説明

超音波斜角探触子

【課題】超音波斜角探触子において、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を拡げるとともに、被検査体を広範囲にわたって検査可能とし、しかもこれをコンパクトな構成でかつ探傷システムを複雑化することなく実現する。
【解決手段】振動子14を、複数の帯状セグメントに分割された構成とする。その際、これら複数の帯状セグメントを、被検査体2の探傷面2aに対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント14s1、14s2を1本ずつ交互に配置することにより構成する。これにより、探傷屈折角が異なる2種類の超音波を放射して、被検査体2の内部欠陥6に対して2つの異なる探傷屈折角θ1、θ2で到達させる。これにより内部欠陥6からの明瞭なエコーを得やすくして、内部欠陥6の検出を容易化する。また、振動子14の大きさを、従来の単一の方向を向いた振動子と略同じ大きさに維持し、これにより検査不能領域を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、被検査体の内部欠陥検査に用いられる超音波探触子に関するものであり、特に、被検査体の探傷面に対して斜めに超音波を入射させるように構成された超音波斜角探触子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼板や鋼管等の被検査体の内部欠陥を検査する方法として、超音波探傷法が知られている。
【0003】
この超音波探傷法においては、超音波探触子を被検査体の探傷面に沿って走査しながら、この超音波探触子から被検査体へ向けて超音波を放射し、そのエコーを解析することにより、内部欠陥の存在およびその位置の検出を行うようになっている。
【0004】
そして、このような超音波探傷法の1つとして、例えば「特許文献1」に記載されているように、被検査体の探傷面に対して斜めに超音波を入射させる斜角探傷法が知られている。
【0005】
この斜角探傷法においては、超音波探触子として超音波斜角探触子が用いられるが、この超音波斜角探触子は、例えば「特許文献2」に記載されているように、楔状ブロックの斜面に振動子が載置固定された構成となっている。ただし「特許文献3」には、超音波斜角探触子において、振動子が楔状ブロックに対して傾動可能に支持されたものが記載されている。
【0006】
なお、上記「特許文献1」および「特許文献2」には、超音波の送信と受信とを別々の超音波探触子で行う二探触子法が記載されており、上記「特許文献3」には、1つの超音波探触子で超音波の送受信を行う一探触子法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−248690号公報
【特許文献2】特開平7−218485号公報
【特許文献3】特開2001−221784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
斜角探傷法を採用することにより、探傷面に対して超音波を垂直に入射させる垂直探傷法では検査不能な溶接部等についても、その欠陥検査を容易に行うことが可能となる。
【0009】
しかしながら、上記「特許文献1」および「特許文献2」に記載された超音波斜角探触子は、その振動子が単一の方向を向いているので、超音波が探傷面から被検査体に入射する際の探傷屈折角も単一の角度となり、内部欠陥に到達する超音波も単一の向きとなり、このため検出可能な内部欠陥の向きが狭い角度範囲のものに限られてしまう、という問題がある。
【0010】
これに対し、上記「特許文献3」に記載されているように、振動子が楔状ブロックに対して傾動可能に支持された構成とすれば、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を拡げることが可能となる。しかしながら、このようにした場合には、超音波斜角探触子が大型化してしまい、また、振動子の傾動させるためのアクチュエータおよびその駆動制御手段が必要となるため、探傷システムが複雑化してしまう、という問題がある。
【0011】
一方、上記「特許文献3」に記載された構成、すなわち複数の超音波斜角探触子が1つのホルダに装着された構成、を採用した上で、これら各超音波斜角探触子の振動子の傾斜角度を互いに異なった値に設定し、これらを一括して走査するようにすれば、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を拡げることが可能となる。しかしながら、このようにした場合には、超音波斜角探触子が大型化してしまい、また、被検査体の端部領域に関しては、2種類の超音波斜角探触子の双方からの超音波を到達させることが困難となるので、被検査体を広範囲にわたって検査することができなくなってしまう、という問題がある。
【0012】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を拡げることができるとともに、被検査体を広範囲にわたって検査することができ、しかもこれをコンパクトな構成でかつ探傷システムを複雑化することなく実現することができる超音波斜角探触子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、振動子の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0014】
すなわち、本願発明に係る超音波斜角探触子は、
楔状ブロックの斜面に振動子が載置固定されてなり、被検査体の探傷面に対して斜めに超音波を入射させるように構成された超音波斜角探触子において、
上記振動子が、複数の帯状セグメントに分割されており、
これら複数の帯状セグメントが、上記探傷面に対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメントを1本ずつ交互に配置することにより構成されている、ことを特徴とするものである。
【0015】
上記各「帯状セグメント」の大きさやその縦横比等の具体的構成は、特に限定されるものではない。
【0016】
上記「2種類の帯状セグメント」のうち、相対的に小さい傾斜角度で配置された複数の帯状セグメントを「第1帯状セグメント群」、相対的に大きい傾斜角度で配置された複数の帯状セグメントを「第2帯状セグメント群」としたとき、「第1帯状セグメント群」を構成する各帯状セグメントの傾斜角度および「第2帯状セグメント群」を構成する各帯状セグメントの傾斜角度の具体的な値や、両者間の傾斜角度の差等については、特に限定されるものではない。また、「第1帯状セグメント群」を構成する各帯状セグメントは、互いに同一幅で形成されていてよいことはもちろんであるが、互いに異なる幅で形成されていてもよく、同様に、「第2帯状セグメント群」を構成する各帯状セグメントは、互いに同一幅で形成されていてよいことはもちろんであるが、互いに異なる幅で形成されていてもよい。
【0017】
本願発明に係る超音波斜角探触子は、一探触子法、二探触子法のいずれにも適用可能である。
【発明の効果】
【0018】
上記構成に示すように、本願発明に係る超音波斜角探触子は、楔状ブロックの斜面に振動子が載置固定された構成となっているが、この振動子は複数の帯状セグメントに分割されており、そして、これら複数の帯状セグメントは、被検査体の探傷面に対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメントを1本ずつ交互に配置することにより構成されているので、被検査体に入射する際の探傷屈折角が異なる2種類の超音波を放射することが可能となる。
【0019】
このため、内部欠陥に対して超音波を2つの異なる角度で到達させることができ、これにより内部欠陥からの明瞭なエコーを得やすくして、内部欠陥の検出を容易化することができる。
【0020】
その際、振動子は傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメントが1本ずつ交互に配置された構成となっているので、振動子の大きさを、従来の単一の方向を向いた振動子と略同じ大きさに維持したままで、探傷屈折角が異なる2種類の超音波を放射させることが可能となり、これにより超音波斜角探触子をコンパクトに構成することができる。
【0021】
しかも、振動子が楔状ブロックに対して傾動可能に支持された上記従来例のように探傷システムを複雑化させてしまうことなく、上記作用効果を得ることができる。また、複数の超音波斜角探触子が1つのホルダに装着された上記従来例の構成において、これら各超音波斜角探触子の振動子の傾斜角度を互いに異なった値に設定した場合に比して、検査不能領域を小さくすることができ、これにより被検査体を広範囲にわたって検査することが可能となる。
【0022】
このように本願発明によれば、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を拡げることができるとともに、被検査体を広範囲にわたって検査することができ、しかもこれをコンパクトな構成でかつ探傷システムを複雑化することなく実現することができる。
【0023】
上記構成において、各帯状セグメントを、探傷面と平行に延びるように配置すれば、上記第1帯状セグメント群および上記第2帯状セグメント群から放射される超音波の探傷面への入射位置を、楔状ブロックの斜面の幅方向に関して一致させることができる。そしてこれにより、超音波斜角探触子を楔状ブロックの斜面に沿った前後方向に走査したときの、被検査体の内部欠陥検査を極めて精度良く行うことができる。
【0024】
上記構成において、2種類の帯状セグメント相互間における傾斜角度の差の具体的な値が特に限定されないことは上述したとおりであるが、これを10°以上の値に設定すれば、第1帯状セグメント群から放射される超音波の探傷屈折角と第2帯状セグメント群から放射される超音波の探傷屈折角との差を十分大きくすることができるので、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を十分に確保することができる。
【0025】
上記構成において、振動子を、所定の周波数で振動する第1振動子と、この第1振動子を囲むように配置され、該第1振動子よりも低い周波数で振動する第2振動子とを備えた構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0026】
すなわち、このような構成を採用することにより、周波数が異なる2種類の超音波を被検査体に対して放射することが可能となるが、その際、第1振動子から放射される相対的に高い周波数の超音波により、被検査体の探傷面近傍領域の検査を精度良く行うとともに、第2振動子から放射される相対的に低い周波数の超音波により、被検査体の探傷面から離れた領域の検査を精度良く行うことができる。また、被検査体の端部領域に関しても、両振動子の双方からの超音波を到達させることができるので、その内部欠陥検査を精度良く行うことができる。
【0027】
しかも、第2振動子は第1振動子を囲むように配置されているので、これらを略同心で配置することができ、これにより両振動子から放射される超音波の探傷面への入射位置を略一致させることができる。このため、被検査体の内部欠陥検査を精度良く行うことができる。
【0028】
さらに、第1振動子よりも低い周波数で超音波を放射する第2振動子は、第1振動子よりも大きいサイズで構成することが好ましいが、この第2振動子は第1振動子を囲むように配置されているので、容易にこれを実現することができる。
【0029】
このようにした場合において、第1振動子の外形形状と第2振動子の外形形状とを略相似形に設定すれば、両振動子から放射される超音波の探傷面への入射位置の一致度を高めることができ、これにより被検査体をより精度良く検査することができる。
【0030】
また、このようにした場合において、第1振動子を、第2振動子よりも薄肉で構成すれば、これを第2振動子よりも高い周波数で超音波を放射する構成とすることが容易に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本願発明の一実施形態に係る超音波斜角探触子10を示す側断面図であり、図2は、その平断面図である。
【0033】
これらの図に示すように、本実施形態に係る超音波斜角探触子10は、アクリル樹脂等からなる楔状ブロック12の斜面12aに、振動子14が載置固定されてなり、鋼板等の被検査体2の探傷面2aに対して斜めにパルス状の超音波を入射させるとともに、そのエコーを受信するようになっている。
【0034】
振動子14は、所定の周波数(例えば2MHz)で超音波を放射する12本の帯状セグメント14s1、14s2に分割されている。これら各帯状セグメント14s1、14s2は、いずれも長さ20mm程度、幅2mm程度、厚さ1mm程度の帯板状に形成された圧電体セラミックスの両面に電極膜が形成されてなり、その長尺方向が探傷面2aと平行に延びるように配置されている。
【0035】
これら12本の帯状セグメント14s1、14s2は、探傷面2aに対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント14s1、14s2を1本ずつ交互に配置することにより構成されている。
【0036】
すなわち、12本の帯状セグメント14s1、14s2のうち6本の帯状セグメント14s1は、これら各帯状セグメント14s1から放射される超音波が探傷面2aから被検査体2に入射する際の探傷屈折角が、所定の設定角度θ1(例えばθ1=50°程度)となるように、探傷面2aに対して傾斜角度αで配置されており、残り6本の帯状セグメント14s2は、これら各帯状セグメント14s2から放射される超音波が探傷面2aから被検査体2に入射する際の探傷屈折角が、探傷屈折角θ1よりもある程度大きい設定角度θ2(例えばθ2=65°程度)となるように、探傷面2aに対して傾斜角度αよりもある程度大きい(例えば11°程度大きい)傾斜角度βで配置されている。
【0037】
楔状ブロック12は、その斜面12aの傾斜角度が、上記傾斜角度α、βの平均値に設定されており、また、この斜面12aには、6本の帯状セグメント14s1を傾斜角度αで配置するとともに、6本の帯状セグメント14s2を傾斜角度βで配置するための複数の凹部が形成されている。その際、12本の帯状セグメント14s1、14s2は、互いに接触してしまわないよう、微小な隙間をおいて配置されている。
【0038】
これら12本の帯状セグメント14s1、14s2は、楔状ブロック12と共に金属ケース16内に収容されている。その際、楔状ブロック12は、その斜面12aと対向する超音波出射面12bを金属ケース16から露出させるようにして収容されている。そして、この金属ケース16内における、楔状ブロック12のもう1つの斜面と、金属ケース16の周面壁との間には、吸音材18が収容されている。また、この金属ケース16の上部コーナ部に形成された開口部16aには、コネクタ20が装着されており、このコネクタ20には、各帯状セグメント14s1、14s2の両面の各電極から延びるリード線22が接続されている。
【0039】
図3は、本実施形態に係る超音波斜角探触子10を用いて、被検査体2の内部欠陥を検査する際の様子を示す側断面図である。
【0040】
同図に示すように、超音波斜角探触子10を被検査体2の探傷面2aに沿って走査しながら、この超音波斜角探触子10から被検査体2へ向けて斜めに超音波を放射し、そのエコーを解析手段(図示せず)を用いて解析することにより、被検査体2の内部欠陥の検査を行うようになっている。
【0041】
この超音波斜角探触子10から放射される超音波のうち、傾斜角度αで配置された6本の帯状セグメント14s1から放射される超音波は、探傷面2aから被検査体2に入射して、この被検査体2の内部を探傷屈折角θ1で進行し、一方、傾斜角度βで配置された6本の帯状セグメント14s2から放射される超音波は、探傷面2aから被検査体2に入射して、この被検査体2の内部を探傷屈折角θ2で進行する。
【0042】
ここで、被検査体2が突き合わせ溶接されているものとし、その溶接部4の周辺に、探傷屈折角θ1の方向と直交する平面に略沿って延びる内部欠陥6が存在するものとする。
【0043】
超音波斜角探触子10を被検査体2の探傷面2aに沿って図示矢印の方向へ走査すると、まず、6本の帯状セグメント14s2から放射された超音波が内部欠陥6に到達する。この超音波は探傷屈折角θ2で進行するので、探傷屈折角θ1の方向と直交する平面に略沿って延びる内部欠陥6からは明瞭なエコーが得られない。
【0044】
超音波斜角探触子10をさらに図示矢印の方向へ走査すると、6本の帯状セグメント14s1から放射された超音波が内部欠陥6に到達する。この超音波は探傷屈折角θ1で進行するので、探傷屈折角θ1の方向と直交する平面に略沿って延びる内部欠陥6から明瞭なエコーが得られる。そして、この内部欠陥6からのエコーが6本の帯状セグメント14s1に戻り、内部欠陥6の存在および位置が容易に検出される。
【0045】
同様に、被検査体2に探傷屈折角θ2の方向と直交する平面に略沿って延びる内部欠陥(図示せず)が存在する場合には、6本の帯状セグメント14s1から放射された超音波では内部欠陥からの明瞭なエコーは得られないが、6本の帯状セグメント14s2から放射された超音波により上記内部欠陥からの明瞭なエコーが得られるので、その存在および位置が容易に検出される。
【0046】
図示矢印の方向への走査が完了したら、超音波斜角探触子10をその幅方向へ多少ずらして、図示矢印とは反対方向へ走査し、これが完了したら、超音波斜角探触子10をその幅方向へ多少ずらして、再び図示矢印の方向への走査する。そしてこのようにして、被検査体2の探傷面2aの全域にわたって超音波斜角探触子10の走査を行う。
【0047】
以上詳述したように、本実施形態に係る超音波斜角探触子10は、楔状ブロック12の斜面12aに振動子14が載置固定された構成となっているが、この振動子14は12本の帯状セグメント14s1、14s2に分割されており、そして、これら12本の帯状セグメント14s1、14s2は、被検査体2の探傷面2aに対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント14s1、14s2を1本ずつ交互に配置することにより構成されているので、被検査体2に入射する際の探傷屈折角が異なる2種類の超音波を放射することができる。
【0048】
このため、内部欠陥に対して超音波を2つの異なる角度で到達させることができ、これにより内部欠陥からの明瞭なエコーを得やすくして、内部欠陥の検出を容易化することができる。
【0049】
その際、振動子14は傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント14s1、14s2が1本ずつ交互に配置された構成となっているので、振動子14の大きさを、従来の単一の方向を向いた振動子14と略同じ大きさに維持したままで、探傷屈折角が異なる2種類の超音波を放射させることが可能となり、これにより超音波斜角探触子10をコンパクトに構成することができる。
【0050】
そして、このように超音波斜角探触子10をコンパクトに構成することができるので、これを被検査体2の探傷面2aの隅々まで超音波斜角探触子10を走査することができ、これにより被検査体を広範囲にわたって検査することができる。
【0051】
しかも、振動子14は可動式ではないので、探傷システムを複雑化させてしまうことなく、上記作用効果を得ることができる。
【0052】
このように本実施形態に係る超音波斜角探触子10を用いることにより、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を拡げることができるとともに、被検査体2を広範囲にわたって検査することができ、しかもこれをコンパクトな構成でかつ探傷システムを複雑化することなく実現することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る超音波斜角探触子10は、各帯状セグメント14s1、14s2が、探傷面2aと平行に延びるように配置されているので、6本の帯状セグメント14s1および6本の帯状セグメント14s2から放射される超音波の探傷面2aへの入射位置を、楔状ブロック12の斜面12aの幅方向(すなわち図示矢印方向と直交する方向)に関して一致させることができる。そしてこれにより、超音波斜角探触子10を楔状ブロック12の斜面12aに沿った前後方向(すなわち図示矢印に沿った方向)に走査したときの、被検査体2の内部欠陥検査を極めて精度良く行うことができる。
【0054】
さらに、本実施形態において例示したように、2種類の帯状セグメント14s1、14s2相互間における傾斜角度の差(β−α)を11°程度の値に設定し、その探傷屈折角の差(θ2−θ1)が15°程度になるようにすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0055】
すなわち、内部欠陥の向きが、探傷屈折角と直交する平面に対して±10°程度以下の角度範囲内であれば、内部欠陥からの明瞭なエコーを振動子14へ戻すことが可能であるが、その際、探傷屈折角の差を15°程度になるようにしておけば、検査可能な内部欠陥の向きを35°程度の角度範囲まで拡げることができる。
【0056】
次に、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0057】
図4は、本変形例に係る超音波斜角探触子110を示す側断面図である。
【0058】
同図に示すように、本変形例に係る超音波斜角探触子110は、その基本的な構成は、上記実施形態に係る超音波斜角探触子10と同様であるが、その振動子114の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0059】
すなわち、本変形例の振動子114は、上記実施形態の振動子14と同様、12本の帯状セグメント114s1、114s2に分割されているが、これら各帯状セグメント114s1、114s2は、その長尺方向が、探傷面2aと平行ではなく、楔状ブロック12の斜面12aの傾斜方向に延びるように配置されている。
【0060】
そして、これら12本の帯状セグメント114s1、114s2は、上記実施形態の帯状セグメント14s1、14s2と同様、6本の帯状セグメント114s1については、これら各帯状セグメン114s1から放射される超音波が探傷面2aから被検査体2に入射する際の探傷屈折角が、所定の設定角度θ1(例えばθ1=50°程度)となるように、探傷面2aに対して傾斜角度αで配置されており、残り6本の帯状セグメント114s1は、これら各帯状セグメント114s2から放射される超音波が探傷面2aから被検査体2に入射する際の探傷屈折角が、探傷屈折角θ1よりもある程度大きい設定角度θ2(例えばθ2=65°程度)となるように、探傷面2aに対して傾斜角度αよりもある程度大きい(例えば11°程度大きい)傾斜角度βで配置されている。
【0061】
本変形例に係る超音波斜角探触子110を採用した場合においても、検出可能な内部欠陥の向きの角度範囲を拡げることができるとともに、被検査体2を広範囲にわたって検査することができ、しかもこれをコンパクトな構成でかつ探傷システムを複雑化することなく実現することができる。
【0062】
ただし、本変形例に係る超音波斜角探触子110においては、各帯状セグメント114s1、114s2が、上記実施形態の各帯状セグメント14s1、14s2と直交する方向に延びているので、6本の帯状セグメント114s1および6本の帯状セグメント114s2から放射される超音波の探傷面2aへの入射位置が、帯状セグメント半幅分だけ、楔状ブロック12の斜面12aの幅方向にずれてしまうこととなる。
【0063】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0064】
図5は、本変形例に係る超音波斜角探触子210を示す側断面図であり、図6は、その平断面図である。
【0065】
これらの図に示すように、本変形例に係る超音波斜角探触子210は、その基本的な構成は、上記実施形態に係る超音波斜角探触子10と同様であるが、振動子214の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0066】
すなわち、本変形例の振動子214は、比較的高い周波数(例えば5MHz)で超音波を放射する第1振動子214Aと、この第1振動子214Aを囲むように配置され、該第1振動子214Aよりも低い周波数(例えば2MHz)で超音波を放射する第2振動子214Bとからなっている。
【0067】
第1振動子214Aは、複数の帯状セグメント214As1、214As2に分割されており、また、第2振動子214Bは、複数の帯状セグメント214Bs1、214Bs2に分割されている。その際、各帯状セグメント214As1、214As2は、いずれも幅1mm程度、厚さ0.5mm程度の帯板状に形成されており、その長尺方向が探傷面2aと平行に延びるように配置されている。また、各帯状セグメント214Bs1、214Bs2は、いずれも幅2mm程度、厚さ1mm程度の帯板状に形成されており、その長尺方向が探傷面2aと平行に延びるように配置されている。
【0068】
第1振動子214Aを構成する複数の帯状セグメント214As1、214As2は、探傷面2aに対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント214As1、214As2を1本ずつ交互に配置することにより構成されている。
【0069】
すなわち、これら複数の帯状セグメント214As1、214As2のうち、半数の帯状セグメント214As1は、該帯状セグメント214As1から放射される超音波が探傷面2aから被検査体2に入射する際の探傷屈折角が、所定の設定角度θ1(例えばθ1=50°程度)となるように、探傷面2aに対して傾斜角度αで配置されており、残りの半数の帯状セグメント214As2は、該帯状セグメント214As2から放射される超音波が探傷面2aから被検査体2に入射する際の探傷屈折角が、探傷屈折角θ1よりもある程度大きい設定角度θ2(例えばθ2=65°程度)となるように、探傷面2aに対して傾斜角度αよりもある程度大きい(例えば11°程度大きい)傾斜角度βで配置されている。
【0070】
また、第2振動子214Bを構成する複数の帯状セグメント214Bs1、214Bs2も、探傷面2aに対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント214Bs1、214Bs2を1本ずつ交互に配置することにより構成されている。
【0071】
すなわち、これら複数の帯状セグメント214Bs1、214Bs2のうち、半数の帯状セグメント214Bs1は、該帯状セグメント214Bs1から放射される超音波の探傷屈折角が上記設定角度θ1となるように、探傷面2aに対して傾斜角度αで配置されており、残りの半数の帯状セグメント214Bs2は、該帯状セグメント214Bs2から放射される超音波の探傷屈折角が上記設定角度θ2となるように、探傷面2aに対して傾斜角度βで配置されている。
【0072】
楔状ブロック12の斜面12aには、複数の帯状セグメント214As1および214Bs1を傾斜角度αで配置するとともに、複数の帯状セグメント214As2および214Bs2を傾斜角度βで配置するための複数の凹部が形成されている。
【0073】
第2振動子214Bには、第1振動子214Aよりもひと回り大きい正方形の内周開口部214Baが形成されており、これにより第1振動子214Aと第2振動子214Bとの間に1mm程度の隙間が全周にわたって形成されるようになっている。また、複数の帯状セグメント214As1、214As2および214Bs1、214Bs2は、互いに接触してしまわないよう、微小な隙間をおいて配置されている。
【0074】
図7は、本変形例に係る超音波斜角探触子210を用いて、被検査体2の内部欠陥を検査する際の様子を示す側断面図である。
【0075】
同図に示すように、超音波斜角探触子210から被検査体2へ向けて斜めに超音波を放射させながら、この超音波斜角探触子210を被検査体2の探傷面2aに沿って走査し、そのエコーを解析することにより内部欠陥の検査を行うようになっている。
【0076】
この超音波斜角探触子210から放射された超音波のうち、第1振動子214Aの半数を構成する帯状セグメント214As1および第2振動子214Bの半数を構成する複数の帯状セグメント214Bs1は、探傷面2aから被検査体2に入射して、この被検査体2の内部を探傷屈折角θ1で進行し、また、第1振動子214Aの半数を構成する帯状セグメント214As2および第2振動子214Bの半数を構成する複数の帯状セグメント214Bs2は、探傷面2aから被検査体2に入射して、この被検査体2の内部を探傷屈折角θ2で進行する。
【0077】
その際、第1振動子214Aから放射される超音波は、第2振動子214Bから放射される超音波よりも周波数が高いので、第1振動子214Aの適正検査領域Aaは、被検査体2の探傷面2a近傍領域に形成され、第2振動子214Bの適正検査領域Abは、被検査体2の探傷面2aから離れた位置に形成される。
【0078】
したがって、本変形例に係る超音波斜角探触子210を採用することにより、第1振動子214Aから放射される相対的に高い周波数の超音波により、被検査体2の探傷面2a近傍領域の検査を精度良く行うとともに、第2振動子214Bから放射される相対的に低い周波数の超音波により、被検査体2の探傷面2aから離れた領域の検査を精度良く行うことができる。また、被検査体2の端部領域に関しても、両振動子214A、214Bの双方からの超音波を到達させてその内部欠陥検査を行うことができる。
【0079】
しかも、第1振動子214Aを構成する複数の帯状セグメント214As1、214As2は、探傷面2aに対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント214As1、214As2を1本ずつ交互に配置することにより構成されているので、被検査体2に入射する際の探傷屈折角が異なる2種類の超音波を放射することができる。このため、内部欠陥に対して超音波を2つの異なる角度で到達させることができ、これにより内部欠陥からの明瞭なエコーを得やすくして、内部欠陥の検出を容易化することができる。
【0080】
また、第2振動子214Bを構成する複数の帯状セグメント214Bs1、214Bs2も、探傷面2aに対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメント214Bs1、214Bs2を1本ずつ交互に配置することにより構成されているので、被検査体2に入射する際の探傷屈折角が異なる2種類の超音波を放射することができる。このため、内部欠陥に対して超音波を2つの異なる角度で到達させることができ、これにより内部欠陥からの明瞭なエコーを得やすくして、内部欠陥の検出を容易化することができる。
【0081】
上記実施形態および各変形例においては、説明の便宜上、コネクタ20が単一のコネクタピンを備えているものとして図示したが、各帯状セグメント14s1の両面の各電極から延びるリード線22用のコネクタピンと、各帯状セグメント14s2の両面の各電極から延びるリード線22用のコネクタピンとを備えた構成とすることも可能である。
【0082】
また、上記実施形態および各変形例においては、超音波探触子10、110、210を、1つの超音波探触子で超音波の送受信を行う一探触子法に適用する場合について説明したが、これら超音波探触子10、110、210を、超音波の送信と受信とを別々の超音波探触子で行う二探触子法に適用することも可能である。
【0083】
なお、上記実施形態および各変形例において、超音波斜角探触子10、110、210の諸元を示す数値は、あくまでも例示的なものであり、これ以外の値に設定されていてもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本願発明の一実施形態に係る超音波斜角探触子を示す側断面図
【図2】上記超音波斜角探触子を示す平断面図
【図3】上記超音波斜角探触子を用いて、被検査体の内部欠陥を検査する際の様子を示す側断面図
【図4】上記実施形態の第1変形例に係る超音波斜角探触子を示す側断面図
【図5】上記実施形態の第2変形例に係る超音波斜角探触子を示す側断面図
【図6】上記第2変形例に係る超音波斜角探触子を示す平断面図
【図7】上記第2変形例に係る超音波斜角探触子を用いて、被検査体の内部欠陥を検査する際の様子を示す側断面図
【符号の説明】
【0085】
2 被検査体
2a 探傷面
4 溶接部
6 内部欠陥
10、110、210 超音波斜角探触子
12 楔状ブロック
12a 斜面
12b 超音波出射面
14、114、214 振動子
14s1、14s2、114s1、114s2、214As1、214As2、214Bs1、214Bs2 帯状セグメント
16 金属ケース
16a 開口部
18 吸音材
20 コネクタ
22 リード線
214A 第1振動子
214B 第2振動子
214Ba 内周開口部
Aa、Ab 適正検査領域
α、β 傾斜角度
θ1、θ2 探傷屈折角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楔状ブロックの斜面に振動子が載置固定されてなり、被検査体の探傷面に対して斜めに超音波を入射させるように構成された超音波斜角探触子において、
上記振動子が、複数の帯状セグメントに分割されており、
これら複数の帯状セグメントが、上記探傷面に対する傾斜角度が異なる2種類の帯状セグメントを1本ずつ交互に配置することにより構成されている、ことを特徴とする超音波斜角探触子。
【請求項2】
上記各帯状セグメントが、上記探傷面と平行に延びるように配置されている、ことを特徴とする請求項1記載の超音波斜角探触子。
【請求項3】
上記2種類の帯状セグメント相互間における傾斜角度の差が、10°以上の値に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の超音波斜角探触子。
【請求項4】
上記振動子が、所定の周波数で振動する第1振動子と、この第1振動子を囲むように配置され、該第1振動子よりも低い周波数で振動する第2振動子とを備えてなる、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の超音波斜角探触子。
【請求項5】
上記第1振動子の外形形状と上記第2振動子の外形形状とが、略相似形に設定されている、ことを特徴とする請求項4記載の超音波斜角探触子。
【請求項6】
上記第1振動子が、上記第2振動子よりも薄肉で構成されている、ことを特徴とする請求項4または5記載の超音波斜角探触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−132789(P2007−132789A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325919(P2005−325919)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(300057528)株式会社ジャスト研究所 (1)
【Fターム(参考)】