説明

超音波探触子及びその製造方法

【課題】材料コストが安く、製造歩留まりを高くできるようにした超音波探触子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】一面側に形成された上面電極7、及び他面側に形成された下面電極9を各々有し、所定間隔を存して並列に配設された複数の圧電振動子1と、これら圧電振動子1の上面電極7に電気的に接続された第1のフレキシブルプリント基板8と、一端側が略先鋭状に形成される複数の電極部11を所定間隔を存して並列に配設し、電極部11の他端側を複数の圧電振動子1の少なくとも2個以上の圧電振動子の下面電極9に対し一個の割合で電気的に接続させる第2のフレキシブルプリント基板10と、複数の電極部11の一端側にそれぞれ導電ペースト16を介して電気的に接続されるリード電極15を有する第3のフレキシブルプリント基板12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、超音波診断に用いられる超音波探触子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の超音波探触子としては、図3に示すようなものが知られている。
【0003】
この超音波探触子は、所定間隔を存して並列に配設される複数個の圧電振動子22を備え、これら圧電振動子22の下面部には2層のバッキング材23,24が接着されている。また、これら圧電振動子22の上面部には音響整合層25,26が層状に接着され、さらに音響整合層26の上面部には音響レンズ27が貼り付けられている。
【0004】
圧電振動子22の背面側にはアース電極28が設けられ、このアース電極28にはアースラインとなる銅板29がハンダ付けされている。圧電振動子22の前面側には信号電極30が設けられ、この信号電極30には製品サイズに応じて個々に製造されたフレキシブルプリント基板(以下、FPCという)31のリード線32がハンダ付けされている。
【0005】
圧電振動子22の上下面部には、図4にも示すように電極33,34が設けられている。アース電極28と信号電極30は電極33,34から引き出され、金或いは、銀によって形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−307996号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来においては、振動子22が配列ピッチを0.1mm程度として数百個配列され、これら振動子22に対してそれぞれリード線32を一本ずつハンダ付けする必要があるため、製造歩留が低下するという不都合があった。
【0008】
また、超音波探触子のサイズ及び配列数によって信号ライン用のFPC31を個別に用意しなければならず、FPC31の価格が高くなるという問題があった。
【0009】
さらに、振動子22の高さ寸法は0.2〜0.4mm程度と低いため、上下面の電極33,34を短絡させないようにアース電極28及び信号電極30を形成することが困難で、歩留まりを低下させる要因となっていた。
【0010】
また、リード線32と信号電極30のハンダ付けではフラックスの塗布工程と、ハンダ付け部分の保護樹脂を塗布、硬化する工程が必要となり、製造工程数が多くなる。
【0011】
さらに、昨今、電気機器に求められている鉛フリーハンダへの対応も難しいものとなっている。
【0012】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、材料コストが安く、製造歩留まりを高くできるようにした超音波探触子及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載のものは、一面側に形成されたアース電極、及び他面側に形成された信号電極を各々有し、所定間隔を存して並列に配設された複数の圧電振動子と、これら圧電振動子のアース電極に電気的に接続された第1のフレキシブルプリント基板と、一端側が略先鋭状に形成される複数の電極部を所定間隔を存して並列に配設し、前記電極部の他端側を前記複数の圧電振動子の少なくとも2個以上の圧電振動子の信号電極に対し一個の割合で電気的に接続させる第2のフレキシブルプリント基板と、前記複数の電極部の先鋭状部側にそれぞれ導電部材を介して電気的に接続されるリード電極を有する第3のフレキシブルプリント基板とを備える。
【0014】
請求項3記載のものは、一面側に形成されたアース電極、及び、他面側に形成された信号電極を各々有し、所定間隔を存して並列に配設された複数の圧電振動子の前記アース電極に電気的に第1のフレキシブルプリント基板を電気的に接続する工程と、一端側が略先鋭状に形成される複数の電極部を所定間隔を存して並列に配設した第2のフレキシブルプリント基板の前記電極部の他端側を前記複数の圧電振動子の少なくとも2個以上の圧電振動子の信号電極に対し一個の割合で電気的に接続する工程と、前記複数の電極部の一端側にそれぞれ導電部材を介して第3のフレキシブルプリント基板のリード電極を電気的に接続する工程とを備える。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1及び図2に示す実施の形態を参照して詳細に説明する。 図1は本発明の一実施の形態である超音波探触子の一部を拡大して示す斜視図である。
【0016】
この超音波探触子は、所定間隔を存して並列に配設された複数個の圧電振動子1を備え、これら圧電振動子1の上面部には2層の音響整合層2,3と音響レンズ4とが配設されている。圧電振動子1の下面部には第1及び第2のバッキング材5,6が層状に接着されている。
【0017】
圧電振動子1と第1のバッキング材5の接着と、第1及び第2のバッキング材5,6同士の接着はそれぞれ熱硬化型のエポキシ接着剤で行われている。
【0018】
圧電振動子1は0.1mmのピッチで配列され、その幅寸法は0.07mm、間隔は0.03mmとなっている。
【0019】
圧電振動子1の上下面部には銀の厚膜により上面及び下面の電極7,9が形成されている。上面電極7はアース電極であり、この上面電極7には導電ペーストにより第1のフレキシブルプリント基板(以下、第1のFPCという)8が電気的に接続されている。この第1のFPC8の電極19はテープ状のポリイミド樹脂からなる絶縁部材の一方の表面の全体を厚さ18μmの銅箔によって被覆することにより形成されており、この銅箔の表面にはさらに厚さ0.05μmの金メッキが施されている。この金メッキは銅箔の酸化を防止し、確実な導通を得るためのものである。
【0020】
圧電振動子1の下面電極9は信号電極であり、この下面電極9には、第2のフレキシブルプリント基板(以下、第2のFPCという)10の一端部側が導電ペーストを介して電気的に接続されている。
【0021】
第2のFPC10の一端部側には、複数の電極部11が所定間隔を存して並列に配設されている。複数の電極部11は銅箔とこの銅箔の表面に施される金メッキとからなる。複数の電極部11はそれぞれ一端部側が略先鋭状に形成され、他端部側が3個の圧電振動子1の下面電極9に接続されている。
【0022】
第2のFPC10の他端部側には複数の第3のフレキシブルプリント基板(以下、第3のFPCという)12,13が非導電性のエポキシ接着剤14により接着されている。第3のFPC12,13上にはリードラインとしてのリード電極15が2本ずつ形成されている。リード電極15はそれぞれ第2のFPC10の電極部11の略先鋭状の一端部側に導電部材としての導電ペースト16を介して電気的に接続されている。
【0023】
圧電振動子1の下面部にはエポキシ接着剤21を介してバッキング材5,6が接着されている。
【0024】
次に、上記した超音波探触子の製造方法を図2に基づいて説明する。
【0025】
まず、図2(a)に示すように、上下面部の全面に銀の厚膜からなる電極7,9を形成した圧電振動子の基材17を用意する。
【0026】
ついで、この基材17の電極7,9上に銀ペースト18を塗布し、図2(b)に示すように、電極7に第1のFPC8の一端部側、電極9に第2のFPC10の一端部側をそれぞれ接続する。
【0027】
各振動子1のアースは共通でよく,第1のFPC8の電極19は一つである。
【0028】
第2のFPC10の一端側には複数の電極部11が連続する状態で形成されている。複数の電極部11の一端側は略先鋭状に形成され、一端部間のピッチは0.3mmとなっている。
【0029】
ついで、図2(c)に示すように、第2のFPC10の他端部側に非導電性の接着剤14により複数枚の第3のFPC12,13を接着する。
【0030】
そして、図2(d)に示すように、第2のFPC10の電極11の略先鋭状の一端部側と第3のFPC12,13の電極15との間に導電ペースト16をディスペンスにより塗布して熱硬化させる。硬化条件は温度が150℃で、加熱時間は3分間である。
【0031】
しかるのち、図2(e)に示すように、圧電振動子基材17の下面部にバッキング材5,6をエポキシ接着剤21により接着する。
【0032】
この接着後、図2(f)に示すように、第1のFPC8及び第2のFPC10を直角に折曲し、この折曲後、ダイサーにより圧電振動子基材17と第1のFPC8、及び第2のFPC10の電極11、さらにバッキング材5を0.1mmピッチで分割する。この工程により、複数個の圧電振動子1が形成され、また、連続する複数の電極11が1個ずつに分割される。
【0033】
この分割により、3個の圧電振動子1に対し一個の電極11を介して一本のリード電極15が電気的に接続された構成となる。
【0034】
最後に、図2(g)に示すように、分割された圧電振動子1の上面部に音響整合層2,3とレンズ層4を形成して完成する。
【0035】
上記したように、複数個(3個)の圧電振動子1に対し、一個の電極11を介して一本のリード電極15を接続するため、リード電極15と振動子1の高精度な位置合わせや、細かい接続工程が不要となり製造歩留まりを高くすることができる。
【0036】
また、リードライン用のFPC12,13を様々な仕様の超音波探触子に対して共通化することができコストを低減することができる。
【0037】
なお、上記した実施の形態では、音響整合層2,3を振動子基材17の分割後に形成したが、振動子基材17の分割前に形成するようにしても良い。
【0038】
また、第2のFPC10の複数の電極11は山形状に連続する構成としたが、これに限られることなく、他の形状でも構わない。
【0039】
さらに、第2のFPC10と第3のFPC12,13との間に導電ペーストをディスペンスにより塗布しているが、例えばインクジェット方式により供給しても良い。
【0040】
その他、本発明はその要旨の範囲内で、種々変形実施可能なことは勿論である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、リードライン用の第3のフレキシブルプリント基板を様々な仕様の超音波探触子に対して共通化することができコストを低減することができる。
【0042】
また、リードラインと振動子の高精度な位置合わせや、細かい接続工程が不要となり製造歩留まりを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である超音波探触子を示す斜視図。
【図2】同超音波探触子の製造工程を示す図。
【図3】従来の超音波探触子を示す斜視図。
【図4】従来における圧電振動子の電極配置構成を示す図。
【符号の説明】
1…圧電振動子、5,6…バッキング材、7…上面電極(アース電極)、8…第1のフレキシブルプリント基板、9…下面電極(信号電極)、10…第2のフレキシブルプリント基板、11…電極部、12…第3のフレキシブル基板、14…エポキシ接着剤(非導電性の接着剤)、15…リード電極、16…導電ペースト(導電部材)、17…振動子基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に形成されたアース電極、及び他面側に形成された信号電極を各々有し、所定間隔を存して並列に配設された複数の圧電振動子と、
これら圧電振動子のアース電極に電気的に接続された第1のフレキシブルプリント基板と、
一端側が略先鋭状に形成される複数の電極部を所定間隔を存して並列に配設し、前記電極部の他端側を前記複数の圧電振動子の少なくとも2個以上の圧電振動子の信号電極に対し一個の割合で電気的に接続させる第2のフレキシブルプリント基板と、
前記複数の電極部の一端側にそれぞれ導電部材を介して電気的に接続されるリード電極を有する第3のフレキシブルプリント基板とを備えたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記導電部材は樹脂材料中に銀の粒子を分散させて導電性を得ている材料であることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項3】
一面側に形成されたアース電極、及び、他面側に形成された信号電極を各々有し、所定間隔を存して並列に配設された複数の圧電振動子の前記アース電極に電気的に第1のフレキシブルプリント基板を電気的に接続する工程と、
一端側が略先鋭状に形成される複数の電極部を所定間隔を存して並列に配設した第2のフレキシブルプリント基板の前記電極部の他端側を前記複数の圧電振動子の少なくとも2個以上の圧電振動子の信号電極に対し一個の割合で電気的に接続する工程と、
前記複数の電極部の一端側にそれぞれ導電部材を介して第3のフレキシブルプリント基板のリード電極を電気的に接続する工程と、を備えたことを特徴とする超音波探触子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2005−12426(P2005−12426A)
【公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−173324(P2003−173324)
【出願日】平成15年6月18日(2003.6.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】