である。
【0024】
表示部106は、画像表示制御部105によって表示フレームレート変換、並びに画像表示の形状や位置制御された情報をオペレータに対して表示するためのCRT(Cathode Ray Tube)あるいはLCD(Liquid Crystal Display)等からなる部分である。
【0025】
入力部107は、オペレータによる操作入力信号、例えばBモードによる表示を行うか、さらにドップラ処理の結果を表示するかを選択するための操作入力信号を制御部108に与える部分である。
【0026】
制御部108は、入力部107から与えられた操作入力信号、並びに予め記憶したプログラム(program)やデータ(data)に基づいて上述した超音波イメージング装置各部の動作を制御するための部分である。
【0027】
図2は、リニア(linear)型の超音波探触子101の構成を示すブロック図である。超音波探触子101は、圧電板10、接続部20、FPC板30、スイッチング(switching)回路40およびケーブル50を含む。圧電板10は、圧電材料よりなる板状のセラミックスで、直方体形状の複数の圧電板ブロックがアレイ(array)状に配置され、全体として板状をなす。これら圧電板ブロックは、接続部20を介してFPC板30に電気接続される。
【0028】
FPC板30は、フレキシブルプリント板で、エッチング等によりポリイミド等の膜に導体パターンが、形成されたものである。そして、FPC板30は、圧電板10を構成する圧電板ブロックとスイッチング回路40とを電気的に接続する。なお、接続部20を中心とする圧電板10およびFPC板30の構成は、後に詳述する。
【0029】
スイッチング回路40は、高耐電圧、高速のスイッチからなり、FPC板30を介して接続される圧電板ブロックの中から、超音波の送受信を行う圧電板ブロックを選択し、この選択された圧電板ブロックのみを送受信部102と電気的な接続状態にする。ケーブル50は、送受信部102に含まれる送受信回路と同数の同軸ケーブルからなり、スイッチング回路40と送受信部102とを電気接続し、圧電板ブロックの駆動波形および受信波形の伝送を行う。また、ケーブル50は、スイッチング回路40の制御信号の送信も行う。
【0030】
図3は、圧電板10および接続部20の構成を示す図である。図3(A)は、圧電板10および接続部20を、圧電板10の板面の方向、すなわち被検体1側から見た図である。圧電板10は、複数の圧電板ブロック70からなり、接続部20は、圧電板面と直交する厚み方向の2つの側面に、各々圧電板ブロック70と同数のマイクロピン(micropin)60を有する。ここで、厚み方向は、直方体の形状をなす圧電板ブロック70の長軸方向をなす。また、圧電板ブロック70が、アレイ状に配列される方向は、走査方向をなし、厚み方向と直交する。
【0031】
図3(B)は、圧電板10および接続部20を厚み方向から見た図である。圧電板10は、平板状に配列される複数の圧電板ブロック70からなる。図3(C)は、圧電板ブロック70の、圧電板10の板面と直交する厚み方向の断面を示す図である。圧電板ブロック70の表面には、電極82および83が存在し、マイクロピン60はこの電極82および83と電気的に接続される。電極82および83は、スパッタリング(spattering)あるいは焼き付け等により圧電板ブロック70上に形成される導体薄膜である。
【0032】
マイクロピン60は、FPC板30と接続される突起物である金属棒部80および台座部81を有する。マイクロピン60は、鉄、ニッケル(nickel)、モリブデン(molybdenum)あるいは銅等の金属粉末をモールド(Mold)に押し込み、高温、高圧下で成形するMIM(Metal Injection Mold)技術により作成され、金属棒部80が数十μm程度の径を有する。マイクロピン60は、圧電板ブロック70に、例えばエポキシ(epoxy)接着剤等により固定される。なお、図3(C)の例では、電極83が接地電極、電極82が信号電極をなす。
【0033】
図4は、接続部20を中心とする圧電板10およびFPC板30の接続を示す展開図である。FPC板30は、走査方向に圧電板ブロック70と同一の繰り返しピッチの導体パターン31を有する。そして、導体パターン31の圧電板ブロック70側の先端部分には、パッド(Pad)29が存在する。パッド29にはスルーホール(through hole)が存在し、マイクロピン60の金属棒部80が挿入および半田付け等され、導体パターン31と圧電板ブロック70の電極82あるいは83とが電気的に接続される。また、導体パターン31のスイッチング回路40側は、導体パターン31の間隔を拡大等してスイッチング回路40に接続される。また、圧電板10のFPC板30が存在しない側のマイクロピン60は、図示しないFPC板上の導体箔等により接地が行われる。
【0034】
なお、図4には、圧電板ブロック70の被検体1側には整合層72、圧電板ブロック70の被検体1と反対側にはバッキング材71が図示されている。整合層72は、被検体1と圧電板ブロック70との音響インピーダンンスをマッチングさせるためのもので、バッキング材71は、圧電板ブロック70の被検体1と反対に放射される超音波を吸収するためのものである。
【0035】
つづいて、接続部20を中心とする圧電板10およびFPC板30の動作について概要を説明する。圧電素子の駆動波形は、送受信部102で発生され、スイッチング回路40を介して、駆動する圧電素子が接続されるFPC板30の導体パターンに入力される。この駆動波形は、導体パターン31から、マイクロピン60を介して圧電板ブロック70に印加される。ここで、圧電板ブロック70は、超音波振動を励起し、被検体1方向に超音波を送信する。
【0036】
また、被検体1からの反射超音波が圧電板ブロック70に入射する際には、圧電板ブロック70に誘起電圧が生じ、この誘起電圧がマイクロピン60を介して導体パターン31に伝送され、導体パターン31およびスイッチング回路40を介して、受信波形が送受信部102で受信される。
【0037】
上述してきたように、本実施の形態1では、FPC板30と圧電板10の圧電板ブロック70とを、圧電板ブロック70の側面のマイクロピン60を介して、FPC板30に接続することとしているので、整合層72あるいはバッキング材71と圧電板ブロック70との間にFPC板を配設することなく、FPC板30と圧電板10の電気的な接続を行い、超音波探触子101の音響特性の劣化を防止すると共に、超音波イメージング装置の画質を向上することができる。
【0038】
また、本実施の形態1では、リニア型の超音波探触子101を用いた場合を例示したが、全く同様にセクタ(sector)型あるいはコンベックス(convex)型等の超音波探触子を用いることもできる。
【0039】
また、本実施の形態1では、圧電素子にPZT等の均一構造を有するものを用いる場合を示したが、圧電素子に複合圧電材料等の不均一材料を用いることもできる。複合圧電材料は、圧電板10の走査方向および厚み方向に周期配列されるPZT等の圧電部材と、この圧電部材の間隙に充填されるエポキシ樹脂等の充填剤からなる。この場合には、圧電板ブロック70の走査方向の繰り返しピッチおよび位置は、この圧電部材の周期および位置と一致するものとされる。従って、マイクロピンを、圧電部材の周期および位置と一致させて配列することにより、容易に複合圧電材料の周期および位置と一致するFPC板30の装着を行うことができる。
【0040】
また、本実施の形態1では、図3(C)に示す電極82および83を、反対側の側面に位置するマイクロピン60の近傍位置まで配設することができる。これにより、圧電板ブロック70を挟んで存在する電極82および83の、被検体1方向に重なり合う部分が大きくなり、ひいては有効開口面積を大きなものとすることができる。
(実施の形態2)
ところで、上記実施の形態1では、FPC板30のパッド29部分は、走査方向に一列に配設されることとしたが、このパッド29は、導体パターン31の更なる高密度配線を阻害する要因となっている。そこで、本実施の形態2では、FPC板の隣接するパッドを、パターン走行方向の異なる位置に配設することにより、導体パターンを高密度に配線する場合を示すことにする。
【0041】
図5は、本実施の形態2にかかる、接続部21を中心とする圧電板10およびFPC板90の構成を示す展開図である。ここで、接続部21およびFPC板90は、実施の形態1における接続部20およびFPC板30に対応するものであり、その他の構成および動作は実施の形態1と全く同様であるので詳細な説明を省略する。
【0042】
FPC板90は、走査方向に圧電板ブロック70と同一の繰り返しピッチを有する導体パターン91〜93を有する。そして、導体パターン91〜93の圧電板ブロック70側の先端部分には、パッド(Pad)32〜34が存在する。パッド32〜34は、導体パターン91〜93の走行方向に所定の距離だけ離して配設される。図5の例では、パッド位置が導体パターンの走行方向に異なる3つの導体パターン91〜93が繰り返しFPC板90上に形成される。これにより、専有面積の大きなパッド32〜34が走査方向に重なり合うことなく、圧電板ブロック70の繰り返しピッチと同一のピッチで、導体パターン91を高密度に配設することができる。
【0043】
接続部21は、走査方向の3つの圧電板ブロック70を繰り返すごとに、マイクロピン62〜64が繰り返し配設される。マイクロピン62は、マイクロピン60と全く同様の形状を有し、パッド32のスルーホールと合致される。マイクロピン63は、金属棒が鉤型の屈曲構造をしており、先端部分が、導体パターンの走行方向に移動したパッド33のスルーホールと合致される。マイクロピン64は、金属棒がさらに長い鉤型の屈曲構造をしており、先端部分が、導体パターンの走行方向に移動したパッド34のスルーホールと合致される。なお、金属棒とパッド32〜34は、例えば半田付け等により接合される。
【0044】
なお、接続部21を中心とする圧電板ブロック70およびFPC板90の動作については、実施の形態1と全く同様であるので説明を省略する。
上述してきたように、本実施の形態2では、圧電板ブロック70およびFPC板30を、マイクロピン62および鉤型に屈曲した金属棒部を有するマイクロピン63〜64を用いて、FPC板90の導体パターンの走行方向に所定の間隔を持って配設されるパッド32〜34に接合することとしているので、占有面積の大きいパッド32〜34に影響されることなく、FPC板90の導体パターン91の繰り返しピッチを、圧電板ブロック70の走査方向の繰り返しピッチと同じ高密度のものとすることができる。
【0045】
また、本実施の形態2では、マイクロピン62〜64およびパッド32〜34で示される様に、走査方向に並ぶ3つの圧電板ブロック70ごとに同様のマイクロピンおよびパッドを繰り返し用いることとしたが、走査方向に並ぶ2つ圧電板ブロック70ごとあるいは走査方向に並ぶ4つ以上の圧電板ブロック70ごとに同様のマイクロピンおよびパッドを繰り返し用いる様にすることもできる。
(実施の形態3)
ところで、上記実施の形態1および2では、FPC板のパッド部分およびマイクロピンの金属棒部は、半田付け等により接合されることとしたが、弾力性を持たせた金属棒部によりパッドを圧迫し、これによりパッドと金属棒部の電気的な接合を取ることもできる。そこで、本実施の形態3では、マイクロピンの金属棒部に弾力性を持たせ、半田付け等によらず、FPC板のパッドと、マイクロピンの金属棒部との電気的な接合を取る場合を示すことにする。
【0046】
図6(A)は、本実施の形態3にかかるマイクロピン66およびパッド201の構成を示す図である。ここで、マイクロピン66は、実施の形態1あるいは2におけるマイクロピン60、マイクロピン62〜64に対応するものであり、パッド201は、実施の形態1あるいは2におけるパッド32〜34に対応するものであり、FPC板99は、実施の形態1あるいは2におけるFPC板30、90に対応するものでありその他の構成および動作は実施の形態1あるいは2と全く同様であるので詳細な説明を省略する。
【0047】
マイクロピン66は、台座部68、湾曲部67および接触部69を含む。マイクロピン66は、台座部68の接着等により、圧電板ブロック70に固定される。また、マイクロピン66は、湾曲した金属棒からなる湾曲部67を有し、湾曲部67の先端には概ね球形の金属からなる接触部69を有する。ここで、金属からなる湾曲部67は、弾力性を有し、台座部68および接触部68間の圧迫に対し、再現性のある弾性的応答を行う。
【0048】
図6(B)は、パッド201がマイクロピン66と接触する接触面に直交する断面を示したものである。パッド201は、マイクロピン66の接触部69と接触する金属部分が、すり鉢状のスルーホール202を有する。ここで、FPC板99を圧電板ブロック70の方向に圧迫することにより、接触部69は、すり鉢状のスルーホール202に捕捉され、かつ湾曲部67が湾曲を起こし、接触部69がパッド201を押さえつけた状態となる。そして、この状態は、接触部69およびパッド201間に安定した電気の導通状態を生じさせる。
【0049】
上述してきたように、本実施の形態3では、マイクロピン66に湾曲部67を設け、FPC板99を圧電板ブロック70の方向に圧迫することにより、すり鉢状のパッド201に接触部69が押さえつけられた状態とし、半田付け等を行うこと無く、接触部69およびパッド201間に安定した電気的導通状態を生じさせ、ひいてはFPC板99あるいは圧電板ブロック70を含む圧電板10等を単体で交換可能とし、これら部品の単体での修理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】超音波イメージング装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】超音波探触子の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】超音波探触子の圧電板および接続部を示す構成図である。
【図4】超音波探触子の圧電板およびFPC板の接続を示す展開図である。
【図5】実施の形態2の超音波探触子の接続部、FPC板およびこれらの接続を示す展開図である。
【図6】実施の形態3のマイクロピンおよびパッドを示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 被検体
10 圧電板
20、21 接続部
30、90、99 FPC板
31、91 導体パターン
29,32、33、34、201 パッド
40 スイッチング回路
50 ケーブル
60、62〜64、66 マイクロピン
67 湾曲部
68、81 台座部
69 接触部
70 圧電板ブロック
71 バッキング材
72 整合層
80 金属棒部
82、83 電極
101 超音波探触子
102 送受信部
103 画像処理部
104 シネメモリ部
105 画像表示制御部
106 表示部
107 入力部
108 制御部
202 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信または受信する圧電素子からなる圧電板と、
前記超音波を送信する前記圧電素子の駆動信号または前記超音波の受信により前記圧電素子に誘起される誘起信号を伝送する導体パターンを含むプリント板と、
前記圧電板の前記超音波を送信または受信する板面と直交する側面に、前記圧電素子および前記導体パターンを電気的に接続する金属棒を含むマイクロピンを有する接続部と、
を備える超音波探触子。
【請求項2】
前記接続部は、前記圧電板が前記側面に沿った走査方向にアレイ状に配列される複数の圧電板ブロックからなる際に、前記圧電板ブロックごとに前記マイクロピンを備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記プリント板は、前記圧電板ブロックと前記金属棒を介して個別に電気接続される前記複数の導体パターンを備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記マイクロピンは、前記金属棒が屈曲した構造を備えることを特徴とする請求項3に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記マイクロピンは、前記金属棒が湾曲した構造を備えることを特徴とする請求項3または4に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記プリント板は、前記導体パターンの前記金属棒との接続位置が、隣接する圧電板ブロックごとに前記板面方向に異なることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1つに記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記圧電素子は、複合圧電材料からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の超音波探触子。
【請求項8】
被検体と超音波の送受信を行う超音波探触子と、
前記超音波探触子と電気信号の送受信を行う送受信部と、
前記送受信部の受信超音波エコーから画像情報を生成する画像処理部と、
前記画像情報を表示する表示手段と、
を備える超音波イメージング装置であって、
前記超音波探触子は、前記超音波の送受信を行う圧電素子からなる圧電板、前記電気信号を伝送するプリント板、並びに、前記圧電素子および前記プリント板を電気的に接続する金属棒を含むマイクロピンを有する接続部を有し、
前記接続部は、前記圧電板の前記超音波を送受信する板面と直交する側面に、前記マイクロピンを備えることを特徴とする超音波イメージング装置。
【請求項9】
超音波を送受信する圧電素子からなる圧電板の前記超音波を送受信する板面と直交する側面に、金属棒を含むマイクロピンを装着し、
前記超音波を送信する前記圧電素子の駆動信号および前記超音波の受信により前記圧電素子に誘起される誘起信号の少なくとも1つを伝送するプリント板上の導体パターンに、前記金属棒を電気的に接続する超音波探触子製造方法。
【請求項10】
前記マイクロピンは、前記側面に接着剤を用いて装着されることを特徴とする請求項9に記載の超音波探触子製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−122089(P2006−122089A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310706(P2004−310706)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】