説明

距離測定装置

【課題】複数視野を同時に測定することができる距離測定装置を提供する。
【解決手段】距離測定装置は、測定光を射出するレーザ光源と、測定対象物からの反射光を検出する光検出器と、第1の反射鏡、第1の反射鏡の周囲に配置された第1の保持枠、第1の反射鏡を第1の保持枠に対し垂直軸の周りに回転可能に軸支する第1の支持梁、第1の保持枠の下部表面に配置された第2の反射鏡、第1の保持枠の上部表面に配置された第3の反射鏡、第1の保持枠の周囲に配置された第2の保持枠、及び第1の保持枠を第2の保持枠に対し水平軸の周りに回転可能に軸支する第2の支持梁を備えた光走査装置と、レーザ光源から射出された測定光を光走査装置に導光すると共に光走査装置で受光された反射光を光検出器に導光する導光光学系と、レーザ光源及び光走査装置の各々を駆動制御すると共に光検出器の検出信号に基づいて測定対象物までの距離を演算する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物に対し光パルスを投光し、光パルスが射出されてから反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計測して、測定対象物までの距離を測定する距離測定装置が用いられている。一方、マイクロマシニング技術を用いて可動ミラーや弾性梁等の構成部品が一体成形されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等、2次元走査を行うことができる光走査装置や、この光走査装置を利用した画像投影装置等が種々提案されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。
【0003】
近時、光パルスを投受光する投受光光学系に、光走査装置としてMEMSミラーを用いた2次元走査型の距離測定装置が提案されている(非特許文献2、特許文献3)。例えば、非特許文献2には、日本信号社製の2次元走査ミラー「ECO SCAN(登録商標)」が搭載された3次元距離画像センサが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、MEMSミラーを用いた集光光学系を備え、所定の空間内に在る物体の位置等を検出する自動監視装置が開示されている。この集光光学系は、光源部から投光されたレーザ光が有孔反射ミラーの孔部を通過した後に走査ミラーで走査され、対象物で反射された戻り光は走査ミラーで反射された後に有孔反射ミラーにおける孔部の周囲の反射面で反射されて受光素子で受光される構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−266506号公報
【特許文献2】特開2010−266508号公報
【特許文献3】特開2004−170965号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wyatt O. Davis, Randy Sprague, Josh Miller, "MEMS-Based Pico Projector Display", p31-32, IEEE(2008)
【非特許文献2】http://www.signal.co.jp/vbc/mems/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の2次元走査を行うMEMSミラーでは、中央に配置された1枚の可動ミラーを垂直軸及び水平軸の周りに回転(揺動)させて、1本の光ビームを2次元状に走査している。上記のMEMSミラーを投受光光学系の光走査装置として用いる場合には、1枚の可動ミラーが投受光に使用される。投光用のレーザ光が照射されているミラー領域は、受光された戻り光を光源側に反射してしまうため、受光用のミラー領域としては使用できない。従って、1枚の可動ミラーを投受光に使用する場合には、単一視野のみの測定となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、複数視野を同時に測定することができる距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、測定対象物に対して投光する測定光を射出するレーザ光源と、前記測定対象物で反射された反射光を検出する光検出器と、第1の反射鏡、前記第1の反射鏡の周囲に配置された第1の保持枠、前記第1の反射鏡を前記第1の保持枠に対し垂直軸の周りに回転可能に軸支する第1の支持梁、前記第1の保持枠の上部表面及び下部表面の一方に配置された第2の反射鏡、前記第1の保持枠の上部表面及び下部表面の他方に配置された第3の反射鏡、前記第1の保持枠の周囲に配置された第2の保持枠、及び前記第1の保持枠を前記第2の保持枠に対し水平軸の周りに回転可能に軸支する第2の支持梁を備え、2次元走査が可能に構成された光走査装置と、前記レーザ光源から射出された測定光が前記第1の反射鏡及び前記第2の反射鏡に照射されるように当該測定光を前記光走査装置に導光すると共に、前記第1の反射鏡及び前記第3の反射鏡で受光された反射光を前記光検出器に導光する導光光学系と、前記レーザ光源及び前記光走査装置の各々を駆動制御すると共に、前記光検出器の検出信号に基づいて前記測定対象物までの距離を演算する制御部と、を備えた距離測定装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記光検出器が、前記第1の反射鏡で受光され前記光検出器に導光された第1の反射光を受光する第1の受光素子と、前記第3の反射鏡で受光され前記光検出器に導光された第2の反射光を受光する第2の受光素子とを備え、受光素子毎に検出信号を出力する、請求項1に記載の距離測定装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記制御部が、前記第1の反射鏡の前記垂直軸周りの回転及び前記第1の支持枠の前記水平軸周りの回転の少なくとも一方が行われるように前記光走査装置を駆動制御する、請求項1又は請求項2に記載の距離測定装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の距離測定装置によれば、複数視野を同時に測定することができ、単一視野の従来の距離測定装置に比べて詳細な対象物の測定が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る距離測定装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示す距離測定装置の投受光光学系の構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示す投受光光学系の光走査装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図4】図3に示す光走査装置の回転振動機構の一例を示す平面図である。
【図5】(A)〜(D)は受光用反射鏡と投光用反射鏡との関係を示す模式図である。
【図6】図3に示す光走査装置で2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。
【図7】(A)は図1に示す距離測定装置で2種類の反射光が受光される様子を示す模式図であり、(B)は2種類の反射光に対応して受光素子が配置される位置を示す光軸に沿った断面図である。
【図8】(A)は垂直軸共振・水平軸非共振の状態を示す斜視図であり、(B)は垂直軸共振・水平軸非共振の状態で2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。
【図9】(A)は垂直軸非共振・水平軸共振の状態を示す斜視図であり、(B)は垂直軸非共振・水平軸共振の状態で2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。
【図10】(A)は垂直軸共振・水平軸共振の状態を示す斜視図であり、(B)は垂直軸共振・水平軸共振の状態で2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0015】
(距離測定装置の概略構成)
まず、距離測定装置の構成の一例について説明する。ここでは、距離測定装置を、レーザ光の直進性を利用して、広い範囲で対象物までの距離を測定できるレーザレーダ装置として構成した例について説明する。図1は本発明の実施の形態に係る距離測定装置の構成の一例を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、距離測定装置10は、測定対象物(以下、「対象物」という。)に対し測定光を投光する光投光部20、測定対象物で反射された反射光を受光する光受光部30、及び各種演算等を行うと共に装置各部を制御する制御部40を備えている。また、距離測定装置10は、光投光部20の投光光学系及び光受光部30の受光光学系として機能する投受光光学系50を備えている。
【0017】
投受光光学系50は、測定光を2次元走査可能に構成された光走査装置60を含んで構成されている。制御部40には、測定結果等を表示すると共にユーザからの指示入力を受け付ける表示入力部42が接続されている。なお、光走査装置60の具体的な構成例については、後で詳しく説明する。
【0018】
光投光部20は、測定光を射出するレーザ光源24、レーザ光源24を駆動するレーザ駆動部26、及び光走査装置60を駆動する走査駆動部28を備えている。レーザ駆動部26及び走査駆動部28は、制御部40に電気的に接続されている。レーザ駆動部26は、制御部40からの制御信号に基づいて、レーザ光源24を点灯駆動する。また、走査駆動部28は、制御部40からの制御信号に基づいて、測定光が2次元走査されるように光走査装置60を駆動する。
【0019】
レーザ光源24としては、半導体レーザ(LD)等を使用することができる。例えば、発振波長1.55μmの半導体レーザ等を使用することができる。なお、レーザ光源24には、通常、出力モニタ用の光検出部が内蔵されている。内蔵された光検出部からの検出信号は、「測定光の出力信号」としてレーザ駆動部26を介して制御部40に入力される。
【0020】
光受光部30は、投受光光学系50で受光された反射光を検出する光検出器32を備えている。光検出器32は、制御部40に電気的に接続されている。光検出器32は、後述する通り複数の受光素子34A、34Bを備えており、複数の受光素子34A、34Bの各々で受光した光信号は電気信号に光電変換される。光検出器32で光電変換された電気信号は、「反射光の検出信号」として制御部40に入力される。
【0021】
受光素子34A、34Bとしては、フォトダイオード(PD)を使用することができる。例えば、レーザ光源24として発振波長1.55μmの半導体レーザ等を使用する場合には、受光素子34A、34Bとしては、波長1.55μmを含む赤外線に感度を有するフォトダイオードを使用することができる。複数の受光素子34A、34Bを区別する必要がない場合には、受光素子34と総称する。
【0022】
制御部40は、A/D変換器、ROM、RAM等の記憶部、CPU等の中央処理装置を備えている。ROMには、測定対象物までの距離の演算等、種々の処理ルーチンを実行するためのプログラムや各種データ等が記憶されている。RAMは、CPUによって行われる各種演算等を行うワークエリア等として使用される。制御部40には、上述した通り、測定光の出力信号、反射光の検出信号が入力される。制御部40に入力されたこれらのアナログ信号は、A/D変換器(図示せず)でデジタル信号に変換され、記憶部(図示せず)に保持される。
【0023】
なお、制御部40は、取得された測定光の投光タイミングと反射光の受光タイミングとに基づいて、測定光が投光されてから反射光を受光するまでに要した応答時間を計算する。そして、計算された応答時間に基づいて、測定対象物までの距離を演算する。なお、演算により得られた測定対象物までの距離は、測定結果として表示入力部42に表示してもよい。
【0024】
(投受光光学系)
次に、投受光光学系の構成について説明する。図2は図1に示す距離測定装置の投受光光学系50の具体的な構成の一例を示す斜視図である。図2に示すように、投受光光学系50は、投光用のレンズ52、孔部54Aを有する平板状の有孔反射鏡54、受光用のレンズ56、及び2次元走査が可能に構成された光走査装置60を備えている。孔部54Aは、有孔反射鏡54を厚さ方向に貫通する貫通孔である。光走査装置60は、後述する通り、複数の反射鏡を備えており、複数の反射鏡の各々が垂直軸周り及び水平軸周りの少なくとも一方に回転することで、垂直方向及び水平方向の2方向に走査が可能である。
【0025】
投光用のレンズ52、有孔反射鏡54及び光走査装置60は、レーザ光源24の側からこの順に配置されている。なお、図2では、光走査装置60を裏側から見ており、光走査装置60の反射面60Aは有孔反射鏡54側を向いている。有孔反射鏡54は、反射面54Bが光走査装置60の反射面60A側を向くように配置されている。受光用のレンズ56は、有孔反射鏡54と光検出器32との間に配置されている。光検出器32は、受光用のレンズ56の結像位置に配置されている。
【0026】
上記の投受光光学系50では、実線で図示したように、レーザ光源24から射出された測定光は、投光用のレンズ52で平行光化され、有孔反射鏡54の孔部54Aを通過して、光走査装置60の反射面60Aに照射される。一方、点線で図示したように、対象物で反射されて戻ってきた反射光は、有孔反射鏡54の反射面54Bにより、測定光の光路から外れる方向に反射される。反射面54Bで反射された反射光は、受光用のレンズ56で集光されて、光検出器32で検出される。
【0027】
(光走査装置)
次に、光走査装置60の詳細な構成について説明する。図3は光走査装置60の構成の一例を示す斜視図である。図3では、光走査装置60を表側、即ち、反射面60A側から見ている。図3に示すように、光走査装置60は、平板状の第1の反射鏡62、第1の反射鏡62の周囲に配置された第1の保持枠64、及び第1の保持枠64の周囲に配置された第2の保持枠66を備えている。第1の反射鏡62は、平面視が略矩形状の平板状の反射鏡である。
【0028】
第1の反射鏡62は、一対の第1の支持梁68A、68Bにより、第1の保持枠64に対し垂直軸の周りに回転可能に軸支されている。垂直軸は、第1の反射鏡62の水平方向の中心線と略一致する。また、第1の保持枠64は、一対の第2の支持梁70A、70Bにより、第2の保持枠66に対し水平軸の周りに回転可能に軸支されている。水平軸は、第1の反射鏡62の垂直方向の中心線と略一致する。
【0029】
第1の保持枠64の下部表面には、第2の反射鏡72が配置されている。また、第1の保持枠64の上部表面には、第3の反射鏡74が配置されている。第2の反射鏡72は、平面視が略矩形状の平板状の反射鏡である。第2の反射鏡72の水平方向の長さは、第1の反射鏡62の水平方向の長さより長い。第2の反射鏡72は、第1の保持枠64の下部表面を略覆うように配置されている。
【0030】
同様に、第3の反射鏡74は、平面視が略矩形状の平板状の反射鏡であり、第3の反射鏡74の水平方向の長さは第1の反射鏡62の水平方向の長さより長く、第1の保持枠64の上部表面を略覆うように配置されている。上記の第2の反射鏡72及び第3の反射鏡74は、例えば、金(Au)等の反射率の高い金属材料を蒸着する等して、第1の保持枠64の表面に形成することができる。
【0031】
次に、光走査装置60のミラー回転動作(回転振動)について説明する。以下では、光走査装置60を電磁駆動方式のMEMSミラーとして構成した例について説明する。図4は光走査装置60の回転振動機構の一例を示す平面図である。図4に示すように、第1の反射鏡62には、駆動コイル76が第1の反射鏡62と一体に設けられている。駆動コイル76は、例えば、第1の支持梁68B、第2の支持梁70Aを通る配線77により、電源78に電気的に接続されている。また、第1の保持枠64には、駆動コイル80が第1の保持枠64と一体に設けられている。駆動コイル80は、例えば、第2の支持梁70Bを通る配線83により、電源82に電気的に接続されている。
【0032】
また、第2の保持枠66の垂直方向に対向する上辺と下辺の各々には、第1の反射鏡62の駆動コイル76に対して磁界を形成する永久磁石84A、84Bが設けられている。第2の保持枠66の水平方向に対向する左辺と右辺の各々には、第1の保持枠64の駆動コイル80に対して磁界を形成する永久磁石86A、86Bが設けられている。
【0033】
例えば、第1の反射鏡62の駆動コイル76には、永久磁石84A、84Bにより駆動コイル76を横切る方向に磁界が形成されている。電源78により駆動コイル76に電流を流すと、第1の反射鏡62を垂直軸の周りに回転させる磁気力が発生する。第1の反射鏡62が回転すると、一対の第1の支持梁68A、68Bが捩じられて、ばね反力が発生する。
【0034】
第1の反射鏡62は、磁気力とばね反力が釣り合う位置まで回転する。駆動コイル76に流す電流値に応じて、第1の反射鏡62の回転角度(走査角)が変化する。また、駆動コイル76に流す電流の向きを反転させると、磁気力の向きが逆になり、第1の反射鏡62は反対周りに回転する。これにより、第1の反射鏡62は、垂直軸の周りに予め定めた周波数で回転振動される。
【0035】
同様に、第1の保持枠64の駆動コイル80には、永久磁石86A、86Bにより磁界が形成されている。電源82により駆動コイル80に電流を流すことにより、第1の保持枠64を水平軸の周りに回転させる磁気力が発生する。一対の第2の支持梁70A、70Bが捩じられて、ばね反力が発生する。これにより、第1の保持枠64は水平軸の周りに予め定めた周波数で回転振動される。即ち、第1の反射鏡62、第2の反射鏡72及び第3の反射鏡74は、第1の保持枠64と共に水平軸の周りに回転振動される。
【0036】
(複数視野での測定)
次に、複数視野での測定が可能となる原理について説明する。図5(A)〜(D)は受光用反射鏡と投光用反射鏡との関係を示す模式図である。図6は図3に示す光走査装置60を用いて2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。
【0037】
上述した通り、上記の投受光光学系50では、レーザ光源24から射出された測定光は、投光用のレンズ52で平行光化され、有孔反射鏡54の孔部54Aを通過して、光走査装置60の反射面60Aに照射される(図2参照)。このとき、図5(A)及び(C)に示すように、測定光の照射領域90に、第1の反射鏡62の下半分の部分62A及び第2の反射鏡72が含まれるように、測定光を照射する。第1の反射鏡62の部分62A及び第2の反射鏡72の各々に、同時に測定光が照射されて、異なる方向に測定光が投光される。
【0038】
図6に実線で示したように、測定光の投光方向に投影面94を仮定すると、第1の反射鏡62の部分62Aで反射された測定光は、投影面94の領域96に投光される。一方、第2の反射鏡72で反射された測定光は、投影面94の領域98に投光される。第2の反射鏡72の面積は、第1の反射鏡62の部分62Aの面積よりも大きい。このため、第2の反射鏡72で反射された測定光は、領域96より広い領域98に投光される。
【0039】
また、上述した通り、上記の投受光光学系50では、対象物で反射されて戻ってきた反射光は、有孔反射鏡54の反射面54Bにより反射される(図2参照)。このとき、図5(B)及び(D)に示すように、反射光は、水平軸に対して測定光の照射領域90と対称な受光領域92により受光される。反射光の受光領域92には、第1の反射鏡62の上半分の部分62B及び第3の反射鏡74が含まれる。
【0040】
図5(A)及び(B)に示すように、第1の反射鏡62の部分62Aにより投光された測定光に対応する反射光は、第1の反射鏡62の部分62Bで受光される。一方、図5(C)及び(D)に示すように、第2の反射鏡72により投光された測定光に対応する反射光は、第3の反射鏡74で受光される。即ち、第1の反射鏡62の部分62A及び部分62Bにより、一対の投受光用の反射鏡が構成される。同時に、第2の反射鏡72及び第3の反射鏡74により、一対の投受光用の反射鏡が構成される。従って、1個のレーザ光源24から射出され、異なる方向に投光された測定光を、別々の反射鏡で受光することができ、2視野での測定が可能となる。
【0041】
なお、第1の反射鏡62の部分62Bで反射された第1の反射光と、第3の反射鏡74で反射された第2の反射光とは、互いに分離して検出する必要がある。図7(A)は投受光光学系50で2種類の反射光が受光される様子を示す模式図であり、図7(B)は2種類の反射光に対応して受光素子34が配置される位置を示す光軸に沿った断面図である。
【0042】
実線で示すように、第1の反射光は、有孔反射鏡54の反射面54Bの領域54Cで反射される。領域54Cで反射された反射光は、受光用のレンズ56で集光され、光検出器32の受光素子34Aで受光される。また、点線で示すように、第2の反射光は、有孔反射鏡54の反射面54Bの領域54Dで反射される。領域54Dで反射された反射光は、受光用のレンズ56で集光され、光検出器32の受光素子34Bで受光される。
【0043】
領域54Cと領域54Dとの中間点で反射された反射光が、受光用のレンズ56で集光されて、光検出器32の表面に焦点Fを結ぶように、レンズ56を配置する。受光素子34A及び受光素子34Bを、受光用のレンズ56の焦点Fの位置からずらして配置する。受光用のレンズ56に対し、第1の反射光及び第2の反射光は光軸Lからずれた位置から入射する。第1の反射光(実線)は受光素子34Aの受光領域に焦点を結び、第2の反射光(点線)は受光素子34Bの受光領域に焦点を結ぶ。この通り、第1の反射光と第2の反射光とは、異なる受光素子34により受光されるので、互いに分離して検出することができる。
【0044】
(回転振動動作と測定視野)
次に、光走査装置60の回転振動と走査方向の関係について説明する。図8(A)は垂直軸共振・水平軸非共振の状態を示す斜視図であり、図8(B)は垂直軸共振・水平軸非共振の状態で2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。図8(A)に示すように、垂直軸共振・水平軸非共振の状態では、第1の反射鏡62が垂直軸の周りに回転振動し、第1の保持枠64は水平軸の周りに回転振動しない。
【0045】
垂直軸共振・水平軸非共振の場合には、図8(B)に示すように、第1の反射鏡62の部分62Aで反射された測定光(実線)は、投影面94の領域96に投光される。第1の反射鏡62が垂直軸の周りに回転振動することで、矢印で図示した通り、測定光は水平方向に走査される。一方、第2の反射鏡72で反射された測定光(点線)は、投影面94の領域98に投光される。
【0046】
また、図9(A)は垂直軸非共振・水平軸共振の状態を示す斜視図であり、図9(B)は垂直軸非共振・水平軸共振の状態で2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。図9(A)に示すように、垂直軸非共振・水平軸共振の状態では、第1の反射鏡62、第2の反射鏡72及び第3の反射鏡74は、第1の保持枠64と共に水平軸の周りに回転振動し、第1の反射鏡62は垂直軸の周りに回転振動しない。
【0047】
垂直軸非共振・水平軸共振の場合には、図9(B)に示すように、第1の反射鏡62の部分62Aで反射された測定光(実線)は、投影面94の領域96に投光される。第1の反射鏡62が垂直軸の周りに回転振動することで、矢印で図示した通り、測定光は垂直方向に走査される。一方、第2の反射鏡72で反射された測定光(点線)は、投影面94の領域98に投光される。第2の反射鏡72が垂直軸の周りに回転振動することで、矢印で図示した通り、測定光は垂直方向に走査される。
【0048】
また、図10(A)は垂直軸共振・水平軸共振の状態を示す斜視図であり、図10(B)は垂直軸共振・水平軸共振の状態で2視野が同時に測定される様子を示す模式図である。図10(A)に示すように、垂直軸共振・水平軸共振の状態では、第1の反射鏡62は垂直軸の周りに回転振動すると共に、第1の反射鏡62、第2の反射鏡72及び第3の反射鏡74は、第1の保持枠64と共に水平軸の周りに回転振動する。
【0049】
垂直軸共振・水平軸共振の場合には、図10(B)に示すように、第1の反射鏡62の部分62Aで反射された測定光(実線)は、投影面94の領域96に投光される。第1の反射鏡62が垂直軸の周りに回転振動すると共に水平軸の周りにも回転振動することで、矢印で図示した通り、測定光は垂直方向及び水平方向に走査される。走査軌跡はサインカーブを描くように蛇行する。一方、第2の反射鏡72で反射された測定光(点線)は、投影面94の領域98に投光される。第2の反射鏡72が垂直軸の周りに回転振動することで、矢印で図示した通り、測定光は垂直方向に走査される。
【0050】
また、図6に示したように、垂直軸非共振・水平軸非共振の場合でも2視野での測定は可能である。何れの状態で測定を行うかは、表示入力部42を介してユーザが指示を入力してもよい。
【0051】
以上説明したとおり、本実施の形態によれば、投受光光学系において複数の投受光用反射鏡を有する光走査装置を用い、複数の投受光用反射鏡の各々に同時に測定光が照射されるようにすることで、1個のレーザ光源から射出され、異なる方向に投光された測定光を、別々の反射鏡で受光することができ、2視野での測定が可能となる。2視野を同時に測定することで、単一視野での測定に比べて得られる情報量が増加し、詳細な対象物の測定が可能となる。
【0052】
また、垂直軸及び水平軸の各々を共振又は非共振とする組合せが可能であり、単一視野での測定に比べて種々の測定が可能となる。
【0053】
<その他の変形例>
(投受光光学系)
上記の実施の形態では、有孔反射鏡を用いて測定光と反射光とを分離する例について説明したが、分離光学系は図2に示す構成には限定されない。測定光と反射光とを分離する他の分離光学系を用いてもよい。例えば、半透鏡等のビームスプリッタを用いてもよい。
【0054】
(MEMSミラー)
上記の実施の形態では、光走査装置を電磁駆動方式のMEMSミラーとして構成した例について説明したが、上記と同様の回転動作が得られればよく、他の駆動方式のMEMSミラーとしてもよい。例えば、静電駆動方式、磁気駆動方式、圧電駆動方式のMEMSミラーとしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 距離測定装置
20 光投光部
24 レーザ光源
26 レーザ駆動部
28 走査駆動部
30 光受光部
32 光検出器
34 受光素子
40 制御部
42 表示入力部
50 投受光光学系
52 レンズ
54 有孔反射鏡
54A 孔部
54B 反射面
54C 領域
54D 領域
56 レンズ
60 光走査装置
60A 反射面
62 第1の反射鏡
62A 部分
62B 部分
64 第1の保持枠
66 第2の保持枠
68A 第1の支持梁
68B 第1の支持梁
70A 第2の支持梁
70B 第2の支持梁
72 第2の反射鏡
74 第3の反射鏡
76 駆動コイル
77 配線
78 電源
80 駆動コイル
82 電源
83 配線
84A、84B 永久磁石
86A、86B 永久磁石
90 照射領域
92 受光領域
94 投影面
96 領域
98 領域
F 焦点
L 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して投光する測定光を射出するレーザ光源と、
前記測定対象物で反射された反射光を検出する光検出器と、
第1の反射鏡、前記第1の反射鏡の周囲に配置された第1の保持枠、前記第1の反射鏡を前記第1の保持枠に対し垂直軸の周りに回転可能に軸支する第1の支持梁、前記第1の保持枠の上部表面及び下部表面の一方に配置された第2の反射鏡、前記第1の保持枠の上部表面及び下部表面の他方に配置された第3の反射鏡、前記第1の保持枠の周囲に配置された第2の保持枠、及び前記第1の保持枠を前記第2の保持枠に対し水平軸の周りに回転可能に軸支する第2の支持梁を備え、2次元走査が可能に構成された光走査装置と、
前記レーザ光源から射出された測定光が前記第1の反射鏡及び前記第2の反射鏡に照射されるように当該測定光を前記光走査装置に導光すると共に、前記第1の反射鏡及び前記第3の反射鏡で受光された反射光を前記光検出器に導光する導光光学系と、
前記レーザ光源及び前記光走査装置の各々を駆動制御すると共に、前記光検出器の検出信号に基づいて前記測定対象物までの距離を演算する制御部と、
を備えた距離測定装置。
【請求項2】
前記光検出器は、前記第1の反射鏡で受光され前記光検出器に導光された第1の反射光を受光する第1の受光素子と、前記第3の反射鏡で受光され前記光検出器に導光された第2の反射光を受光する第2の受光素子とを備え、受光素子毎に検出信号を出力する、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の反射鏡の前記垂直軸周りの回転及び前記第1の支持枠の前記水平軸周りの回転の少なくとも一方が行われるように前記光走査装置を駆動制御する、請求項1又は請求項2に記載の距離測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−226020(P2012−226020A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91505(P2011−91505)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】