説明

超音波送受波器

【課題】従来の超音波送受波器においては、温度変化により静電容量が変化し、それに伴い残響時間が長くなり、近距離における障害物検出ができなかった。その対策として温度補償コンデンサが用いられるが、価格が上がるという問題があった。この対策として温度補償コンデンサを用いなくても温度変化による残響時間の変化が抑えられるよう、有底筒状ケースと圧電素子の間、又は圧電素子の有底筒状ケース側の反対面又は、圧電素子の両面に低熱膨張合金のインバー合金等を貼り合わせる方法があるが、反射感度が低下する問題がある。
【解決手段】超音波送受波器において、有底筒状ケースの圧電素子接着面に設けたリング状の溝に、リング状に加工した低熱膨張合金のインバー合金等を接着、圧入等によって埋め込み、その上に圧電素子を貼り合わることで温度補償コンデンサを用いることなく反射感度も低下せずに広温度域で障害物を安定して検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波周波数帯の送信、受信を行う超音波送受波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の実施の形態に関わる超音波送受波器において、超音波送受波器を車のバンパー等に埋め込み設置し、車周辺の障害物を検出しようとした場合、超音波送受波器にパルスバースト電気信号を入力することにより、超音波送受波器からその入力パルスバースト電気信号に応じた超音波信号が発振され、発振された超音波信号は障害物に到達し、障害物に当たった超音波信号は、その障害物で反射され、その反射された超音波信号の一部が同じ超音波送受波器に戻ってくる。超音波送受波器はその反射信号を受信することによって障害物を検出している。
従来の実施の形態に関わる超音波送受波器において、環境温度の変化により超音波送受波器の静電容量が変化し、残響時間が長くなり近距離が検知出来なくなる問題があった。更にこの温度変化による静電容量の補正のため温度補償コンデンサが一般的に用いられているがコストが高く、システムの価格を上げる問題がある。これを従来の実施の形態1と称し、図3−aにその実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を示す。図3−aにおいて、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付け等して取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に、圧電素子1と入出力リード5a及び、有底筒状ケース2と入出力リード5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面にシリコン発泡体等から成る吸音材6を載置して、更に、その上からシリコン材、ウレタン材等の弾性体から成る封止剤4を有底筒状ケース2内に充填し構成する。
この問題を改善するために有底筒状ケースと圧電素子の間、又は圧電素子の有底筒状ケース側の反対面又は、圧電素子の両面に低熱膨張合金のインバー合金等を貼り合わせることで温度変化による超音波送受波器の静電容量の変化を抑え、残響の変化を抑えるという方法を用いることが考えられる。これを従来の実施の形態2とし、図3−b、図3−c、および図3−dにその実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を示す。図3−bにおいて、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に低熱膨張合金等からなる板材3と更にその上に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。圧電素子1の低熱膨張合金等からなる板材3との接着面側の反対面から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付け等して取り出す。圧電素子1の低熱膨張合金等からなる板材3との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に、圧電素子1と入出力リード5a及び、有底筒状ケース2と入出力リード5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面に発泡シリコン等から成る吸音材6を載置して、その上からシリコン材、ウレタン材等から成る封止剤4を有底筒状ケース2内部に充填し構成する。
しかしながら、この方法においては温度変化による超音波送受波器の静電容量の変化を抑え、残響の変化を抑えるという改善効果をもたらすことはできるが、従来のものに比べて反射感度が低下するという問題点が発生する。
【特許文献1】特開2004−135089
【非特許文献1】谷腰欣司著 「超音波とその使い方−超音波送受波器・超音波モータ」 日刊工業新聞 1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする課題は反射感度を低下させることなく温度変化による静電容量の変化を抑え、残響の変化を抑えるというものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
有底筒状ケースの底面内部に圧電素子を貼り合わせてユニモルフ振動子を構成し、この振動体のケース外側面にて超音波の送信、受信を行う超音波送受波器において、有底筒状ケースの圧電素子接着面にリング状の溝を設け、その形状に合わせてリング状に加工した低熱膨張合金のインバー合金等を接着あるいは圧入等によって有低筒状ケースに埋め込み、その上に圧電素子を貼り合わせることで反射感度を低下させることなく温度変化による超音波送受波器の静電容量の変化を抑え、残響の変化を抑える。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、反射感度が高く且つ温度変化による静電容量の変化が少ないため温度補償コンデンサを用いなくても広温度範囲で誤動作することなく近距離の障害物検出ができるという利点を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
カーバックセンサ等に用いる際、広温度域において、近距離まで安定して障害物を検知出来るという目的を、温度補償コンデンサを用いない状態で実現した。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。図2−aは本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図および縦断面図、図2−b及び図2−cは本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図および縦断面図を表す。図1において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部にリング状の溝7を設け、同様にリング状に加工した低熱膨張合金等からなる板材3を有低筒状ケースに設けた溝7に接着あるいは圧入などによって埋め込み、更にその上に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。尚、有低筒状ケース2に設ける溝7およびそれに埋め込む低熱膨張合金などから成る板材3は図2−bに示すようにリング状でなくても良く、また図2−cに示すように低熱膨張合金などから成る板材3を圧電素子1の接着面近傍に位置するように複数個に分割して埋め込み、その上に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成しても良い。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面と圧電素子1から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付け等によって取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と低熱膨張合金等からなる板材3および有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に、圧電素子1と入出力リード5a及び、有底筒状ケース2と入出力リード5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面に発泡シリコン等から成る吸音材6を載置して、その上からシリコン材、ウレタン材等から成る封止剤4を有底筒状ケース2内部に充填し構成する。
図4に示すように従来の実施の形態1に関わる超音波送受波器の場合、温度変化により静電容量が変化し、回路で用いられているトランスのインダクタンスとの共振マッチングがずれ図5のように残響が増大する。この対策として超音波送受波器と逆の温度特性を持つ温度補償コンデンサを並列に接続し、温度変化による合成静電容量の変化を抑えている。図4に示すように従来の実施の形態1に関わる超音波送受波器の場合、温度変化により静電容量が変化し、回路で用いられているトランスのインダクタンスとの共振マッチングがずれ図5のように残響が増大する。この対策として超音波送受波器と逆の温度特性を持つ温度補償コンデンサを並列に接続し、温度変化による合成静電容量の変化を抑えている。
本発明では超音波送受波器自体の温度変化による静電容量の変化を抑えているため温度補償コンデンサを用いなくても同様の温度特性を実現できる。図5に、従来の実施の形態1に関わる超音波送受波器の残響時間を表す模式図を示す。図6に、本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の残響時間を表す模式図を示す。加えて従来の実施の形態2に関わる超音波送受波器においては従来の実施の形態1に関わる超音波送受波器と比較して反射感度が低下するが本発明の実施の形態においてはそれを防ぐことができ、従来の実施の形態1と同等の反射感度を保つことができる。図7に従来の実施の形態1および2に関わる超音波送受波器と本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の反射感度の比較図を示す。
【産業上の利用可能性】
【0008】
本発明は、車のバックセンサのみならず、防滴型超音波送受波器が利用されている様々な分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【図2】a本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図及び縦断面図 b本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図及び縦断面図 c本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図及び縦断面図
【図3】a従来の実施の形態1に関わる超音波送受波器の概略縦断面図 b従来の実施の形態2に関わる超音波送受波器の概略縦断面図 c従来の実施の形態2に関わる超音波送受波器の概略縦断面図 d従来の実施の形態2に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【図4】超音波送受波器の静電容量の温度変化と温度補償コンデンサの静電容量の温度変化と超音波送受波器と温度補償コンデンサの合成静電容量の温度変化
【図5】従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の残響時間
【図6】本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の残響時間
【図7】従来の実施の形態1および2に関わる超音波送受波器と本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の反射感度
【符号の説明】
【0010】
1 圧電素子
2 有底筒状ケース
3 低熱膨張合金等からなる板材
4 封止剤
5a 入出力リード
5b 入出力リード
6 吸音材

7 有低筒状ケースの底面内部に設けた溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状ケースの底面内部に圧電素子を貼り合わせてユニモルフ振動子を構成し、この振動体のケース外側面にて超音波の送信、受信を行う超音波送受波器において、有底筒状ケースの圧電素子接着面にリング状の溝を設け、その形状に合わせてリング状に加工した低熱膨張合金のインバー合金等を接着あるいは圧入等によって有低筒状ケースに埋め込み、その上に圧電素子を貼り合わせたことを特徴とする超音波送受波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−135573(P2006−135573A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321462(P2004−321462)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】