説明

超音波診断装置および画像処理装置

【課題】錯視の影響を低減させて診断画像の輝度コントラストの視認性を向上させることが可能な画像処理機能を備えた超音波診断装置および画像処理装置である。
【解決手段】超音波診断装置1は、被検体に超音波を送信して得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の断層像を輝度表示するための画像データを生成する手段9と、前記画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち互いに異なる一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を変更して新たな複数の輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段22と、輝度スケール変更手段22により生成された各輝度スケールに従ってそれぞれ前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段23と、再構成処理後の各画像データを表示させる時間、順序を設定する表示色変更条件設定手段24と、指定された順序で指定された時間だけ表示されるように各画像データを順次表示手段5に与えて表示させる画像合成回路10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に照射した超音波のエコー信号に基づき、被検体の断層像を映像化する超音波診断装置に係り、特に断層像のコントラスト視認性を向上させる画像処理機能を備えた超音波診断装置および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子をリアルタイム表示で得ることが可能な診断である。また、超音波診断は、X線を用いた診断のように被曝の影響がなく、安全性が高いため繰り返して検査が行える。このため、超音波診断装置は産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
さらに、超音波診断装置の規模は、X線CT装置やMRIといった他の画像診断装置に比べて小さく、ベッドサイドに移動して容易に検査を行なうことができる装置も開発されている。また、超音波診断装置に備えられる機能の種類によって異なるが、特に小型の装置としては、片手で持ち運べる程度の大きさの装置が開発されている。
【0004】
近年、このような超音波診断において、静脈投与型の超音波造影剤が製品化され、造影エコー法が行われるようになってきている。この造影エコー法は、例えば、心臓および肝臓などの検査で静脈から超音波造影剤を注入して血流信号を増強し、血流動態の評価を行う手法である。造影剤の多くは微小気泡(マイクロバブル)が反射源として機能させたものである。
【0005】
このような超音波造影剤を用いた検査によれば、従来の技術として用いられる超音波ドプラ法に比べても、非常に微細な血管構造を映像化することが可能となる。この造影エコー法により得られたレベルの詳細な血流情報は、血管の短絡、再生結節の進行度、びまん性肝疾患、肝ガンの鑑別診断等の各種診断に対する重要な情報となることが期待されている。
【0006】
超音波診断の最も基本的な使われ方は、得られた断層像から体内臓器の形態や動きを観察するというものである。また別の重要な使われ方は、断層像に表現されている輝度の度合い(輝度コントラスト比)を比較し、そこから診断情報を得るというものである。これらの超音波診断の手法は、通常のBモードでの診断の際にはもちろん、近年の造影エコー法でも用いられ、断層像の観察や輝度コントラスト比の比較は、ますます重要な診断の要素となってきている。
【0007】
例えば、1枚の断層像を輝度コントラスト比の比較により診断する場合、造影剤によって増加したエコー信号の輝度を、腫瘍等の疾病部と、正常な実質部とで比較すれば、その領域に供給される血液量の大小が分かるため、血液量の大小から着目する部位の悪性度を診断することができる。
【0008】
また別の例として、時間的に変化する動画像において、腫瘍部の輝度の時間的変化を把握することにより、腫瘍部に流入ないし流出する血流の特徴が判り、輝度の時間的な変化のパターンから疾病を特定することが可能となる。
【0009】
一方、上述のような超音波診断装置の他、X線CT装置やMRI等の画像診断装置についても、診断の際における断層像の視認性が共通する重要な要素であることから、断層像の視認性を向上させた技術が提案される(例えば特許文献1参照)。この技術は、X線CT画像等の断層像を画素値の差異により背景部分と関心領域とに分け、背景部分に低輝度の輝度諧調を、関心領域には高輝度の輝度諧調を割り当てることにより、関心領域と背景とが明確に区別できるようにしたものである。さらに、関心領域と背景部分とを分ける際に閾値として参照される画素値を変更できるように工夫されている。
【特許文献1】特開平8−7074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
超音波診断装置においては、上述のように、輝度コントラスト比を改善することが重要な課題となる。この輝度コントラスト比を改善するためには、装置のS/N比といった基本性能を向上させることが必要となるが、このような装置の基本性能に起因するものの他に、人間の感覚がもたらす錯覚(いわゆる「錯視」)が輝度コントラスト比に対して問題となる場合がある。
【0011】
図14は、輝度コントラスト比の判断に際し、錯視が問題となる場合の例を説明する概念図である。
【0012】
図14(a)には、実写画像の例を示し、図14(b)にはイラスト画像を示す。図14(a)(b)は、いずれも画面中央に縦長の関心領域Rを有する診断画像の模式図である。図14において、関心領域Rは単一の輝度を有するが、背景Bは場所によって輝度が変化している。このため、背景Bの輝度の影響により関心領域Rの輝度レベルが場所により、図14においては上下により異なって感じられる。このように実際の輝度レベルと異なる輝度レベルとして感じられるのは、人間の錯視によるものである。
【0013】
動画の場合にも静止画と同様に錯視による影響を受ける。例えば、関心領域の輝度レベルが時間的に一定である場合に、関心領域の周囲における背景の輝度が徐々に明るくなるように変化すると、関心領域の輝度は暗く変化していくように見えることとなる。
【0014】
このように錯視が起こることによって診断情報が適切に認識されない危険性があり、誤診に繋がる恐れがある。誤診を防ぐためには錯視は回避しなければならない現象である。
【0015】
しかし、従来の視認性向上技術では、単に関心領域と背景との輝度を変えるのみであり、錯視については考慮されていない。この結果、錯視を回避するための対策は全く施されておらず、前述のように背景の輝度が時間的に変化する場合や、背景の輝度が場所により異なるような場合には、錯視は依然として起こり、誤診を招く恐れがある。
【0016】
一方、従来の錯視に対する解決手法として、関心領域の輝度レベルを数値化、ヒストグラム表示あるいはグラフ表示し、数値化、ヒストグラム表示あるいはグラフ表示された輝度レベルを診断の際に参照する手法が考えられている。
【0017】
しかし、この輝度レベルを数値化等する手法では、診断画像全体を観測することが困難となる。また、ヒストグラムには、関心領域の平均値等の値が使われるため、診断画像と密に関連した微細な変化を観察する場合には適していない。
【0018】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、錯視の影響を低減させて診断画像の輝度コントラストの視認性を向上させることが可能な画像処理機能を備えた超音波診断装置および画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る超音波診断装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、被検体に超音波を送信して得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の断層像を輝度表示するための画像データを生成する手段と、前記画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち互いに異なる一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を変更して新たな複数の輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された各輝度スケールに従ってそれぞれ前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により生成された再構成処理後の各画像データを表示させる時間を表示時間情報として、表示させる順序を表示順序情報としてそれぞれ設定する表示色変更条件設定手段と、前記表示順序情報で指定された順序で前記表示時間情報で指定された時間だけ表示されるように各画像データを順次表示手段に与えて表示させる画像合成回路とを有することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係る超音波診断装置は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、被検体に複数回超音波を送信してそれぞれ得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するための複数の時系列の画像データを生成する手段と、前記複数の時系列の画像データの空間的に対応する位置の輝度レベルを最大値に保持する最大輝度レベル保持演算を施す画像生成回路と、前記最大輝度レベル保持演算後における各画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、最大輝度レベル保持演算が施されない前記複数の時系列の画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを表示手段に与えて重畳表示させる画像合成回路とを有することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係る超音波診断装置は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、被検体に複数回超音波を送信してそれぞれ得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するための複数の時系列の画像データを生成する手段と、入力装置から入力されたタイミング指定情報を受け取って時刻情報を生成するタイミング設定手段と、前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻の前記画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻以降の複数の時系列の前記画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを表示手段に与えて重畳表示させる画像合成回路とを有することを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明に係る超音波診断装置は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、被検体に超音波を送信して得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の断層像を輝度表示するための画像データを生成する手段と、前記画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち背景色の一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を錯視の影響が低減されるような色彩または色調に変更して新たな輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された輝度スケールに従って前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により生成された再構成処理後の前記画像データを表示手段に与えて表示させる画像合成回路とを有することを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係る画像処理装置は、上述の目的を達成するために、請求項8に記載したように、被検体の断層像を輝度表示するために生成された画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち互いに異なる一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を変更して新たな複数の輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された各輝度スケールに従ってそれぞれ前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により生成された再構成処理後の各画像データを表示させる時間を表示時間情報として、表示させる順序を表示順序情報としてそれぞれ設定する表示色変更条件設定手段とを有することを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明に係る画像処理装置は、上述の目的を達成するために、請求項9に記載したように、被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するために生成された複数の時系列の画像データに対し、空間的に対応する位置の輝度レベルを最大値に保持する最大輝度レベル保持演算を施す画像生成回路と、前記最大輝度レベル保持演算後における各画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、最大輝度レベル保持演算が施されない前記複数の時系列の画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを重畳表示できるように合成する画像合成回路とを有することを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明に係る画像処理装置は、上述の目的を達成するために、請求項10に記載したように、入力装置から入力されたタイミング指定情報を受け取って時刻情報を生成するタイミング設定手段と、被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するために生成された複数の時系列の画像データのうち前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻の前記画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻以降の複数の時系列の前記画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを重畳表示できるように合成する画像合成回路とを有することを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明に係る画像処理装置は、上述の目的を達成するために、請求項11に記載したように、被検体の断層像を輝度表示するために生成された画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち背景色の一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を錯視の影響が低減されるような色彩または色調に変更して新たな輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された輝度スケールに従って前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る超音波診断装置および画像処理装置においては、錯視の影響を低減させて診断画像の輝度コントラストの視認性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る超音波診断装置および画像処理装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1は本発明に係る超音波診断装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【0030】
超音波診断装置1は、装置本体2に超音波プローブ3、入力装置4、表示手段としてのモニタ5を接続して構成される。装置本体2には、送受信ユニット6、Bモード処理ユニット7、ドプラ処理ユニット8、画像生成回路9、画像合成回路10、制御プロセッサ11、画像メモリ12、内部記憶装置13、インターフェース部14が備えられる。装置本体2に内蔵される超音波送受信ユニット6等の構成要素は、集積回路等のハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムにより構築してもよい。
【0031】
超音波プローブ3は、超音波送受信ユニット6からの駆動信号に基づき超音波を被検体Pに向けて発生し、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材を有している。
【0032】
超音波プローブ3から被検体Pに超音波が送信されると、送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面において次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ3に受信される。このエコー信号の振幅は、超音波が反射する不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の器官の表面において反射して得られたエコー信号は、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数の偏移を受ける。
【0033】
入力装置4は、装置本体2に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等の情報を装置本体2にとりこむためのトラックボール4a、各種スイッチ4bを有している。
【0034】
モニタ5は、画像合成回路10からのビデオ信号を受けて、生体内の形態学的情報や、血流情報等の情報を画像として表示させる機能を有する。
【0035】
送受信ユニット6は、超音波送信側の構成要素として通常備えられる図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路を有している。パルサ回路は、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生させる機能を備え、発生したレートパルスは遅延回路に与えられる。遅延回路は、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を、パルサ回路から受けた各レートパルスに与える機能を有する。遅延時間が与えられたレートパルスは、遅延回路からトリガ発生回路に与えられる。トリガ発生回路は、遅延回路から受けたレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ3に駆動パルスを印加する機能を有する。
【0036】
尚、送受信ユニット6は、スキャンシーケンスを実行するために制御プロセッサ11からの制御信号に従って送信周波数や送信駆動電圧といった超音波の送信条件を瞬時に変更させる機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替えることが可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0037】
また、送受信ユニット6は、超音波受信側の構成要素として通常備えられる図示しないアンプ回路、A/D変換器、加算器を有している。アンプ回路は、超音波プローブ3を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する機能と、増幅したエコー信号をA/D変換器に与える機能とを有する。A/D変換器は、アンプ回路により増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えて加算器に与える機能を有する。また、加算器は、A/D変換器から受けたエコー信号に対して加算処理を行う機能を有する。
【0038】
この加算器によるエコー信号の加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0039】
Bモード処理ユニット7は、送受信ユニット6からエコー信号を受け取り、信号対ノイズ比(S/N比)を最適にするような受信フィルタ等の各種処理を施して、診断画像に必要な信号を抽出する機能を有する。尚、近年、送信超音波に対して2倍の高調波成分を抽出し映像化するティッシュハーモニック映像法が採用されているが、この高調波信号の抽出も、Bモード処理ユニット7で行われる。さらに、Bモード処理ユニット7は、診断画像に必要な信号を抽出に引き続いて抽出した信号に対して対数増幅処理、包絡線検波処理等の処理を施し、信号強度を輝度で表現可能な、すなわち輝度表示可能なデータを生成する機能を有する。
【0040】
ドプラ処理ユニット8は、送受信ユニット6から受け取ったエコー信号の周波数解析により速度情報を取得する機能、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分をエコー信号から抽出して平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める機能を有する。
【0041】
Bモード処理ユニット7およびドプラ処理ユニット8によりそれぞれ生成された情報は、Bモード画像情報およびドプラ画像情報として画像生成回路9に送信される。画像生成回路9は、例えば複数の画像の加算平均を施す時間スムージング処理や空間的に微分処理を施すエッジ抽出処理等の画像処理を施す、いわゆるポストプロセッサとしての役割を担い、ユーザの好みに応じた画像を生成する機能を有する。ドプラ画像に関しては、画像生成回路9において、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像が生成される。
【0042】
制御プロセッサ11は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、各種プログラムを実行することにより装置本体2の動作を制御する制御手段である。
【0043】
画像メモリ12は、画像生成回路9において生成された画像情報を受信して画像データとして格納する記憶メモリである。画像メモリ12に記憶される画像データは、必要に応じて制御プロセッサ11に画像処理プログラムが読み込まれて動作することにより画像再構成処理が施される。そして、画像再構成処理が施されて再構成された画像データは、例えば診断の後にユーザが入力装置4の操作により画像メモリ12から画像合成回路10に呼び出すことが可能である。
【0044】
画像生成回路9からの出力あるいは画像メモリ12から読み込まれた画像データは、画像合成回路10に送られる。画像合成回路10は、一般的には、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する機能を有する。また画像合成回路10により生成された超音波診断画像は、診断に必要なパラメータ数値、時間情報、患者名などの情報と合成され、モニタ5に表示される。そして、画像再構成処理後における被検体Pの組織形状を表す断層像等の画像データを、パラメータ数値等の情報とともにモニタ5に静止画的に、あるいは複数の二次元的な画像データを使って動画的に再生することが可能である。
【0045】
インターフェース部14は、入力装置4、ネットワーク15、図示しない外部記憶装置と装置本体2との間において情報を送受信させるインターフェースである。
【0046】
内部記憶装置13には、スキャンシーケンス、画像再構成処理を始めとする各種動作や処理を実行するための制御プログラムおよび画像処理プログラムや、患者IDや医師の所見等の診断情報、診断プロトコル、送受信条件等の超音波スキャンに必要な各種情報が保管されている。また、必要に応じて、内部記憶装置13は画像メモリ12に記憶された画像データの保管用にも使用される。内部記憶装置13に保管された各種情報は、インターフェース回路29およびネットワーク15を経由して図示しない外部周辺装置に転送することが可能である。
【0047】
このような構成の超音波診断装置1の超音波プローブ3、送受信ユニット6、制御プロセッサ11、内部記憶装置13に格納された各種制御プログラム、Bモード処理ユニット7あるいはドプラ処理ユニット8、画像生成回路9等の各構成要素により、超音波診断装置1には、被検体Pに超音波を送信して得られたエコー信号の信号強度に基づいて被検体Pの断層像を輝度表示するための画像データを生成する手段としての機能が備えられる。
【0048】
さらに超音波診断装置1の制御プロセッサ11には、内部記憶装置13に格納された画像処理プログラムが読み込まれて画像処理装置が構築される。この画像処理装置は装置本体2に内蔵せずに、超音波診断装置1の外部に設けてもよい。
【0049】
図2は図1に示す超音波診断装置1の装置本体2に内蔵される画像処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0050】
画像処理装置20は、輝度スケール情報表示手段21、輝度スケール変更手段22、画像再構成手段23および表示色変更条件設定手段24を備える。そして、画像処理装置20は、輝度表示可能な画像データのうち、輝度レベルが同一あるいは一定の範囲内である領域の表示色を予め指定した変更色に指定した時間だけ変更して表示し、かつ表示色を変更する領域が指定時間経過後に変わるように画像処理を施す機能を有する。
【0051】
輝度スケール情報表示手段21は、画像メモリ12に記憶された画像データをモニタ5に輝度表示させる際に、輝度スケールを表す画像を別途モニタ5に表示させるための輝度スケール情報を作成して画像メモリ12に書き込む機能を有する。
【0052】
輝度スケール変更手段22は、画像メモリ12に記憶された画像データをモニタ5に輝度表示させる際に用いられる輝度スケールのうち、一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の一方または双方を予め指定された色彩および色調に変更する機能を有する。すなわち、輝度スケール変更手段22は、輝度スケールの一部の輝度レベルの表示色を予め指定された変更色に変更する機能を有する。輝度スケールの色彩および色調の変更範囲は、単一の輝度レベルの色彩および色調であっても、所要の範囲内における輝度レベルの色彩および色調であってもよい。また、複数の輝度レベルの色彩および色調を変更することもできる。
【0053】
また、輝度スケール変更手段22は、表示色が変更色に変更される輝度レベルが時間的に変化するように、既に表示色が変更色に変更された輝度レベルの表示色を元の表示色に戻す一方、輝度スケールの別の一部の輝度レベルに相当する表示色を変更色に変更して新たな輝度スケールを繰返し生成するようにされる。このときの輝度スケールの生成の際には、変更条件設定手段から受けた表示順序情報が参照される。
【0054】
画像再構成手段23は、画像メモリ12に記憶された画像データを読み込んで、輝度スケール変更手段22により生成された各輝度スケールに従って、変更条件設定手段から受けた表示時間情報で予め指定された時間だけモニタ5に表示されるように、かつ変更条件設定手段から受けた表示順序情報に従う順序で順次画像データを再構成し、再構成して得られた各画像データを画像メモリ12に書き込む機能を有する。すなわち、画像再構成手段23の画像再構成処理により、画像メモリ12に記憶された画像データの特定の輝度レベル領域の表示色が所要の変更色に所要の順序で変更されて所要の時間だけモニタ5に表示させることが可能となる。
【0055】
また、画像再構成手段23には、再構成して得られた画像データを表示させる時間を指定する表示時間情報、表示色を変更させた各画像データの表示順序を指定する表示順序情報を変更条件設定手段から受けて画像データに付帯させて画像メモリ12に書き込む機能が備えられる。
【0056】
変更条件設定手段は、画像データの表示方法、すなわち輝度レベルが同一あるいは一定の範囲内である領域の表示色として用いる変更色(色彩および色調の一方または双方)、輝度レベルが同一あるいは一定の範囲内である領域を変更色で表示する際における表示時間、変更色により表示させる領域の表示順序やその他変更色による画像データの表示に必要な条件を入力装置4から受け取った情報に従ってパラメータとして設定する機能と、設定した変更色、表示時間、表示順序等のパラメータを輝度スケール情報表示手段21、輝度スケール変更手段22および画像再構成手段23に与える機能を有する。また、必要に応じて、画像データの表示方法を指定するパラメータを設定するための画面情報を生成して画像メモリ12に書き込むことにより、パラメータの設定画面を表示させる機能を有する。
【0057】
また、画像合成回路10には、上記のようにして生成され、画像メモリ12に記憶された画像データを表示順序情報に従う順序で、表示時間情報に従う時間だけ繰返しモニタ14に与えて、画像データを表示させる機能が備えられる。
【0058】
次に超音波診断装置1の作用について説明する。
【0059】
図3は、図1に示す超音波診断装置1により診断画像を表示させる際における流れを示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0060】
まず、ステップS1において、被検体Pに超音波が送受信されてエコー信号が取得され、エコー信号から被検体Pの断層像が生成される。すなわち、送受信ユニット6において遅延時間を伴って生成された複数のレートパルスに基づくタイミングで、それぞれ超音波プローブ3の圧電振動子に駆動パルスが印加される。このため、超音波プローブ3の各圧電振動子から被検体Pに超音波が送信される。被検体Pに送信された送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面において反射し、超音波が反射した不連続面における音響インピーダンスの差に依存する振幅を有するエコー信号として超音波プローブ3において受信される。
【0061】
超音波プローブ3において受信されたエコー信号は、送受信ユニット6のアンプ回路により増幅され、A/D変換器において所要の遅延時間を与えられてデジタル信号に変換される。さらに、デジタル化されたエコー信号は、加算器において加算処理された後、Bモード処理ユニット7に与えられる。
【0062】
次に、Bモード処理ユニット7において、エコー信号に対する受信フィルタ等の各種処理および診断画像として用いる信号の抽出処理が施され、さらに抽出処理により抽出信号に対する対数増幅処理、包絡線検波処理等の処理が施される。そして、Bモード処理ユニット7では、エコー信号の信号強度を輝度で表現可能なデータがBモード画像情報として生成され、画像メモリ12に格納される。
【0063】
一方、必要に応じてドプラ処理ユニット8においてエコー信号の周波数解析が実行されて血流の速度情報等の情報が取得され、さらにドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分の平均速度、分散、パワー等の血流情報が多点について求められる。ドプラ処理ユニット8において得られた血流情報等の情報は、ドプラ画像情報として画像メモリ12に格納される。
【0064】
画像メモリ12に格納されたBモード画像情報は、グレースケールの輝度で表現することができる。例えば、Bモード画像は64階調の輝度で表現される。しかし、64階調のグレースケールの輝度でBモード画像をモニタ5に表示させた場合に、関心領域の輝度が一定であるのに対し、背景の輝度が場所によって異なる場合には、錯視により関心領域の輝度レベルが実際の輝度レベルと異なる輝度レベルとして感じられる場合がある。
【0065】
このような錯視による輝度レベルの誤認の恐れを放置すると誤診に繋がるため、例えばBモード画像に対する錯視の影響を低減させるために、Bモード画像のうち輝度レベルが同一あるいは一定の範囲内である領域の色彩あるいは色調を時間的に変化させてモニタ5に表示させることが可能となるような画像処理が画像処理装置20によりBモード画像に対して施される。ただし、ドプラ画像情報が輝度で表現される場合には、ドプラ画像情報に対して同様の画像処理を施してもよい。
【0066】
そこで、まずステップS2において、ユーザは、Bモード画像の表示色についての表示方法を入力装置4から指定する。Bモード画像の表示方法として指定する事項は、輝度レベルが同一である領域の変更色、輝度レベルが同一である領域を変更色で表示する際における表示時間、変更色により表示させる領域の順序である。
【0067】
変更色は、ユーザが入力装置4を操作することにより、無彩色の他、赤、青といった任意の色彩から選択可能である。また、特定の領域を変更色で表示させる時間は、例えば1秒、2秒といった値を、ユーザが入力装置4を操作することにより選択可能である。さらに、変更色により表示させる領域の表示順序は、例えば輝度レベルがより大きい値を有する領域から輝度レベルがより小さい値を有する領域となる表示順序とする場合(降順)や逆に輝度レベルがより小さい値を有する領域から輝度レベルがより大きい値を有する領域となる表示順序とする場合(昇順)をユーザが入力装置4を操作することにより選択可能である。
【0068】
さらに、変更色を用いて表示させる領域を全ての領域とするか、あるいは輝度レベルが所定の範囲内である領域とするのかを指定することもできる。
【0069】
そして、このような、Bモード画像の表示色の変更条件を指定する変更色、表示時間、表示領域の表示順序等のパラメータを設定するために、表示色変更条件設定手段24により設定画面情報が生成されて画像メモリ12に書き込まれる。そして、パラメータの設定画面情報は画像合成回路10によりモニタ5に与えられて表示される。このため、ユーザは設定画面を参照しながら入力装置4の操作により各パラメータを設定することができる。
【0070】
入力装置4に入力された変更色等のパラメータの設定情報は、表示色変更条件設定手段24に与えられ、表示色変更条件設定手段24は変更色等のパラメータ情報を輝度スケール変更手段22および画像再構成手段23に与える。
【0071】
次に、ユーザは、Bモード画像の表示色を時間的に変化させてモニタ5に表示させることが可能となるような画像処理の開始指令をスイッチ4b等の入力装置4により超音波診断装置1の装置本体2内部に形成された画像処理装置20に与える。
【0072】
そして、ステップS3おいて、画像処理装置20の輝度スケール変更手段22および画像再構成手段23により、表示色変更条件設定手段24から与えられたパラメータ情報に従って、画像データの一部の表示色が一定の時間継続して変更色となって表示されるように、画像メモリ12に保管された画像データの画像処理が開始される。
【0073】
図4は、図2に示す画像処理装置20により画像データの表示色を変更させるための画像処理の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0074】
ここでは、画像データのグレースケールの輝度が64階調で表現されており、ユーザが変更色を「青」に、変更色の表示時間をT秒、変更色で表示させる表示領域の表示順序を「輝度レベルの昇順」と指示した場合の例について説明する。また、輝度階調値を低い順にI,I,・・・,I64とする。
【0075】
まず、ステップS10において、輝度スケール変更手段22は、輝度スケールのうち表示色を変更色に変更すべき輝度諧調値Iを決定する。変更色で表示させる表示領域の表示順序は、輝度レベルの昇順と指示されているため、iに1が代入され、輝度諧調値が最も小さいIの輝度スケールが表示色の変更対象として決定される。
【0076】
次に、ステップS11において、輝度スケール変更手段22は、表示色の変更対象として決定した輝度諧調値Iの輝度スケールの表示色を変更色である青色として新たな輝度スケールを生成する。生成した輝度スケールは、画像再構成手段23に与えられる。
【0077】
次に、ステップS12において、画像再構成手段23は、画像メモリ12から表示対象となる画像データを読み込んで、輝度スケール変更手段22により生成された新たな輝度スケールに基づいて、輝度諧調値がIの領域の表示色が変更色である青色で表示されるように画像データを再構成する。さらに、画像再構成手段23は、表示色変更条件設定手段24から与えられたパラメータ情報であるT/64秒間表示させる旨の表示時間情報および表示順序が「輝度レベルの昇順」となるように生成された表示順序情報を画像データに付帯させて画像メモリ12に書き込む。
【0078】
一方、輝度スケール情報表示手段21は、輝度スケール変更手段22により生成された輝度スケールを画像として別途モニタ5に表示させるための輝度スケール情報を作成して画像メモリ12に書き込む。例えば、この輝度スケール情報は、輝度諧調値Iの部分の色が青色に表示されたバー形式の画像情報とされる。
【0079】
このため、ステップS13において、画像合成回路10により、画像メモリ12に書き込まれた青色の色情報を含む画像データと輝度スケール情報が読み込まれて合成された後、表示時間情報および表示順序情報に従ってモニタ5に与えられる。この結果、表示順序が1番目である輝度諧調値が最も小さいIの領域のみが青色で表示されたグレースケールの被検体Pの断層像がモニタ5にT/64秒間表示される。さらに、被検体Pの断層像の近傍には、輝度諧調値Iの部分の色が青色となった輝度スケールを示すバー形式の画像が表示される。
【0080】
また、必要に応じて画像メモリ12から変更色を用いていない元の画像データが画像合成回路10により読み込まれてモニタ5に与えられ、画像再構成手段23により生成された画像データと並べて並列表示される。
【0081】
次に、ステップS14において、輝度スケール変更手段22は、変更色である青色により表示させる輝度レベルとして、輝度諧調値が次に小さいIの輝度レベルを決定する。すなわち、輝度諧調値をIとしてiに2が代入される。
【0082】
次に、ステップS15において、画像再構成手段23は、変更色を用いた画像データの表示を終了すべき旨の指令が入力装置4から入力されているか否かを判定する。そして、変更色を用いた画像データの表示を継続する場合には、再びステップS11から同様な手順で輝度スケールの輝度諧調値が次に小さいIの領域の表示色が青色とされる一方、元の輝度諧調値Iの輝度レベルの表示色は初期のグレースケールの表示色に戻される。そして、新たに生成された輝度スケールに従って再構成された画像データがT/64秒間だけモニタ5に表示される。その後、輝度諧調値が次に小さいIの輝度レベルが表示色の変更対象として決定される。
【0083】
このような輝度諧調値Iiの異なる輝度レベルの表示色の変更並びにT/64秒間の表示が、ステップS15において、画像再構成手段23が変更色を用いた画像データの表示を終了すべき旨の指令が入力装置4から入力されたと判定するまで表示順序情報で指定された順序で順次繰り返される。このため、輝度諧調値がI64の輝度レベルまで表示色の変更が一巡すると、画像データの表示時間はT秒となる。
【0084】
図5は、図2に示す画像処理装置20による画像処理前後における画像データをモニタ5に表示させた例を示す図である。
【0085】
図5(a)は、表示色を変更色に変更する画像処理を施す前の画像データをモニタ5に表示させた例を示し、図5(b)は、表示色を変更色に変更する画像処理を施した後のある時刻における画像データをモニタ5に表示させた例を示す。
【0086】
図5(a)(b)の画像はモニタ5の表示領域を分割して並べて表示させることもできる。図5(a)に示すように、被検体Pの断層像は、例えば背景Bの輝度が部分ごとに異なる一方、関心領域Rの輝度が一定である。このような断層像の場合には、錯視により関心領域Rの輝度が実施の輝度と異なるように感じられ、関心領域Rの輝度は背景Bの輝度に左右される。
【0087】
一方、図5(b)に示すように背景Bの特定の輝度レベルの表示色を別の色で表示し、かつ一定時間経過後には、当該輝度レベルの表示色を初期の色に戻す一方、別の輝度レベルの表示色を別の色で表示すれば、錯視の影響を低減させることができる。すなわち、同一の輝度レベルの背景部分における色調が時間的に変化するため、例えば関心領域R全体が同一の輝度であるのか、あるいは場所によって輝度レベルに差が生じているのかを容易に弁別することができる。
【0088】
さらに、図4のステップS15において、画像再構成手段23が変更色を用いた画像データの表示を終了すべき旨の指令が入力装置4から入力されたと判定すると、ステップS16において、画像データの画像再構成処理が停止し、元の画像処理前の画像データがモニタ5に与えられて画像データの表示色が初期状態に戻されて表示される。
【0089】
以上のような超音波診断装置1によれば、関心領域の輝度コントラストあるいは輝度変化の度合いを、周囲の輝度あるいは輝度の時間変化によって惑わされることなく、コントラスト視認性を向上させることができる。また、この効果を得るために診断画像の描画性を損なうことがない。したがって、より高い診断情報を得ることが可能となる。
【0090】
尚、コントラストの視認性を向上させるために、例えば輝度スケールを虹色のような多色で作成して診断画像を等高線表示の様式で表示させれば、同一の輝度レベルの部分を把握することができるであろう。しかしながらこのような手法においては、従来の診断画像としての描画性を著しく損ない、結局は有用な診断情報が得られないことも少なくない。
【0091】
また、関心領域の輝度ヒストグラムを計測するなどの定量計測手法によっても輝度の差異を比較することができるが、これも計測モードに遷移するなどの手間が必要であるのみならず、計測は通常局所的に行わねばならないため診断画像全域の把握が困難である。
【0092】
一方、超音波診断装置1によれば、ユーザがスイッチ4b等の入力装置4を操作するだけで、モニタ5に表示された診断画像上の輪郭線が診断画像をスイープしていくように見えるため、従来のBモード画像全体の描画性をほとんど損なわずに、かつ輝度の差異をより明確に知ることができる。
【0093】
尚、超音波診断装置1または画像処理装置20において、画像処理の際に必要な変更色等の3種類のパラメータは全てがユーザによって変更可能としたが、一部のパラメータを固定化してユーザによって変更されないものとしてもよい。
【0094】
また、超音波診断装置1の画像処理装置20により画像処理は、静止画に対して施しのみならず、リアルタイムに表示される動画像について施すことも可能である。
【0095】
さらに、画像処理の際の表示色の変更対象となる輝度レベルIは、単一の輝度レベルはIのみでなくてもよく、例えばある特定のIを基準とする一定範囲内の輝度レベルIi−mからIi+mまでの輝度レベル(但し、mは任意の整数で、i−m<0の場合にはi−mの値が0、i−m>64の場合にはi−mの値が64を取るものとする。)に対して同時に表示色の変更を行ってもよい。
【0096】
一方、画像再構成手段23に表示色の変更時間を指定する表示時間情報を作成する機能を設けずに、画像処理装置20の画像処理は、静止画あるいは動画のある輝度レベルの範囲内の猟領域の表示色を単に指定された変更色に変更する処理のみとすることもできる。この場合には、入力装置4に変更色の指定情報と、表示色を変更色に変更する輝度レベルの範囲情報が入力される。そして、表示色変更条件設定手段24から変更色の指定情報と、表示色を変更色に変更する輝度レベルの範囲情報が輝度スケール変更手段22に与えられ、輝度スケール変更手段22により新たな輝度スケールが生成される。
【0097】
さらに、画像再構成手段23により新たに輝度スケール変更手段22により生成された輝度スケールにより画像メモリ12に格納された画像データの画像再構成処理が実行され、新たな輝度スケールに基づいて再構成された画像が画像合成回路10を介してモニタ5に与えられて表示される。
【0098】
また、ユーザがバー形式でモニタ5に表示された輝度スケール画像を介して入力装置4から表示色を変更色に変更する対象とすべき輝度レベルの範囲情報を入力できるようにインターフェース機能を画像処理装置20に設けることもできる。
【0099】
図6は、グレースケールにより輝度表示された画像の一部の輝度レベルの領域を変更色で表示させた例を示す図である。
【0100】
図6(a)は、グレースケールにより輝度表示された画像およびバー形式の輝度スケール画像を示す図である。図6(a)に示すグレースケールの画像に対して、例えば、輝度レベルが一定の値を超える領域が黒色表示されるように、入力装置4から変更色の変更色の指定情報と、表示色を変更色に変更する輝度レベルの範囲情報が入力される。
【0101】
図6(b)は、図6(a)の画像のうち、輝度レベルが一定の値を超える領域が黒色表示されるように画像再構成処理されて得られた画像である。図6(b)に示すように、輝度レベルが一定の値を超える領域が黒色表示され、対応するバー形式の輝度スケール画像の輝度レベルの部分も黒色表示されている。
【0102】
さらに、バー形式の輝度スケール画像の基準となる輝度レベルの位置には、マーキング表示され、このマーキング表示を入力装置4の操作により移動させることにより、輝度レベルの範囲情報を変更させることもできる。
【0103】
このように、関心領域のみならず、診断に重要でない背景の一部の表示色を変更色に変更して表示させることにより、錯視の影響を低減させて、コントラストの視認性を向上させることができる。特に背景の輝度レベルが場所により異なるような場合に、単一の変更色で表示させれば、より錯視の影響を低減させることができる。
【0104】
また、変更色は、単一の色に限らず、輝度レベルごとに異なる変更色で表示させることも可能であり、また、変更色で表示された部分と元の表示色で表示された部分に対してスムージング処理等の処理を施して、境界がスムーズに表示されるようにすることもできる。
【0105】
図7は、図2に示す画像処理装置20による画像処理の際における変更色の設定例を示す図である。
【0106】
図7(a)は、輝度レベルが一定の値を超えて変更色で表示される領域と輝度レベルが一定の値以下となり元の表示色で表示される領域との境界がスムーズに表示されるようにした場合のバー形式の輝度スケール画像を示し、図7(b)は、輝度レベルが一定の値を超える領域が輝度レベルごとに異なる変更色で表示できるようにした場合のバー形式の輝度スケール画像を示す。
【0107】
このように錯視の発生状況に応じて、各種変更色を任意に設定することが可能である。
【0108】
図8は本発明に係る超音波診断装置の第2の実施形態を示す機能ブロック図である。
【0109】
図8に示された、超音波診断装置1Aでは、装置本体2の各構成要素の詳細機能及び画像処理装置20の機能構成が図1に示す超音波診断装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す超音波診断装置1と実質的に異ならないため画像処理装置20の機能ブロック図のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0110】
超音波診断装置1Aの画像生成回路9は、Bモード処理ユニット7またはドプラ処理ユニット8から受けたBモード画像情報やドプラ画像情報に対して最大輝度レベル保持演算を施す機能を有する。この最大輝度レベル保持演算は、時間的に連続して画像データが収集される場合に、過去の画像データのうち輝度レベルの最大値が表示されるような画像データを再構成する画像処理演算である。最大輝度レベル保持演算は、時間的に連続したスキャンにより収集された複数の画像データから毛細血管内を流れる血流の流れを抽出して血流画像を得るような場合に有効である。
【0111】
いま、あるスキャンにおいて収集された同一期間Tに含まれる時系列のフレームFからFまでのn枚の画像データに対して最大輝度レベル保持演算を施す場合について説明する。フレームFからFまでの画像データに対する最大輝度レベル保持演算では、FからFまでの各フレームにおいて、空間的に対応する、すなわち座標(x、y)が一致する部位の輝度レベルのうち最大値となる最大輝度レベルPmax(x,y)を選択して新たな画像データが生成される。
【0112】
すなわち、あるフレームF(iは1≦i≦nを満たす整数)の画像データは、空間的に配置された輝度レベルP(x,y)の集合、あるいは単に一次元の輝度レベルの配列データP(x)の集合からなる。
【0113】
尚、P(x,y)又はP(x)の値は、「輝度」の代わりに「信号強度」、「信号振幅」、「RFデータ等の生データ値」として演算を行なうことも可能であるが、ここでは輝度レベルを採用するものとする。これらの各データ値は、一般的に数値が大きい方が、エコー信号レベルが高いことを意味するものである。
【0114】
そして、フレームFからFに渡って空間的に対応する各フレームにおける各画素のうち、輝度レベルが最大値となるものを選択して新たな画像データを生成する演算が最大輝度レベル保持演算であり、この演算は、式(1)によって表すことができる。
【0115】
[数1]
max(x,y)=max[P(x,y),・・・,P(x,y)] …(1)
【0116】
この式(1)の処理で示される最大輝度レベル保持演算を、造影剤を用いた毛細血管のダイナミック撮影において同じ音圧期間Tに属する新たなフレームが収集される度に実行し、得られた画像データを表示させれば、ユーザ側から観ると時間の経過と共に毛細血管が順次造影剤により造影される様子として映し出すことができる。
【0117】
このような最大輝度レベル保持演算を実現するためのアルゴリズムは、式(1)に示す処理に限らず、例えば、式(2)に示す処理によるものとしても、同様の効果を得ることもできる。すなわち、現行の断層画像フレームFの各座標(x、y)のピクセル輝度をP(x,y)、時間的に一つ前の断層画像フレームFi―1のピクセル輝度をPi−1(x,y)とする。そして、相対的な2フレームについて、式(2)による画像演算処理をi=2〜nまで逐次実行することにより、最大輝度レベル保持演算を行なうことができる。
【0118】
[数2]
If P(x,y)>Pi−1(x,y)
then P(x,y)=P(x,y)
Else P(x,y)=Pi−1(x,y)
……(2)
【0119】
式(2)に示すアルゴリズムは、前段および後段のフレームに関する画像データのそれぞれの輝度レベルを比較して、より大きな輝度レベルを有する画素についてのみ、その値を更新するというものである。こうして得られる画像データを表示しても、ユーザは、時間の経過と共に毛細血管が順次造影されるような様子を動画として観察することができる。
【0120】
さらに、毛細血管レベルを含む血流画像を生成する場合における他の好適な手法例について説明する。当該手法は、同一期間Tに含まれるフレームFからFまでのn枚の画像データに対して重み付けを伴う演算を施すことによって新たな画像データを生成するものである。ここで、重み付けを伴う演算とは、次の式(3)で表される演算である。
【0121】
[数3]
If P(x,y)>Pi−1(x,y)
then P(x,y)=A*P(x,y)+(1−A)*Pi−1(x,y)
Else P(x,y)=(A−1)*P(x,y)+A*Pi−1(x,y)
……(3)
【0122】
式(3)においてAを1以下で1に近い値(例えば、0.99)に設定すると、短時間においては最大輝度レベル保持演算が行われ、長時間においては最大輝度レベル保持演算により保持された輝度は減衰するという作用が期待できる。このような手法によって得られる画像データによっても、ユーザは、時間の経過と共に毛細血管が順次造影されるような映像を観察することができる。
【0123】
そして、このように、画像生成回路9による最大輝度レベル保持演算により生成された画像データは、最大輝度レベル保持演算に用いる元の画像データとともに必要に応じて画像メモリ12に記憶される。
【0124】
一方、超音波診断装置1Aに内蔵される画像処理装置20は、制御プロセッサ11に画像処理プログラムを読み込ませて第1の色調変更手段30、第2の色調変更手段31および色調指定手段32として機能させたものである。
【0125】
第1の色調変更手段30は、画像メモリ12に保存された最大輝度レベル保持演算後における画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を施す機能を有し、第2の色調変更手段31は、画像メモリ12に保存された最大輝度レベル保持演算が施されない画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を施す機能を有する。また、色調指定手段32は、入力装置4から受けた色調の指定情報に基づいて第1の色調および第2の色調として用いられる色調を指定する機能を有する。
【0126】
尚、画像生成回路9が有する最大輝度レベル保持演算機能や画像合成回路10の処理機能の全部あるいは一部を画像処理装置20側に設けてもよい。
【0127】
次に超音波診断装置1Aの作用について説明する。
【0128】
図9は、図8に示す超音波診断装置1Aにより診断画像を表示させる際における流れを示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0129】
まず、ステップS20において、被検体Pに複数回に亘って超音波が送受信されて時系列のエコー信号が順次取得される。そして、各エコー信号から輝度表示可能な複数フレーム分の被検体Pの断層像(Bモード画像)がそれぞれ生成される。
【0130】
次に、ステップS21において、画像生成回路9により被検体Pの断層像の空間的に対応する画素に対して順次最大輝度レベル保持演算が施され、画像データが生成される。最大輝度レベル保持演算により生成された画像データは、最大輝度レベル保持演算が施されない画像データとともに画像メモリ12に書き込まれて一時的に保存される。
【0131】
次に、ステップS22において、第1の色調変更手段30は、画像メモリ12に保存された最大輝度レベル保持演算後における画像データを読み込んで、画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する一方、第2の色調変更手段31は、画像メモリ12に保存された最大輝度レベル保持演算が施されない画像データを読み込んで、画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する。
【0132】
最大輝度レベル保持演算後における画像データは、被検体P内を走査して得られた複数フレームの画像データに対して、最大輝度レベル保持演算により生成された画素P(x、y)からなるグレースケールの輝度表示画像である。また、最大輝度レベル保持演算が施されないBモード画像データもグレースケールにより輝度表示される画像データである。そして、これらの画像データの色調がそれぞれ、第1の色調、第2の色調で表現可能な画像データとなるように、第1の色調変更手段30および第2の色調変更手段31により画像再構成処理が施される。
【0133】
このため、最大輝度レベル保持演算後における画像データは、グレースケールではなく、元のBモード画像の輝度を反映させて第1の色調のみが変化する画像データとなる。同様に、最大輝度レベル保持演算が施されない画像データも元のBモード画像の輝度を反映させて第2の色調のみが変化する画像データとなる。そして、色調変更後の各画像データは、画像メモリ12に書き込まれて保存される。
【0134】
尚、第1、第2の色調は、予めユーザが入力装置4から色調の指定情報を入力し、色調指定手段32が入力装置4から受け取った色調の指定情報を第1の色調変更手段30に与えることにより任意に設定することができる。色調指定手段32は、ユーザによる色調指定のための色調指定画面情報を生成して画像メモリ12に書き込む。このため、画像合成回路10により色調指定画面情報がモニタ5に与えられて表示されるため、ユーザは色調指定画面を参照して入力装置4から簡易に第1、第2の色調を指定することができる。ただし、第1の色調と第2の色調とは少なくとも互いに異なる色調とされる。
【0135】
次に、ステップS23において、画像合成回路10は、画像メモリ12に格納された色調変更後における最大輝度レベル保持演算前後の各画像データを読み込んでモニタ5に与え、重畳表示させて単一の画像とする。この結果、重畳表示された画像の色調は、最大輝度レベル保持演算前後の各画像データの色調により決定され、別の色に混色せしめられる。
【0136】
尚、第1、第2の色調による画像データの重畳表示によって、最終的にモニタ5に表示される画像の色が第1、第2の色調とは別な色調として表現されることに鑑みれば、ユーザによる任意の色調選択により予期せぬ色調となる恐れがある。そこで、好適には、いくつかの第1、第2の色調の推奨の組合わせを予め選択肢として設定し、ユーザが選択肢から選択するという形式をとることもできる。
【0137】
さらに、色調指定の実現手段として最も簡単な方法としては、第1の色調をグレースケールの構成要素である基本色(3原色)[Red, Blue, Green]のうちいずれか1つまたは2つの色調に設定し、第2の色調をその残りの色調の1つまたは2つの色調とする方法が挙げられる。第1、第2の色調を3原色[Red, Blue, Green]のいずれかとすれば、混色の予想が容易となるのみならず、既存のカラー技術を用いて演算が容易となり、より短時間で画像データを再構成して表示させることができる。
【0138】
そこで、例えば、第1の色調を[Blue+Green](=黄色)とし, 第2の色調を[Red](=赤)とする場合を想定して、重畳表示された画像の色調変化について説明する。
【0139】
図10は、図8に示す超音波診断装置1Aのモニタ5に重畳表示された診断画像の色調の時間変化を示す概念図である。
【0140】
図10において、横軸は時間(Time)を示し、縦軸は信号強度値に応じて定まる各色調の強度(intensity)を示す。また、図10(a)は、最大輝度レベル保持演算を行なわずに従来のグレースケールにより、信号強度に応じて画像データを表示させる場合における輝度レベルの時間変化を示し、図10(b)は、最大輝度レベル保持演算前後の画像データを第1、第2の色調を用いて重畳表示させた場合における各色調の強度の時間変化を示す。
【0141】
図10(a)に示すように例えば造影剤が被検体Pに流入し、エコー信号の信号強度が単調に増加した後、造影剤が関心領域から流出してエコー信号の信号強度が低下していく場合には、信号強度に応じて画像データの輝度レベルがグレースケールにより増減する。しかし、もし腫瘍などの関心領域の輝度レベルが一定であり、周囲の組織の輝度レベルが微小に増大していくような場合においては、図10(a)で示される従来のBモード画像では、腫瘍部の輝度が減少しているのかのごとく錯覚してしまう恐れがある。
【0142】
一方、図(b)に示すように、最大輝度レベル保持演算前後の画像データを第1、第2の色調を用いて重畳表示させた場合には、造影剤が被検体Pに流入し、最大輝度レベル保持演算前のBモード画像の輝度レベルが単調に増加している間は、第1、第2の色調の強度が同時に増加する。このため、信号強度値100に対して各色調の強度が(R,G,B)=(100, 100, 100)となるように設定すれば、Red, Blue, Greenのいずれの色調の強度も同一となるため、重畳表示された混色の診断画像はグレー色となる。
【0143】
尚、図(b)において、実線は各色調の強度が一致する場合の色調の強度(R,G,B)を、一点鎖線は第1の色調(黄色)の強度(G,B)を、点線は第2の色調(赤色)の強度(R)をそれぞれ示す。
【0144】
次に、造影剤の流入が一定量となり、例えばエコー信号の信号強度値が200に達すると元のBモード画像の輝度レベルの増加が停止する。さらに、造影剤が関心領域から流出して元のBモード画像の輝度レベルの低下が生じると、最大輝度レベル保持演算後における画像データの第1の色調(黄色)の強度(G,B) =(200, 200)が保持される一方、最大輝度レベル保持演算前における画像データの第2の色調(赤色)のみの強度(R)が低下することとなる。この結果、例えば、重畳表示された診断画像の第1、第2の色調の強度が(R, G, B)=(160, 200, 200)となると、診断画像は色調が黄色がかった色で表示されることになる。
【0145】
このように、図10(b)に示すような色調で重畳表示される超音波診断装置1Aの診断画像によれば、診断画像の特定の領域の輝度レベルが減少した場合、あるいは一旦減少した後再び増加した場合には、周囲の輝度レベルの変化に関わらず、当該部位の色調が変化するため錯視の影響を回避して容易に輝度レベルの変化を判別することができる。また、この際、従来の診断画像としての描画性を損うこともない。
【0146】
図11は、図8に示す超音波診断装置1Aにより生成された被検体Pの断層像の一例を示す図である。
【0147】
図11において、ある領域の輝度レベルが最大値に達した後に、減少すると、色調が変化して表示されるため、輝度レベルの錯視による誤認を回避することができる。
【0148】
以上のような、超音波診断装置1Aによれば、図1に示す超音波診断装置1と同様に錯視の影響を低減させて、コントラスト視認性を向上させることができる。すなわち、診断画像の背景の輝度が時間的に変化するような場合であっても、関心領域の輝度レベルの変化の有無を色調の変化により容易に判別することが可能となる。
【0149】
図12は本発明に係る超音波診断装置の第3の実施形態を示す機能ブロック図である。
【0150】
図12に示された、超音波診断装置1Bでは、装置本体2の各構成要素の詳細機能及び画像処理装置20の機能構成が図8に示す超音波診断装置1Aと相違する。他の構成および作用については図8に示す超音波診断装置1Aと実質的に異ならないため画像処理装置20の機能ブロック図のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0151】
超音波診断装置1Bに内蔵される画像処理装置20は、第1の色調変更手段30、第2の色調変更手段31、色調指定手段32およびタイミング設定手段40としての機能を有する。第1の色調変更手段30は、画像メモリ12に保存された時系列の画像データからタイミング設定手段40から指示を受けた時刻の画像データを読み込んで、色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を施して画像メモリ12に書き込む機能を有する。第2の色調変更手段31は、画像メモリ12に保存された時系列の画像データからタイミング設定手段40から指示を受けた時刻以降の各画像データを読み込んで、色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を施して画像メモリ12に書き込む機能を有する。
【0152】
色調指定手段32は、入力装置4から受けた色調の指定情報に基づいて第1の色調および第2の色調として用いられる色調を指定する機能を有する。
【0153】
タイミング設定手段40は、スイッチ4b等の入力装置4に入力されたタイミング指定情報を受け取って、色調を変更する画像の時刻情報を第1の色調変更手段30、第2の色調変更手段31に与える機能を有する。
【0154】
尚、超音波診断装置1Bの画像生成回路9には、最大輝度レベル保持演算機能が備えられる必要はない。
【0155】
そして、超音波診断装置1Bでは、複数回に亘る超音波の送受信により時系列のエコー信号が順次得られ、グレースケールによる輝度表示をするための画像データ(Bモード画像)が複数フレーム分生成されて順次画像メモリ12に保存される。そして、通常は、グレースケールによる輝度表示をするための画像データが画像合成回路10により順次モニタ5に与えられて動画表示される。
【0156】
さらに、ユーザが入力装置4のスイッチ4b等の操作により任意のタイミングを指定すると、タイミング設定手段40は、入力装置4に入力されたタイミング指定情報を受け取って、色調を変更する画像の時刻情報を第1の色調変更手段30、第2の色調変更手段31に与える。そして、第1の色調変更手段30は、画像メモリ12に保存された時系列の画像データからタイミング設定手段40から指示を受けた時刻の画像データを読み込んで、色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を施して画像メモリ12に書き込む。
【0157】
さらに、第2の色調変更手段31は、画像メモリ12に保存された時系列の画像データからタイミング設定手段40から指示を受けた時刻以降の各画像データを順次読み込んで、色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を施して画像メモリ12に書き込む。
【0158】
そして、画像合成回路10は、第1の色調変更手段30、第2の色調変更手段31により生成された色調の画像データを画像メモリ12からそれぞれ順次読み込んで、モニタ5に与えることにより動画として重畳表示させる。例えば、第1の色調が[Blue+Green](=黄色)とされ、第2の色調が[Red](=赤)とされる。
【0159】
図13は、図12に示す超音波診断装置1Bのモニタ5に重畳表示された診断画像の色調の時間変化を示す概念図である。
【0160】
図13において、横軸は時間(Time)を示し、縦軸は信号強度値に応じて定まる各色調の強度(intensity)を示す。また、図13中の実線は各色調の強度が一致する場合の色調の強度(R,G,B)を、一点鎖線は第1の色調(黄色)の強度(G,B)を、点線は第2の色調(赤色)の強度(R)をそれぞれ示す。
【0161】
図13の実線に示すように例えば造影剤が被検体Pに流入し、エコー信号の信号強度が単調に増加して極大値となった後、造影剤が関心領域から流出入してエコー信号の信号強度が増減する場合には、信号強度に応じて画像データの輝度レベルがグレースケールにより増減する。
【0162】
さらに、ユーザが、ある時刻から後の関心領域の輝度レベルの変化を把握したい場合には、例えば関心領域の輝度レベルが一定になったか否かを知りたいような場合には、入力装置4にタイミング指定情報を入力する。そして、図13の一点鎖線に示すようにタイミング指定情報に対応する時刻の画像データの色調は、第1の色調変更手段30により第1の色調(黄色)に変更されて継続的に重畳表示される。一方、図13の点線に示すようにタイミング指定情報に対応する時刻以降の画像データの色調は第2の色調(赤)に変更されて重畳表示される。
【0163】
このため、重畳表示される画像のうち、第1の色調(黄色)で表現される画像データの強度は一定となる一方、第2の色調(赤)で表現される画像データの強度は、エコー信号の信号強度に応じて変化することとなる。この結果、関心領域の輝度レベルが一定であれば、重畳表示される画像のグレースケールの色調が保たれ、輝度レベルが減少すれば色調が黄色に、輝度レベルが増加すると色調が赤色に変化する。これによりユーザは、関心領域の周囲における輝度レベルの変化による錯視の影響を受けることなく、関心領域における輝度レベルの変動を識別することが可能となる。
【0164】
以上のような超音波診断装置1Bによれば、図8に示す超音波診断装置1Aと同様に錯視の影響を低減させて、コントラスト視認性を向上させることができる。さらに、ユーザが指定する任意のタイミングにおける画像を基準として輝度レベルの変化を把握することができる。
【0165】
尚、以上の各実施形態の超音波診断装置1、1A、1Bにおいて、画像データを3次元データとして画像処理を行なってもよい。この場合には、被検体Pの走査が3次元的に行なわれ、得られたエコー信号から3次元的な画像データ(空間情報)が再構成される。しかし、最終的には、3次元情報をモニタ5に表示させる際には、種々の投影法により2次元投影された画像データが生成される。そして、2次元投影データに対して輝度スケールが参照されて輝度表示される。このため、画像処理装置20により輝度表示された2次元投影データに対して、上記と同様な画像処理を施すことができる。
【0166】
また、各実施形態における超音波診断装置1、1A、1Bを組み合わせて構成してもよい。逆に超音波診断装置1、1A、1Bの一部の構成要素を省略してもよい。
【0167】
さらに、画像処理装置20の画像処理の対象とする画像データは、輝度表示可能な画像データであれば、超音波診断装置1、1A、1Bにより収集された画像データに限らず、他のX線CT装置やMRI装置等の画像診断装置により収集された画像データとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の第1の実施形態を示す構成図。
【図2】図1に示す超音波診断装置の装置本体に内蔵される画像処理装置の構成を示す機能ブロック図。
【図3】図1に示す超音波診断装置により診断画像を表示させる際における流れを示すフローチャート。
【図4】図2に示す画像処理装置により画像データの表示色を変更させるための画像処理の手順を示すフローチャート。
【図5】図2に示す画像処理装置による画像処理前後における画像データをモニタに表示させた例を示す図。
【図6】グレースケールにより輝度表示された画像の一部の輝度レベルの領域を変更色で表示させた例を示す図。
【図7】図2に示す画像処理装置による画像処理の際における変更色の設定例を示す図。
【図8】本発明に係る超音波診断装置の第2の実施形態を示す機能ブロック図。
【図9】図8に示す超音波診断装置により診断画像を表示させる際における流れを示すフローチャート。
【図10】図8に示す超音波診断装置のモニタに重畳表示された診断画像の色調の時間変化を示す概念図。
【図11】図8に示す超音波診断装置により生成された被検体の断層像の一例を示す図。
【図12】本発明に係る超音波診断装置の第3の実施形態を示す機能ブロック図。
【図13】図12に示す超音波診断装置のモニタに重畳表示された診断画像の色調の時間変化を示す概念図。
【図14】輝度コントラスト比の判断に際し、錯視が問題となる場合の例を説明する概念図。
【符号の説明】
【0169】
1、1A、1B 超音波診断装置
2 装置本体
3 超音波プローブ
4 入力装置
4a トラックボール
4b スイッチ
5 モニタ
6 送受信ユニット
7 Bモード処理ユニット
8 ドプラ処理ユニット
9 画像生成回路
10 画像合成回路
11 制御プロセッサ
12 画像メモリ
13 内部記憶装置
14 インターフェース部
15 ネットワーク
20 画像処理装置
21 輝度スケール情報表示手段
22 輝度スケール変更手段
23 画像再構成手段
24 表示色変更条件設定手段
30 第1の色調変更手段
31 第2の色調変更手段
32 色調指定手段
40 タイミング設定手段
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送信して得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の断層像を輝度表示するための画像データを生成する手段と、前記画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち互いに異なる一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を変更して新たな複数の輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された各輝度スケールに従ってそれぞれ前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により生成された再構成処理後の各画像データを表示させる時間を表示時間情報として、表示させる順序を表示順序情報としてそれぞれ設定する表示色変更条件設定手段と、前記表示順序情報で指定された順序で前記表示時間情報で指定された時間だけ表示されるように各画像データを順次表示手段に与えて表示させる画像合成回路とを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体に複数回超音波を送信してそれぞれ得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するための複数の時系列の画像データを生成する手段と、前記複数の時系列の画像データの空間的に対応する位置の輝度レベルを最大値に保持する最大輝度レベル保持演算を施す画像生成回路と、前記最大輝度レベル保持演算後における各画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、最大輝度レベル保持演算が施されない前記複数の時系列の画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを表示手段に与えて重畳表示させる画像合成回路とを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
被検体に複数回超音波を送信してそれぞれ得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するための複数の時系列の画像データを生成する手段と、入力装置から入力されたタイミング指定情報を受け取って時刻情報を生成するタイミング設定手段と、前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻の前記画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻以降の複数の時系列の前記画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを表示手段に与えて重畳表示させる画像合成回路とを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
被検体に超音波を送信して得られたエコー信号の信号強度に基づいて前記被検体の断層像を輝度表示するための画像データを生成する手段と、前記画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち背景色の一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を錯視の影響が低減されるような色彩または色調に変更して新たな輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された輝度スケールに従って前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により生成された再構成処理後の前記画像データを表示手段に与えて表示させる画像合成回路とを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
前記第1の色調をグレースケールの基本色のうちいずれか1つまたは2つの色調にとし、前記第2の色調をその残りの色調の1つまたは2つの色調としたことを特徴とする請求項2または3記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像合成回路は、前記画像再構成処理前の前記画像データを前記表示手段に与えて並列表示させるようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記被検体の断層像を輝度表示するための前記画像データを3次元データとし、2次元投影された画像データに対して前記画像再構成処理を実行するようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
被検体の断層像を輝度表示するために生成された画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち互いに異なる一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を変更して新たな複数の輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された各輝度スケールに従ってそれぞれ前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により生成された再構成処理後の各画像データを表示させる時間を表示時間情報として、表示させる順序を表示順序情報としてそれぞれ設定する表示色変更条件設定手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するために生成された複数の時系列の画像データに対し、空間的に対応する位置の輝度レベルを最大値に保持する最大輝度レベル保持演算を施す画像生成回路と、前記最大輝度レベル保持演算後における各画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、最大輝度レベル保持演算が施されない前記複数の時系列の画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを重畳表示できるように合成する画像合成回路とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
入力装置から入力されたタイミング指定情報を受け取って時刻情報を生成するタイミング設定手段と、被検体の複数フレーム分の断層像を輝度表示するために生成された複数の時系列の画像データのうち前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻の前記画像データの色調を予め指定された第1の色調に変更する画像再構成処理を実行する第1の色調変更手段と、前記タイミング設定手段により生成された時刻情報で指示された時刻以降の複数の時系列の前記画像データの色調を予め指定された第2の色調に変更する画像再構成処理を実行する第2の色調変更手段と、第1の色調に変更された画像データおよび第2の色調に変更された画像データを重畳表示できるように合成する画像合成回路とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
被検体の断層像を輝度表示するために生成された画像データを輝度表示させる際における輝度スケールのうち背景色の一部の輝度レベルに相当する色彩および色調の少なくとも一方を錯視の影響が低減されるような色彩または色調に変更して新たな輝度スケールを生成する輝度スケール変更手段と、前記輝度スケール変更手段により生成された輝度スケールに従って前記画像データの画像再構成処理を実行する画像再構成手段とを有することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−20800(P2006−20800A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201040(P2004−201040)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】