距離計測装置および開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置
【課題】単純な構造で磁石との距離を計測し、単純な構造で磁石との距離データを出力し、安価なシステムで確実にウィンドウガラスの破損検出を行う。
【解決手段】一定の磁界を発生する磁界発生部と、磁界発生部の磁界を感知して動作する範囲に配設される磁気スイッチと、磁気スイッチに接続され、磁界発生部の磁界を打ち消す逆磁界を発生させる逆磁界発生部と、を備える検出部と、磁気スイッチを介して逆磁界発生部に駆動電圧を供給し、且つ逆磁界発生部の動作電圧または動作電流の周波数を算出し、周波数に基づいて磁界発生部と磁気スイッチとの距離を算出する判定部と、を備える距離計測装置である。
【解決手段】一定の磁界を発生する磁界発生部と、磁界発生部の磁界を感知して動作する範囲に配設される磁気スイッチと、磁気スイッチに接続され、磁界発生部の磁界を打ち消す逆磁界を発生させる逆磁界発生部と、を備える検出部と、磁気スイッチを介して逆磁界発生部に駆動電圧を供給し、且つ逆磁界発生部の動作電圧または動作電流の周波数を算出し、周波数に基づいて磁界発生部と磁気スイッチとの距離を算出する判定部と、を備える距離計測装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を用いた距離計測を行う距離計測装置に係り、特に、開閉式ウィンドウガラスの破損検出を行う開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1や特許文献2などの提案がされている。
特許文献1によれば、リードスイッチと、該リードスイッチに対して相対的に接近、離隔されることにより、該リードスイッチにスイッチング動作を行なわせるマグネットと、上記リードスイッチの近傍に配設され、マグネットがリードスイッチに近接している状態で、上記リードスイッチのスイッチング動作を検査すべく、マグネットからリードスイッチに与えられた磁界を打ち消す磁界を形成するように敵宣給電されるコイルとからなるセキュリティスイッチが提案されている。なお、コイルがリードスイッチの周囲に巻かれている。
【0003】
特許文献2によれば、筒形に巻回された電磁コイルの内部に少なくとも1つの常開形リードスイッチを設定し、このリードスイッチの閉成で上記電磁コイルに通電し、この電磁コイルから発生する磁界で上記リードスイッチを自己保持するように構成する提案がされている。
【0004】
しかしながら、上記のような提案を用いただけでは、単純な構造で磁石との距離が計測できないこと、システムとして安価にできないという問題がある。
また、特許文献3によれば、盗難防止のために車両のウィンドウガラスの割れを検知する装置が提案されている。この種の装置は、ウィンドウガラスが全閉位置にある等の条件下においてウィンドウガラスの位置(存在)を検出してウィンドウガラスの破損を検出するものである。
【特許文献1】実開平03−48831号公報
【特許文献2】実開昭61−190642号公報
【特許文献3】特開平11−321564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で磁石との距離を計測し、安価なシステムで確実にウィンドウガラスの破損検出を行うことができる距離計測装置および開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様のひとつである距離計測装置は、磁界発生部、検出部(磁気スイッチ、逆磁界発生部)、判定部から構成される。
磁界発生部は、一定の磁界を発生する。検出部の磁気スイッチは、前記磁界発生部の磁界を感知して動作する範囲に配設される。検出部の逆磁界発生部は、前記磁気スイッチに接続され、前記磁界発生部の磁界を打ち消す逆磁界を発生させる。判定部は、前記磁気スイッチを介して前記逆磁界発生部に駆動電圧を供給し、且つ前記逆磁界発生部の動作電圧または動作電流の周波数を算出し、前記周波数に基づいて前記磁界発生部と前記磁気スイッチとの距離を算出する。
【0007】
上記のような簡単な構造で磁石との距離を測定できる。また、簡単な構造で検出(距離データをパルス出力)をするため、外的要因に対して強い。
また、前記距離計測装置を用いた、車両の開口部を開閉自在なウィンドウガラスの破損を検出するための開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置であって、前記磁界発生部を、ウィンドウガラスの端部に配置され、ウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの端部での粉砕を行う力で挟持するクリップに固設し、前記ウィンドウガラスの破損に伴う前記クリップの少なくとも一部の変位を検出するために、前記検出部を前記車両の前記磁気スイッチが導通状態及び解除可能な範囲に固設する。
【0008】
このように、電流通信することによりハーネス本数を削減できシステムとして安価で構成できる。また、システムとして簡単な構造で確実に検知できる、磁石との距離を測定できるため、妨害工作に対して強く、動作している時はデータをパルス出力するため、故障検知が可能である。
【発明の効果】
【0009】
簡単な構造で磁石との距離を計測でき、安価なシステムで確実にウィンドウガラスの破損検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
(実施例1)
図1A、1Bに示す距離計測装置1は磁石2(磁界発生部)、検出部3、判定部4を備えている。
【0011】
磁石2(磁界発生部)は、永久磁石または電磁石など一定の磁界を発生するものである。
検出部3は磁気スイッチSW1、逆磁界発生部5を備えている。
【0012】
磁気スイッチSW1はリードスイッチなどの磁力によりオン/オフするスイッチであり、磁石2と一定の距離を保つように配置する。ここで、リードスイッチは、非動作時リードスイッチ内部のリード接点が接触しない状態(オフ:解除)であり、動作時リード接点が外部から加わる磁力によりリードが磁化され、そのリード接点が接触(オン:導通状態)する。磁力が除かれると接触しているリード接点が弾性により接触しなくなる(オフ)。
【0013】
逆磁界発生部5は磁気スイッチSW1の後段に接続され、磁気スイッチSW1を介して電流が供給されると、磁石2の磁界と逆方向の磁界を発生させる。つまり、逆磁界発生部5は電流が供給されると、磁石2の磁界を打ち消す逆磁界を発生させ、磁気スイッチSW1の導通状態を解除する。また、逆磁界発生部5は磁気スイッチSW1の近傍に配置する。例えば、逆磁界発生部5は、抵抗R1とコイルL1を直列に接続して構成し、磁気スイッチSW1の後段とグランドとの間に配設する。なお、抵抗R1とコイルL1の接続順は特に限定するものではない。また、近傍とはコイルL1の発生する磁界の磁界強度が、磁石2の磁界の磁界強度を打ち消して磁気スイッチSW1をオンからオフに切り替えられる範囲である。
【0014】
なお、図1A、1Bに示すコンデンサC1(破線)を抵抗R1とコイルL1の接続される端子とグランドの間に設けてもよい。抵抗R1とコンデンサC1により磁気スイッチSW1がオンのときに磁気スイッチSW1を介して入力される電流を一定時間遅延させる。
【0015】
このとき、逆磁界発生部5のコイルL1は、電流が供給されると、一定時間遅延して磁石2の磁界と逆方向の磁界を発生させる。つまり、磁気スイッチSW1のオンオフ時間を延長することができる(周波数が低くなる)。
【0016】
図1Aの判定部4は、制御部6、電流監視部7、メモリ8、警報部9、抵抗R2(例えば、シャント抵抗)を備えている。制御部6は、CPUやプログラマブルデバイスを用い、電流監視部7の出力信号を取得し、その出力信号に基づいて磁気スイッチSW1と磁石2との距離を算出する。また、制御部6は算出した距離が、予め設定された判定値を越えると警報部9に通知をする。電流監視部7は、図1に示す抵抗R2の両端(a−a’)を監視して監視結果を制御部6に出力する。両端を監視する場合は電流監視部7は電流を監視する。また、図1Bに示すようにa’’ポイントだけで電圧を監視してもよく、その場合は電圧を電圧監視部7aにより監視しその検出結果を制御部6に出力する。また、電流監視部7または電圧監視部7aでA/D変換して制御部6に監視データを送信してもよいし、制御部6でA/D変換してもよい。
【0017】
メモリ8には、判定値、距離測定テーブルを備えている。抵抗R2は磁気スイッチSW1のオン/オフ時の電圧を測定するために設けられたものである。GNDはグランドを示している。
【0018】
距離計測装置1の動作を説明する。
図2は、図1A、1B(コンデンサC1があるとき)に示した距離計測装置1の動作を示すタイムチャートである。図2は、縦軸に電圧値、横軸に時間を示す。図2のa、b、c各電圧波形は図1に示したa、b、c各ポイントの電圧波形を示す。
【0019】
図2のaの電圧オフ(供給電圧)がオフの期間では、距離計測装置1には電圧が供給されないためb、cの電圧波形は、GNDのレベルである。
図2の(1)のタイミングでaの電圧がオンされると距離計測装置1に電圧が供給される。例えば、磁気スイッチSW1(リードスイッチなど)の一方の端子に5Vもしくは12Vの電圧を印加する。図2に示す(2)のように磁気スイッチSW1の一方の端子から一定電圧が供給される。
【0020】
また、駆動電圧が印加されると、図1のbポイントの電圧は、図2に示す(3)のように駆動電圧付近まで上昇する。
そのとき、磁石2の磁界によって磁気スイッチSW1がオン状態であるので、抵抗R1を通してコンデンサC1とコイルL1に電圧が印加される。印加されるとコイルL1には、ある時定数(コイルL1と抵抗R1による)で電流が流れる。図1のcポイントの電圧は、図2に示す(4)のように徐々に電源電圧付近まで上昇する。
【0021】
コイルL1に電流が流れると、磁石2の磁界とは逆方向に磁界が発生し、コイルL1に発生した磁界が、磁石2の磁界を弱める方向に働く。そのため、磁気スイッチSW1における磁石2の磁力が十分弱められると、磁気スイッチSW1がオフされる。磁気スイッチSW1がオフすると電流の流れが遮断される。図1のbポイントの電圧は、図2に示す(5)のタイミングでコンデンサC1の充電電圧(端子電圧)になる。
【0022】
電流が遮断されるとコイルL1に流れる電流が減少し、コイルL1に発生する磁界も減少する。
コイルL1に発生する磁界が減少すると、磁石2の磁界の逆磁界が減少するため、再び磁気スイッチSW1がオン状態になる。
【0023】
以後、図2の破線範囲21に示されているように、磁気スイッチSW1はオン/オフを繰り返す。
図2の破線範囲21の説明をする。
【0024】
磁気スイッチSW1がオン時に、コイルL1にある時定数(コイルL1と抵抗R1による)電流が流れる。コイルL1は、磁石2と磁気スイッチSW1の距離により予め決められた、磁石2の磁界をキャンセルする磁界が発生するまで電流が流れると、磁気スイッチSW1はオフ状態になる。そして、磁気スイッチSW1がオフになると、再度コイルL1の磁界が減少し始め磁気スイッチSW1が磁石2の磁界によりオンする。このように、磁石2と磁気スイッチSW1の距離に変化がなければ上記の動作を繰り返し、一定の間隔の矩形波がaポイントに発生する。
【0025】
図3を用いて磁石2と磁気スイッチSW1の距離を算出する方法を説明する。
図3のAは磁石2と磁気スイッチSW1との関係を示す図である。図3のB、CはAに示される磁石2と磁気スイッチSW1の距離が変化した場合に、図1のb、cポイントの波形の変化を示している。図3のB、Cの縦軸はコイルL1に流れる電流と、bポイントに流れる電流を示し、横軸は時間を示している。
【0026】
図3のAでは、磁石2と磁気スイッチSW1の距離をD1、D2で示し、D1<D2の関係にあるものとする。
図3のBは距離D1のときの動作を示している。図3のBでは磁石2の位置が磁気スイッチSW1に近いため、磁気スイッチSW1には磁石2の磁力が強く作用する。そのため、磁石2の磁力をキャンセルためにコイルD1に多くの電流を供給しなければならない。よって、磁気スイッチSW1をオンからオフにする時間ton1は長くなる。また、磁気スイッチSW1をオフからオンにする時間をtoff1とする。
【0027】
図3のCは距離L2のときの動作を示している。図3のCでは磁石2の位置が磁気スイッチSW1に遠いため、磁気スイッチSW1には磁石2の磁力が弱く作用する。そのため、磁石2の磁力をキャンセルさせるためにコイルL1に供給する電流は少なくてよい。よって、磁気スイッチSW1をオンからオフにする時間ton2は短くなる。また、磁気スイッチSW1をオフからオンにする時間をtoff2とする。
ton2 < ton1 式1
toff2 < toff1
なお、抵抗R1、コンデンサC1、コイルL1の定数は上記のような式1を満たすように選択することがのぞましい。
【0028】
判定部4の動作について説明する。
電流監視部7により取得したa−a’ポイント間の電流変化(またはa’’ポイントの電圧変化)に基づいて、制御部6により距離を算出する。
【0029】
制御部6の動作を説明する。
制御部6は、距離の算出をするために、A/D変換したa−a’ポイント間の電圧を制御部6に取り込む(信号取得処理)。次に、取り込んだa−a’ポイント間の電圧値から磁気スイッチSW1のオン/オフ時間(ton1、toff1、ton2、toff2・・・)を検出する(磁気スイッチオン/オフ時間検出処理)。そして、図4に示す距離測定テーブルを検索し、磁気スイッチSW1のオン/オフ時間範囲に対して予め設定されている距離を検出する(距離検索処理)。例えば、「ton1」の範囲であれば距離データ「kyori1」を選択する。なお、距離測定テーブルではなく計算によって距離を算出してもよい。
【0030】
図4に示すテーブルはメモリ8に記録され、「スイッチオン時間」(ton1、ton2など)、「スイッチオフ時間」(toff1、toff2など)、「距離」(kyori1、kyori2など)を有している。なお、テーブルは「スイッチオン時間」と「スイッチオフ時間」を加算して1周期を算出して1周期に対応するように「距離」を設定してもよい。この場合、「ton1」+「toff1」の範囲に対応する「kyori1」を選択する。
【0031】
上記のように構成することで、簡単な構造で磁石2と磁気スイッチSW1の距離を測定することができる。
(開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置)
距離計測装置1を用いた開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置の説明をする。
【0032】
図5は、乗用車における右前ドアでの分解斜視図であり、図6は乗用車における右前ドアでの概略正面図である。
図1に示すように、車両ドア100はアウタパネル200とインナパネル300を具備している。アウタパネル200とインナパネル300の間に、強化ガラスからなるウィンドウガラス500が配置されている。
【0033】
ウィンドウガラス500の厚さは3.1mm〜5.0mm程度である。車両ドア100のインナパネル300の内側にはドアトリムが取り付けられている。車両ドア100の内部には、ウィンドウガラス500を上下動するウィンドウレギュレータ10が収納されている。本実施形態においては、ウィンドウレギュレータ10としてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いている。インナパネル300にはドア部品組付穴300aが穿設されており、このドア部品組付穴300aを塞ぐようにモジュラーパネル600が設けられている。
【0034】
Xアーム式ウィンドウレギュレータ10は、ベースプレート(固定ベース)11を介して、モジュラーパネル600の室外側の面に支持されている。即ち、モジュラーパネル600の室外側の面に固定するベースプレート11には、Xアーム式ウィンドウレギュレータ10のリフトアーム12の軸13が支持されている。ベースプレート11には電動駆動ユニット14が固定されている。
【0035】
リフトアーム12は、図6に示すように軸13を中心とするセクタギヤ(ドリブンギヤ)15を一体に有しており、図5の電動駆動ユニット14は、このセクタギヤ15と噛み合うピニオン16(図6)及びその駆動モータ(図示せず)を備えている。
【0036】
図6において、リフトアーム12の長さ方向の中間部分には、軸17でイコライザアーム18の中間部分が枢着されている。リフトアーム12とイコライザアーム18の上端部(先端部)にはそれぞれ、ガイドピース(ローラ)19、20が回転及び傾動可能に枢着されており、イコライザアーム18の下端部には、ガイドピース(ローラ)21が枢着されている。
【0037】
このリフトアーム12のガイドピース19と、イコライザアーム18のガイドピース20とは、ウィンドウガラスブラケット22に移動自在に嵌められ、イコライザアーム18
のガイドピース21は、図5のモジュラーパネル600の室外側の面に固定するイコライザアームブラケット(姿勢維持レール)23に移動自在に案内される。
【0038】
一方、ウィンドウガラス500の下縁にはその前後においてウィンドウガラスホルダ24が固定されている。このウィンドウガラスホルダ24は、予めウィンドウガラス500の下縁に固定され、このウィンドウガラスホルダ24を有するウィンドウガラス500が、アウタパネル200とインナパネル300の隙間から挿入されて、ボルト25によりウィンドウガラスブラケット22に固定されている。
【0039】
図6に示すように、前後一対のガラスラン26が立設されている。このガラスラン26はゴム材よりなる。レール部材としての前後一対のガラスラン26によりウィンドウガラス500が移動自在に支持されている。即ち、ウィンドウガラス500の前後の端部がガラスラン26に案内されて上下に移動することができるようになっている。
【0040】
図5の電動駆動ユニット14を介してピニオン16を正逆に駆動すると、セクタギヤ15を介してリフトアーム12が軸13を中心に揺動し、その結果、ウィンドウガラスブラケット22(ウィンドウガラス500)が、イコライザアーム18、ガイドピース19、20、21、イコライザアームブラケット23により略水平状態に保持されながら昇降運動する。このようにウィンドウガラス500が昇降され、ウィンドウガラス500により車両の開口部400が開閉自在となっている。
【0041】
図6のA−A線での縦断面を図7に示す。図7において、不正侵入防止用の開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置30(クリップ40と距離計測装置1に、さらに開閉式ウィンドウガラスの破損検出処理を追加した装置)が車両ドア100の内部に配置されている。
【0042】
図7において、アウタパネル200とインナパネル300との間にウィンドウガラス500がウェザーストリップ700によりシールされた状態で配置されている。また、インナパネル300の内側にはドアトリム800が配置されている。クリップ40はウィンドウガラス500の下端部に配置され、ウィンドウガラス500を挟んでいる。
【0043】
図8に示すように、クリップ40は、一枚の板ばね用鋼板を折り曲げて構成されている。クリップ40は、対向させた第1および第2部材41、42と折り曲げ部43(連結部)を有している。背面側の第1部材41は長方形状をなし、正面側の第2部材42は第1部材41よりも幅狭な正方形状をなしている。背面側の第1部材41と正面側の第2部材42の間にウィンドウガラス500が配置され、第1部材41と第2部材42はウィンドウガラス500に対し互いに接近する方向に付勢されている。折り曲げ部43は第1部材41と第2部材42を連結しており、この折り曲げ部43は、二段に折り曲げられ、二段目の折り曲げ部43bの幅はウィンドウガラス500の厚みよりも狭く、一段目の折り曲げ部43aにおいてウィンドウガラス500の端面が接している。
【0044】
また、第1部材41の中央部には長方形状の透孔44が形成されている。透孔44に対応する位置に第2部材42が位置している。第1部材41における左右の上隅には正面側に突出する突起45が形成され、図8B(図8AのA−A線での縦断面図)に示すように突起45の先端においてウィンドウガラス500の一方の面(裏面500b)と接触している。第2部材42は、第1部材41の透孔44の内部に対応する場所でウィンドウガラス500の他の面(表面500a)と接触している(図8A参照)。第2部材42はウィンドウガラス500に接着されている。
【0045】
このようにして、ウィンドウガラス500が配置される第1部材41と第2部材42の間において第1部材41と第2部材42がウィンドウガラス500の面内でずれた位置で接触する状態で、互いに接近する方向に付勢されている。即ち、ウィンドウガラス500の表面500aと裏面500bにおいて違う場所でウィンドウガラス500に対し力が加わる。また、クリップ40はウィンドウガラス500の下端部を所定の力以上で挟持(把持)している。
【0046】
また、クリップ40の第2部材42における正面側には磁石2(永久磁石など)が配置されている。
検出部3は、図7に示すように、インナパネル300に固定されている。ここで、鉛直方向をX方向とするとともに、水平方向をY方向とする。クリップ40はX方向(鉛直方向)に移動、即ち、落下することになる。なお、検出部3の磁気スイッチSW1は、例えば磁石2と同じ高さに配置する(磁石2に対しY方向に所定の距離だけ離間して配置されている)。
【0047】
次に、このように構成した開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置の作用、即ち、ウィンドウガラス500が壊された(割られた)ときの動作を説明する。
通常時においては、図8A、Bに示すように、ウィンドウガラス500の端部に配置したクリップ40がウィンドウガラス500の端部を挟持している。詳しくは、クリップ40の自身の弾性力にて第1部材41と第2部材42との間にウィンドウガラス500を挟持している。
【0048】
ウィンドウガラス500が破損すると、その強度が低下する。つまり、強化ガラスからなるウィンドウガラス500の一部が破損すると、ウィンドウガラス500のすべてにひびが入り強度が著しく低下する(ガラス割れ時にガラス強度が低下する)。
【0049】
この強度低下に伴って図8Cに示すようにクリップ40がその挟持力によりウィンドウガラス500の端部(下端部)を粉砕する。つまり、自身のばね力により強化ガラスからなるウィンドウガラス500が部分的に完全に粉砕される(粉々にされる)。これにより、図8Dに示すように、クリップ40が落下する。
【0050】
詳しくは、第2部材42の付勢力によりウィンドウガラス500が押されてクリップ40の第1部材41に当接する。この状態で、第1部材41により透孔44の周りが支持された状態でウィンドウガラス500が押圧され、透孔44におけるウィンドウガラス500が粉々に粉砕され、クリップ40が落下する。
【0051】
乗員がドアを閉めて車両から離れる際には以下のように動作する。
図9は、開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置30の動作を説明するフローチャートである。開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置30に図1に示した距離計測装置1を用いた場合の判定部4の制御部6の動作について説明する。
【0052】
ステップS1では、車両が駐車したことをドアロックやパーキングブレーキの操作信号を検知し、ロックされたときやパーキングブレーキが動作していることを検出して処理を開始する。
【0053】
ステップS2ではガラス割れ検知を開始する。ガラス位置が全閉位置若しくは数cm開いていたならば、ガラス割れ検知可能であると判定してガラス割れ検知モードを設定する。このモード設定時には、ウィンドウガラス500の破損検出動作が実行される。
【0054】
ステップS3では判定部4に電圧を印加する。例えば、判定部4として車両に搭載されているセキュリティECU(Electronic(Engine) Control Unit:電子(エンジン)制御ユニット)の制御機能を用いて処理を行う。
【0055】
ステップS4では制御部6が図1のbポイントの電流または電圧をモニタし、図10に示すLO波形(例えば、電流値0Aまたは電圧値0Vを予め設定した時間連続したときの波形)であると判定した場合はステップS6に移行する。HI波形(例えば、予め設定した一定以上の電流値または電圧値(MAX)を予め設定した時間連続したときの波形)であると判定した場合はステップS8に移行する。所定の期間内にaポイントの電流または電圧に変化があればパルス波形であると判定しステップS5に移行する。
【0056】
ステップS5では、パルス波形が検出されたことをメモリ8に記録してステップS10に移行する。例えば、メモリ8にパルス波形検出フラグなどを設けて、検出時に「1」を設定する。
【0057】
ステップS6では窓開き、ガラス割れ、磁気スイッチSW1などの故障が発生していることをメモリ8に記録する。例えば、メモリ8に窓開き検出フラグなどを設け、検出時に「1」を設定する。
【0058】
ステップS7では制御部6が警報部9に対して警報を出す通知をする。例えば、制御部6が上記窓開き検出フラグが「1」であることを検出し、警報部9に通知をし、警報部9が警報(ブザー、音声案内、表示器、LEDなど)により運転者に警告する。
【0059】
ステップS8では、不正工作、異常磁力検知(例えば、強力な磁石あり)、磁気スイッチSW1などの故障が発生していることをメモリ8に記録する。例えば、メモリ8に異常磁力フラグなどを設けて、検出時に「1」を設定する。
【0060】
ステップS9では制御部6が警報部9に対して警報を出す通知をする。例えば、制御部6が、上記異常磁力検出フラグが「1」であることを検出し、警報部9に通知をし、警報部9が警報(ブザー、音声案内、表示器、LEDなど)により運転者に警告する。
【0061】
ステップS10では制御部6の取得した監視部7の出力波形から距離計測を行い、予め設定されている周波数範囲外(異常)であるとステップS12へ移行し、予め設定されている距離範囲内(正常)であればステップS11へ移行する(図10のB参照)。計測した距離が高いとき、図3のCに示すように磁石2が磁気スイッチSW1から遠くにあるために、ウィンドウガラス500の位置(ガラス位置)が全開位置若しくは数cm以上開いていると判定し、ガラス割れ検知不可能であると判定する。例えば、図4のテーブルの「距離」に記録されている距離データに、ガラスが数cm以上開いていると判定できる距離データを予め設定し、その設定した距離と比較してガラス位置を判定する。その結果、設定した距離を越えていればウィンドウガラス500の位置(ガラス位置)が全開位置若しくは数cm以上開いていると判定する。
【0062】
ステップS11では正常パルスであることをメモリ8に記録する。例えば、メモリ8に正常パルスフラグなどを設けて、検出時に「1」を設定する。
ステップS12では、警報部9を作動させてウィンドウガラスが大きく開いている旨の警報をする。この警報によりウィンドウガラス500を閉めるように運転者に注意を促す。
【0063】
ステップS13ではガラス検知を開始する。上記ステップによりウィンドウガラス500は全閉位置になっている。
ステップS14では判定部4から検出部3へ駆動電圧が印加される。
【0064】
ステップS15では制御部6がbポイントのデータに基づいて距離を算出する。算出した距離データVf1をメモリ8に記録する。そして、次の距離データを取得するときは、現在メモリ8に記録されている距離データVf1を、Vf2に移動し前回取得した距離データとする。この前回取得した距離データVf2と今回測定した距離データVf1との距離差を算出して、算出した差が予め設定された範囲内であればステップS16に移行し、範囲外であればステップS18に移行する。
【0065】
ステップS16では制御部6が、ガラス位置が正常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグを設けて、正常であれば「0」を設定する。
ステップS17では制御部6が所定時間待機をする。例えば、500ms待機する。
【0066】
ステップS18では制御部6が、ガラス位置が異常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグに「1」を設定するとともに、異常が検出されると起動する判定カウンタを起動させる。
【0067】
ステップS19ではステップS15と同様の判定を再度行う。
ステップS20では制御部6が、ガラス位置が正常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグに「0」を設定する。このとき、上記判定カウンタは停止して初期値に戻る。
【0068】
ステップS21では制御部6が、ガラス位置が異常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグに「1」を設定する。このとき、既に距離判定フラグに「1」が立っていれば、判定カウンタは連続してカウントし、予め設定したカウント数にカウンタ値が達したときに、制御部6が警報部9に異常通知をする。その後、判定カウンタの値を初期値に戻す。
【0069】
ステップS22ではガラス割れ警報を発動する。警報部9が警報(ブザー、音声案内、表示器、LEDなど)により運転者に警告する。
上記のようにすることにより、ウィンドウガラス500の破損に伴いウィンドウガラス500が完全に粉砕せずに残るような場合でもウィンドウガラス500の破損を確実に検出することができる。また、換気等のためにウィンドウガラスを少し開けてウィンドウガラスが全閉位置にないときもウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0070】
上記実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
ウィンドウレギュレータとしてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いたが、ケーブル式ウィンドウレギュレータを用いてもよい。
【0071】
また、駆動手段としてはモータを有するものだけではなく、乗員の手動によるものでもよい。
また、ウィンドウガラスの破損検出装置を乗用車における右前ドアに適用したが、他の側部ドアに適用してもよいことは云うまでもなく、また、側部ドアの他にも、後部ドアや
屋根に設けられた開閉式ガラスルーフに適用してもよい。
【0072】
クリップ40はウィンドウガラス500の下端部に設置したが、これに限ることなく、例えばウィンドウガラス500の側面での下部に設置してもよい。要は、ウィンドウガラスの端部のうちの車両ドア100の内部の目立たない所に設置すればよい。
(変形例)
図11は、自動車111に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置を設けた一例を示す図である。自動車111の各ドアのウィンドウガラスに磁石2を有するクリップ40(40a、40b、40c、40d)を装着し、各インナパネルに検出部3(3a、3b、3c、3d)が固設されている。各検出部3(3a、3b、3c、3d)には電流通信線113(113a、113b、113c、113d:電力線)が接続され、各電流通信線113はセキュリティECU112(判定部4を内蔵)に接続される。なお、判定部4は検出部3ごとに設けてもよい。また、各検出部3に対して1つの判定部4を設け、検出部3ごとに時間分割して処理を実行してもよい。
【0073】
図12は、図1で説明した距離計測装置1を用いた場合の図である。磁気スイッチSW1にはリードスイッチなどを設けている。図12の例では検出部3aとセキュリティECU内の判定部4とはコネクタ121aを介して電流通信線113aにより接続されている。検出部3bとセキュリティECU内の判定部4とはコネクタ121bを介して電流通信線113bにより接続されている。検出部3cとセキュリティECU内の判定部4とはコネクタ121cを介して電流通信線113cにより接続されている。検出部3dとセキュリティECU112内の判定部4とはコネクタ121dを介して電流通信線113dにより接続されている。
【0074】
このように検出部3dとセキュリティECU内の判定部4を接続することにより、電流通信を行うため通信線などを別途用意する必要がないためハーネス本数を削減することができる。
【0075】
図13は、図12の検出部3(3a、3b、3c、3d)の変わりに、検出部131(131a、131b、131c、131d)を設けた場合の例である。
検出部131について説明する。
【0076】
検出部131では磁気スイッチとしてMRセンサ132(磁気抵抗素子:MREなど)とスイッチ素子(トランジスタTr1など)を備えている。MRセンサ132の出力は逆磁界発生部(コイルL2)と磁界発生部(磁石2)により決定される。つまり、磁石2がMRセンサ132に近く、コイルL2の発生する逆磁界(磁石2の磁界と逆方向)が小さければ、磁界強度は大きくなりMRセンサ132の出力は大きくなる。MRセンサ132の出力が大きくなると、トランジスタTr1のベース端子に必要な電流または電圧が供給されトランジスタTr1がオンする。トランジスタTr1がオンすると電流がコイルL2に供給される。コイルL2に一定量の電流が供給されると徐々にコイルL2の逆磁界強度が増加し、磁石2の磁界強度をキャンセルするようになる。その結果、MRセンサ132の出力が小さくなるためトランジスタTr1はオフしてコイルL2への電流供給が停止する。また、磁石2がMRセンサ132から遠いい場合、コイルL2の発生する磁界の磁界強度が小さくてよいため、コイルL2に供給する電流は少なくなる。
【0077】
なお、図13に示すように抵抗R4とコイルL2の間にコンデンサC2を設けてもよい。
このように検出部131を用いても検出部3と同じ効果を得ることができる。なお、MRセンサ132の代わりにホールICを用いてもよい。
【0078】
図14は、判定部4をセキュリティECU112から検出部3a(または113a)近くに設置した場合の例である。
図14の場合には、電源部141を用意して判定部4に電力を供給するとともに、各検出部3(3a、3b、3c、3d)にコネクタ142を介して供給する。電源部141への電力の供給もコネクタ142を介して行う。また、判定部4とセキュリティECU112は通信ラインを介して通信を行う。この通信によりガラス割れ、窓開き、故障などの警報に関するデータのやり取りを行ってもよい。
【0079】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】距離計測装置(電流監視部)の構成を示すブロック図である。
【図1B】距離計測装置(電圧監視部)の構成を示すブロック図である。
【図2】距離計測装置の動作時の波形を示す図である。
【図3】距離計測装置の動作時の波形を示す図である。Aは磁石と磁気スイッチの距離を示す図である。Bは磁石位置が近い時を示す図である。Cは磁石位置が遠いい時を示す図である。
【図4】磁気スイッチと距離との関係を示すテーブルの構造を示す図である。
【図5】乗用車における右前ドアでの分解斜視図である。
【図6】乗用車における右前ドアでの概略正面図である。
【図7】図6のA−A線での縦断面図である。
【図8A】開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置のクリップの正面図である。
【図8B】図8BのA−A線での縦断面図である。
【図8C】ガラス破損時の縦断面図である。
【図8D】クリップ落下時の縦断面図である。
【図9】制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】電流(または電圧)波形を示す図である。
【図11】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置を搭載したときの例を示す図である。
【図12】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置(リードスイッチ)を搭載したときの例を示す図である。
【図13】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置(MRセンサとトランジスタ)を搭載したときの例を示す図である。
【図14】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置の判定部をセキュリティECU以外の場所に搭載したときの例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 距離計測装置、
2 磁石、
3、131 検出部、
4 判定部、
5 逆磁界発生部、
6 制御部、
7 電圧監視部、
7a 電流監視部、
8 メモリ、
9 警報部、
R1、R2 抵抗、
C1、C2 コンデンサ、
L1、L2 コイル、
111 自動車、
112 セキュリティECU、
113 電流通信線、
121 コネクタ、
132 MRセンサ、
Tr1 トランジスタ、
142 コネクタ、
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を用いた距離計測を行う距離計測装置に係り、特に、開閉式ウィンドウガラスの破損検出を行う開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1や特許文献2などの提案がされている。
特許文献1によれば、リードスイッチと、該リードスイッチに対して相対的に接近、離隔されることにより、該リードスイッチにスイッチング動作を行なわせるマグネットと、上記リードスイッチの近傍に配設され、マグネットがリードスイッチに近接している状態で、上記リードスイッチのスイッチング動作を検査すべく、マグネットからリードスイッチに与えられた磁界を打ち消す磁界を形成するように敵宣給電されるコイルとからなるセキュリティスイッチが提案されている。なお、コイルがリードスイッチの周囲に巻かれている。
【0003】
特許文献2によれば、筒形に巻回された電磁コイルの内部に少なくとも1つの常開形リードスイッチを設定し、このリードスイッチの閉成で上記電磁コイルに通電し、この電磁コイルから発生する磁界で上記リードスイッチを自己保持するように構成する提案がされている。
【0004】
しかしながら、上記のような提案を用いただけでは、単純な構造で磁石との距離が計測できないこと、システムとして安価にできないという問題がある。
また、特許文献3によれば、盗難防止のために車両のウィンドウガラスの割れを検知する装置が提案されている。この種の装置は、ウィンドウガラスが全閉位置にある等の条件下においてウィンドウガラスの位置(存在)を検出してウィンドウガラスの破損を検出するものである。
【特許文献1】実開平03−48831号公報
【特許文献2】実開昭61−190642号公報
【特許文献3】特開平11−321564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で磁石との距離を計測し、安価なシステムで確実にウィンドウガラスの破損検出を行うことができる距離計測装置および開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様のひとつである距離計測装置は、磁界発生部、検出部(磁気スイッチ、逆磁界発生部)、判定部から構成される。
磁界発生部は、一定の磁界を発生する。検出部の磁気スイッチは、前記磁界発生部の磁界を感知して動作する範囲に配設される。検出部の逆磁界発生部は、前記磁気スイッチに接続され、前記磁界発生部の磁界を打ち消す逆磁界を発生させる。判定部は、前記磁気スイッチを介して前記逆磁界発生部に駆動電圧を供給し、且つ前記逆磁界発生部の動作電圧または動作電流の周波数を算出し、前記周波数に基づいて前記磁界発生部と前記磁気スイッチとの距離を算出する。
【0007】
上記のような簡単な構造で磁石との距離を測定できる。また、簡単な構造で検出(距離データをパルス出力)をするため、外的要因に対して強い。
また、前記距離計測装置を用いた、車両の開口部を開閉自在なウィンドウガラスの破損を検出するための開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置であって、前記磁界発生部を、ウィンドウガラスの端部に配置され、ウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの端部での粉砕を行う力で挟持するクリップに固設し、前記ウィンドウガラスの破損に伴う前記クリップの少なくとも一部の変位を検出するために、前記検出部を前記車両の前記磁気スイッチが導通状態及び解除可能な範囲に固設する。
【0008】
このように、電流通信することによりハーネス本数を削減できシステムとして安価で構成できる。また、システムとして簡単な構造で確実に検知できる、磁石との距離を測定できるため、妨害工作に対して強く、動作している時はデータをパルス出力するため、故障検知が可能である。
【発明の効果】
【0009】
簡単な構造で磁石との距離を計測でき、安価なシステムで確実にウィンドウガラスの破損検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
(実施例1)
図1A、1Bに示す距離計測装置1は磁石2(磁界発生部)、検出部3、判定部4を備えている。
【0011】
磁石2(磁界発生部)は、永久磁石または電磁石など一定の磁界を発生するものである。
検出部3は磁気スイッチSW1、逆磁界発生部5を備えている。
【0012】
磁気スイッチSW1はリードスイッチなどの磁力によりオン/オフするスイッチであり、磁石2と一定の距離を保つように配置する。ここで、リードスイッチは、非動作時リードスイッチ内部のリード接点が接触しない状態(オフ:解除)であり、動作時リード接点が外部から加わる磁力によりリードが磁化され、そのリード接点が接触(オン:導通状態)する。磁力が除かれると接触しているリード接点が弾性により接触しなくなる(オフ)。
【0013】
逆磁界発生部5は磁気スイッチSW1の後段に接続され、磁気スイッチSW1を介して電流が供給されると、磁石2の磁界と逆方向の磁界を発生させる。つまり、逆磁界発生部5は電流が供給されると、磁石2の磁界を打ち消す逆磁界を発生させ、磁気スイッチSW1の導通状態を解除する。また、逆磁界発生部5は磁気スイッチSW1の近傍に配置する。例えば、逆磁界発生部5は、抵抗R1とコイルL1を直列に接続して構成し、磁気スイッチSW1の後段とグランドとの間に配設する。なお、抵抗R1とコイルL1の接続順は特に限定するものではない。また、近傍とはコイルL1の発生する磁界の磁界強度が、磁石2の磁界の磁界強度を打ち消して磁気スイッチSW1をオンからオフに切り替えられる範囲である。
【0014】
なお、図1A、1Bに示すコンデンサC1(破線)を抵抗R1とコイルL1の接続される端子とグランドの間に設けてもよい。抵抗R1とコンデンサC1により磁気スイッチSW1がオンのときに磁気スイッチSW1を介して入力される電流を一定時間遅延させる。
【0015】
このとき、逆磁界発生部5のコイルL1は、電流が供給されると、一定時間遅延して磁石2の磁界と逆方向の磁界を発生させる。つまり、磁気スイッチSW1のオンオフ時間を延長することができる(周波数が低くなる)。
【0016】
図1Aの判定部4は、制御部6、電流監視部7、メモリ8、警報部9、抵抗R2(例えば、シャント抵抗)を備えている。制御部6は、CPUやプログラマブルデバイスを用い、電流監視部7の出力信号を取得し、その出力信号に基づいて磁気スイッチSW1と磁石2との距離を算出する。また、制御部6は算出した距離が、予め設定された判定値を越えると警報部9に通知をする。電流監視部7は、図1に示す抵抗R2の両端(a−a’)を監視して監視結果を制御部6に出力する。両端を監視する場合は電流監視部7は電流を監視する。また、図1Bに示すようにa’’ポイントだけで電圧を監視してもよく、その場合は電圧を電圧監視部7aにより監視しその検出結果を制御部6に出力する。また、電流監視部7または電圧監視部7aでA/D変換して制御部6に監視データを送信してもよいし、制御部6でA/D変換してもよい。
【0017】
メモリ8には、判定値、距離測定テーブルを備えている。抵抗R2は磁気スイッチSW1のオン/オフ時の電圧を測定するために設けられたものである。GNDはグランドを示している。
【0018】
距離計測装置1の動作を説明する。
図2は、図1A、1B(コンデンサC1があるとき)に示した距離計測装置1の動作を示すタイムチャートである。図2は、縦軸に電圧値、横軸に時間を示す。図2のa、b、c各電圧波形は図1に示したa、b、c各ポイントの電圧波形を示す。
【0019】
図2のaの電圧オフ(供給電圧)がオフの期間では、距離計測装置1には電圧が供給されないためb、cの電圧波形は、GNDのレベルである。
図2の(1)のタイミングでaの電圧がオンされると距離計測装置1に電圧が供給される。例えば、磁気スイッチSW1(リードスイッチなど)の一方の端子に5Vもしくは12Vの電圧を印加する。図2に示す(2)のように磁気スイッチSW1の一方の端子から一定電圧が供給される。
【0020】
また、駆動電圧が印加されると、図1のbポイントの電圧は、図2に示す(3)のように駆動電圧付近まで上昇する。
そのとき、磁石2の磁界によって磁気スイッチSW1がオン状態であるので、抵抗R1を通してコンデンサC1とコイルL1に電圧が印加される。印加されるとコイルL1には、ある時定数(コイルL1と抵抗R1による)で電流が流れる。図1のcポイントの電圧は、図2に示す(4)のように徐々に電源電圧付近まで上昇する。
【0021】
コイルL1に電流が流れると、磁石2の磁界とは逆方向に磁界が発生し、コイルL1に発生した磁界が、磁石2の磁界を弱める方向に働く。そのため、磁気スイッチSW1における磁石2の磁力が十分弱められると、磁気スイッチSW1がオフされる。磁気スイッチSW1がオフすると電流の流れが遮断される。図1のbポイントの電圧は、図2に示す(5)のタイミングでコンデンサC1の充電電圧(端子電圧)になる。
【0022】
電流が遮断されるとコイルL1に流れる電流が減少し、コイルL1に発生する磁界も減少する。
コイルL1に発生する磁界が減少すると、磁石2の磁界の逆磁界が減少するため、再び磁気スイッチSW1がオン状態になる。
【0023】
以後、図2の破線範囲21に示されているように、磁気スイッチSW1はオン/オフを繰り返す。
図2の破線範囲21の説明をする。
【0024】
磁気スイッチSW1がオン時に、コイルL1にある時定数(コイルL1と抵抗R1による)電流が流れる。コイルL1は、磁石2と磁気スイッチSW1の距離により予め決められた、磁石2の磁界をキャンセルする磁界が発生するまで電流が流れると、磁気スイッチSW1はオフ状態になる。そして、磁気スイッチSW1がオフになると、再度コイルL1の磁界が減少し始め磁気スイッチSW1が磁石2の磁界によりオンする。このように、磁石2と磁気スイッチSW1の距離に変化がなければ上記の動作を繰り返し、一定の間隔の矩形波がaポイントに発生する。
【0025】
図3を用いて磁石2と磁気スイッチSW1の距離を算出する方法を説明する。
図3のAは磁石2と磁気スイッチSW1との関係を示す図である。図3のB、CはAに示される磁石2と磁気スイッチSW1の距離が変化した場合に、図1のb、cポイントの波形の変化を示している。図3のB、Cの縦軸はコイルL1に流れる電流と、bポイントに流れる電流を示し、横軸は時間を示している。
【0026】
図3のAでは、磁石2と磁気スイッチSW1の距離をD1、D2で示し、D1<D2の関係にあるものとする。
図3のBは距離D1のときの動作を示している。図3のBでは磁石2の位置が磁気スイッチSW1に近いため、磁気スイッチSW1には磁石2の磁力が強く作用する。そのため、磁石2の磁力をキャンセルためにコイルD1に多くの電流を供給しなければならない。よって、磁気スイッチSW1をオンからオフにする時間ton1は長くなる。また、磁気スイッチSW1をオフからオンにする時間をtoff1とする。
【0027】
図3のCは距離L2のときの動作を示している。図3のCでは磁石2の位置が磁気スイッチSW1に遠いため、磁気スイッチSW1には磁石2の磁力が弱く作用する。そのため、磁石2の磁力をキャンセルさせるためにコイルL1に供給する電流は少なくてよい。よって、磁気スイッチSW1をオンからオフにする時間ton2は短くなる。また、磁気スイッチSW1をオフからオンにする時間をtoff2とする。
ton2 < ton1 式1
toff2 < toff1
なお、抵抗R1、コンデンサC1、コイルL1の定数は上記のような式1を満たすように選択することがのぞましい。
【0028】
判定部4の動作について説明する。
電流監視部7により取得したa−a’ポイント間の電流変化(またはa’’ポイントの電圧変化)に基づいて、制御部6により距離を算出する。
【0029】
制御部6の動作を説明する。
制御部6は、距離の算出をするために、A/D変換したa−a’ポイント間の電圧を制御部6に取り込む(信号取得処理)。次に、取り込んだa−a’ポイント間の電圧値から磁気スイッチSW1のオン/オフ時間(ton1、toff1、ton2、toff2・・・)を検出する(磁気スイッチオン/オフ時間検出処理)。そして、図4に示す距離測定テーブルを検索し、磁気スイッチSW1のオン/オフ時間範囲に対して予め設定されている距離を検出する(距離検索処理)。例えば、「ton1」の範囲であれば距離データ「kyori1」を選択する。なお、距離測定テーブルではなく計算によって距離を算出してもよい。
【0030】
図4に示すテーブルはメモリ8に記録され、「スイッチオン時間」(ton1、ton2など)、「スイッチオフ時間」(toff1、toff2など)、「距離」(kyori1、kyori2など)を有している。なお、テーブルは「スイッチオン時間」と「スイッチオフ時間」を加算して1周期を算出して1周期に対応するように「距離」を設定してもよい。この場合、「ton1」+「toff1」の範囲に対応する「kyori1」を選択する。
【0031】
上記のように構成することで、簡単な構造で磁石2と磁気スイッチSW1の距離を測定することができる。
(開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置)
距離計測装置1を用いた開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置の説明をする。
【0032】
図5は、乗用車における右前ドアでの分解斜視図であり、図6は乗用車における右前ドアでの概略正面図である。
図1に示すように、車両ドア100はアウタパネル200とインナパネル300を具備している。アウタパネル200とインナパネル300の間に、強化ガラスからなるウィンドウガラス500が配置されている。
【0033】
ウィンドウガラス500の厚さは3.1mm〜5.0mm程度である。車両ドア100のインナパネル300の内側にはドアトリムが取り付けられている。車両ドア100の内部には、ウィンドウガラス500を上下動するウィンドウレギュレータ10が収納されている。本実施形態においては、ウィンドウレギュレータ10としてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いている。インナパネル300にはドア部品組付穴300aが穿設されており、このドア部品組付穴300aを塞ぐようにモジュラーパネル600が設けられている。
【0034】
Xアーム式ウィンドウレギュレータ10は、ベースプレート(固定ベース)11を介して、モジュラーパネル600の室外側の面に支持されている。即ち、モジュラーパネル600の室外側の面に固定するベースプレート11には、Xアーム式ウィンドウレギュレータ10のリフトアーム12の軸13が支持されている。ベースプレート11には電動駆動ユニット14が固定されている。
【0035】
リフトアーム12は、図6に示すように軸13を中心とするセクタギヤ(ドリブンギヤ)15を一体に有しており、図5の電動駆動ユニット14は、このセクタギヤ15と噛み合うピニオン16(図6)及びその駆動モータ(図示せず)を備えている。
【0036】
図6において、リフトアーム12の長さ方向の中間部分には、軸17でイコライザアーム18の中間部分が枢着されている。リフトアーム12とイコライザアーム18の上端部(先端部)にはそれぞれ、ガイドピース(ローラ)19、20が回転及び傾動可能に枢着されており、イコライザアーム18の下端部には、ガイドピース(ローラ)21が枢着されている。
【0037】
このリフトアーム12のガイドピース19と、イコライザアーム18のガイドピース20とは、ウィンドウガラスブラケット22に移動自在に嵌められ、イコライザアーム18
のガイドピース21は、図5のモジュラーパネル600の室外側の面に固定するイコライザアームブラケット(姿勢維持レール)23に移動自在に案内される。
【0038】
一方、ウィンドウガラス500の下縁にはその前後においてウィンドウガラスホルダ24が固定されている。このウィンドウガラスホルダ24は、予めウィンドウガラス500の下縁に固定され、このウィンドウガラスホルダ24を有するウィンドウガラス500が、アウタパネル200とインナパネル300の隙間から挿入されて、ボルト25によりウィンドウガラスブラケット22に固定されている。
【0039】
図6に示すように、前後一対のガラスラン26が立設されている。このガラスラン26はゴム材よりなる。レール部材としての前後一対のガラスラン26によりウィンドウガラス500が移動自在に支持されている。即ち、ウィンドウガラス500の前後の端部がガラスラン26に案内されて上下に移動することができるようになっている。
【0040】
図5の電動駆動ユニット14を介してピニオン16を正逆に駆動すると、セクタギヤ15を介してリフトアーム12が軸13を中心に揺動し、その結果、ウィンドウガラスブラケット22(ウィンドウガラス500)が、イコライザアーム18、ガイドピース19、20、21、イコライザアームブラケット23により略水平状態に保持されながら昇降運動する。このようにウィンドウガラス500が昇降され、ウィンドウガラス500により車両の開口部400が開閉自在となっている。
【0041】
図6のA−A線での縦断面を図7に示す。図7において、不正侵入防止用の開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置30(クリップ40と距離計測装置1に、さらに開閉式ウィンドウガラスの破損検出処理を追加した装置)が車両ドア100の内部に配置されている。
【0042】
図7において、アウタパネル200とインナパネル300との間にウィンドウガラス500がウェザーストリップ700によりシールされた状態で配置されている。また、インナパネル300の内側にはドアトリム800が配置されている。クリップ40はウィンドウガラス500の下端部に配置され、ウィンドウガラス500を挟んでいる。
【0043】
図8に示すように、クリップ40は、一枚の板ばね用鋼板を折り曲げて構成されている。クリップ40は、対向させた第1および第2部材41、42と折り曲げ部43(連結部)を有している。背面側の第1部材41は長方形状をなし、正面側の第2部材42は第1部材41よりも幅狭な正方形状をなしている。背面側の第1部材41と正面側の第2部材42の間にウィンドウガラス500が配置され、第1部材41と第2部材42はウィンドウガラス500に対し互いに接近する方向に付勢されている。折り曲げ部43は第1部材41と第2部材42を連結しており、この折り曲げ部43は、二段に折り曲げられ、二段目の折り曲げ部43bの幅はウィンドウガラス500の厚みよりも狭く、一段目の折り曲げ部43aにおいてウィンドウガラス500の端面が接している。
【0044】
また、第1部材41の中央部には長方形状の透孔44が形成されている。透孔44に対応する位置に第2部材42が位置している。第1部材41における左右の上隅には正面側に突出する突起45が形成され、図8B(図8AのA−A線での縦断面図)に示すように突起45の先端においてウィンドウガラス500の一方の面(裏面500b)と接触している。第2部材42は、第1部材41の透孔44の内部に対応する場所でウィンドウガラス500の他の面(表面500a)と接触している(図8A参照)。第2部材42はウィンドウガラス500に接着されている。
【0045】
このようにして、ウィンドウガラス500が配置される第1部材41と第2部材42の間において第1部材41と第2部材42がウィンドウガラス500の面内でずれた位置で接触する状態で、互いに接近する方向に付勢されている。即ち、ウィンドウガラス500の表面500aと裏面500bにおいて違う場所でウィンドウガラス500に対し力が加わる。また、クリップ40はウィンドウガラス500の下端部を所定の力以上で挟持(把持)している。
【0046】
また、クリップ40の第2部材42における正面側には磁石2(永久磁石など)が配置されている。
検出部3は、図7に示すように、インナパネル300に固定されている。ここで、鉛直方向をX方向とするとともに、水平方向をY方向とする。クリップ40はX方向(鉛直方向)に移動、即ち、落下することになる。なお、検出部3の磁気スイッチSW1は、例えば磁石2と同じ高さに配置する(磁石2に対しY方向に所定の距離だけ離間して配置されている)。
【0047】
次に、このように構成した開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置の作用、即ち、ウィンドウガラス500が壊された(割られた)ときの動作を説明する。
通常時においては、図8A、Bに示すように、ウィンドウガラス500の端部に配置したクリップ40がウィンドウガラス500の端部を挟持している。詳しくは、クリップ40の自身の弾性力にて第1部材41と第2部材42との間にウィンドウガラス500を挟持している。
【0048】
ウィンドウガラス500が破損すると、その強度が低下する。つまり、強化ガラスからなるウィンドウガラス500の一部が破損すると、ウィンドウガラス500のすべてにひびが入り強度が著しく低下する(ガラス割れ時にガラス強度が低下する)。
【0049】
この強度低下に伴って図8Cに示すようにクリップ40がその挟持力によりウィンドウガラス500の端部(下端部)を粉砕する。つまり、自身のばね力により強化ガラスからなるウィンドウガラス500が部分的に完全に粉砕される(粉々にされる)。これにより、図8Dに示すように、クリップ40が落下する。
【0050】
詳しくは、第2部材42の付勢力によりウィンドウガラス500が押されてクリップ40の第1部材41に当接する。この状態で、第1部材41により透孔44の周りが支持された状態でウィンドウガラス500が押圧され、透孔44におけるウィンドウガラス500が粉々に粉砕され、クリップ40が落下する。
【0051】
乗員がドアを閉めて車両から離れる際には以下のように動作する。
図9は、開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置30の動作を説明するフローチャートである。開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置30に図1に示した距離計測装置1を用いた場合の判定部4の制御部6の動作について説明する。
【0052】
ステップS1では、車両が駐車したことをドアロックやパーキングブレーキの操作信号を検知し、ロックされたときやパーキングブレーキが動作していることを検出して処理を開始する。
【0053】
ステップS2ではガラス割れ検知を開始する。ガラス位置が全閉位置若しくは数cm開いていたならば、ガラス割れ検知可能であると判定してガラス割れ検知モードを設定する。このモード設定時には、ウィンドウガラス500の破損検出動作が実行される。
【0054】
ステップS3では判定部4に電圧を印加する。例えば、判定部4として車両に搭載されているセキュリティECU(Electronic(Engine) Control Unit:電子(エンジン)制御ユニット)の制御機能を用いて処理を行う。
【0055】
ステップS4では制御部6が図1のbポイントの電流または電圧をモニタし、図10に示すLO波形(例えば、電流値0Aまたは電圧値0Vを予め設定した時間連続したときの波形)であると判定した場合はステップS6に移行する。HI波形(例えば、予め設定した一定以上の電流値または電圧値(MAX)を予め設定した時間連続したときの波形)であると判定した場合はステップS8に移行する。所定の期間内にaポイントの電流または電圧に変化があればパルス波形であると判定しステップS5に移行する。
【0056】
ステップS5では、パルス波形が検出されたことをメモリ8に記録してステップS10に移行する。例えば、メモリ8にパルス波形検出フラグなどを設けて、検出時に「1」を設定する。
【0057】
ステップS6では窓開き、ガラス割れ、磁気スイッチSW1などの故障が発生していることをメモリ8に記録する。例えば、メモリ8に窓開き検出フラグなどを設け、検出時に「1」を設定する。
【0058】
ステップS7では制御部6が警報部9に対して警報を出す通知をする。例えば、制御部6が上記窓開き検出フラグが「1」であることを検出し、警報部9に通知をし、警報部9が警報(ブザー、音声案内、表示器、LEDなど)により運転者に警告する。
【0059】
ステップS8では、不正工作、異常磁力検知(例えば、強力な磁石あり)、磁気スイッチSW1などの故障が発生していることをメモリ8に記録する。例えば、メモリ8に異常磁力フラグなどを設けて、検出時に「1」を設定する。
【0060】
ステップS9では制御部6が警報部9に対して警報を出す通知をする。例えば、制御部6が、上記異常磁力検出フラグが「1」であることを検出し、警報部9に通知をし、警報部9が警報(ブザー、音声案内、表示器、LEDなど)により運転者に警告する。
【0061】
ステップS10では制御部6の取得した監視部7の出力波形から距離計測を行い、予め設定されている周波数範囲外(異常)であるとステップS12へ移行し、予め設定されている距離範囲内(正常)であればステップS11へ移行する(図10のB参照)。計測した距離が高いとき、図3のCに示すように磁石2が磁気スイッチSW1から遠くにあるために、ウィンドウガラス500の位置(ガラス位置)が全開位置若しくは数cm以上開いていると判定し、ガラス割れ検知不可能であると判定する。例えば、図4のテーブルの「距離」に記録されている距離データに、ガラスが数cm以上開いていると判定できる距離データを予め設定し、その設定した距離と比較してガラス位置を判定する。その結果、設定した距離を越えていればウィンドウガラス500の位置(ガラス位置)が全開位置若しくは数cm以上開いていると判定する。
【0062】
ステップS11では正常パルスであることをメモリ8に記録する。例えば、メモリ8に正常パルスフラグなどを設けて、検出時に「1」を設定する。
ステップS12では、警報部9を作動させてウィンドウガラスが大きく開いている旨の警報をする。この警報によりウィンドウガラス500を閉めるように運転者に注意を促す。
【0063】
ステップS13ではガラス検知を開始する。上記ステップによりウィンドウガラス500は全閉位置になっている。
ステップS14では判定部4から検出部3へ駆動電圧が印加される。
【0064】
ステップS15では制御部6がbポイントのデータに基づいて距離を算出する。算出した距離データVf1をメモリ8に記録する。そして、次の距離データを取得するときは、現在メモリ8に記録されている距離データVf1を、Vf2に移動し前回取得した距離データとする。この前回取得した距離データVf2と今回測定した距離データVf1との距離差を算出して、算出した差が予め設定された範囲内であればステップS16に移行し、範囲外であればステップS18に移行する。
【0065】
ステップS16では制御部6が、ガラス位置が正常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグを設けて、正常であれば「0」を設定する。
ステップS17では制御部6が所定時間待機をする。例えば、500ms待機する。
【0066】
ステップS18では制御部6が、ガラス位置が異常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグに「1」を設定するとともに、異常が検出されると起動する判定カウンタを起動させる。
【0067】
ステップS19ではステップS15と同様の判定を再度行う。
ステップS20では制御部6が、ガラス位置が正常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグに「0」を設定する。このとき、上記判定カウンタは停止して初期値に戻る。
【0068】
ステップS21では制御部6が、ガラス位置が異常な位置にあることをメモリ8に記録する。例えば、距離判定フラグに「1」を設定する。このとき、既に距離判定フラグに「1」が立っていれば、判定カウンタは連続してカウントし、予め設定したカウント数にカウンタ値が達したときに、制御部6が警報部9に異常通知をする。その後、判定カウンタの値を初期値に戻す。
【0069】
ステップS22ではガラス割れ警報を発動する。警報部9が警報(ブザー、音声案内、表示器、LEDなど)により運転者に警告する。
上記のようにすることにより、ウィンドウガラス500の破損に伴いウィンドウガラス500が完全に粉砕せずに残るような場合でもウィンドウガラス500の破損を確実に検出することができる。また、換気等のためにウィンドウガラスを少し開けてウィンドウガラスが全閉位置にないときもウィンドウガラスの破損を検出することができる。
【0070】
上記実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
ウィンドウレギュレータとしてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いたが、ケーブル式ウィンドウレギュレータを用いてもよい。
【0071】
また、駆動手段としてはモータを有するものだけではなく、乗員の手動によるものでもよい。
また、ウィンドウガラスの破損検出装置を乗用車における右前ドアに適用したが、他の側部ドアに適用してもよいことは云うまでもなく、また、側部ドアの他にも、後部ドアや
屋根に設けられた開閉式ガラスルーフに適用してもよい。
【0072】
クリップ40はウィンドウガラス500の下端部に設置したが、これに限ることなく、例えばウィンドウガラス500の側面での下部に設置してもよい。要は、ウィンドウガラスの端部のうちの車両ドア100の内部の目立たない所に設置すればよい。
(変形例)
図11は、自動車111に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置を設けた一例を示す図である。自動車111の各ドアのウィンドウガラスに磁石2を有するクリップ40(40a、40b、40c、40d)を装着し、各インナパネルに検出部3(3a、3b、3c、3d)が固設されている。各検出部3(3a、3b、3c、3d)には電流通信線113(113a、113b、113c、113d:電力線)が接続され、各電流通信線113はセキュリティECU112(判定部4を内蔵)に接続される。なお、判定部4は検出部3ごとに設けてもよい。また、各検出部3に対して1つの判定部4を設け、検出部3ごとに時間分割して処理を実行してもよい。
【0073】
図12は、図1で説明した距離計測装置1を用いた場合の図である。磁気スイッチSW1にはリードスイッチなどを設けている。図12の例では検出部3aとセキュリティECU内の判定部4とはコネクタ121aを介して電流通信線113aにより接続されている。検出部3bとセキュリティECU内の判定部4とはコネクタ121bを介して電流通信線113bにより接続されている。検出部3cとセキュリティECU内の判定部4とはコネクタ121cを介して電流通信線113cにより接続されている。検出部3dとセキュリティECU112内の判定部4とはコネクタ121dを介して電流通信線113dにより接続されている。
【0074】
このように検出部3dとセキュリティECU内の判定部4を接続することにより、電流通信を行うため通信線などを別途用意する必要がないためハーネス本数を削減することができる。
【0075】
図13は、図12の検出部3(3a、3b、3c、3d)の変わりに、検出部131(131a、131b、131c、131d)を設けた場合の例である。
検出部131について説明する。
【0076】
検出部131では磁気スイッチとしてMRセンサ132(磁気抵抗素子:MREなど)とスイッチ素子(トランジスタTr1など)を備えている。MRセンサ132の出力は逆磁界発生部(コイルL2)と磁界発生部(磁石2)により決定される。つまり、磁石2がMRセンサ132に近く、コイルL2の発生する逆磁界(磁石2の磁界と逆方向)が小さければ、磁界強度は大きくなりMRセンサ132の出力は大きくなる。MRセンサ132の出力が大きくなると、トランジスタTr1のベース端子に必要な電流または電圧が供給されトランジスタTr1がオンする。トランジスタTr1がオンすると電流がコイルL2に供給される。コイルL2に一定量の電流が供給されると徐々にコイルL2の逆磁界強度が増加し、磁石2の磁界強度をキャンセルするようになる。その結果、MRセンサ132の出力が小さくなるためトランジスタTr1はオフしてコイルL2への電流供給が停止する。また、磁石2がMRセンサ132から遠いい場合、コイルL2の発生する磁界の磁界強度が小さくてよいため、コイルL2に供給する電流は少なくなる。
【0077】
なお、図13に示すように抵抗R4とコイルL2の間にコンデンサC2を設けてもよい。
このように検出部131を用いても検出部3と同じ効果を得ることができる。なお、MRセンサ132の代わりにホールICを用いてもよい。
【0078】
図14は、判定部4をセキュリティECU112から検出部3a(または113a)近くに設置した場合の例である。
図14の場合には、電源部141を用意して判定部4に電力を供給するとともに、各検出部3(3a、3b、3c、3d)にコネクタ142を介して供給する。電源部141への電力の供給もコネクタ142を介して行う。また、判定部4とセキュリティECU112は通信ラインを介して通信を行う。この通信によりガラス割れ、窓開き、故障などの警報に関するデータのやり取りを行ってもよい。
【0079】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】距離計測装置(電流監視部)の構成を示すブロック図である。
【図1B】距離計測装置(電圧監視部)の構成を示すブロック図である。
【図2】距離計測装置の動作時の波形を示す図である。
【図3】距離計測装置の動作時の波形を示す図である。Aは磁石と磁気スイッチの距離を示す図である。Bは磁石位置が近い時を示す図である。Cは磁石位置が遠いい時を示す図である。
【図4】磁気スイッチと距離との関係を示すテーブルの構造を示す図である。
【図5】乗用車における右前ドアでの分解斜視図である。
【図6】乗用車における右前ドアでの概略正面図である。
【図7】図6のA−A線での縦断面図である。
【図8A】開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置のクリップの正面図である。
【図8B】図8BのA−A線での縦断面図である。
【図8C】ガラス破損時の縦断面図である。
【図8D】クリップ落下時の縦断面図である。
【図9】制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】電流(または電圧)波形を示す図である。
【図11】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置を搭載したときの例を示す図である。
【図12】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置(リードスイッチ)を搭載したときの例を示す図である。
【図13】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置(MRセンサとトランジスタ)を搭載したときの例を示す図である。
【図14】自動車に開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置の判定部をセキュリティECU以外の場所に搭載したときの例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 距離計測装置、
2 磁石、
3、131 検出部、
4 判定部、
5 逆磁界発生部、
6 制御部、
7 電圧監視部、
7a 電流監視部、
8 メモリ、
9 警報部、
R1、R2 抵抗、
C1、C2 コンデンサ、
L1、L2 コイル、
111 自動車、
112 セキュリティECU、
113 電流通信線、
121 コネクタ、
132 MRセンサ、
Tr1 トランジスタ、
142 コネクタ、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の磁界を発生する磁界発生部と、
前記磁界発生部の磁界を感知して動作する範囲に配設される磁気スイッチと、前記磁気スイッチに接続され、前記磁界発生部の磁界を打ち消す逆磁界を発生させる逆磁界発生部と、を備える検出部と、
前記磁気スイッチを介して前記逆磁界発生部に駆動電圧を供給し、且つ前記逆磁界発生部の動作電圧または動作電流の周波数を算出し、前記周波数に基づいて前記磁界発生部と前記磁気スイッチとの距離を算出する判定部と、
を備えることを特徴とする距離計測装置。
【請求項2】
前記逆磁界発生部は、抵抗とコイルを直列に接続して構成され、前記磁気スイッチの後段とグランドとの間に配設することを特徴とする請求項1に記載の距離計測装置。
【請求項3】
前記逆磁界発生部は、前記抵抗と前記コイルの接続される端子とグランドとの間にコンデンサを配設することを特徴とする請求項2に記載の距離計測装置。
【請求項4】
前記判定部は、
予め周波数範囲を設定するとともに、前記周波数範囲に対応する距離データを予め設定した距離測定テーブルを有し、前記周波数が含まれる前記周波数範囲に対応する距離データを選択して前記距離を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の距離計測装置。
【請求項5】
前記磁気スイッチは、リードスイッチであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の距離計測装置。
【請求項6】
前記磁気スイッチは、
磁界の検出をMRセンサにより行い、導通状態と解除をスイッチ素子により行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載に記載の距離計測装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかひとつに記載される前記距離計測装置を用いた、車両の開口部を開閉自在なウィンドウガラスの破損を検出するための開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置であって、
前記磁界発生部を、ウィンドウガラスの端部に配置され、ウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの端部での粉砕を行う力で挟持するクリップに固設し、
前記ウィンドウガラスの破損に伴う前記クリップの少なくとも一部の変位を検出するために、前記検出部を前記車両の前記磁気スイッチが導通状態及び解除可能な範囲に固設することを特徴とする開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置。
【請求項1】
一定の磁界を発生する磁界発生部と、
前記磁界発生部の磁界を感知して動作する範囲に配設される磁気スイッチと、前記磁気スイッチに接続され、前記磁界発生部の磁界を打ち消す逆磁界を発生させる逆磁界発生部と、を備える検出部と、
前記磁気スイッチを介して前記逆磁界発生部に駆動電圧を供給し、且つ前記逆磁界発生部の動作電圧または動作電流の周波数を算出し、前記周波数に基づいて前記磁界発生部と前記磁気スイッチとの距離を算出する判定部と、
を備えることを特徴とする距離計測装置。
【請求項2】
前記逆磁界発生部は、抵抗とコイルを直列に接続して構成され、前記磁気スイッチの後段とグランドとの間に配設することを特徴とする請求項1に記載の距離計測装置。
【請求項3】
前記逆磁界発生部は、前記抵抗と前記コイルの接続される端子とグランドとの間にコンデンサを配設することを特徴とする請求項2に記載の距離計測装置。
【請求項4】
前記判定部は、
予め周波数範囲を設定するとともに、前記周波数範囲に対応する距離データを予め設定した距離測定テーブルを有し、前記周波数が含まれる前記周波数範囲に対応する距離データを選択して前記距離を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の距離計測装置。
【請求項5】
前記磁気スイッチは、リードスイッチであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の距離計測装置。
【請求項6】
前記磁気スイッチは、
磁界の検出をMRセンサにより行い、導通状態と解除をスイッチ素子により行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載に記載の距離計測装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかひとつに記載される前記距離計測装置を用いた、車両の開口部を開閉自在なウィンドウガラスの破損を検出するための開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置であって、
前記磁界発生部を、ウィンドウガラスの端部に配置され、ウィンドウガラスの破損に伴う当該ウィンドウガラスの端部での粉砕を行う力で挟持するクリップに固設し、
前記ウィンドウガラスの破損に伴う前記クリップの少なくとも一部の変位を検出するために、前記検出部を前記車両の前記磁気スイッチが導通状態及び解除可能な範囲に固設することを特徴とする開閉式ウィンドウガラスの破損検出装置。
【図1A】
【図1B】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図5】
【図9】
【図11】
【図1B】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図5】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2010−60469(P2010−60469A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227498(P2008−227498)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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